説明

モバイル通信ネットワークにおけるエネルギ制御

モバイル通信ネットワークにおいて、あるサービス品質クラスのデータ・トラヒックを、例えば専用のベアラ(52、54)を確立して、このサービス品質クラスに関連するトラヒック転送ポリシーに従って転送する。エネルギ制御を実装するため、エネルギ制御属性をそのサービス品質クラスに割当てる。エネルギ制御属性に基づいて、データ・トラヒックを転送するデータ・スループットは最大限度値に制限される。これは、データ・トラヒックの伝送に参加する1つ以上のノード(100、110、120、200)でスループット・リミッタ(150、250)を使用して遂行してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモバイル通信ネットワークにおけるエネルギ制御のための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル通信ネットワークなどにおける通信デバイスのような電子機器の電力消費量を削減することに対する関心が増加した。電力消費量を削減することは、コストを節約できるだけでなく、炭酸ガス放出を削減する助けとなるので、環境の観点からも有益である。
【0003】
その結果、モバイル通信ネットワークにおいて、電力消費量の削減を可能とする技術に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態によれば、モバイル通信ネットワークにおけるエネルギ制御の方法が提供される。本方法には、少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従って、少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックを転送するステップを含む。少なくとも1つのサービス品質クラスに割当てられたエネルギ制御属性に基づき、データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットは最大限度に制限される。
【0005】
本発明の更なる実施形態により、ネットワーク・コンポーネントが提供される。本ネットワーク・コンポーネントには、少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従い、1つ以上のモバイル端末からの、及び1つ以上のモバイル端末への少なくとも一方において、少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックの転送を遂行するよう構成されるネットワーク・ノードを備える。更に、本ネットワーク・コンポーネントには、少なくとも1つのサービス品質クラスに割当てられたエネルギ制御属性に基づき、データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度に制限するよう構成されるスループット・リミッタを備える。
【0006】
本発明の更なる実施形態により、モバイル端末が提供される。本モバイル端末には、少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従い、ネットワーク・ノードからの、及び、ネットワーク・ノードへの少なくとも一方において、少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックの転送を遂行するよう構成されるトラヒック・フロー・コントローラを備える。更に、本モバイル端末には、少なくとも1つのサービス品質クラスに割当てられたエネルギ制御属性に基づき、データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度に制限するよう構成されるスループット・リミッタを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態によるエネルギ制御が実装される可能性のある、モバイル通信ネットワーク環境を概略的に示す。
【図2】異なるサービス品質クラスのパラメータを有する典型的な表を示す。
【図3】本発明の実施形態による典型的なシナリオを示し、データ・スループットは総スループットの最大比率に制限されている。
【図4】本発明の実施形態による典型的なシナリオを示し、データ・スループットは最大絶対スループット値に制限されている。
【図5】本発明の実施形態による典型的なシナリオを示し、データ・スループットは総最大電力消費量の最大比率に制限されている。
【図6】本発明の実施形態によるエネルギ制御の方法を概略示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、典型的な実施形態およびその添付図面を参照して、本発明について更に詳細に説明する。図に示した実施形態は、例えば3GPP(第3世代パートナーシップ・プロジェクト)技術仕様によるモバイル通信ネットワークにおけるエネルギ制御技術に関連する。しかしながら、当然のことであるが、本明細書で説明する概念は、その他の形式の通信ネットワークにも同様に適用されてもよい。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に従うエネルギ制御が実装される可能性のある、モバイル通信ネットワーク環境を概略的に示す。本モバイル通信ネットワーク環境には、モバイル端末200および多数のネットワーク・コンポーネント100、110、120を備える。更に、図1は、例えばIMSテレフォニ(IMS:インターネット・プロトコル・マルチメディア・サブシステム)、ピアツーピア・ファイル共有または同様のもののような、各種形式のアプリケーション及びサービスの少なくとも一方を実装する可能性のあるアプリケーション/サービス・レイヤ300を概略的に示す。加えて、図1は、通信事業者がネットワーク・コンポーネント100、110、120およびモバイル端末200の運用パラメータを制御可能とする、運用および保守(O&M)システム400を示す。
【0010】
図1に示すネットワーク・コンポーネントには、ゲートウエイ・ノード100、中間ゲートウエイ・ノード110およびアクセス・ノード120を備える。モバイル端末200は携帯電話機、携帯用コンピュータまたはその他の形式のユーザ機器(UE)であってもよい。図に示す例では、ゲートウエイ・ノード100は3GPP技術仕様によるパケット・データ・ネットワーク(PDN)ゲートウエイであり、中間ゲートウエイ110は3GPP技術仕様によるサービング・ゲートウエイであり、アクセス・ノード120は3GPP技術仕様によるeNodeBである。しかしながら、当然のことであるが、その他の形式のモバイル端末またはネットワーク・コンポーネントを同様に使用してもよい。
【0011】
図1に更に示すように、ベアラ52、54をモバイル端末200とゲートウエイ・ノード100との間に確立してもよい。ベアラ52、54の各々は、ゲートウエイ・ノード100からモバイル端末200への下りデータ・トラヒック、及び、モバイル端末200からゲートウエイ・ノード100への上りデータ・トラヒックの少なくとも一方を運んでもよい。ゲートウエイ・ノード100では、下りデータ・トラヒックは、下りデータ・フロー・コントローラ140によりベアラ52、54にマッピングされる。このマッピングは、データ・トラヒックの形式に従って制御される。即ち、例えば特定のサービスまたはアプリケーションに関係するデータ・トラヒックのようなある形式のデータ・トラヒックは、ベアラ52、54の対応する1つにマッピングされるであろう。同様に、モバイル端末200では、上りデータ・トラヒックは上りデータ・フロー・コントローラ240によってベアラ52、54にマッピングされる。再度、例えば特定のサービスまたはアプリケーションに関係するデータ・トラヒックのようなある形式のデータ・トラヒックは、ベアラ52、54の対応する1つにマッピングされるであろう。例えば、図1に示すベアラ52は、例えばSIPシグナリング・データ(SIP:セッション開始プロトコル)のようなシグナリング・データを運んでもよく、ベアラ54は、例えばIMS−VoIPデータ(VoIP:ボイス・オーバ・インターネット・プロトコル)のようなパケット化音声データを運んでもよい。
【0012】
ベアラ52、54は、そこにマッピングされるデータ・トラヒックが、サービス品質(QoS)に関して必要とするリソースを獲得する、ということを保証する。具体的には、ベアラ52、54の各々を対応するQoSクラスと関連させる。ある実施形態によれば、QoSクラスは、3GPP技術仕様23.401で定められたQoSクラス識別子(QCI)によって識別される可能性がある。本QCIは、所定のデータ転送ポリシーに対する参照として使用されてもよく、1と245との間のスカラ値であってもよい。
【0013】
その結果、図1に示す通信ネットワーク環境では、データ・トラヒックは異なるQoSクラスに属してもよく、図示のノード100、110、120、200の各々において、そのデータ・トラヒックは、データ・トラヒックのそれぞれのQoSクラスに関連するトラヒック転送ポリシーに従って転送されてもよい。この点では、当然のことであるが、QCIはQoSクラスを識別する1つの方法であり、QoSクラスを定めるその他の方法は、例えば異なるネットワーク・コンポーネント間で送信するデータ・パケットのヘッダ部分に含まれるDSCP(差別化サービス・コード・ポイント)を使用して、同様に使用されてもよい。幾つかの実施形態によれば、QCIおよびDCPの両方がQoSクラスを識別するために使用されてもよく、例えばO&Mシステム400を通して通信事業者が、QCIのDSCPへのマッピングを提供してもよい。その上、モバイル通信ネットワークの形式に依存して、その他の形式のQoSクラスを使用してもよい。例えば、幾つかのモバイル通信ネットワークでは、“会話型”、“ストリーム型”、“対話型”および“バックグラウンド型”のような異なるトラヒック・クラスの観点からQoSクラスを定めてもよい。しかしながら、明確化を目的に、以下の説明では、QoSクラスをQCIが識別する実施形態に焦点を合わせる。これらの例によれば、例えばQCI5を有する1つのQoSクラスのデータ・トラヒックを伝送するために、ベアラ52を使用してもよく、例えばQCI7を有するもう1つのQoSのデータ・トラヒックを伝送するために、ベアラ54を使用してもよい。
本明細書で説明するエネルギ制御の概念によれば、データ・トラヒックの転送に参加する各々のノード、即ちモバイル端末200、アクセス・ノード120、中間ゲートウエイ・ノード110、ゲートウエイ・ノード100または、データ伝送に参加するその他の任意の形式のネットワーク・ノードには、QoSクラス毎をベースにした、サービスされた、即ち転送されたデータ・トラヒックの総量を制限する能力を提供されてもよい。同様にこの制限により、あるQoSクラスのデータ・トラヒックを処理することにとって消費される総電力を制御することが可能となる。具体的には、エネルギ制御属性が1つ以上のQoSクラスに割当てられる可能性があり、このQoSクラスまたはそれらのQoSクラスのデータ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度値に制限するベースとして使用される。データ・スループットは、例えばデータ・シンボル、ビットまたは単位時間当たりのバイトの観点のような、データ・トラヒックを転送するために使用する帯域幅の観点で定められてもよい。
【0014】
データ・スループットを制限する目的で、図1に示すように、データ・トラヒックの伝送に参加するノードの各々には、スループット・リミッタ150、250を提供してもよい。ここで、当然のことであるが、図1では、ネットワーク・コンポーネント100、110、120の各々にスループット・リミッタ150が図示され、モバイル端末200にはスループット・リミッタ250が図示されている。しかしながら、例えばアクセス・ノード120またはゲートウエイ・ノード100のような、1つのノードのみがデータ・トラヒックの伝送に参加する幾つかの実施形態では、図示のスループット・リミッタが提供されてもよい。スループット・リミッタ150,250は、プロセッサが実行する予定のコンピュータ・プログラムによって実装されてもよく、または専用のハードウエア・コンポーネントによって実装されてもよい。幾つかの実施形態によれば、スループット・リミッタ150,250は、データ・トラヒックを転送するために、そして異なるQoSクラスの間にリソースを配分するために使用されるスケジューリング・アルゴリズムのサブモジュールとして実装されてもよい。その他の実施形態では、スループット・リミッタは、そのようなスケジューリング・アルゴリズムから分離して実装されてもよい。加えて、当然のことであるが、図1に示されていないが、例えば伝送ノードのような更なるネットワーク・ノードには、そのようなスループット・リミッタを同様に提供されてもよい。
【0015】
上記で述べたように、QoSクラスの割当てたエネルギ制御属性の基づき、このQoSクラスのデータ・トラヒックを転送するためのデータ・スループットを最大限度に制限するよう、スループット・リミッタ150、250を構成する。データ・スループットの制限を課したデータ・トラヒックは、上りリンク方向及び下りリンク方向の少なくとも一方のデータ・トラヒックであってもよい、即ちモバイル端末200から及びモバイル端末200への少なくとも一方であってもよい。例えばO&Mシステム400を使用して、対応する制御信号をネットワーク・コンポーネント100、110、120に供給することにより、通信事業者が最大限度値を決定してもよい。モバイル端末のスループット・リミッタ250には、例えばアクセス・ノード120および、アクセス・ノード120とモバイル端末200との間の無線リンクを介して、通信事業者が最大限度値を同様に構成してもよい。加えてまたは代わりに、また、モバイル端末のユーザが、モバイル端末200のスループット・リミッタ250の最大限度値を構成してもよい。その結果、異なる形式の制御インタフェースが、スループット・リミッタ150、250を構成するため使用されてもよい。その制御インタフェースの形式は、典型的には、スループット・リミッタ150、250を備える形式のノードに依存するであろう。
【0016】
従って、幾つかの実施形態では、エネルギ制御に関する制御情報はO&Mシステム400から受信される。この制御情報は、最大限度値の値を定めてもよく、および/または、例えば総データ・スループット容量の最大比率として、絶対データ・スループット値として、または総最大電力消費量の最大比率として、最大限度値が定められるかどうか、という最大限度のタイプを定めてもよい。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、最大限度値は、スループット制限値を課したQoSクラスのデータ・トラヒックをアクセス・ノード120と通信するモバイル端末の数に依存する可能性がある。例えば、アクセス・ノード120とデータ・トラヒックを通信する多数のモバイル端末に対して、より大きな最大限度値を選択してもよい。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、例えば1−4以外のQCIに関連するQoSのような、保証されたビットレートがないQoSクラスに、データ・スループット制限値を適用する。例えば5および9との間のQCIを有するQoSクラスのような、保証されたビット速度のQoSクラスに対しては、データ・スループットの制限は望ましくない可能性がある。それにもかかわらず、保証されたビット速度を有するQoSクラスのデータ・スループットの制限は、同様にあり得ることである。
【0019】
図2は、上記で概説したエネルギ制御の概念を実装するため、本発明の実施形態によるモバイル通信ネットワークで使用される可能性のあるQCI表を概略的に示す。本QCI表は、典型的には、O&Mシステム400を使用して通信事業者によって提供される。
【0020】
左端の列から開始して右端に進むよう、列について説明する。左端の列には、QCI値が示され、その各々異なるQoSクラスを定める。次の列はリソース形式を定める。表に示すように、QCI1−4は保証されたビット速度(GBR)のQoSクラスでありが、QCI5−9は非GBRのQoSクラスである。
【0021】
次の列は、QoSクラスの優先度を定め、リソース調整のためのスケジューリング・アルゴリズムで使用してもよい。より低い値はより高い優先度を示す。表に示すように、図に示す典型的な表では、QCI5を有するQoSクラスが最高の優先度で提供される。
【0022】
次の列はパケット遅延量、即ち、データ・パケットが、ゲートウエイ・ノード100とモバイル端末200との間の送信の間に体験する可能性のある最大遅延を定める。
【0023】
次の列は、許容パケット損失率、論理チャネル・グループおよびDSCP値へのQoSクラスのマッピングを定める。DSCPマッピング列では、“ES”はRSC3245で定められた完全優先転送動作を示し、“AF”はRFC2597で定められた相対的優先転送クラスを示し、そして“CS”はRFC2475で定められたクラス・セレクタ形式転送動作を示す。
【0024】
次の列はエネルギ制御属性を定めるために使用される。表に示すように、GBR QoSクラスであるQCI1−4に対しては、エネルギ制御属性が全く割当てられない(N/Aで示す)。これは、典型的には、通信事業者がGBRデータ・トラヒックのデータ・スループットを制限したくないだろうということを反映している。QCI5および6に対しては、エネルギ制御属性“x”が割当てられ、QCI7および8に対してはエネルギ制御属性“y”が割当てられ、QCI9に対してはエネルギ制御属性“z”が割当てられる。この点では、当然のことであるが、エネルギ制御属性“x”、“y”および“z”は、実際には、最大限度値または1つの形式の最大限度値のようなエネルギ制御パラメータの集合への参照であってもよい。また、当然のことであるが、任意の数の異なるエネルギ制御属性が必要に応じて異なるQoSクラスに定められ、割当てられることできる可能性がある。
【0025】
以下に、エネルギ制御属性の最大限度値を定める選択肢について、図3-5に示す典型的な状況に対して説明する。
【0026】
図3の示す状況は、総データ・スループット容量の最大比率として最大限度値を定めた実施形態に関する。総データ・スループット容量とは、エネルギ制御属性が割当てられるQoSクラスのデータ・トラヒックを転送し、また、典型的には、1つ以上のその他のQoSクラスのデータ・トラヒックを転送するのに利用可能な容量をいう。総データ・スループット容量は、モバイル通信ネットワークの1つ以上のセルのレベルで定められてもよい、即ち、そのセルまたは複数のセルの総データ・スループット容量であってもよい。或いは、総データ・スループット容量は、ネットワーク・ノード・レベルで定められてもよい、即ち、ネットワーク・ノードで利用可能な総データ・スループット容量であってもよい。そのようなノードは、例えばアクセス・ノード120、中間ゲートウエイ・ノード110、ゲートウエイ・ノード100、または図1に示したモバイル端末200のような、データ・トラヒックの伝送に参加している上記で議論したノードのいずれであってもよい。この点では、また注意すべきであるが、総データ・スループット容量が定められるノードは、データ・スループットの制限値が実装されたものと異なるか、または同じであってもよい。
【0027】
図3では、Lで表示した、データ・スループットの最大限度値、およびTCで表示した総データ・スループット容量は、tで表示した時間の関数として示されている。図に示すように、総データ・スループット容量は時間とともに変化し、これは利用可能なリソースの変動、モバイル端末の位置の変化または伝送条件の変化のためである可能性がある。最大限度値は、例えば20%のような総スループット容量の比率として定められ、同じように変化する。
【0028】
図3では、線Lとt軸との間の領域は、エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスのデータ・トラヒックを転送するために利用可能なデータ・スループット容量である。線TCと線Lとの間の領域は、例えばその他のQoSクラスのデータ・トラヒックのような他のデータ・トラヒックの転送のために利用可能なデータ・スループット容量である。両方の領域では、全ての容量が実際に使用される必要はない、即ち使われていない容量が存在する。
【0029】
総データ・スループット容量の最大比率として最大限度値を定める場合、総データ・スループット容量の所定の比率以上でない値が、エネルギ制御属性に関連するQoSクラスのデータ・トラヒックに配分されるであろう。
【0030】
図4には、最大限度値を絶対データ・スループット値として定めた実施形態に関する状況を示す。絶対データ・スループット値は、例えば毎秒のビット数という単位、または同様のような帯域幅として定めることができる。
【0031】
図4では、総データ・スループット容量は、再度、TCで表示しており、図3に示したものと同じように変化する。最大限度値は、再度、Lで表示している。しかしながら、図3と比較して、最大限度値は一定値であり、総データ・スループット容量の変動と無関係である。
【0032】
絶対データ・スループット値として最大限度値を定める場合、エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスのデータ・トラヒックは、最大限度値の絶対データ・スループット値より高いデータ・スループットを体験しないであろう。
【0033】
図5は、総最大電力消費量の最大比率として最大限度値を定めた実施形態に関する状況を示す。エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスのデータ・トラヒックを転送することに起因し、そして、典型的にはまた、1つ以上のその他のQoSクラスのデータ・トラヒックを転送することに起因する総最大電力消費量として、総最大電力消費量を定めてもよい。総電力消費量は、モバイル通信ネットワークの1つ以上のセルのレベルで定められてもよい、即ちそのセルまたは複数のセルにおける総電力消費量であってもよい。或いはまた、総電力消費量は、モバイル通信ネットワークのノードのレベルで定められてもよい、即ちそのノードにおける総電力消費量であってもよい。このノードは、例えばアクセス・ノード120、中間ゲートウエイ・ノード110、ゲートウエイ・ノード100または図1に示すモバイル端末200のような、データ・トラヒックの伝送に参加する、上記で議論したノードのいずれであってもよい。注意すべきことであるが、総電力消費量を定めるために使用したノードは、データ・スループットの制限を実装したものとは異なってもよいし、同じでもよい。
【0034】
図5では、TPで表示した総最大電力消費量、およびLで表示した最大限度値は、tで表示した時間の関数として示されている。総最大電力消費量は、実質的に一定であるとして示されている。しかしながら、総最大電力消費量は時間の関数として変化する、ということも可能である。例えば、高いネットワーク負荷の段階では、通信事業者によって、増加した総最大電力消費量が一時的に許容されてもよい。
【0035】
図5では、線Lとt軸との間の領域は、エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスのデータ・トラヒックが使用するために利用可能な電力であるが、線TPと線Lとの間の領域は、例えばQoSクラスのデータ・トラヒックのようなその他のデータ・トラヒックが使用するために利用可能な電力である。両方の領域では、未使用の電力量があってもよい。
【0036】
総最大電力消費量の最大比率として最大限度値を定める場合、総最大電力消費量の所定の比率以上でない値が、エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスのデータ・トラヒックに配分されるであろう。総最大電力消費量の最大比率として最大限度値を定める場合、電力消費量における削減は、多かれ少なかれ、最大限度値によって直接与えられる。このQoSクラスに起因する電力消費量を選択した最大限度値以下に保つように、QoSクラスのデータ・スループットを適応させてもよい。
【0037】
上記で説明した概念では、送信シンボル数を減らすことによって、電力消費量を削減する。例えば、モバイル端末200とアクセス・ノード120との間の無線リンクで、データ・トラヒックの各々のデータ・シンボルを送信するために同じ電力を使用する場合、送信データ・シンボル数の削減は、電力消費量における削減に比例的に変換できるであろう。同様に、異なる電力でデータ・シンボルを送信する場合、電力消費量における削減はまた獲得されるであろう。加えて、データ・スループットの制限により、無線リンクでデータ・シンボルを送信するために、より低い次数の変調を使用できる可能性があり、このことは、同様に、送信データ・シンボル当たりに、より低い電力を使用することを可能にする。
【0038】
ある例によれば、もしアクセス・ノード120が同じ電力で各々のデータ・シンボルを送信し、送信シンボル数の削減が90%であるなら、アクセス・ノード120における対応する電力削減は、少なくとも90%であろう。アクセス・ノード120における、例えばファンまたは空調のような冷却システムのごとき補助的装置が、削減電力で同様に動作する可能性があるということを考慮すると、追加の電力節約を獲得できる。
【0039】
図6は、上記で述べた概念によるエネルギ制御の方法を概略的に示すフローチャートである。本方法は、例えばアクセス・ノード120、中間ゲートウエイ・ノード110、ゲートウエイ・ノード100または図1で示したモバイル端末200のような、データ・トラヒックの伝送に参加する上記で議論したノードのいずれに実装してもよい。
【0040】
ステップ610では、少なくとも1つのQoSクラスのデータ・トラヒックは、そのQoSクラスの対応するトラヒック転送ポリシーに従って転送される。このQoSは、あるQCI、具体的には非GBR QCIに基づいて定めてもよい。しかしながら、当然のことであるが、あるQoSクラスを定めるその他の方法も同様に可能である。多数のQoSクラスのデータ・トラヒックを転送する場合、各々のQoSクラスは、典型的には、その対応するトラヒック転送ポリシーを持つ。
【0041】
エネルギ制御属性はQoSクラスに割当てられ、それは、例えば図1に示したO&Mシステム400、及び図2に示したQCI表の少なくとも一方を使用して、通信事業者によって遂行される可能性がある。
【0042】
ステップ620では、エネルギ制御属性を割当てた、少なくとも1つのQoSクラスのデータ・トラヒックを転送するデータ・スループット容量は、最大限度値に制限される。これは、図1に示したデータ・スループット・リミッタ150、250によって遂行されてもよい。異なる形式の最大限度値を使用してもよい。例えば、総データ・スループット容量の最大比率、絶対データ・スループット値、または総最大電力消費量の最大比率で、最大限度値を定めてもよい。最大限度値のタイプ、最大限度値の値、及びその他のエネルギ制御パラメータの少なくとも1つは、O&Mシステム400から受信した制御情報によって定めてもよい。最大限度値は1つのQoSクラスに適用してもよいし、多数のQoSクラスに適用してもよい。後者の場合は、多数のQoSクラスは、最大限度値が定めたデータ・スループット容量を共有する。
【0043】
エネルギ制御属性を割当てたQoSクラスの制限されたデータ・スループットにより、電力消費量において、対応する削減が獲得される。例えば、アクセス・ノード120とモバイル端末200との間の無線リンクでデータ・シンボルを送信する電力消費量が削減される可能性がある。加えて、その他のノードでのデータ・トラヒックの処理または転送による電力消費量も同様に削減される可能性がある。
【0044】
当然のことであるが、上記で説明した概念は、単に典型的であるだけであり、各種の変更を受け入れる余地がある。例えば、最大限度値を定めるという上記で説明した選択肢は、変更できる可能性があるか、またはお互いに組み合わせる可能性さえある。更に、当然のことであるが、データ・トラヒックの伝送に参加する異なるノードで、異なる形式のスループット・リミッタを使用できる可能性がある。例えば、異なるノードにおけるスループット・リミッタは、異なる値の最大限度値、及び異なる形式の最大限度値の少なくとも一方を使用できる可能性がある。更に、例えば異なる値の最大限度値、及び異なる形式の最大限度値の少なくとも一方を使用して、異なる方法で上りデータ・トラヒックのデータ・スループットおよび下りデータ・トラヒックのデータ・スループットを制限できる可能性がある。また、エネルギ制御属性に基づいて、データ・スループットの制限が下りリンク方向にのみ実装し、上りリンク方向には実装しない、またはその逆にする、ということが可能である。更に、上記で説明した概念は、各種形式のモバイル通信ネットワークで適応されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル通信ネットワークにおけるエネルギ制御の方法であって、
少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従って、前記少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックを転送するステップと、
前記少なくとも1つのサービス品質クラスに割り当てられたエネルギ制御属性に基づき、データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度に制限するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記データ・トラヒックは、上りリンク方向及び下りリンク方向の少なくとも一方のデータ・トラヒックであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大限度は、前記モバイル通信ネットワークのアクセスノード(120)に、前記少なくとも1つのサービス品質クラスの前記データ・トラヒックを通知するモバイル端末(200)の数に依存することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
オペレーション及びメンテナンスシステム(400)から前記エネルギ制御属性に関する制御情報を受信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記制御情報は、前記最大限度の値を定義することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御情報は、前記最大限度のタイプを定義することを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記最大限度は、総データ・スループット容量の最大比率として定義されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記最大限度は、絶対データ・スループット値として定義されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記最大限度は、総最大電力消費量の最大比率として定義されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サービス品質クラスに関連する、それぞれの対応するトラヒック転送ポリシー従って、複数のサービス品質クラスのデータ・トラヒックを転送するステップをさらに含み、
前記エネルギ制御属性は、前記複数のサービス品質クラスに割り当てられることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サービス品質クラスは、保証されたビットレートのないサービス品質クラス識別子に関連することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
ネットワーク・コンポーネント(100;110;120)であって、
少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従って、1つ以上のモバイル端末からの、及び、該1つ以上のモバイル端末への少なくとも一方において、前記少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックの転送を遂行するよう構成されるネットワーク・ノードと、
前記少なくとも1つのサービス品質クラスに割り当てられるエネルギ制御属性に基づき、前記データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度に制限するよう構成されるスループット・リミッタ(150)と
を備えることを特徴とするネットワーク・コンポーネント(100;110;120)。
【請求項13】
前記ネットワーク・コンポーネントは、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法に従って動作するように構成されることを特徴とする請求項12に記載のネットワーク・コンポーネント(100;110;120)。
【請求項14】
モバイル端末(200)であって、
少なくとも1つのサービス品質クラスと関連するトラヒック転送ポリシーに従って、ネットワーク・ノードからの、及び、該ネットワーク・ノードへの少なくとも一方において、前記少なくとも1つのサービス品質クラスのデータ・トラヒックの転送を遂行するよう構成されるトラヒック・フロー・コントローラ(240)と、
前記少なくとも1つのサービス品質クラスに割り当てられるエネルギ制御属性に基づき、前記データ・トラヒックの転送のためのデータ・スループットを最大限度に制限するよう構成されるスループット・リミッタ(250)と
を備えることを特徴とするモバイル端末(200)。
【請求項15】
前記モバイル端末(200)は、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法に従って動作するように構成されることを特徴とする請求項14に記載のモバイル端末(200)。
【請求項16】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法の各ステップを実行するように適合されたプログラムコートを含むコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−516094(P2013−516094A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545107(P2012−545107)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067887
【国際公開番号】WO2011/076282
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】