説明

モータ

【課題】複数の導体セグメントの端部同士の接合部が露出したり接合部間の絶縁性が低下したりするのをより抑制する。
【解決手段】複数の導体セグメント30の端部36同士による複数の接合部38がキャップ40の複数の収容部42のそれぞれに収容されていると共に、それぞれの収容部42に、キャップ40とは異なる材料の充填材44が充填されている。これにより、充填材44にクラック(ひび割れ・裂け目)が生じたときに、接合部38が露出したり接合部38間の絶縁性が低下したりするのをより抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のモータとしては、複数の導体セグメントの端部同士を相互に接合して固定子用コイルを形成するものにおいて、複数の接合部をエポキシ樹脂で一体に固定して相互に絶縁するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−293351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のモータでは、エポキシ樹脂にクラック(ひび割れ・裂け目)を生じたときに、そのクラックの拡大(エポキシ樹脂の一部が剥がれ落ちるなど)などによって、接合部が露出したり、接合部間の絶縁性が低下したりすることがあった。
【0005】
本発明のモータは、複数の導体セグメントの端部同士の接合部が露出したり接合部間の絶縁性が低下したりするのをより抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のモータは、
複数の導体セグメントの端部同士を接合して構成されたステータコイルを備えるモータであって、
前記複数の導体セグメントの端部同士による複数の接合部を複数の収容部のそれぞれに収容するキャップと、
前記キャップとは異なる材料で、該キャップの複数の収容部のそれぞれに充填される充填材と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のモータでは、複数の導体セグメントの端部同士による複数の接合部がキャップの複数の収容部のそれぞれに収容されており、それぞれの収容部には、キャップとは異なる材料の充填材が充填されている。これにより、充填材にクラック(ひび割れ・裂け目)が生じたときに、接合部が露出したり接合部間の絶縁性が低下したりするのをより抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のモータにおいて、前記キャップは、外形が、前記接合部間に空隙を有する形状に形成されてなる、ものとすることもできる。こうすれば、ステータコイル(接合部)からキャップ外への放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのモータ20が備えるステータ21の構成の概略を示す構成図である。
【図2】複数の導体セグメント30を用いてステータコイル24を製造する工程を示す説明図である。
【図3】複数の接合部38周辺(キャップ40なし)の様子を示す説明図である。
【図4】複数の接合部38周辺(キャップ40あり)の様子を示す説明図である。
【図5】比較例の複数の接合部38周辺の様子を示す説明図である。
【図6】比較例の複数の接合部38周辺の様子を示す説明図である。
【図7】変形例の複数の接合部38周辺(キャップ40Bあり)の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのモータ20が備えるステータ21の構成の概略を示す構成図であり、図2は、複数の導体セグメント30を用いてステータコイル24を製造する工程を示す説明図である。なお、図2(a)の拡大図は、導体セグメント30の端部36周辺を示している。
【0013】
実施例のモータ20が備えるステータ21は、図1に示すように、複数のスロット23が形成されたステータコア22と、ステータコア22の複数のスロット23(図2参照)に分布巻によって巻回されたステータコイル24と、を備える。
【0014】
ステータコイル24は、図2に示すように、素線(例えば、銅など)32が絶縁材(例えば、エナメルなど)34によって被覆されて略U字状に形成された複数の導体セグメント30(図2(a)参照)をそれぞれステータコア22のスロット23に差し込み(図2(b)参照)、それぞれの導体セグメント30の両端部36が近接して導体セグメント30が周回するよう折り曲げ(図2(c)参照)、電気的に見たときに一本の導線によって分布巻されているように導体セグメント30の端部36(絶縁材34の被覆が剥がされて素線32が露出している部分)を隣接する他の導体セグメント30の端部36と接合して(以下、この部分を接合部38という)構成されている。
【0015】
図3は、複数の接合部38周辺(キャップ40なし)の様子を示す説明図であり、図4は、複数の接合部38周辺(キャップ40あり)の様子を示す説明図である。なお、図3では、点線で囲まれた箇所が接合部38に相当する。図3の例では、3つの接合部38ずつ近接している。
【0016】
複数の接合部38は、図4に示すように、樹脂(例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)など)によって形成されたキャップ40の複数の収容部42にそれぞれ収容されており、それぞれの収容部42には、キャップ40とは異なる材料としての熱硬化樹脂(例えば、エポキシなど)の充填材44が充填されている。これにより、導体セグメント30の端部36(接合部38を含む)は、充填材44によって覆われていることになる。キャップ40は、図4に示すように、外形が略直方体で一面(図中、下面)が収容部42毎に開口した形状に形成されている。なお、キャップ40と充填材44とは、複数の接合部38が各収容部42に収容されるよう複数の接合部38にキャップ40を被せた後にキャップ40の各収容部42に充填材44を充填してその後に充填材44を熱硬化させるものとしてもよいし、キャップ40の各収容部42に充填材44を充填した後にそれを複数の接合部38が各収容部42に収容されるよう複数の接合部38に被せてその後に充填材44を熱硬化させるものとしてもよい。
【0017】
このように、複数の接合部38がキャップ40の複数の収容部42にそれぞれ収容されていると共に、それぞれの収容部42に、キャップ40とは異なる材料の充填材44が充填されていることにより、以下の効果を奏する。まず、接合部38間の間隔を保持することができる(接合部38のそれぞれの変位を吸収することができる)と共に、接合部38間の絶縁や対地絶縁(モータ20が収納されるケースなどに対する絶縁)を確保することができる。また、複数の接合部38を熱硬化樹脂144で一体に固定する比較例(図5参照)に比して、充填材44にクラック(ひび割れ・裂け目)が生じたときに、そのクラックが拡大する(一部が剥がれ落ちるなど)のを抑制することができ、接合部38が露出するのを抑制することができると共に、接合部38間の絶縁性が低下するのをより抑制することができる。さらに、複数の接合部38のそれぞれに別体のキャップ240を被せる比較例(図6参照)に比して、複数の接合部38が近接(密集)しているときでも複数の接合部38にキャップ40を被せやすくすることができる。加えて、ドーナツ状のキャップを複数の接合部38に被せる(熱硬化樹脂なし)比較例に比して、接合部38間の絶縁性をより向上させることができる。
【0018】
以上説明した実施例のモータ20によれば、複数の導体セグメント30の端部36同士による複数の接合部38がキャップ40の複数の収容部42のそれぞれに収容されていると共に、それぞれの収容部42に、キャップ40とは異なる材料の充填材44が充填されているから、充填材44にクラック(ひび割れ・裂け目)が生じたときに、接合部38が露出したり接合部38間の絶縁性が低下したりするのをより抑制することができる。
【0019】
実施例のモータ20では、外形が略直方体で一面が開口された形状(図4参照)のキャップ40を用いるものとしたが、図7の変形例に示すように、外形が、接合部38間に空隙を有する形状、具体的には、開口側とは反対側の面(図中、上面)のうち隣接する接合部38の中間に対応する位置に溝41Bを有する形状のキャップ40Bを用いるものとしてもよい。こうすれば、溝41Bに空気が流れることにより、ステータコイル24(接合部38)からキャップ40外への放熱性の向上を図ることができる。また、接合部38間に空気層が形成されるため、接合部38間の絶縁性を向上させることができる。
【0020】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、導体セグメント30が「導体セグメント」に相当し、ステータコイル24が「ステータコイル」に相当し、モータ20が「モータ」に相当し、キャップ40が「キャップ」に相当し、充填材44が「充填材」に相当する。
【0021】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0022】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、モータの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
20 モータ、21 ステータ、22 ステータコア、23 スロット、24 ステータコイル、30 導体セグメント、32 素線、34 絶縁材、36 端部、38 接合部、40,40B キャップ、41B 溝、42 収容部、44 充填材、140 キャップ、144 熱硬化樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体セグメントの端部同士を接合して構成されたステータコイルを備えるモータであって、
前記複数の導体セグメントの端部同士による複数の接合部を複数の収容部のそれぞれに収容するキャップと、
前記キャップとは異なる材料で、該キャップの複数の収容部のそれぞれに充填される充填材と、
を備えるモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータであって、
前記キャップは、外形が、前記接合部間に空隙を有する形状に形成されてなる、
モータ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115832(P2013−115832A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256703(P2011−256703)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】