説明

メラニン生成抑制剤

【課題】 本発明の目的は、優れたメラニン生成抑制作用を備えており、しみやそばかす等の皮膚の黒化を効果的に予防乃至治療することができるメラニン生成抑制剤を提供することである。
【解決手段】 カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分をメラニン生成抑制剤の有効成分として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニンの生成を抑制して、しみ、そばかすを予防乃至治療できるメラニン生成抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
しみやそばかす等の皮膚の黒化は、皮膚中に存在するチロシンが酸化されてメラニンが生成し、これが沈着することにより生じることが分かっている。このような皮膚の黒化を予防又は改善して皮膚の美白を実現する方策として、メラニンの生成を抑制することが有効であると考えられており、従来より、メラニン生成を抑制する物質のスクリーニングが精力的に行われている。
【0003】
これまでに、メラニン生成抑制作用を有する成分として、各種植物又は海藻の抽出物、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸等が報告されており、その一部のものについては、化粧料、食品、医薬品等の各種製品に配合され実用化されている。しかしながら、従来報告されている成分では、メラニン生成抑制効果、安全性、安定性の点で必ずしも満足できるものではなく、これを配合した各種製品では、所期の美白効果を十分に得ることができないのが現状である。このような従来技術を背景として、安全性や安定性が良好で優れたメラニン生成抑制作用を有する成分、及び該成分を配合した各種形態の製品の開発が望まれていた。
【0004】
一方、近年、ココアやその原料であるカカオマスの機能性に関する研究が進められており、創傷治癒促進作用(非特許文献1)、LPS臓器障害抑制作用(非特許文献1)、抗菌作用(非特許文献2及び3)、便通・便臭改善作用(非特許文献4)等が報告されている。しかかしながら、カカオニブ、カカオマス、ココア又はこれらの抽出物に、メラニン生成抑制作用があることについては、一切報告されていない。
【非特許文献1】日本農芸化学界会誌、第75巻、臨時増刊号、2001年5月、2001年度大会(京都)講演要旨集、第38頁の1M4p16及び第39頁の1M4p17
【非特許文献2】亀井優徳等, 「ココアのヘリコバクターピロリ殺菌効果および臨床試験」, BIO INDUSTRY, Vol. 18 No. 12, p. 5-14, 2001
【非特許文献3】高橋俊雄等, 「カカオマスの腸管出血性大腸菌O157:H7に対する抗菌効果の検討」, 感染症学雑誌, 第73巻, 第7号, p. 694-701, 平成11年7月20日
【非特許文献4】間藤卓等, 「ココアと救急救命センター −ココア添加経腸栄養の試み−」, BIO INDUSTRY, Vol. 16 No. 8, p. 49-56, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れたメラニン生成抑制作用を備えており、しみやそばかす等の皮膚の黒化を効果的に予防乃至治療することができるメラニン生成抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、カカオニブ、カカオマス、ココア及びこれらの抽出物は、メラニン生成抑制作用に優れており、シミやそばかす等の皮膚の黒化の予防や治療に有用であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより、完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記態様の発明を提供するものである:
項1. カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制剤。
項2. 項1のメラニン生成抑制剤を含有する、医薬品。
項3. 項1のメラニン生成抑制剤を含有する、食品。
項4. 項1のメラニン生成抑制剤を含有する、化粧料。
項5. カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用の医薬組成物。
項6. 皮膚の黒化の予防又は治療剤である、項5に記載の医薬組成物。
項7. カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用と表示された食品。
項8. カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用の化粧料。
項9. カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、美白化粧料。
【0008】
以下、本発明のメラニン生成抑制剤を詳細に説明する。
【0009】
本発明のメラニン生成抑制剤は、カカオニブ、カカオマス、ココア、カカオニブ抽出物、カカオマス抽出物、及びココア抽出物の1種又は2種以上を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、カカオニブ、カカオマス及びココアは、通常、チョコレートやココア飲料の製造に使用されているものを使用することができる。
【0011】
カカオニブ、カカオマス及びココアは、例えば、以下のようにして得ることができる。即ち、カカオの果実からカカオ豆を取り出し、通常、約30℃の条件下で4〜7日間発酵させた後、乾燥させる。乾燥させたカカオ豆をクリーナーで選別して金属や石等の異物を除去した後、セパレータで砕いて皮や胚芽等を取り除くことにより、カカオニブを得ることができる。このカカオニブを、必要に応じて、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤をカカオニブの重量に対して0〜5重量%、好ましくは2〜4重量%含む溶液に浸漬し、50〜100℃で0〜150分間、好ましくは80〜100℃で60〜120分間アルカリ処理を行ってもよい。このアルカリ処理により、カカオ豆の苦味や渋味を除去することができる。次いで、100〜150℃で20〜120分間焙焼し、必要に応じてグラインダーで磨砕することにより、カカオマスを得ることができる。更に、このカカオマスをココアプレスで搾油してココアバターを分離し、必要に応じてココアミルで粉砕して細かい粉末にすることにより、ココア(通常、ココアバター含量15〜25%程度)を得ることができる。
【0012】
本発明で使用されるココアとして、特に制限されないが、通常、ココアバター含量が0〜25重量%のものが例示される。即ち、本発明では、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」で規定されるココアパウダー(ココアバター含量8%以上)のみならず、上記規約上、ココアパウダーの範疇に入らない脱脂ココア(ココアバター含量8%未満)も用いることができる。
【0013】
また、本発明において、カカオニブ抽出物とは、カカオニブを溶媒により抽出処理することにより得られるカカオニブの溶媒抽出物であり、公知の方法で調製することができる。カカオニブ抽出物の調製に使用される抽出溶媒としては、特に制限されないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;水;アセトン;酢酸エチル;酢酸ブチル;トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素等が例示される。これらの極性溶媒は、1種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。該抽出溶媒として、好ましくは、低級アルコール、多価アルコール、水、及びこれらの混合液等の極性溶媒であり、更に好ましくは水、及び水とエタノールの混合液が挙げられる。なお、抽出溶媒が、炭素数1〜5の低級アルコールと水の混合液である場合、該混合液の総重量に対する該低級アルコールの含有割合としては、例えば10〜99.9重量%、好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは40〜80重量%となる割合が挙げられる。
【0014】
カカオニブからカカオニブ抽出物を抽出する方法としては、当業界で公知の抽出方法を採用することができる。当該抽出処理方法としては、具体的には、小規模生産の場合であれば抽出溶媒1Lに対してカカオニブを10〜200g、好ましくは50〜100gの割合で添加し、70〜100℃で0.1〜3時間程度、静置又は撹拌し、次いで固形分を除去する方法が例示される。また、大規模生産の場合であればカカオニブを充填したセルに抽出溶媒を通過させてカカオニブ抽出液を得る、通常の向流抽出等の方法も挙げられる。
【0015】
本発明において、カカオマス抽出物とは、カカオマスを溶媒により抽出処理することにより得られるカカオマスの溶媒抽出物であり、その抽出に使用される溶媒や抽出方法については、前記カカオニブ抽出物の場合と同様である。
【0016】
また、本発明において、ココア抽出物とは、ココアを溶媒により抽出処理することにより得られるココアの溶媒抽出物であり、その抽出に使用される溶媒や抽出方法については、前記カカオニブ抽出物の場合と同様である。
【0017】
なお、本発明において、カカオニブ抽出物、カカオマス抽出物及びココア抽出物は、抽出処理後の液状のまま使用できるが、必要に応じて濃縮、乾燥等を行い、濃縮物や乾燥物として使用することもできる。また、濃縮又は乾燥後、得られた濃縮物又は乾燥物を、適当な溶剤に再溶解又は再懸濁して用いてもよい。
【0018】
本発明のメラニン生成抑制剤は、経口的に摂取又は投与されても、また経皮的に適用されても、メラニン生成を抑制する作用を有効に発揮できる。本発明のメラニン生成抑制剤の有効摂取又は投与量は、使用する有効成分の種類、対象者の年齢や性別、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、本発明のメラニン生成抑制剤を経口摂取又は投与する場合であれば、通常、成人1日当たりの該剤の有効量として、ココア重量換算で3〜25g、好ましくは5〜20gに相当する量が例示される。また、例えば、本発明のメラニン生成抑制剤を経皮適用する場合であれば、通常、成人1日当たりの該剤の有効量として、ココア重量換算で1〜1000g、好ましくは1〜100gに相当する量が例示される。本明細書において、ココア重量換算とは、「ココアバターを23重量%含むココア」の重量に換算することである。具体的には、カカオニブ又はカカオマスの場合は、カカオニブ又はカカオマスの重量を、これを原料として取得される「ココアバターを23重量%含むココア」の重量に換算すること;ココアの場合は、ココアバターの含有量を23重量%にした場合の重量に換算すること;カカオニブ抽出物又はカカオマス抽出物の場合は、抽出原料として使用したカカオニブ又はカカオマスの重量を、「ココアバターを23重量%含むココア」の重量に換算すること;ココア抽出物の場合は、抽出原料として使用したココアの量を、ココアバターの含有量を23重量%にした場合の重量に換算することを意味する。
【0019】
本発明のメラニン生成抑制剤は、医薬品、食品、化粧料等の各種分野で用いられ、医薬の有効成分、食品原料、化粧料原料等として使用することができる。
【0020】
例えば、医薬品分野では、本発明のメラニン生成抑制剤は、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化され、メラニン生成抑制用、或いは皮膚の黒化の予防又は治療用医薬組成物として提供される。該医薬組成物には、基材や担体の他、薬学的に許容されることを限度として、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、保存剤、保湿剤、抗菌剤防腐剤、香料、顔料、界面活性剤、安定剤、溶解補助剤等の添加剤を任意に配合してもよい。
【0021】
当該医薬組成物は、内用形態又は外用形態のいずれで適用されるものであってもよい。例えば、内用形態で投与される医薬組成物としては、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の剤型のものが例示される。また、外用形態で投与される医薬組成物としては、軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、貼付剤、スプレー剤等の剤型のものが例示される。
【0022】
当該医薬組成物において、本発明のメラニン生成抑制剤の配合割合は、上記有効量、該医薬組成物の剤型、投与形態等に応じて設定される。例えば、内用形態で投与される医薬組成物の場合、該組成物の総量に対して、メラニン生成抑制剤の有効成分が、ココア重量換算で0.01〜1000重量%、好ましくは0.1〜100重量%、更に好ましくは1〜50重量%となる割合が挙げられる。また、外用形態で投与される医薬組成物の場合、該組成物の総量に対して、メラニン生成抑制剤の有効成分が、ココア重量換算で0.01〜1000重量%、好ましくは0.1〜100重量%、更に好ましくは1〜50重量%となる割合が挙げられる。
【0023】
また、例えば、食品分野では、本発明のメラニン生成抑制剤は、食品素材として各種食品に配合され、メラニン生成抑制用、或いは皮膚の黒化の予防又は治療用の食品として提供される。特に、本発明のメラニン生成抑制剤が配合された食品は、メラニン生成抑制用、皮膚の黒化の予防又は治療用、或いは美白用と表示された食品として提供することができる。
【0024】
本発明のメラニン生成抑制剤が配合される食品としては、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等を挙げることができる。該食品として、例えば、チョコレート、ビスケット、ガム、キャンディー、クッキー、グミ、打錠菓子等の菓子類;シリアル;粉末飲料、清涼飲料、乳飲料、栄養飲料、炭酸飲料等の飲料;アイスクリーム、シャーベット等の冷菓等が挙げられる。また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、タブレット、糖衣錠等の形態のものであってもよい。
【0025】
当該食品において、本発明のメラニン生成抑制剤の配合割合は、上記有効量や食品の形態態等に応じて適宜設定される。一例として、食品の総量に対して、メラニン生成抑制剤の有効成分が、ココア重量換算で0.1〜100重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは3〜50重量%となる割合が挙げられる。
【0026】
また、例えば、化粧料分野では、本発明のメラニン生成抑制剤は、化粧料原料として許容される基材や担体と混合され、メラニン生成抑制用、皮膚の黒化の予防又は治療用、或いは美白用の化粧料として提供される。当該化粧料には、必要に応じて、細胞賦活剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、着色剤等の添加剤を適宜配合することもできる。本発明のメラニン生成抑制剤が配合された化粧料として、具体的には、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック、洗顔料、皮膚洗浄料、マッサージ剤、クレンジング剤、ファンデーション、化粧下地、口唇用化粧料等が例示される。
【0027】
当該化粧料において、本発明のメラニン生成抑制剤の配合割合は、上記有効量や化粧料の形態等に応じて適宜設定される。一例として、化粧料の総量に対して、メラニン生成抑制剤の有効成分が、ココア重量換算で0.01〜100重量%、好ましくは0.01〜90重量%、更に好ましくは0.1〜40重量%となる割合が挙げられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のメラニン生成抑制剤によれば、メラニンの生成を効果的に抑制して、皮膚の黒化を予防乃至治療することができる。本発明のメラニン生成抑制剤の有効成分は、長年に亘る食経験があるカカオニブ、カカオマス及び/又はココアを使用しており、長期間、摂取又は適用しても副作用の心配が無く安全である。
【0029】
また、本発明のメラニン生成抑制剤によれば、内用又は外用のいずれの形態で適用しても所望の効果を奏し得るので、医薬品、食品、化粧料等の多岐にわたる分野でメラニンの生成を抑制する手段を提供することが可能になる。
【0030】
更に、本発明のメラニン生成抑制剤は、メラニンの生成を効果的に抑制できるので、皮膚の黒化の予防又は治療剤、或いは美白剤に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、実施例等を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1 ココア抽出物の製造−1
ココアバターを23重量%含有するココアパウダー(森永製菓株式会社製)30gを蒸留水に懸濁し、300mlの溶液(pH7.96)(以下、この溶液を「ココア溶液」と表記する)を得た。このココア溶液を2N塩酸でpH2に調整した後、300mlのn−ヘキサンを加えて室温で10分間振とうし、次いで遠心分離により水溶性画分とn−ヘキサン画分に分離し、n−ヘキサン画分を回収した。残った水性画分に対して、この作業を2回繰り返した。次いで、エバポレーターを用いて、回収した3回分のn−ヘキサン画分からn−ヘキサンを完全に蒸発させて、6.7gの油脂分を得た。得られた油脂分を蒸留水に懸濁し、更に8N水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整し、300mlの油脂含有溶液(pH7.0)を得た。この油脂含有水溶液に4倍量の100%メタノールを加えて、65℃で15分間振とうし、次いで遠心分離により油性画分と80%メタノール画分に分離し、80%メタノール画分を回収した。残った油性画分に対して、80%メタノール(80重量%メタノール及び20重量%水含有)を300ml加えて、65℃で15分間振とうし、次いで遠心分離により油性画分と80%メタノール画分に分離し、80%メタノール画分を回収した。この作業をもう1回繰り返した。次いで、エバポレーターを用いて、回収した3回分の80%メタノール画分を濃縮し、最終的に54mlのココア抽出液を得た。このココア抽出液には、ココア中の遊離脂肪酸が含まれていると考えられる。
【0032】
製造例2 ココア抽出物の製造−2
ココアバターを23重量%含有するココアパウダー(森永製菓株式会社製)30gを蒸留水に懸濁し、300mlの溶液(pH7.96)(以下、この溶液を「ココア溶液」と表記する)を得た。このココア溶液に等量のn−ヘキサンを加えて室温で10分間振とうし、次いで遠心分離により水溶性画分とn−ヘキサン画分に分離し、n−ヘキサン画分を除去した。次いで、水溶性画分に、最終濃度が70重量%となるように、エタノールを加えて10分間振とうし、遠心分離により上清を回収した。残存した沈渣に70%エタノール(70重量%エタノール、30重量%水含有)を300ml加えて10分間振とうし、遠心分離により上清を回収した。この作業をもう1回繰り返した。次いで、エバポレーターを用いて、回収した3回分の上清からエタノールを完全に蒸散させた後、加水して最終的に600mlのココア抽出液を得た。このココア抽出液には、ココア中のポリフェノール類が含まれていると考えられる。
【0033】
製造例3 ココア抽出物の製造−3
ココアバターを23重量%含有するココアパウダー(森永製菓株式会社製)30gを蒸留水に懸濁し、300mlの溶液(pH7.96)(以下、この溶液を「ココア溶液」と表記する)を得た。このココア溶液に等量のn−ヘキサンを加えて室温で10分間振とうし、次いで遠心分離により水溶性画分とn−ヘキサン画分に分離し、n−ヘキサン画分を除去した。次いで、水溶性画分に、等量の100%メタノールを加えて10分間振とうし、遠心分離により上清を回収した。残存した沈渣に50%メタノール(50重量%メタノール、50重量%水含有)を300ml加えて10分間振とうし、遠心分離により上清を回収した。この作業をもう1回繰り返した。次いで、エバポレーターを用いて、回収した3回分の上清からメタノールを完全に蒸散させて、最終的に54mlのココア抽出液を得た。このココア抽出液には、ココア中のポリフェノール類が含まれていると考えられる。
【0034】
製造例4 ココア抽出物の製造
ココアバターを23重量%含有するココアパウダー(森永製菓株式会社製)30gを蒸留水に懸濁し、300mlの溶液(pH7.96)(以下、この溶液を「ココア溶液」と表記する)を得た。このココア溶液をホットスターラーで70〜80℃に加熱しながら60分間振とうした後、遠心分離により上清を回収した。残存した沈渣に300mlの蒸留水を加え再懸濁し、ホットスターラーで70〜80℃に加熱しながら60分間振とうした後、遠心分離により上清を回収した。この操作をもう1回繰り返した。次いで、エバポレーターを用いて、回収した3回分の上清を濃縮して、最終的に600mlのココア抽出液を得た。このココア抽出液には、ココア中のポリフェノール類の一部が含まれていると考えられる。
【0035】
試験例1 メラニン生成抑制効果の評価試験
メラニン産生細胞であるマウスB16F10メラノーマ細胞(東北大学加齢医学研究所細胞資源センターより分与)を用いて、上記製造例1−4で得られたココア抽出物のメラニン生成抑制作用について、以下の方法により評価を行った。なお、当該マウスB16F10メラノーマ細胞は、C57/BL6J系マウスに自然発生した悪性黒色腫から分離されたものであり、メラニンを産生することが確認されている細胞である。
【0036】
即ち、10重量%ウシ胎児血清含有DMEM培地(以下、「培地」と表記する)にマウスB16F10メラノーマ細胞を懸濁し、6穴プレートの各穴に3×10細胞づつ播種した。5%CO存在下37℃で3日間培養した後、各穴中の上清を除去して、0.5mMテオフィリン含有培地を3ml添加した。次いで、上記製造例1−4で得られたココア抽出液を0.1、0.3又は1重量%となるように添加し、5%CO存在下37℃で1日間培養を行った。このように培養を行った後、上清を除去し、PBS(pH7.2)による洗浄を行い、次いで0.25重量%トリプシン−EDTA溶液を500μl添加し、37℃で数分間インキュベートして穴壁に付着した細胞を剥離させた。各穴に培地を500μl加え、ピペッティングにより浮遊した細胞を回収した。再度、各穴に培地を500μl添加して、ピペッティングにより穴内に残存している細胞を回収した。回収した細胞を遠心分離により沈降させた後、培地を除去し、これにPBS(pH7.2)を500μl添加し、超音波破砕装置により細胞を破砕した。得られた細胞破砕液10μlをタンパク質の定量に供し、細胞増殖の指標とした。また、別途、細胞破砕液490μlに等量の4N水酸化ナトリウム水溶液を混合し、60℃で2時間インキュベートすることによりメラニンを抽出し、475nmの吸光度値によりメラニン量を測定した。測定したメラニン量(475nmの吸光度値)から、ココア抽出物未添加(蒸留水添加)群におけるメラニン量(475nmの吸光度値)を100とした場合の相対値を算出し、100から該相対値を減じた値をメラニン生成抑制率(%)とした。
【0037】
得られたメラニン生成抑制率の結果を表2に示す。なお、各ココア抽出液の添加濃度をココア重量換算すると表1の通りである。この結果から、ココア抽出物には、優れたメラニン生成抑制効果があることが確認された。特に、製造例2及び4で得られたココア抽出液は、メラニン生成抑制効果が顕著に高く、メラニン生成抑制剤として有用性が高いことが明らかとなった。また、細胞破砕液からタンパク質を定量した結果から、製造例1−4のいずれのココア抽出液においても、細胞毒性は認められず、安全性が高いことが確認された。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
実施例1−6
以下の実施例1−6に、本発明のメラニン生成抑制剤の実施態様の具体例を示す。
実施例1 食品
以下の組成の調整ココアを流動層造粒により製造した。
【0041】
配合割合(重量%)
ココアパウダー(23重量%ココアバター含有) 40
全脂粉乳 40
砂糖 19.76
乳化剤 0.2
香料 0.04
合計 100
なお、上記処方において、ココアパウダー配合割合をココア重量換算すると40重量%である。
【0042】
実施例2 食品
以下の組成のチョコレートを製造した。
【0043】
配合割合(重量%)
カカオマス 20
製造例4のココア抽出液 1
砂糖 45.56
全脂粉乳 16.5
ココアバター 16.5
レシチン 0.4
バニラ香料 0.04
合計 100
なお、上記処方において、カカオマス及び製造例4のココア抽出液の配合割合の総量をココア重量換算すると11.73重量%である。
【0044】
実施例3 食品
以下の組成のカカオ飲料を製造した。
【0045】
配合割合(重量%)
製造例4のココア抽出液 50
砂糖 5
香料 0.5
水 44.5
合計 100
なお、上記処方において、製造例4のココア抽出液の配合割合をココア重量換算すると2.5重量%である。
【0046】
実施例4 錠剤
常法に従って、以下の組成の錠剤を製造した。
【0047】
配合割合(重量%)
製造例2のココア抽出液 10
マンニトール 40
トウモロコシデンプン 30
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10
白糖 10
合計 100
なお、上記処方において、製造例2のココア抽出液の配合割合をココア重量換算すると0.5重量%である。
【0048】
実施例5 外用クリーム
常法に従って、以下の組成の外用クリームを製造した。
【0049】
配合割合(重量%)
製造例4のココア抽出液の10倍濃縮物 10
ワセリン 20
ステアリルアルコール 20
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 5
モノステアリン酸グリセリン 1
精製水 44
合計 100
なお、上記処方において、製造例4のココア抽出液の10倍濃縮物の配合割合をココア重量換算すると5重量%である。
【0050】
実施例6 外用ローション
常法に従って、以下の組成の外用ローションを製造した。
【0051】
配合割合(重量%)
製造例3のココア抽出液の10倍濃縮物 5
流動パラフィン 1
セタノール 1
キサンタンガム 0.2
ポリソルベート80 2
精製水 90.8
合計 100
なお、上記処方において、製造例3のココア抽出液の10倍濃縮物の配合割合をココア重量換算すると28重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制剤。
【請求項2】
カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用の医薬組成物。
【請求項3】
カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用と表示された食品。
【請求項4】
カカオニブ、カカオマス、ココア、及びこれらの抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を有効成分として含有することを特徴とする、メラニン生成抑制用の化粧料。

【公開番号】特開2007−15943(P2007−15943A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196117(P2005−196117)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】