説明

メルトブロー用の装置

【課題】ノズル支持体の長さにかかわらず、ノズル支持体の全長にわたって高温のプロセス空気の確実な空気供給が可能なメルトブロー用の装置を提供する。
【解決手段】前記空気分配装置(7.1,7.2)が、前記ノズル支持体(1)の長手方向側面(5.1,5.2)に分配配置される複数の分配セグメント(8.1〜8.5/9.1〜9.5)により、隣接する分配セグメント(8.1〜8.5/9.1〜9.5)間にそれぞれ1つの膨張代(20)を備えて形成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維のメルトブロー用の装置であって、ノズル支持体の下面に保持されている縦長のノズルセットと、前記ノズル支持体の互いに対向する長手方向側面に延在する2つの縦長の空気管と、前記ノズル支持体内に互いに対向して形成される、プロセス空気を前記ノズルセットに供給する2つの空気通路系統と、前記ノズル支持体の両長手方向側面に固定されており、前記空気管を前記空気通路系統に、プロセス空気を分配するために互いに接続する2つの空気分配装置とを備える形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた形式のメルトブロー用の装置は、例えばDE102005053248A1から公知である。
【0003】
熱可塑性の材料の溶融物から合成繊維を製造する場合、新しく押し出された繊維を高温のプロセス空気によって紡糸ノズルあるいは紡糸口金の押出開口から引き出すことが公知である。この方法は、「メルトブロー(Meltblown)」と呼ばれ、有利には合成繊維フリースを製造するために使用される。プロセス空気によって案内される繊維は、押出及び硬化後、集積ベルト上に集積されて、繊維フリースを形成する。この種の方法を実施するために、熱可塑性の溶融物及び高温のプロセス空気が一緒に案内されなければならない装置が使用される。この種のメルトブロー用の装置は、例えばDE102005053248A1に記載されている。この場合、ノズル支持体の下面にノズルセットが保持されており、ノズルセットは、溶融物通路及び空気通路を介してノズル支持体内で接続されている。プロセス空気の導入は、ノズル支持体の両長手方向側面で実施され、両長手方向側面には、高温のプロセス空気が案内されているそれぞれ1つの空気管が延在している。空気通路をノズル支持体内で空気管に接続するために、ノズル支持体の各々の長手方向側面には、空気分配装置が固定されている。空気分配装置は、ノズル支持体の全長にわたって長手方向側面に保持されている。
【0004】
繊維フリースを製造する際、可及的大きな働き巾あるいは有効幅を製造したいという希望がある。その結果、相応に長いノズル支持体及びノズルセットが、この種の繊維フリースを形成するために必要である。この場合、しかし、構成部材の加熱に基づいて発生する長さ膨張、特に空気分配装置の領域における長さ膨張が、不都合なことに認識可能である。特にノズル支持体と空気分配装置との間の継目に、不都合な応力状態が発生して、固定部材の破壊にまで至る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE102005053248A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明の課題は、冒頭で述べた形式のメルトブロー用の装置を改良して、ノズル支持体の長さにかかわらず、ノズル支持体の全長にわたって高温のプロセス空気の確実な空気供給が可能であるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の構成では、前記空気分配装置が、前記ノズル支持体の長手方向側面に分配配置される複数の分配セグメントにより、隣接する分配セグメント間にそれぞれ1つの膨張代を備えて形成されているようにした。
【0008】
本発明の有利な形態は、それぞれの従属請求項の特徴及び特徴の組み合わせにより特定されている。好ましくは、各々の分配セグメントが、前記ノズル支持体に固定される分配ブロックと、前記空気管に接続される供給管路とから形成されている。好ましくは、前記供給管路がそれぞれ、前記空気管と前記分配器ブロックとの間の一区分で可撓に形成されている。好ましくは、前記分配器ブロックが、前記ノズル支持体の長手方向側面でそれぞれ別個の分配チャンバを形成し、該分配チャンバに、同時に前記空気通路系統の複数の空気通路が接続されている。好ましくは、前記ノズル支持体及び前記分配ブロックが、それぞれ異なる材料から形成されている。好ましくは、前記分配セグメントの個数及び構造が、前記ノズル支持体の両長手方向側面において同一に形成されている。好ましくは、前記ノズルセット及び前記空気分配装置の前記分配セグメントを収容するための前記ノズル支持体が、1500mmを超える全長を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ノズル支持体及び空気分配装置がその熱挙動に関して互いに調整されなくてよいという特別な利点を有する。複数の部分セグメントに分割したことによって、プロセス空気の高い温度に基づいて、空気分配装置に生じる長さ膨張は、非臨界的なオーダに維持される。これにより、ノズル支持体への空気分配装置の固定部における許容できない応力状態は回避可能である。
【0010】
空気供給のさらなる改良は、各々の分配セグメントが、ノズル支持体に固定される分配ブロックと、空気管に接続される供給管路とから形成されている本発明の形態によって達成される。これにより、空気管とノズル支持体との間の不撓の接続は回避される。これにより、空気管の材料特性及び形態は、自由に構成可能である。この場合、高温のプロセス空気の提供のために必要な要件さえ満たされればよい。ノズル支持体によって与えられる条件への適応は、もはや不要である。
【0011】
ノズル支持体と空気管との間の、運転中に発生するそれぞれ異なる熱膨張を解消するためには、供給管路がそれぞれ、空気管と分配器ブロックとの間の一間隔で可撓に形成されている本発明の形態が有利である。これにより、構成部材の付加的なデカップリングが実現される。
【0012】
ノズルセットの全長にわたってプロセス空気の可及的均等な供給を得るために、分配器ブロックが、ノズル支持体の長手方向側面でそれぞれ別個の分配チャンバを形成し、分配チャンバが、同時に空気通路系統の複数の空気通路に供給する。
【0013】
本発明の別の形態では、ノズル支持体及び分配ブロックが、それぞれ異なる材料から形成されている。特に分配ブロックは、プロセス空気供給のために特に適した材料から形成される。
【0014】
本発明に係る装置は、ノズル支持体の長さに依らない。しかしながら、従来慣用の装置に対する利点は、特により大きな全長のノズル支持体において顕著である。したがって、ノズルセット及び空気分配装置の分配セグメントを収容するためのノズル支持体が、1500mmを超える全長を有する本発明の形態が有利である。
【0015】
本発明の幾つかの実施の形態について図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る装置の一実施の形態の概略横断面図である。
【図2】図1に示した実施の形態の概略側面図である。
【図3】図2に示した実施の形態の概略部分側面図である。
【図4】本発明に係る装置の別の実施の形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,2及び3には、本発明に係る装置の第1の実施の形態が、複数の見方で示されている。図1は、本実施の形態の横断面図であり、図2は、側面図であり、かつ図3は、部分側面図である。いずれかの図面に特定しない限り、以下の説明はすべての図面に当てはまる。
【0018】
本発明に係る装置の本実施の形態は、直方体のノズル支持体1を有する。下面にノズル支持体1は、ノズルセット2を支持する。図1から判るように、ノズルセット2はノズル支持体1の接続溝3内に保持されている。接続溝3を介してノズルセット2は、溶融物通路12及び空気通路11に接続されている。
【0019】
ノズルセット2は、本実施の形態では2つのノズルプレート4.1及び4.2から形成されている。ノズルプレート4.1及び4.2は、流出側に多数のノズル開口と、ノズル開口の側方に形成される多数のブロー開口とを形成する。この種のノズルセット2は、十分に公知であるので、本明細書において、ノズルセット2の構造及び形態について殊更説明することはしない。
【0020】
図1及び2から判るように、熱可塑性の材料の溶融物は、複数の紡糸ポンプ13を介してノズル支持体1内の溶融物通路12に供給される。このために紡糸ポンプ13は、溶融物入口15を有する。それぞれ1つの駆動軸14を介して、紡糸ポンプ13は、ここには図示しない駆動装置に連結されている。
【0021】
プロセス空気を供給するために、ノズル支持体1内には、対称的に形成される2つの空気通路系統10.1及び10.2が形成されている。図1から判るように、各々の空気通路系統10.1〜10.2は、ノズル支持体1の長手方向側面5.1及び5.2に配置される複数の空気通路11を有する。空気通路11は、ノズル支持体1内で、直接ノズルセット2に接続されている分配溝19に開口する。
【0022】
空気通路系統10.1及び10.2の空気通路11は、空気分配装置7.1及び7.2に接続されている。空気分配装置7.1及び7.2は、同一に形成されており、図2及び3には、空気分配装置7.1だけが示されている。同一構造に基づき、図2及び3に示す形態は、空気分配装置7.2にも当てはまる。
【0023】
以下に、各図を参照しながら空気分配装置7.1及び7.2について説明する。
【0024】
空気分配装置7.1は、直接長手方向側面5.1に固定されている複数の分配セグメントあるいは分配区分により形成されている。本実施の形態では、空気分配装置7.1は、計5つの分配セグメントを有する。分配セグメントは、それぞれ1つの分配器ブロック8.1〜8.5及び供給管路9.1〜9.5を有する。この場合、それぞれ隣接する分配セグメントの間には、膨張代(Dehnungsfuge)20が形成されているので、小さな間隔が分配ブロック8.1〜8.5間に生じる。この状況は、特に、空気分配装置7.1の分配セグメント8.1と分配セグメント8.2との間の膨張代20を示す図3から判る。
【0025】
分配ブロック8.1〜8.5は、ノズル支持体1の長手方向側面5.1に、空気通路系統10.1の複数の空気通路11の開口を覆って延在する分配チャンバ16を形成する。これにより、図3に示されているように、分配ブロック8.1の分配チャンバ16から、空気通路系統10.1の複数の空気通路11に供給される。この場合、分配ブロック8.1〜8.5は、固定ピン17によって直接圧力密にノズル支持体1の長手方向側面5.1に固定されている。
【0026】
各々の分配ブロック8.1〜8.5には、1つの供給管路9.1〜9.5が配設されている。供給管路9.1〜9.5は、一方では分配ブロック8.1〜8.5の分配チャンバ16に開口し、他方では空気管6.1に接続されている。供給管路9.1〜9.5は、その全長にわたって、又はその長さの一区分にわたって、可撓に構成されているので、空気分配装置7.1と空気管6.1との間に、不撓の接続は生じない。
【0027】
図1及び2から判るように、空気管6.1は、管状に形成されており、それぞれ端部に管フランジ18を有する。管フランジ継手を介して、高温のプロセス空気が空気管6.1に供給される。供給管路9.1〜9.5を介して、正圧に維持されている高温のプロセス空気が、分配ブロック8.1〜8.5に供給されて、分配チャンバ18を介して空気通路系統10.1の空気通路11に到達する。空気通路11からプロセス空気は、ノズル支持体1内をノズルセット2に向かって案内される。
【0028】
ノズル支持体1の長手方向側面5.2に設けられる空気分配装置7.2及び空気管6.2は、空気分配装置7.1及び空気管6.1と同一に形成されている。その点についてのさらなる説明は省略する。
【0029】
ノズル支持体の両長手方向側面5.1及び5.2に設けられる分配セグメントの個数及び構造は、プロセス空気の均等な供給を保証するために、有利には同一に構成されている。しかし、この場合、分配ブロック8.1〜8.5は、ノズル支持体1とは異なる材料から製造される。例えば、分配ブロック8.1〜8.5は、ニッケル鋼から形成され、ノズル支持体1は、鋳鋼から形成されていてよい。
【0030】
できる限り分配ブロック8.1〜8.5とノズル支持体1との間の結合部における熱応力を回避するために、膨張代は、ノズル支持体1の長さに応じて選択されている。その際、膨張代20は、有利には数ミリメートルのオーダを有する。これにより、ノズル支持体1も、>1500mmの全長を有して有利には構成される。
【0031】
図1〜3に示した実施の形態において、空気分配装置7.1及び7.2の分配セグメント及び供給管路の個数は一例である。原則的には、ノズル支持体1の長さに基づいて、より多数の分配セグメントが形成されていても、より少数の分配セグメントが形成されていてもよい。図4には、本発明に係る装置の別の実施の形態が側面図で示されている。図4に示した実施の形態では、空気分配装置7.1が2つの分配ブロック8.1及び8.2を有する。各々の分配ブロック8.1及び8.2は、それぞれ2つの可撓の供給管路9.1〜9.4を介して空気管6.1に接続されている。分配ブロック8.1及び8.2は、ノズル支持体1の長手方向側面に固定されており、その間に膨張代20を有する。供給管路9.1〜9.4は、可撓の材料から形成されている。択一的には、供給管路9.1〜9.4の長さの一区分が、空気管6.1と分配ブロック8.1及び8.5との間で可撓に形成されていてもよく、その結果、空気管とノズル支持体との間のデカップリングあるいは切り離し(Entkopplung)が可能である。
【0032】
分配セグメント8.1及び8.2の構造及び機能は、前述の実施の形態と同一であるので、ここでは前述の説明を参照されたい。
【符号の説明】
【0033】
1 ノズル支持体
2 ノズルセット
3 接続溝
4.1,4.2 ノズルプレート
5.1,5.2 長手方向側面
6.1,6.2 空気管
7.1,7.2 空気分配装置
8.1〜8.5 分配ブロック
9.1〜9.5 供給管路
10.1〜10.2 空気通路系統
11 空気通路
12 溶融物通路
13 紡糸ポンプ
14 駆動軸
15 溶融物入口
16 分配チャンバ
17 固定ピン
18 管フランジ
19 分配溝
20 膨張代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維のメルトブロー用の装置であって、ノズル支持体(1)の下面に保持されている縦長のノズルセット(2)と、前記ノズル支持体(1)の互いに対向する長手方向側面(5.1,5.2)に延在する2つの縦長の空気管(6.1,6.2)と、前記ノズル支持体(1)内に互いに対向して形成される、プロセス空気を前記ノズルセット(2)に供給する2つの空気通路系統(10.1,10.2)と、前記ノズル支持体(1)の両長手方向側面(5.1,5.2)に固定されており、前記空気管(6.1,6.2)を前記空気通路系統(10.1,10.2)に、プロセス空気を分配するために互いに接続する2つの空気分配装置(7.1,7.2)とを備える形式のものにおいて、
前記空気分配装置(7.1,7.2)が、前記ノズル支持体(1)の長手方向側面(5.1,5.2)に分配配置される複数の分配セグメント(8.1〜8.5/9.1〜9.5)により、隣接する分配セグメント(8.1〜8.2/9.1〜9.5)間にそれぞれ1つの膨張代(20)を備えて形成されていることを特徴とする、合成繊維のメルトブロー用の装置。
【請求項2】
各々の分配セグメントが、前記ノズル支持体(1)に固定される分配ブロック(8.1〜8.5)と、前記空気管(6.1,6.2)に接続される供給管路(9.1〜9.5)とから形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記供給管路(9.1〜9.5)がそれぞれ、前記空気管(6.1,6.2)と前記分配器ブロック(8.1,8.5)との間の一区分で可撓に形成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記分配器ブロック(8.1〜8.5)が、前記ノズル支持体(1)の長手方向側面(5.1,5.2)でそれぞれ別個の分配チャンバ(16)を形成し、該分配チャンバ(16)に、同時に前記空気通路系統(10.1,10.2)の複数の空気通路(11)が接続されている、請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
前記ノズル支持体(1)及び前記分配ブロック(8.1,8.5)が、それぞれ異なる材料から形成されている、請求項2から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記分配セグメント(8.1〜8.5/9.1〜9.5)の個数及び構造が、前記ノズル支持体(1)の両長手方向側面(5.1,5.2)において同一に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記ノズルセット(2)及び前記空気分配装置(7.1)の前記分配セグメント(8.1〜8.5/9.2〜9.5)を収容するための前記ノズル支持体(1)が、1500mmを超える全長を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163736(P2010−163736A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6016(P2010−6016)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】