説明

メタルハライドランプおよびランプ点灯装置

【課題】陽極側の封止部とアウターリードの接合部における石英ガラスのクラックを防ぐとともに、高効率化を実現する。
【解決手段】放電空間14の両端に封止部12a、12bを有する放電容器11内に陽極3a2、陰極3b2を配置し、これら基部側端部に一端部を接合し、封止部12a、12bにより金属箔3a1,3b1を気密に封着させる。金属箔の他端部には外部リード3a3,3b3を接合する。放電容器11内にハロゲン化物と希ガスとを含み、水銀なしの薬品2を封入する。放電容器11内の電流が一定方向で、放電容器内の陽極と陰極間の真中を基準として陰極側の内面に付着の薬品2の面積が陽極側の内面に付着している面積より2倍以上大きく、放電容器11内の陽極と陰極の封止部12aと12b間のバルブ長Lを、7.2mm≦L≦8.3mmとしたとき、放電容器に封入されている薬品M(mg)は、5/3・L−10.5≧M≧2/3・L−4.5とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプ、特に自動車前照灯用の直流点灯水銀フリーのメタルハライドランプおよびそのランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水銀を封入しない、いわゆる水銀フリーのメタルハライドランプでは、封入している金属ハロゲン化物は点灯中にアーク内で金属とハロゲンに分解する。それぞれは一部イオン化して、金属は陽イオンに、ハロゲンは陰イオンとなる。すなわち、金属ハロゲン化物をヨウ化亜鉛(ZnI)とした場合、ZnとIがアーク中に存在する。
【0003】
水銀フリーランプでは、ランプ電圧形成物質として蒸気圧の大きい第2ハロゲン化物(たとえば、ヨウ化亜鉛)を封入するのでハロゲン陰イオン(I)のランプ中の量は大きい。このハロゲン陰イオン(I)は、直流点灯では陽極に引かれ、その後電極軸と石英ガラスの間を通過して封着材であるMo(モリブデン)箔に到達し、Mo箔と反応してヨウ化モリブデン(MoI)が生成する。このときハロゲン陰イオン(I)は、中性のハロゲン(I)になっているものと推定される。ヨウ化モリブデン(MoI)は、Moよりもずっと密度が小さいため、Moがヨウ化モリブデン(MoI)に変化するときに体積が増加して周囲の石英ガラスに大きな応力を及ぼす。
【0004】
自動車前照灯のように頻繁で、しかも始動時に大電流を通過させるランプでは、上記の反応が生じると非常に短時間で石英ガラスにクラックが発生し、放電容器はリークして不点となる。そのため直流点灯の陽極側のMo箔は、交流点灯の両側のMo箔や直流点灯の陰極側のMo箔よりもずっとヨウ化モリブデン(MoI)になり易く、結果として石英ガラスのリーク、不点が非常に生じやすくなる。この対策として、陽極側のMo箔の表面を金属、金属化合物でコーティングすることにより改善できることが示されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−260581公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の技術は、自動車用前照灯のように点滅が頻繁であるとランプの立ち上がりときには温度の高い陽極側の薬品が急速に蒸発し、陽極側に近いのでその中のヨウ素陰イオン(I)は陽極側に強く引かれて陽極側のMo箔を侵食することになる。
【0006】
陽極側のMo箔をコーティングしたとしても、規格上の寿命試験(ヨーロッパ120分モード)では1500〜2000時間程度の寿命があるものの、それ以上の例えば2500時間以上の寿命を得ることができない。これは、陰極側の放電容器の薬品付着面積が、陽極側放電容器の薬品付着面積の2倍以下のときに生じ、バルブ長と関係しており、バルブ長が7.2mm以下に相当する。この関係は内径が2.2mm〜2.8mmの範囲で成立する。このため、バルブ長は7.2mm以上が適しており、また、陰極側の内面に付着している薬品の面積が陽極側の内面に付着している面積の2倍以上であることが必要条件である。
【0007】
しかし、このような場合には温度の低い陰極側に薬品が多く付着しているので、点灯中の放電容器に付着している薬品の平均温度は低くなり、ランプの光効率は放電容器に付着している薬品の平均温度に正比例することから、光効率は低いものとなっている。
【0008】
この発明の目的は、陽極側のMo箔とアウターリードとの接合部における石英ガラスのクラックを防ぐとともに、高効率を得るために、ランプ長と薬品封入量の関係を好適に設定することで、長寿命で高効率が得られる直流点灯方式の水銀フリーのメタルハライドランプおよびそのランプ点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、この発明のメタルハライドランプは、放電空間と該放電空間の両端に設けられた封止部とを有する放電容器と、前記放電空間内に対向して配置された陽極および陰極と、前記陽極および陰極の基部側端部にそれぞれ一端部が接合され、かつ前記封止部により気密に封着された金属箔と、前記金属箔の他端部にそれぞれ接合され、かつ前記封止部外に導出された一対の外部リードと、前記放電容器内に封入され、ハロゲン化物および希ガスとを含み、かつ本質的に水銀を含まない薬品と、を具備し、前記放電容器内に流れる電流の向きが一定方向であり、前記放電容器内の陽極と陰極間の真中を基準として前記陰極側の内面に付着している薬品の面積が、前記陽極側の内面に付着している面積より2倍以上大きく、前記放電容器内の前記陽極および陰極が前記封止部で封止される間のバルブ長Lを、7.2mm≦L≦8.3mmとしたときに、前記放電容器に封入されている薬品M(mg)は、
5/3・L−10.5≧M≧2/3・L−4.5
の関係を満足してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、陽極側の封止部とアウターリードとの接合部における石英ガラスのクラックを防ぐとともに、高効率を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1、図2は、この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための、図1は概略的な構成図、図2は図1の要部を拡大して示した構成図である。
【0013】
1はメタルハライドランプを構成する内管であり、この中央部の放電容器11の両端部には、板状の封止部12a、12bが形成されており、その両端には、筒状の非封止部13a,13bが形成されている。なお、内管1は耐熱性と透光性に優れた材料であれば使用でき、例えば石英ガラスを使用可能である。
【0014】
放電容器11の内部には、軸方向において、中央部が略円柱状、その両端部がテーパ状の放電空間14が形成されている。この放電空間14の容積は、ショートアーク型の放電ランプでは100μl以下、自動車の前照灯用として用途を指定する場合には、放電空間の容積は10μl〜40μlであるのが望ましい。
【0015】
放電空間14には、金属ハロゲン化物および希ガスとからなる薬品2が封入され、薬品には本質的に水銀を含まないものとする。次に、薬品の具体例について説明する。
【0016】
まず、ハロゲン化金属としては、種々の金属元素のハロゲン化物を用いることができ、例えば主として発光に寄与する金属の第1のハロゲン化物が使用される。第1のハロゲン化物としては、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)および希土類金属から選ばれる一種または複数種の金属元素のハロゲン化物を用いる。NaやScは、特に高効率な発光物質である。
【0017】
ハロゲン化金属は、蒸気圧が相対的に高く、第1のハロゲン化物の金属に比較して可視光域に発光しにくい金属の一種または複数種のハロゲン化物を、第2のハロゲン化物として含むことができる。可視光域に発光しにくい金属とは、第1のハロゲン化物の金属よりエネルギー準位が高く、第1のハロゲン化物の金属が主として発光する状態であればよい。第2のハロゲン化物を添加することで、水銀を含むランプに近いランプ電圧を得ることができ、水銀フリーメタルハライドランプの電気特性や発光特性の改善が可能となる。第2のハロゲン化物は、色度改善等に対しても寄与する。
【0018】
第2のハロゲン化物としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)および錫(Sn)から選ばれる一種または複数種の金属のハロゲン化物が用いられる。
【0019】
ハロゲン化金属を構成するハロゲンとしては、ヨウ素(I)が反応性の低さにおいて最も適当であり、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)の順に反応性が強くなるが、必要に応じ適宜選択可能である。また、ヨウ化物と臭化物のように、異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0020】
ハロゲン化金属の封入量については、例えば主として発光に寄与する第1のハロゲン化物は、放電容器の内容積(放電空間の容積)1cc当たり5mg〜110mgの範囲で封入することができる。さらに好適な範囲は、放電容器の内容積1cc当たり5mg〜35mgである。このような範囲において、光束の立ち上がりを早くすることができるとともに、光色を安定させることができる。第2のハロゲン化物は、放電容器の内容積1cc当たり0.05mg〜200mgの範囲で封入することができる。他のハロゲン化物については適宜調整される。
【0021】
また、希ガスとしては、始動用および緩衝ガスとしての他に、始動直後には主発光を担うように作用する。一般的には放電容器を透過しなければ特に限定されないが、放電容器が石英ガラスで形成される場合は、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)が推奨される。始動直後の発光を希ガスに依存する場合には、最も発光効率が高いのはキセノンであるため、キセノンが最適である。
【0022】
希ガスの封入圧力を高くすると、ランプ電圧が高くなり、同一ランプ電流に対してランプ入力を大きくして、光束の立ち上がり特性を向上させることができる。光束の立ち上がり特性が良いことは、どのような使用目的であっても好都合であるが、特に自動車用前照灯装置や液晶プロジェクタ等では極めて重要である。希ガスは例えば3気圧以上の圧力で封入され、特に5〜15気圧の範囲で封入することが好ましい。
【0023】
さらに、「本質的に水銀が封入されていない」とは、水銀が全く封入されない状態に限らず、放電容器の内容積1cc当たり2mg未満の水銀、好ましくは1mg以下の水銀が存在することの許容を意味する。しかし、水銀が封入されないことは環境上望ましいことである。従来の水銀蒸気により放電ランプの電気特性を維持する場合、短アーク形では放電容器の内容積1cc当たり20mg〜40mg、場合によっては50mg以上の水銀を封入していたことからすれば、この実施形態で使用される水銀量は、本質的に少ないといえる。
【0024】
再び図1において、封止部12a、12bの内部には、マウント3a、3bが封止されている。マウント3a,3bは、金属箔3a1,3b1、陽極3a2、陰極3b2、外部リード3a3,3b3からなる。金属箔3a1,3b1は、例えば、モリブデン(Mo)のような高融点の短冊形状の薄い金属板である。
【0025】
陽極3a2は、例えばドープタングステン製で軸形状をしており、その先端には球31を形成している。また、陰極3b2は軸形状をし、材料は例えば1.0%トリアが含有されたタングステンである。
【0026】
図3は、この発明のメタルハライドランプを自動車用前照灯に適用した場合について説明するための概略的な構成図であり、図1と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでは異なる部分を中心して説明する。
図3において、メタルハライドランプの主要部を構成する放電容器11は、2重管構造となっており、放電容器11内部には例えば石英ガラス製の内管1が配置されている。内管1はランプ軸方向に細長い形状であって、その略中央部には略楕円形の放電容器11が形成されている。放電容器11の両端部には、板状の封止部12a,12bが形成されており、その両端には、筒状の非封止部13a,13bが形成されている。
【0027】
放電容器11の非封止部13a側には、ソケット7が接続される。それらの接続は、非封止部13a付近の外管9外周面に装着された金属バンド71を、ソケット7の内管1保持側の開口端に形成された4本の金属製の舌片72(図3では、2本を図示)により挟持することによって行なわれている。そして、接続をさらに強化するために、金属バンド71および舌片72の接触点を溶接している。なお、ソケット7の底部には外部リード3a3と図示しないサポートワイヤがそれぞれ接続される端子が形成される。
【0028】
一端が金属箔3a1,3b1の端部に接続された外部リード3a3,3b3の他端は、管軸に沿って封止部12a,12bの外部に延出している。外部に延出した外部リード3b3には、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ6の一端が接続され、その他端は、ソケット7の方向に延出している。そして、管軸と平行するサポートワイヤ6の部分には、セラミックからなる絶縁スリーブ8が被覆されている。なお、マウント3aと3bはソケット7に対する配置を逆にすることも可能である。
【0029】
上記で構成された内管1の外側には、管軸に沿って石英ガラスに紫外線の遮断作用を有する金属酸化物が添加された筒状の外管9が内管1と略同心状に設けられている。内管1と外管9の接続は、内管1両端の筒状の非封止部13a,13b付近に外管9を溶着することにより行なわれており、内部空間は気密状態である。その空間には、例えば、窒素やネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスを一種または混合して封入したりすることができる。
【0030】
ここで、この発明のメタルハライドランプの具体例な実施例について図1、図2を参照しながら説明する。
【0031】
(実施例1)
放電容器11の内径rは2.4mmである。
陽極3a1はMo箔とし、厚さ20μm、幅2.0mm、長さ12mmとし、このMo箔にイオンプレーティング法でレ二ウム(Re)を400nmの膜厚で被覆した。
陰極3b1はMo箔とし、厚さ20μm、幅2.0mm、長さ7mmとした。
【0032】
気密容器1内には、薬品として、希ガス、第1のハロゲン化物および第2のハロゲン化物が封入されている。Xeは11気圧封入する。
封入物の組成は、重量比でヨウ化スカンジウム(ScI):ヨウ化ナトリウム(NaI):ヨウ化亜鉛(ZnI)が1:2.7:1で混合された1粒が0.05mgのペレット状の薬品を使用する。
【0033】
放電容器11内の両端の陽極3a2と陰極3b2が封止部12a、12bで封止される間のバルブ長Lを0.1mmずつ変えて7mm〜8.5mmで封入薬品量を混合薬品ペレットで0.05mgずつ、バルブ長Lに応じて封入薬品量を0.3mg〜3mg封入したランプを製作した。キセノン(Xe)の封入量は常に11気圧とした。ランプの点灯は直流点灯回路を使用した。直流点灯回路では始動時は75W、定常時は35Wの入力をランプに印加する。
【0034】
この場合に、バルブ長Lが7.2mm未満では陰極3b2側の放電容器11の薬品付着面積が、陽極3a2側の放電容器11の薬品付着面積の2倍以下であり、陽極3a2の封止部12aの侵食が激しく規格の寿命試験方法で1500時間以下に不点となった。バルブ長Lが8.3mmを越えると、ランプの全光束が規格下限の2750lm以下しか得られなかった。
【0035】
バルブ長Lが7.2mm〜8.3mmでは、陰極3b2側の放電容器11の薬品付着面積が陽極3a2側の放電容器11の薬品付着面積の2倍以上である。
【0036】
これらの多数のランプ初期の全光束を測定した所、全光束が2750lmを超えるのはバルブ長Lを7.2mm≦L≦8.3mmで、放電容器11に封入されている薬品量をM(mg)としたときに、
5/3・L−10.5≧M≧2/3・L−4.5 … (1)
の領域(図4に示す斜線部分)であることが分かった。この場合、ランプの色温度は4100〜4300Kであった。
【0037】
これらの全光束が2750lmを越えるランプを規格の寿命試験方法で点灯すると2500時間以上の寿命が得られた。
【0038】
(実施例2)
この実施例2は、放電容器11の内径rを2.8mmに変えただけで、他は実施例1と同条件で実験した。式(1)の領域でやはり2750lm以上が得られた。また、この領域のランプは、2500時間以上の寿命を持つことを確認した。
【0039】
(実施例3)
この実施例3は、陽極3a2側の金属箔3a1に、スラリー法でアルミナ(Al)を300nmの膜厚で被覆したもので、他の構成は実施例1と同様である。
【0040】
Mo製の金属箔3a1の表面上に、微粒子アルミナを塗布する方法は次の手順により行う。
(1)Moのアウターリード線を溶接した後に1100℃×2分間水素処理させたMo箔を、膜原料を溶かしたスラリーに浸して、Mo箔表面に微粒子の塗布膜を形成する。
(2)微粒子の塗布膜を自然乾燥させる。その際、Mo箔の電極溶接側先端が上側になるように垂直に立てる。
(3)微粒子膜付Mo箔を、アルゴン(Ar)中に5%のOを混合させた気体中で500℃×5分間加熱して、膜中に残留している有機分を酸化、除去する。
(4)微粒子膜付Mo箔は1100℃×2時間真空処理を施して、膜の脱ガスと焼成を図る。
【0041】
このような方法により陽極3a2側を形成することにより、上記の式(1)の領域でやはり2750lm以上の光束を得ることができた。また、この領域のランプは、2500時間以上の寿命を持つことを確認した。すなわち、実施例1のレニウムによる膜と同様に、この実施例3のアルミナによる膜は、陽極3a2側のMo箔のヨウ素の侵食を防止する効果を持つことが分かった。
【0042】
(実施例4)
この実施例4と実施例1の違いは、薬品の混合ペレットを組成が重量比でヨウ化スカンジウム(ScI):ヨウ化ナトリウム(NaI):ヨウ化亜鉛(ZnI)が1:2:1である混合薬品ペレット(1粒が0.05mg)を使用した点である。
【0043】
この実施例においても、上記式(1)の領域でやはり2750lm以上が得られた。また、この領域のランプは、2500時間以上の寿命を持つことを確認した。この場合、ランプの色温度は4250〜4500Kであった。
【0044】
上記した実施例1〜4から、バルブ長が長くなると、薬品の放電容器の付着面積は陰極側の比率が増し、陽極側のMo箔へのヨウ素の侵食の激しさは低くなる。しかし、薬品の表面の実効温度がさがり、効率が低くなる。高効率を得るために、バルブ長と封入薬品量について好適な範囲が存在することが分かった。バルブ長を長くした場合に、封入薬品量を増加させると薬品は主に陰極背面部に付着する。付着薬品の厚みが増したり、温度が高い電極に近づくために薬品の実効的な表面温度が上昇したりするために効率が増大することになる。薬品量が多すぎると点灯中未蒸発の薬品が可視光を吸収して効率が低下する。
【0045】
上記したように、この発明のメタルハライドランプの実施形態では、陽極側の封止部とアウターリードとの接合部における石英ガラスのクラックを防ぐと同時に、高効率を得るために、ランプ長と薬品封入量の好適な関係を見出して、長寿命で高効率な水銀フリーの直流点灯のランプを実現できる。
【0046】
図5はこの発明の点灯装置に関する一実施形態について説明するための回路図である。この実施形態では、この発明のメタルハライドランプを直流点灯させるための回路構成を示したものである。
同図において、41は直流電源、42はチョッパ、43は制御部、Rはランプ電流検出手段、VRはランプ電圧検出手段、44は始動部、45は図1の構成のメタルハライドランプである。直流電源41には、バッテリーまたは整流化直流電源が用いられる。自動車の場合には、一般的にバッテリーが用いられる。しかし、交流を整流する整流化直流電源であってもよい。また必要に応じて、電解コンデンサCを並列接続して平滑化を行う。チョッパ42は、直流電圧を所要値の電圧に変換するとともに、メタルハライドランプ45を所要に制御する。直流電源電圧が低い場合には、昇圧チョッパを用い、反対に高い場合には降圧チョッパを用いる。制御部43は、チョッパ22を制御する。例えば、点灯直後にはメタルハライドランプ45に定格電流の2倍以上のランプ電流をチョッパ42から流し、その後時間の経過とともに徐々にランプ電流を絞っていき、やがて定格ランプ電流にするように制御する。また、制御部43はランプ電流とランプ電圧との検出信号が帰還入力されることにより、定電力制御信号を発生させてチョッパ42を定電力制御する。さらに、制御部43には時間的な制御パターンが予め組み込まれたマイコンが内蔵されて、これによりランプ電流を制御するように構成されている。ランプ電流検出手段Rは、ランプと直列に挿入されてランプ電流を検出して制御部43に制御入力する。ランプ電圧検出手段VRは、ランプと並列的に接続されてランプ電圧を検出して制御部23に制御入力する。始動部44は、始動時に20kVのパルス電圧をメタルハライドランプ45に供給できるように構成されている。
【0047】
そして、この実施形態のメタルハライドランプ点灯装置を用いてメタルハライドランプを直流点灯すると、点灯直後から所要の光束を発生する。これにより、自動車前照灯として必要な電源投入後1秒間に定格に対して光束25%、4秒後に光束80%の点灯を実現できる。また、DC/AC変換回路が不要で、直流点灯のメタルハライドランプの有利性を享受しながら寿命特性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【図2】図1要部を拡大して示した構成図。
【図3】この発明のメタルハライドランプを自動車前照灯用に適用した場合について説明するための概略的な構成図。
【図4】この発明の効果について説明するための説明図。
【図5】直流方式のメタルハライド放電ランプの回路図。
【符号の説明】
【0049】
1 内管
11 放電容器
12a、12b 封止部
13a,13b 非封止部
14 放電空間
2 金属ハロゲン化物
3a、3b マウント
3a1,3b1 金属箔
3a2 陽極
3b2 陰極
3a3,3b3 外部リード
41 直流電源
42 チョッパ
43 制御部
44 始動部
45 メタルハライドランプ
R ランプ電流検出手段
VR ランプ電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間と該放電空間の両端に設けられた封止部とを有する放電容器と、
前記放電空間内に対向して配置された陽極および陰極と、
前記陽極および陰極の基部側端部にそれぞれ一端部が接合され、かつ前記封止部により気密に封着された金属箔と、
前記金属箔の他端部にそれぞれ接合され、かつ前記封止部外に導出された一対の外部リードと、
前記放電容器内に封入され、ハロゲン化物および希ガスとを含み、かつ本質的に水銀を含まない薬品と、を具備し、
前記放電容器内に流れる電流の向きが一定方向であり、前記放電容器内の陽極と陰極間の真中を基準として前記陰極側の内面に付着している薬品の面積が、前記陽極側の内面に付着している面積より2倍以上大きく、前記放電容器内の前記陽極および陰極が前記封止部で封止される間のバルブ長Lを、7.2mm≦L≦8.3mmとしたときに、前記放電容器に封入されている薬品M(mg)は、
5/3・L−10.5≧M≧2/3・L−4.5
の関係を満足してなることを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
少なくとも前記陽極側の前記金属箔をモリブデン(Mo)で形成し、該金属箔の表面に金属または酸化物でコーティングされていることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ
【請求項3】
前記コーティングは、レ二ウム(Re)またはアルミナ(Al)を主成分とすることを特徴とする請求項2記載のメタルハライドランプ
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のメタルハライドランプと、
前記放電容器内に流れる電流の向きが時間とともに変化せず、常に単一方向である電流をメタルハライドランプに供給して点灯する点灯回路と、を具備したことを特徴とするメタルハライドランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−270031(P2008−270031A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113233(P2007−113233)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】