説明

モバイル電気通信システム用接触感応性案内表面

【課題】本発明によれば、通信装置の表面の少なくとも一部と同一の拡がりを有する電気機械誘電体(EMD)膜を用いるセンサシステムのための方法および関連装置が提供することができる。
【解決手段】通信装置にセンサシステムを設ける方法であって、前記通信装置のカバー表面と一体化した電気機械誘電体膜を設ける工程と、前記電気機械誘電体膜にアクセスするため、前記カバーにおける外面領域内に1または複数の空所領域を設ける工程であって、該空所領域は実行されるべき操作機能に対応する工程と、前記電気機械誘電体膜を、露出した領域のおのおのにおいて、前記通信装置の対応する操作機能に関連付けられた電子回路手段に結合する工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して接触感応性表面に関し、さらに詳しくは、ユーザインターフェースとしての、とりわけ通信装置用の接触感応性の案内表面(touch sensitive navigational surface)の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、セルラー方式携帯電話機およびモバイル無線電話機のような通信装置は、通常、電話番号をダイヤルするためのキーパッドとして、または当該通信装置の特徴または他の性能にアクセスするための機能キーとして機械的な接点スイッチを有する。さらに、そのような装置は、通常、それぞれ、可聴信号を電気的信号に変換するため、または電気的信号を可聴信号に変換するために、カーボンまたはエレクトレットマイクロフォン(electret microphone)、および小型ボイスコイルまたは圧電または他のそのようなタイプのスピーカを有している。同様に、ローラスイッチまたは方向(指示)スイッチのような独立したスイッチは、通信装置のディスプレイ画面上に表示されるメニューまたは選択機能、すなわち電話番号リスト、ボリューム増大/減少、呼出し音、およびそれに類似したものをスクロールするために、一般的に設けられている。タッチスクリーン技術は、多数のあらかじめプログラムされた可能な選択のうち、スクリーンのある領域をユーザが「接触する」ことによって所望の1つを選択できるようにするユーザインターフェースとして機能し得るが、そのような技術は、ディスプレイ画面のみに制限されている。
【0003】
それゆえ、現在の通信装置における対応する機能を実行する種々の分離した個別のコンポーネントと置換しかつ該装置の動作を高めるためのセンサ、マイクロフォンまたはスピーカとして機能する「接触」感応性表面を有する通信装置を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、当該装置の表面の少なくとも一部と同一の拡がりを有する電気機械誘電体(EMD)膜を用いる通信装置用の新規なセンサシステムのための方法および関連装置を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、通信装置用ユーザインターフェースとしての接触感応性の案内表面を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、当該装置のあらゆる表面がセンサ、マイクロフォン、またはスピーカとして作動し得る通信装置を提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、射出成型することによって、センサを当該通信装置の物理的な構成要素と一体化した通信装置を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、本発明を何ら限定することのない本発明の開示の目的のために提供される以下の詳細な説明において明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面においては、通信装置におけるセンサシステムを提供するための方法を示す。本方法は、通信装置のカバー表面と一体化した電気機械誘電体(EMD)膜を設ける工程と、前記EMD膜にアクセスするためにカバーにおける外面領域内に1つまたは複数の開口領域を設ける工程であって、該開口領域が実行されるべき操作機能に対応する工程と、前記EMD膜を、露出した領域のおのおのにおいて、前記通信装置の対応する操作機能に関連付けられた電子回路手段に結合する工程とを含んでいる。
【0010】
好ましくは、外面領域内に1または複数の空所または開口領域を設ける工程は、EMD膜が、音響信号を対応する電気信号へ変換しかつ電気信号を対応する音響信号へ変換する所望の操作機能を実行するために妨害されない動きを必要とする領域における前記カバーの内面領域内に1または複数の開口領域を設けることを含んでいる。
【0011】
好ましくは、該ディスプレイの背面をEMD膜に対向させかつ接触させて、空所領域の1つにディスプレイを設ける工程をさらに含んでいる。
【0012】
好ましくは、カバーの表面と一体化したEMD膜を設ける工程は、EMD膜とともにカバーを射出成型する工程を含んでいる。
【0013】
本発明の第2の局面においては、発明を具体化した通信装置が提供される。該通信装置は、通信装置のカバーの表面の少なくとも一部と同一の拡がりを有する電気機械誘電体(EMD)膜と、EMD膜の一部にアクセスするための前記カバーにおける外面領域内の1または複数の空所または開口領域であって、カバーの表面内に与えられた空所領域が実行されるべき操作機能に対応する領域と、表面に印加される力に応答してEMD膜によって発生した電気信号を検知するためにEMD膜に結合された電子回路手段であって、当該電子回路手段によって発生される電気信号に応答してカバーの表面の平面についてEMD膜の表面を動かすための電子回路手段とを備えている。
【0014】
好ましくは、EMD膜は、スピーカとして機能する。
【0015】
好ましくは、EMD膜は、マイクロフォンとして機能する。
【0016】
好ましくは、EMD膜は、キーパッドとして機能する。
【0017】
好ましくは、前記通信装置は、EMD膜に接触するディスプレイであって、それによって該EMD膜がディスプレイの表面上への接触する方向の検知に応答するディスプレイをさらに備えている。
【0018】
本発明のさらなる局面においては、それ自体と遠隔通信装置とのあいだに通信リンクを確立するための手段を有するタイプの可搬式ハンドヘルド通信装置が提供され、この通信装置は、電気信号を発生するための変位に応答する材料から成型された少なくとも第1の部分を有するケースと、電気信号の大きさに比例する材料の変位についての電気信号に応答する材料から成型された少なくとも第2の部分とを含んでいる。
【0019】
好ましくは、第1の部分および第2の部分は、電気機械誘電体(EMD)膜から成型されており、該EMDフィルムはケースの表面の少なくとも一部と同一の拡がりを有する。
【0020】
好ましくは、通信装置は、認証されたユーザに対する呼び完了を制限するアクセスを制御するためのセキュリティ手段をさらに含んでいる。
【0021】
好ましくは、セキュリティ手段は、指紋認識センサとして構成されたEMD膜の少なくとも一部を含んでいる。
【0022】
本発明のまたさらなる局面においては、従来の通信装置内に接触感応性表面機能を与える方法が提供される。本方法は、電気機械誘電体(EMD)膜に、粘着特性を有する第1の主面を設ける工程と、通信装置表面の所望の位置に接触して前記第1の粘着主面を配置する工程と、EMD膜を、通信装置の対応する操作機能に関連付けられた電子回路手段に結合する工程とを含んでいる。
【0023】
好ましくは、本方法は、EMD膜に、第1の主面の反対側に粘着特性を有する第2の主面を設ける工程であって、EMD膜を、装置のカバーと該装置のディスプレイ画面とのあいだに配置し、それによってEMD膜が接触感応性画面を提供する位置にディスプレイを保持する工程とを含んでいる。
【0024】
好ましくは、本方法は、EMD膜に、第1の主面の反対側に第2の主面を設ける工程と、第2の主面上に柔軟性のある保護層を設ける工程と、EMD膜の粘着主面を、装置表面上の所望の位置に貼着し、それによって保護層が、ユーザにより接点接触させるために外方に面する工程とをさらに含んでいる。
【0025】
本発明のさらなる局面においては、接触感応性表面機能を有する従来の通信装置が提供される。該通信装置は、粘着特性を有する第1の主面および第1の主面の反対側に配置される第2の主面を備える電気機械誘電体(EMD)膜であって、粘着主面が当該通信装置表面上の所望の位置に接触してEMD膜を保持するEMD膜と、通信装置の対応する操作機能に関連付けられた電子回路手段に前記EMD膜を結合するための手段とを備えている。
【0026】
好ましくは、通信装置は、粘着特性を有するEMD膜の第2の主面と、該EMD膜の第2の主面に接触しかつそれによって保持されるディスプレイとをさらに備えている。
【0027】
好ましくは、通信装置は、柔軟性のある保護層を有するEMD膜の第2の主面をさらに備えている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通信装置の表面の少なくとも一部と同一の拡がりを有する電気機械誘電体(EMD)膜を用いるセンサシステムのための方法および関連装置が提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明をさらに詳細に検討するため、電気機械誘電体(EMD)膜を、図1に断面図にて概略的に示し、全体として10で示す。EMD膜10は箔状をなし、かつ柔軟性のあるポリマー膜であり、永久電荷を有する。機械的な、または音響の力がその表面に加えられると、EMD膜は検出され得る電圧を発生する。それゆえ、EMD膜は、この構成においてはセンサとして機能する。EMD膜は、それとは反対の方向にも作用して、印加された電位を、表面の平面に関して膜を動かすべく変換する。それゆえ、EMD膜は、この構成においてはアクチュエータとして機能する。
【0030】
さらに図1を参照すると、EMD膜10は、薄い(約0.50μm)双軸配向されたポリプロピレン12で作製される。双軸配向および特別な添加剤は、材料の中に多数の小さな偏平の泡14を生成し、これらの泡はEMD膜にその特性を与える。永久電荷は、製造プロセスのあいだに、EMD材料内に注入される。薄い金属電極16,18は、EMD構造を完成すべく膜の両面20,22上に蒸着されるかまたは積層されている。図2は、EMD膜構造の断面の電子顕微鏡写真を示している。EMD膜の構成および動作の原理のさらなる詳細は、当該技術分野において一般に入手可能な文献から、および「電気機械膜およびその製造工程(Electromechanical Film and Procedure for Manufacturing Same)」と題する米国特許第4,654,546号明細書から入手することができる。本発明において使用されるような電気機械誘電体膜は、「EMFi(登録商標)」という商品名にて商業的に入手可能である。
【0031】
ここで、図3には、本発明のセンサシステムを実施するセルラー方式携帯電話が概略的に図示されており、該電話は全体として50で示されている。図3に示されているセルラー方式携帯電話50は、外観上は従来のものであり、そして典型的には熱可塑性ポリマー材料またはそのような適用に用いるために現在既知のまたは将来開発される他の材料で成型されたケース52を含んでいる。英数字キーパッド54は、たとえば、ダイヤルされるべき電話番号を入力し、後続の検索のためにメモリに英数字の文字を入力し、該セルラー方式携帯電話の機能にアクセスするため、そして一般的にセルラー方式携帯電話の技術分野における技術者によく知られている他のそのような操作のために、ユーザインターフェースとして提供される。セルラー方式携帯電話の付加的な特徴に対応する付加的なキーまたはボタン56も存在してもよい。マイクロフォンは、話し言葉のような、可聴信号を受け、かつ該セルラー方式携帯電話で使用するために対応する電気信号に変換すべく、58で示される領域に配置される。イヤーピースは、セルラー方式携帯電話内において受信されかつ処理された電気信号をユーザとコミュニケートするための話し言葉のような可聴信号に変換するために領域60内に配置される。全体として62で示されるディスプレイは、セルラー方式携帯電話技術において一般的に知られているような、ダイヤルされる番号、メニュー機能、テキストメッセージ、および他のそのようなグラフィックスのような、セルラー方式携帯電話の動作に関連した典型的なメッセージおよびグラフィックスを表示する。EMD膜は、センサとして使用されるときには、当該EMD膜が非常に薄く(ほぼ50μm)、湾曲し、かつその反対の支持されていない側に印加される軽いタッチまたは力には応答しないので、1つの主面側に沿って固体的に支持されなければならない。加えて、EMD膜から作られるセンサは、非常に軽くかつ通信装置に対して重量または体積を付加しない。以下において一層明らかになるように、キーパッド、マイクロフォン、スピーカおよびディスプレイ機能は、意図された機能を実行すべくセルラー方式携帯電話の対応する電気的回路とともにEMD膜を用いて実施され得る。
【0032】
図4は、本発明にかかわるセンサとして使用するために支持されるEMD膜の概略部分断面図である。図示された例において、100で示されるEMD膜は、ケースまたはカバー102内に形成されるくぼみ(relief area)106によって形成される表面104によって支持されている。方向108に印加される接触による力のような力は、EMD膜100の外面110に前記方向108に若干の移動を生じさせる。くぼみ106の支持面104は、EMD膜の底部側112の屈曲または移動を防止し、それゆえ該膜が、対応する電気信号を発生すべく接触されたときに、圧縮または変形され得る。薄い柔軟性を有する保護ポリマー層114は、EMD膜の表面110およびカバー102の表面106を覆う。軽減支持領域は、説明の目的のために図においてはいくぶんか誇張されているが、実際上、EMD膜は、カバーの厚さよりも実質的に薄くそしてカバーの表面の一部として容易に一体化される。
【0033】
EMD膜は、カバーの表面上の接触ないしタッチングの方向に関連して増大および減少を与えるべく抵抗ラダー(梯子型)ネットワークに電気的に結合され得る。そのような、ラダーネットワークは、たとえば、話し言葉の形態または呼び出し音、応答確認音などの形態での、オーディオのためのボリュームコントロールとして使用される。他の応用として、ディスプレイ画面キーパッド、または他の選択キーの照明を増大または減少させることがあり得る。
【0034】
プラスチック、ポリマーまたは他の材料から作られるケースまたはカバーの表面と同一の拡がりを有する一体化されたEMD膜の製造の1つの方法は、多重コンポーネント射出成型プロセスを用いることである。射出成型プロセスは、カバーの接触感応性表面領域を提供するために使用され得る。多重コンポーネント射出成型プロセスにおいて、最初の工程は、センサ応用においてEMD膜のための支持面を提供するカバーの硬い部分を射出成型することである。つぎの工程は、EMD膜を成型内に、該EMD膜が成型されたカバー内におけるその支持面と接触するように配置することである。つぎに、ケースの外面部分は、カバーの硬い部分およびEMD膜を覆って一体化ユニットを形成させるべく、柔らかいエラストマーまたは他の硬いポリマーを用いて成型される。このような方法でケースを製造することは、要求に応じて電話内の電気的回路構成に結合され得る連続的な接触感応性表面を提供する。
【0035】
図5は、図4と同様に、キーパッドとしての使用のために支持されたEMD膜の概略断面図である。図5において、キーの各位置に対応する触感ドーム120がEMD膜124の表面122上に配置されている。ドーム120は、キーが押されたときに、ユーザに触感のフィードバックを与える。図からわかるように、ドーム120は、該触感ドームの下方の領域126においてEMD膜124の表面122に接触し、矢印128の方向にドーム120により印加される力Fが、EMD膜によって発生されるべき電気信号を生じさせる。ドーム120の下方のEMD膜の領域は、キーが押されたときに電気信号を検出する電子的回路手段に結合され、該信号をユーザにより押されたキーに対応する特定の情報に変換する。多重コンポーネント射出成型プロセスにおいて、EMD膜およびドームは、成型内に、EMD膜の背後が支持面に向いてドーム面が外側に向くように、支持領域に接して挿入される。射出成型の最終段階は、キーパッドおよびカバーの一体化ユニットを形成すべく表面およびドームをソフトエラストマーまたは他のハードポリマーにより覆う。触感のフィードバックを提供するドームは、当業者に周知のものである。該ドームは、意図された機能を達成するためのいかなる既知のまたは将来開発されるタイプからなっていてもよい。ドームは、保護ポリマーシートによってさらに保持されていてもよく、またはキーパッドの技術において周知の保護フレキシブル積層によって被覆されていてもよい。その代わりに、射出成型の最終ステージは、カバーするエラストマーまたはポリマーの対応する位置に特定の英数字印を付与することを含んでいてもよい。
【0036】
代替的な実施の形態においては、EMD膜は、射出成型されていない電子的装置内に、所望の機能コンポーネント、すなわち、キーパッド、マイクロフォン、スピーカ、タッチセンサ、およびその類似物として構成され得る。
【0037】
図6は、通信装置において使用するための接触感応性画面の概略断面図を示し、該画面は全体として200で示されている。ケース202は、カバー内にセルラー方式携帯電話とともに使用される一般的なディスプレイ208を搭載すべくサイズ設定および形状設定されるくぼみ206によって形成される支持面204を有している。ディスプレイ208は、ディスプレイの底部側210とくぼみ206の表面204とのあいだに粘着テープによって一般に保持されている。図6に示された実施の形態において、EMD膜212は、対向して配置される表面214および216を有しており、これらの表面は、カバーのくぼみ206の表面204とディスプレイ画面208の背後面218とのあいだに高粘着性を与えるようにされている。カバーおよびディスプレイのポリマーまたは他の材料に使用するのに適した接着剤または他の粘着材は、EMD膜の表面216と表面204およびディスプレイの背後面218とのあいだに最大の粘着性を与え、その結果ディスプレイ208の表面220に沿うすべての移動が、EMD膜212に伝達され、かつそれによって検知されるように選択される。薄くて柔軟性を有する保護ポリマー層222は、ディスプレイ208の表面220およびカバー202の表面224に被覆してもよい。このような接触感応性画面の構成は、高い信頼性を有している。なぜならば、ゴミ、水および他の有害な物質が背後に侵入し、かつディスプレイ画面208の動作と干渉することができないからである。
【0038】
図7を参照すると、マイクロフォンまたはスピーカとして使用するために支持されたEMD膜の概略断面図が示され、該EMD膜は全体として250で示されている。カバー252は、開口または除去され、すなわち、カバー252の外側258および内側260に対向して配置される領域254,256にカバーを形成する材料が欠如している。外側258は、前述したように、ソフトエラストマーまたは他のハードポリマーによって成型されたカバーの面である。EMD膜262は、該EMD膜262が矢印266によって示された方向に湾曲しまたは前後振動することを許容させるべく、当該EMD膜262の周縁部264に沿って支持される。EMD膜262は、マイクロフォンとして機能し、そしてEMD膜262の表面268上に当たった音響エネルギーに対応する大きさおよび周波数を有する電気信号を発生する。該電気信号は、EMD膜の表面上の金属電極から電気的伝導体、プリント回路の配線または電気的技術における当業者に周知の、他の導電手段を介して電子的回路構成に結合される。同様の方法において、EMD膜262は、スピーカとして機能し、そして電話の電子回路構成からEMD膜に結合された電気信号に対応する大きさおよび周波数を有する音響エネルギーを生成すべく該EMD膜の表面に接している空気を変位させて湾曲しまたは前後振動し得る。薄くて柔軟性を有する保護ポリマー層270を、EMD膜の表面268およびカバー252の表面258に被覆してもよい。ポリマー層270は、EMD膜の動作を低下させないように充分な柔軟性を有していなければならない。また、EMD膜の外面を装飾的材料によって覆うこともできる。
【0039】
図8には、本発明のセンサシステムを実施するセキュリティアクセスを有するセルラー方式携帯電話が概略的に示され、この電話は図3において説明したセルラー方式携帯電話と実質的に同様であり、全体として300で示される。セルラー方式携帯電話300は、指紋識別および検証用の押付け窓(platen)302を含んでいる。該セルラー方式携帯電話の制御回路は、該電話機への初期アクセス得るため、または呼出しを完了するためにプラテン302に認証されたユーザの指を置くことを要求すべくプログラムされまたは構成され得る。EMD膜は、センサとして使用するために前述したように支持されなければならず、そして非常に薄いポリマー層が、EMD膜の表面の最大感度を達成するために、かつ指紋認識システムの精度に対するいかなる可能性のある影響も最小とするためEMD膜の表面上に用いられる。指紋は、当業者に周知のとおり渦巻および畝に対応する最小数の特徴点(indicia points)を選択することによって特徴付けられる。本図面において、ユーザは、最初に該セルラー方式携帯電話のディスプレイ上に示される指示にしたがって彼らの指をプラテン上に置くであろう。指紋認識システムは、この工程において指紋を「学習」し、それを呼びアクセスまたは操作完了のあいだの、後続の検索および比較のために画像または他のフォーマットとしてメモリ手段に格納する。1人または複数のユーザが、電話による呼びにアクセスしかつ完成させるために認証され得る。可能性のあるユーザの数は制限されるから、認識プロセスおよびマッチング時間は非常に短くかつユーザに不便でない。指紋認識システムとともに使用されるパスワードのような、付加的な、防護も採用され得る。
【0040】
現在既知の通信装置のディスプレイ画面に、接触感応性画面の能力および機能をもたせることもできる。この場合において、EMD膜表面は、通信装置における現在のディスプレイを適正位置に保持させるのに用いられる粘着テープと同様の粘着特性をもつように適切に作られる。そのように修正されたEMD膜は、従来の構成およびカバーの修正または変更なしに、接触感応性画面の能力および機能を提供するために現在の装置の粘着テープの代りに用いられる。通信装置のエレクトロニクスは、EMD膜への接続ができかつ同膜との操作機能性を有するように変更されることは明らかである。
【0041】
同様に、現在知られている通信装置のいかなる表面も、当該装置の従来の構成およびカバーを修正または変更することなく接触感応性の能力および機能をもつようにすることができる。この場合において、EMD膜は、1つの表面上に柔軟性を有する保護層を有し、かつ該装置の表面にEMD膜が粘着的に貼設されることを許容させるべくその反対の表面上に粘着性層を有する。粘着表面は、自己接着性であってもよく、粘着材を覆う取り外し可能なカバーを有していてもよい。また、該通信装置のエレクトロニクスは、EMD膜への接続ができかつ同膜との操作機能性を有するように変更されるであろう。
【0042】
通信装置のための接触感応性案内表面を、いくつかの好ましい実施の形態について前述してきた。発明の精神および視野から離れることなく多数の変更および修正がなされ得ることは、当業者によって認識されるであろう。たとえば、カバーの表面は、異なる材料から作られてもよく、射出成型プロセスのみに適する材料に限定されることはない。それゆえ発明は、図解により、そして限定ではなく開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明とともに使用される電気機械誘電体(EMD)膜の構成の断面図である。
【図2】EMD膜の構成の断面の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明のセンサシステムを実施するセルラー方式携帯電話の概略図である。
【図4】センサとして使用するために支持されたEMD膜の概略断面図である。
【図5】キーパッドとして使用するために支持されたEMD膜の概略断面図である。
【図6】接触感応性画面として使用するためのEMD膜およびディスプレイの概略断面図である。
【図7】マイクロフォンまたはスピーカとして使用するために支持されたEMD膜の概略断面図である。
【図8】本発明のセンサシステムを実施するセキュリティアクセスを有するセルラー方式携帯電話の概略図である。
【符号の説明】
【0044】
10、100、124、
212、250、262 電気機械誘電体(EMD)膜
12 双軸配向ポリプロピレン
14 泡
16、18 金属電極
20、22、104、116、
122、220、224、268 表面
50、300 セルラー方式携帯電話
52、102、202、252 ケースまたはカバー
54 英数字キーパッド
56 付加的なキーまたはボタン
58、60、126 領域
62、208 ディスプレイ
106、206 くぼみ
108 方向
110 外面
112、210 底部側
120 触感ドーム
128、266 矢印
200 通信装置
204 支持面
208 ディスプレイ画面
218 背後面
222、270 柔軟性を有する保護ポリマー層
254、256 領域
258 外側
260 内側
264 周囲縁部
302 指紋識別および検証用の押付け窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置の意図された機能を実行するために、適切な回路構成を伝えるためのカバーを有する通信装置用の接触感応性の案内表面を製造する工程で、前記カバーがユーザインターフェースを伝えるための外壁面部分を含んでなり、
前記通信装置によって実行されるべき対応する所望のユーザインターフェース操作機能を作動させるための電気機械誘電体(EMD)膜を設ける工程と、
前記カバーを成型するための射出生型プロセスを実行するための1つ以上のコンポーネントを有する射出成型装置を設ける工程と、
適切な射出成型プロセスを使用して前記カバーを成型する工程と、
前記電気機械誘電体膜外面と成型された前記カバーの外壁面が同一の拡がりを有するように前記電気機械誘電体膜を前記成型されたカバーの外面部分上の成型内に配置する工程と、
前記成型されたカバーの前記外壁面部分と前記電気機械誘電体膜外面を薄くて柔軟性を有する保護ポリマー層で成型し、それによって一体化ユニットを形成および画定する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記電気機械誘電体膜の配置が前記通信装置の前記関連するユーザインターフェース操作機能位置に対応する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カバーを前記電気機械誘電体膜のための連続的な支持面で成型する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記電気機械誘電体膜が前記電気機械誘電体膜を覆う領域における前記柔軟性を有する保護ポリマー層の表面のユーザによって作られた接触による力に応答する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記電気機械誘電体膜の支持されていない部分が妨害されない動きで自由に動けるように構成され得るように、前記電気機械誘電体膜の一部分のみが支持面に配置されもう一方の部分が支持されていない部分に配置されることをさらに含んでなる請求項1記載の方法。
【請求項6】
ディスプレイ画面を前記電気機械誘電体膜と前記柔軟性を有するポリマー層の間に設けることをさらに含んでなる請求項1記載の方法。
【請求項7】
接触感応性の案内表面および前記通信装置の意図された機能を実行するために、適切な電子的回路構成を伝えるためのカバーとからなり、
前記カバーはユーザインターフェースを支持するための外壁面部分とともに配置されており、電気機械誘電体(EMD)膜が前記通信装置によって実行される対応する所望のユーザインターフェース操作機能を作動させるための前記適切な電子的回路構成に電気的に接続されるように構成および配置され、
前記カバーは射出成型されたカバーであり、
前記電気機械誘電体膜が前記カバーの前記外壁面の少なくとも一部分と同一の拡がりを有するように、前記電気機械誘電体膜が前記カバーに対して射出成型するための前期カバーの前記外壁面に配置され、かつ
前記カバーの前記外壁面および前期電気機械誘電体膜に対して成型された薄くて柔軟性を有する保護ポリマー層およびそれによって前記電気機械誘電体膜が一体化ユニットを形成および画定することからなる通信装置。
【請求項8】
前記射出成型されたカバーが前記電気機械誘電体膜に対して連続する支持面で成型される請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記カバーの前記外面の前記電気機械誘電体膜への配置が前記通信装置の関連するユーザインターフェース操作機能位置に対応する請求項8記載の通信装置。
【請求項10】
前記電気機械誘電体膜が、キーパッドとして機能する請求項9記載の通信装置。
【請求項11】
前記柔軟性を有するポリマー層と前記電気機械誘電体膜の間に配置されるディスプレイ画面であり、それによってさらなる一体化ユニットを形成および画定することをさらに含む請求項7記載の通信装置。
【請求項12】
前記電気機械誘電体膜が前記ディスプレイの領域において前記薄くて柔軟性を有するポリマー層の前記表面のユーザによって作られた接触する力に応答するように、前記射出成型されたカバーは前記ディスプレイ画面の領域において前記電気機械誘電体膜のための連続する支持面とともに成型される請求項11記載の通信装置。
【請求項13】
前記電気機械誘電体膜の支持されていない部分が妨害されない動きで自由に動けるように構成されるように、前記電気機械誘電体膜の一部分のみが支持面に配置されかつもう一方は支持されていない部分に配置されるように前記射出成型される請求項7記載の通信装置。
【請求項14】
前記電気機械誘電体膜が、スピーカとして機能するように構成される請求項13記載の通信装置。
【請求項15】
前記電気機械誘電体膜が、マイクロフォンとして機能するように構成される請求項13記載の通信装置。
【請求項16】
前記通信装置の前記意図された機能を実行するための前記適切な電子的回路構成を伝えるためのカバーとともに配置され、外壁面部分を有する通信装置であって、前記カバーと共に射出成型するための前記カバーの前記外壁面部分に配置される電気機械誘電体膜であって、前記電気機械誘電体膜は一部分を形成し、射出成型されたカバーを画定する前記外壁面の少なくとも一部分と同一の拡がりを有し、
前記外壁面に対し成型された薄くて柔軟性を有するポリマー層および前記射出成型されたカバーを画定し、それによって一体化ユニットを形成しおよび画定する前記電気機械誘電体膜、かつ
前記電気機械誘電体膜が、前記電気機械誘電体膜を覆う領域における前記柔軟性を有するポリマー層の前記表面に沿ってユーザにより作られた接触による力に応答する前記通信装置の対応する機能を作動させるための前記適切な電子的回路構成に電気的に接続されるように構成される前記電気機械誘電体膜とからなる接触感応性の案内表面。
【請求項17】
前記電気機械誘電体膜が、キーパッドとして機能するように構成される請求項16記載の接触感応性の案内表面。
【請求項18】
前記電気機械誘電体膜が、アクチュエータとして機能するように構成される請求項16記載の接触感応性の案内表面。
【請求項19】
前記電気機械誘電体膜が、前記通信装置のユーザインターフェースとして機能するように構成された請求項16記載の接触感応性の案内表面。
【請求項20】
接触感応性の案内表面、外壁表面部分を有するカバーを有し、前記通信装置の前記意図された機能を実行するための適切な回路構成を伝えるために配置された通信装置を製造する工程と、
電気機械誘電体膜を設ける工程、
前記カバーに対し前記電気機械誘電体膜を成型内に配置する工程、
前記電気機械誘電体膜外面と前記成型されたカバーの前記外壁面部分が互いに同一の拡がりを有するように前記カバーと前記電気機械誘電体膜を射出成型する工程、かつ
前記射成型された電気機械誘電体膜に対し薄くて柔軟性を有するポリマー層および外壁面部分に対し、薄くて柔軟性を有するポリマー層を成型し、それによって一体化されたユニットを形成しおよび画定する工程からなる方法。
【請求項21】
前記電気機械誘電体膜を前記通信装置上の関連する意図された機能位置に対応する位置に配置することを含んでなる請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記電気機械誘電体膜がマイクロフォンとして機能するように構成され得るように、前記電気機械誘電体膜の前記支持されていない部分が妨害されない動きで自由に動くように配置され、前記電気機械誘電体膜の一部分のみが支持面に配置されかつもう一方が支持されていない表面に配置されることからなる請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記電気機械誘電体膜がスピーカとして機能するように構成されるように、前記電気機械誘電体膜の支持されていない部分が妨害されない動きで自由に動くように配置され、前記電気機械誘電体膜の一部分のみが支持面に配置されかつもう一方が支持されていない表面に配置されることをさらに含んでなる請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記電気機械誘電体膜と前記薄くて柔軟性を有するポリマー層の間にディスプレイ画面を設けることをさらに含んでなる請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−312408(P2007−312408A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166331(P2007−166331)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2002−70706(P2002−70706)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(399040520)ノキア コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】