説明

メタクリル酸製造用触媒の再生方法及びメタクリル酸の製造方法

【課題】触媒活性やその持続性に優れたメタクリル酸製造用触媒の再生方法を提供し、また、この再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を乾燥した後、成形し、得られた成形体を40〜100℃で、0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらし、次いで焼成することにより、リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を再生する。また、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応してメタクリル酸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸製造用触媒を再生する方法に関するものである。また、この方法により得られた触媒を用いて、メタクリル酸を製造する方法にも関係している。
【背景技術】
【0002】
リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒は、メタクロレイン等を原料とする気相接触酸化反応に長時間使用されると、熱負荷等により触媒活性が低下し、該触媒が劣化することが知られている。
【0003】
かかる劣化触媒の再生処理方法として、特開昭61−283352号公報(特許文献1)には、劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を乾燥後、成形し、得られた成形体を焼成する方法が記載されている。
【0004】
特開昭63−130144号公報(特許文献2)には、劣化触媒とアンモニア水との混合物を乾燥後、得られた乾燥物を水に分散させ、含窒素へテロ環化合物、アミン又は炭酸アンモニウムを加えて混合し、乾燥、成形後、得られた成形体を焼成する方法が記載されている。
【0005】
特開昭60−232247号公報(特許文献3)には、劣化触媒を水に分散させた後、含窒素ヘテロ環化合物と硝酸とを加えて混合し、乾燥、成形後、得られた成形体を焼成する方法が記載されている。
【0006】
特開2001−286762号公報(特許文献4)には、劣化触媒を水に分散させた後、含窒素ヘテロ環化合物と硝酸とを加え、更に、触媒の消失構成元素を含む化合物を加えて混合し、乾燥、成形後、得られた成形体を焼成する方法が記載されている。
【0007】
特開2001−286763号公報(特許文献5)には、劣化触媒を水に分散させた後、含窒素ヘテロ環化合物、硝酸アンモニウム及び硝酸を加えて混合し、乾燥、成形後、得られた成形体を焼成する方法が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−283352号公報
【特許文献2】特開昭63−130144号公報
【特許文献3】特開昭60−232247号公報
【特許文献4】特開2001−286762号公報
【特許文献5】特開2001−286763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の再生方法では、触媒活性の回復効果が必ずしも十分でなく、得られた再生触媒の触媒活性やその持続性は、必ずしも満足の行くものではなかった。そこで、本発明の目的は、劣化触媒の触媒活性を効果的に回復させ、その持続性も良好なメタクリル酸製造用触媒を再生する方法を提供することにある。また、この方法により得られた再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意研究を行った結果、劣化触媒の再生処理において、劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を乾燥後、成形し、得られた成形体に対し特定の処理を施し、次いで焼成することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明は、リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を乾燥した後、成形し、得られた成形体を40〜100℃で、0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらし、次いで焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付す、メタクリル酸の製造方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、劣化触媒の活性を効果的に回復させることができ、その持続性も良好なメタクリル酸製造用触媒を再生することができる。そして、こうして得られた再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明が再生の対象とするメタクリル酸製造用触媒は、リン及びモリブデンを必須とするヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)からなるものが好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものである。
【0015】
上記触媒には、リン及びモリブデン以外の元素として、バナジウムが含まれるのが望ましく、また、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、X元素ということがある。)や、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、Y元素ということがある。)が含まれるのが望ましい。通常、モリブデン12原子に対して、リン、バナジウム、X元素及びY元素が、それぞれ3原子以下の割合で含まれる触媒が、好適に用いられる。
【0016】
かかるメタクリル酸製造用触媒がメタクリル酸の製造に使用されたり、熱履歴を受けたりすると、活性点の分解や比表面積の減少等が起こり、その結果、触媒活性は低下する。本発明では、触媒活性の低下した、いわゆる劣化触媒を再生処理の対象とするものである。尚、活性点の分解については、XRD(X線回折)分析を行い、触媒の分解物である三酸化モリブデンが検出されるか否かで確認することができ、触媒の比表面積については、BET比表面積測定により求めることができる。
【0017】
再生処理では、まず、劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を調製する。調製法については特に制限はなく、例えば、劣化触媒を水に懸濁させた後、アンモニウム根及び硝酸根の原料化合物を加えてもよいし、アンモニウム根及び硝酸根を含む水溶液に上記劣化触媒を懸濁させてもよい。
【0018】
上記劣化触媒が成形体である場合には、そのまま懸濁させてもよいし、成形体を粉砕して懸濁させてもよい。ただし、該成形体に触媒の強度を発現させるファイバー等が含まれている場合には、切断されると強度低下が懸念されるため、粉砕する際には、ファイバー等が切断されないようにすることが好ましい。
【0019】
アンモニウム根の原料化合物としては、例えば、アンモニアや、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはアンモニア及び硝酸アンモニウムが挙げられる。硝酸根の原料化合物としては、例えば、硝酸や、硝酸アンモニウムのような硝酸塩等が挙げられ、好ましくは硝酸及び硝酸アンモニウムが挙げられる。これら原料化合物の使用量は適宜調整され、上記混合物中のモリブデン12モルに対し、アンモニウム根は通常0.1〜15モル程度、硝酸根は通常0.1〜15モル程度となるようにすればよい。
【0020】
水の供給源としては、通常イオン交換水が用いられる。水の使用量は、上記混合物中のモリブデン1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
【0021】
上記混合物は、次いで乾燥されるが、乾燥前に、熱処理を施しておくのが好ましい。
【0022】
上記混合物の乾燥方法としては、この分野で通常用いられる方法、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法等が挙げられる。
【0023】
乾燥前に熱処理を行う場合、かかる熱処理は密閉容器内で行うことができ、熱処理温度は100℃以上であるのが好ましい。また熱処理時間は、通常0.5時間以上であり、好ましくは2時間以上、より好ましくは2〜10時間である。
【0024】
得られた乾燥物は、打錠成形や押出成形等によって、リング状、ペレット状、球状、円柱状等に成形される。この際、強度を高めるために、必要に応じてセラミックファイバーやグラスファイバー等の成形助剤を用いてもよい。
【0025】
本発明では、得られた成形体を、40〜100℃で、0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらす。このような条件で処理することにより、触媒活性やその持続性を良好に回復することができる。該処理は、例えば、調温、調湿された槽内にて行ってもよいし、調温、調湿されたガスを成形体に吹き付けることで行ってもよい。また、該処理の雰囲気ガスとしては、通常、空気が用いられるが、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。
【0026】
上記処理温度があまり低いと、得られる再生触媒の活性が十分でなく、あまり高いと、得られる再生触媒の選択性が十分でない。上記処理時間があまり短くても、あまり長くても、得られる再生触媒の活性が十分でない。上記処理時の相対湿度があまり低いと、得られる再生触媒の選択性が十分でなく、あまり高いと、得られる再生触媒の活性が十分でなく、また、処理後の成形体の強度が十分でないため、取扱性が悪くなる。
【0027】
上記処理後の成形体を焼成することで再生触媒を得ることができる。かかる焼成は、酸素等の酸化性ガスの雰囲気下で行われてもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行われてもよく、300℃以上で行われることが好ましい。また、かかる焼成の前に、上記酸化性ガス又は上記非酸化性ガスの雰囲気下、180〜300℃程度の温度で保持して、熱処理(前焼成)を行うのが好ましい。
【0028】
かくして得られる再生触媒は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものが好ましく、さらにケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものがより好ましい。また、上記熱処理(前焼成)の際にケギン型へテロポリ酸塩の構造が形成されるようにするのがより好適である。
【0029】
かかる再生触媒は、新触媒とほぼ同程度の触媒活性及びその持続性を有する。そして、この再生触媒存在下、メタクロレイン等の原料化合物を気相接触酸化反応させることにより、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造することができる。
【0030】
メタクリル酸の製造は、通常、固定床多管式反応器に触媒を充填し、これにメタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる原料化合物と酸素を含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床のような反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気が用いられ、また原料ガス中には、上記原料化合物及び酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれうる。
【0031】
例えば、メタクロレインを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は500〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPa、の条件下で反応が行われる。なお、原料のメタクロレインは必ずしも高純度の精製品である必要はなく、例えば、イソブチレンやt−ブチルアルコールの気相接触酸化反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを用いることもできる。
【0032】
また、イソブタンを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のイソブタン濃度は1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPa、の条件下で反応が行われる。イソ酪酸やイソブチルアルデヒドを原料として用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合と、ほぼ同様の反応条件が採用される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。各例で使用した空気は水分2容量%(大気相当)を含むものであり、また、各例で使用した窒素は実質的に水分を含まないものである。尚、転化率、選択率は次のとおり定義される。
【0034】
転化率(%)=反応したメタクロレインのモル数÷供給したメタクロレインのモル数×100。選択率(%)=生成したメタクリル酸のモル数÷反応したメタクロレインのモル数×100。
【0035】
参考例1(新触媒の調製と新触媒の評価)
40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム[CsNO3]38.2kg、75重量%オルトリン酸27.4kg、及び70重量%硝酸25.2kgを溶解し、これをA液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブデン酸アンモニウム4水和物[(NH46Mo724・4H2O]297kgを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]8.19kgを懸濁させ、これをB液とした。A液とB液を40℃に調整し、攪拌下、B液にA液を滴下した後、密閉容器中120℃で5.8時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン[Sb23]10.2kg及び硝酸銅3水和物[Cu(NO32・3H2O]10.2kgを、イオン交換水23kgに懸濁させて添加した後、密封容器中、120℃で5時間攪拌した。こうして得られた混合物をスプレードライヤーにて乾燥し、この乾燥粉末100重量部に対して、セラミックファイバー4重量部、硝酸アンモニウム13重量部、及びイオン交換水9.7重量部を加えて混練し、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。この成形体を、温度90℃、相対湿度30%にて3時間乾燥した後、空気気流中220℃で22時間、空気気流中250℃で1時間の順に熱処理(前焼成)し、その後、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。更に、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却してから、触媒を取り出した。この触媒は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムをそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4の原子比で含むケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものであった。
【0036】
〔XRD測定による三酸化モリブデンの検出〕
上記で得られた触媒を、粉末法にてXRD測定し、主成分であるケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩に相当するXRDのd値=3.38〜3.41の強度に対する、三酸化モリブデン(MoO3)に相当するXRDのd値=3.24〜3.26のピーク強度の強度比(%)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
〔BET比表面積測定〕
上記で得られた触媒約1gを、真空脱気した後、120℃で脱水し、BET比表面積を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
〔触媒の活性試験〕
上記で得た触媒9gを、内径15mmのガラス製マイクロリアクターに充填し、この中に、メタクロレイン、空気、スチーム及び窒素を混合して調製したメタクロレイン4容量%、分子状酸素12容量%、水蒸気17容量%、窒素67容量%の組成の原料ガスを、空間速度670h-1で供給して、炉温(マイクロリアクターを加熱するための炉の温度)280℃で反応を行い、反応開始から1時間経過時の転化率と選択率を求めた。次に、触媒活性の持続性を評価すべく、上記と同じ組成の原料ガスを、上記と同じ空間速度で供給して、炉温355℃で反応を行い、触媒を強制劣化させた後、再度、上記と同じ組成の原料ガスを、上記と同じ空間速度で供給して、炉温280℃で反応を行い、この反応開始から1時間経過時の転化率と選択率を求めた。強制劣化前後での転化率と選択率を表1に示す。
【0039】
参考例2(劣化触媒の取得と劣化触媒の評価)
参考例1で調製した新触媒を、空気気流下450℃で5時間処理し、劣化触媒を調製した。得られた劣化触媒について、参考例1と同様、XRD測定、BET比表面積測定、活性試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0040】
実施例1(触媒の再生と再生触媒の評価)
80℃に加熱したイオン交換水400gに参考例2で取得した劣化触媒200gを懸濁させ、1時間保持した。この液を室温まで放冷したのち、硝酸アンモニウム[NH4NO3]60.2gを添加し70℃に昇温して同温度で1時間保持した。その後、25重量%アンモニア水17.9g添加した。70℃で1時間保持した後、温度を下げた。得られた混合物を110℃で乾燥し、得られた乾燥物100重量部に対しイオン交換水6重量部を加えて混練し、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。この成形体を、温度90℃で、3時間、相対湿度30%の雰囲気下にさらした後、空気気流中220℃で22時間、空気気流中250℃で1時間の順に熱処理(前焼成)し、その後、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。更に、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却してから、触媒を取り出した。得られた再生触媒について、参考例1と同様、XRD測定、BET比表面積測定、活性試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0041】
実施例2(触媒の再生と再生触媒の評価)
実施例1において、110℃で乾燥する前の混合物を、密閉容器中120℃で5時間攪拌し熱処理した以外は、実施例1と同様の操作を行った。XRD測定、BET比表面積測定、活性試験の結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
実施例1において、成形体を、温度90℃で、3時間、相対湿度30%の雰囲気下にさらさなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。XRD測定、BET比表面積測定、活性試験の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
参考例1の新触媒に対し、参考例2の劣化触媒は触媒分解生成物である三酸化モリブデンの増加、比表面積の減少が起きており、転化率も著しく低下した。かかる劣化触媒に対し、成形体を温度90℃で、3時間、相対湿度30%の雰囲気下に処理した実施例1の再生触媒においては、三酸化モリブデン強度比及び転化率について良好に回復していた。更に、乾燥前の混合物に120℃で、5時間の熱処理を行った実施例2の再生触媒においては、三酸化モリブデン強度比及び転化率について良好に回復し、加えて、強制劣化後の転化率も高く、触媒活性の持続性も優れたものであった。一方、成形体に対する処理、及び、乾燥前の混合物に対する熱処理を行っていない比較例1の触媒では、三酸化モリブデンが多く残存し、また、強制劣化後の転化率も低く、触媒活性の持続性は十分には回復していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、劣化触媒、アンモニウム根、硝酸根及び水を含む混合物を乾燥した後、成形し、得られた成形体を40〜100℃で、0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらし、次いで焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項2】
前記混合物を100℃以上で2時間以上熱処理した後、乾燥する請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
ヘテロポリ酸化合物が、バナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムから選ばれる元素とを含む請求項1又2に記載の再生方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付す、メタクリル酸の製造方法。



【公開番号】特開2008−86928(P2008−86928A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271586(P2006−271586)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】