説明

メタリック塗料組成物、複層塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品

【課題】ハイライトで光輝感が強く、黄味の少なく且つ緻密感に優れた外観を有する塗色が得られる塗料組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が5〜14μmの光輝性顔料(A)を0.1〜50質量部含み、さらにアルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が15〜25μmの光輝性顔料(B)を含んでなるメタリック塗料組成物であって、上記光輝性顔料(A)と(B)の質量比が10/1〜1/3であるメタリック塗料組成物、複層塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性に優れたメタリック塗料組成物、複層塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、素材の保護及び美観の付与である。近年、特に自動車外板、家電製品等の分野においては、消費者の美観に対する要求が多様化してきており、従前のソリッド塗色に加えて、アルミニウム顔料、マイカ顔料等の光輝性顔料を用いたメタリック塗色やパール塗色が多く用いられるようになってきた。
【0003】
これらのメタリック塗色やパール塗色の中でも白色度が高い所謂ホワイトパール塗色が、高級車用として特に人気が高い。上記ホワイトパール塗色は、通常、二酸化チタン顔料を含むベース塗膜、鱗片状基材をニ酸化チタンで被覆した光輝性顔料を含むメタリックベース塗膜、トップクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜によって構成される。
【0004】
ホワイトパール塗色の中でも、特にハイライトの強い光輝感を表現するために、鱗片状基材としてアルミナフレークを使用した光輝性顔料が使用される場合がある。このタイプの光輝性顔料は、ハイライトで強い光輝感を発するものであるが、上塗り塗料に使用する光輝性顔料としては、若干大きめの粒径であるため、粒子感を生じ、緻密感が不足する場合があった。
【0005】
そこで、緻密感が要求されるホワイトパール塗色には、これまで比較的小粒径の光輝性顔料が使用されてきた。一般に小粒径の光輝性顔料は、前記の鱗片状基材としてアルミナフレークを使用した光輝性顔料と比較するとハイライトの光輝感が弱い問題点があった。また、小粒径の光輝性顔料として一般的な基材として天然マイカを使用する光輝性顔料は、干渉色の補色の黄色を発する場合があり、塗色の高級感を損なう問題点を有していた。
【0006】
特許文献1には、基材上に、カラーベース塗膜、マイカベース塗膜及びクリヤー塗膜を、順次ウエットオンウエットで形成するパール塗膜の形成方法において、上記マイカベース塗膜がシリカ粒子を、0.01〜5%の顔料濃度(PWC)で含有することを特徴とするパール塗膜の形成方法について記載されている。マイカベース塗料による塗膜中でマイカ顔料の表面にシリカ粒子がほぼ均一に分散されることにより、マイカ顔料の表面でシリカ粒子による光の乱反射が起こり、マイカベース塗膜として見た場合の光反射角度または光反射強度を乱反射させ変化させる効果が生じて、シェード位置から見た場合の白濁感、無色化を抑制し、どの方向から見てもパール感、光輝感、キラキラ感を有するパール塗膜を形成するものであるが、ハイライトにおける強い光輝感が得られるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−170559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ハイライトで光輝感が強く、緻密感に優れた黄味の少ない外観の塗膜が得られるメタリック塗料組成物、複層塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1.ビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が5〜14μmの光輝性顔料(A)を0.1〜50質量部含み、さらにアルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が15〜25μmの光輝性顔料(B)を含んでなる塗料組成物であって、上記光輝性顔料(A)と(B)の質量比が10/1〜1/3であることを特徴とするメタリック塗料組成物、
2.さらに天然マイカ、人造マイカ、シリカフレーク、ガラスフレークから選択された鱗片状基材に酸化チタンが被覆された干渉パール顔料(C)を含むことを特徴とする1項記載のメタリック塗料組成物、
3.1項又は2項記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する複層塗膜形成方法、
4.メタリック塗料組成物の塗装を複数のステージで行なう複層塗膜形成方法であって、第1ステージで塗装するメタリック塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の全含有量と、第2ステージで塗装するメタリック塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の全含有量との比率が、固形分として1/1.5〜1/10であることを特徴とする3項記載の複層塗膜形成方法、
5.3項又は4項記載の複層塗膜形成方法で得られる塗膜構造、
6.3項又は4項記載の複層塗膜形成方法で得られる塗装物品
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメタリック塗料組成物は、アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された光輝性顔料を2種類含んでなるものであって、ハイライトで光輝感が強く、黄味の少なく且つ緻密感に優れた外観の塗膜が得られるものであり、特に自動車外板、家電製品等の高級外観を求められている分野に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のメタリック塗料組成物は、アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された光輝性顔料を含んでなる。アルミナフレーク基材とは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物(例えば酸化チタン)を含有するものであってもよい。
【0012】
上記アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された光輝性顔料は、酸化チタンを被覆した後にさらに分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0013】
本発明のメタリック塗料組成物は上記の如きアルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された光輝性顔料を2種類含んでなるものである。一方(A)は粒径が5〜14μmであり、好ましくは粒径が7〜12μmのもの、特に好ましくは7〜11μmのものである。他方(B)は粒径が15〜22μmであり、好ましくは粒径が16〜21μmのもの、特に好ましくは17〜20μmのものである。双方共に厚さは0.05〜0.5μmのものである。ここでいう粒径及び厚さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察して得られた数値を意味する。市販されているものとしては、XirallicTMシリーズ(製品名、メルク社製)を挙げることができる。
【0014】
本発明のメタリック塗料組成物における前記光輝性顔料(A)及び(B)2種類の含有量は、一方(A)が塗料組成物中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して固形分として0.1〜50質量部の範囲内であり、好ましく1〜30質量部の範囲内であり、より好ましくは3〜25質量部の範囲内である。また、上記光輝性顔料(A)と(B)の質量比は、固形分として10/1〜1/3の範囲内であり、好ましくは10/1.5〜10/10の範囲内、より好ましくは5/1〜5/4の範囲内である。
【0015】
本発明のメタリック塗料組成物には、さらに天然マイカ、人工マイカ、ガラスフレーク、シリカフレークから選択された鱗片状基材に酸化チタンが被覆された干渉パール顔料(C)を配合することができる。また干渉パール顔料は、前記鱗片状基材に被覆せしめる酸化チタンの量すなわち鱗片状基材表面に形成される酸化チタン層の膜厚によって、干渉色の発色を制御することができるものである。特に青色の干渉色を発現する干渉パール顔料を配合せしめることが好ましい。
【0016】
通常、ホワイトパール塗色においては、若干の青みがあるとより白さを感じるとされている。そのためには、メタリックベース塗料に青色を呈する着色顔料を少量配合したり、青色の干渉色を発現する干渉パール顔料を配合することが考えられる。青色の着色顔料を少量配合する方法は、青色顔料の分散度によって色味が変動したり、青色顔料の変退色によって塗色の色が劣化する問題点がある。また、青色の干渉色を発現する干渉パール顔料を配合する方法は、特に天然マイカを基材とした光輝性顔料を多く含む塗色では、干渉パール顔料の補色である黄色が天然マイカの若干の黄味で増幅され、シェードで黄味が生じる欠点があった。本発明の塗料組成物は、黄味がないアルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された光輝性顔料を使用するため、青色の干渉色を発現する干渉パール顔料を配合することができる。
【0017】
本発明のメタリック塗料組成物における前記青色の干渉色を発現する干渉パール顔料の含有量は、塗料組成物中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して固形分として0.05〜50質量部の範囲内であり、好ましく0.1〜30質量部の範囲内であり、より好ましくは0.2〜10質量部の範囲内である。
【0018】
本発明のメタリック塗料組成物には、光輝性顔料のほかにその他の着色顔料を含有することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。該着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。
【0019】
上記着色顔料を使用する場合、その配合量は、得られる塗膜の着色力や仕上がり外観の点から塗料組成物中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対してに対して、50質量部以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜20質量部である。
【0020】
本発明のメタリック塗料組成物に使用されるビヒクル形成樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物が好ましく、具体的には、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散させて使用することができる。
【0021】
さらに、本発明のメタリック塗料組成物には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0022】
次に本発明の複層塗膜形成方法について説明する。
【0023】
本発明方法において、基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれら金属の合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等の素材を挙げることができる。これら素材に脱脂処理や表面処理を施した処理素材を基材とすることもできる。さらに、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させた塗膜形成材を基材とすることもでき、塗膜形成材が特に好ましい。
【0024】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与したり、さらに後述の中塗り塗膜や上塗り塗膜と素材との密着性を向上させるために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、硬化させることによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0025】
また、上記中塗り塗膜とは、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、硬化させることによって得ることができる。この中塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を含有する有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0026】
本発明方法において、基材として、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を形成させたものを使用する場合においては、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に前記メタリック塗料組成物を塗装することができるが、また、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、該メタリック塗料組成物を塗装することもでき、本発明方法は、この場合も包含する。
【0027】
本発明方法では、上述の如き基材上に前述のメタリック塗料組成物を塗装することができる。または、基材の色を隠蔽し、複層塗膜における色調を決定するカラーベース塗料を予め塗装した後にその硬化若しくは未硬化の塗膜面にメタリック塗料組成物を塗装してもよい。
【0028】
前記カラーベース塗料は、着色顔料及びビヒクル形成樹脂組成物を含有する。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。該着色顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等を挙げることができる。
【0029】
上記着色顔料の配合量は、得られる塗膜の着色力や仕上がり外観の点からカラーベース塗料のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1〜30質量部である。
【0030】
上記ビヒクル形成樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物が好ましく、具体的には、例えば、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散させて使用することができる。
【0031】
さらに、前記カラーベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0032】
本発明において、カラーベース塗料は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性の点から、硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。
【0033】
本発明方法においては、カラーベース塗料を塗装、硬化させた塗膜上にメタリックベース塗料組成物を塗装することができるが、カラーベース塗料を加熱硬化させることなく未硬化状態の塗膜上に前述のメタリック塗料組成物を塗装することができる。カラーベース塗料の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で硬化乾燥させることができる。
【0034】
本発明において、前述のメタリック塗料組成物は、特に光輝性顔料を塗膜面と平行に配列せしめるために複数のステージで塗装して塗膜を形成せしめることが好ましい。複数のステージに分けて塗装する方法とは、本来1回の塗装で形成する塗膜を、複数段階(ステージ)の塗装で形成させる方法であって、各段階の間にセッティング時間を取る方法を意味する。複数のステージで塗装する場合、その回数は特に限定されるものではないが、塗装作業の効率と、形成される塗膜の仕上がり性の点から2回であることが好ましい。2回のステージで塗装する場合は、第1ステージで塗装する塗料と第2ステージで塗装する塗料とは同一のものであってもよいが、光輝性顔料を塗膜面と平行に配列せしめる効果をより高める点から異なるものであってもよく、第1ステージで塗装する塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の含有量と、第2ステージで塗装する塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の含有量との比率が、固形分として1/1.5〜1/10の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1/2〜1/6の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは1/2.5〜1/4の範囲内である。
【0035】
2回のステージで塗装する場合においては、第1ステージの塗装で得られる塗膜の乾燥膜厚と第2ステージの塗装で得られる乾燥膜厚の比率は、10/1〜1.2/1の範囲内となるように形成することが好ましく、より好ましくは7/1〜1.5/1の範囲内、特に好ましくは5/1〜2/1の範囲内である。具体的には、乾燥膜厚が15μmの場合、例えば第1ステージの乾燥膜厚は10〜12μmとし、第2ステージは3〜5μmとなるように塗装することができる。
【0036】
また、2回のステージで塗装する場合においては、第1ステージで塗装する塗料は、不揮発分を15〜50質量%の範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは20〜40質量%の範囲内、特に好ましくは23〜35質量%の範囲内である。第2ステージで塗装する塗料は、不揮発分を2〜25質量%の範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは5〜20質量%の範囲内、特に好ましくは7〜15質量%の範囲内である。第1ステージで塗装する塗料の不揮発分を高く、第2ステージで塗装する塗料の不揮発分を低くすることによって、光輝性顔料を塗膜面と平行に配列せしめる効果をより高めることができる。
【0037】
さらに、2回のステージで塗装する場合においては、第1ステージの塗装終了後、第2ステージ塗装との間のセッティング時間は、通常30秒〜5分の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは45秒〜3分の範囲内、特に好ましくは1分〜2分の範囲内である。
【0038】
本発明において、メタリックベース塗料は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性、光輝感の点から、硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。
【0039】
本発明方法においては、メタリックベース塗料組成物を塗装、硬化させた塗膜上に後述のトップクリヤー塗料を塗装することができるが、メタリックベース塗料組成物を加熱硬化させることなく未硬化状態の塗膜上に前述のトップクリヤー塗料を塗装することができる。メタリックベース塗料組成物の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で硬化乾燥させることができる。
【0040】
本発明においては、前記メタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上にさらにトップクリヤー塗料を1層もしくは2層以上塗装して、トップクリヤー塗膜を形成させることができる。
【0041】
本発明のトップクリヤー塗料としては、従来公知のものが制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0042】
本発明におけるトップクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、クリヤー塗料組成物中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30重量部以下、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0043】
本発明におけるトップクリヤー塗料は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。
【0044】
本発明においては、前記カラーベース塗料及び/又はメタリック塗料組成物を加熱硬化せしめることなくトップクリヤー塗料を塗装した場合においては、トップクリヤー塗料を塗装後、これらの塗料を同時に加熱硬化せしめることができる。トップクリヤー塗料の塗膜それ自体は約70〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1〜6及び比較例1〜5
(1)基材の調整
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、アミン変性エポキシ樹脂系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0046】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ル−ガベ−ク中塗りグレ−」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系有機溶剤型塗料)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を基材とした。
(2)塗料の調整
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなるビヒクル形成樹脂組成物100質量部あたり、光輝材及び必要に応じて着色顔料を固形分として表1に示す比率で配合して攪拌混合し、有機溶剤型塗料を調整し、各実施例及び比較例に使用するカラーベース塗料、メタリックベース塗料を作成した。
【0047】
また、トップクリヤー塗料は、クリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)塗装に適正な粘度に希釈し、固形分約30質量%のクリヤー塗料を作成した。
【0048】
【表1】

【0049】
(3)試験板の作成
以下の手順にて、カラーベース塗料、メタリックベース塗料を塗装し、トップクリヤー塗料を塗装して試験板とした。
(カラーベース塗料の塗装)
(1)で作成した中塗り塗板に、(2)で作成したカラーベース塗料を有機溶媒で希釈して固形分25質量%に調整し、ミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、30μmの膜厚の硬化塗膜を得た。
(メタリックベース塗料の塗装)
実施例1、2及び比較例1、2については、カラーベース塗膜上に、(2)で作成したメタリックベース塗料を有機溶媒で希釈して固形分25質量%に調整し、REAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、15μmとなるように塗装した。
【0050】
実施例3〜6及び比較例3〜5については、カラーベース塗膜上に、(2)で作成したメタリックベース塗料をREAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、15μmとなるように2ステージで塗装した。第1ステージでは、(2)で作成したメタリックベース塗料を有機溶媒で希釈して固形分30質量%に調整し、REAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、10μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて60秒放置し(セッティング)、第2ステージの塗装を行なった。第2ステージでは、(2)で作成したメタリックベース塗料を有機溶媒で希釈して固形分10質量%に調整し、REAガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、10μmとなるように塗装した。
(トップクリヤー塗料の塗装)
メタリックベース塗料を塗装後に、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面に、(2)で作成したトップクリヤー塗料をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度20℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
(4)評価試験
(3)で得られた試験板について、直射日光があたらない屋外で目視にて、光輝感を評価した。また、得られた複層塗膜をそれぞれMA−68II(商品名、多角度分光光度計、X−Rite社製)にて測色して、ハイライトの明度を表わすIVを得た。表2にその結果を示した。
【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のメタリック塗料組成物、塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、アルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が5〜14μmの光輝性顔料(A)を0.1〜50質量部含み、さらにアルミナフレーク基材に酸化チタンが被覆された粒径が15〜25μmの光輝性顔料(B)を含んでなる塗料組成物であって、上記光輝性顔料(A)と(B)の質量比が10/1〜1/3であることを特徴とするメタリック塗料組成物。
【請求項2】
さらに天然マイカ、人造マイカ、シリカフレーク、ガラスフレークから選択された鱗片状基材に酸化チタンが被覆された干渉パール顔料(C)を含むことを特徴とする請求項1記載のメタリック塗料組成物。
【請求項3】
被塗物に請求項1又は2記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する複層塗膜形成方法。
【請求項4】
メタリック塗料組成物の塗装を複数のステージで行なう複層塗膜形成方法であって、第1ステージで塗装するメタリック塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の全含有量と、第2ステージで塗装するメタリック塗料組成物中に含まれる光輝性顔料の全含有量との比率が、固形分として1/1.5〜1/10であることを特徴とする請求項3記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の複層塗膜形成方法で得られる塗膜構造。
【請求項6】
請求項3又は4記載の複層塗膜形成方法で得られる塗装物品。

【公開番号】特開2007−70424(P2007−70424A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257282(P2005−257282)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】