説明

モジュールタイプ熱交換器の接続構造

【課題】 複数のモジュールコアが上下及び左右に直並列されたモジュールタイプ熱交換器において、上下のモジュールどうしの接続を容易に且つ確実に行うと共に、上下に位置するモジュールコア6の小タンク4と集合タンク12とのシールが、使用中の振動等により外れて漏れることを防止する。
【解決手段】 互いに直列に連結される小タンク4の連結孔5の孔縁に第1パイプ7と第2パイプ8とを突設し、第1パイプ7に第2パイプ8をシールリング9を介して被嵌する。そして第1パイプ7に設けたフランジ部10によって、上下一対の小タンク4間を締結固定する。さらに、側部フレーム13の端部と中間フレーム13aの中央部との間を筋交い体14によって連結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモジュールコアを上下及び左右に接続し且つ、その上下両端を一対の集合タンクで連結したモジュールタイプ熱交換器の接続構造であって、建設機械用ラジエータ等の大容量熱交換器に最適なもの関する。
【背景技術】
【0002】
モジュールタイプの熱交換器であって、上下にモジュールコアを連結したものとして、下記特許文献に記載されたものその他が提案されている。
これらは、上下に連結しようとするモジュールコアの小タンクにフランジ部を設け、それらの間に独立した短い連結パイプを介装し、ボルトを介して、連結パイプとフランジ部とを締結固定したものである。
また、上下両端に位置する小タンクには連結パイプを一体に突設し、その連結パイプと集合タンクとの間にフランジ型のシール材を介して両者間を嵌着していた。
【0003】
【特許文献1】実開平1−74470号公報
【特許文献2】実開昭62−118962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上下のモジュールコアどうしを独立した短い連結パイプとフランジ部及びボルトを介して接続する場合、その締結部が狭小であるため組立てが面倒である欠点があった。それと共にその連結構造が複雑となり、熱交換器全体が高価にならざるを得なかった。
さらには、振動によって各モジュールコアが上下動すると、集合タンクと上下の小タンクとの間のシール性が損なわれ、そこから液漏れを起こすおそれがあった。
そこで本発明は、係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、多数のフィン(1)およびチューブ(2)が並列されたコア(3)の両端に小タンク(4)が配置され、その小タンク(4)に連結孔(5)が設けられた複数のモジュールコア(6)を有し、
各モジュールコア(6)の前記小タンク(4)の連結孔(5)どうしが、直列に連結されるモジュールタイプ熱交換器の接続構造において、
互いに直列に連結される各小タンク(4)の前記連結孔(5)の孔縁に第1パイプ(7)と第2パイプ(8)とが突設され、第1パイプ(7)の外周が第2パイプ(8)の内周より僅かに小に形成され、第1パイプ(7)に第2パイプ(8)がシールリング(9)を介して被嵌されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
互いに連結される各小タンク(4)で、その第1パイプ(7)および第2パイプ(8)を中間に位置して、各パイプ(7)(8)に対してその小タンク(4)の長手方向の両側に締結用のフランジ部(10)がその幅方向に突出して一対づつ設けられ、そのフランジ部(10)どうしが締結具(11)により固定されて、各小タンク(4)間が締結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項2において、
互いに直列に接続された一対のモジュールコア(6)が複数対並列され、並列されたモジュールコア(6)どうしが、上下一対の集合タンク(12)により、シールリング(9)を介して互いに連結され、
側部フレーム(13)により両側が一体に連結されると共に、上下方向の中間位置で、両側部フレーム(13)間が中間フレーム(13a)により接続され、
その中間フレーム(13a)と、前記各小タンク(4)のフランジ部(10)とが着脱自在に締結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項3において、
側部フレーム(13)の端部と中間フレーム(13a)の中央との間が、筋交い体(14)により着脱自在に連結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造である。
請求項5に記載の本発明は、請求項4において、
複数の前記筋交い体(14)が、熱交換器全体の上半部でV字状に形成され、下半部で逆V字状に形成されたモジュールタイプ熱交換器の接続構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモジュールタイプ熱交換器の接続構造は、互いに直列に接続される一対のモジュールコア6において、夫々の小タンク4の連結孔5の孔縁に第1パイプ7,第2パイプ8が突設され、第1パイプ7に第2パイプ8がシールリング9を介して被嵌されるように構成したから、両小タンク4間のシール性の高いものとなる。
即ち、互いに嵌着される第1パイプ7と第2パイプ8とにより、その軸方向長さを十分確保し、熱交換器に振動等が生じてもシール長さを十分確保し、液漏れ等を防止し得る。
【0010】
上記構成において、請求項2のように、第1パイプ7,第2パイプ8に対してフランジ部10を一対づつ幅方向に突出し、そのフランジ部10どうしを締結具11によって締結固定したものにおいては、その締結が容易で第1パイプ7と第2パイプ8とを確実に固定し、さらにシール部の信頼性の高い熱交換器となる。
【0011】
上記構成において、請求項3のように、互いに直列に接続された一対のモジュールコア6が複数対並列され、並列されたモジュールコア6どうしが、上下一対の集合タンク12により、シールリング9を介して互いに連結され、
側部フレーム13によりそれらの両側を一体に連結すると共に、上下方向の中間位置で、両側部フレーム13間を中間フレーム13aにより接続し、
その中間フレーム13aと、前記各小タンク4のフランジ部10とを着脱自在に締結固定した場合には、熱交換器全体の中央部の揺れを防止し、その結果、上下に位置する一対の集合タンク12と各小タンク4との間のシールの安定性を確保し得る。
【0012】
上記構成において、請求項4のように、側部フレーム(13)の端部と中間フレーム(13a)の中央との間を、筋交い体(14)により着脱自在に連結固定した場合には、熱交換器全体の中央部の揺れをさらに確実に防止し、上下に位置する一対の集合タンク12と各小タンク4との間のシールの安定性を確保し得る。
上記構成において、請求項5のように、筋交い体14が熱交換器全体の上半部でV字状に形成され、下半部で逆V字状に形成されたものにおいては、筋交い体14による揺れ止め効果をさらに確実なものとして、より信頼性の高い熱交換器の接続構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明のモジュールタイプ熱交換器の接続構造であって、上下のコア3間を接続する要部縦断分解斜視図である。図2は同組立て状態を示す要部縦断面図、図3は同熱交換器の全体を示す正面図、図4は同熱交換器に中間フレームおよび筋交い体を取り付けた状態を示す正面図、図5は図4のV−V矢視断面図、図6は図4のVI−VI矢視断面図である。
【0014】
この熱交換器は図3に示す如く、上下一対のモジュールコア6の組が3列に並列され、それらの上下両端が一対の集合タンク12に連結され且つ、それらの左右両側が側部フレーム13によって一体化されると共に、その上下方向の中間位置で、両側部フレーム13間が
一対の中間フレーム13aで連結されたものである。さらにその側部フレーム13の端と中間フレーム13aの中央との間が、筋交い体14によって固定されたものである。
【0015】
夫々のモジュールコア6は、図1に示す如く、多数のフィン1とチューブ2とが並列されてコア3を構成し、そのコア3の上下両端に一対の小タンク4が取付けられている。この小タンク4は、小タンク本体とチューブプレート15とからなり、そのチューブプレート15に、各チューブ2の上下両端が貫通する。
各小タンク4の長手方向中央には連結孔5が設けられ、その孔縁部に第1パイプ7,第2パイプ8がろう付け又は溶接により固定されている。
【0016】
第1パイプ7の外周にはリング溝が形成され、そのリング溝にシールリング9が嵌着されている。第2パイプ8の内直径は、第1パイプ7の外直径よりも僅かに大に形成され、その第2パイプ8が第1パイプ7の外周にシールリング9を介して液密に嵌着される。また、上下の各小タンク4の外面にはフランジ部10がろう付け又は溶接により固定され、その両端部にボルト孔20が設けられている。そのフランジ部10は図3から明らかなように第1パイプ7,第2パイプ8に対してその両側に位置する。そして、一対のフランジ部10間が、ボルト及びナットからなる締結具11によって締結固定される。それにより、上下の第1パイプ7,第2パイプ8間を容易に且つ確実に固定する。
【0017】
次に、熱交換器全体の上下両端に位置する各モジュールコア6の各小タンク4の連結孔5の孔縁部には、図6に示すごとく、第1パイプ7が取付けられている。そして、集合タンク12には各モジュールコア6の第1パイプ7に整合した位置に複数の連結孔(この例では3つ)が穿設(図3)され、その孔縁部に第2パイプ8が取付けられている。その第2パイプ8が第1パイプ7に嵌着し、シールリング9を介して両者間が液密に接続される。
次に、図3に示す如く熱交換器全体の両側には側部フレーム13が取付けられ、その側部フレーム13と集合タンク12とが図示しない締結具を介して一体に且つ着脱自在に接続される。
【0018】
さらに、図4,図5に示す如く、上下方向の中間位置で、両側部フレーム13間が一対づつの中間フレーム13aで連結されている。即ち、一対の断面L字状(アングル材)の中間フレーム13aが、一対のフランジ部10を挟むように離間して、それぞれの両端部が側部フレーム13にブラケット17aを介して着脱自在にビス等の締結具11aにより固定されている。
この中間フレーム13aには、各フランジ部10のボルト孔に整合する位置に、図示しないボルト孔が穿設され、一対のフランジ部10を挟持した状態で、一対の中間フレーム13a間がボルトおよびナットよりなる締結具11により締結固定されている。なお、中間フレーム13aは図5から明らかなように、各コアモジュール6の表面側と裏面側とにそれぞれ設けられている。
【0019】
そして、図4に示す如く、各中間フレーム13aの中央と側部フレーム13の端部との間がブラケット17および締結具11aを介して筋交い体14で連結されている。この例では、中央のブラケット17に一対の筋交い体14の一端がV字状に溶接等の手段により固定され、それらの他端が側部フレーム13の端部の一対のブラケット17に溶接等の手段で固定されている。そして、中央のブラケット17が中間フレーム13aの中央にビス等の締結具11aにより固定されると共に、両端の各ブラケット17が図6に示す如くボルトにより側部フレーム13に固定される。
【0020】
そしてこの例では、表裏両面に各4本づつの筋交い体14により図4の如く、熱交換器全体の上半部はV字状に形成され、下半部は逆V字状に形成される。そして使用中の振動(大型建設機械のラジエータとして用いた場合等)により、中央に位置するモジュールコア6が上下方向に移動することを防止し、その移動に基づく、集合タンク12と小タンク4との接続部の洩れが生じるのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のモジュールタイプ熱交換器の接続構造の要部縦断分解斜視図。
【図2】同組立て状態を示す要部縦断面図であって、図3のII−II矢視断面図。
【図3】同熱交換器の全体を示す正面図。
【0022】
【図4】同熱交換器に中間フレームおよび筋交い体を取り付けた状態を示す正面図。
【図5】図4のV−V矢視断面略図。
【図6】図4のVI−VI矢視断面略図。
【符号の説明】
【0023】
1 フィン
2 チューブ
3 コア
4 小タンク
5 連結孔
6 モジュールコア
7 第1パイプ
8 第2パイプ
【0024】
9 シールリング
10 フランジ部
11 締結具
11a 締結具
12 集合タンク
12a チューブプレート
13 側部フレーム
13a 中間フレーム
【0025】
14 筋交い体
15 チューブプレート
17 ブラケット
17a ブラケット
18 出入口パイプ
19 ビス
20 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のフィン(1)およびチューブ(2)が並列されたコア(3)の両端に小タンク(4)が配置され、その小タンク(4)に連結孔(5)が設けられた複数のモジュールコア(6)を有し、
各モジュールコア(6)の前記小タンク(4)の連結孔(5)どうしが、直列に連結されるモジュールタイプ熱交換器の接続構造において、
互いに直列に連結される各小タンク(4)の前記連結孔(5)の孔縁に第1パイプ(7)と第2パイプ(8)とが突設され、第1パイプ(7)の外周が第2パイプ(8)の内周より僅かに小に形成され、第1パイプ(7)に第2パイプ(8)がシールリング(9)を介して被嵌されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造。
【請求項2】
請求項1において、
互いに連結される各小タンク(4)で、その第1パイプ(7)および第2パイプ(8)を中間に位置して、各パイプ(7)(8)に対してその小タンク(4)の長手方向の両側に締結用のフランジ部(10)がその幅方向に突出して一対づつ設けられ、そのフランジ部(10)どうしが締結具(11)により固定されて、各小タンク(4)間が締結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造。
【請求項3】
請求項2において、
互いに直列に接続された一対のモジュールコア(6)が複数対並列され、並列されたモジュールコア(6)どうしが、上下一対の集合タンク(12)により、シールリング(9)を介して互いに連結され、
側部フレーム(13)により両側が一体に連結されると共に、上下方向の中間位置で、両側部フレーム(13)間が中間フレーム(13a)により接続され、
その中間フレーム(13a)と、前記各小タンク(4)のフランジ部(10)とが着脱自在に締結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造。
【請求項4】
請求項3において、
側部フレーム(13)の端部と中間フレーム(13a)の中央との間が、筋交い体(14)により着脱自在に連結固定されたことを特徴とするモジュールタイプ熱交換器の接続構造。
【請求項5】
請求項4において、
複数の前記筋交い体(14)が、熱交換器全体の上半部でV字状に形成され、下半部で逆V字状に形成されたモジュールタイプ熱交換器の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−19854(P2009−19854A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184876(P2007−184876)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】