説明

モバイル装置の分布振動モード型スピーカ

モバイル通信装置(100)は開いた状態と閉じた状態の間を互いに相対的に移動できるように結合している第1の外装部分と第2の外装部分(130、132)を備えている。第1の外装部分と第2の外装部分(130、132)はそれぞれ、第1の外装部分と第2の外装部分(130、132)が開いた状態にあるとき互いに向きあう保護された表面(134、136)を備えている。ダメージから分布振動モード型スピーカ(140)を保護するために、分布振動モード型スピーカ(140)を保護された表面(134、136)の1つに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にモバイル通信装置のスピーカに関し、特にモバイル通信装置の分布振動モード型(ディストリビューティッド・モード)スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
分布振動モード型のラウドスピーカ(DML)は当業者に知られているラウドスピーカの形式であり、ニュー・トランスデューサーズ・リミテッド(NXT:登録商標)が開発した。トランスデューサ(変換機)により励振される薄くて堅いスピーカ・パネルを備えている。伝統的なピストニック(ピストン振動型)ラウドスピーカのように、DMLは電気的な音声信号をユーザが聴くことができる音に変換する。ピストニック・スピーカとDMLの根本的な違いは音波エネルギーを生成して放出する方法である。DMLでは、パネルの自然共振モードを励振するように、音声信号がトランスデューサを駆動する。パネルの様々な領域を様々な強度と位相で独立に励振するために、この励振は擬似ランダム法でパネルを振動させる。言い換えると、DMLパネルは実際に様々な振動周波数で「屈曲する」。これらの「屈曲波(ベンディング・ウエーブ)」は広い周波数範囲にまたがる広帯域な音声出力を生成する。DMLでは、かさばるエンクロージャ、複数のドライバ、クロスオーバ、及び、伝統的なピストニック・スピーカ形式では必要となるようなその他の装置が必要ない。これらの特性は多くのコンシューマ電子装置のためのスピーカとして、魅力的な選択肢をユーザに提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの利点があるにもかかわらず、DMLはモバイル装置で使用するスピーカとして広く受け入れられていない。DMLの欠点の1つは頑丈さに欠けていることである。DMLは他の形式のスピーカに比べてダメージを受けやすい要因となりうる比較的大きな領域を必要とする。モバイル装置を落としたり他のものにぶつけたりしたときにある程度の衝撃に耐えることを、モバイル装置のスピーカは期待される。従って、分布振動モード型スピーカをモバイル装置で利用するには、より頑丈なデザインが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、モバイル通信装置は、分布振動モード型スピーカを備える。1つの例示的な実施形態では、モバイル通信装置は開いた状態と閉じた状態の間で相対的に(例えば、スライドして、または、回転して)移動する第1の外装部分と第2の外装部分を有する。開いた状態で第1の外装部分と第2の外装部分は部分的に互いに向き合っており、開いた状態でも露出しない保護された表面を形成する。保護された表面の1つは第1の外装部分の表側に存在し、もう1つの保護された表面は第2の外装部分の裏側に存在する。分布振動モード型スピーカは第1の外装部分と第2の外装部分の保護された表面の1つに設置されている。
【0005】
他の実施形態では、モバイル通信装置の分布振動モード型スピーカはスピーカと振動型警報装置の両方の機能を有する。分布振動型スピーカはスピーカ・パネル、音声を発生させるためにスピーカ・パネルで屈曲波を発生させるためのモード・トランスデューサ、及び、触覚的な警報を発生するためにスピーカ・パネルを振動させる振動トランスデューサを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は閉じた状態をとっている例示的なモバイル通信装置の平面図である。
【図2】図2は開いた状態をとっているモバイル通信装置の平面図である。
【図3】図3は開いた状態をとっているモバイル通信装置の断面図である。
【図4】図4は開いた状態をとっている他の例示的なモバイル通信装置の断面図である。
【図5】図5は例示的な分布振動モード型スピーカの構造を示した図である。
【図6】図6はモバイル通信装置の主要な機能要素を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面を参照しながら、ここで本発明の1つの例示的な実施形態に従ったモバイル通信装置を説明し、一般に100という番号で示す。モバイル通信装置100は第1の外装部分130と第2の外装部分132を有する外装を備えている。図3と図4に模式的に示した回転機構またはスライド機構160は、開いた状態と閉じた状態の間を動くように第1の外装部分130と第2の外装部分132を結合している。第1の外装部分130と第2の外装部分132は、開いた状態と閉じた状態の間を、スライドして移動してもよく、回転して移動してもよい。回転機構もスライド機構も当業者に知られているので、そのような機構の詳細は省略する。
【0008】
第1の外装部分130は閉じた状態では覆われ(カバーされ)、開いた状態では部分的に露出する表側の表面134を備えている。同様に、第2の外装部分132は閉じた状態ではカバーされ、開いた状態では部分的に露出する裏側の表面136(図3参照)を備えている。開いた状態のときに表側の表面134の一部と裏側の表面136の一部が隠れるようにするために、開いた状態で第1の外装部分130と第2の外装部分132は部分的に互いに向き合っている。開いた状態で隠れている表側の表面134と裏側の表面136の一部分を本明細書では保護された表面と呼ぶことにする。
【0009】
図1と図2に示した実施形態で、第1の外装部分130は伝統的な数字のキーパッド114とマイクロホン122を備えている。キーパッド114とマイクロホン122は開いた状態で露出する表側の表面134の一部分に設置されている。第2の外装部分132はディスプレイ112とナビゲーション・コントローラ116と伝統的なピストニック・スピーカ124を備えている。キーパッド114とナビゲーション・コントローラ116とディスプレイ112はユーザと相互作用するためのユーザ・インターフェース110(図6参照)の一部を形成している。キーパッド114とナビゲーション・コントローラ116はユーザの入力を受け付ける。ディスプレイ112はユーザが見る情報を表示する。モバイル通信装置100はキーパッド114とナビゲーション・コントローラ116に加えて、他の入力装置118(図6参照)を備えていてもよい。例えば、ディスプレイ112はユーザの入力を受け付けるタッチ・センシティブ・ディスプレイであってもよい。マイクロホン122とスピーカ124は音声通話を可能にする。第2の外装部分132は第1の外装部分130と第2の外装部分132が閉じた状態にあるときに使用される第2のマイクロホン122’を備えていてもよい。
【0010】
1つの例示的な実施形態によれば、モバイル通信装置100はさらに分布振動モード型スピーカ140(図3、図4参照)を備えている。分布振動モード型スピーカ140は音楽や他の音声ファイルを再生するために使用される。スピーカホン・モードでの通話に使用されてもよい。1つの実施形態では、分布振動モード型スピーカ140は第1の外装部分130(図3参照)の表側の表面134に設置されている。特に、分布振動モード型スピーカ140は表側表面134の、開いた状態において第2の外装部分132と向き合っている部分に設置されている。従って、第2の外装部分132はダメージから分布振動モード型スピーカ140を保護している。音を通過させる1つ以上の通過口138を第2の外装部分132のうち、第1の外装部分130と向き合っている部分に形成してもよい。音の通過口138は分布振動モード型スピーカ140から発生した音を放出する。代わりに、音を外装部分130と132の間の間隙から放出してもよい。音を外部に導くために、音が通過する通路(不図示)を第1の外装部分130と第2の外装部分132の表面にさらに形成してもよい。
【0011】
図4は分布振動モード型スピーカ140が第2の外装部分132の裏側の表面136に設置されている他の実施形態を示している。この実施形態では、分布振動モード型スピーカ140は裏側の表面136のうち、開いた状態で第1の外装部分130と向き合う部分に設置されている。従って、第1の外装部分130は開いた状態のとき分布振動モード型スピーカ140を保護している。音の通過口138は分布振動モード型スピーカ140から発生した音を放出するように、第1の外装部分130に設置されている。
【0012】
図5は例示的な分布振動モード型スピーカ140の構造上の構成要素を示している。分布振動モード型スピーカ140はスピーカ・パネル142とスピーカ・パネル142を励振して屈曲波を発生させるためのモード・トランスデューサ144を備えている。当業者に知られているように、スピーカ・パネル142を通して発生した屈曲波はユーザが聞くことができる可聴音を生成する。スピーカ・パネル142は典型的には広い種類の材料で形成できる薄く堅いパネルである。例えば、スピーカ・パネル142をプラスチック、ガラス繊維、炭素繊維、または、紙で形成してもよい。その大きさに加えて、スピーカ・パネル142を形成するのに使用する材料の特性はスピーカ・パネル142の音響的な特性を決定する。例えば、所与の周波数を超える音を保証するために任意の材料がスピーカ・パネル142用に選択されてもよい。図面を参照すると、スピーカ・パネル142は典型的には平面である。しかし、パネル142が曲面であったり、屈折していたりしてもよいことは当業者には明らかであろう。
【0013】
モード・トランスデューサ144はスピーカ・パネル142で屈曲波を発生させるために、印加された音声信号に従ってスピーカ・パネル142の自然共振を発生させる。様々な強度と位相の屈曲波を独立して励振するようにパネル142の様々な領域を屈曲させるために、モード・トランスデューサ144はスピーカ・パネル142を擬似ランダム法で振動するようにする。広い種類のトランスデューサを分布振動モード型スピーカに使用してもよい。ピエゾ素子やダイナミック・コイルを用いたトランスデューサであってもよいが、これらに限定されるものではない。ピエゾ素子タイプのトランスデューサはモバイル装置に望ましいぐらい薄い。しかし、ピエゾ素子は精巧であり、従って、装置100を落とした場合簡単に壊れるかもしれない。ダイナミック・コイルタイプのトランスデューサはより頑丈で、落下のダメージを受けにくい。しかし、ダイナミック・コイルタイプのトランスデューサはピエゾ素子タイプのトランスデューサよりもさらに大きい。
【0014】
モード・トランスデューサ144をパネル142のどの位置に設置してもよいが、パネル142の中心からずれた位置に設置するのが望ましい。例えば、モード・トランスデューサ144をNXTの「金」の割合と「銀」の割合に従ってスピーカ・パネル142に設置してもよい。これらの割合はスピーカ・パネル142の端からモード・トランスデューサ144を設置する位置までの理想的な距離を定義している。対称的なモード・トランスデューサ144の配置(例えば、パネル142の中央)はスピーカ・パネル142のモードの励振にネガティブな影響を与える傾向があり、音声出力を低下させる。
【0015】
ある例示的な実施形態では、分布振動モード型スピーカ140はユーザが感じることができる触覚的な警報を発生するためのバイブレータとしてさらに機能してもよい。低い周波数でスピーカ・パネル142の全体が振動するように、スピーカ・パネル142の中心付近に磁気コイルのような振動トランスデューサ146を設置してもよい。振動トランスデューサ146が発生させた振動は、モード・トランスデューサ144が発生させた振動と性質を異にすることは、当業者にとって明らかであるだろう。より具体的にいうと、振動トランスデューサ146は伝統的なスピーカの振動板として同じ方法でスピーカ・パネル142を動かす。パネル142の本体の動作はユーザが感じることのできる振動を発生させる。
【0016】
スピーカ・パネル142はフレーム(枠)150に装着される。スピーカ・パネル142の端はフレーム150の溝に挿入され、弾性の制動部材152の間に保持される。制動部材152は例えば、天然ゴムや合成ゴム、または、振動トランスデューサ146がスピーカ・パネル142を振動したときにスピーカ・パネル142の変位を可能にする他の弾力のある材料であってもよい。
【0017】
スピーカ・パネル142のサイズは分布振動モード型スピーカ140の周波数範囲に影響を与える。大きなスピーカ・パネル142は広い周波数範囲の能力を有する。しかし、スピーカ・パネル142のサイズの減少はスピーカ140の低い周波数を再現する能力を制限する。全周波数の音声を提供するために、分布振動モード型スピーカ140を伝統的なウーハーまたはサブ・ウーハーと併せて使用してもよい。
【0018】
代わりに、本発明のスピーカ・パネル142は低周波数では伝統的なピストニック・スピーカとして動作し、高い周波数では分布振動モード型スピーカとして動作しうる。低い周波数の音声(例えば、100kHz以下)を再現するために振動トランスデューサ146を駆動し、高い周波数の音声(例えば、100kHz以上)を再現するためにモード・トランスデューサ144を駆動してもよい。
【0019】
図6は例示的なモバイル装置100の主要な構成要素を示している。モバイル装置100は主制御部102、メモリ104、アンテナ108に接続したトランシーバ106、ユーザ・インターフェース110、及び、音声処理回路120を備えている。主制御部102はモバイル装置100におけるすべての動作の制御を担っている。主制御部102は1つ以上のプロセッサやマイクロコントローラやハードウエア回路等を備えていてもよい。メモリ104はデータと動作に必要なプログラムを記憶している。メモリ104はリード・オンリー・メモリやランダム・アクセス・メモリやフラッシュ・メモリ等の1つ以上のディスクリート(単機能)メモリであってもよい。
【0020】
トランシーバ106は携帯通信ネットワーク(不図示)と通信するための伝統的な携帯電話機のトランシーバであってもよく、伝統的なWiFiトランシーバであってもよい。トランシーバ106はGSMやWCDMAやUMTSやOFDMのような知られている標準に従って動作してもよい。
【0021】
音声処理回路120はマイクロホン122からの音声信号入力またはスピーカ124、140への音声信号出力を処理している。マイクロホン122は主制御部102に入力するために音声を音声信号に変換する。スピーカ124、140は音声信号をユーザが聞くことができる音声に変換する。
【0022】
ユーザ・インターフェース110はディスプレイ112、キーパッド114、ナビゲーション・コントローラ116、及び、可能ならその他の入力装置118を備えている。主制御部102はユーザが見られるように情報を視覚的な形式でディスプレイ112に出力する。キーパッド114とナビゲーション・コントローラ116とその他の入力装置118はユーザに主制御部102への入力を可能にしている。
【0023】
当然ながら、本発明の目的と基本的な特性から離れることなく、上記で開示した方法とは異なる特別な方法で本発明を実行しうる。それゆえに、本実施形態は実例としてすべて考慮され、それに制限されない。特許請求の範囲を逸脱しないすべての変形は内包されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル通信装置(100)であって、
開いた状態と閉じた状態の間で相互に移動できるように結合している第1の外装部分と第2の外装部分(130、132)と、
前記第1の外装部分と前記第2の外装部分(130、132)にそれぞれ設けられ、前記第1の外装部分と前記第2の外装部分(130、132)が前記開いた状態にあるときに互いに向き合う保護された表面(134、136)と、
前記保護された表面(134、136)の1つに設置されている分布振動モード型スピーカ(140)と
を備えることを特徴とするモバイル通信装置(100)。
【請求項2】
前記開いた状態と前記閉じた状態の間で互いにスライドして移動できるように前記第1の外装部分と前記第2の外装部分(130、132)が結合していることを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項3】
前記第1の外装部分(130)の前記保護された表面(134)に前記分布振動モード型スピーカ(140)を設置していることを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項4】
前記第2の外装部分(132)に設けられ、前記分布振動モード型スピーカ(140)が出力した音を放出するための音の通過口(138)をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項5】
前記第2の外装部分(132)の前記保護された表面(136)に前記分布振動モード型スピーカ(140)を設置していることを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項6】
前記第1の外装部分(130)に設けられ、前記分布振動モード型スピーカ(140)が出力した音を放出する音の通過口(138)をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項7】
前記分布振動モード型スピーカ(140)は、スピーカ・パネル(142)と、音を発生させるために前記スピーカ・パネル(142)で屈曲波を発生させるモード・トランスデューサ(144)と、触覚的な警報を発生させるために前記スピーカ・パネル(142)を振動させるための振動トランスデューサ(146)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項8】
低い周波数の音を再現するために前記振動トランスデューサ(146)を低い周波数で駆動することをさらに特徴とする請求項7に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項9】
前記保護された表面(134、136)が前記開いた状態と前記閉じた状態との両方で互いに向き合っていることを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。
【請求項10】
前記第1の外装部分(130)はユーザのほうに向いている表側の表面(134)を有し、前記第2の外装部分(132)はユーザとは反対の方向に向いている裏側の表面(136)を有し、前記第1の外装部分と前記第2の外装部分(130、132)は前記開いた状態と前記閉じた状態との間を相互にスライドして相対的に移動するように結合し、前記第1の外装部分(130)の前記表側の表面(134)と前記第2の外装部分(132)の前記裏側の表面(136)は、前記第1の外装部分と前記第2の外装部分(130、132)が前記開いた状態にあるときに互いに向き合う前記保護された表面を含むことを特徴とする請求項1に記載のモバイル通信装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−533393(P2010−533393A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514890(P2010−514890)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057396
【国際公開番号】WO2009/009168
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】