説明

メソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法、その多孔質膜、反射防止膜及び光学素子

【課題】界面活性剤を比較的低温で除去しながら、低い屈折率を有し、反射防止性に優れたメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する方法、その多孔質膜、反射防止膜及び光学素子を提供する。
【解決手段】光学基材1又はその上に設けられた緻密膜の表面に、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜2を形成する方法であって、(1) 触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒の存在下でアルコキシシランを加水分解・重縮合し、これらの界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、(2) 上記複合体を含む溶液を上記基材又は緻密膜の表面に塗布し、(3) 乾燥して上記溶媒を除去し、(4) 酸素含有ガス雰囲気下120〜250℃の温度で焼成するか、酸素含有ガスを用いてプラズマ処理することにより、上記両界面活性剤を除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤を比較的低温で除去しながら、低い屈折率を有し、反射防止性に優れたメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する方法、その多孔質膜、反射防止膜及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカ多孔質膜は空孔率が高く、屈折率が低いので、レンズ等の光学基材に設ける反射防止膜への利用が検討されている。従来メソポーラスシリカ多孔質膜は、テトラエトキシシラン等のシリカ原料、触媒、水、界面活性剤及び有機溶媒の混合液をエージングし、得られた有機−無機複合体を含む溶液を基材に塗布し、乾燥し、焼成して有機成分を除去することにより形成されている。
【0003】
例えば「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693(非特許文献1)は、高い光透過性を有するメソポーラスシリカナノ多孔質膜の形成方法として、塩酸酸性条件でテトラエトキシシラン、カチオン性界面活性剤(塩化セチルトリメチルアンモニウム)及び非イオン性界面活性剤[HO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106H]の混合溶液をエージングした後、アンモニア水を加えることにより、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、この溶液を基材の表面に塗布し、乾燥し、600℃で焼成することによりカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去する方法を記載している。しかしこの方法は焼成温度が高く、ガラス転移温度の低い光学ガラス基材やプラスチック基材には使用できない。
【0004】
そこで特開2005-116830号(特許文献1)は、450℃以下の温度で焼成し、有機残渣を十分に低減した多孔質シリカ膜を製造する方法として、アルコキシシラン、界面活性剤、触媒及び溶媒の混合溶液をエージングした後、得られた多孔質シリカ前駆体を含む溶液を基板上に塗布し、水含有雰囲気下260〜450℃の温度で焼成する方法を記載している。
【0005】
特開2007-321092号(特許文献2)は、400℃以下の温度で焼成し、有機残渣を十分に低減した多孔質シリカ膜を製造する方法として、アルコキシシラン、界面活性剤、触媒及び溶媒の混合溶液をエージングした後、得られた多孔質シリカ前駆体を含む溶液を基板上に塗布し、100〜400℃の温度で焼成し、紫外線を照射する方法を記載している。
【0006】
しかし特許文献1の方法は、焼成温度の低温化が不十分であり、ガラス転移温度の低い光学ガラス基材やプラスチック基材に用いた場合、ひずみや外観不良を生じることがある。特許文献2の方法では、紫外線の照射により、光学基材にソラリゼーションを生じ、光学特性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2005-116830号公報
【特許文献2】特開2007-321092号公報
【非特許文献1】「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、界面活性剤を比較的低温で除去しながら、低い屈折率を有し、反射防止性に優れたメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する方法、その多孔質膜、反射防止膜及び光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒の存在下でアルコキシシランを加水分解・重縮合し、これらの界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、この複合体の塗布膜を乾燥した後、酸素含有ガス雰囲気下120〜250℃の温度で焼成するか、酸素含有ガスを用いてプラズマ処理すると、界面活性剤を比較的低温で除去しながら、低い屈折率を有し、反射防止性に優れたメソポーラスシリカ多孔質膜を形成することができることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜の第一の形成方法は、(1) アルコキシシラン、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させて、前記カチオン性界面活性剤、前記非イオン性界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、(2) 前記複合体を含む溶液を前記基材又は緻密膜の表面に塗布し、(3) 乾燥して前記溶媒を除去し、(4) 酸素含有ガス雰囲気下、120〜250℃の温度で焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする。
【0011】
本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜の第二の形成方法は、(1) アルコキシシラン、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させて、前記カチオン性界面活性剤、前記非イオン性界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、(2) 前記複合体を含む溶液を前記基材又は緻密膜の表面に塗布し、(3) 乾燥して前記溶媒を除去し、(4) 酸素含有ガスを用いてプラズマ処理することにより前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする。前記(4)のプラズマ処理工程を、前記酸素含有ガスの雰囲気でプラズマ放電することにより行うのが好ましい。前記プラズマ放電の単位面積あたりの電力密度を0.1〜3W/cm2にするのが好ましい。
【0012】
第一及び第二の方法において、前記(1)の複合体調製工程として、(i) 前記溶媒、酸性触媒、前記アルコキシシラン、前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させる工程、及び(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製する工程を行うのが好ましい。前記(3)の乾燥工程で、厚さ500 nm以下の膜を形成するのが好ましい。
【0013】
前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用い、前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いるのが好ましい。前記カチオン性界面活性剤/前記非イオン性界面活性剤のモル比を8超〜60以下とするのが好ましい。
【0014】
第一及び第二の形成方法により得られる本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜は、平均粒径が200 nm以下のメソポーラスシリカナノ粒子が集合してなり、1.09〜1.25の屈折率及び45〜80%の空隙率を有することを特徴とする。前記メソポーラスシリカナノ粒子がヘキサゴナル構造を有するのが好ましい。窒素吸着法により求めた孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあるのが好ましい。
【0015】
本発明の反射防止膜は、上記メソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に形成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の光学素子は、上記メソポーラスシリカ多孔質膜からなる反射防止膜が、前記光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法では、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の存在下でアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られる、これらの界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を乾燥した後、酸素含有ガス雰囲気下120〜250℃の温度で焼成するか、酸素含有ガスを用いてプラズマ処理するので、界面活性剤を比較的低温で除去しながら、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成することができる。本発明の形成方法により得られるメソポーラスシリカ多孔質膜は、低い屈折率を有するので、反射防止膜として有用である。この反射防止膜をレンズ等の光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に有する光学素子は、その中心部と周辺部での透過光量又は透過光色の異なりや、レンズ周辺部での反射光に起因するゴースト等が著しく低減されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[1] 原料
(1) アルコキシシラン
アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、優れた均一性を有するメソポーラスシリカ多孔質膜が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上述のモノマーの重縮合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはアルコキシシランモノマーの加水分解・重縮合により得られる。アルコキシシランオリゴマーの具体例として、一般式RSiO1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表されるシルセスキオキサンが挙げられる。
【0019】
(2) 界面活性剤
(a) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤としては、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルトリエチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルメチルアンモニウム、ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウムとして、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルメチルアンモニウムとして、塩化ドデシルメチルアンモニウム、塩化セチルメチルアンモニウム、塩化ステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンジルメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウムとして、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0020】
(b) 非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤として、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーとして、例えば式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるものが挙げられる。このブロックコポリマーの市販品として、例えばPluronic(登録商標、BASF社)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
(3) 触媒
(a) 酸性触媒
酸性触媒の例として、塩化水素酸(塩酸)、硫酸、硝酸等の無機酸やギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0022】
(b) 塩基性触媒
塩基性触媒の例としてアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン及びアルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)が挙げられる。
【0023】
(4) 溶媒
溶媒としては純水を用いる。
【0024】
[2] 光学基材及び緻密膜
光学基材(以下単に基材とよぶことがある)の材料として、BK7、BAH27、LASF01、LASF08、LASF016、LaFK55、LAK14、SF5、石英ガラス等の光学ガラス、及びアクリル樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、非晶性ポリオレフィン等のプラスチックが挙げられる。これらの基材の屈折率は約1.5〜1.9である。基材の形状として、平板、レンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム、回折格子等が挙げられる。
【0025】
基材は表面に緻密膜を有してもよい。緻密膜は、金属酸化物等の無機材料からなる層である。無機材料の例としてフッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セリウム、クライオライト(Na3AlF6)、チオライト(Na5Al3F14)、SiO2、Al2O3、Ta2O5、TiO2、Nb2O5、ZrO2、HfO2、CeO2、SnO
2、In2O3、ZnO、Y2O3、Pr6O11及びこれらの混合物が挙げられる。緻密膜は単層でも多層でもよい。緻密膜が単層の場合、屈折率は基材から緻密膜、メソポーラスシリカ多孔質膜の順に小さくなっているのが好ましい。緻密膜が多層の場合、基材、多層緻密膜及びメソポーラスシリカ多孔質膜の各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計するのが好ましい。緻密膜は、物理蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。
【0026】
[3] メソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法
(1) 第一の方法
メソポーラスシリカ多孔質膜を形成する第一の方法は、(a) アルコキシシラン、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(b) 得られたメソポーラスシリカナノ粒子を含む溶液を、光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に塗布し、(c) 乾燥して溶媒を除去し、(d) 酸素含有ガス雰囲気下、120〜250℃の温度で焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去する工程を有する。
【0027】
(a) 加水分解・重縮合
アルコキシシランの加水分解・重縮合は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングし、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより行うのが好ましい。
【0028】
(i) 酸性条件での加水分解・重縮合
純水に酸性触媒を添加して酸性溶液を調製し、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の混合液を調製した後、アルコキシシランを添加し、加水分解・重縮合する。酸性溶液のpHは約2とするのが好ましい。アルコキシシランのシラノール基の等電点は約pH2であるので、pH2付近では酸性溶液中でシラノール基が安定的に存在する。溶媒/アルコキシシランのモル比は30〜300にするのが好ましい。このモル比を30未満とすると、アルコキシシランの重合度が高くなり過ぎる。一方300超とすると、アルコキシシランの重合度が低くなり過ぎる。
【0029】
カチオン性界面活性剤/溶媒のモル比は1×10-4〜3×10-3とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は、1.5×10-4〜2×10-3がより好ましい。
【0030】
カチオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は1×10-1〜3×10-1が好ましい。このモル比を1×10-1未満とすると、メソポーラスシリカナノ粒子のメソ構造の形成が不十分となる。一方3×10-1超とすると、メソポーラスシリカナノ粒子の粒径が大きくなり過ぎる。このモル比は、1.5×10-1〜2.5×10-1がより好ましい。
【0031】
非イオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は3.5×10-3以上〜2.5×10-2未満である。このモル比を3.5×10-3未満とすると、メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率が大きくなり過ぎる。一方2.5×10-2以上とすると、メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率が小さくなり過ぎる。
【0032】
カチオン性界面活性剤/非イオン性界面活性剤のモル比は8超〜60以下とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は、10〜50がより好ましい。
【0033】
アルコキシシランを含む溶液を1〜24時間程度エージングする。具体的には、20〜25℃で溶液を静置するか、ゆっくり撹拌する。エージングにより加水分解・重縮合が進行し、シリケート(アルコキシシランを出発物質とするオリゴマー)を含有するゾルが生成する。
【0034】
(ii) 塩基性条件での加水分解・重縮合
得られた酸性ゾルに、塩基性触媒を添加して溶液を塩基性にし、さらに加水分解・重縮合し、反応を完結させる。これにより平均粒径が200 nm以下のメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。溶液のpHは9〜12となるように調整するのが好ましい。
【0035】
塩基性触媒を添加することにより、カチオン性界面活性剤ミセルの周囲にシリケート骨格が形成されて、規則的な六方配列が成長することによりシリカとカチオン性界面活性剤とが複合した粒子が形成される。この複合粒子は成長に伴って表面の有効電荷が減少するので、表面に非イオン性界面活性剤が吸着する。その結果、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子(以下「界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体」とよぶことがある)の溶液(ゾル)が得られる[例えば今井宏明、「化学工業」、化学工業社、2005年9月、第56巻、第9号、pp.688-693]。このメソポーラスシリカナノ粒子の形成過程において、非イオン性界面活性剤の吸着により、上記複合粒子の成長が抑制されるので、以上のような二種類の界面活性剤を用いた調製方法により得られるメソポーラスシリカナノ粒子は、平均粒径が200 nm以下で、かつメソ細孔の規則性に優れている。
【0036】
(b) 塗布
界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の溶液(ゾル)を基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に塗布する。ゾルの塗布方法として、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法及びこれらを併用する方法等が挙げられる。得られる多孔質膜の厚さは、例えば、スピンコート法における基材回転速度やディッピング法における引き上げ速度の調整、塗布液の濃度の調整等により制御することができる。スピンコート法における基材回転速度は、例えば約500〜約10,000 rpmとするのが好ましい。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜の厚さが500 nm以下となるようにするのが好ましい。
【0037】
ゾルの濃度及び流動性が適切な範囲になるように、塗布の前にさらに分散媒としてゾルとほぼ同じpHの塩基性水溶液を加えても良い。塗布液中の界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の割合は10〜50質量%とするのが好ましい。この割合の範囲外だと、均一な薄膜を形成し難い。
【0038】
(c) 乾燥
塗布したゾルを乾燥し、溶媒とアルコキシシランの重縮合により生じたアルコールとを揮発させることにより除去する。塗布膜の乾燥条件は特に制限されず、基材の耐熱性等に応じて適宜選択すればよい。自然乾燥してもよいし、50〜100℃の温度で15分〜1時間熱処理して溶媒除去を促進してもよい。乾燥した膜の厚さは500 nm以下が好ましい。
【0039】
(d) 焼成
溶媒を除去した膜を、酸素含有ガス雰囲気下、120〜250℃の温度で焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去することにより、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成する。カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を、酸素含有ガス雰囲気下、120〜250℃で加熱すると、酸化分解させることができる。酸素含有ガスとして、酸素、空気、10〜50体積%の酸素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガス等が挙げられるが、空気が好ましい。必要に応じて、溶媒を除去した膜に上記温度の酸素含有ガスを吹き付けてもよい。焼成温度を120℃以下とすると、両界面活性剤を十分に除去することができない。一方250℃超とすると、ガラス転移温度の低い光学ガラス基材やプラスチック基材が変形する。焼成温度は140〜250℃が好ましい。焼成時間は温度により適宜設定すればよいが、1〜100時間が好ましく、2〜80時間がより好ましい。
【0040】
(2) 第二の方法
メソポーラスシリカ多孔質膜を形成する第二の方法は、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の除去を、焼成に代えて、酸素含有ガスを用いてプラズマ処理することにより行う以外、第一の方法と同じである。よって、以下相違点についてのみ説明する。
【0041】
プラズマ処理の方法としては、(a) 乾燥した膜を酸素含有ガス雰囲気に設置し、プラズマ放電することにより行う直接法か、(b) 酸素含有ガスにプラズマ放電して得られたプラズマガスを、乾燥した膜に吹き付けることにより行う間接法が好ましい。酸素含有ガスは上記と同じでよい。直接法及び間接法のいずれを用いる場合でも、プラズマ処理は大気圧下で行っても、減圧下で行ってもよい。
【0042】
(a) 直接法
直接法を用いる場合、対向する上部電極及び下部電極を有する平行平板型のプラズマ放電装置を用いるのが好ましい。乾燥膜を設けた基材を下部電極上に配置し、プラズマ放電する。乾燥膜に与える電力密度は0.1〜3W/cm2が好ましく、0.1〜2W/cm2がより好ましい。電力の周波数は1〜30 MHzであるのが好ましい。プラズマ放電の時間は60〜1,000秒が好ましい。減圧下でプラズマ放電する場合、1〜40 Pa、好ましくは1〜30 Paの減圧下、酸素含有ガスを供給しながら行うのが好ましい。放電中の基材の温度は20〜200℃が好ましい。
【0043】
(b) 間接法
間接法を用いる場合、高圧ボンベからプラズマガス発生装置に酸素含有ガスを送給し、発生装置で生じたプラズマガスを、ノズル、ブロワー等により乾燥膜に吹き付けるのが好ましい。
【0044】
[4] メソポーラスシリカ多孔質膜及びその用途
図1は、基材1の表面に形成されたメソポーラスシリカ多孔質膜2を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜2は、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなる。図2は、メソポーラスシリカナノ粒子の一例を示す。この粒子20は、メソ孔20aを有するシリカ骨格20bからなり、メソ孔20aがヘキサゴナル状に規則的に配列した多孔質構造を有する。但し、メソポーラスシリカナノ粒子20はヘキサゴナル構造のものに限定されず、キュービック構造又はラメラ構造のものでもよい。よってメソポーラスシリカ多孔質膜2は、これらの三種の構造の粒子のいずれか又はこれらの混合物からなるものであればよいが、ヘキサゴナル構造の粒子20からなるのが好ましい。
【0045】
メソポーラスシリカナノ粒子20の平均粒径は、200 nm以下が好ましく、20〜50 nmがより好ましい。この平均粒径が200 nm超だと、膜厚調整が困難であり、薄膜設計のフレキシビリティーが低い。しかもメソポーラスシリカ多孔質膜2の反射防止特性及び耐クラック性も低い。メソポーラスシリカナノ粒子20の平均粒径は動的光散乱法により求める。メソポーラスシリカ多孔質膜2の屈折率は空隙率に依存し、大きな空隙率を有するものほど屈折率が小さい。メソポーラスシリカ多孔質膜2の空隙率は45〜80%であるのが好ましい。この範囲内の空隙率を有するメソポーラスシリカ多孔質膜2の屈折率は1.09〜1.25である。
【0046】
図3に示すように、メソポーラスシリカ多孔質膜2は、窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有するのが好ましい。詳しくは、メソポーラスシリカ多孔質膜2について窒素の等温脱着曲線を求め、これをBJH法で解析し、横軸を細孔直径とし、縦軸をlog微分細孔容積として表される孔径分布曲線が二つのピークを有するのが好ましい。BJH法は、例えば「メソ孔の分布を求める方法」(E. P. Barrett,L. G. Joyner, and P. P. Halenda , J.Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))に記載されている。log微分細孔容積は、細孔直径Dの対数の差分値d(logD)に対する差分細孔容積dVの変化量であり、dV/d(logD)で表される。小孔径側の第一ピークが粒子内細孔の径を示し、大孔径側の第二ピークが粒子間細孔の径を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜2は、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にある分布を有するのが好ましい。
【0047】
粒子内細孔容積V1と粒子間細孔容積V2の比は1/15〜1/1であるのが好ましい。比V1/V2は、第一及び第二のピーク間の最小値(縦軸座標の最小値)の点Eを通り、横軸と平行な直線をベースラインL0とし、各々のピークの最大傾斜線(最大傾斜点における接線)L1〜L4とベースラインL0との交点A〜Dにおける横軸座標(DA〜DD)を求め、各々BJH法による解析データにより、DA〜DBの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV1とし、DC〜DDの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV2とし、これらの比を算出することにより求める。
【0048】
メソポーラスシリカ多孔質膜2は、1.09〜1.25の低い屈折率を有し、広い波長範囲の光線に対する反射防止性に優れ、均一である。このような優れた反射防止特性を有する本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜をレンズに設けると、その中心部と周辺部での透過光量又は透過光色の異なりや、レンズ周辺部での反射光に起因するゴースト等の問題を著しく低減できる。このような優れた特性を有する光学素子を、カメラ、内視鏡、双眼鏡、プロジェクター等に使用すると、画像の質を著しく向上させることができる。さらに本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜は、製造コストも低く、歩留まりが良好である。メソポーラスシリカ多孔質膜2の好ましい物理膜厚は15〜500 nmである。
【0049】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
pH2の塩酸(0.01N)40 gに、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製)1.21 g(0.088 mol/L)、及びブロックコポリマーHO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106H(商品名「Pluronic F127」、Sigma-Aldrich社)2.41 g(0.0043 mol/L)を添加し、25℃で1時間撹拌し、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.00 g(0.45 mol/L)を添加し、25℃で1時間撹拌した後、28質量%アンモニア水3.94 g(1.51 mol/L)を添加してpHを10.6とし、25℃で0.5時間撹拌した。得られた界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の溶液を、屈折率が1.518のBK7ガラスからなる平板(φ30 mm、厚さ1.5 mm)の表面にスピンコート法により塗布し、80℃で0.5時間乾燥した後、空気雰囲気下250℃で3時間焼成した。
【0051】
実施例2
焼成を200℃で3時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0052】
実施例3
焼成を200℃で12時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0053】
実施例4
焼成を200℃で24時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0054】
実施例5
焼成を200℃で48時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0055】
実施例6
焼成を150℃で48時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0056】
実施例7
焼成を150℃で72時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0057】
実施例8
焼成に代えて、プラズマクリーナー(型番:PDC210、ヤマト科学株式会社製)を用いて、15Paの減圧下、酸素を80 mL/minで供給しながら、0.7 W/cm2の電力密度及び13.56 MHzの電力周波数で、2分間プラズマ放電した以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。放電中の基材の温度は25℃とした。
【0058】
実施例9
プラズマ放電時間を5分間とした以外実施例8と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0059】
実施例10
プラズマ放電時間を10分間とした以外実施例8と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0060】
実施例11
プラズマ放電時間を15分間とした以外実施例8と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0061】
比較例1
ブロックコポリマーHO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106Hを添加せずに、界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体を調製した以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0062】
比較例2
焼成を500℃で3時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0063】
比較例3
焼成を550℃で3時間行った以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0064】
比較例4
焼成に代えて、1.6 W/cm2の紫外線を1分間照射した以外実施例1と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。紫外線照射処理には、UVランプ装置(型番:F300S、光源:Dタイプの無電極ランプバルブ、フュージョン・ユーブイ・システムズ・ジャパン株式会社製)を使用した。
【0065】
比較例5
紫外線照射時間を2分間とした以外比較例4と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0066】
比較例6
紫外線照射時間を3分間とした以外比較例4と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0067】
比較例7
光学基材として、屈折率が1.697のLaFK55ガラスからなる平板(φ30 mm、厚さ1.5 mm)を用いた以外比較例6と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0068】
比較例8
光学基材として、屈折率が1.706のBAH27ガラスからなる平板(φ30 mm、厚さ2.5 mm)を用いた以外比較例6と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0069】
比較例9
光学基材として、屈折率が1.888のLaSF08ガラスからなる平板(φ30 mm、厚さ1.0 mm)を用いた以外比較例6と同様にして、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
【0070】
実施例1〜11及び比較例1〜9で得られた反射防止膜の特性を表1に示す。屈折率及び物理膜厚の測定にはレンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用し、ヘイズ値の測定にはヘイズ透過率計(型番:HM-150、村上色彩技術研究所製)を使用し、それぞれ波長550 nmの光に対して測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
注:(1) 非イオン性界面活性剤を使用していない。
【0073】
(熱重量分析)
実施例1及び比較例1で得られた乾燥後の界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体について、空気雰囲気下、熱分析装置(型番:TG/DTA-320、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、200℃の温度で重量変化を測定した。メソポーラスシリカと界面活性剤との合計重量(計算値)を100重量%とした。具体的には、実施例1の複合体はメソポーラスシリカ24.1重量%及び界面活性剤75.9重量%の組成を有するものとし、比較例1の複合体はメソポーラスシリカ48.7重量%及び界面活性剤51.3重量%の組成を有するものとした。結果を図4に示す。
【0074】
図4から明らかなように、200℃でほぼ全量の界面活性剤を除去するのに要した時間は、実施例1では15時間であったのに対し[重量が計算値(24.1重量%)より多い30重量%でほぼ一定となったのは、80℃での乾燥時に界面活性剤の一部が除去されたためと考えられる]、比較例1では30時間以上であった。カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の両方を使用すると、メソポーラスシリカ粒子をナノサイズに制御できるため、焼成により効率よく界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体から界面活性剤を除去できることが分かった。
【0075】
比較例10
上記BK7ガラスからなる平板に、上記UVランプ装置を用いて1.6 W/cm2の紫外線を3分間照射し、照射前後における光吸収率を測定した。具体的には、光吸収率は、380〜780 nmの波長領域の光線に対する反射率(%)、透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定し、式:光吸収率(%)=100−[反射率(%)+透過率(%)+ヘイズ値(%)]により求めた。結果を図5に示す。
【0076】
比較例11
比較例10と同様にして、上記LaFK55ガラスからなる平板について、紫外線照射前後における光吸収率を測定した。結果を図6に示す。
【0077】
比較例12
比較例10と同様にして、上記BAH27ガラスからなる平板について、紫外線照射前後における光吸収率を測定した。結果を図7に示す。
【0078】
比較例13
比較例10と同様にして、上記LaSF08ガラスからなる平板について、紫外線照射前後における光吸収率を測定した。結果を図8に示す。
【0079】
表1から明らかなように、実施例1〜11のメソポーラスシリカ多孔質膜はいずれも、低い屈折率及び高い透明性を有していた。これに対して、比較例1の膜は、非イオン性界面活性剤を用いていないので、メソポーラスシリカ粒子をナノサイズに制御することができず、そのため透明度が低いものと考えられる。比較例2〜9のメソポーラスシリカ多孔質膜も、低い屈折率及び高い透明性を有していた。しかし比較例2及び3の方法は、焼成温度がそれぞれ500℃及び550℃と高く、焼成温度超のガラス転移温度を有する硝材にしか用いることができない。また図5〜8から明らかなように、紫外線を照射すると基材の光吸収率が増加する。よって、比較例4〜9のように紫外線を照射する方法では、基材の光吸収率増加を引き起こしてしまうことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】光学基材上に設けられた、本発明のメソポーラスシリカ多孔質膜の一例を示す断面図である。
【図2】図1のメソポーラスシリカ多孔質膜を構成するメソポーラスシリカ粒子の一例を示す斜視図である。
【図3】典型的な孔径分布曲線を示すグラフである。
【図4】実施例1及び比較例1の界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の熱重量変化を示すグラフである。
【図5】比較例10の基材の光吸収率を示すグラフである。
【図6】比較例11の基材の光吸収率を示すグラフである。
【図7】比較例12の基材の光吸収率を示すグラフである。
【図8】比較例13の基材の光吸収率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1・・・基材
2・・・メソポーラスシリカ多孔質膜
20・・・メソポーラスシリカナノ粒子
20a・・・メソ孔
20b・・・シリカ骨格

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する方法であって、(1) アルコキシシラン、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させて、前記カチオン性界面活性剤、前記非イオン性界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、(2) 前記複合体を含む溶液を前記基材又は緻密膜の表面に塗布し、(3) 乾燥して前記溶媒を除去し、(4) 酸素含有ガス雰囲気下、120〜250℃の温度で焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜を形成する方法であって、(1) アルコキシシラン、触媒、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び溶媒を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させて、前記カチオン性界面活性剤、前記非イオン性界面活性剤及びメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製し、(2) 前記複合体を含む溶液を前記基材又は緻密膜の表面に塗布し、(3) 乾燥して前記溶媒を除去し、(4) 酸素含有ガスを用いてプラズマ処理することにより前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記(4)のプラズマ処理工程を、前記酸素含有ガスの雰囲気でプラズマ放電することにより行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記プラズマ放電の単位面積あたりの電力密度を0.1〜3W/cm2にすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記(1)の複合体調製工程として、(i) 前記溶媒、酸性触媒、前記アルコキシシラン、前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングして前記アルコキシシランを加水分解・重縮合させる工程、及び(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子からなる複合体を調製する工程を行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記(3)の乾燥工程で、厚さ500 nm以下の膜を形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用い、前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜の形成方法において、前記カチオン性界面活性剤/前記非イオン性界面活性剤のモル比を8超〜60以下とすることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の形成方法により得られるメソポーラスシリカ多孔質膜であって、平均粒径が200 nm以下のメソポーラスシリカナノ粒子が集合してなり、1.09〜1.25の屈折率及び45〜80%の空隙率を有することを特徴とするメソポーラスシリカ多孔質膜。
【請求項10】
請求項9に記載のメソポーラスシリカ多孔質膜において、前記メソポーラスシリカナノ粒子がヘキサゴナル構造を有することを特徴とするメソポーラスシリカ多孔質膜。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のメソポーラスシリカ多孔質膜において、窒素吸着法により求めた孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあることを特徴とするメソポーラスシリカ多孔質膜。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に形成されたことを特徴とする反射防止膜。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載のメソポーラスシリカ多孔質膜からなる反射防止膜が、前記光学基材又はその上に設けられた緻密膜の表面に形成されたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−132485(P2010−132485A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308746(P2008−308746)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】