説明

メロディ設定装置及び方法

【課題】難聴者各人の聴力特性に適したメロディを設定可能とするメロディ設定装置及び方法を提供する。
【解決手段】予め設定してある音階と周波数との関係に基づいてメロディを設定するメロディ設定装置であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得して使用者の可聴音域を設定する可聴音域設定手段と、前記可聴音域に適する曲を選択するため、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲を記憶しておく記憶手段を備え、曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択する曲選択手段と、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする音階シフト手段とを備えて成ることから、前記音階シフト手段による周波数変調によって使用者の聴覚特性に合った聞きやすいメロディとなる曲を自動で選択することを可能とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調してメロディを設定するメロディ設定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の周波数帯を強調又は減衰することにより、主たる音声を聞こえやすくする補聴器や電話機などに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、メロディの設定に関しては、音階・周波数変換テーブルに示されているように、数オクターブの範囲の音階に対応して周波数を予め設定しておき、メロディ全体を1オクターブ単位で簡易にシフトし、音程を外すことなく音の高さを変換するメロディ設定システムが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平3−151746号公報
【特許文献2】特開2001−136240号公報
【特許文献3】特開2001−209381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1又は2に記載の従来の周波数変調可能な機器は、単音又は連続した音の羅列などのような、音程を要しない構成の音声であれば問題ないが、例えば、一連の音階によりメロディを奏でるような構成であった場合には、メロディを構成する周波数帯域が、使用者にとって聞き取りづらい周波数帯域で設定されているとき、周波数帯域によっては、単純にその周波数帯域を強調したとしても、その分雑音も乗ってくるため、必ずしも聞き取りやすくなるとは言えない。
【0005】
上記とは逆に、特に難聴者の聴覚特性を聞き取りやすい周波数帯に合わせて、前記メロディを構成する音階の周波数域自体を変調する場合に、メロディ全体にわたって、一律に周波数を変調すると、音階に対して周波数が一定の大きさで変化するわけではないため、音程がずれてしまい、原曲のメロディを崩してしまうことになる。
【0006】
前記特許文献3には、これらの問題を解消してメロディを設定し、メロディを構成する音階を1オクターブ単位でシフトする記載があるものであるが、これはあくまで、広い周波数帯域をカバーできる聴覚特性を備えた健常者が、メロディの設定を楽しむことを目的としたものであり、特定の狭い周波数帯域以外は聞き取りづらい難聴者の場合には、例え周波数を前記音階・周波数変換テーブルに従って音程を外すことなくシフトしたとしても、使用者が、提供されるメロディを全音階を聞き取れるとは限らない。しかも、難聴者の聴覚特性は各人固有のものであり、その周波数帯域は様々であり、単純な周波数変換のみでは、難聴者が違和感なく楽しめるメロディを設定できるものではなかった。
【0007】
従って本発明は上述の問題点を解決し、難聴者各人の聴力特性に適したメロディを設定可能とするメロディ設定装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調してメロディを設定するメロディ設定装置であって、使用者の可聴音域を設定する可聴音域設定手段と、前記可聴音域に適する曲を選択する曲選択手段と、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする音階シフト手段とを備えて成るメロディ設定装置を提供する。
【0009】
また、曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲を記憶しておく記憶手段を備える。
【0010】
また、前記可聴音域設定手段は、使用者の可聴音域にある音階の数を取得して可聴音域を設定するものであり、前記曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択する。
【0011】
また、本発明は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調して設定するメロディ設定方法であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得し、記憶手段に予め記憶してある、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲の内、前記曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択し、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトするメロディ設定方法を提供する。
【0012】
更に、本発明は、前記メロディ設定装置を備えたタイマーであって、前記設定されたメロディでタイムアウトを報知する手段を備えて成るタイマーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメロディ設定装置は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調してメロディを設定するメロディ設定装置であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得して使用者の可聴音域を設定する可聴音域設定手段と、前記可聴音域に適する曲を選択するため、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲を記憶しておく記憶手段を備え、曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択する曲選択手段と、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする音階シフト手段とを備えて成ることから、前記音階シフト手段による周波数変調によって使用者の聴覚特性に合った聞きやすいメロディとなる曲を自動で選択することを可能とし、特に、可聴音域の周波数帯域が狭く、よく聞き取れる音の数が少ない難聴者が用いる場合であっても、メロディを構成する音の数自体が少ない曲を選択することで、メロディを違和感なく聞くことができる曲を提供することを可能とするものである。
【0014】
また、本発明のメロディ設定方法は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調して設定するメロディ設定方法であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得し、記憶手段に予め記憶してある、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲の内、前記曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択し、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトすることから、簡便な操作で、使用者の聴覚特性に適した曲を選択することを可能とする。
【0015】
更に、本発明のタイマーは、前記メロディ設定装置を備えたタイマーであって、前記設定されたメロディでタイムアウトを報知する手段を備えて成ることから、特に難聴者にとっては、大きな音量で報知する必要がなく、光などの視覚による報知だけに頼ることなく、使い勝手を向上させることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のメロディ設定装置は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調してメロディを設定するメロディ設定装置であって、使用者の可聴音域を設定する可聴音域設定手段と、前記可聴音域に適する曲を選択する曲選択手段と、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする音階シフト手段とを備えて成る。
【0017】
また、曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲を記憶しておく記憶手段を備えて成るものである。
【0018】
また、前記可聴音域設定手段は、使用者の可聴音域にある音階の数を取得して可聴音域を設定するものであり、前記曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択するものである。
【0019】
また、本発明のメロディ設定方法は、予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調して設定するメロディ設定方法であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得し、記憶手段に予め記憶してある、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲の内、前記曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択し、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする方法である。
【0020】
更に、本発明のタイマーは、前記メロディ設定装置を備えたタイマーであって、前記設定されたメロディでタイムアウトを報知する手段を備えて成る。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明のメロディ設定装置の実施例を、メロディ演奏機能付きタイマー(以下、単にタイマーと言う。)を例に図面を用いて説明する。
【0022】
本実施例のタイマーの構成を図1乃至図3を用いて説明する。図1は、タイマーの正面図であり、図2は、裏面図であり、図3は、機能的ブロック図である。
【0023】
本実施例のタイマー1は、正面に、表示部2と、公知のタイマーの分数・秒数や動作のスタート/ストップなどの基本動作と報知音にメロディを設定するための曲設定とを行なう基本動作兼曲設定操作部3とを備え、裏面に、音量、バイブ又は光などのタイマーの報知機能の設定や、報知音が単音の場合の周波数設定などの公知の基本動作を行なう基本動作設定操作部8を備えて成る。
【0024】
また、前記基本動作兼曲設定操作部3は、タイマー設定における分数又は曲設定における選択(「▼」)を行なう「分/▼」スイッチ4、タイマー設定における秒数又は曲設定における選択(「▲」)を行なう「秒/▲」スイッチ5、タイマー動作におけるスタート・ストップ又は曲設定における決定操作を行なう「スタート・ストップ/決定」スイッチ6及び曲の設定を開始する「曲設定」スイッチ7から成る。
【0025】
また、タイマー1は、内部に、タイマー動作及び曲設定に関する制御及び演算を行なうCPU9を備え、CPU9は、曲設定部10を含む制御部11と、タイマーカウントを行なう計時部12、各種演算を行なう演算部13、各音階に対応した周波数を設定してある音階−周波数テーブルや演奏するメロディの原曲データ等を記憶してあるROM14及び各種設定時の値を一時記憶しておくRAM15を含んで構成する。更に、タイマー1は、前記CPU9に、前記表示部2、基本動作兼曲設定操作部3及び基本動作設定操作部8を接続し、所定の音階に対応する周波数を発生して音を出力する音出力部16とタイマー1に電力を供給する電源17とを接続して構成する。
【0026】
上記構成の本実施例のタイマー1の動作を、図4乃至図9の各種フローチャートを示す図と曲設定に関する各種データを示す図とを含めて説明する。
【0027】
まず、タイマー1のメイン動作を図4を用いて説明する。図4は、タイマー1の動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0028】
図示しないが、前記電源16となる電池をタイマー1にセットして電源オンすると、ステップS1において、タイマー1の初期設定がなされる。ここで、前記初期設定は、前回のタイマー設定又は曲設定の設定値が、前記RAM15に記憶されているか否かを判断し、記憶されていれば前記設定値を読み込んで表示部2に表示し、記憶されていなければ各設定値を出荷時の初期状態として表示部2に表示するものであるとする。
【0029】
前記初期設定が成されると、ステップS2において、曲設定スイッチ7が押されたか否かを判定する。
【0030】
曲設定スイッチ7が押された場合にはYESに進み、ステップS3において、使用者が聞くことができる音の周波数の範囲を可聴音域として設定し、ステップS4において、前記可聴音域に基づいて曲を選択した後に、次のステップS5に移行する。ここで、前記ステップS3及びステップS4については、後述するため、ここでは詳細を省略する。
【0031】
また、曲設定スイッチ7が押されていない場合にはNOに進み、ステップS5において、前述した公知のタイマー各種基本動作設定操作を行なう各スイッチ4、5又は8の内、いずれか1つでも操作されたか否かを判定する。
【0032】
上記操作による各種設定は公知であるため各説明を省略するが、前記操作があった場合にはYESに進み、ステップS6において、前記操作に従って、公知のタイマー基本動作の設定がなされ、前記RAM15に設定値を上書きして記憶し、次のステップS8に移行する。
【0033】
また、前記操作がなかった場合にはNOに進み、ステップS8において、タイマー動作を開始する「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されたか否かを判定する。
【0034】
「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されていない場合にはNOに進み、ステップS7において、タイマー動作及び表示をホールドして、再びステップS2に戻り、前述した各判定又は設定を繰り返す。
【0035】
また、「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押された場合にはYESに進み、ステップS9以降で、CPU9によるタイマー動作に移行する。すなわち、CPU9は、ステップS9において、前記RAM15に記憶してある設定時間を、計時部12によりカウントするように制御部11により制御して時間をカウントし表示部2に表示する。これと共に、ステップS10において、カウント停止のために、前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されたか否かを判定する。
【0036】
前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押された場合にはYESに進み、ステップS7において、タイマーカウント及び表示をホールドした後、ステップS2からステップS8をループし、ステップS8において、再度前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されて再スタートするのを待つ。
【0037】
また、前記ステップS10で前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されていない場合にはNOに進み、ステップS11において、前記タイマーカウントが、前記ステップS6の基本動作設定において設定し、前記RAM15に記憶してある設定時間に達したか否かを判定する。
【0038】
前記タイマーカウントが設定時間に達していない場合にはNOに進み、ステップS9に戻ってタイマーカウントを継続する。
【0039】
また、前記タイマーカウントが設定時間に達した場合にはYESに進み、ステップS12において、タイマーカウント及び表示を停止しすると共に、ステップS13において、カウントが終了したことを、予め前述の曲設定又は基本動作設定により設定した方法で報知し、続くステップS13において、報知動作をオフするために、「分/▼」スイッチ4、「秒/▲」スイッチ5又は「スタート・ストップ/決定」スイッチ6の内いずれかのスイッチが押されたか否かを判定する。
【0040】
前記スイッチの内いずれも押されていない場合にはNOに進み、前記ステップS13に戻って報知を継続する。
【0041】
また、前記スイッチの内いずれかが押された場合にはYESに進み、ステップS1からの一連の動作に戻る。
【0042】
ここで、前記ステップS13における報知に、前記曲設定がなされていた場合には、前記曲の出力は、後述する、図9に示した、可聴曲βの音階シフト及び出力のサブルーチンを示すフローチャートに従うものとする。
【0043】
次に、前記図4のフローチャートのステップS3に示した、可聴音域設定の動作を、図5及び図6を用いて説明する。図5は、可聴音域設定の動作を示すサブルーチンのフローチャートであり、図6は、音階と音階に対応する周波数との関係を示す音階−周波数データテーブルである。
【0044】
可聴音域設定は、予め各音階に対応した周波数を設定してある音階において、使用者自らが聞こえる音階の範囲を選定して、使用者固有の可聴音域を定めるものである。前記音階と周波数との関係は、図6の音階−周波数データテーブルに示すようになっており、音階を構成する1つの音に対して1つの周波数が設定されてあり、音の高さ順に、各々音階番号:aを付してなるものである。例えば、音階番号a=1とした最も低い音「ド」は、周波数262Hzで定義されており、本実施例では、音階番号1から24までの2オクターブ分の音階に周波数が設定されているものとする。この音階−周波数データテーブルがROM14に記憶されている。
【0045】
従って、図4のステップS3から、図5に示す可聴音域設定動作に移行すると、ステップS21において、前記音階番号:a=0及び後述する可聴音階番号:b=0として初期設定がなされる。続いて、ステップS22において、CPU9内の制御部11は、前記音階の中からa=a+1番目の音階をROM14から読み込み、続くステップS23において、前記音階−周波数データテーブルに示す関係に従って、前記音出力部16を制御し、前記ROM14から読み込んだ音階番号a番目に対応する周波数によって発生する音(以下、音aと言う)を出力する。
【0046】
ステップS24において、使用者が、前記音aを聞き取れたか否かを判定する。ここでは、例えば、前記音aが聞き取れた場合に「スタート・ストップ/決定」スイッチ6を押すように表示部2に指示を表示して、前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されたか否かによって判定するものとする。
【0047】
前記「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押された場合にはYESに進み、ステップS26において、前記音aを可聴音bとして置き換え、RAM15に記憶し、ステップS27において、音階−周波数データテーブルの音階番号aの全てに対して、聞き取れたか否かの判定がなされたか、すなわち、a=24に達したか否かが判定される。
【0048】
a=24に達していない場合にはNOに進み、再びステップS22においてa=a+1として判定を繰り返す。
【0049】
また、a=24に達した場合にはYESに進み、ステップS28において、前記可聴音域、すなわち、可聴音bとして置き換えられた音階データの数(以下、可聴音データ数Bと言う)を、B=bmax−(bmin−1)なる式により演算する。例えば、図6に可聴音域の1例を示したように、音階番号a=8の「ソ」から音階番号a=17の「ミ」までが可聴音域、すなわち、可聴音bとして置き換えられた場合には、可聴音域を示す可聴音bの範囲は、8≦b≦17であり、可聴音データ数Bは10個であると定義するものである。この後、この可聴音設定のサブルーチンを抜けて図4のメインルーチンに戻る。ここで、図6において、点線で示したcmin、cmax及びeについては後述するため、ここでは説明を省略する。
【0050】
また、前記ステップS24において、「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されていない場合にはNOに進み、ステップS25において、音aを出力してから3秒間経過したか否かが判定される。
【0051】
3秒間経過していない場合にはNOに進み、ステップS23に戻り音aの出力を継続する。また、3秒間経過した場合には、音aを聞き取れなかったものと判断してYESに進み、前記ステップS27に移行する。
【0052】
続いて、前記図4のフローチャートのステップS4に示した、曲選択の動作を、図7及び図8を用いて説明する。図7は、曲選択の動作を示すサブルーチンのフローチャートであり、図8は、予め記憶されてある原曲データの音の配列を示すものである。
【0053】
曲選択は、予め複数記憶されてある原曲αの中から、使用者の可聴音域の音階でメロディを演奏可能な曲を、前記可聴音域に基づいてピックアップし、前記ピックアップされた曲の中から、使用者の好みに応じて選曲させることを可能とするものである。
【0054】
従って、図4のステップS4から、図7に示す曲選択動作に移行すると、ステップS31において、原曲α=0及び後述する可聴曲β=0として初期設定する。ステップS32において、前記原曲α=α+1をROM14から読み込む。ここで、原曲αは、図8に示すように、メロディの構成順にメロディ番号dを付して各音階を配列し、前記図6で示した前記音階に対応する音階番号aと共に、ROM14内に格納されて成るものである。
【0055】
ステップS33において、前記原曲αを構成する音階データの数Cを演算する。ここで、前記音階データの数Cは、原曲αを構成する音階データの最低値から最高値までの数であり、各々の音階番号aをcmax及びcminとして、C=cmax−(cmin−1)なる式により演算される。例えば、原曲α=1として図8に1例を示したように、音階番号a=1の「ド」を最低値cminとし、音階番号a=10の「ラ」を最高値cmaxとする音階で構成されていた場合には、前記音階データ数Cは10個であると定義するものである。なお、前記cmin及びcmaxの関係は、図6において、点線で示してある。
【0056】
ステップS34において、前記図5のステップS28で演算した可聴音データ数Bを読み込み、ステップS35において、前記可聴音データ数Bと原曲αの音階データ数Cとの関係が、B≧Cか否か、すなわち、原曲αを構成する音階の数が、可聴音の音階の数以内で構成されているか否かを判定する。
【0057】
ここで、可聴音域内の音階bと原曲αの音階cとは、周波数が一致している音階である必要は無く、あくまでも可聴音域の音階の数Bが、原曲αで使用されている音階の数Cより多ければ良く、原曲αの各音階cを可聴音域の各音階bにシフトして置き換え可能であれば良い。つまり、本実施例においては、原曲αを構成する音階番号a=1の「ド」から音階番号10の「ラ」までのC=10個の音を、可聴音域である可聴音番号bmin=8の「ソ」から可聴音番号bmax=17の「ミ」までの10個の音に置き換えて演奏することにより、原曲αに対して、音の高さのみ異なる、音程の外れない曲を演奏することが可能となる。
【0058】
従って、前記ステップS35において、B≧Cであった場合にはYESに進み、原曲αを、使用者の可聴音域の音階に置き換えて聞くことができる曲(以下、可聴曲βと言う。)としてRAM15に記憶し、ステップS37において、前記ステップS35の判定が、前記ROM15に記憶されている原曲αの全曲に対してなされたか否かを判定する。
【0059】
原曲αの全曲に達していない場合にはNOに進み、再びステップS32に戻り、次の原曲α=α+1を読み込んで同様の判定を行う。また、原曲αの全曲に対して判定がなされた場合にはYESに進み、ステップS39に移行する。
【0060】
また、前記ステップS35において、B<Cであった場合にはNOに進み、原曲αを可聴曲βとして記憶せずに、前記ステップS37に移行して同様の判定がなされる。
【0061】
前記ステップS37において、原曲αの全曲に対して判定がなされ、ステップS39に移行すると、RAM15に可聴曲βがあるか否か、すなわち、β≠0かどうかを判定する。
【0062】
可聴曲β=0であった場合にはNOに進み、ステップS38において、前記設定された可聴音域(可聴音データ数B)では演奏可能な曲が無く選曲不可であることを示す表示と、公知の単音周波数設定を促す表示とを表示部2に表示した後に、この曲選択のサブルーチンを抜けて図4のメインルーチンに戻る。
【0063】
また、可聴曲β≠0であった場合にはYESに進み、ステップS40において、RAM15に記憶してある可聴曲βを読み込み、ステップS41において、図9の可聴曲βの出力の動作を示すサブルーチンを用いて後述する、前記可聴曲βの音階シフト及び出力を行なう。このステップS41での動作を簡単に説明すると、前述したように、可聴曲β(=原曲α)を構成する各音階aを可聴音域の音階bにシフトして置きかえることによって周波数を変調し、使用者が聞き取れる可聴音域において、メロディの音程を外すことなく演奏するものである。また、可聴曲β演奏中に、「分/▼」スイッチ4、「秒/▲」スイッチ5若しくは「スタート・ストップ/決定」スイッチ6の内いずれかのスイッチが押された場合に、又は、可聴曲βの演奏が終了した場合に、図9のサブルーチンを抜け、図7の曲選択サブルーチンに戻るものである。
【0064】
図9のサブルーチンを抜けて図7に戻った場合、ステップS42において、「分/▼」スイッチ4又は「秒/▲」スイッチ5の内いずれか一方が押されたか否かが判定される。
【0065】
前記スイッチのいずれか一方が押された場合にはYESに進み、「分/▼」スイッチ4のときはβ=β−1とし、「秒/▲」スイッチ5のときはβ=β+1として可聴曲βが複数記憶されている場合に曲を選択するものであり、フローチャートには詳述していないが、可聴曲βが一つの場合には、βの値を変えず同じ曲を繰り返すものとする。
【0066】
また、「分/▼」スイッチ4又は「秒/▲」スイッチ5の内いずれのスイッチも押されていない場合にはNOに進み、ステップS43において、「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されたか否かを判定する。
【0067】
「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押された場合には、選曲を決定したものとしてYESに進み、ステップS44において、決定された可聴曲βをRAM15に記憶した後、この曲選択サブルーチンを抜けて、図4のメインルーチンに戻る。
【0068】
また、「スタート・ストップ/決定」スイッチ6が押されていない場合にはNOに進み、前記図9のサブルーチンにおいて可聴曲βの演奏が終了したものとして、再びステップS40に進み、可聴曲βを読み込み、一連の動作を繰り返すものである。
【0069】
続いて、前記図7のフローチャートのステップS41に示した、可聴曲βの出力の動作を、図9を用いて説明する。図9は、原曲αの各音階cから可聴音域の各音階bへ音階をシフトする動作及び音の出力動作を示すサブルーチンのフローチャートである。
【0070】
図7のステップS40において、可聴曲βが読み込まれると、図9のステップS51において、図8に示した、演奏の音の配列順を示すメロディ番号d=0として初期化し、ステップS52において、可聴曲β(=原曲α)を構成する各音階aを可聴音域の音階bにシフトするための間隔:eとして、e=bmin―cminなる音階の差を演算する。なお、この間隔eに関しては、図6に点線で示してある。
【0071】
ステップS53において、可聴曲βの前記メロディ番号d=d+1に対応する音階aをROM14から読み込み、ステップS54において、前記読み込んだ音階aを前記間隔e分シフトすることによって、可聴音域の音階bとして置き換える。すなわち、c+e=bとして、ステップS55において、前記シフトされた音階bの音を出力する。
【0072】
前記音階bの音が出力されている間に、ステップS57において、前述したように、「分/▼」スイッチ4、「秒/▲」スイッチ5又は「スタート・ストップ/決定」スイッチ6の内いずれかのスイッチが押されたか否かが判定される。
【0073】
前記スイッチの内いずれかが押された場合にはYESに進み、前記図7のフローチャートに戻る。
【0074】
また、前記いずれのスイッチも押されていない場合にはNOに進み、ステップS56において、前記メロディ番号d=dmax(本実施例では、図8に示すように、dmax=15とする。)か否か、すなわち、可聴曲βの演奏が終了したか否かが判定される。
【0075】
前記メロディ番号d=dmaxであった場合にはYESに進み、図7のフローチャートに戻る。
【0076】
また、前記メロディ番号d=dmaxに達していない場合にはNOに進み、再びステップS53において、次のメロディ番号d=d+1を読み込み、前記同様の動作が行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施例のタイマーの正面図である。
【図2】図1の裏面図である。
【図3】本実施例のタイマーの機能的ブロック図である。
【図4】本実施例のメインの動作を示すメインルーチンのフローチャートである。
【図5】可聴音域設定の動作を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図6】音階−周波数データテーブルを示す図である。
【図7】曲設定の動作を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図8】原曲αの音の配列を示す図である。
【図9】可聴曲βの音階シフト及び出力の動作を示すサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 タイマー
2 表示部
3 基本動作兼曲設定操作部
4 「分/▼」スイッチ
5 「秒/▲」スイッチ
6 「スタート・ストップ/決定」スイッチ
7 「曲設定」スイッチ
8 基本動作設定操作部
9 CPU
10 曲設定部
11 制御部
12 計時部
13 演算部
14 ROM
15 RAM
16 音出力部
17 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調してメロディを設定するメロディ設定装置であって、
使用者の可聴音域を設定する可聴音域設定手段と、
前記可聴音域に適する曲を選択する曲選択手段と、
前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトする音階シフト手段とを備えて成ることを特徴とするメロディ設定装置。
【請求項2】
曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲を記憶しておく記憶手段を備えることを特徴とする請求項1記載のメロディ設定装置。
【請求項3】
前記可聴音域設定手段は、使用者の可聴音域にある音階の数を取得して可聴音域を設定するものであり、前記曲選択手段は、曲のメロディを構成する音階の数が前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択することを特徴とする請求項1又は2記載のメロディ設定装置。
【請求項4】
予め設定してある音階と周波数との関係に基づいて、メロディを構成する音階の周波数を変調して設定するメロディ設定方法であって、使用者の可聴音域にある音階の数を取得し、記憶手段に予め記憶してある、曲のメロディを構成する音階の数が異なる複数の曲の内、前記曲のメロディを構成する音階の数が、前記使用者の可聴音域にある音階の数以下となる曲を選択し、前記選択された曲のメロディを構成する音階を可聴音域の音階にシフトすることを特徴とするメロディ設定方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の内いずれか一項に記載のメロディ設定装置を備えたタイマーであって、前記設定されたメロディでタイムアウトを報知する手段を備えて成ることを特徴とするタイマー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−72229(P2007−72229A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260052(P2005−260052)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】