説明

メモリチェック装置、携帯端末、携帯電話機およびそのメモリチェック方法

【課題】メモリチェックの状況を管理できるようにして、メモリのチェック動作を中断しても問題が起きないようにする。
【解決手段】内蔵メモリ13を設けたCPU11に対してROM16およびRAM14を有するメモリチェック装置(携帯電話機)において、メモリチェックのチェックタイミングを設定し、かつそのメモリチェック状況を設定するチェックフラグを記憶するチェックフラグエリア131を前記内蔵メモリ内13に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリチェック装置、携帯端末、携帯電話機路およびそのメモリチェック方法に関し、特にメモリチェック機能を有するメモリチェック装置、携帯端末、携帯電話機およびそのメモリチェック方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の携帯電話機では、システムが複雑化しており、CPUを2つ以上持つものが増えている。例えば、図9はCPUを2つ以上持つもの携帯電話機のブロック図である。この携帯電話機は、表示などのユーザI/F系の制御を行うApplication CPU(以降ACPUという)10aと、基地局との送受信など通信系の制御を行うCommunication CPU(以降CCPUという)20とが、バスまたは、シリアルI/F(インターフェイス)などで接続されている。ACPU10aおよびCCPU20は、お互いに処理の割り込みを行いながら携帯電話としての動作をしている。
【0003】
ACPU10a内部には、制御を行うCPU11とメモリデータの読み出し書き込みの制御をするメモリコントローラ12と、それに接続される内蔵RAM13aからなる。ACPU10aは、RAM14とROM15aが接続されている。RAM14は、データの一次保存やワークエリアに使用される。ROM15aは、プログラムエリアとデータエリアに分かれている。プログラムエリア16にはプログラムが格納され、データエリア17aは各種パラメータやユーザデータの保存に使用される。又、ACPU10aには表示部となるLCD(図示しない)と、携帯電話を操作するためのキー(図示しない)が接続されている。
【0004】
CCPU20内部も、ACPU10aと同様に、CPU21とメモリコントローラ22と内蔵RAM23からなり、RAM24とROM25が接続されている。RAM24は、データの一次保存やワークエリアに使用される。ROM25は、プログラムエリアとデータエリアに分かれている。プログラムエリア26にはプログラムが格納され、データエリア27は通信に関するパラメータの保存に使用される。又、CCPU20には基地局との間で電波の送受信を行う、無線部(図示しない)が接続さている。なお、CPUが1個の場合は、このCPUに、表示部となるLCDと、携帯電話を操作するためのキーと、無線部とが接続される。
【0005】
このようなCPUの増加に伴い、メモリの数と容量も増加している。この結果、メモリを使用する数に比例してメモリ障害に起因する携帯電話機の故障率も高くなっている。また、メモリの品質は製造および製品出荷段階でその検査が行われるので、出荷時の動作に異常はなくても、経年変化による劣化やその他の外部要因で不具合となることも考えられる。
【0006】
そのため、ユーザが携帯電話機を使用している段階になって、携帯電話機に組み込まれたメモリの不具合が発生する場合も生じてきている。また、システムの複雑化に伴ってCPUが増加し、メモリも増加してくると、メモリに不具合が発生した場合に、そのメモリの障害箇所に応じて携帯電話機のさまざまな誤動作が故障現象として現れてくる。
【0007】
このような携帯電話のメモリの不具合をチェックする他の従来技術としては、例えば、バックアップ電源を必要とするSRAMの、バックアップ電源電圧の低下に起因するSRAMの破壊を検出する技術が、特許文献1(特開2005−149435号公報)にて開示されている。本特許文献1に開示された技術によれば、携帯電話機の電源投入時にSRAMに格納したチェックワードを読み出して、バックアップ電池の消耗によるSRAMに格納したデータの破壊を検出するものである。チェックワードをSRAM全体の破壊率が低い段階でも検出できるビット数にしたことによりSRAMに格納したデータの一部が破壊された場合でも確実にそれを検出することができる特徴を備えている。
【0008】
さらに、携帯電話機のようにレスポンス性能が重視される機器において、プログラムミスに起因するデータ破壊があってもそのデータを復旧可能とする技術が、特許文献2(特開2003−316661号公報)で述べられている。
【0009】
図10は、特許文献2に示された携帯電話機などのメモリシステム30のブロック図である。このシステム30は、「RISC型CPU+リアルタイムOS」を用いた携帯電話機(図示せず)に搭載され、CPU31、不揮発メモリ32、ROM33、 バックアップメモリ34を備えている。また、CPU31は、ROM33に記録されたデータ復旧用のプログラム40によって、データ破壊チェック手段41、データ復旧手段42及びデータバックアップ手段43として機能する。
【0010】
この構成において、不揮発性メモリ32は、複数のセクション(1〜n)に分割され、各セクション内にチェックデータ(1〜n)が記録されている。バックアップメモリ34は、不揮発性メモリ32と同じように複数のセクション(1〜n)に分割され、不揮発性メモリ32と同じデータが記録されている。そして、データ破壊チェック手段41は、各セクションのチェックデータの初期値を予め記憶しており、不揮発性メモリ32内のチェックデータが当該初期値と異なっていた場合に、データ破壊が発生したと判断する。データ復旧手段42は、データ破壊が検出されたとき、バックアップメモリ34に記録されたデータに基づき不揮発性メモリ32のデータを復旧する。
【0011】
このようにして、メモリシステム30は、システム終了時とシステム起動時に上述のようにしてメモリチェックを行っているので、プログラムミスによるデータ破壊があってもそのデータを復旧可能とする。
【0012】
また、特許文献3(特開平09−212430号公報)には、携帯型の情報処理装置の電源投入等の起動時にメモリチェック等の処理を高速化する技術が開示されている。特許文献3によれば、ハードウエア・チェック処理の中でメモリチェックを行い、異常が発見されなければエラーフィールドに「異常なし」と格納し、その後に行われるソフトウエア処理でのバックアップデータチェックをスキップさせることで処理の高速化を図っている。そして、バックアップデータには、このバックアップデータにアクセスするか否かを示すアクセスフラグが付けられている。
【0013】
【特許文献1】特開2005−149435号公報
【特許文献2】特開2003−316661号公報
【特許文献3】特開平09−212430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、携帯電話機のメモリに異常が発生すると、そのメモリの障害箇所に応じて携帯電話機のさまざまな誤動作が故障現象として現れてくる。例えば、メモリ異常の場所が通信系のプログラムやデータであった場合は、誤った電波の送信を行ってしまう可能性がある。又、メモリ異常の場所が、電源や充電に関するプログラムやデータであった場合は、発熱などを生ずる可能性もある。しかし、そのような故障に遭遇したときに、ユーザが自分で任意にメモリチェックを行って、メモリの正常性を確認する手段が携帯電話機には組み込まれていない。
【0015】
特許文献1乃至3に開示された技術では、いずれの場合も電源投入時やシステム起動時に起動メモリチェックを実行することが述べられているのみで、ユーザが任意のタイミングでメモリチェックを実行する方法については何ら開示されていない。特に、ユーザが携帯電話を使用中の任意のタイミングにメモリチェックを実行可能ならしめるためには、着信動作やユーザによるキー操作などでメモリチェックが中断されることについても考慮する必要があるので、そのようなことが考慮されていない従来技術においては、チェック動作のタイミングによっては、割り込み動作に対する反応が遅くなりリアルタイム動作を重視する携帯電話機としての機能を損なう可能性や、書き込まれているデータそのものを破壊してしまう可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、ユーザが任意のタイミングでメモリのセルフチェックの実行を可能とするメモリチェック装置、携帯電話機およびそのメモリチェック方法を提供する。任意のタイミングによるメモリチェックの実行中に、たとえその実行動作中に着信動作やユーザによるキー操作などで割り込みが発生した場合でも、メモリのデータを破壊することなくすぐにチェック動作を中断し、次のメモリチェック時には中断箇所からチェック動作を再開することができるメモリチェック装置、携帯電話機およびそのメモリチェック方法を提供する。
【0017】
本発明のメモリチェック装置の構成は、メモリチェック状況の管理を行うチェックフラグを有し、前記メモリチェックのチェックタイミングを設定できるようにしたことを特徴とする。
【0018】
本発明において、内蔵メモリを設けたCPUに対してROMおよびRAMを有するメモリチェック装置において、メモリチェックの状況を管理するフラグを記憶するフラグエリアを前記内蔵メモリ内に設けることができる。また、前記チェックフラグを、メモリチェックをしたか否かを示す第1フラグ、データがあるか否かを示す第2フラグ、データエリアがあるか否かを示す第3フラグ、の3種のフラグとすることができ、また、プログラムエリアのフラグを、メモリチェックをしたか否かを示す第4フラグと、プログラムエリアの使用が出来るか否かを示す第5フラグとすることができ、また、データエリアのフラグを、メモリチェックをしたか否かを示す第1フラグ、データがあるか否かを示す第2フラグ、データエリアがあるか否かを示す第3フラグ、の3種のフラグとすることができ、また、前記第2フラグを、未使用、データ有り、データコピー中、データ消去中、データチェック中を示すものとすることができ、また、前記第3フラグを、データエリアである、データ転送用エリアである、データ使用不可エリアであることを示すものとすることができる。
【0019】
さらに、本発明において、ユーザがメモリチェックのタイミングをあらかじめ設定できるようにすることができ、また、メモリチェックのタイミングを、セルフモード中、待ち受け中、充電中もしくは車載モード時に起動させることができ、また、ROM(プログラムエリア)のメモリチェックを、チェックサムデータをエリアごとに管理することで、メモリ破壊の場所により異なるエラー処理を行うようにすることができ、また、RAMのメモリチェックを、メモリにエラーがあることが判明した場合に、データの初期化処理を行うことができる。
【0020】
本発明の携帯端末または携帯電話機の構成は、上述したメモリチェック装置の機能を有することを特徴とする。
【0021】
本発明のメモリチェック方法の構成は、メモリのチェック状況を管理するチェックフラグにより、そのメモリチェックのチェックタイミングを設定することを特徴とする。
【0022】
本発明において、内蔵メモリを設けたCPUに対してROMおよびRAMを有するメモリチェック装置のメモリチェック方法において、前記チェックフラグを前記内蔵メモリ内のフラグエリアに記憶することができ、また、前記メモリチェック中に着信やキー操作などで割り込み処理が発生した場合、このメモリチェックを中断してチェックフラグにこのメモリチェックの状況を記録し、前記割り込み処理へ移行させることができ、また、前記メモリチェックが中断した場合、次のメモリチェック時に前記チェックフラグを確認することにより、前記中断したメモリチェックの途中から、継続してメモリチェックを行うことができる。また、メモリチェックのタイミングを、前記チェックフラグに従って、あらかじめ設定することができ、また、メモリチェックのタイミングを、割り込み動作の少ない、セルフモード中、待ち受け中、充電中もしくは車載モード時に起動させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のメモリチェック装置によれば、メモリチェックの状況を管理するチェックフラグを設けているので、メモリのセルフチェック中に、着信動作やユーザによるキー操作などで割り込みが発生した場合でもチェック動作の中断や再開を柔軟に実行することができる。そのため、メモリのデータを破壊することなく、ユーザが任意のタイミングでメモリチェックを行うことができる。また、リアルタイム動作が要求される携帯電話機でも、任意のタイミングでメモリのチェックを行うことが可能となり、メモリの障害箇所に応じて現れるさまざまな誤動作に対して早期に対処が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に図面により本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態を説明する携帯電話機(メモリチェック装置)のブロック図である。この図1において、携帯電話機は、表示などのユーザI/F系の制御および基地局との送受信など通信系の制御を1個のCPU部10で行う場合を示している。なお、本実施形態は、1個のCPU部の場合を説明しているが、前述した図9のように、ACPUとCCPUのように、CPUを2つ以上持つ携帯電話機にも適用可能である。
【0025】
本実施形態は、CPU部10内の内蔵RAM13内に,メモリチェックの状況を管理するフラグを記憶したフラグエリア131を設けたことを特徴とする。また、フラグエリア131の内容は、ROM15内のデータエリア17にもフラグエリア171として同様に記憶される。
【0026】
CPU部10内部には、制御を行うCPU11と、メモリデータの読み出し書き込みの制御をするメモリコントローラ12と、それに接続される内蔵RAM13を設けている。また、CPU部10は、RAM14とROM15が接続されている。RAM14は、データの一次保存やワークエリアに使用される。ROM15は、プログラムエリア16とデータエリア17に分かれている。プログラムエリア16にはプログラムが格納され、データエリア17は各種パラメータやユーザデータの保存に使用される。また、CPU部10には表示部となるLCD(図示しない)と、携帯電話を操作するためのキー(図示しない)と、基地局との間で電波の送受信を行う無線部(図示しない)が接続されている。
【0027】
なお、図1では、1つのROM15をプログラムエリア16とデータエリア17に分けているが、別々のROMで、それぞれをプログラムエリア、データエリアとしても構わない。
【0028】
本実施形態の動作における特徴は3つある。1)メモリエリアをフラグにより管理し、メモリチェックの状況を分かるようにする。2)ユーザがメモリチェックのタイミングを設定できるようにする。3)メモリチェックの状況が把握できることにより、割り込み処理があってもすぐにメモリチェック機能の中断が可能となる。
【0029】
以下、本実施形態における動作を説明する。まず、メモリチェックのタイミングをユーザが設定できるように、キーを割り当ておく。割り当てたキーにより、「電源OFF中」「待ち受け中」「セルフモード中」のそれぞれでメモリチェックが起動できるようにユーザが設定をする。この設定により、各モード(「電源OFF中」「待ち受け中」「セルフモード中」)になったところで、自動的にメモリのセルフチェックが動作するようになる。
【0030】
メモリチェック中に着信やキー操作などで割り込み処理が発生した場合、このメモリチェックを中断してチェックフラグにこのメモリチェックの状況を記録し、割り込み処理へ移行させることができる。また、そのメモリチェックが中断した場合、次のメモリチェック時にチェックフラグを確認することにより、中断したメモリチェックの途中から、継続してメモリチェックを行うことができる。すなわち、そのメモリのセルフチェック中に、着信動作やユーザによるキー操作などで割り込みが発生した場合でも、メモリのデータを破壊することなく、すぐにチェック動作を中断することができる。
【0031】
メモリ(RAM14の場合)は、図2のメモリ配置図のように、複数nのRAMエリアに分割してセルフチェック行う。又、RAM14の状態を管理するため、図3のメモリ配置図のようにあらかじめフラグを別のメモリに用意しておく。この場合、通常は内蔵RAM13内に設けたチェックフラグエリア131などを使用し、また、バックアップをROM(データエリア)15のデータエリア17内にチェックフラグエリア171として残しておくようにすれば良い。なお、フラグはRAM14のそれぞれのエリアに対応してそれぞれ設けられる。
【0032】
図3において、「RAMフラグA」はメモリチェックが行われているか否かを示すフラグであり、「0」は未チェック、「1」はチェック済みを示す。また、「RAMフラグB」はメモリチェックの状態を示すフラグである。「RAMフラグB」の「0」は未使用、「1」はデータ有り、「2」はコピー中、「3」は消去中、「4」は「チェック中をそれぞれ示す。
【0033】
「RAMフラグC」はRAMのデータエリアを説明するもので、「0」はデータエリアであること、「1」は転送用エリアであること、「2」は使用不可エリア(壊れているエリア)であるかことを示すフラグである。
【0034】
本実施形態では、メモリチェックの状況をチェックフラグにより管理している。従って、メモリチェック中に割り込み動作が発生した場合でも、メモリのデータを破壊することなくすぐに割り込み処理へ移行することができる。また、メモリチェックが割り込み動作により中断しても、次のメモリチェック時には、メモリのフラグを確認することで継続してメモリのチェックを行うことができる。これにより、メモリのセルフチェックが先頭エリアばかり行われることを回避でき、最終エリアまでまんべんなくチェックできるようになる。
【0035】
また、メモリ異常発見時には、警告音や、LCDにアラーム表示をしてユーザに知らせることで、メモリ異常に起因する携帯電話機の異常動作の拡大を未然に防止することができる。
【実施例1】
【0036】
次に、本実施形態の詳細を、実施例1として図4のフロー図により説明する。図4はRAMの場合のメモリセルフチェックの手順を説明している。まず、フラグAを確認しセルフチェックが前に行われているかを確認する(ステップS1)。全てのエリアがチェック済み(フラグAが全て1)であった場合、フラグAを全て0にし、チェックは先頭エリアから行う(ステップS2)。全てのエリアがチェック済みで無い場合は、途中のエリアからチェックを開始する(ステップS3)。
【0037】
セルフチェックするエリア(以降、チェックエリアという)を決定したら、チェックエリアのフラグBを「2:コピー中」にし(ステップS4)、データを転送用エリアにコピーする(ステップS5)。なお、転送用エリアはあらかじめいくつか用意しておく。
【0038】
コピーが完了したら、転送用エリアのフラグBを「1:データ有」に、チェックエリアのフラグBを「3:消去中」にし(ステップS6)、チェックエリアのデータ消去を行う(ステップS7:以下「ステップ」を省略する)。
【0039】
消去完了後、チェックエリアのフラグBを「4:チェック中」にし(S8)、メモリ書込み/読出し(Write/Read)チェックを行う(S9)。このWrite/Readチェックは、0xAA、0x55などの任意のパタンを書き込んだ後、読み出して値を確認することで行う。
【0040】
Write/Readチェック後、その結果が正常であるか否かを判定し(S10)、正常であれば、転送用エリアからデータをチェックエリアにコピーし元に戻す(S11)。
【0041】
コピーが完了したら、チェックエリアのフラグAを「1:チェック済み」、フラグBを「1:データ有」に戻す(S12)。次に、転送用エリアのフラグBを「3:消去中」にし(S13)、転送用エリアのデータを消去する(S14)。
【0042】
消去が完了したら、転送用エリアのフラグBを「0:未使用」にし(S15)、チェックエリアが最終エリアであるか否かを確認する(S16)。チェックエリアが最終エリアでない場合にはチェックエリアを次のエリアとし(S17)、ステップS4からチェックを繰り返す。最終エリアであった場合にはセルフチェックは終了となる。
【0043】
ステップS10のWrite/Readチェックにて異常が発生している場合は、チェックエリアをメモリ異常領域としてチェックエリアのフラグCを「2:使用不可エリア」にする(S18)。
【0044】
ユーザには「データエリアに異常があるため初期化処理を行います。」などとLCDに表示することで知らせ(また、警告音などを併せても良い)、エラー処理を行う(S19)。このエラー処理は、RAMの初期化処理を行い、初期データをRAMに展開しなおす。なお、この初期化処理では、フラグCを確認して使用不可エリアには初期データの展開をしないようにする。また、以降の処理でも使用不可エリアは使用しないようにする。
【0045】
ここで、メモリのセルフチェック中に、着信やユーザのキー操作などの割り込み処理により、別の処理に移行しても問題が無いことを説明する。
【0046】
メモリチェック中に中断される可能性が高い処理は、処理時間の長いステップS5のデータコピー、ステップS7のデータ消去、ステップS9のメモリチェック、ステップS11のデータの書き戻し、ステップS15の転送用エリアのデータ消去である。この他の、例えばフラグを立てるなどの処理は数μS程度の処理時間であるため、処理終了後に割り込み処理へ移行しても影響は無い。
【0047】
ステップS5のデータコピーが中断されたとしても、チェックエリアのデータは残ったままなので問題は無い。ステップS7のデータ消去中では、すでに転送用エリアにデータが転送されており、又、転送用エリアにデータが移動してあることはフラグの確認で分かることから問題は無い。ステップS9のメモリチェック中とステップS11のデータの書き戻し中も、ステップS7と同様に転送用エリアにデータがあるので問題は無い。ステップS15の転送用エリアのデータ消去中では、チェックエリアにすでにデータが戻っており、又、フラグからデータがチェックエリアに戻っていることが分かるので、この場合も問題は無い。
【0048】
本実施例では、CPU部10を,ACPU側、CCPU側のどちらのRAMかを区別はしていないが、従来例で説明したACPU側のメモリチェックもCCPU側のメモリチェックも同様の手順で行うことができる。
【0049】
また、メモリチェックの起動タイミングは、「電源OFF中」「待ち受け中」「セルフモード中」としているが、メモリチェックはCPUとメモリとのアクセスを絶え間なく行うため、消費電流が問題になる可能性がある。これについては、電池消費を気にする必要がない、充電中、もしくは車載モード中などにメモリチェックを行うようにすれば良い。さらに、電源OFF中かつ充電中などと条件をつければ、割り込み処理によるメモリチェックの中断を減らすことができる。
【0050】
この他に、メモリチェックの起動タイミングとして、ユーザによるメモリチェックだけでなく、何らかの理由でサービスショップに持ち込まれた時に、保守の一環としてメモリチェックを行うことも可能である。また、携帯電話機のテスト用冶具などに接続されたことをトリガにしてメモリのチェック機能を起動することなども可能である。
【実施例2】
【0051】
発明の他の実施例2として、図5のフロー図により、ROMのプログラムエリアでのメモリチェックを行う方法を説明する。なお、メモリチェックの起動タイミングは、実施例1と同様であるので省略する。
【0052】
ROM15は、図6(a)の配置図ように、プログラムエリア16とデータエリア17に分けて管理されている。プログラムエリア16は、プログラムエリア(1)〜プログラムエリア(m)の複数m個のエリアに分割され、データエリア17もデータエリア(1)〜データエリア(k)の複数k個のエリアに分割されている。このようなプログラムエリア16の各プログラムエリアを順次メモリチェックを行う。
【0053】
また、ROM15の状態を管理するため、図7(a)の配置図のように、あらかじめフラグを別のメモリエリアに用意しておく。通常は内蔵RAM13などを使用し、バックアップをROM(データエリア)17に残しておくようにすれば良い。これらフラグはROMのそれぞれのエリアに対応している。「プログラムエリアフラグA」はメモリチェックが行われているか否かを示すフラグである。「プログラムエリアフラグB」は使用可能エリアか、使用不可エリア(壊れているエリア)であるかを示すフラグである。
【0054】
次に、図5を用いてROM(プログラムエリア)の場合のメモリセルフチェックの手順を説明する。メモリチェックプログラムが実行された場合、チェックプログラムを内蔵RAM13に展開し、内蔵RAM13上でチェックプログラムを動作させる。まず、フラグAを確認し、セルフチェックが前に行われているか否かを確認する(ステップS21:以下ステップを省略する)。全てのエリアがチェック済み(フラグAが全て1)であった場合、フラグAを全て0にし、チェックは先頭エリアから行う(S22)。全てのエリアがチェック済みで無い場合は、途中からチェックを開始する(S23)。
【0055】
セルフチェックするエリア(以降、チェックエリアという)を決定したら、チェックエリアのチェックサムを計算する(S24)。このチェックサムは、ROMに記憶されたプログラムデータを加算した値であり、あらかじめエリアごとに計算しておき別のメモリ、またはROM15のデータエリア17に保存しておく。
【0056】
なお、チェックサムのデ−タの保存は、図6(a)のデータエリア17を用いることができる。この場合には、図6(b)の配置図ように、データエリア17の先頭のデータエリア(1)に、それぞれプログラムエリア(1)からプログラムエリア(m)の各チェックサムデータを格納することが出来る。
【0057】
また、このチェックサムのデ−タは、プログラムエリアとデータエリアの数が同じであれば、プログラムエリアの番号に対応するデータエリアの先頭などに、チェックサムデータを格納することも出来る。
【0058】
また、このチェックサムのデ−タは、図7(b)の配置図ように、プログラムエリアフラグAをm個、プログラムエリアフラグBをm個、チェックサムデ−タをm個のエリアをそれぞれ用意することもできる。m個の各プログラムエリアフラグに対応して、チェックサムデ−タを用意したものであり、この場合には、データの対応づけが容易にできる。
【0059】
そして、計算したチェックサム結果が、保存された値と同じであるか否かを確認する(S25)。それが保存された値と同じである場合、チェックエリアのフラグAを「1:チェック済み」にし(S26)、どこまでセルフチェックを行ったかを記録しておく。
【0060】
次に、チェックエリアが最終エリアであるか否かを確認する(S27)。それが最終エリアでない場合にはチェックエリアを次のエリアとし(S28)、ステップS24からチェックを繰り返す。最終エリアであった場合にはセルフチェックは終了となる。
【0061】
ステップS25でチェックサムの値が異なる場合は、チェックエリアをメモリ異常領域とし、フラグBを「1:使用不可」とする(S29)。そして、そのエラーが含まれるエリアにどのプログラムが含まれているかを確認し、ユーザにメッセージを送る(S30)。
【0062】
例えば、2つのCPUを用いた場合、ACPU側のメモリチェックでのエラーであった場合、そのエリアが電源や充電などのプログラムが格納されている部分であると、発熱などの異常動作を起こす可能性がある。そのため異常動作時には、警告音を発し、LCD表示には「電源系の異常が見られます」などと表示し、数秒後に電源を強制的にOFFにする。
【0063】
また、CCPU側のメモリチェックでのエラーであった場合は、通信系のプログラムであるので、異常送信や、受信エラーなどが発生する可能性がある。そのため、警告音を発し、LCD表示には、「通信系の異常が見られます」などと表示し、即座に無線機能を停止させる。
【0064】
最後に、メモリのセルフチェック中に、着信やユーザのキー操作などの割り込み処理により、別の処理に移行しても問題が無いことを説明する。メモリチェック中に中断される可能性が高い処理は、処理時間の長いステップS24のチェックサムによる計算のみである。ここでは読み出ししか行っていないため、中断されても特に問題は無い。この他の処理(フラグを立てるなどの処理)は数μS程度の処理時間であるため、処理終了後に割り込み処理へ移行しても影響は無い。
【実施例3】
【0065】
次に、本発明の実施例3として、ROM15のデータエリア17でのメモリチェック方法を説明する。なお、メモリチェックの起動タイミングは、実施例2と同様であるので省略する。
【0066】
ROM15は、前述した図6のように、プログラムエリア16とデータエリア17に分けて管理されている。この場合、図6のように、データエリア17を複数に分割してメモリチェックを行う。又、ROM(データエリア)の状態を管理するため、図8の配置図のように、あらかじめフラグを別のメモリに用意しておく。通常は内蔵RAM13などを使用し、バックアップを別のROMに残しておく。フラグはROM(データエリア)のそれぞれのエリアに対応している。「データエリアフラグA」はメモリチェックが行われているか否かを示すフラグである。「データエリアフラグB」はメモリチェックの状態を示すフラグである。「データエリアフラグC」はROMがデータエリアであるか、転送用エリアであるか、また、使用不可エリア(壊れているエリア)であるかを示すフラグである。
【0067】
ROM(データエリア)のメモリセルフチェックの手順は、図4と同様に処理されるが、ステップS19のエラー処理以外は、RAMでのメモリチェックと同様であるので、その説明は省略する。このエラーが発生した場合の処理(S19)は、RAMの場合と違い、初期データの展開などによるデータの復旧はできない。そのため、壊れているエリアによっては、電源を強制的にOFFにすることになる。
【0068】
例えば、2つのCPUを用いた場合、ACPU側のROM(データエリア)チェックでエラーであった場合、そのエリアが電源や充電などのデータが格納されている部分であると、発熱などの異常動作を起こす可能性がある。この対策として、警告音を発しLCD表示には「電源系の異常が見られます」などと表示し、数秒後に電源を強制的にOFFにすればよい。また、電話帳などのデータが格納されている部分では、LCD表示には「電話帳データが壊れている可能性があります」などと表示し、ユーザに注意を促すようにすればよい。
【0069】
また、CCPU側のROM(データエリア)チェックでのエラーであった場合は、通信系のデータであるので、異常送信や、受信エラーなどが発生する可能性がある可能性もある。そのため、警告音を発しLCD表示には「通信系の異常が見られます」などと表示し、即座に無線機能を停止させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態のメモリチェック装置(携帯電話機)を説明するブロック図である。
【図2】図1のRAMのエリアを説明する構成図である。
【図3】図1のRAMのフラグを説明する構成図である。
【図4】本発明の第1の実施例のメモリチェック装置の動作を説明するフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施例のメモリチェック装置の動作を説明するフロー図である。
【図6】(a)(b)は図5の場合のROMの構成およびそのデータエリアの構成を説明する構成図である。
【図7】(a)(b)は図5の場合のROMのプログラムエリアおよびそのチェックサムデータの各フラグを説明する構成図である。
【図8】本発明の第3の実施例の携帯電話機のデータエリアを説明する構成図である。
【図9】従来例の2つのCPUを持つ携帯電話機を説明するブロック図である。
【図10】他の従来例の携帯電話機を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
10 CPU部
10a ACPU(Application CPU)
11,21,31 CPU
12,22 メモリコントローラ
13,13a,23 内蔵RAM
131,171 チェックフラグエリア
14,24 RAM
15,15a,25,33 ROM
16,26 プログラムエリア
17,17a,27 データエリア
20 CCPU(Communication CPU)
30 メモリシステム
32 不揮発メモリ
34 バックアップメモリ
40 プログラム
41 データ破壊チェック手段
42 データ復旧手段
43 データバックアップ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリチェック状況の管理を行うチェックフラグを有し、前記メモリチェックのチェックタイミングを設定できるようにしたことを特徴とするメモリチェック装置。
【請求項2】
内蔵メモリを設けたCPUに対してROMおよびRAMを有するメモリチェック装置において、前記チェックフラグを記憶するフラグエリアを前記内蔵メモリ内に設けた請求項1記載のメモリチェック装置。
【請求項3】
前記RAMのチェックフラグを、メモリチェックが行われているか否かを示す第1フラグ、メモリチェックの状態を示す第2フラグ、データエリアであるか否かを示す第3フラグの3種のフラグとする請求項2記載のメモリチェック装置。
【請求項4】
前記ROMのプログラムエリアのチェックフラグを、メモリチェックが行われているか否かを示す第4フラグと、プログラムエリアの使用が出来るか否かを示す第5フラグとする請求項2記載のメモリチェック装置。
【請求項5】
前記ROMのデータエリアのチェックフラグを、メモリチェックが行われているか否かを示す第1フラグ、メモリチェックの状態を示す第2フラグ、データエリアがあるか否かを示す第3フラグ、の3種のフラグとする請求項2記載のメモリチェック装置。
【請求項6】
前記第2フラグを、未使用、データ有り、データコピー中、データ消去中、データチェック中を示すものとする請求項3または5記載のメモリチェック装置。
【請求項7】
前記第3フラグを、データエリアである、データ転送用エリアである、またはデータ使用不可エリアであることを示すものとする請求項3または5記載のメモリチェック装置。
【請求項8】
メモリチェックのタイミングを、前記チェックフラグに従って、あらかじめ設定できるようにした請求項1または2記載のメモリチェック装置。
【請求項9】
メモリチェックのタイミングを、割り込み動作の少ない、セルフモード中、待ち受け中、充電中もしくは車載モード時に起動させる請求項8記載のメモリチェック装置。
【請求項10】
前記ROMのプログラムエリアのメモリチェックを、チェックサムデータをエリアごとに管理することにより、メモリ破壊の場所により異なるエラー処理を行うようにした請求項1または2記載のメモリチェック装置。
【請求項11】
RAMのメモリチェックを、メモリにエラーがあることが判明した場合に、データの初期化処理を行う請求項1、2または4記載のメモリチェック装置。
【請求項12】
前記RAMのメモリチェックにおいて、メモリ破壊の場所を使用不可エリアとして、使用しないようにした請求項1、2または4記載のメモリチェック装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちの1項に記載のメモリチェック装置の機能を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項14】
請求項1乃至12のうちの1項に記載のメモリチェック装置の機能を有することを特徴とする携帯電話機。
【請求項15】
メモリのチェック状況を管理するチェックフラグにより、そのメモリチェックのチェックタイミングを設定することを特徴とするメモリチェック方法。
【請求項16】
内蔵メモリを設けたCPUに対してROMおよびRAMを有するメモリチェック装置のメモリチェック方法において、前記チェックフラグを前記内蔵メモリ内のフラグエリアに記憶する請求項15記載のメモリチェック方法。
【請求項17】
前記メモリチェック中に着信やキー操作などで割り込み処理が発生した場合、このメモリチェックを中断してチェックフラグにこのメモリチェックの状況を記録し、前記割り込み処理へ移行させる請求項15または16記載のメモリチェック方法。
【請求項18】
前記メモリチェックが中断した場合、次のメモリチェック時に前記チェックフラグを確認することにより、前記中断したメモリチェックの途中から、継続してメモリチェックを行う請求項17記載のメモリチェック方法。
【請求項19】
メモリチェックのタイミングを、前記チェックフラグに従って、あらかじめ設定する請求項15または16記載のメモリチェック方法。
【請求項20】
メモリチェックのタイミングを、割り込み動作の少ない、セルフモード中、待ち受け中、充電中もしくは車載モード時に起動させる請求項19記載のメモリチェック方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−148684(P2007−148684A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340969(P2005−340969)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】