説明

モーションセンサ

【課題】小型化に適し、且つ、簡易な構成で、慣性と接触による振動数とを検出することができるモーションセンサを提供する。
【解決手段】モーションセンサは、磁場発生部材及び磁気感応素子と、磁気感応素子が一体的に静止固定されるケース7と、磁場発生部材を磁気感応素子に対して位置変更可能に支持する可撓性支持部9と、ケースを貫通し、選択的に前記可撓性支持部に振動を伝達する伝達ピン27とを備える。伝達ピンには、クッション部材35が当接されており、クッション部材は、振動検知時には可撓性支持部と伝達ピンとの当接を許容し、振動非検知時には可撓性支持部と伝達ピンとを離隔させるように、反力を伝達ピンに付与している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の動作状態の変化を検知するモーションセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康管理に対する意識が高まっており、運動時や日常生活において歩数計が利用される機会が増加している。また、その際、運動効果を好適に獲得するために所定の脈拍状態を維持すべく脈拍計が用いられることもある。
【0003】
歩数計の構成に不可欠な主要センサ部は、慣性センサに分類されるものである。これまで、慣性センサとしては、構成がより簡易な1軸慣性センサや、複雑な動作に対応可能な3軸慣性センサ(特許文献1参照)が存在している。
【0004】
一方、脈拍計としては、光学的情報を利用したもの(特許文献2参照)や、圧電方式を用いたもの(特許文献3参照)が存在している。
【特許文献1】特開平11−304833号公報
【特許文献2】特開平9−108191号公報
【特許文献3】特開平1−155827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにこれまでは、歩数計と脈拍計とを一緒に使用したい場合、単に、それぞれ別個に歩数計及び脈拍計を携行せざるを得なかった。また、既存の構造の歩数計と脈拍計とを単純に結合した構成では、携行に不向きな大型化や、複雑構造に伴う高コスト化が避けられない。よって、一つのセンサで慣性状態と、接触による振動数とが計測できれば、低コストであって携行に適した小型化された計測手段が実現でき好適である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、小型化に適し、且つ、簡易な構成で、慣性状態と接触による振動数とを検出することができるモーションセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係るモーションセンサは、磁場感応可能に設けられた磁場発生部材及び磁気感応素子と、少なくともこれら磁場発生部材及び磁気感応素子を格納すると共にそれらの一方が一体的に静止固定されるケースと、前記磁場発生部材及び磁気感応素子の他方を、前記静止固定された一方に対して位置変更可能に支持する可撓性支持部と、前記ケースを貫通し、選択的に前記可撓性支持部に振動を伝達する伝達ピンとを備える。
【0008】
好適には、前記伝達ピンには、クッション部材が当接されており、前記クッション部材は、振動検知時には前記可撓性支持部又はそれと一体的な部分と、前記伝達ピンとの当接を許容し、振動非検知時には前記可撓性支持部又はそれと一体的な部分と、前記伝達ピンとを離隔させるように、反力を前記伝達ピンに付与している。
【0009】
また、好適には、前記ケースには、前記伝達ピンの摺動を案内すると共にその摺動量を所定量に規定するストッパ部材が取り付けられており、前記ストッパ部材は、前記伝達ピンにおける検知対象の接触面と同じ方向を指向する接触状態調整面を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明によれば、慣性計測と振動計測に共通の磁場発生部材及び磁気感応素子を用い、光学的処理や圧電処理などの振動計測専用の構成を付加する必要がないため、小型化に適し、且つ、簡易な構成で、慣性状態と接触による振動数とを検出することができる。
【0011】
なお、本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施の形態によって更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係るモーションセンサを、歩数計及び脈拍計として機能するセンサとして実施した場合の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るモーションセンサの要部構成を示す斜視図であり、図2は、図1の平面図である。モーションセンサ1は、磁場感応可能に設けられた磁場発生部材3及び磁気感応素子5と、ケース7と、可撓性支持部9とを備えている。
【0014】
磁場発生部材3及び磁気感応素子5は、相互に対向して配置されており、具体例として、磁場発生部材3には永久磁石が用いられており、磁気感応素子5は、GMR素子やTMR素子などの磁気抵抗効果素子が用いられている。
【0015】
ケース7は、磁場発生部材3及び磁気感応素子5を格納すると共に、それらの一方(本実施の形態では磁気感応素子5)を一体的に静止固定している。ケース7は、ベース11及び磁気シールド効果を有するキャップ13から構成されている。ベース11は、その一端側に、磁気感応素子5へのセンシング電流の供給等を行う接続端子15を有している。また、ベース11の他端側には、可撓性支持部9が支持されている。ベース11の他端側中央部には、リードフレーム17に取り付けられた磁気感応素子5がワイヤボンドによって接続されている。一方、キャップ13は、外形がほぼ直方体でその一面が開口した容器状の部材である。キャップ13は、ベース11に被せられて、磁場発生部材3、磁気感応素子5及び可撓性支持部9等を覆う。
【0016】
可撓性支持部9は、本実施の形態では、弾性梁19及び錘21から構成されており、弾性梁19は、ベース11において片持ち梁状に支持されたほぼコの字状の弾性部材から構成されている。より詳細には、弾性梁19は、ほぼY方向に延長する第1部分19aと、ほぼX方向に延長する第2部分19bと、ほぼY方向に延長する第3部分19cとを有している。第3部分19cは、その基端側がベース11に支持されている。第2部分19bはその一端側が、第3部分19cの先端側とつながっており、第2部分19bの他端側は、第1部分19aの基端側につながっている。このような形態の構成によって、第1部分19aの先端側は、XYZ方向の3軸によって定義できる立体的な範囲で動くことができる。
【0017】
第1部分19aの先端側には、錘21が取り付けられている。錘21において、磁気感応素子5と対向する部位には、収納室が形成されており、その内部に磁場発生部材3が収納されている。
【0018】
続いて、ケース7の外側の構成について、図3〜図6に基づいて説明する。キャップ13がベース11に被せられているケース7の外側には、ストッパ部材23が取り付けられている。ストッパ部材23は、正面からみてコの字状に屈曲された板状部材であり、より詳細には、上壁部23aと、その左右両側縁から下方に延長する左右一対の側壁部23b、23cとを有している。ストッパ部材23は、左右一対の側壁部23b、23cにおいて、キャップ13に取り付けられている。
【0019】
ストッパ部材23の上壁部23aには、貫通穴25が穿設されている。貫通穴25には、伝達ピン27が挿通されている。特に図5及び図6を参照して更に詳細に説明する。図5は、伝達ピンの縦断面図であり、図6は、伝達ピンが組み入れられている状態を示し、右半分(接続端子15が図示された側と反対側)は伝達ピンが待機位置にあり、左半分は伝達ピンが動作した位置にある状態を示す。
【0020】
伝達ピン27は、平面視円形の上壁部27aと、その環状側縁から下方に延長する円筒状の側壁部27bと、上壁部27aの円形中心部下面から下方に延長する円柱状のピン部27cとを有している。上壁部27aの上面は、検知対象、具体的には脈拍計として使用された際に人の手首部分が接触する接触面29として機能する。また、側壁部27bの下端部には、フランジ状に拡径された環状の係止部31が形成されている。この係止部31は、伝達ピン27がストッパ部材23に挿通された際、ストッパ部材23の上壁部23aの下面23dと選択的に係合し、伝達ピン27のストッパ部材23からの抜け止めとして機能する。
【0021】
伝達ピン27における側壁部27bとピン部27cとの間には、環状の凹所33が形成されている。この凹所33には、伝達ピン27が挿通されたストッパ部材23がケース7に取り付けられている際、クッション部材35が収容される。
【0022】
クッション部材35は、ピン部27cの外径よりも大きく且つ側壁部27bの内径よりも小さい、円筒状の弾性部材より構成されている。収納された状態では、クッション部材35の上端部は、伝達ピン27の上壁部27aの下面と当接しており、クッション部材35の下端部は、キャップ13の上面と当接している。
【0023】
また、キャップ13の上面には、円形の貫通穴37が穿設されており、ストッパ部材23に挿通された伝達ピン27のピン部27cが貫通穴37を介して錘21に当接できるようになっている。
【0024】
次に、上述した構成を有するモーションセンサの動作について説明する。まず、図6の右半分に示されるように、伝達ピン27の接触面29に特に押圧力が作用していない状態では、伝達ピン27は、クッション部材35の反発力によって、ケース7から離隔する方向に付勢されている。これにより、伝達ピン27のピン部27cの先端は、錘21と当接せずに離れている。このとき、伝達ピン27の係止部31の上面がストッパ部材23の上壁部23aの下面23dに係止されることで、伝達ピン27の抜けが防止される。
【0025】
上記のような状態では、磁場発生部材3及び可撓性支持部9は、伝達ピン27からの干渉を受けることのないフリー状態にあり、モーションセンサ1は、専ら慣性センサすなわち歩数計として機能する。モーションセンサ1を携帯する者が歩行運動を行うと、それに伴って、錘21には慣性力が作用する。前述したように、磁場発生部材3は、可撓性支持部9によって、磁気感応素子5に対して位置変更可能に支持されているため、錘21に効率よく作用する慣性力に起因して、磁場発生部材3の磁気感応素子5に対する位置が歩行運動に合わせて変化する。磁気感応素子5においては、このような磁場発生部材3の動きに応じた磁気変化を電流変化として検出することができる。よって、かかる電流変化から、運動者の周期的な動作を捉えることができ、すなわち、歩行数を検出することができる。
【0026】
一方、近年の健康管理への意識向上により、漫然とした運動ではなく、所定の脈拍状態を維持しながら運動することで、運動効果を高めたいという傾向がある。これに応じて、本実施の形態に係るモーションセンサ1では、歩行運動の間に脈拍を計測することができる。
【0027】
まず、図6の左半分に示されるように、伝達ピン27の接触面29を使用者の手首部分の肌面41に押し付けていく。勿論、使用態様により、接触面29に対して肌面41を押し付けてもよい。これによって、伝達ピン27は、クッション部材35を圧縮させながら徐々にケース7に近づく方向に移動し、最終的には伝達ピン27のピン部27cの先端部が錘21に当接する。そして、肌面41の脈動による微小振幅が伝達ピン27、錘21を介して磁場発生部材3に伝わり、磁場発生部材3が微動する。磁気感応素子5は、かかる磁場発生部材3の微動を検出し、電流変化から振動数を検出することができる。モーションセンサ1は専ら振動センサすなわち脈拍計として機能する。
【0028】
クッション部材35の作用について説明すると、クッション部材35は、振動(脈拍)検知時には肌面41の弾力によって伝達ピン27が錘21と当接するのを許容し、振動(脈拍)非検知時すなわち接触面29に接触による押圧力が作用していない時には伝達ピン27が錘21と離隔するように、反力を伝達ピン27に付与している。また、クッション部材35は、脈を打つときは、圧縮されて伝達ピン27が可撓性支持部9の弾性梁19を撓ませることを阻害しないような柔らかさを具備している。これによって、共通の磁場発生部材3及び磁気感応素子5を用いて脈拍計(振動センサ)と歩数計(慣性センサ)とを選択的に機能させると共に、脈拍のような微動振動を磁場発生部材3に伝達できるようになっている。
【0029】
また、伝達ピン27の接触面29に肌面41が押し当てられた際には、ストッパ部材23が伝達ピン27の摺動を案内すると共に、その摺動量を所定量に規定する作用を発揮する。すなわち、伝達ピン27を正確に錘21に当接させると共に、伝達ピン27の接触面29がストッパ部材23の上壁部23a以上に押し込まれることを防止し、錘21や弾性梁19に過度の押圧力が作用することを回避する。
【0030】
さらに、ストッパ部材23の上壁部23aの上面は、伝達ピン27の接触面29の周囲にあって、接触面29と同じ方向を指向する接触状態調整面23eとして機能する。すなわち、伝達ピン27が肌面41に過度に沈み込み、肌面41が伝達ピン27の側壁部27bにまで回り込むような接触態様では、肌面41の弾力が反発力として伝達ピン27に伝わり過ぎ、脈動のような微動振動を拾うことが難しくなくおそれがある。本実施の形態では、ストッパ部材23の上壁部23aが接触状態調整面23eとして機能し、肌面41の弾力の大部分をかかる接触状態調整面23eで受け、接触状態調整面23eで囲まれた内側の接触面29で微動振動を拾うことができ、より正確に脈拍を計測することができるようになっている。
【0031】
また、図6の右半分に示されているように、伝達ピン27に対して接触による押圧力が作用していない状態において、ケース7の上面と環状の係止部31の下面31dとの間隔Bは、伝達ピン27の接触面29とストッパ部材23の接触状態調整面23eとの高さ差Hよりも大きく設定されている。これにより、上述した伝達ピン27の抜け止め作用や接触面29及び接触状態調整面23eによる接触状態調整作用を得るように構成されておりながら、伝達ピン27のピン部27cが錘21に当接する前に、係止部31がケース7に衝突してしまうなどにより伝達ピン27の摺動動作が阻害されないように配慮されている。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係るモーションセンサによれば、慣性計測と振動計測に共通の磁場発生部材及び磁気感応素子を用い、光学的処理や圧電処理などの振動計測専用の構成を付加する必要がないため、小型化に適し、且つ、簡易な構成で、慣性と接触による振動数とを検出することができる。
【0033】
上記に、好ましい実施の形態を参照して、本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0034】
上記実施の形態では、伝達ピンは、可撓性支持部の一部である錘に当接するように構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、錘以外の可撓性支持部の構成部(例えば弾性梁)や更には可撓性支持部と一体的に設けられた他の部材に当接するように、伝達ピンを配置してもよい。
【0035】
また、磁場発生部材や磁気感応素子の取り付け態様も特に限定されるものではない。錘を介さずに設けることも可能であり、また、可撓性支持部側に磁気感応素子が取り付けられ、ケース側に磁場発生部材が取り付けられていてもよい。
【0036】
さらに、可撓性支持部の構成も上記実施の形態に限定されるものではなく、錘の有無や、弾性梁の形態など、適宜改変することができる。例えば、必ずしも3軸慣性センサとしての機能は要求されず、弾性梁をより簡素化してもよい。
【0037】
本発明の適用分野は、健康増進関係の分野には限られない。よって、例えば、電子部品を格納した製品の落下、振動、カウントの検知が必要な電気・電子機器分野や、衝撃や圧力に対して配慮が必要な物品を対象とする物流分野などに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るモーションセンサの要部構成を示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本実施の形態に係るモーションセンサの外観を示す斜視図である。
【図4】モーションセンサのストッパ部材に関し、(a)はその平面を示し、(b)は正面を示す図である。
【図5】モーションセンサの伝達ピンの縦断面図である。
【図6】モーションセンサにおける伝達ピンの近傍を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 モーションセンサ
3 磁場発生部材
5 磁気感応素子
7 ケース
9 可撓性支持部
23 ストッパ部材
27 伝達ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場感応可能に設けられた磁場発生部材及び磁気感応素子と、
少なくともこれら磁場発生部材及び磁気感応素子を格納すると共にそれらの一方が一体的に静止固定されるケースと、
前記磁場発生部材及び磁気感応素子の他方を、前記静止固定された一方に対して位置変更可能に支持する可撓性支持部と、
前記ケースを貫通し、選択的に前記可撓性支持部に振動を伝達する伝達ピンと
を備えたモーションセンサ。
【請求項2】
前記伝達ピンには、クッション部材が当接されており、
前記クッション部材は、振動検知時には前記可撓性支持部又はそれと一体的な部分と、前記伝達ピンとの当接を許容し、振動非検知時には前記可撓性支持部又はそれと一体的な部分と、前記伝達ピンとを離隔させるように、反力を前記伝達ピンに付与している、
請求項1に記載のモーションセンサ。
【請求項3】
前記ケースには、前記伝達ピンの摺動を案内すると共にその摺動量を所定量に規定するストッパ部材が取り付けられており、
前記ストッパ部材は、前記伝達ピンにおける検知対象の接触面と同じ方向を指向する接触状態調整面を備える、
請求項1又は2に記載のモーションセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−199(P2008−199A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170207(P2006−170207)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】