説明

モータ

【課題】スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能であっても、軸方向および径方向で小型化が可能なモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、回転軸2と、駆動用磁石3と、駆動用コイル5と、駆動用コイル5の外周面を覆うケース体17と、回転軸2の反出力側の端部を支持するとともに回転軸2の軸方向へ移動可能なスライド軸受7と、スライド軸受7をその内周面8aで軸方向へ移動可能に保持する軸受ホルダ8とを備えている。軸受ホルダ8は、ケース体17の反出力側の端面17bに固定されるとともに、その全体がケース体17の外部に配置されている。ケース体17には、軸受ホルダ8の内周面8aに繋がる軸受保持面17cが形成され、スライド軸受7の一部は、ケース体17の内部に配置されている。スライド軸受7は、軸受ホルダ8の内周面8aと軸受保持面17cとによって軸方向へ移動可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の端部を支持するとともに回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD、DVDプレーヤ等に用いられる光ピックアップ装置やカメラに用いられるレンズ群等を移動させるモータとして、ステッピングモータが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。特許文献1および2に記載のステッピングモータでは、回転軸の反出力側の端部は、軸受ホルダの内周面に沿ってスライド可能なスライド軸受によって保持されている。軸受ホルダは、ケースの反出力側の端面に固定されている。また、特許文献1に記載のステッピングモータでは、軸受ホルダの全体がケースの外部に配置されている。一方、特許文献2に記載のステッピングモータでは、軸受ホルダの一部がケースの外部に配置され、軸受ホルダの残りの一部がケースの内部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−240106号公報
【特許文献2】特開2007−20346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、CD、DVDプレーヤやカメラ等の市場では、装置の小型化の要求が高まっており、これらの装置に搭載されるステッピングモータの小型化の要求も高まっている。ここで、特許文献1に記載のステッピングモータでは、軸受ホルダの全体がケースの外部に配置されているため、回転軸の軸方向で軸受ホルダを薄くすれば、ステッピングモータを軸方向で小型化することが可能である。しかしながら、軸方向において軸受ホルダを薄くすると、軸方向における軸受ホルダとスライド軸受との接触長が短くなり、軸受ホルダでスライド軸受を保持しきれなくなるおそれがある。そのため、軸方向において軸受ホルダを薄くすると、スライド軸受を軸受ホルダによって軸方向へ適切に案内して、スライド軸受を軸方向へ円滑にスライドさせることが困難になるおそれがある。すなわち、特許文献1に記載のステッピングモータを軸方向で小型化することは困難である。
【0005】
これに対して、特許文献2に記載のステッピングモータでは、軸方向における軸受ホルダとスライド軸受との接触長を確保するために、軸方向における軸受ホルダの厚みをある程度確保しても、軸受ホルダの一部がケースの内部に配置されているため、ステッピングモータを軸方向で小型化することが可能である。しかしながら、このステッピングモータでは、軸受ホルダの一部がケースの内部に配置されているため、ケースの内部に入り込んだ軸受ホルダの分だけ、径方向へケースを大きくする必要がある。そのため、特許文献2に記載のステッピングモータを径方向で小型化することは困難である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能であっても、軸方向および径方向で小型化が可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、回転軸と、回転軸に固定される駆動用磁石と、駆動用磁石の外周側に配置される駆動用コイルと、駆動用コイルの外周面の少なくとも一部を覆うケース体と、回転軸の反出力側の端部を支持するとともに回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受と、スライド軸受をその内周面で軸方向へ移動可能に保持する軸受ホルダとを備え、軸受ホルダは、ケース体の反出力側の端面に固定されるとともに、その全体がケース体の外部に配置され、ケース体には、軸受ホルダの内周面に繋がる軸受保持面を有する開口部が形成され、スライド軸受の一部は、ケース体の内部に配置され、スライド軸受は、軸受ホルダの内周面と軸受保持面とによって軸方向へ移動可能に保持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のモータでは、軸受ホルダの内周面に繋がる軸受保持面を有する開口部がケース体に形成されている。また、本発明では、スライド軸受の一部は、ケース体の内部に配置され、スライド軸受は、軸受ホルダの内周面と軸受保持面とによって軸方向へ移動可能に保持されている。そのため、軸方向における軸受ホルダの厚みを薄くしても、ケース体に形成される軸受保持面を利用して、軸方向における軸受ホルダの内周面および軸受保持面とスライド軸受との接触長を確保することが可能になり、スライド軸受を適切に保持することが可能になる。したがって、本発明では、軸方向における軸受ホルダの厚みを薄くしても、軸受保持面と軸受ホルダの内周面とによって、スライド軸受を軸方向へ適切に案内して、スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能になり、その結果、軸方向でモータを小型化することが可能になる。また、本発明では、軸受ホルダの全体がケース体の外部に配置されているため、軸受ホルダを考慮せずにケース体の径方向の大きさを設定することができる。したがって、本発明では、径方向でモータを小型化することが可能になる。このように、本発明では、スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能であっても、軸方向および径方向でモータを小型化することが可能になる。
【0009】
本発明において、開口部には、軸受保持面よりも回転軸の径方向の外側へ窪む凹部が形成されていることが好ましい。ケース体は、一般に、スライド軸受を保持することを目的として形成されていないため、ケース体の軸受保持面でスライド軸受が保持されると、スライド軸受と軸受保持面との間の摺動抵抗が大きくなり、スライド軸受の軸方向への円滑な移動に支障を来たすおそれがあるが、このように構成すると、スライド軸受と軸受保持面との接触面積を減らすことが可能になり、スライド軸受と軸受保持面との間の摺動抵抗を低減することが可能になる。したがって、ケース体の軸受保持面でスライド軸受が保持されていても、スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能になる。
【0010】
本発明において、モータは、回転軸の出力側に向かってスライド軸受を付勢するための付勢部材を備え、付勢部材は、回転軸の軸中心に対してスライド軸受の軸中心が傾くようにスライド軸受を付勢し、凹部は、開口部の、スライド軸受の軸中心が傾く方向側に形成されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、スライド軸受が樹脂成形加工で形成されており、その加工精度が低い場合であっても、回転軸の軸中心に対してスライド軸受の軸中心が傾くように付勢部材がスライド軸受を付勢しているため、軸受保持面に対するスライド軸受のがたつきを防止することが可能になる。一方で、回転軸の軸中心に対してスライド軸受の軸中心が傾くように付勢部材がスライド軸受を付勢していると、スライド軸受の軸中心が傾く方向側において、スライド軸受と軸受保持面との間の摺動抵抗が大きくなるが、このように構成すると、開口部の、スライド軸受の軸中心が傾く方向側に凹部が形成されているため、スライド軸受の軸中心が傾く方向側において、スライド軸受と軸受保持面との接触面積を減らして、スライド軸受と軸受保持面との間の摺動抵抗を低減することが可能になる。
【0011】
本発明において、軸受ホルダは、プロジェクション溶接によってケース体の反出力側の端面に固定され、ケース体の反出力側の端面と軸受ホルダとの間には、プロジェクション溶接用の突起部が溶融凝固した溶接部が形成され、凹部は、径方向における溶接部の内側で開口部に形成されていることが好ましい。このように構成すると、プロジェクション溶接時に溶融した突起部が軸受保持面の内周側にはみ出した状態で凝固するのを凹部によって防止することが可能になる。したがって、プロジェクション溶接用の突起部に起因して、スライド軸受の軸方向への円滑な移動が妨げられるのを防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、ケース体には、開口部の縁からケース体の内部に向かって突出する突出部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、突出部の内周面を利用して、軸受ホルダの内周面、軸受保持面および突出部の内周面とスライド軸受との軸方向における接触長を長くすることが可能になる。したがって、スライド軸受をより適切に保持することが可能になる。
【0013】
本発明において、スライド軸受の外周面は、反出力側に配置される円柱状の円柱面と、回転軸の出力側に配置され出力側に向かってその外径が小さくなる縮径面とを備え、円柱面が軸受ホルダの内周面と軸受保持面とによって保持されていることが好ましい。このように構成すると、軸受保持面等によって縮径面が保持されている場合と比較して、軸方向における軸受ホルダの内周面および軸受保持面とスライド軸受との接触長を長くすることが可能になり、スライド軸受を適切に保持することが可能になる。
【0014】
本発明において、モータは、回転軸の反出力側の端部とスライド軸受との間に配置される球状部材を備え、球状部材の中心は、たとえば、ケース体の内部に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、スライド軸受を軸方向へ円滑に移動させることが可能であっても、軸方向および径方向でモータを小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるモータの部分断面図である。
【図2】図1のE−E方向からモータを示す図である。
【図3】図1に示すケース体の反出力側部分およびスライド軸受の断面図である。
【図4】図1に示すケース体の反出力側部分の断面図である。
【図5】図1のE−E方向からケース体を示す図である。
【図6】図1のE−E方向からスライド軸受およびケース体を示す図である。
【図7】図1のF部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(モータの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の部分断面図である。図2は、図1のE−E方向からモータ1を示す図である。
【0019】
本形態のモータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。また、モータ1は、小型のステッピングモータである。このモータ1は、図1に示すように、回転軸2と2個の駆動用磁石3とを有するロータ4と、駆動用磁石3の外周側に配置される2個の駆動用コイル5を有するステータ6とを備えている。また、モータ1は、回転軸2の出力側の端部(図示省略)を支持する出力側軸受(図示省略)と、回転軸2の反出力側の端部を支持するとともに回転軸2の軸方向へ移動可能なスライド軸受7と、スライド軸受7を保持する軸受ホルダ8と、スライド軸受7を回転軸2の出力側に向かって付勢するための付勢部材としての板バネ9とを備えている。
【0020】
なお、以下の説明では、回転軸2の出力側となる図1のZ1方向側を「出力側」、回転軸2の反出力側となる図1のZ2方向側を「反出力側」とする。また、回転軸2の軸方向となる図1のZ方向を「軸方向」、軸方向に直交する方向を「径方向」、ロータ4の円周方向を「周方向」とする。
【0021】
回転軸2の出力側は、ステータ6から突出しており、このステータ6から突出した部分には、リードスクリュー2aが形成されている。リードスクリュー2aは、たとえば、光ピックアップ装置等の被移動体と螺合して、被移動体を移動させる。
【0022】
駆動用磁石3は、永久磁石であり、略円筒状に形成されている。2個の駆動用磁石3は、軸方向に所定の間隔をあけた状態で、回転軸2の反出力側の外周面に固定されている。具体的には、ステータ6の軸方向の略中心を通過する平面Pに対して、2個の駆動用磁石3が略面対称に配置されている。駆動用磁石3の外周面には、N極とS極とが周方向に沿って交互に形成されている。
【0023】
ステータ6は、第1のステータ部組12と第2のステータ部組13とを備えている。第1のステータ部組12と第2のステータ部組13とは、軸方向で重なるように配置されている。本形態では、第1のステータ部組12が反出力側に配置され、第2のステータ部組13が出力側に配置されている。
【0024】
第1のステータ部組12は、外ヨーク14と、1個の駆動用コイル5が巻回されるボビン15と、ボビン15を外ヨーク14との間に挟むように配置される内ヨーク16と、これらの各構成を径方向外側および反出力側から覆うケース体17とを備えている。この第1のステータ部組12は、反出力側に配置される駆動用磁石3の径方向外側に配置されている。
【0025】
ボビン15は、軸方向の両端に鍔部を有する鍔付の筒状に形成されている。駆動用コイル5は、ボビン15の外周側に巻回されている。また、ボビン15には、端子台15aが形成されている。端子台15aには、駆動用コイル5の端部が接続される端子(図示省略)が固定されている。
【0026】
外ヨーク14は、周方向に所定のピッチで配置される複数の極歯14aを備えている。内ヨーク16は、周方向に所定のピッチで配置される複数の極歯16aを備えている。極歯14a、16aは、駆動用磁石3の外周面に対向するように配置されている。また、極歯14aと極歯16aとは、周方向で隣接するように交互に配置されている。極歯14a、16aの径方向外側には、駆動用コイル5が巻回されたボビン15が配置されている。
【0027】
ケース体17は、薄鋼板で形成されるとともに、プレス加工によって形成されている。また、ケース体17は、底部17aを有する有底の筒状に形成されており、底部17aは、ケース体17の反出力側の端面部を構成している。ケース体17の詳細な構成については後述する。
【0028】
第2のステータ部組13は、第1のステータ部組12と同一の構成が、ステータ6の軸方向の略中心を通過する平面Pに対して面対称に配置されることで構成されている。すなわち、第2のステータ部組13は、第1のステータ部組12の外ヨーク14、ボビン15、内ヨーク16およびケース体17のそれぞれに相当する外ヨーク19と、ボビン20と、内ヨーク21と、ケース体22とを備えている。図1に示すように、内ヨーク16の出力側の端面と、内ヨーク21の反出力側の端面とは、平面P上で当接している。
【0029】
ボビン20には、ボビン15の端子台15aに相当する端子台20aが形成されている。また、外ヨーク19は、外ヨーク14の極歯14aに相当する極歯19aを備え、内ヨーク21は、内ヨーク16の極歯16aに相当する極歯21aを備えている。
【0030】
モータ1を軸方向から見たときの形状は、図2に示すように、略小判形状となっている。具体的には、モータ1を軸方向から見たときの形状は、曲率半径および曲率中心が同じ2個の円弧と図2の上下方向に平行な2本の線とから構成される略小判形状となっている。以下の説明では、軸方向から見たときに略小判形状に形成されるモータ1の外形の2個の円弧が配置される図2の上下方向を上下方向とし、2本の線が配置される図2の左右方向を左右方向とする。なお、駆動用コイル5は、左右両側においてもケース体17、22に覆われており、全周にわたってケース体17、22に覆われているが、端子台15a、20aが形成される部分では、駆動用コイル5の一部が露出する場合もある。
【0031】
(モータの反出力側部分の構成)
図3は、図1に示すケース体17の反出力側部分およびスライド軸受7の断面図である。図4は、図1に示すケース体17の反出力側部分の断面図である。図5は、図1のE−E方向からケース体17を示す図である。図6は、図1のE−E方向からスライド軸受7およびケース体17を示す図である。図7は、図1のF部の拡大図である。
【0032】
スライド軸受7は、樹脂材料で形成されている。また、スライド軸受7は、金型を用いた成形加工で形成されている。このスライド軸受7は、略円柱状に形成されている。スライド軸受7の外周面は、図3に示すように、反出力側に配置される円柱面7aと、出力側に配置される縮径面7bとによって構成されている。円柱面7aは、外径が一定な円柱状に形成されている。縮径面7bは、出力側に向かってその外径が小さくなるように形成されている。本形態では、スライド軸受7の外周面の、出力側端の一部が縮径面7bとなっている。
【0033】
スライド軸受7の出力側の端面には、球状に形成される球状部材24が配置される凹部7cと、回転軸2の反出力側の端部および球状部材24が配置される凹部7dとが形成されている。凹部7dは、凹部7cの出力側端に繋がるように形成されている。すなわち、凹部7dは、凹部7cよりも出力側に形成されている。また、凹部7cは、円柱面7aの出力側の径方向内側部分に形成され、凹部7dは、縮径面7bの径方向内側部分に形成されている。また、凹部7dの内径は、凹部7cの内径よりも大きくなっている。回転軸2の反出力側の端面にも、図1に示すように、球状部材24が配置される凹部2bが形成されている。すなわち、球状部材24は、回転軸2の反出力側の端部とスライド軸受7との間に配置されている。この球状部材24は、回転軸2と一緒に回転する。すなわち、ロータ4が回転する際には、凹部7cの側面および底面と球状部材24との間で滑りが生じる。
【0034】
軸受ホルダ8は、金属材料で形成されている。また、軸受ホルダ8は、金型を用いたダイカスト加工等によって形成されている。この軸受ホルダ8は、扁平な略直方体状に形成されている。軸受ホルダ8には、軸方向に貫通する円形の貫通孔が形成されており、軸受ホルダ8は、この貫通孔の内周面8aでスライド軸受7を軸方向へ移動可能に保持している。軸受ホルダ8は、底部17aの反出力側の側面となるケース体17の反出力側の端面(反出力側端面)17bに固定されている。具体的には、軸受ホルダ8は、溶接によって、反出力側端面17bに固定されている。本形態では、プロジェクション溶接によって、軸受ホルダ8が反出力側端面17bに固定されている。また、軸受ホルダ8は、図1に示すように、その全体がケース体17の外部に配置されている。
【0035】
ケース体17の底部17aには、軸受ホルダ8の内周面8aに繋がる軸受保持面17cを有する略円形の開口部17dが形成されている。開口部17dには、図5に示すように、軸受保持面17cよりも径方向の外側へ窪む凹部17eが形成されている。本形態では、4個の凹部17eが開口部17dに形成されている。具体的には、開口部17dの上下の両端側のそれぞれに2個の凹部17eが形成されている。凹部17eの側面は、円弧状の曲面となっている。凹部17e以外の開口部17dの内径(すなわち、軸受保持面17cが形成された部分の内径)は、内周面8aの内径とほぼ等しくなっている。また、凹部17e以外の開口部17dの内径および内周面8aの内径は、スライド軸受7の外径よりもわずかに大きくなっている。
【0036】
上述のように、軸受ホルダ8は、プロジェクション溶接によって、ケース体17の反出力側端面17bに固定されている。軸受ホルダ8が溶接される前の反出力側端面17bには、図4、図5に示すように、プロジェクション溶接用の突起部17fが形成されている。この突起部17fは、プロジェクション溶接時に溶融する。プロジェクション溶接後の反出力側端面17bと軸受ホルダ8との間には、突起部17fが溶融凝固した溶接部(図示省略)が形成されている。
【0037】
本形態では、4個の突起部17fが反出力側端面17bに形成されている。具体的には、開口部17dに形成される4個の凹部17eのそれぞれの径方向外側に突起部17fが形成されている。すなわち、凹部17eは、径方向における突起部17fの内側で開口部17dに形成されている。また、本形態のモータ1は、小型のステッピングモータであるため、突起部17fは、凹部17eの近傍に形成されている。
【0038】
また、上述のように、ケース体17は、プレス加工によって形成されており、開口部17dは、プレス抜き加工によって形成されている。本形態では、反出力側端面17bからケース体17の内部にプレス抜き加工用の金型が入り込んで、開口部17dが形成される。そのため、底部17aには、図7に示すように、開口部17dからケース体17の内部に向かって(すなわち、出力側に向かって)突出する突出部としてのバリ17gが形成されている。バリ17gは、図7に示すように、外ヨーク14の極歯14aの根元に形成される曲面部14bの内周側に配置されている。また、軸受保持面17cは、反出力側に形成されるせん断面と出力側に形成される破断面とによって構成されている。なお、本形態では、極歯14aは、プレスによる絞り加工および抜き加工等を順次行うことで形成されており、極歯14aの根元に形成される曲面部14bは、極歯14aの絞り加工時に形成される。
【0039】
板バネ9は、軸受ホルダ8の反出力側に固定されている。板バネ9の中心部には、図2に示すように、スライド軸受7の反出力側の端面に当接するバネ部9aが形成されている。バネ部9aは、スライド軸受7および球状部材24を介して、回転軸2を出力側に付勢している。左右方向において、バネ部9aは、スライド軸受7の略中心部分に当接している。また、上下方向において、バネ部9aは、回転軸2の軸中心L1よりも上下方向の一方側(具体的には、図2の上側)でスライド軸受7に当接している。そのため、図3(B)に示すように、スライド軸受7には、矢印Vで示す方向の付勢力が作用し、左右方向を軸方向とするモーメントが作用する。したがって、軸受保持面17cの上下両端部分とスライド軸受7の外周面との接触圧が高くなるように、スライド軸受7の軸中心L2は、回転軸2の軸中心L1に対して傾く。なお、図3(B)では、便宜上、軸中心L1に対する軸中心L2の実際の傾きよりも軸中心L2を大きく傾けた状態を図示している。
【0040】
スライド軸受7の出力側の一部は、ケース体17の内部に配置されている。図1に示すように、スライド軸受7の出力側部分は、球状部材24の中心Cがケース体17の内部に配置されるようにケース体17の内部に入り込んでいる。また、スライド軸受7は、軸受ホルダ8の内周面8aとケース体17の軸受保持面17cとによって軸方向へ移動可能に保持されている。具体的には、スライド軸受7の円柱面7aが内周面8aと軸受保持面17cとによって保持されている。本形態では、スライド軸受7、軸受ホルダ8、ケース体17の底部17a、板バネ9および球状部材24によって、ロータ4の反出力側端がラジアル方向およびスラスト方向に支持されている。
【0041】
なお、本形態では、回転軸2の出力側の端部を支持する出力側軸受は、軸方向および径方向において固定されている。一方、スライド軸受7は、軸方向へ移動可能となっている。また、凹部17e以外の開口部17dの内径および軸受ホルダ8の内周面8aの内径は、スライド軸受7の外径よりもわずかに大きくなっており、スライド軸受7は、径方向へもわずかに移動可能となっている。また、本形態において、スライド軸受7の外周面の加工精度と、軸受ホルダ8の内周面8aの加工精度と、ケース体17の開口部17dの加工精度とを比較すると、内周面8aの加工精度が一番高く、次に、開口部17dの加工精度が高く、スライド軸受7の外周面の加工精度が一番低くなっている。なお、ここでの加工精度とは、寸法精度および円筒度である。
【0042】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、スライド軸受7の出力側の一部は、ケース体17の内部に配置され、スライド軸受7は、軸受ホルダ8の内周面8aとケース体17の軸受保持面17cとによって軸方向へ移動可能に保持されている。そのため、軸方向における軸受ホルダ8の厚みを薄くしても、軸受保持面17cを利用して、軸方向における軸受ホルダ8の内周面8aおよび軸受保持面17cとスライド軸受7の外周面との接触長を確保することが可能になる。したがって、軸方向における軸受ホルダ8の厚みを薄くしても、軸受ホルダ8の内周面8aと軸受保持面17cとによって、スライド軸受7を適切に保持することが可能になり、軸受ホルダ8の内周面8aと軸受保持面17cとによって、スライド軸受7を軸方向へ適切に案内して、スライド軸受7を軸方向へ円滑に移動させることが可能になる。その結果、本形態では、軸方向でモータ1を小型化することが可能になる。また、本形態では、軸受ホルダ8の全体がケース体17の外部に配置されているため、軸受ホルダ8を考慮せずにケース体17の径方向の大きさを設定することができる。したがって、本形態では、径方向でモータ1を小型化することが可能になる。このように、本発明では、スライド軸受7を軸方向へ円滑に移動させることが可能であっても、軸方向および径方向でモータ1を小型化することが可能になる。
【0043】
本形態では、ケース体17の底部17aに、開口部17dからケース体17の内部に向かって突出するバリ17gが形成されている。そのため、バリ17gの内周面を利用して、軸受ホルダ8の内周面8a、軸受保持面17cおよびバリ17gの内周面とスライド軸受7の外周面との軸方向における接触長を長くすることができる。また、本形態では、スライド軸受7の円柱面7aが軸受保持面17cによって保持されているため、スライド軸受7の縮径面7bが軸受保持面17cによって保持されている場合と比較して、軸方向における軸受保持面17cとスライド軸受7の外周面との接触長を長くすることができる。したがって、本形態では、スライド軸受7をより適切に保持することが可能になる。
【0044】
本形態では、軸受保持面17cよりも径方向の外側へ窪む凹部17eが開口部17dに形成されている。そのため、スライド軸受7の外周面と軸受保持面17cとの接触面積を減らすことができる。したがって、本形態では、せん断面と破断面とによって構成される軸受保持面17cによってスライド軸受7が保持されていても、スライド軸受7の外周面と軸受保持面17cとの間の摺動抵抗を低減することが可能になり、その結果、スライド軸受7を軸方向へ円滑に移動させることが可能になる。
【0045】
本形態では、スライド軸受7の軸中心L2が回転軸2の軸中心L1に対して傾くように、スライド軸受7は板バネ9によって付勢されている。そのため、樹脂成形加工で形成されたスライド軸受7の加工精度が低くても、軸受保持面17cに対するスライド軸受7のがたつきを防止することが可能になる。一方で、本形態では、軸受保持面17cの上下両端部分とスライド軸受7の外周面との接触圧が高くなるように、スライド軸受7の軸中心L2は、回転軸2の軸中心L1に対して傾いているため、開口部17dの上下両端部分とスライド軸受7の外周面との間の摺動抵抗が大きくなるおそれがある。しかし、本形態では、開口部17dの上下両端側のそれぞれに凹部17eが形成されているため、開口部17dの上下両端側において、スライド軸受7の外周面と軸受保持面17cとの接触面積を減らして、スライド軸受7の外周面と軸受保持面17cとの間の摺動抵抗を低減することが可能になる。その結果、本形態では、スライド軸受7の軸中心L2が回転軸2の軸中心L1に対して傾くように、スライド軸受7が板バネ9によって付勢されていても、スライド軸受7を軸方向へ円滑に移動させることが可能になる。
【0046】
本形態では、凹部17eは、径方向における突起部17fの内側で開口部17dに形成されている。そのため、プロジェクション溶接時に溶融した突起部17fが軸受保持面17cの内周側にはみ出した状態で凝固するのを凹部17eによって防止することが可能になる。したがって、本形態では、突起部17fに起因して、スライド軸受7の軸方向への円滑な移動が妨げられるのを防止することが可能になる。
【0047】
本形態では、スライド軸受7の出力側部分は、球状部材24の中心Cがケース体17の内部に配置されるようにケース体17の内部に入り込んでいる。そのため、回転軸2の出力側の端部を支持する出力側軸受とスライド軸受7との距離を短くすることが可能になる。したがって、軸方向および径方向において固定される出力側軸受を支点として径方向へわずかに移動可能なスライド軸受7のがたつきを小さくすることが可能になる。
【0048】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0049】
上述した形態では、凹部17eは、開口部17dの上下両端側のそれぞれに形成されている。この他にもたとえば、凹部17eは、開口部17dの上端側または下端側の一方に形成されても良い。また、凹部17eは、開口部17dの左右両端側のそれぞれに形成されても良いし、開口部17dの左端側または右端側の一方に形成されても良い。さらに、凹部17eは、周方向において等角度ピッチで形成されても良い。また、開口部17dに凹部17eが形成されなくても良い。
【0050】
上述した形態では、スライド軸受7の軸中心L2が回転軸2の軸中心L1に対して傾くように、スライド軸受7は板バネ9によって付勢されている。この他にもたとえば、スライド軸受7を精度良く加工できるのであれば、スライド軸受7の軸中心L2が回転軸2の軸中心L1に対して傾かずに軸中心L2と軸中心L1とが略一致するように、スライド軸受7が板バネ9によって付勢されても良い。また、上述した形態では、スライド軸受7は、板バネ9によって付勢されているが、スライド軸受7は、コイルバネ等の他のバネ部材やゴム等の弾性部材によって付勢されても良い。すなわち、スライド軸受7を付勢する付勢部材は、板バネ9以外のバネ部材やゴム等の弾性部材等であっても良い。
【0051】
上述した形態では、プロジェクション溶接によって、軸受ホルダ8が反出力側端面17bに固定されている。この他にもたとえば、プロジェクション溶接以外の溶接、あるいは、接着等によって、軸受ホルダ8が反出力側端面17bに固定されても良い。この場合には、軸受ホルダ8が溶接される前の反出力側端面17bに突起部17fは形成されない。
【0052】
上述した形態では、ケース体17の底部17aにバリ17gが形成されているが、バリ17gは、プレス加工後に除去されても良い。また、上述した形態では、球状部材24の中心Cは、ケース体17の内部に配置されているが、球状部材24の中心Cは、ケース体17の外部に配置されても良い。
【0053】
上述した形態では、ステータ6は、第1のステータ部組12と第2のステータ部組13とによって構成されているが、ステータ6は、3個以上のステータ部組によって構成されても良い。また、上述した形態では、モータ1を軸方向から見たときの形状は、略小判形状となっているが、モータ1を軸方向から見たときの形状が略円形状となっていても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 モータ
2 回転軸
3 駆動用磁石
5 駆動用コイル
7 スライド軸受
7a 円柱面
7b 縮径面
8 軸受ホルダ
8a 内周面
9 板バネ(付勢部材)
17 ケース体
17b 反出力側端面(反出力側の端面)
17c 軸受保持面
17d 開口部
17e 凹部
17f 突起部
17g バリ(突出部)
24 球状部材
C 球状部材の中心
L1 回転軸の軸中心
L2 スライド軸受の軸中心
Z 軸方向
Z1 出力側
Z2 反出力側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸に固定される駆動用磁石と、前記駆動用磁石の外周側に配置される駆動用コイルと、前記駆動用コイルの外周面の少なくとも一部を覆うケース体と、前記回転軸の反出力側の端部を支持するとともに前記回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受と、前記スライド軸受をその内周面で前記軸方向へ移動可能に保持する軸受ホルダとを備え、
前記軸受ホルダは、前記ケース体の前記反出力側の端面に固定されるとともに、その全体が前記ケース体の外部に配置され、
前記ケース体には、前記軸受ホルダの内周面に繋がる軸受保持面を有する開口部が形成され、
前記スライド軸受の一部は、前記ケース体の内部に配置され、
前記スライド軸受は、前記軸受ホルダの内周面と前記軸受保持面とによって前記軸方向へ移動可能に保持されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記開口部には、前記軸受保持面よりも前記回転軸の径方向の外側へ窪む凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記回転軸の出力側に向かって前記スライド軸受を付勢するための付勢部材を備え、
前記付勢部材は、前記回転軸の軸中心に対して前記スライド軸受の軸中心が傾くように前記スライド軸受を付勢し、
前記凹部は、前記開口部の、前記スライド軸受の軸中心が傾く方向側に形成されていることを特徴とする請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受ホルダは、プロジェクション溶接によって前記ケース体の前記反出力側の端面に固定され、
前記ケース体の前記反出力側の端面と前記軸受ホルダとの間には、プロジェクション溶接用の突起部が溶融凝固した溶接部が形成され、
前記凹部は、前記径方向における前記溶接部の内側で前記開口部に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のモータ。
【請求項5】
前記ケース体には、前記開口部の縁から前記ケース体の内部に向かって突出する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記スライド軸受の外周面は、前記反出力側に配置される円柱状の円柱面と、前記回転軸の出力側に配置され前記出力側に向かってその外径が小さくなる縮径面とを備え、
前記円柱面が前記軸受ホルダの内周面と前記軸受保持面とによって保持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記回転軸の前記反出力側の端部と前記スライド軸受との間に配置される球状部材を備え、
前記球状部材の中心は、前記ケース体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196030(P2012−196030A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57341(P2011−57341)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】