説明

モータ駆動装置

【課題】コモンモード電流を金属フレームに円滑に流し、コモンモード電流に起因する放射ノイズを低減させる。
【解決手段】モータ駆動装置は、ステッピングモータの巻線の端部に接続され、金属フレームの外部に露出する巻線端子7a〜7dを備えている。また、モータ駆動装置は、ドライバと巻線端子7a〜7dとの間に配設され、ドライバから出力される駆動信号を示す駆動電流を巻線に伝送するためのケーブルを備えている。そして、モータ駆動装置は、ステッピングモータの金属フレームと巻線端子7a〜7dとの間に配設され、ケーブルを流れたコモンモード電流を金属フレームを介してドライバに帰還させるためのコンデンサ17a〜17dを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータを駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2相型のステッピングモータにおけるステータの2つの巻線の相を切り換える相切換回路と、巻線に流れる電流が一定となるようにパルス幅を調整するスイッチング素子と、を備えたモータ駆動装置が知られている。
【0003】
近年、ステッピングモータの高精度制御、回転の高速化、モータの小型化のために、相切換回路におけるスイッチング周波数の高周波化が必須となっている。このスイッチング周波数の高周波化は、放射ノイズの悪化をもたらしている。さらに、スイッチングの高周波化によるスイッチング素子の発熱を抑制するために、スイッチング素子のPWMスイッチングのスピードの高速化も図られている。このスイッチング素子のPWMスイッチングの高速化も、放射ノイズの悪化の原因のひとつとなっている。
【0004】
そこで、ステッピングモータの回転停止保持モードでは、スイッチング素子のPWMスイッチング動作を停止させ、別電源からステッピングモータの内部巻線に定電流を供給する技術が提案されている(特許文献1参照)。しかし、ステッピングモータの回転動作モードでは、スイッチング素子のPWMスイッチング動作を停止できないため、放射ノイズを抑制できないことが問題であった。この問題を解決するために、簡単な回路構成でスイッチングスピードを適切に抑制し、ステッピングモータに出力する駆動信号の駆動波形を鈍らせることで、放射ノイズを低減する技術が提案されている(特許文献2参照)。これにより、スイッチング素子の動作による放射ノイズを低減することができる。なお、この技術では、スイッチング素子の機能発現を阻害しないように、スイッチング素子の発熱量と放射ノイズとのトレードオフを考慮しながら、駆動信号の駆動波形を鈍らせる必要がある。
【0005】
ところで、放射ノイズは、上述したスイッチング素子の動作に起因するもの以外に、ステッピングモータとステッピングモータを駆動するドライバとの間に配設されるケーブルによるものがある。図9は、従来のモータ駆動装置を示す説明図である。図10は、従来のステッピングモータの取り付け構造を示す説明図である。図11は、従来のステッピングモータに取り付けるモータ駆動装置の端子基板を示す説明図である。
【0006】
図9において、1は、ステッピングモータ200を搭載する機器の金属筐体である。ステッピングモータ200は、モータ駆動装置100により駆動される。
【0007】
ステッピングモータ200は、2相型のものであり、金属フレーム2と、巻線を有する不図示のステータと、ステータの中心に配置される不図示のロータと、を備えている。ロータの回転軸には、歯車10が取り付けられている。そして、ステッピングモータ200を金属筐体1に取り付ける際には、図10に示すように、歯車10を金属筐体1に形成した孔13に挿通し、ビス9を金属筐体1に形成したビス孔12に螺合させることにより金属フレーム2を金属筐体1に固定する。
【0008】
モータ駆動装置100は、図9に示すように、ステッピングモータ200を駆動するドライバIC3と、ドライバIC3を搭載したドライバ基板4と、ドライバ基板4に搭載された基板コネクタ5と、を備えている。また、モータ駆動装置100は、ステッピングモータ200の巻線に駆動信号を伝送するための4本のケーブル6と、ステッピングモータ200の内部の2つの巻線の両端を金属フレーム2の外部に引き出した4つの巻線端子7と、を備えている。また、モータ駆動装置100は、巻線端子7を実装する端子基板8を備えている。
【0009】
ドライバ基板4は、金属筐体1に固定され、ドライバIC3のグラウンド端子を金属筐体1に接地している。
【0010】
ステッピングモータ200の金属フレーム2には、図10に示すように、端子基板8を巻線端子7に接続するために、巻線端子7を金属フレーム2の外部に露出させる開口11が形成されている。
【0011】
端子基板8は、図11に示すように、4つの巻線端子7の各々に接続された4つの配線パターン14と、ケーブル6を接続する基板コネクタ15とを有している。
【0012】
図12は、従来のモータ駆動装置の回路構成を示す回路図である。ただし、図12に示す回路は、モータ駆動装置100を構成する2相の駆動回路のうち、1相の駆動回路のみが図示されている。
【0013】
図12において、16はステッピングモータ200のステータの巻線である。2つのケーブル6の一方には、巻線16に伝送される駆動信号である駆動電流i1が流れ、他方には、巻線16を通過した駆動電流i2が流れる。ここで、駆動電流i1,i2は、いわゆる差動的に流れる電流であり、互いに逆位相となる。しかし、ペアとなるケーブル6同士の長さの違いや、金属筐体1に対する距離の違いなどが原因となって、ケーブル6同士の平衡度にアンバランスが生じやすい。このアンバランスによって、2つのケーブル6に流れる駆動電流i1,i2が互いに完全な逆位相とはならず、実際には2つのケーブル6に同相で流れる電流、いわゆるコモンモード電流icが流れる。
【0014】
このコモンモード電流icは、巻線16から金属フレーム2,金属筐体1,ドライバ基板4のグラウンドを経由してドライバIC3に帰還する。この帰還ルートに流れる帰還電流irにより発生する磁界が、コモンモード電流icにより発生する逆向きの磁界と打ち消し合うことによって、コモンモードノイズと称される放射ノイズNを低減することができる。
【0015】
【特許文献1】特開平9−93992号公報
【特許文献2】特開2003−189592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、巻線16と金属フレーム2とは絶縁されており、微小な浮遊容量で結合している程度であるため、両者間は高インピーダンスである。そのため、金属筐体1に十分な帰還電流irを流すことができない。その結果、ケーブル6のコモンモード電流icによる磁界を、ケーブル6の近傍の金属筐体1の帰還電流irによる磁界で打ち消しきることができず、放射ノイズNの低減効果が不十分であるという問題があった。
【0017】
そこで本発明の目的は、コモンモード電流を金属フレームに円滑に流し、コモンモード電流に起因する放射ノイズを低減させるモータ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、金属フレームに、巻線を有するステータと、前記ステータに対して回転するロータとが収納されているステッピングモータを駆動するドライバを備えたモータ駆動装置において、前記巻線の端部に接続され、前記金属フレームの外部に露出する巻線端子と、前記ドライバと前記巻線端子との間に配設され、前記ドライバから出力される駆動信号を前記巻線に伝送するためのケーブルと、前記金属フレームと前記巻線端子との間に配設され、前記ケーブルを流れたコモンモード電流を前記金属フレームを介して前記ドライバに帰還させるための容量性素子と、を備えた、ことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明は、金属フレームに、巻線を有するステータと、前記ステータに対して回転するロータとが収納されているステッピングモータを駆動するドライバを備えたモータ駆動装置において、前記巻線の中点に接続され、前記金属フレームの外部に露出する巻線端子と、前記ドライバと前記巻線端子との間に配設され、前記ドライバから出力される駆動信号を前記巻線に伝送するためのケーブルと、前記金属フレームと前記巻線端子との間に配設され、前記巻線の中点まで流れたコモンモード電流を前記金属フレームを介して前記ドライバに帰還させるための容量性素子と、を備えた、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コモンモード電流を金属フレームに円滑に流すことができ、コモンモード電流に起因する放射ノイズを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る第1実施形態のモータ駆動装置を示す説明図であり、図2は、ステッピングモータに取り付ける端子基板を示す説明図である。また、図3は、ステッピングモータの概略構成を示す説明図である。
【0023】
図1に示す1は、ステッピングモータ200を搭載する機器の金属筐体である。ステッピングモータ200は、モータ駆動装置100Aにより駆動される。
【0024】
ステッピングモータ200は、本第1実施形態では、2相型のバイポーラ型ものである。このステッピングモータ200は、図3に示すように、金属フレーム2と、2つの巻線16a,16bを有するステータ201と、ステータ201の中心に配置され、ステータ201に対して回転するロータ202と、を備えている。ステータ201及びロータ202は、金属フレーム2に収納されている。ロータ202の回転軸には、歯車10が取り付けられている。ステッピングモータ200の金属フレーム2は、図1に示すように、機器の金属筐体1にビス9で取り付けられて、金属筐体1に接地されている。
【0025】
モータ駆動装置100Aは、駆動信号を出力してステッピングモータ200を駆動するドライバとしてのドライバIC3と、ドライバIC3を搭載したドライバ基板4と、ドライバ基板4に搭載された基板コネクタ5と、を備えている。また、モータ駆動装置100Aは、ステッピングモータ200の内部の2つの巻線16a,16bの両端部に接続され、金属フレーム2の外部に露出する4つの巻線端子7(7a,7b,7c,7d)を備えている。さらに、モータ駆動装置100Aは、ステッピングモータ200の巻線に駆動信号を伝送するために、ドライバIC3と巻線端子7との間に配設された4本のケーブル6と、巻線端子7を実装する配線基板としての端子基板8と、を備えている。
【0026】
ドライバ基板4は、金属筐体1に固定されている。ドライバIC3のグラウンド端子は、ドライバ基板4のグラウンド配線に接続され、そのグラウンド配線が金属筐体1に接続固定される。これにより、ドライバIC3のグラウンド端子が金属筐体1に接地されている。
【0027】
端子基板8は、図2に示すように、4つの巻線端子7a,7b,7c,7dの各々に接続された4つの配線パターン14a,14b,14c,14dと、ケーブル6を接続する基板コネクタ15とを有している。
【0028】
具体的には、ステッピングモータ200は、第1相巻線16a及び第2相巻線16bの2つの巻線を有しており、第1相巻線16aの一端部には、第1の巻線端子7aが接続され、第1相巻線16aの他端部には、第2の巻線端子7bが接続される。また、第2相巻線16bの一端部には、第3の巻線端子7cが接続され、第2相巻線16bの他端部には、第4の巻線端子7dが接続される。そして、端子基板8は、第1の巻線端子7aが接続される第1の配線パターン14aと、第2の巻線端子7bが接続される第2の配線パターン14bと、を有している。また、端子基板8は、第3の巻線端子7cが接続される第3の配線パターン14cと、第4の巻線端子7dが接続される第4の配線パターン14dと、を有している。
【0029】
各配線パターン14a〜14dは、短冊状に形成されて間隔をあけて互いに平行に端子基板8上に配設される。そして、各配線パターン14a〜14dの一端近傍には、ケーブル6に接続するための基板コネクタ15が配設されている。
【0030】
各配線パターン14a〜14dの他端近傍には、巻線端子7a〜7dがそれぞれ接続されている。
【0031】
本第1実施形態では、端子基板8は、4つの配線パターン14a〜14dを囲うように、金属フレーム2に電気的に接続されるグラウンド配線パターン18を有している。
【0032】
このグラウンド配線パターン18は、配線パターン14a〜14dが形成されている端子基板8の表面に形成されると共に、端子基板8の裏面の略全面を覆うように形成されている。
【0033】
そして、モータ駆動装置100Aは、金属フレーム2と巻線端子7との間に配設された4つの容量性素子として4つのコンデンサ17a〜17dを備えている。
【0034】
具体的に説明すると、第1のコンデンサ17aの一端が第1の配線パターン14aの他端に接続され、第1のコンデンサ17aの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。また、第2のコンデンサ17bの一端が第2の配線パターン14bの他端に接続され、第2のコンデンサ17bの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。また、第3のコンデンサ17cの一端が第3の配線パターン14cの他端に接続され、第3のコンデンサ17cの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。また、第4のコンデンサ17dの一端が第4の配線パターン14dの他端に接続され、第4のコンデンサ17dの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。したがって、各コンデンサ17a〜17dは、ケーブル6の終端(ケーブル6のドライバIC3側とは反対側の端部)に、具体的には、配線パターン14aの終端(他端)に接続されたこととなる。
【0035】
このように各コンデンサ17a〜17dは、端子基板8上に実装されている。これにより、各コンデンサ17a〜17dを端子基板8に実装した状態で端子基板8をステッピングモータ200に取り付ければよいので、取り付け作業が簡単である。
【0036】
ところで、コンデンサ17a〜17dが接続されるグラウンド配線パターン18は、リード線を介して半田等で金属フレーム2に接続したり、半田のみで接続したり、導電性のねじで接続したり、種々の接続方法が可能である。
【0037】
しかし、リード線による方法は、リード線のインダクタンスにより高周波領域では高インピーダンスとなるので、放射ノイズの低減効果が小さくなる可能性がある。また、半田で直接接続する方法では、ステッピングモータ200の動作により金属フレーム2が高温となった際に半田が熔ける可能性がある。また、半田付けする際に、巻線の絶縁被覆が熔ける可能性もある。また、ねじで接続する方法では、金属フレーム2にねじ孔を開ける必要があるため、ねじがステッピングモータ200の内部機器に接触しないようにしなければならず、金属フレーム2を大型化しなければならない。また、金属フレーム2を大型化してしまうと、内部機器との間に空気層が形成されてしまい、内部機器の放熱効果が低下してしまう可能性がある。
【0038】
そこで、本第1実施形態のモータ駆動装置100Aは、コンデンサ17a〜17dの近傍であって、端子基板8の裏面のグラウンド配線パターン18の領域28に固定される導電性の板ばね27を備えている。
【0039】
そして、図1に示すように、端子基板8を金属フレーム近傍に配置した際に、板ばね27が金属フレーム2に接触する。このとき、板ばね27は、その付勢力により金属フレーム2に圧接するので、接触不良となることはなく、良好に金属フレーム2に接触した状態を維持することができる。
【0040】
これにより、グラウンド配線パターン18は、板ばね27による簡単な構成で金属フレーム2に電気的に接続される。
【0041】
そして、板ばね27は、グラウンド配線パターン18における端子基板8の配線パターン14a〜14dの他端(終端)側に固定されているので、配線パターン14a〜14dの終端から金属フレーム2に至るまでの距離が短い。したがって、配線パターン14a〜14dと金属フレーム2との間が低インピーダンスとなり、コモンモード電流が良好に流れる。
【0042】
図4は、本発明に係る第1実施形態のモータ駆動装置100Aの回路構成を示す回路図である。ただし、図4に示す回路は、モータ駆動装置100Aを構成する2相の駆動回路のうち、1相の駆動回路のみが図示されているが、不図示の駆動回路は、図4の駆動回路と同様の構成である。
【0043】
図4において、16はステッピングモータ200の2つの巻線16a,16bのうち、一方の巻線を示している。2つのケーブル6の一方には、巻線16に伝送される駆動信号である駆動電流i1が流れ、他方には、巻線16を通過した駆動電流i2が流れる。ここで、駆動電流i1,i2は、いわゆる差動的に流れる電流である。そして、ペアとなるケーブル6同士の長さの違いや、金属筐体1に対する距離の違いなどが原因となって、ペアとなるケーブル6同士の平衡度にアンバランスが生じた際には、各ケーブル6に同一方向にコモンモード電流icが流れる。
【0044】
このコモンモード電流icは、ケーブル6の終端(具体的には、配線パターン14の終端)からコンデンサ17を介して金属フレーム2,金属筐体1,ドライバ基板4のグラウンドを経由してドライバIC3に帰還する。
【0045】
つまり、コンデンサ17は、コモンモード電流icに対して低インピーダンスとなるので、コモンモード電流icは、円滑に金属フレーム2に流れる。この帰還ルートに流れる帰還電流irにより発生する磁界が、コモンモード電流icにより発生する逆向きの磁界と打ち消し合い、コモンモードノイズと称されるコモンモード電流に起因する放射ノイズを低減することができる。
【0046】
なお、仮にケーブル6の始端又はその途中にコンデンサを接続した場合には、コンデンサのケーブル6の接続点からケーブル6の終端までの区間でコモンモード電流が生じる可能性があり、その区間で生じたコモンモード電流は帰還できない可能性がある。
【0047】
これに対し、本第1実施形態では、ケーブル6の終端からコモンモード電流icを金属フレーム2に帰還させるようにしたので、より効果的にコモンモード電流icを金属フレーム2を介してドライバIC3に帰還させることができる。
【0048】
図5は、放射ノイズレベルを測定した事例を示す図である。図5(a)は、従来のモータ駆動装置における測定結果を示す図であり、図5(b)は本第1実施形態のモータ駆動装置おける測定結果を示す図である。モータ駆動装置の構成条件としては、ケーブル6の長さを500mm、金属筐体1からケーブル6までの高さを10mm、端子基板8に実装するコンデンサ17を1000pFとした。図5に示すように、本実験では、55MHzにおいて8dB程度の放射ノイズ低減が確認された。
【0049】
[第2実施形態]
次に第2実施形態のモータ駆動装置について説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図6は、本発明に係る第2実施形態のモータ駆動装置100Bの回路構成を示す回路図、図7は、ステッピングモータに取り付ける端子基板8Aを示す説明図である。なお、図6において、モータ駆動装置100Bを構成する2相の駆動回路のうち、1相の駆動回路のみが図示されているが、不図示の駆動回路は、図6の駆動回路と同様の構成である。
【0051】
モータ駆動装置100Bは、図6に示すように、ステッピングモータの巻線16の中点に接続され、金属フレーム2の外部に露出する巻線端子19を備えている。巻線16の中点とは、巻線16を2分割した際に、インダクタンスが互いに等しくなる点である。
【0052】
本第2実施形態のモータ駆動装置100Bは、金属フレーム2と巻線端子19との間に配設された容量性素子としてコンデンサ21を備えている。
【0053】
図7を参照しながら具体的な構成を説明すると、第1相巻線の中点から引き出された配線に第5の巻線端子19aが接続され、第2相巻線の中点から引き出された配線に第6の巻線端子19bが接続されている。端子基板8Aには、第5,第6の配線パターン20a,20bからなる2つの配線パターンが形成されており、第5の配線パターン20aには、第5の巻線端子19aが接続され、第6の配線パターン20bには、第6の巻線端子19bが接続されている。これにより、第5,第6の巻線端子19a,19bが端子基板8Aに実装されている。
【0054】
そして、モータ駆動装置100Bは、金属フレーム2と各巻線端子19a,19bとの間に配設された2つの容量性素子であるコンデンサ21a,21bを備えている。
【0055】
具体的に説明すると、第1のコンデンサ21aの一端が第5の配線パターン20aに接続され、第1のコンデンサ21aの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。また、第2のコンデンサ21bの一端が第6の配線パターン20bに接続され、第2のコンデンサ21bの他端がグラウンド配線パターン18に接続されている。
【0056】
このように2つのコンデンサ21a,21bは、端子基板8A上に実装されている。
【0057】
この構成により、図6に示す巻線16の中点まで流れたコモンモード電流icは、コンデンサ21により金属フレーム2を介してドライバIC3に帰還させている。
【0058】
本第2実施形態では、コンデンサ21の個数を4個から2個に減らすことができ、より安価な構成でノイズ低減効果が得られる。
【0059】
さらに、コンデンサ21が巻線16の中点に接続されることとなるので、ケーブル6で生じるコモンモード電流だけではなく、巻線16の部分で生じるペア間のアンバランスにより生じるコモンモード電流もドライバIC3に帰還させることができる。したがって、巻線16で生じるコモンモード電流も帰還でき、このコモンモード電流により生じる放射ノイズも低減させることができるので、放射ノイズの低減効果を高めることができる。
【0060】
[第3実施形態]
図8は、本発明に係る第3実施形態のモータ駆動装置における端子基板を示す説明図である。なお、本第3実施形態において、上記第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
上記第1実施形態では、グラウンド配線パターンと金属フレームとを板ばね27により電気的に接続したが、本第3実施形態では、導電性部材30によりグラウンド配線パターン18と金属フレームとを接着することで電気的に接続している。
【0062】
この導電性部材30は、接着性を有する導電性ペースト或いは導電性ガスケットである。
【0063】
導電性部材30が導電性ペーストである場合には、端子基板8Bの裏面のグラウンド配線パターン18に導電性ペーストを塗布し、金属フレームに接着すればよい。
【0064】
導電性部材30が導電性ガスケットである場合には、端子基板8Bの裏面のグラウンド配線パターン18に導電性ガスケットを貼り付け、金属フレームに接着すればよい。
【0065】
導電性部材30が導電性ペーストと導電性ガスケットのいずれであっても、放射ノイズの低減効果に関しては、上記第1実施形態とほぼ同等の効果を有する。
【0066】
そして、本第3実施形態では、導電性ペースト又は導電性ガスケットからなる導電性部材30で接着するようにしたので、リード線や半田、ねじ等により接続する必要がなく、簡単に接続することが可能となる。
【0067】
なお、上記第1実施形態の板ばね27を導電性部材30に変更した場合について説明したが、上記第2実施形態の板ばね27を導電性部材30に変更した場合についても適用可能であり、この場合も同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0068】
以上、上記第1〜第3実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
上記第1〜第3実施形態では、2相型のステッピングモータに適用するモータ駆動装置について説明したが、これに限定するものではない。例えば5相型のステッピングモータ等、複数相のステッピングモータを駆動するモータ駆動装置についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る第1実施形態のモータ駆動装置を示す説明図である。
【図2】ステッピングモータに取り付ける端子基板を示す説明図である。
【図3】ステッピングモータの概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態のモータ駆動装置の回路構成を示す回路図である。
【図5】放射ノイズレベルを測定した事例を示す図である。(a)は、従来のモータ駆動装置における測定結果を示す図、(b)は本第1実施形態のモータ駆動装置おける測定結果を示す図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態のモータ駆動装置の回路構成を示す回路図である。
【図7】ステッピングモータに取り付ける端子基板を示す説明図である。
【図8】本発明に係る第3実施形態のモータ駆動装置における端子基板を示す説明図である。
【図9】従来のモータ駆動装置を示す説明図である。
【図10】従来のステッピングモータの取り付け構造を示す説明図である。
【図11】従来のステッピングモータに取り付けるモータ駆動装置の端子基板を示す説明図である。
【図12】従来のモータ駆動装置の回路構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0071】
2 金属フレーム
3 ドライバIC(ドライバ)
6 ケーブル
7a,7b,7c,7d 巻線端子
8,8A,8B 端子基板(配線基板)
14a,14b,14c,14d 配線パターン
16a,16b 巻線
17a,17b,17c,17d コンデンサ(容量性素子)
18 グラウンド配線パターン
19a,19b 巻線端子
20a,20b 配線パターン
21a,21b コンデンサ(容量性素子)
27 板ばね
30 導電性部材
100A,100B モータ駆動装置
200 ステッピングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属フレームに、巻線を有するステータと、前記ステータに対して回転するロータとが収納されているステッピングモータを駆動するドライバを備えたモータ駆動装置において、
前記巻線の端部に接続され、前記金属フレームの外部に露出する巻線端子と、
前記ドライバと前記巻線端子との間に配設され、前記ドライバから出力される駆動信号を前記巻線に伝送するためのケーブルと、
前記金属フレームと前記巻線端子との間に配設され、前記ケーブルを流れたコモンモード電流を前記金属フレームを介して前記ドライバに帰還させるための容量性素子と、を備えた、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
金属フレームに、巻線を有するステータと、前記ステータに対して回転するロータとが収納されているステッピングモータを駆動するドライバを備えたモータ駆動装置において、
前記巻線の中点に接続され、前記金属フレームの外部に露出する巻線端子と、
前記ドライバと前記巻線端子との間に配設され、前記ドライバから出力される駆動信号を前記巻線に伝送するためのケーブルと、
前記金属フレームと前記巻線端子との間に配設され、前記巻線の中点まで流れたコモンモード電流を前記金属フレームを介して前記ドライバに帰還させるための容量性素子と、を備えた、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
前記巻線端子に接続される配線パターンと、前記金属フレームに接続されるグラウンド配線パターンと、を有する配線基板を備え、
前記容量性素子の一端が前記配線パターンに、他端が前記グラウンド配線パターンに接続されて、前記容量性素子が前記配線基板に実装されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記グラウンド配線パターンに固定される導電性の板ばねを備え、
前記配線基板を前記金属フレーム近傍に配置して、前記板ばねを前記金属フレームに接触させた、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記グラウンド配線パターンと前記金属フレームとを接着する導電性部材を備えた、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記導電性部材が、導電性ペーストである、
ことを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記導電性部材が、導電性ガスケットである、
ことを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−154687(P2010−154687A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331193(P2008−331193)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】