説明

メトホルミンとスタチンとの組み合わせを含む医薬組成物

【課題】メトホルミンとスタチンとの組み合わせを含む医薬組成物の提供。
【解決手段】高血糖、インシュリン非依存性糖尿病、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症及び肥満の治療において使用するのに適切な、(i)メトホルミン、又は、任意に医薬品に許容されるメトホルミン塩の一種、(ii)スタチン、又は、任意に医薬品に許容されるスタチン塩の一種、及び、任意に一種以上の医薬品に許容される補形薬を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、高血糖、肥満及び関連する症状を患う患者を治療するための治療上有効な組成物及び方法であって、メトホルミンと、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤又は例えばプラバスタチン、ロバスタチン、シムバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン若しくはフルバスタチン等のスタチンとを合わせて配合した組み合わせを含み、治療上有効量のヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ阻害剤及び治療上有効量のメトホルミンを治療を要する患者の血中に同時に供給する組成物及び方法に関する。本発明の組成物は、インシュリン非依存性糖尿病に関連する高血糖を緩和する際に、並びに、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症及び/又は肥満を治療する際に有用である。
【背景技術】
【0002】
人間において、コレステロール及びトリグリセリド(TG)は、血中のリポタンパク質複合体の一部であり、超遠心分離によって高密度リポタンパク質(HDL)分画、中間密度リポタンパク質(IDL)分画、低密度リポタンパク質(LDL)分画及び超低密度リポタンパク質(VLDL)分画に分離することが可能である。コレステロール及びトリグリセリドは、肝臓で合成され、VLDL中に組み込まれて、血漿中に放出される。総コレステロール(総C)値、LDL−C値及びアポリポタンパク質B(アポ−B、LDL−Cの膜複合体の構成要素)値が高い場合には人間においてアテローム性動脈硬化症が進行し、HDL−C及びその輸送複合体アポリポタンパク質A値が低い場合にはアテローム性動脈硬化症の発生を伴う。人間における心血管罹患率及び死亡率は、総C値及びLDL−C値に正比例する可能性があり、かつ、HDL−C値に反比例する可能性がある。
【0003】
経口投与用スタチンは、患者の低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール値を低下させるために使用されるヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤である。これを補完するものとしては、患者のトリグリセリド高含量のリポタンパク質の低減、高密度リポタンパク質(HDL)の増大、及び、アテロームを発生させるほど高いLDL値の低減を目的として使用される経口投与用フィブラート系薬剤が挙げられる。スタチンとフィブラート系薬剤とを摂取する患者は、脂肪含量を変更可能な低脂肪食を摂る回数が多い。
【0004】
HMG−CoAレダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA)は、コレステロール生合成における律速反応(メバロン酸塩)を触媒するミクロソーム酵素である。本発明によれば、スタチンはHMG−CoAレダクターゼを阻害するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤であり、従ってコレステロール合成を阻害する、又は、妨げる。コレステロール合成が阻害されると、血中コレステロール値が減少する可能性がある。
【0005】
天然若しくは合成の、又は、合成改変された化合物のうち、HMG−CoAレダクターゼを阻害することが分かっているものが多数ある。これらの化合物は、本発明の実施における有用な薬剤に分類される。これらの薬剤は従来から高コレステロール血症患者の治療に使用されている。
【0006】
メトホルミンは主としてその抗高血糖活性によって知られており、インシュリン非依存性糖尿病の治療において広く使用されている。インシュリン依存性糖尿病患者に対しては、メトホルミンはインシュリンとの併用によっても投与される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、メトホルミンとスタチンとを組み合わせることによって、インシュリン非依存性糖尿病患者の高血糖が著しく改善されることを予想外にも発見した。より具体的には、メトホルミンとスタチンとの併用投与によって相乗的な効果が得られた。従来技術において、メトホルミンとスタチンとの組み合わせについての報告はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、有効成分としての(i)メトホルミン及び(ii)スタチンと、一種以上の医薬品に許容される補形薬とを組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0009】
この組成物は、インシュリン非依存性糖尿病患者の高血糖を低減する目的において、かつ、インシュリン抵抗性を改善する目的において特に適切である。また、この組成物は、非脂質代謝異常患者又は脂質代謝異常患者のいずれに対しても使用可能である。
【0010】
本発明の組成物は、米国特許第4231938号中に開示されるロバスタチン及びメビノリン(mevinolin)、米国特許第4346227号中に開示されるプラバスタチン及びプラバスタチンナトリウム、ヨーロッパ特許EP0114027及び米国特許第4739073号中に開示されるフルバスタチン及びフルバスタチンナトリウム及びXU62−320、米国特許第5273995号中に開示されるアトルバスタチン、ヨーロッパ特許EP304063号中に開示される、NK−104としても知られるイタバスタチン(itavastatin)、米国特許第3983140号中に開示されるメバスタチン、米国特許第4448784号及び第4450171号中に開示されるロスバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、シンビノリン(synvinolin)及びシムバスタチン、米国特許第5622985号、第5135935号、第5356896号、第4920109号、第5286895号、第5262435号、第5260332号、第5317031号、第5283256号、第5256689号、第5182298号、第5369125号、第5302604号、第5166171号、第5202327号、第5276021号、第5196440号、第5091386号、第5091378号、第4904646号、第5385932号、第5250435号、第5132312号、第5130306号、第5116870号、第5112857号、第5102911号、第5098931号、第5081136号、第5025000号、第5021453号、第5017716号、第5001144号、第5001128号、第4997837号、第4996234号、第4994494号、第4992429号、第4970231号、第4968693号、第4963538号、第4957940号、第4950675号、第4946864号、第4946860号、第4940800号、第4940727号、第4939143号、第4929620号、第4923861号、第4906657号、第4906624号、RE36520及び第4897402号中に開示されるセリバスタチン、ピチバスタチン(pitivastatin)並びに多数の他の薬剤等の、市販で入手可能なスタチンを含む。上記特許の開示内容を本明細書中で参照する。本発明はこれらのスタチンに制限されない。
【0011】
ロバスタチン(不活性のラクトン)は、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)株から分離された白色で非吸湿性の結晶性粉末であり、水に不溶性で、かつ、エタノール、メタノール及びアセトニトリルに対する溶解性はやや低い。ロバスタチンは、経口摂取後に加水分解されて、対応するβ−ヒドロキシ酸となる。この代謝産物は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMG−CoA)レダクターゼの阻害剤である。経口投与用に調製されたメバコール(Mevacor)(登録商標)という錠剤は、ロバスタチン10〜40mgと、セルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、デンプン及び防腐剤ブチルヒドロキシアニソール等の医薬品に許容される補形薬とを含むものであってよい。ロバスタチン単独での摂取により、血漿中の総C値、LDL−C値、総C/HDL−C率及びLDLC/HDL−C率の低減、HDL−Cの増大、並びに、VLDL−C値及び血漿トリグリセリド(TG)値の多少の低減等、関連する高脂血症を治療可能である。メバコール(登録商標)によって、総C値及びLDL−C値を目的値まで低減可能であり、かつ、原発性高コレステロール血症(IIa型及びIIb型)患者の高い総C値及びLDL−C値を低減可能である。コレステロールは主として夜間に合成されるため、毎日一回夜間に投与する方が、同量を朝投与するよりも恐らく効果が高い可能性がある。メバコール(登録商標)は、推奨投与開始量を食事時に投与することが好ましい。一日一回20mgを夕食時に投与してよい。保存は5〜30℃(41〜86°F)で実施するのが好ましい。
【0012】
合成HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であるフルバスタチン(フルバスタチンナトリウムとしても知られる)は、白色から淡黄色で、水、エタノール及びメタノールに溶解する吸湿性の粉末である。経口投与用に調製されたレスコール(Lescol)(登録商標)というカプセルは、フルバスタチン20〜40mgと、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、糊化デンプン、赤酸化鉄、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、二酸化チタン、黄酸化鉄及び他の成分等の医薬品に許容される補形薬とを含むものであってよい。フルバスタチンナトリウムによって、総C値、LDL−C値及びアポリポタンパク質B値が低下し、様々な規模のHDL−Cの値が増大すると同時にトリグリセリド(TG)値が多少低下する。フルバスタチンは経口投与後に急速かつ完全に吸収され、1時間未満で最高濃度に達する。食品と共に投与されると、吸収速度は減少するが吸収量は減少しない。フルバスタチンナトリウムは、原発性高コレステロール血症患者及び混合脂質代謝異常(フレデリクソン分類IIa型及びIIb型)患者の治療において、食生活の調整と併せて、高い総コレステロール(総C)値、LDL−C値、TG値及びApoB値を処置するために必要とされる。また、フルバスタチンナトリウムは、冠状動脈性心臓病患者のアテローム性冠動脈硬化症の進行を遅くする目的で総コレステロール値及びLDLコレステロール値を目的値まで低減させる治療戦略の一部として推奨される。
【0013】
アトルバスタチン(又は、アトルバスタチンカルシウム2:1)は白色から灰色がかった白色の三水和物の結晶性粉末であり、pH4以下の水溶液には不溶性で、蒸留水、pH7.4のリン酸バッファー及びアセトニトリルには非常にわずかに溶解し、エタノールにはわずかに溶解し、メタノールには多量に溶解する。経口投与用に調製されたリピトール(登録商標)という錠剤は、アトルバスタチン10〜80mgと、炭酸カルシウム(USP)、キャンデリラロウ(FCC)、クロスカルメロースナトリウム(NF)、ヒドロキシプロピルセルロース(NF)、ラクトース一水和物(NF)、ステアリン酸マグネシウム(NF)、結晶セルロース(NF)、オパドライホワイト(Opadry White)YS−1−7040(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン):ポリソルベート80(NF)及びシメチコンエマルション等の医薬品に許容される補形薬とを含むものであってよい。アトルバスタチンによって、ホモ接合型及びヘテロ接合型の家族性高コレステロール血症患者、非家族性高コレステロール血症患者並びに混合脂質代謝異常患者において、総C値、LDL−C値及びapoB値を低減可能である。また、アトルバスタチンによって、VLDL−C値及びTG値を低減可能であり、かつ、HDL−C値及びアポリポタンパク質A−1値が様々に増大する。更に、アトルバスタチンによって、総C値、LDL−C値、VLDL−C値、apoB値、TG値及び非HDL−C値を低減可能であり、かつ、純型高グリセリド血症患者のHDL−C値を増大させることができる。その上、アトルバスタチンによって、異常β−リポタンパク血症患者の中間密度リポタンパク質コレステロール(IDL−C)値を低減可能である。薬剤の吸収速度及び吸収量が食品により減少することがCmax及びAUCによって評価されるが、アトルバスタチンを食品と共に投与した場合と単独で投与した場合とでLDL−C値の低減程度にあまり差はない。アトルバスタチンは、食品と共に又は単独で任意の時間に単回投与可能である。アトルバスタチンは、総C値、LDL−C値、VLDL−C値、apoB値及びTG値を低減可能であり、また、高コレステロール血症患者及び混合脂質代謝異常患者のHDL−C値を増大させることができる。
【0014】
シムバスタチンは、白色から灰色がかった白色の非吸湿性結晶性粉末であり、水には事実上不溶性で、クロロホルム、メタノール及びエタノールには多量に溶解する。シムバスタチンは、アスペルギルス・テレウスの発酵産物から合成によって得られる。シムバスタチン(不活性ラクトン)は、経口摂取後に加水分解されて、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤である、対応するβ−ヒドロキシ酸となる。経口投与用に調製されたゾコール(登録商標)という錠剤は、シムバスタチン5mg〜80mgと、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化鉄、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、二酸化チタン、及び、防腐剤として添加可能なブチルヒドロキシアニソールを含む他の成分等の医薬品に許容される補形薬とを含むものであってよい。シムバスタチンは、低脂肪食の直前に投与された場合に、断食効果を示さない。シムバスタチンによって、総C値、LDL−C値、総C/HDL−C率及びLDL−C/HDL−C率の低減、TG値の低減、並びに、HDL−C値の増強が可能である。
【0015】
セリバスタチン(又はセリバスタチンナトリウム)は、白色から灰色がかった白色の吸湿性の非晶質粉末であり、水、メタノール及びエタノールには可溶性で、アセトンには非常にわずかに溶解する。セリバスタチンナトリウムは、コレステロール生合成初期の律速段階におけるHMG−CoAからメバロン酸塩への転換を触媒する酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMG−CoA)レダクターゼに対する、鏡像異性的に純粋な合成拮抗阻害剤である。コレステロール生合成が阻害されることによって肝細胞中のコレステロール値が低下し、これによりLDL受容体の合成が刺激されて細胞によるLDL粒子の取り込みが増大する。このことによって、血漿コレステロール濃度が低下する可能性がある。バイコール(Baycol)(登録商標)として調製されたセリバスタチンナトリウム錠剤は、経口投与用のセリバスタチンナトリウム0.2〜0.8mgを含むものであってよく、食品と共に又は単独で摂取可能である。錠剤の他の成分としては、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、クロスポビドン、ポビドン、黄酸化鉄、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール及び二酸化チタン等の医薬品に許容される補形薬が含まれていてよい。高コレステロール血症患者において、セリバスタチンナトリウムによって、血漿総コレステロール値、LDL−C値及びアポリポタンパク質B値、VLDL−C値及び血漿トリグリセリド値を低減可能であり、かつ、血漿HDL−C値及びアポリポタンパク質A−1値が増大する。セリバスタチン全身暴露(曲線下面積、AUC)及びCmaxでは食品による影響は感知されないが、一日一回0.2mgの投与は一日二回0.1mgの投与よりも効果が高い可能性がある。原発性高コレステロール血症患者及び混合脂質代謝異常(フレデリクソン分類IIa型及びIIb型)患者の治療において、飽和脂質及びコレステロールの食餌制限や他の非薬学的手段の単独での実施に対して反応が不十分である場合に、セリバスタチンナトリウムは、食生活の調整と併せて、高い総C値、LDL−C値、apoB値及びTG値を低減してHDL−C値を増大させる効果を有する可能性がある。
【0016】
プラバスタチン(又はプラバスタチンナトリウム)は、白色から灰色がかった白色の、微細な又は結晶性の粉末である。この化合物は、pH7.0における分配係数(オクタノール/水)が0.59であり、極性を有する比較的親水性の化合物である。これは、メタノール及び水に可溶性(>300mg/mL)で、イソプロパノールにはわずかに溶解し、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム及びエーテルには事実上不溶性である。経口投与用に調製されたプラバコール(登録商標)という錠剤は、プラバスタチンを10〜40mg含むものであってよい。不活性成分としては、クロスカルメロースナトリウム、ラクトース、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース及びポビドン等の医薬品に許容される補形薬が含まれていてよい。また、錠剤10mg中に赤酸化鉄が含まれていてよく、錠剤20mg中に黄酸化鉄が含まれていてよく、錠剤40mg中に緑色レーキ混合物(D&C黄色10号アルミニウムレーキとFD&C青色1号アルミニウムレーキの混合物)が含まれていてよい。
【0017】
HMG−CoAレダクターゼの阻害剤であるイタバスタチンは、含量約1mg〜約20mg、好ましくは約2mg〜約10mgの錠剤として投与可能である。
【0018】
ロスバスタチンはHMG−CoAレダクターゼの阻害剤であって、クレストール(登録商標)として調製された場合の投与量は一日当たり上限約80mgと報告されており、含量約4又は5mg〜約10又は20mgの錠剤として投与可能である。
【0019】
本発明において好ましいスタチンは、経口投与用として有用なスタチンである。本発明によれば、スタチンは、その医薬品に許容される塩の一種の形状で投与可能である。このような塩は、例えば、化合物中の陰性置換基(例えばカルボン酸塩)と陽イオンとの間で形成されたものであってよい。適切な陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及び、テトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウム陽イオンが含まれるが、これらに限定されない。これらの塩のうち、ナトリウム塩及びカルシウム塩が特に好ましい。
【0020】
本発明の組成物中にロバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり10〜40mg、好ましくは20mgである。フルバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり20〜40mgである。アトルバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり10〜80mg、好ましくは10〜40mgである。シムバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり5〜50mg、好ましくは5〜20mgである。セリバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり0.1〜0.8mg、好ましくは0.1〜0.3mgである。プラバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり10〜40mg、好ましくは20mgである。イタバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり1〜20mg、好ましくは2〜20mgである。ロスバスタチンを使用する場合、その量は1日当たり4〜80mg、好ましくは10〜20mgである。
【0021】
本発明の組成物中に使用されるスタチンの量は、それぞれのスタチンに関して上述した量である。この量は、使用されるそれぞれのスタチンに応じて0.1mg〜100mgの範囲で選択可能である。
【0022】
本発明によれば、メトホルミンは、塩酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、エンボナート(embonate)、クロロフェノキシ酢酸塩、グリコール酸塩、パルモエート(palmoate)、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、パラクロロフェノキシイソブチレート、蟻酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、デカン酸塩、ヘキサデカン酸塩、オクトデカノエート(octodecanoate)、ベンゼンスルホン酸塩、トリメトキシ安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、アダマンタンカルボン酸塩、グリコキシレート(glycoxylate)、グルタミン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、1−グルコースリン酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、ジチオン酸塩又はリン酸塩等の医薬品に許容される塩の一種として投与可能である。
【0023】
これらの塩の中で、塩酸塩、フマル酸塩、エンボナート及びクロロフェノキシ酢酸塩が特に好ましい。
【0024】
メトホルミンの医薬品に許容される塩は、本質的に公知の方法で、対応する酸にメトホルミンを作用させることによって得られるものである。
【0025】
一日一回投与する際のメトホルミン量は、一般的に200mg〜2000mgである。最も一般的な組成物は、メトホルミンを500mg〜850mg含み、一日当たり二〜三回投与される。
【0026】
従って、本発明の組成物が500mg又は850mgを含んでいて二回以上投与される場合、スタチンの量はその結果として調節されるであろう。
【0027】
上記組み合わせの量が有効量となるように、メトホルミン量及びスタチン量の両方を決定して上記組み合わせの投与量又は量を決定する。有効量は、血糖又は血中脂質に関する障害又は疾患を抑える治療又は予防の達成に十分な量であってよい。
【0028】
本明細書中において「有効量」は、患者に投与される投与量又は有効量を意味する。患者に投与される投与量又は有効量及び患者への投与頻度は、既知の技術を使用し、かつ、類似状況下における結果を観察することにより、従来の通常の技術の一種によって容易に測定可能である。有効量又は投与量を測定する際、従事する診断医は、使用される化合物の作用の効能及び持続時間、治療される病気の性質及び重度、治療される患者の性別、年齢、体重、全身の健康状態及び反応性の個人差、並びに、関連する他の条件を含む多くの要因を考慮するが、考慮要因はこれらに限定されない。
【0029】
本発明の組成物は、治療上有効量の様々な有効成分を含む。そのため、スタチン又はその医薬品に許容される塩の一種及びメトホルミン又はその医薬品に許容される塩の一種それぞれの量の比率は多様である。メトホルミン又はその医薬品に許容される塩に対するスタチン又はその医薬品に許容される塩の比率は、1:2〜1:20000の範囲で変化し得る。好ましくは、患者に投与されるメトホルミンに対するスタチンの重量比は、約1:2〜約1:2000、好ましくは約1:4〜約1:2000、より好ましくは約1:5〜約1:2000の範囲内である。本発明の組成物中におけるメトホルミンに対するスタチンの比率は、本発明の医薬組成物の投与が一日二回以上である場合と一日一回のみである場合とでは異なるであろう。
【0030】
「治療上有効」という表現は、代替療法では通常生じる副作用を回避すると同時に、治療される病気を予防、又は、その病気の重度を緩和可能な薬剤の効能を示す。「治療上有効」という表現は、「治療、予防又は抑制に有効」という表現と同等の意味を有するとして理解され、また、これら両表現は、インシュリン非依存性糖尿病の重度改善を達成可能な併用療法における各薬剤の使用量について限定するための表現である。
【0031】
メトホルミンの量は、上記組み合わせを有効量とするのに十分な量である。メトホルミンの量は、上記組み合わせを治療上有効量とするのに十分な量であることが好ましいであろう。また、治療上有効量は、本明細書中において、高血糖の治療若しくは予防における上記組み合わせの有効量として、又は、高コレステロール血症若しくは脂質代謝異常若しくは疾患を抑える治療若しくは予防における有効量として記載されていてもよい。
【0032】
メトホルミンとスタチンとの組み合わせは、本発明の範囲に包含されると考えられる新規治療用組成物の形で供給されてよい。上記治療用組成物中における各成分の相対量は、すぐ上に記載された量と異なっていてもよいし、同じであってもよい。治療用組成物中における上記メトホルミン及びスタチンの含有量は、例えば投与一回、注射一回若しくはカプセル一個によって、又は、一回投与分を上限二回若しくはそれ以上投与することによって両成分を好ましい量投与できるような量であってよい。
【0033】
新規組み合わせと医薬品に許容される担体とを共に配合することによって医薬組成物を形成する。本発明の医薬組成物は、高血糖、インシュリン非依存性糖尿病、高脂血症、脂質代謝異常、高コレステロール血症又は肥満の予防又は治療に適切な組成物である。上記医薬組成物は、医薬品に許容される担体、スタチン及びメトホルミンを含む。
【0034】
医薬品に許容される担体は、生理食塩水、リンガーのリン酸溶液又はバッファー、緩衝生理食塩水及び先行技術において公知の他の担体を含むが、これらに限定されない。また、医薬組成物は、安定化剤、酸化防止剤、着色剤及び希釈剤、又は、任意の医薬補形薬を更に含んでもよい。
【0035】
本発明の方法及び組み合わせは、高血糖、インシュリン非依存性糖尿病、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、肥満及び心血管疾患の予防、抑制及び治療において有用であるが、その有用性はこれらに限定されない。
【0036】
上述するように、本発明の実施形態には、メトホルミンとスタチンとの組み合わせの治療上有効量、及び、少なくとも一種の医薬品に許容される担体、佐剤又は希釈剤、及び、必要であれば他の有効成分を含む医薬組成物が含まれる。
【0037】
メトホルミン及びスタチンの使用を定義する際、「併用療法」及び「投与」という表現は、これら有効成分を固定比率で含有する一個のカプセル若しくは投与装置、又は、同時に投与可能な多数の別個のカプセル若しくは投与装置等の使用による、これら成分の実質上同時の併用投与を包含することが意図される。
【0038】
本発明の組成物は、経腸投与又は非経口投与(非経口投与は、皮下、筋肉内、皮内、乳房内及び静脈内投与、並びに、先行技術において公知の他の投与方法を含む)が好ましく、経口投与が更に好ましいが、例えば直腸内投与等の他の投与経路も除外されない。
【0039】
本発明の化合物で経口用医薬組成物を調製する際、医薬品に許容される不活性担体は固体又は液体のいずれであってもよい。固体調製物には、粉末、錠剤、コーティング錠、糖剤、トローチ、甘味入り錠剤、分散可能な顆粒、カプセル及びサッシェが含まれる。経口使用用の組成物は、先行技術において公知の任意の医薬組成物製造方法によって調製されてよい。
【0040】
固体の担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、バインダー又は錠剤崩壊剤としても作用可能な一種以上の物質であってよいし、カプセル化剤であってもよい。
【0041】
粉末の場合、担体は微細化された固体状であり、微細化有効成分と混合された状態である。錠剤は、必要なバインダー特性を有する担体と有効成分とが適切な割合で混合されて所望の形及び大きさに成形されたものである。
【0042】
適切な担体は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム等の不活性な希釈剤であってよい。
【0043】
また、本発明は、メトホルミン及びスタチン並びにカプセル化用担体としてのカプセル化剤(カプセル中においてメトホルミン及びスタチンが(他の担体と共に又は単独で)担体で覆われており、担体はメトホルミン及びスタチンと一体化している)の調製物も含む。同様に、サッシェも含まれる。錠剤、粉末、サッシェ及びカプセルもまた、経口投与に適した固体の投与形態として使用可能である。
【0044】
錠剤は、被覆されていなくてもよいし、公知の方法で被覆して胃腸管内での崩壊及び吸着を遅らせることにより効果を長時間持続可能としたものであってもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン等の時間遅延用物質を使用してよい。
【0045】
また、経口使用用の調製物は、(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン等の)固体の不活性賦形剤と有効成分とを混合して含む硬質ゼラチンカプセルであってもよいし、あるいは、有効成分をそのままで、又は、水若しくは(例えばアラキッド油(arachid oil)、流動パラフィン又はオリーブ油等の)油状媒体と有効成分とを混合して含む軟質ゼラチンカプセルであってもよい。
【0046】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な補形薬と有効化合物とを混合して含むものであってよい。このような補形薬は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム等の懸濁剤;並びに、天然リン脂質(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長連鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又は、エチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を含む分散剤又は湿潤剤である。
【0047】
また、水性懸濁液は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル等の一種以上の防腐剤、一種以上の着色料、一種以上の着香料及び/又は一種以上の甘味料を含んでいてもよい。
【0048】
油性懸濁液は、有効化合物を、オメガ−3脂肪酸、又は、例えばアラキッド油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油等の植物油、又は、流動パラフィン等の鉱物油中に懸濁することによって調製してよい。油性懸濁液は、例えば密蝋、固形パラフィン又はセチルアルコール等の増粘剤を含んでいてよい。
【0049】
甘味料及び着香料を添加することによって、味の良好な経口用調製物を調製可能である。この調製物は、アスコルビン酸等の酸化防止剤を添加することによって保存可能である。
【0050】
水を添加して水性懸濁液を調製するのに適切な分散可能な粉末及び顆粒において、有効化合物は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び一種以上の防腐剤と混合されている。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤の例としては、既に上述したものが挙げられる。また、上記以外の補形薬、例えば甘味料、着香料及び着色料等も使用可能である。
【0051】
新規組み合わせを含むシロップ及びエリキシル剤は、甘味料と共に調製可能である。また、このような調製物は、粘滑剤、防腐剤、着香料及び着色剤を更に含んでもよい。
【0052】
メトホルミンのために開発された処方を、メトホルミン及びスタチンを含む本発明の医薬組成物に使用可能である。このようなメトホルミン処方は、次の特許文献中に記載される:胃保持剤(gastric retentive)(PCT特許WO9907342)、放出制御メトホルミン組成物(PCT特許WO0236100)、一体型の芯(unitary core)を使用した放出制御法(PCT特許WO9947125)、400mg以下のメトホルミンによる治療法(米国特許第6100300号)、新規メトホルミン塩(PCT特許WO9929314)、二相の放出制御運搬システム(PCT特許WO9947128)、メトホルミン調製物(PCT特許WO9608243)、胃保持剤(PCT特許WO9855107)、放出制御法(PCT特許WO0103964及びWO0239984))、メトホルミン錠剤(PCT特許WO03004009)、徐放性組成物(PCT特許WO02067905)、放出制御組成物(PCT特許WO0211701)、胃保持剤(PCT特許WO0006129)、運搬改善用の固体の担体(PCT特許WO0137808)、徐放性組成物用のコーティング法(PCT特許WO02085335)、放出調節組成物(PCT特許WO03002151)、メトホルミンの液状調製物(PCT特許WO0247607)、放出制御装置(PCT特許WO02094227)、メトホルミン急速放出錠剤(日本国特許特開2002−326927)。
【0053】
これらの調製物のうち、一日一回使用するためのメトホルミン調製物が好ましい。
【0054】
液状調製物は、経口投与に適した溶液、懸濁液及びエマルションを含む。経口投与用の水溶液は、有効成分を水中に溶解し、必要であれば適切な香料、着色剤、安定化剤及び増粘剤を添加することにより調製可能である。有効成分の溶解性を改善するために、エタノール、プロピレングリコール及び他の医薬品に許容される非水性溶媒を添加可能である。経口使用用の水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び従来の医薬処方において公知の他の懸濁剤等の粘性物質と共に、微細化した有効化合物を水中に分散させることにより調製可能である。
【0055】
医薬調製物は、一回投与分ずつになっていることが好ましい。この形状は、一回投与量に分けられていて、それぞれが適切な量の有効成分を含むものである。一回投与分は、異なる量の調製物を含有するパッケージ調製物であってよく、例えばパッケージングした錠剤、カプセル、及び、粉末をガラス瓶又はアンプルに入れたもの等であってよい。また、一回投与分は、これらをそのままカプセル、カシェ剤若しくは錠剤としたものであってもよく、又は、適切な数の任意の上記パッケージ調製物であってもよい。
【0056】
また、主題の組み合わせは、非経口的にあるいは皮下に、静脈内、筋肉内に、胸骨内に、又は、水性若しくは油性の注射用無菌懸濁液の形で点滴によって投与可能である。このような懸濁液は、上記の適切な分散剤、湿潤剤及び懸濁剤又は他の許容される薬剤を使用して、公知の方法によって調製可能である。また、上記の注射用無菌調製物は、非経口経路において許容される非毒性の希釈剤又は溶媒中に溶解又は懸濁した、注射用無菌溶液又は懸濁液(例えば1,3−ブタンジオール溶液等)であってもよい。許容される媒体及び溶媒のうちで使用可能なものとして、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液を挙げることができる。また、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用される。この目的において、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の弱刺激性の不揮発性油を使用可能である。また、注射用薬剤の調製にはn−3系多価不飽和脂肪酸も使用可能である。
【0057】
また、主題の組み合わせは、ネブライザー用のエアゾール若しくは溶液の形で吸入によって、又は、有効成分と適切な非刺激性補形薬とを混合することにより調製された坐薬(常温では固体であるが、直腸温では液体であるため、直腸内で溶けて薬が放出される)の形で直腸経由で投与することもできる。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0058】
主題の組成物は、放出制御組成物であることが好ましい。
【0059】
一日分の投与量は、広い範囲に渉っていてよく、それぞれの特定の場合においてそれぞれ必要とされる量に調節されるであろう。一般的に、大人への投与については、適切な一日分の投与量は上述したが、便宜上、上記好ましい範囲を超過してもよい。一日分の投与量は、一回で投与されてもよいし、何回かに分けて投与されてもよい。
【0060】
本発明は更に、上述の治療方法を実施における使用に適切なキットも含む。一実施形態において、キットは、同時に投与するための、一種以上の上記形状のメトホルミンを含む第一の投与形状、及び、一種以上の上記スタチンを含む第二の投与形状を、本発明の方法の実施に十分な量含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下の例は、本発明の実施形態を記載する。本出願中に開示される本発明の詳細又は実施を考察することによって、特許請求の範囲に包含される他の実施形態が当業者には明白になるであろう。明細書及び実施例、並びに、別添の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲及び目的は、単に具体例であるものとして考慮されることが意図される。
【実施例1】
【0062】
動物モデルの使用により、共力作用が明らかになった。Zucker肥満(fa/fa)ラットを、インシュリン非依存性糖尿病(NIDD)のモデルとして使用した。ロバスタチン単独、メトホルミン単独及びロバスタチン+メトホルミンの組み合わせの作用を、トリグリセリド値、総コレステロール値、高密度リポタンパク質−C(HDL C)値、グルコース値及びインシュリン値について評価した。ラットは5日連続して処置した。処置開始3日前及び5日後に血液サンプルを採取し、トリグリセリド値、総コレステロール値、HDLC値、グルコース値及びインシュリン値を測定した。
【0063】
次の手順で実施した。ラットを8匹ずつ4群に分けた:
−媒体群、
−ロバスタチン1mg/kg/日を経口的に投与した群、
−メトホルミンを50mg/kgずつ一日二回経口的に投与した群、
−ロバスタチンを1mg/kg/日、及び、メトホルミンを50mg/kgずつ一日二回経口的に投与した群。
【0064】
統計分析は、一方向の分散分析の後に媒体群に対する多重比較(Dunnettのt検定)を実施して、得られた有意な結果を評価するというものである;値は平均値±標準誤差で表される。p<0.05である場合(*)に有意差があると考えられるであろう。結果は、1リットル当たりのミリモル(mM)又は1リットル当たりのナノモル(nM)で表される。
【0065】
結果を下記表1中に示す。
【0066】
表1:5日間経口投与したZucker肥満(fa/fa)ラットの血清バイオマーカーにおけるロバスタチン単独、メトホルミン単独及びロバスタチン+メトホルミンの効果
【0067】
【表1】

【0068】
得られた結果から、ロバスタチン及びメトホルミンは血糖値に対して共力作用を有することが示される。
【0069】
血糖値は、メトホルミン単独では7.73mMとなり、ロバスタチン単独では8.21mMとなる。メトホルミンとロバスタチンとの組み合わせでは、血糖値は7.00mMとなる。
【実施例2】
【0070】
シムバスタチン単独、メトホルミン単独及びシムバスタチン+メトホルミンの組み合わせの作用を、トリグリセリド値、総コレステロール値、高密度リポタンパク質C(HDLC)値、グルコース値及びインシュリン値について評価した。
【0071】
この調査においては、10/11週齢の雄ZUCKERfa/faラット(チャールス・リバー社、フランス)を使用した。温度(21〜24.5℃)、相対湿度(45〜65%)及び明暗サイクル12時間に制御された部屋でケージ一つあたりラットを2匹ずつ収容し、調査する間中、ろ過した水道水、及び、実験用標準固形飼料(SAFE社、フランス)を自由に摂取させた。順応させた後、ラットをトリグリセリド血症に従って8匹ずつの群6つに無作為に分けた:
*1群:媒体
*2群:シムバスタチン0.5mg/kg
*3群:シムバスタチン1mg/kg
*4群:メトホルミン50mg/kg(一日二回)
*5群:シムバスタチン0.5mg/kg+メトホルミン50mg/kg(一日二回)
*6群:シムバスタチン1mg/kg+メトホルミン50mg/kg(一日二回)。
【0072】
経口で一日一回(シムバスタチン)又は一日二回(メトホルミン)、5日間連続して一定時刻にラットを処置した。5群及び6群においては、二回目のメトホルミン投与時にシムバスタチンを投与した。処置開始の3日前及び5日後に血液サンプルを採取し、前述のパラメーターを測定した。
【0073】
結果を下記表2中に示す。結果は、1リットル当たりのミリモル(mM)又は1リットル当たりのナノモル(nM)で表される。
【0074】
値は平均値±標準誤差で表される。統計分析は次のものである:
−一方向分散分析(ANOVA)に供した後、Dunnettのt検定に供する;媒体に対してp≦0.05である場合(*)に有意差があるとする、又は、
−Student−Newman−Keuls検定;シムバスタチン0.5mg/kgに対してp≦0.05である場合($)、若しくは、メトホルミン50mg/kgに対してP<0.05である場合(†)に有意差があるとする。
【0075】
表2:5日間経口投与したZucker肥満(fa/fa)ラットの血清バイオマーカーにおけるシムバスタチン単独、メトホルミン単独及びシムバスタチン+メトホルミンの効果
【0076】
【表2】

【0077】
得られた結果から、シムバスタチン及びメトホルミンは血糖値に対して共力作用を有することが示される。
【0078】
血糖値は、メトホルミン単独では9.23mMとなり、シムバスタチン単独では9.44mM(0.5mg/kg)又は8.35mM(1mg/kg)となる。メトホルミンとシムバスタチンとの組み合わせでは、血糖値は7.14mM(シムバスタチン0.5mg/kg)又は7.46mM(シムバスタチン1mg/kg)となる。
【実施例3】
【0079】
シムバスタチン単独、メトホルミン単独及びシムバスタチン+メトホルミンの組み合わせの作用を、トリグリセリド値、総コレステロール値、非エステル化脂肪酸(NEFA)値、グルコース値及びインシュリン値について評価した。
【0080】
この調査においては、目標体重30〜50gの12週齢の雄C57BL/Ks J Rj−db(db/db)マウス(Janvier社、フランス)を使用した。温度(19.5〜24.5℃)、相対湿度(45〜65%)及び明暗サイクル12時間に制御された部屋でケージ一つあたりマウスを5匹ずつ収容し、調査する間中、ろ過した水道水、及び、放射線を照射した実験用固形飼料(A04、SAFE社、フランス)を自由に摂取させた。順応させた後、各群の血糖値が均一となるようにラットを10匹ずつの群に無作為に分けた:
*1群:媒体
*2群:メトホルミン150mg/kg
*3群:シムバスタチン30mg/kg
*4群:メトホルミン150mg/kg+シムバスタチン30mg/kg
*5群:シムバスタチン300mg/kg
*6群:メトホルミン150mg/kg+シムバスタチン300mg/kg。
【0081】
経口で5日間連続して毎日一回一定時刻にマウスを処置した。処置開始の3日前及び5日後に血液サンプルを採取し、前述のパラメーターを測定した。
【0082】
結果を下記表3中に示す。結果は、1リットル当たりのミリモル(mM)又は1リットル当たりのナノモル(nM)で表される。
【0083】
値は平均値±標準誤差で表される。統計分析は、一方向分散分析(ANOVA)に供した後、Student−Newman−Keuls検定に供するというものである;媒体に対してp≦0.05である場合(*)、又は、シムバスタチン30mg/kgに対してp≦0.05である場合(°)に有意差があるとする。
【0084】
表3:5日間経口投与した雄db/dbマウスの血清バイオマーカーにおけるシムバスタチン単独、メトホルミン単独及びシムバスタチン+メトホルミンの効果
【0085】
【表3】

【0086】
得られた結果から、シムバスタチンとメトホルミンの共力作用によって血糖値を制御又は低減可能であることが示される。
【0087】
血糖値は、メトホルミン単独では23.03mMとなり、シムバスタチン単独では25.95mM(30mg/kg)又は21.18mM(300mg/kg)となる。メトホルミンとシムバスタチンとの組み合わせでは、血糖値は22.97mM(シムバスタチン30mg/kg)又は17.12mM(シムバスタチン300mg/kg)となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトホルミン、スタチン、及び、一種以上の医薬品に許容される補形薬を含む
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
スタチンは、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
メトホルミンは、塩酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、エンボナート、クロロフェノキシ酢酸塩、グリコール酸塩、パルモエート、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、パラクロロフェノキシイソブチレート、蟻酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、デカン酸塩、ヘキサデカン酸塩、オクトデカノエート、ベンゼンスルホン酸塩、トリメトキシ安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、アダマンタンカルボン酸塩、グリコキシレート、グルタミン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、1−グルコースリン酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、ジチオン酸塩又はリン酸塩からなる群より選択される塩の形状である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
メトホルミンは、塩酸塩、フマル酸塩、エンボナート及びクロロフェノキシ酢酸塩からなる群より選択される塩の形状である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
スタチンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及び、テトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウム陽イオンからなる群より選択されるものとの塩の形状である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
スタチンを0.1〜100mg含む
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
メトホルミンを200〜2000mg含む
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
メトホルミンに対するスタチンの重量比は、約1:2〜約1:20000である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
粉末、錠剤、コーティング錠、糖剤、トローチ、甘味入り錠剤、分散可能な顆粒、カプセル又はサッシェの形状である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
溶液、懸濁液又はエマルションの形状である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
放出制御組成物である
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効な治療薬として使用するための、メトホルミン及びスタチンを含む医薬組成物。
【請求項13】
高血糖、インシュリン非依存性糖尿病、脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、肥満又は心血管疾患を予防、抑制又は治療するための医薬組成物の製造におけるメトホルミン及びスタチンの使用。
【請求項14】
医薬組成物は経口投与される
ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
メトホルミンとスタチンとを同時に投与するための、メトホルミン又はその医薬品に許容される塩の一種及びスタチン又はその医薬品に許容される塩の一種を含むキットの製造におけるメトホルミン及びスタチンの使用。
【請求項16】
インシュリン非依存性糖尿病患者の血糖値を制御又は低減するための医薬組成物の製造における、請求項13〜15のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−503381(P2007−503381A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523611(P2006−523611)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009337
【国際公開番号】WO2005/018626
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(505199382)フルニエ ラボラトリーズ アイルランド リミテッド (8)
【Fターム(参考)】