説明

メータ装置及びメータ装置の反射防止方法

【課題】 組立性や、生産性等を考慮しつつ、製品として見栄えのあるメータ装置を提供すること。
【解決手段】 リング状凸部5aの外周面基端に鍔5bを周設すると共に、鍔5bとリング状凸部5aの外周面が交わるコーナー部5cを、外光Lが屈折するように傾斜面状に形成した略フランジ状のリング部材5を備える。そして、このリング部材5を目盛り板4の外周部に配置し、鍔5bとの当接面の縁部6bを段差状に切欠した見返し板6と上ケース12とで鍔5bを挟持して、目盛り板4の意匠面側にそのリング部材5を突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるメータ装置に関し、特に、目盛り板に周設されたリング部材を有するメータ装置及びメータ装置の反射防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、速度計やエンジン回転計等のメータ装置が用いられている。このメータ装置は様々なデザイン(設計)があるが、例えば、略フランジ状のリング部材を目盛り板の外周部に配置し、目盛り板の意匠面側にそのリング部材を突設するようにしたメータ装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
さらに、この種のリング部材を設けたメータ装置は、図4に示すような構造が一般的である。すなわち、略フランジ状のリング部材B1の外周面基端に鍔B2を周設し、ケースB3と見返し板B4とで鍔B2を挟持して、目盛り板B5の意匠面側にリング部材B1が突設するようにしている。
【0004】
また、組立性や、生産性等を考慮して、見返し板B4に設けられたリング部材B1を挿入させるための開口部B6は、リング部材B1の外径(鍔を除いた部分の)より若干大きく形成されており、そのため、組立後のメータ装置は、この見返し板B4の縁部と、略フランジ状のリング部材B1の外周面との間には間隙が形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−315111号公報(第2頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、この種の従来のメータ装置は、見返し板B4の縁部と略フランジ状のリング部材B1の外周面との間に間隙が形成されているが、その間隙の大きさによっては、下記の改良すべき点があった。
【0007】
すなわち、鍔と外周面端部とが交わるコーナー部が直角に形成されているため、視認側からリング部材を見ると、間隙に照射された外光Lは鍔にあたり、反射光としてそのまま返ってきてしまう。その結果、製品としての見栄えを損ねてしまう場合があった。
【0008】
特に、このリング部材は、メタリックな感じを演出するために、樹脂部材に金属的な処理を施している場合が多く、そのため反射率が高く、上記した不具合を助長する結果となっている。
【0009】
そこで本発明は、組立性や、生産性等を考慮しつつ、製品として見栄えのあるメータ装置及びメータ装置の反射防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるメータ装置及びメータ装置の反射防止方法は下記の技術的手段を講じた。
すなわち請求項1にかかるメータ装置は、外周面端部に鍔が設けられたリング部材が目盛り板の外周部に配置されると共に、ケースと見返し板とで前記鍔を挟持させて前記目盛り板の意匠面側に前記リング部材が設けられたメータ装置であって、前記鍔と前記外周面とが交わるコーナー部が傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
請求項2にかかるメータ装置は、請求項1において、前記見返し板は、前記鍔側の縁部が切欠されていることを特徴とする。
請求項3にかかるメータ装置は、請求項1または2において、前記見返し板は、前記リング部材と対偶する板厚面が暗色になっていることを特徴とする。
請求項4にかかるメータ装置の反射防止方法は、外周面端部に鍔を設けたリング部材を目盛り板の外周部に配置し、ケースと見返し板との間に前記鍔を挟持して、前記目盛り板の意匠面側に前記リング部材を設けたメータ装置の反射防止方法であって、前記鍔と前記外周面とが交わるコーナー部を傾斜面状に形成して、前記コーナー部から正面側への反射光を減少させることを特徴とする。
請求項5にかかるメータ装置の反射防止方法は、請求項4において、前記鍔側の縁部を切欠した前記見返し板を用いること特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1または4によれば、鍔と外周面端部との交わるコーナー部を傾斜面状に形成したことで、見返し板の縁部とリング部材の外周面との間に間隙が形成していても、間隙を介して鍔へ照射された外光(照射光)の反射は、正面側(視認側)に向かうことなく、見返し板の板厚面方向に向かって反射して、正面側(視認側)への反射光が減少するから、製品として見栄えのあるメータ装置またはメータ装置の反射防止方法が提供できる。
【0012】
請求項2または5によれば、見返し板の鍔との当接面の縁部を切欠したことで、傾斜面状のコーナー部が、見返し板の鍔との当接面の縁部と干渉することなく、組立性や、生産性等を考慮した従来の見返し板の開口部の大きさと、リング部材の外径(鍔を除いた部分)を維持することができる。
【0013】
請求項3によれば、リング部材と対偶する見返し板の板厚面を暗色にしたことにより、見返し板の板厚面方向に向かって照射した外光の反射光は吸収されて、リング部材の外周の間隙は、暗い見切りとなって、極めて好適なメータ装置またはメータ装置の反射防止方法が提供できる。仮に、見返し板全体を板厚面と同色にすれば、外光(照射光)が間隙を介して鍔へ照射されても、間隙と見返し板全体とが一体的な色合いとなり極めて好適なメータ装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明にかかるメータ装置Aの実施の形態を説明する。
本実施の形態にかかるメータ装置Aは、図1に示すように、速度計a1、エンジン回転計a2、燃料計a3、水温計a4、ギアポジション表示部a5、方向指示器表示部a6などを備えた正面視略台形状の自動車用コンビネーションメータを例示しており、図2に示すように、ケース1と、内機3を取着させた基板2と、目盛り板4と、リング部材5と、見返し板6と、指針7と、表ガラス8とを主要構成にしている。
【0015】
ケース1は、下ケース11と上ケース12とを備えてなる。
下ケース11は、先部が鍵曲がり状に形成され側壁近傍の底面からその先部が対向するように立設された係止部11aと、その係止部11aの内側近傍の底面から対向するように立設され所要位置に段差が形成された段付ボス11bとを備え、縦断面視略コ字状に形成されている。
【0016】
上ケース12は、底面が開口されたスリ鉢状の取付部12aが上面の裏面に形成されると共に車両取付片12bが突設された縦断面視略コ字状に形成されており、下ケース11の側壁の内側に上ケース12の側壁の外側が嵌り込んで、下ケース11に上ケース12が嵌着されている。また、上ケース12の上面外縁部には、段差状の被係止部12cが形成されている。
【0017】
このスリ鉢状の取付部12aは、上面から階段状に形成され後述するリング部材5の端部と当接された第1段部12dと、その第1段部12dより内側に階段状に形成され後述する目盛り板4の端部と当接された第2段部12eと、その第2段部12eの内側から凹湾曲するように垂設され後述する基板2表面に圧接された抑え部12fからなる。
【0018】
基板2は、自動車用コンビネーションメータとしての機能を実現する所要の回路が配線されてなり、その基板2裏面の所要位置に周知構造の内機3が基板2表面側に取着されている。また、この内機3から突設された回動軸31は、後述する目盛り板4を貫くように突設されており後述する指針7を動作させるようになっている。
【0019】
また、基板2を挟んで内機3と反対側の基板2表面には、後述する目盛り板4を裏面から照射させるLEDからなる照明光源21が設けられている。
【0020】
このように構成された基板2は、その基板2裏面側の端部が下ケース11に突設された段付ボス11bの段差に掛止されるように挿嵌されると同時に、下ケース11に突設された係止部11aの先部に基板2表面側の縁部が掛止されて、下ケース11に支持されている。また、これと同時に、上ケース12の第2段部12eの内側から凹湾曲するように垂設された抑え部12fが、段付ボス11b側に基板2を付勢するように圧接して、基板2がガタつくことなく強固にケースに内装されている。
【0021】
目盛り板4は、速度表示やエンジン回転数表示などを示すための数字や記号が所要の意匠でもって表面(意匠面)に施された円板状に形成されている。この目盛り板4は、その厚さが第2段部12eの段差と同じ若しくは僅かに厚くなるように形成されており、第2段部12eに嵌合されている。
【0022】
リング部材5は、断面視略C字状に形成されたリング状凸部5aの外周面基端に、第1段部12dの段差と同じ若しくは僅かに厚い所要厚さの鍔5bが周設されて略フランジ状に形成されていると共に、その鍔5bとリング状凸部5aとが交わるコーナー部5cが傾斜面状に形成されてなる。
この傾斜面状のコーナー部5cは、後述する見返し板6の板厚面6cの長さと略同じ長さでもって略45度の傾斜角で形成されている。
【0023】
このように形成されたリング部材5は、目盛り板4の端部を挟み込むように第1段部12dの段差に鍔5bが嵌合されていると同時に、鍔5bと対向したリング部材5の開放端部5dが目盛り板4の端部近傍に当接されている。
なお、このリング部材5は、合成樹脂部材に金属を蒸着させて、高級感のあるメタリック調に構成されている。
【0024】
見返し板6は、速度計a1、エンジン回転計a2、燃料計a3、水温計a4、ギアポジション表示部a5、方向指示器表示部a6以外を覆うように所要位置に開口部6aが設けられた黒色の板状部材であり、上ケース12の上面に重着されている。
【0025】
また、この見返し板6は、見返し板6の基部(外周部)が、後述する表ガラス8と上ケース12とで挟持されると同時に、先部が第1段部12dの段差に嵌合された鍔5bを押圧・挟持させて、目盛り板4の意匠面側にリング部材5を突設するように支持させている。
【0026】
この見返し板6は、鍔5bとの当接面の縁部6bが略段差状に切欠されて、傾斜面状に形成されたリング部材5のコーナー部5cと干渉しないようになっている。すなわち、この縁部6bを切欠くことで、組立性や、生産性等を考慮した従来の見返し板の開口部の大きさと、リング部材の外径(鍔を除いた部分)を維持することができるようになっている(図3参照)。なお、この略段差状に切欠された縁部6bを含めた板厚面6cも黒色になっている。
【0027】
指針7は、目盛り板4を貫くように突設された内機3の回動軸31の先部に取着されており、内機3で駆動された回動軸31に連動するようになっている。
【0028】
表ガラス8は、上ケース12を覆うように正面視略台形状に形成されると共に縦断面視、視認側が凹湾曲形成された略コ字状に形成され、さらに、段差状の係止部8aが開放側端部内側に設けられてなる。
【0029】
このように形成された表ガラス8は、上ケース12の上面外縁部に形成された段差状の被係止部12cに係止部8aが嵌合して上ケース12に取着されると同時に、上記したように、見返し板6の基部(外周部)を係止部8aが圧接して,上ケース12と表ガラス8とで見返し板6を挟持させている。
【0030】
このように本実施の形態にかかるメータ装置Aは、リング状凸部5aの外周面基端に鍔5bを周設すると共に、鍔5bとリング状凸部5aの外周面が交わるコーナー部5cを傾斜面状に形成した略フランジ状のリング部材5を、目盛り板4の外周部に配置し、鍔5bとの当接面の縁部6bを段差状に切欠した見返し板6と上ケース12とで鍔5bを挟持して、目盛り板4の意匠面側にそのリング部材5を突設してなる。
【0031】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかるメータ装置Aの作用を図3を参照しながら説明する。
メータ装置Aに外光Lが照射すると、それに伴い、見返し板6の縁部6bとリング部材5の外周面との間に形成された間隙にも外光Lが照射する。
【0032】
間隙に向かって照射した外光Lは、視認側に向かうことなく、見返し板6の板厚面6c方向に向かって屈折し反射する。反射光は、黒色の板厚面6cで吸収され、間隙と見返し板6全体とが一体的な同色となる。
【0033】
したがって、美観を損ねる間隙からの反射光は、視認側に向かうことなく吸収されて、製品として見栄えのあるメータ装置Aが提供できる。
【0034】
以上、本実施の形態にかかるメータ装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0035】
例えば、本実施の形態にかかるメータ装置Aは、リング部材5に形成した傾斜面状のコーナー部5cは、見返し板6の板厚面6cの長さと略同じ長さで形成しているが、見返し板6表面から突出するように長く形成しても良い。また、傾斜角度は、反射光を見返し板6の板厚面6c方向へ屈折できればよいもので、特に限定されない。
【0036】
また、本実施の形態では、見返し板6の縁部6bを略段差状に切欠しているが、斜面状に切欠してもよいものである。
【0037】
また、本実施の形態は、メータ装置Aを例示したが、このものに限定されず、鍔5bとリング状凸部5aの外周面とが交わるコーナー部5cを傾斜面状に形成して、鍔5bへの照射光を屈折させるメータ装置Aの反射防止方法であっても良い。この場合においても、鍔5bとの当接面の縁部6bを切欠した見返し板6を用いると共に、リング部材5と対偶する見返し板6の板厚面6cを黒色とすることが極めて好適である。
また、本実施の形態は、見返し板6、板厚面6cとを黒色にしているが、色相を有する低明度の色彩であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態にかかるメータ装置の正面図である。
【図2】図1のX−X線に沿える拡大縦断面図である。
【図3】図2におけるC部拡大図である。
【図4】従来のメータ装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
A メータ装置
1 ケース
12 上ケース
12d 第1段部
12e 第2段部
5 リング部材
5a リング状凸部
5b 鍔
5c コーナー部
6 見返し板
6a 開口部
6b 縁部
6c 板厚面
8 表ガラス
L 外光



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面端部に鍔が設けられたリング部材が目盛り板の外周部に配置されると共に、ケースと見返し板とで前記鍔を挟持させて前記目盛り板の意匠面側に前記リング部材が設けられたメータ装置であって、
前記鍔と前記外周面とが交わるコーナー部が傾斜面状に形成されていることを特徴とするメータ装置。
【請求項2】
前記見返し板は、前記鍔側の縁部が切欠されていることを特徴とする請求項1記載のメータ装置。
【請求項3】
前記見返し板は、前記リング部材と対偶する板厚面が暗色になっていることを特徴とする請求項1または2記載のメータ装置。
【請求項4】
外周面端部に鍔を設けたリング部材を目盛り板の外周部に配置し、ケースと見返し板との間に前記鍔を挟持して、前記目盛り板の意匠面側に前記リング部材を設けたメータ装置の反射防止方法であって、
前記鍔と前記外周面とが交わるコーナー部を傾斜面状に形成して、前記コーナー部から正面側への反射光を減少させることを特徴とするメータ装置の反射防止方法。
【請求項5】
前記鍔側の縁部を切欠した前記見返し板を用いること特徴とする請求項4記載のメータ装置の反射防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−258682(P2006−258682A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78474(P2005−78474)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】