説明

モータ

【課題】 ブラシの軸方向への振動を抑制し、ブラシの径方向への作動が良好なモータを提供する。
【解決手段】 第2スプリングの第2アーム部272は、ブラシ22をホルダ25の第1案内面253側に傾けつつ整流子18に押し付ける。ブラシ22は、径外角部222がホルダ25の第1案内面253に線接触で当接し、径内角部223が第2案内面254に線接触で当接する。これにより、ブラシ22は、ホルダ25の第1案内面253と第2案内面254との間で軸方向のガタ無く保持される。そのため、ブラシ22を軸方向へ振動しないように安定して保持することができる。また、ブラシ22とホルダ25との接触面積が少ないため、ブラシ22が径方向へ円滑に移動可能である。よって、整流子18の径方向変位に対してブラシ22が追従可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きのモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシ付きモータは、電源に電気的に接続されているブラシがコイルと共に回転する整流子に接触してコイルに電流が供給される。ブラシが整流子に接触する面は、モータの耐久使用により摩耗する。そこで一般にブラシは、例えばスプリング等で整流子に押し付けられ、整流子との接触で摩耗した分だけ整流子側に送り出されるようになっている。このブラシは、ホルダにより整流子側に移動可能に案内される。
ところで、電機子の軸方向のガタの影響で整流子が回転中に軸方向へ振動する。この整流子の軸方向への振動に起因してブラシが軸方向へ振動すると異音が発生する。そのため、軸方向へ振動しないようにブラシを保持することが要求される。
【0003】
特許文献1に開示されたホルダは、整流子に対し径外方向へ延びるガイドレールを形成する。ブラシは、整流子とは反対側の端部に、径外方向へ向かうほどガイドレール側に傾くスプリング押圧面を形成する。スプリングは、ブラシのスプリング押圧面に当接し、ブラシの整流子とは反対側の端部をガイドレールに押し付ける。
特許文献2に開示されたホルダは、整流子の径外方向へ向かうほどブラシ側に傾くブラシ摺動面を形成する。スプリングは、ブラシをホルダのブラシ摺動面に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−136061号公報
【特許文献2】特開2008−092678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、整流子の複数の電極板間にスリットが形成されることや整流子の径外面の真円度が低いこと等の影響で、ブラシに対する整流子の径外面の径寸法は、回転位相に応じて変化する。この整流子の径外面の径寸法の変化に起因してブラシが整流子から離れると、ブラシと整流子との間で放電が発生する。ブラシと整流子との間で放電が発生すると、ブラシおよび整流子が放電摩耗を起こし、ブラシと整流子との接触不良を引き起こすおそれがある。そのため、整流子側への作動が良好となるようブラシを保持することが要求される。
【0006】
これに対し、特許文献1に開示されたモータでは、ブラシがホルダのガイドレールに面接触する。また、特許文献2に開示されたモータでは、ブラシがホルダのブラシ摺動面に面接触する。したがって、ブラシとホルダとの摩擦抵抗が大きいので、ブラシの径方向の動きがホルダに阻害されるという問題がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転する電極板に当接するブラシの軸方向への振動を抑制し、ブラシの径方向への作動が良好なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によるモータは、ハウジング、シャフト、電機子、複数の電極板、複数のホルダおよび付勢部材を備える。シャフトは、ハウジングに回転可能に取り付けられる。電機子は、シャフトと共に回転する。シャフトの回転方向に互いに離間する複数の電極板は、電機子と共に回転し、電機子に供給される電流を整流する。複数の電極板と摺動可能な複数のブラシは、電機子の回転に伴い複数の電極板と順に接触する。
ホルダは、複数のブラシのうち少なくとも一つの特定ブラシに対応して設けられる。このホルダは、シャフトの回転軸に垂直な第1案内面と、第1案内面に平行で且つ特定ブラシに対し第1案内面とは反対側に位置する第2案内面とを有する。またホルダは、特定ブラシをシャフトの径内外方向へ移動可能に案内する。
【0008】
付勢部材は、特定ブラシのうち径外方向に位置する径外角部がホルダの第1案内面に線接触または点接触で当接し、特定ブラシのうち径内方向に位置する径内角部がホルダの第2案内面に線接触または点接触で当接し、且つ、特定ブラシのうち径内方向に位置する径内端が電極板に当接するように、特定ブラシを付勢する。
この構成によれば、特定ブラシは、軸方向でガタが無いように第1案内面と第2案内面との間で保持される。そのため、特定ブラシを軸方向へ振動しないように安定して保持することができる。
また、第1案内面および第2案内面には特定ブラシの角部が線接触または点接触で当接するため、特定ブラシとホルダとの接触面積が少ない。そのため、特定ブラシが径方向へ円滑に移動可能である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、付勢部材は、一端がハウジングに係止され、他端が特定ブラシに係止されるねじりばね或いは板ばねから構成される。これによれば、付勢部材の構造が簡易となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、特定ブラシに対する付勢部材の付勢力は、特定ブラシのうち径外方向に位置する径外端部に作用し、且つ、軸方向で特定ブラシの径内端より第1案内面側に向かう方向へ作用する。これにより、ホルダの第1案内面と第2案内面との間で特定ブラシを傾け、特定ブラシの径外角部を第1案内面に当接させ、特定ブラシの径内角部を第2案内面に当接させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、特定ブラシの径内端は、第2案内面に対し第1案内面側ほど電極板から離間するテーパ面状である。これにより、使用初期でのブラシと電極板と摺動を円滑にし、振動等の発生を抑制することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、ホルダは、第1規制面および第2規制面を有する。第1規制面は、特定ブラシに対し回転方向前方で第1案内面と第2案内面とを接続し、ブラシの回転方向前方への移動を規制する。第2規制面は、特定ブラシに対し回転方向後方で第1案内面と第2案内面とを接続し、ブラシの回転方向後方への移動を規制する。これにより、ホルダはブラシをより安定的に保持することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータが適用される電子スロットル装置である。モータは、エンジンの吸入空気通路を開閉可能な弁部材を駆動するアクチュエータとして用いられる。電子スロットル装置は、車両の中でも特に、他の装置等で発生する振動が伝わる。本発明によれば、電子スロットル装置に適用されるモータでブラシをホルダに安定して保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態によるモータが適用された電子スロットル装置の断面図である。
【図2】図1の電子スロットル装置のカバーを外してII矢印方向から見た図である。
【図3】図1のモータのIII−III線断面図である。
【図4】図3のモータのハウジングを外してIV矢印方向から見た図である。
【図5】図4のV矢印方向から見た図である。
【図6】図3のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用初期段階を示す図である。
【図7】図3のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用中期段階を示す図である。
【図8】図3のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用末期段階を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用初期段階を示す図である。
【図10】図8のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用中期段階を示す図である。
【図11】図8のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用末期段階を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用初期段階を示す図である。
【図13】図11のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用中期段階を示す図である。
【図14】図11のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用末期段階を示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態のモータのブラシと整流子とホルダとを示す模式図であって、ブラシの使用初期段階を示す図である。
【図16】本発明の第5実施形態のモータのブラシ、ホルダ、付勢部材としての板ばねを軸方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるモータが適用された電子スロットル装置を図1および図2に示す。電子スロットル装置1は、スロットルボディ40、スロットルシャフト42、スロットルバルブ45、スロットルギア51、第1スプリング55、モータ10、及び、アクセル操作量に応じてスロットルバルブ45の回転角度を制御するECU(エンジン制御ユニット)2等を備えている。
【0016】
スロットルボディ40は、エンジンの各気筒に連通する空気通路41を有する。スロットルボディ40には、軸受43および軸受44が取り付けられている。スロットルシャフト42は、軸受43および軸受44に回転可能に支持されている。
スロットルバルブ45は、円板状に形成され、スロットルシャフト42に固定されている。スロットルバルブ45は、スロットルシャフト42と一体に回転し、空気通路41内を流れる吸入空気量を調整する。
【0017】
スロットルギア51は、減速ギア52やモータギア11等と共にスロットルボディ40のギア室49に収容されている。スロットルボディ40のギア室49側の開口は、カバー48で覆われている。スロットルギア51は、スロットルシャフト42の一端部に固定されており、スロットルシャフト42と一体に回転する。
第1スプリング55は、一端部がスロットルボディ40に固定され、他端部が、スロットルギア51と一体に設けられる係止部材54に固定されている。第1スプリング55の付勢力は、スロットルバルブ45を閉弁させるように係止部材54に作用する。
【0018】
モータ10は、スロットルボディ40のモータ室47に収容されている。モータ10は、ECU2からの指令に基づきモータギア11を回転させる。減速ギア52は、モータギア11とスロットルギア51との間に設けられ、モータギア11から伝達された回転力を減速してスロットルギア51に伝達する。モータギア11の回転力は、第1スプリング55の付勢力に抗してスロットルバルブ45の開弁させるようにスロットルギア51に作用する。
【0019】
次に、モータ10の構成を図3、図4および図5に基づき詳しく説明する。
モータ10は、ブラシ付きの直流モータであり、電機子12、永久磁石13、ハウジング14、シャフト15、整流子18、ブラシ22、ホルダ25、第2スプリング27等から構成されている。
ハウジング14は、鉄等の磁性材料で有底筒状に形成されている。ハウジング14の開口端部は、円板状のエンドベル21で塞がれている。ハウジング14およびエンドベル21は、モータ10の外郭を構成する。ハウジング14の筒部の内壁面には、周方向に複数の永久磁石13が取り付けられている。これら永久磁石13は、径内方向に位置する径内壁の磁極が周方向に交互に異なるように配置されている。ハウジング14は、永久磁石13が発生する磁束を伝達し、永久磁石13とともに磁気回路を構成する。
【0020】
ハウジング14の底部の中心部には軸受17が取り付けられ、エンドベル21の中心部には軸受16が取り付けられている。シャフト15は、軸受16、17に回転可能に支持されている。シャフト15の一端部は、エンドベル21を貫通し、ハウジング14外に突き出している。モータギア11は、シャフト15の一端部に固定されている。
【0021】
電機子12は、コア121およびコイル122から構成されている。コア121は、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される。コア121は、シャフト15の外周に圧入されており、シャフト15と共に回転する。コア121は、径外方向へ延びる複数のティースを形成する。コイル122は、絶縁皮膜を施した導線30がコア121のティースに巻回されて成る。
【0022】
整流子18は、電機子12とエンドベル21との間に設けられている。整流子18は、円筒状の軸本体部19と、軸本体部19の径外壁に固定され周方向に互いに離間する複数の電極板20とから構成されている。軸本体部19は、樹脂で成形され、シャフト15に圧入されている。電極板20は、銅板等の導電性材料で形成される。第1実施形態では、6枚の電極板20が周方向に等間隔に配置されている。電極板20は、電機子12のコイル122の導線30と電気的に接続している。整流子18は、電機子12と共に回転し、電機子12に供給される電流を整流する。
【0023】
整流子18の径外方向には、周方向に互いに離間するブラシ22、23が設けられている。各ブラシ22、23の径内端は、軸受16に対し軸受17側ほど、すなわち後述のホルダ25の第2案内面254に対し第1案内面253側ほど電極板20から離間するテーパ面状に形成される。各ブラシ22、23は、複数の電極板20と摺動可能であり、電機子12の回転に伴い複数の電極板20と断続的に接触する。
一方のブラシ22には、給電用の導電部材24の一端が接続されている。この導電部材24の他端は、エンドベル21に取り付けられている正極端子28に接続している。また、他方のブラシ23には、給電用の導電部材26の一端が接続されている。この導電部材26の他端は、エンドベル21に取り付けられている負極端子29に接続している。ブラシ22、23は、特許請求の範囲の「特定ブラシ」に相当する。
図示しない電源から正極端子28に供給される直流電流は、導電部材24、ブラシ22および、ブラシ22当接する電極板20を経由して電機子12のコイル122に流れる。
【0024】
ホルダ25は、整流子18の軸受16側でシャフト15の径外側に設けられた円板状の基部251と、基部251から整流子18側に突き出すホルダ部252とを形成する。ホルダ部252は、ブラシ22とブラシ23とに対応して2つ設けられる。この2つのホルダ部252は、設置される位相が異なるのみで形状は同じである。以下、ブラシ22を保持するホルダ部252に関して説明する。
【0025】
ホルダ部252は、整流子18の軸方向で対向しブラシ22が遊嵌する一対のブラシ支持面、すなわち第1案内面253および第2案内面254を有する。第1案内面253は、シャフト15の軸に垂直な面である。第2案内面254は、第1案内面253に平行で且つブラシ22に対し第1案内面253とは反対側に位置する。ホルダ25は、第1案内面253と第2案内面254との間でブラシ22を整流子18の径方向へ移動可能に保持している。
またホルダ部252は、ブラシ11に対し回転方向前方で第1案内面253と第2案内面254とを接続する第1規制面257と、ブラシ11に対し回転方向後方で第1案内面253と第2案内面254とを接続する第2規制面258とを有している。第1規制面257は、ブラシ22の回転方向前方への移動を規制する。第2規制面258は、ブラシ22の回転方向後方への移動を規制する。
【0026】
ホルダ25は、基部251から電機子12側に突き出すスプリング保持部255を形成する。「付勢部材」としての第2スプリング27は、ホルダ25のスプリング保持部255に嵌合するねじりばねである。第2スプリング27の第1アーム部271は、ホルダ25が形成するばね固定部256に固定されている。第2スプリング27の第2アーム部272は、ブラシ22の整流子18とは反対側の端部に係合している。
ブラシ22は、径外端に第2スプリング27の第2アーム部272が係合するスプリング係合溝221を有している。第1実施形態では、スプリング係合溝221は、ブラシ22の整流子18とは反対側の端部のうち、整流子18の軸方向の中央に形成されている。
【0027】
第2スプリング27は、第2アーム部272が第1案内面253に対し第2案内面254側に撓まされた状態でモータ10に組み付けられている。これにより、図6に示すように、整流子18の軸を通る縦断面内で第2アーム部272のブラシ22への押付力Fの作用線Laは、ブラシ22と整流子18との当接点aよりも第1案内面253側に向けられている。つまり、第2スプリング27は、図6に示す断面内で、ブラシ22への押付力Fの作用線Laが、ブラシ22と整流子18との当接点aと第2アーム部272の荷重点bとを結ぶ仮想線Lvに対し第1案内面253側に向くように設けられている。そのため、第2アーム部272は、第1アーム部271側に巻き戻るように且つ第1案内面253側に撓みを戻すように力を作用し、ブラシ22を第1案内面253側に傾けつつ電極板20に押し付ける。押付力Fは、図6に示すように、ブラシ22を電極板20に押し付ける分力Fcと、ブラシ22を第1案内面253に押し付ける分力Fmとに分解できる。
【0028】
これにより、ブラシ22の径内端は電極板20に押し付けられる。また、第1案内面253と第2案内面254との間に遊嵌されているブラシ22は、図6に矢印Mで示すように当接点aを支点とする回転モーメントを受けて第1案内面253側に傾く。ほぼ直方体状に形成されるブラシ22は、径外方向に位置する径外角部222が第1案内面253に線接触で当接し、径内方向に位置する径内角部223が第2案内面254に線接触で当接する。これによりブラシ22はホルダ25に軸方向のガタ無く保持される。
【0029】
次に、モータ10および電子スロットル装置1の作動を説明する。
電源から正極端子28に供給される直流電流は、ブラシ22、整流子18を経由して電機子12のコイル122に供給される。これにより、コイル122は磁界を発生する。コイル122の磁界と永久磁石13の磁界との吸引および反発の作用により、電機子12およびシャフト15は回転する。シャフト15の回転に伴い整流子18の電極板20がブラシ22、23と断続的に接触すると、導線30を流れる電流の向きが連続的に逆転し、コイル122の発生磁界が連続的に変化するため、電機子12は回転し続ける。
【0030】
電機子12の回転により、シャフト15に固定されたモータギア11が回転し、減速ギア52を経由してスロットルギア51が駆動されてスロットルバルブ45が開弁方向へ回転する。
一方、モータ10への電流供給が停止すると、第1スプリング55の付勢力によってスロットルバルブ45が閉弁方向へ回転する。このようにスロットルバルブ45を所定の開度に動かすことにより、電子スロットル装置1は、空気通路41内を流れる吸入空気量を調整する。
【0031】
ここで、電機子12の回転に伴い電極板20に断続的に接触するブラシ22は、第2スプリング27により電極板20に押し付けられ、電極板20との接触で摩耗した分だけ電極板20側に送り出される。ブラシ22の径内端は、モータ10の使用初期段階では図6に示すようにテーパ状に形成されているが、摩耗が進行するにしたがって中期段階では図7に示すようにテーパ状の部分が減少し、末期段階では図8に示すように電極板20の径外面と略平行になる。いずれの段階であっても、ブラシ22は整流子18との当接点aを支点として第1案内面253側に傾く。その結果、ブラシ22は、第1案内面253との当接点cおよび第2案内面254との当接点dの二点でホルダ25により軸方向のガタなく支持される。このことに関しては、ブラシ23も同様である。
【0032】
第1実施形態によるモータ10では、第2スプリング27がブラシ22をホルダ25の第1案内面253側に傾けつつ整流子18に押し付ける。これにより、ブラシ22は、ホルダ25の第1案内面253と第2案内面254との間で軸方向のガタ無く保持される。ブラシ23も同様である。そのため、ブラシ22、23を軸方向へ振動しないように安定して保持することができる。
また、第1案内面253および第2案内面254には、ブラシ22のうち径外角部222および径内角部223が線接触で当接するため、ブラシ22とホルダ25との接触面積が少ない。ブラシ23も同様である。そのため、ブラシ22、23が径方向へ円滑に移動可能である。よって、整流子18の径方向変位に対してブラシ22、23が追従可能である。
【0033】
また、第1実施形態では、ブラシ22、23の径内端は、第2案内面254に対し第1案内面253側ほど電極板20から離間するテーパ面状である。これにより、使用初期でのブラシ22、23と電極板20と摺動を円滑にし、振動等の発生を抑制することができる。
以下の第2実施形態および第3実施形態の説明では、第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるモータのブラシを図9〜図11に基づき説明する。第2実施形態のブラシ60は、径外端に第2アーム部272が係合するスプリング係合溝601を有している。スプリング係合溝601は、ブラシ60の径外端のうち第1案内面253側に形成されている。
【0035】
図9に示すように、整流子18の軸を通る縦断面内で第2アーム部272のブラシ60への押付力Fの作用線Laは、ブラシ60の整流子18との当接点aよりも第1案内面253側に向けられている。つまり、第2アーム部272は、図9に示す断面内で、ブラシ60への押付力Fの作用線Laが、ブラシ60の整流子18への当接点aと第2アーム部272の荷重点bとを結ぶ仮想線Lvに対し第1案内面253側に向くように設けられている。そのため、第2アーム部272は、ブラシ60を第1案内面253側に傾けつつ電極板20に押し付ける。
【0036】
これにより、ブラシ60の径内端は電極板20に押し付けられる。また、第1案内面253と第2案内面254との間に遊嵌されているブラシ60は、図9に矢印Mで示すように当接点aを支点とする回転モーメントを受けて第1案内面253側に傾く。ほぼ直方体状に形成されるブラシ60は、整流子18とは反対側の端部のうち第1案内面253側の径外角部602と、整流子18側の端部のうち第2案内面254側の径内角部603とでホルダ25に軸方向のガタ無く線接触で当接する。よって第2実施形態のモータでも第1実施形態と同様、ブラシ60は、第1案内面253との当接点cおよび第2案内面254との当接点dの二点でホルダ25により軸方向のガタなく支持される。そのため、ブラシ60は、ホルダ25により軸方向に振動しないように安定して保持される。
【0037】
また、第1案内面253および第2案内面254には、ブラシ60のうち径外角部602および径内角部603が線接触で当接するため、ブラシ60とホルダ25との接触面積が少ない。そのため、ブラシ60が径方向へ円滑に移動可能である。
また、第2アーム部272の荷重点bは、ブラシ60の径外端のうち第1案内面253側に位置するので、第1実施形態や後述の第3実施形態と比べ押付力Fの傾きを小さくしてもブラシ60を傾けることができる。
【0038】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるモータのブラシを図12〜図14に基づき説明する。第3実施形態のブラシ70は、径外端に第2アーム部272が係合するスプリング係合溝701を有している。スプリング係合溝701は、ブラシ70の径外端のうち第1案内面253側に形成されている。
【0039】
図12に示すように、整流子18の軸を通る縦断面内で第2アーム部272のブラシ70への押付力Fの作用線Laは、ブラシ70の整流子18との当接点aよりも第1案内面253側に向けられている。つまり、第2アーム部272は、図9に示す断面内で、ブラシ70への押付力Fの作用線Laが、ブラシ70の整流子18への当接点aと第2アーム部272の荷重点bとを結ぶ仮想線Lvに対し第1案内面253側に向くように設けられている。そのため、第2アーム部272は、ブラシ70を第1案内面253側に傾けつつ電極板20に押し付ける。
【0040】
これにより、ブラシ70の径内端は電極板20に押し付けられる。また、第1案内面253と第2案内面254との間に遊嵌されているブラシ70は、図12に矢印Mで示すように当接点aを支点とする回転モーメントを受けて第1案内面253側に傾く。ほぼ直方体状に形成されるブラシ70は、整流子18とは反対側の端部のうち第1案内面253側の径外角部702と、整流子18側の端部のうち第2案内面254側の径内角部703とでホルダ25に軸方向のガタ無く線接触で当接する。よって第3実施形態のモータでも第1実施形態と同様、ブラシ70は、第1案内面253との当接点cおよび第2案内面254との当接点dの二点でホルダ25により軸方向のガタなく支持される。そのため、ブラシ70は、ホルダ25により軸方向に振動しないように安定して保持される。
【0041】
また、第1案内面253および第2案内面254には、ブラシ70のうち径外角部702および径内角部703が線接触で当接するため、ブラシ70とホルダ25との接触面積が少ない。そのため、ブラシ70が径方向へ円滑に移動可能である。
【0042】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるモータのブラシを図15に基づき説明する。第4実施形態のブラシ80は、径外端に第2アーム部272が係合するスプリング係合溝801を有している。スプリング係合溝801は、ブラシ80の径外端のうち第1案内面253側に形成されている。
図15に示すように、整流子18の軸を通る縦断面内で第2アーム部272のブラシ80への押付力Fは、径内方向へ向けられている。そのため、ブラシ80の摩耗が点eに達するまでは、ブラシ80は第1案内面253側に傾きつつ電極板20に押し付けられる。
【0043】
これにより、第1案内面253と第2案内面254との間に遊嵌されているブラシ80は、図15に矢印Mで示すように当接点aを支点とする回転モーメントを受けて第1案内面253側に傾く。ブラシ80は、整流子18とは反対側の端部のうち第1案内面253側の径外角部802と、整流子18側の端部のうち第2案内面254側の径内角部803とでホルダ25に軸方向のガタ無く線接触で当接する。よって第4実施形態のモータでも第1実施形態と同様、ブラシ80は、第1案内面253との当接点cおよび第2案内面254との当接点dの二点でホルダ25により軸方向のガタなく支持される。そのため、ブラシ80は、ホルダ25により軸方向に振動しないように安定して保持される。
【0044】
また、第1案内面253および第2案内面254には、ブラシ80のうち径外角部802および径内角部803が線接触で当接するため、ブラシ80とホルダ25との接触面積が少ない。そのため、ブラシ80が径方向へ円滑に移動可能である。
【0045】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるモータのブラシを図16の模式図に基づき説明する。第5実施形態では、ブラシ22、23は、「付勢部材」としての板ばね90によりホルダ25の第1案内面側に傾けられつつ整流子18に押し付けられる。板ばね90の一端部901は、ホルダ25の基部に形成される固定部材91に固定される。また板ばね90の他端部902は、ブラシ22、23の径外端に係合する。
【0046】
(他の実施形態)
第1実施形態から第3実施形態では、モータは電子スロットル装置に適用されていた。これに対し、モータは、電子スロットル装置以外の装置に適用されてもよい。特に、振動や衝撃がかかる環境で使用される場合、本発明は大きな効果を発揮する。
本発明の他の実施形態では、電極板20の数は6枚以外であってもよい。
【0047】
以上、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ・・・モータ
12 ・・・電機子
14 ・・・ハウジング
15 ・・・シャフト
20 ・・・電極板
22,23,60,70・・・ブラシ
222,602,702・・・径外角部
223,603,703・・・径内角部
25 ・・・ホルダ
253・・・第1案内面
254・・・第2案内面
27 ・・・スプリング(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に取り付けられるシャフトと、
前記シャフトと共に回転する電機子と、
前記シャフトの回転方向に互いに離間し、前記電機子と共に回転し、前記電機子に供給される電流を整流する複数の電極板と、
前記複数の電極板と摺動可能であり、前記電機子の回転に伴い前記複数の電極板と順に接触する複数のブラシと、
前記複数のブラシのうち少なくとも一つの特定ブラシに対応して設けられ、前記シャフトの回転軸に垂直な第1案内面と、前記第1案内面に平行で且つ前記特定ブラシに対し前記第1案内面とは反対側に位置する第2案内面とを有し、前記特定ブラシを前記シャフトの径内外方向へ移動可能に案内するホルダと、
前記特定ブラシのうち径外方向に位置する径外角部が前記第1案内面に当接し、前記特定ブラシのうち径内方向に位置する径内角部が前記第2案内面に当接し、且つ、前記特定ブラシのうち径内方向に位置する径内端が前記電極板に当接するように、前記特定ブラシを付勢する付勢部材と、
を備えるモータ。
【請求項2】
前記付勢部材は、一端が前記ハウジングに係止され、他端が前記特定ブラシに係止されるねじりばね或いは板ばねから構成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記特定ブラシに対する前記付勢部材の付勢力は、前記特定ブラシのうち径外方向に位置する径外端部に作用し、且つ、軸方向で前記特定ブラシの径内端より前記第1案内面側に向かう方向へ作用することを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記特定ブラシの径内端は、前記第2案内面に対し前記第1案内面側ほど前記電極板から離間するテーパ面状であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ホルダは、
前記特定ブラシに対し回転方向前方で前記第1案内面と前記第2案内面とを接続し、前記ブラシの回転方向前方への移動を規制する第1規制面と、
前記特定ブラシに対し回転方向後方で前記第1案内面と前記第2案内面とを接続し、前記ブラシの回転方向後方への移動を規制する第2規制面と、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項6】
エンジンの吸入空気通路を開閉可能な弁部材と、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータによって構成され、前記弁部材を駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする電子スロットル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−9522(P2013−9522A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140745(P2011−140745)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】