説明

モールドプレス用ガラス素材、その製造方法及び光学素子の製造方法

【課題】 精密モールドプレスにより、成形部材との融着や、モールドプレスにより、成形型部材との融着や、偏肉などが抑制され、光学性能の高い光学素子を製造するのに好適なモールドプレス用ガラス素材及び光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成してなるモールドプレス用ガラス素材、および前記モールドプレス用ガラス素材を、加熱により軟化した状態でプレス成形する光学素子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドプレス用ガラス素材、その製造方法及び光学素子の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、精密モールドプレスにより、成形型部材との融着や、偏肉などが抑制され、光学性能の高い光学素子を製造するのに好適なモールドプレス用ガラス素材およびその製造方法、並びに該ガラス素材を用い、前記特性を有する光学素子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学ガラスを所定形状に予備成形して得たガラス素材を、加熱により軟化させ、プレス成形することによって、ガラス光学素子を得る方法が知られている。この方法によれば、所望の光学素子形状を基に、精密加工された成形型を用いてプレス成形をすることで、レンズ、プリズム等の高精度の光学素子を極めて生産性よく得ることができる。
【0003】
成形型との融着が抑制された光学素子の製造方法として、例えば(1)炭化水素ガスの熱分解により、炭素含有膜をガラスプリフォームの表面に形成し、その後該ガラスプリフォームを成形する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)プレス成形により用いられるガラスブランクを、酸に浸漬することによって表面層のアルカリ成分含有量を少なくし、かつ表面に炭化水素被覆層を形成することによって、型とガラスブランクの界面に反応ガラス層を形成し、密着力を低下させる方法(例えば、特許文献2参照)、(3)プリフォームの表面変質層を酸やアルカリでエッチングすることにより除去し、表層部と内部の組成を均一にすることで、融着を防止する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−217468号公報
【特許文献2】特開平4−321525号公報
【特許文献3】特開平8−333122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、前記(1)〜(3)の方法について検討した結果、次のように知見を得た。
特許文献1に記載された前記(1)の方法では、比較的簡便な設備で、ガラス素材の表面に炭素含有膜を形成し、これによって型のプリフォームの間の融着をある程度防止する効果が得られる。しかしながら、ガラス素材の組成により、又は表面状態により、必ずしも有効な成膜が行えない。このため、プレス成形の際に、成形面とガラスの界面において融着が防止できない場合が生じる。この問題は、特にガラス素材がリン酸塩を相当量含んでいる場合に顕著であることが、発明者らにより見出された。
【0006】
精密ガラスモールドに用いるガラス素材は、所定体積、所定形状に予備成形して用意することが一般的である。すなわち、プレス成形によって得ようとする光学素子の体積に基づき、ガラス素材の体積、及びその体積精度を決定する。また、得ようとする光学素子の形状、および/または用いるガラスの組成に由来する予備成形性に基づいて、予備成形する形状を決定する。例えば、溶融ガラスを滴下、又は流下することで、球もしくは両凸曲面形状に予備成形することができる。これらのガラス素材をプレス成形に用いる際には、ロボットによって搬送し、下型成形面上に配置するのが一般的である。更に、ガラス素材の供給方法として、下型成形面上に落下供給することができる。特に、予め、予熱され、軟化した状態で成形型内にガラス素材を供給する場合には、搬送治具との接触によってガラス素材表面に欠陥が生じることを防ぐ為、治具上で気流による浮上状態を維持して搬送し、そのまま下型成形面上に落下供給することで、非常に生産性よく、精度高い光学素子が得られる。
【0007】
ガラス素材に、所定の膜厚の均一な炭素含有膜を形成した場合、下型成形面上に配置された、または落下したガラス素材は、下型成形面が凹曲面であれば、配置位置が多少中央からずれていても、ガラス素材が中央にころがり移動、もしくは滑り移動をして、自動的にセンタリングすることができる。あるいは、治具を使ってセンタリングすることも可能である。すなわち、表面と下型成形面の間の摩擦が充分小さければ、ガラス素材は下型の中央に移動し、その後のプレス成形工程によって良好な光学素子(レンズ等)が成形できる。しかしながら炭素含有膜が不均質で部分的に欠落、または膜厚不足のところがあると、ガラス素材の表面の滑り性が不充分な状態で下型上に配置され、あるいは落下したガラス素材は下型中央からずれた位置に偏ったまま停止し、そのままプレス成形され、偏肉を生じた光学素子となってしまったり、場合によっては成形型の破損が生じる。特に、ガラス素材の形状が両凸曲面の場合、および/または下型成形面の形状が、曲率の緩い凹曲面の場合には、ガラス素材が下型成形面上で転がり移動せず、すべり移動のみとなるため、この影響が大きい。
【0008】
特定の硝材、特にリン酸塩を含有する光学ガラスを用いた場合には、表面に形成した炭素含有膜の作用が充分に得られず、下型成形面上でのガラス素材の移動は不充分であり、滑り性が劣ることが、本発明者らによって見出された。この作用は、含有するリン酸塩の量に相関し、特にPにして、25モル%以上を含有する光学ガラスの場合に、上記原因による偏肉が顕著に認められた。
【0009】
表面の滑り性が不充分であることは、プレス時の成形性にも影響を与える。すなわち、軟化したガラスが成形面によって伸ばされる際の成形面との滑り性が不充分であると、延び方向が不均一になるため、アス、クセといった形状不良が生じやすくなる。
【0010】
ところで、モールドプレスによって高精度の光学素子を生産する材料として、低屈折率、低分散(例えばndが1.5付近、νdが70付近)のものが有用に用いられている。これらは、撮像機器用光学系において色収差補正に特に有用であり、高付加価値ガラスとして高い評価を受けている。一般にこのような光学恒数をもつガラス素材としては、低屈折率、低分散成分としてフッ素を含有させたものが知られている。しかしながら、フッ素を相当量含有するガラスをモールドプレスに用いると、以下の問題が生じる。すなわち、揮発成分であるフッ素は、プレス成形時の高温により揮発したフッ素が、成形型の成形面に付着、堆積し、精密加工を施した成形面の鏡面を汚染する。このため、プレスショット数を重ねると、成形される光学素子表面が粗れ、クモリなどの弊害が生じ、これを避けるためには成形面を頻繁に再生しなければならない。即ち、成形後に研磨加工を必要としない精密モールドプレスには適切でない。フッ素を含有するガラス素材を、上記の方法で予備成形すると、ガラス素材の表面に脈理が生じやすいという予備成形性の欠点もある。
【0011】
一方、フッ素を含有する低屈折率硝材で、SiOを主成分とするものがあるが、これは、軟化温度が必ずしも充分に低くないため、モールドプレスを行うためにガラス粘度を適切な範囲とするためには、かなりの高温でプレス成形を行なうこととなり、これは、成形型や、その成形面に形成する離型膜の劣化を早める問題があった。そこで、高付加価値硝材である、低屈折率ガラスを、SiO、フッ素を含有させずに得るために、Pを相当量用いることが有効であることが見出された。したがって、このような光学ガラスからなるガラス素材によって、融着を防止し、かつ表面の滑り性を充分に有したガラス素材を得ることが求められていた。
【0012】
特許文献2に開示された前記(2)の方法は、リン酸塩を含有するガラスによる上記課題に配慮するものではなく、発明者らの検討によると酸処理した上記ガラス素材においては、充分な効果が得られなかった。
また、特許文献3に開示された前記(3)の方法も、ガラス組成によって異なる融着性に配慮するものではない。
【0013】
本発明は、このような事情のもとで、精密モールドプレスにより、成形型部材との融着や、偏肉などが抑制され、光学性能の高い光学素子を製造するのに好適なモールドプレス用ガラス素材およびその製造方法、並びに該ガラス素材を用い、前記特性を有する光学素子を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ガラス素材として、リン酸塩ガラスを含むもの、特に好ましくはPとして25モル%以上を含み、かつフッ素を実質的に含まないものを用い、予備加工した該ガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成してなるものが、モールドプレス用として、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1) リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成してなることを特徴とするモールドプレス用ガラス素材、
(2) ガラス素材が、リン酸塩をPとして25モル%以上含み、かつフッ素を実質的に含まないものである上記(1)項に記載のモールドプレス用ガラス素材、
(3) 炭素含有膜が、不飽和炭化水素化合物を熱分解することにより形成されたものである上記(1)または(2)項に記載のモールドプレス用ガラス素材、
(4) 炭素含有膜を形成してなるガラス素材が、表面自由エネルギーの分散項比80%以上のものである上記(1)、(2)又は(3)項に記載のモールドプレス用ガラス素材、
(5) リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成することを特徴とするモールドプレス用ガラス素材の製造方法、
(6) 上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載のモールドプレス用ガラス素材を、加熱により軟化した状態でプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法、
(7) 加熱されたガラス素材を、上型および下型を有する成形型の下型成形面上に落下供給し、ガラス素材が軟化した状態で、上型および下型でプレス成形する上記(6)項に記載の光学素子の製造方法、及び
(8) 上型および下型の成形面に炭素含有離型膜を有する上記(7)項に記載の光学素子の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、精密モールドプレスにより、成形型部材との融着や、偏肉などが抑制され、光学性能の高い光学素子を製造するのに好適なモールドプレス用ガラス素材およびその製造方法、並びに該ガラス素材を用い、前記特性を有する光学素子を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のモールドプレス用ガラス素材に用いられるガラス素材は、リン酸塩を含むものであって、特にPとして25モル%以上含む場合に、本発明の効果が顕著である。また、フッ素を実質的に含有しないことが好ましく、更に、SiOを含有しないことが好ましい。
【0018】
本発明のガラス素材は、鉛およびヒ素を実質的に含有しないことが好ましい。これらの成分は、精密ガラスモールドに適用すると、鏡面加工された成形型の成形面を汚染し、損傷するほか、毒性による環境負荷上の問題が生じる原因となる。
【0019】
リン酸塩含有ガラスは、HOとの結合性が高いため、表面に水和層を形成しやすく、リン酸塩ガラスの表面は、リン酸濃度が内部より高い層(リン酸リッチ層)が形成されていると考えられる。本発明者らは、こうした表面組成が、プレス工程において他の硝材とは異なった挙動を示す原因と考えた。
【0020】
本発明の好ましいガラス素材としては、以下のガラス素材1およびガラス素材2を挙げることができる。屈折率ndが1.5付近、アッベ数が70付近の光学恒数をもつ、低分散ガラスとして非常に有用なものである。例えば、屈折率ndが1.4〜1.75、アッベ数νdが55〜80のものが挙げられる。特に好ましくは、ndが1.45〜1.60、νdが55以上のものが挙げられる。以下に例示する。
[ガラス素材1]
モル%表示で、Pが40〜70%、Alが8%以上、MgOが5%以上の光学ガラスが好ましく、これらのうち、Pが45%以上、Alが8〜19%、MgOが5〜30%であって、ndが1.4〜1.6、νdが60以上のものがより好ましい。具体的には、モル%表示で、P 45〜65%、Al 8〜19%、MgO 5〜30%、LiOとNaOとKOを合計で1〜25%、B 0〜16%、ZnO 0〜25%、CaO 0〜25%、SrO 0〜25%、BaO 0〜30%、La 0〜10%、Gd 0〜10%、Y 0〜10%、Yb 0〜10%、Lu 0〜10%を含み、上記成分の合計含有量が95%以上であり、F、AsおよびSiOを含まないことを特徴とする光学ガラスが挙げられる。
[ガラス素材2]
モル%表示で、P 25%以上、BaO 20%以上の光学ガラスが好ましく、より好ましくは、PとBaOの合計量が65%以上であって、LiO、NaO、KOの合量が3%以上のものである。
【0021】
更には、Pが25〜55%、BaOが20〜50%のものであって、ndが1.5〜1.75、νdが55〜70であるものが好ましい。具体的には、モル%表示で、P 28〜50%、BaO 20%超50%以下、MgO 1〜20%、LiO、NaO及びKOを合計量で3%超(但し、LiO 0〜25%、NaO 0%以上10%未満、KO 0〜12%)、ZnO 0%超15%以下、B 0〜25%、Al 0〜5%、Gd 0〜8%、CaO 0〜20%、SrO 0〜15%、Sb 0〜1%を含み、上記成分の合計含有量が98%以上であることを特徴とする光学ガラス、更には、上記光学ガラスであって、BaOの含有量が42重量%超、またはBaOの含有量が42重量%以下かつPの量とBaOの量の重量比(P/BaO)が1.0未満であることを特徴とする光学ガラスが挙げられる。
【0022】
上記光学ガラスは、耐水性として、Dwが3級以上であることが好ましい。より好ましくは2級以上である。この等級は、以下のように定められる。このような耐水性により、表面ヤケを抑えて均一な炭素含有膜が得られやすくなる。
〈粉末法耐水性(D)〉
比重グラムに相当する重量の粉末ガラス(粒度420〜590μm)を白金かごに入れ、それを純水(pH=6.5〜7.5)80mLの入った石英ガラス製丸底フラスコ内に浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理し、その減量率(wt%)によって、表1の級に分類。
【0023】
【表1】

また、耐酸性Dは、4級以上、より好ましくは、3級以上であることが好ましい。この特級は以下のようにして定められる。
〈粉末法耐酸性(D
比重グラムに相当する重量の粉末ガラス(粒度420〜590μm)を白金かごに入れ、それを0.01mol/L硝酸水溶液80mLの入った石英ガラス製丸底フラスコ内に浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理し、その減量率(wt%)によって表2の級に分類。
【0024】
【表2】

なお、光学ガラスの耐候性は、以下の指標により評価することができる。
〈耐候性試験〉
65℃−90%湿度下で2平面研磨したガラスを240hr放置し終了後、表面状態を目視観察し、表面の白濁、またはガラス成分による液ジミ状の溶出の有無を評価する。
上記耐候性試験において、白濁、溶出が見られる光学ガラスは、常温、常湿下において放置した場合にも、表面にリン酸イオンのリッチな層が生成しやすく、後述するように、炭素含有膜の成膜に際して、均一な成膜がされにくい傾向にある。
【0025】
本発明に用いるガラス素材は、上記光学ガラスを平板状、柱状、球状、または両凸曲面形状などの形状であって所定の体積のものに予備成形したものとすることができる。ガラスを冷間で切断、研磨等の加工によって得ることができ、あるいは溶融ガラスを受け型状に滴下、または流下する熱間成形によって得ることができる。特に、熱間成形による、球形もしくは両凸曲面形状のガラス素材は、生産性が高く、表面欠陥の無い平滑な自由表面が得られ、かつ後述するように下型成形面に供給された際に、自重によって、または治具によって、転がり移動、もしくは滑り移動して成形面中央に移動(センタリング)ができ、好ましい。
【0026】
図1は、炭素含有膜を有するバリウムホウ酸塩系ガラスまたはホウ酸ランタン系ガラスの場合について、成形面に落下供給した場合の移動の容易さを示す説明図であり、この場合、最終的な幅寄せ操作で完全にセンタリングされる。これに対し、図2は、従来の炭素含有膜(アルカリ処理無し)を有するリン酸塩系ガラスの場合について、成形面に落下供給した場合の移動のしにくさを示す説明図であり、この場合、滑らず途中で止まり、最終的な幅寄せ操作でも動かない。
【0027】
特に、両凸曲面形状のガラス素材の予備成形は、様々な組成、体積に応じて広く行うことができる。しかしながら、両凸曲面形状のガラス素材は、成形面上に供給された際、自重で中央には移動しにくい。このため、治具を用いて、成形面上に供給されたガラス素材の位置修正を行うことができる。特に、落下によるガラス素材の供給を行う場合には、落下位置、落下時の姿勢が一定しないため、治具による位置修正は非常に有用である。この際、従来のように、成形面とガラス素材の滑り性が非常に良くないと、図2に示すように、治具によって中央に移動させようとしても、ガラス素材が中央に滑り移動せず、治具によりかかった形で、治具を退避させたときに偏った位置に戻ってしまう。したがって、両凸曲面形状のガラス素材を用いる場合、あるいは成形素材を落下供給する場合に、本発明は顕著な効果を示す。
本発明のモールドプレス用ガラス素材においては、リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材、好ましくは所定形状に予備加工した前記のガラス素材1又はガラス素材2の表面に、以下のようにしてアルカリ処理を施す。
【0028】
[アルカリ処理]
アルカリ処理は、NaOHおよび/またはKOHを含む水溶液に、所定形状に予備加工した前記ガラス素材を浸漬することによって行なうことができ、好ましくは、pH10〜12の溶液を用いる。pHがこれより小さいと処理速度が小さくなり好ましくない。この範囲であると、リン酸リッチ層を選択的に除去する効果が得られる。処理温度は、20〜50℃が好ましく、時間は30秒〜5分間程度である。
浸漬後、洗浄処理を行う。洗浄処理工程に限定はないが、例えば以下に示すプロセス、すなわち(1)市水による超音波洗浄(例えば、180秒間程度)、(2)純水による超音波洗浄(例えば、120秒間程度)、(3)イソプロピルアルコールによる超音波洗浄(例えば、120秒間程度)、(4)フロン蒸気による乾燥を順次施すことにより、洗浄処理を行うことができる。
本発明のモールドプレス用ガラス素材においては、このようにして表面にアルカリ処理を施した後に、以下のようにして炭素含有膜を形成する。
【0029】
[炭素含有膜の成膜]
ガラス素材表面への炭素含有膜の成膜は、炭化水素化合物の熱分解法、炭化水素化合物のプラズマ分解法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、自己組織化膜成膜法などを用いることができるが、不飽和炭化水素化合物の熱分解によって成膜することが好ましい。なお、ここで不飽和炭化水素化合物とは、分子内にエチレン性不飽和結合やアセチレン性三重結合を1個以上有する炭化水素化合物を指す。前記不飽和炭化水素化合物の熱分解による成膜が好ましいのは、大掛かりな成膜装置を必要とせず、極めて薄く、略均一な成膜を行うことができることによる。比較的熱分解温度が低い、アセチレンが好適に使用できる。膜厚は、1〜10nmが好ましく、より好ましくは、2〜5nmである。
成膜は、以下のように行うことができる。成膜しようとするガラス素材を入れた成膜容器内を67Pa程度以下に排気し、用いる不飽和炭化水素化合物の熱分解温度以上に加熱した状態で、所定流量の不飽和化合物気体を導入する。所定圧力に達したら、加熱をとめ、気体の導入も止めて、排気する。充分に温度が下がったのち、ガラス素材を取出す。
本発明で用いるガラス素材は、リン酸塩を含有しており、特に相当量のリン酸塩を含有する場合、炭素含有膜の成膜による滑り性の付与が不充分であることが見出された。更に、融着防止の効果も不充分であった。これは、ガラス素材の表面にリン酸リッチ層が形成されることにより、これが炭素含有膜の成膜性を阻害していると考えられる。
なお、炭素含有膜の成膜工程を繰り返す、または導入する不飽和化合物を多量にするなどしてガラス表面への炭素含有膜の形成を促し、厚膜を形成すれば、ガラス表面は炭素含有膜によって略完全に覆われる。しかしながら、膜厚を過度に大きくすると、滑り性は改善されるが、プレス成形によって得る光学素子に、クモリやキズ状の外観不良が生じる。これは凝集した炭素や、不均一で膜厚の炭素含有膜を転写したガラス表面に、凹凸が生じるためと考えられる。本発明においては炭素含有膜の膜厚を過度に大きくすることなく、十分な滑り性および融着防止効果が得られる。
本発明に係る前記炭素含有膜は、光学素子のプレス成形後に熱処理することによって除去することができる。
本発明のモールドプレス用ガラス素材の表面に形成された炭素含有膜は、接触角計を用いた表面自由エネルギー算出によって、以下の方法で評価することができる。
【0030】
[炭素含有膜の評価]
固体や液体の表面自由エネルギーをγとすると、以下の式にて表される。
【0031】
γ=γ+γ (1)
ここで、γは固体又は液体の分散力であり、γは固体又は液体の極性相互作用力である。すなわち、(1)式は固体や液体の表面自由エネルギーはその分散力と極性相互作用力の合計で表すことができる。(1)式を固体の表面自由エネルギー:γで考えると
γ=γ+γ (2)
(添字のsはSolidを表す)。また、同様に液体では
γ=γ+γ (3)
(添字LはLiquidを表す)。
【0032】
2種類以上(例えば水とジヨードメタンの2種類)の液体を用い、それぞれを固体上に同量滴下し、接触角を測定する。次に、この接触角から表面自由エネルギーを算出する。算出するための計算式はOwens−Wendt−Kaelble法に基いた。
【0033】
【数1】

2種類の液体のγ及びγは文献値を用いる。また、(3)式より2種類の液体それぞれのγを求める。
なお、水およびヨードメタンのγ、γ、γの文献値は、以下の通りである。
【0034】
γ γ γ
水 21.8 51 72.8
ジヨードメタン 50.8 0 50.8
例えば、光学ガラス上に成膜した炭素含有膜について、上記接触角を求めた。
測定の結果、水の接触角は104.9°であり、これを(4)式のθに入れ、その他のエネルギー値は上記の水の欄の値を用いた。
【0035】
【数2】

となる。また、ジヨードメタンの接触角は72.0°であり、これを同様に計算すると
【0036】
【数3】

上式(6)によって得られた分散項γを(5)式に代入すると
【0037】
【数4】

となる。これら(6)及び(7)式の値を(2)式に代入することにより
γ=21.76+0.59=22.35
固体の表面自由エネルギーγが求められ、分散項比は
γ×100/γ
で求められる。
【0038】
分散項比は表面を構成している非極性成分の占める割合を意味する。炭素含有膜を成膜したガラス素材の表面自由エネルギーを算出した場合、その分散項比は、非極性成分、即ち炭素の被覆率と略正の相関を持っていると考えられる。本発明者らは、この分散項比が、プレス成形時の融着、偏肉の生じやすさの指標となることを見出した。後述する実施例に示すとおり、分散項比が80以上である場合に、良好な融着抑止性、滑り性が得られた。
【0039】
本発明はまた、リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成することを特徴とするモールドプレス用ガラス素材の製造方法、および前述の本発明のモールドプレス用ガラス素材を、加熱により軟化した状態でプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法をも提供する。
【0040】
本発明の光学素子の製造方法においては、前記のようにして、所定形状に予備加工し、その表面にアルカリ処理を施した後に炭素含有膜を形成してなるガラス素材を公知のプレス成形装置の上下型間に供給、配置する。プレス成形開始時のガラス素材の温度は、粘度が10Pa・s以下となる温度であることが好ましい。より好ましくは、105.5〜10Pa・sの範囲である。一方、上下型からなる成形型温度は、ガラス素材の粘度で10Pa・s以上となる温度範囲が好ましい。
【0041】
ガラス素材を室温でロボットにより成形型内に供給し、両者を同時に加熱してもよく、あるいは供給前に型外で予熱されたガラス素材を、予熱された成形型に供給してもよい。また、供給後に更に成形型とガラス素材を加熱してもよい。
【0042】
型外で予熱されたガラス素材を、予熱された成形型に供給する場合には、ガラス素材の予熱温度を成形型の予熱温度より高くし、供給後ただちにプレス成形を開始する方法を採ることができ、成形サイクルタイムの短縮に有利である。この場合、成形型の予熱温度は10〜1012Pa・s相当、ガラス素材の予熱温度は、105.5〜108.5Pa・s相当が好ましい
上下型の温度は同一でもよく、差を設けても良い。プレス成形するレンズ形状や、硝材に応じて決定することができる。
【0043】
ガラス素材を型外で予熱する場合には、好ましくは、ガラス素材を、不活性ガスによって浮上させた状態で加熱炉に所定時間配置し、加熱することが好ましい。その後、軟化したガラス素材を浮上治具に配置したまま下型上に移送し、浮上治具を分割することによって、ガラス素材を落下させ、下型上に供給することができる。
【0044】
下型成形面に供給されたガラス素材は、位置修正手段となる治具によって、中央位置に位置修正することができる。図3および図4は、プレス成型装置の下型に対してプリフォームの位置決めを行う位置決めアームの一例を表す図面であり、図3は正面図であり、図4は拡大図である。
【0045】
図3において、位置決めアーム300は、長尺形状であり、その幅方向における中心線Nを中心として2つのアーム分割体302,304に分割可能である。位置決めアーム300は、更に、その長手方向に沿って、プリフォームを位置決めする6個の位置決めブロック310を有している。各位置決めブロック310は、位置決めアーム300の中心線Nにおいて2つの部分312,314に分割可能であり、アーム分割体302,304の開閉と共に平行に開閉することにより、菱形の開口部316の内周面でプリフォームの外周に接する。位置決めアーム300のアーム分割体302,304は、それぞれの長手方向一端(図中左端)において、一対のスライド体306,308にそれぞれ取り付けられている。このスライド体306,308は、図示しない駆動機構により互いに接近及び離間する方向(図中矢印で示した方向)に移動し、これに伴ってスライド体306,308が互いに平行を保ちつつ開閉する。
【0046】
位置決めアーム300は予熱して用いることが好ましく、予熱温度は、被成形体であるプリフォームを位置修正する際に、プリフォームに接触してもプリフォームの表面欠陥を招かない湿度に設定される。例えば、プリフォームを構成するガラスのTgおよびTsに対して、該予熱温度はTg−200〜Tg+100℃程度であり、好ましくはTg−100〜Tg程度である。
【0047】
また、位置決めアーム300の素材としては、耐熱性が高く、機械的強度に優れ、ガラスとの濡れ性が低いものであることが好ましく、例えば炭素系材料が挙げられる。
【0048】
図4は、位置決めアーム300のアーム分割体302,304を開いた状態(a)と閉じた状態(b)を拡大して示すものである。図4において、アーム分割体302,304の各対向面を、突き合わせ面Sとする。アーム分割体302および304の突き合わせ面S側には、プリフォーム(図4では符号Pで示す)の外周に当接する位置決め面402および404がそれぞれ形成されている。図4(a)に示したようにアーム分割体302,304を開いているときには、位置決め面402,404は下型の成形面上に落下供給されたプリフォームPの外周に対向するようになっている。図4(b)に示したようにアーム分割体302,304を閉じると、位置決め面402,404が各プリフォームPの外周に当接し、これを位置決めする。位置決め面402,404が開閉方向(位置決めアーム300の幅方向)に対してそれぞれ傾斜しているので、各プリフォームPを位置決めアーム300の長手方向及び幅方向に位置決めすることができる。この位置決めにより、プリフォームPの中心と、下型の成形面の中心とが略一致するようになっている。
【0049】
この位置決めアーム300は、作用位置(すなわち、位置決めブロック310が下型の各成形面に対応する位置)において、アーム分割体302,304を開いた状態でプリフォームの落下供給を待つように構成されている。搬送アーム(図示せず)からプリフォームが落下供給されると、アーム分割体302,304を1回〜数回平行に開閉させ、位置決め面402又は位置決め面404(又は両面)を各プリフォームPの外周に当接させて、複数個のプリフォームPの中心を、下型の成形面の中心に同時に略一致させることができる。
【0050】
プリフォームの位置決めが完了した後は、位置決めアーム300が下型上から退避する。そののち、プレス成形装置によるプリフォームのプレス成形が行われる。すなわち、プレス成形装置が、上型又は下型(又は両方)を移動させ、これらの成形面においてプリフォームをプレスし、所望の形状を有する光学素子を成形する。
【0051】
成形型内に供給されたガラス素材は、上型と下型の接近により荷重を印加され、ガラス素材は大きく変形し、所望の光学素子形状に成形される。荷重印加と同時、その後の所定時点で、冷却を開始し、ガラス粘度で1011Pa・s以上となったときに、上下型を離間し、離型する。冷却中に、更なる荷重印加を行ってもよい。好ましくは、離型温度は、1012〜1013Pa・sの粘度相当とする。
【0052】
本発明においては、予熱されたガラス素材を、予熱された成形型に落下供給する方法を採用する場合に、リン酸塩ガラスを用いても良好にセンタリングが行われ、かつ融着も防止できる点で、顕著な効果が得られる。
【0053】
なお、ここで用いる成形型は、例えば母材として炭化ケイ素、窒化ケイ素、超硬合金などを用いたものとすることができる。また成形型の成形面にも、離型を促し、かつガラス素材との滑り性を与える、離型膜が形成されていることが好ましい。離型膜としては、炭素を含有する離型膜が好ましく、これによってガラス素材との摩擦を低減することができる。炭素含有膜は、例えば炭素や有機材料を原料として、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などにより形成することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実験例1
表3に示す組成および表4に示す物性を有する5種類の光学ガラスA〜Eを用いて、ガラス素材を予備成形し、これらを用いて、プレス成形によって光学素子(レンズ)を得た。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

すなわち、上記5つの硝材を、溶融状態から滴下することによって得られた、両凸曲面形状のガラス素材に、アセチレンの熱分解による炭素含有層を成膜した。
【0057】
具体的には、反応容器(ベルジャ−)内を67Pa以下に排気した後加熱し480℃に保った。ガス管から窒素ガスを流しながら真空ポンプで排気を行うことにより21.3kPaに保ち、30分間パ−ジを行った。この後、ガスの導入を止め、67Paまで排気を行った。この後圧力が16kPaになるまで流量65標準状態cm/minにて100分間アセチレンを導入し続けた。所定の圧力に達した後、加熱を止めアセチレンの導入を止め、真空引きを行った。温度が下がった後被成形ガラスを取り出した。下記表5中で、「2倍」と表記されたものは、この工程を2度繰り返した。
【0058】
このようにして得たガラス素材を用いて、径18mmの両凸レンズをプレス成形した。すなわち、ガラス素材を、型外で580〜630℃に予熱し、軟化した状態で浮上治具を用いて、下型成形面の上に搬送し、浮上皿を分割することによってガラス素材を、下型成形面上に落下供給した。次いで、2940Nの荷重によって、上下成形面間でガラス素材をプレスし、押しきった時点で、100℃/分の冷却速度で冷却を行った。ガラスTg以下の温度となったときに、離型し、成形された光学素子を取り出した。なお成形型はCVD法による炭化ケイ素母材を精密加工し、離型膜としてイオンプレーティング法により炭素含有膜を形成したものを用いた。
【0059】
を含まないガラスA、ガラスBは、標準成膜で落下供給に問題が無かった。Pを含むガラスC、D、ガラスEは標準成膜では、いずれも落下供給時に搬送治具に融着が生じ、又は落下後下型成形面で融着、融着した状態で幅寄せを行ってもうまくセンタリングできずセンタ−からズレた状態でプレスするため、得られたレンズは偏肉していた。
【0060】
C、D、EガラスはPを多く含むため耐候性が弱く表面に燐酸を多く含んだ水和物層が溶出する(65℃―90%耐候性試験結果)。このため、ガラス素材予備成形後の保管時に、表面にリン酸リッチ層が形成され、この層は洗浄工程のみでは除去は不十分であり、炭素含有膜の被覆が不十分であったと考えられる。
成膜を2倍とした場合には、落下供給不良の問題は解決されるが、カーボンの凝集により、プレス後レンズに外観不良が発生した。
【0061】
ガラスC,D、ガラスEのガラス素材をpH11.5の溶液に室温で1分間浸漬した後に炭素含有膜を成膜したものについては、標準成膜でも落下供給、プレス後外観共に問題無く、良好な品質のレンズが得られた。これは上記Pリッチ層をアルカリ処理により除き、炭素含有膜が薄く、均一に成膜されたためと考えられる。
【0062】
成膜後のガラス素材につき、落下供給の可否を判断する目安としてプリフォーム表面に水とジヨードメタンの滴を落としてその接触角から、表面の膜の均質度を示す分散項比を算出したところ、表5のようになった。この分散項比が80%を超えると落下供給に問題は発生せず、問題なくプレス成形が行われることが見出された。これらの結果を表5に示す。
【0063】
【表5】

なお、表5中の落下供給および外観の評価基準は、以下のとおりである。
落下供給:10回の落下供給中、治具への融着、又は下型成形面への融着、偏肉のいずれかが1回以上発生した場合に×とした。
外観:下記のいずれかが認められた場合に×とした。
キズ・よごれ×は
・レンズ径Dに対して幅30μm以上、D/10以上長さのキズ状の外観不良があること
・レンズ径Dに対して幅30μm以上 D/20〜D/10未満の長さのキズ状の外観不良が2本以上あること
クモリ×は
・60Wの電球の前に目から10cm離した状態でレンズを手で持ち目視でクモリが確認されること。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のモールドプレス用ガラス素材は、精密モールドプレスにより、成型型部材との融着や、偏肉などが抑制され、光学性能の高い光学素子を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】炭素含有膜を有するバリウムホウ酸塩系ガラスまたはホウ酸ランタン系ガラスの場合について、成形面に落下供給した場合の移動の容易さを示す説明図である。
【図2】従来の炭素含有膜(アルカリ処理無し)を有するリン酸塩系ガラスの場合について、成形面に落下供給した場合の移動のしにくさを示す説明図である。
【図3】プレス成型装置の下型に対してプリフォームの位置決めを行う位置決めアームの平面形状を示す正面図である。
【図4】図3に示した位置決めアームを拡大した図である。
【符号の説明】
【0066】
300 位置決めアーム
302,304 アーム分割体
306,308 スライド体
310 位置決めブロック
316 開口部
402,404 位置決め面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成してなることを特徴とするモールドプレス用ガラス素材。
【請求項2】
ガラス素材が、リン酸塩をPとして25モル%以上含み、かつフッ素を実質的に含まないものである請求項1に記載のモールドプレス用ガラス素材。
【請求項3】
炭素含有膜が、不飽和炭化水素化合物を熱分解することにより形成されたものである請求項1または2に記載のモールドプレス用ガラス素材。
【請求項4】
炭素含有膜を形成してなるガラス素材が、表面自由エネルギーの分散項比80%以上のものである請求項1、2または3に記載のモールドプレス用ガラス素材。
【請求項5】
リン酸塩を含み、所定形状に予備加工したガラス素材の表面にアルカリ処理を施した後に、炭素含有膜を形成することを特徴とするモールドプレス用ガラス素材の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のモールドプレス用ガラス素材を、加熱により軟化した状態でプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
加熱されたガラス素材を、上型および下型を有する成形型の下型成形面上に落下供給し、ガラス素材が軟化した状態で、上型および下型でプレス成形する請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
上型および下型の成形面に炭素含有離型膜を有する請求項7に記載の光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−8470(P2006−8470A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190648(P2004−190648)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】