説明

ライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法

【課題】 通常のキャップ製造ラインでもシーリングマシンのヘッド圧が非常に低い状態で良好な密封性が得られる優れたキャッピング特性を有したライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 天板部2と該天板部2の周縁から垂下した筒状周壁部3とからなるキャップ本体4と、天板部2の内面に成形されたライナー5と、を備え、ボトル本体4の雄ねじ部が形成された口部に装着されて螺着状態にキャッピングされると共に天板部3の周縁が前記垂下の方向に肩絞り加工により変形されて口部を密封状態に封じるライナー付き金属キャップ1であって、天板部2の周縁をライナー5と共に前記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部2aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッピング特性に優れたライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム製のボトル缶等には金属キャップが使用されている。この金属製キャップは、合成樹脂製ライナーを具備したものが広く使用されている。この金属キャップは、アルミニウム薄板、ブリキ薄板、クロム鍍金薄板等の両面に数回の塗装を繰り返し、打ち抜き成形したものをシェルとし、溶融樹脂をシェルの中に入れ、型押しする方法が一般的である。その他、発泡PEディスクを挿入する方法、塩ビゾルを流し込み加熱成型する方法等があるが、コスト、衛生性等の問題があり、使用範囲は限定される。
【0003】
このようにして成型されたライナー付き金属製キャップを容器にキャッピング(施栓)する方法は種々あるが、多くはキャップをボトルにかぶせ、上から一定の力を加えながらネジ形成を行う場合が多い(トップシール方式)。特に、内容物が陽圧状態(炭酸ガス入り飲料、窒素ガス封入飲料等)である場合、アルミニウム製PP(ピルファープルーフ)キャップでは、キャッピング時に上から荷重(ヘッド圧)を加え、さらにキャップ天面の周縁部を絞り、キャッピングする。このとき、キャップ天面を一定量変形させて、ライナーをボトルの口唇部の天面だけでなく、口唇部側面に密着させながら、同時にボトル缶のネジ山に沿って、キャップのネジを成形する。また、PP(ピルファープルーフ)バンド部をボトル缶の顎部に形成し、シール性を確保する構造になっている(トップ&サイドシール方式)。
【0004】
このように上から圧力を加え、キャップ天面の周縁部を下方に絞り変形させる方法は、キャップライナーを単に天面の接触によるシールだけでなく、容器口唇部の側面にもライナーを設置し、シールをより完全にするためであり、容器の内容物が陽圧物である場合は必須である。
【0005】
しかし、このときの上からボトル缶等に掛かる力は、キャップ天面を変形させ(肩絞り)するために、トップシール方式に比べ非常に大きい。このため、ボトル缶の場合、一定の垂直荷重に耐えるため、一定の強度が必要であり、薄肉化の限界の原因になっている。
また、このとき、キャッピング時にライナー形状、キャッピング機械の調整不良等により、キャップの斜め被りが発生することがある。この原因の一つとして、キャッピング時にキャップと容器口部とのセットが若干ずれて、その状態でキャッピングされると、プレッシャーブロックとキャップとが旨く嵌合せず、斜め被りが発生する。この場合、しばしばキャップのブリッジ切れの原因や、モレの原因になる。
【0006】
上述したように、アルミニウム製キャップの場合、キャッピング時にキャッピングマシンのヘッドのプレッシャーブロックでキャップを押さえ、その周縁部を絞り、容器口部の口唇部の天部、側面部に完全に密着させながらローラーにより、ネジを形成する方法が一般的である。この場合の荷重は、全て容器で受ける構造になっているが、ライナーの形状、キャッパーの調整等により、キャッピング時に斜め被りキャップが発生することがある。
【0007】
この対策として、従来、ライナーの形状をボトルに嵌合しやすい形状にして、ボトル口部にキャップが確実に正常状態で被せるように設計されたものもあるが、この場合、ライナーの形状が複雑になり、生産性が落ちることになる。
通常、清涼飲料水等に使用されるガラスビンの場合、キャッピング時の荷重は2000N程度である。ガラスビンの場合、これらの圧力に充分耐えるように設計されている。また、PETボトルの場合も、ほぼ同等のヘッド圧でキャッピングしているが、PETボトルは全体で受けるほどの強度がないため、容器口部のネック部にサポートリングを具備しており、そこでキャッピング時の圧力を受けている。
【0008】
しかしながら、アルミニウム製ボトルの場合、一般にコストの面からこれ程の荷重には耐えられるようには設計されていない。通常は、1000N程度であり、これ以上であるとボトルの変形(通常座屈といわれるもの)が発生する。通常のアルミニウム製キャップでは1000N以上のヘッド圧が必要であるが、座屈を防ぐために1000N程度でキャッピングしている。この場合、不十分なヘッド圧をカバーするために、アルミニウム製ボトル缶は通常二度巻でキャッピングしている。すなわち、一度、ロールオンキャッピングした後、再度、同じキャッパー又は別キャッパーで再度同様にキャッピングする方式を取っている。
【0009】
これは、一度で充分なキャッピング状態を得ようとすると、ボトル缶に過大な力が加わり、ボトルネジ部やボトル自体の変形が発生しモレ発生に繋がるためである。また、ボトル自体の変形は、商品価値を著しく落とすことになる。座屈の現れる現象として、まずネジ部のつぶれ(ネジピッチが狭くなり、ネジ部が楕円になる)が発生し、次に、ネジ部の下のボトル肩部が変形する。このようにネジ部が変形することにより、リシールした場合のネジ部抵抗(開栓後、再栓した場合のトルク、すなわち通常開栓前の位置から180°手前まで締めるに要する閉栓トルクで表す)が上がる。さらには、ボトル缶ネジ部の下の肩部が変形する。この座屈が発生すると、キャップのシールが不完全になり内容物が漏れたりする現象が発生する。
【0010】
この荷重に耐え、耐座屈強度を上げるには、アルミニウムの強度、板厚を上げれば良いが、経済的な損失が発生する。逆に、ボトル缶のコストを下げるためには、さらに肉薄にすることが求められている。したがって、低荷重でキャッピングできる構造のキャップが求められている。
従来、これらに対して幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献1から4に記載された技術などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭48−89089号公報
【特許文献2】特開2003−72792号公報
【特許文献3】特開2003−321039号公報
【特許文献4】特開2005−162233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1から4の技術は、キャップシェルを予め絞り形状に成形しておき、ライナーが容器口部の口唇部の外側面に密着する構造になっている。これらの技術は、キャッピング時に低い荷重でキャッピングすることができる特徴を持っているが、幾つかの問題点があるため特殊なものを除いては実用化されていない。
【0013】
例えば、特許文献1に記載の技術では、先ず変形シェルを作り、しかる後にライナーを形成しているが、この方式であると、シェルを成型するための特殊なプレス型が必要であり、ライナー成型もシェル天面がフラットでないため、下型が特殊な形状が必要である。例えば、インシェルモールド方式でライナーを成型する場合、変形天面に適合した下型とライナーを形成する金型とが必要であるが、シェルの形状を保つためにシェルと同様の形状を持った下型が必要である。この場合、ライナーを成型した後、下型からキャップを取り出す工程が必要であり、成型機が複雑になり、生産性も充分上がらない。
【0014】
また、特許文献2に記載の技術でも同様な欠点があり、複雑な形状のシェルにライナーを成型しなければならないという不都合がある。
また、特許文献3に記載の技術は、ボトル缶のスタック性改良の提案であるが、このキャップの成型も同様の欠点があり、複雑な形状のシェルにライナーを成型しなければならないという不都合がある。
【0015】
さらに、特許文献4に記載の技術では、打栓圧を下げる方法として、特殊な形状のシェルにライナーを賦形し、特殊な機構のプレッシャーブロックでキャッピングする構造になっており、現在一般に使用されているプレッシャーブロックは使用できず、用途が限定される。
すなわち、これらのキャップは、通常のアルミニウム製PPキャップと異なり、シェル形状、キャッピング機構が異なるため、シェルを成形する段階で特別なプレス金型を使用しなければならない。また、キャッピングマシンのプレッシャーブロックを特殊なものを使用する必要がある。
【0016】
このように、シェル形状が特殊であるため、特殊なプレス機が必要であり、特にライナーのインシェルモールドにより成型する場合、シェル天面形状に合わせた特殊な下型が必須であるため、生産性が著しく劣り、特殊な生産機が必要である。
すなわち、ライナー成形工程で最も効率の良い通常のインシェルモールド方式で生産する場合、シェル天面が特別な形状であるため、通常のライナー成型時に型押しのための上型を特殊な形状にし、下型に当たる部分(通称アンビルと呼ぶ部分)もシェルの形状に沿った掘り込みが必要である。したがって、通常のキャップ製造ライン、ボトラーの生産ラインに、これらを実際に使用することは困難であった。
【0017】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、通常のキャップ製造ラインでもシーリングマシンのヘッド圧が非常に低い状態で良好な密封性が得られる優れたキャッピング特性を有したライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のライナー付き金属キャップは、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記天板部の内面に成形されたライナーと、を備え、ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部に装着されて螺着状態にキャッピングされると共に前記天板部の周縁が前記垂下の方向に肩絞り加工により変形されて前記口部を密封状態に封じるライナー付き金属キャップであって、前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を有していることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のライナー付き金属キャップの製造方法は、ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部に螺着されて該口部を密封状態に封じるライナー付き金属キャップの製造方法であって、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体の前記天板部の内面にライナーを成形するライナー成形工程と、該ライナー成形工程後に、前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を形成する絞り加工工程と、を有していることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のキャップ付き容器は、ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部にライナー付き金属キャップを装着したねじ付き容器であって、上記本発明のライナー付き金属キャップが前記口部に装着されて螺着状態にキャッピングされていると共に前記環状傾斜部が前記垂下の方向にさらに肩絞り加工で変形されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のキャップ付き容器の製造方法は、ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部にライナー付き金属キャップを装着したねじ付き容器を製造する方法であって、上記本発明のライナー付き金属キャップを前記口部に装着して螺着状態にキャッピングすると共に前記環状傾斜部を前記垂下の方向にさらに変形加工させる肩絞り加工工程と、を有していることを特徴とする。
【0022】
これら上記本発明では、先に内面にライナーが形成された天板部の周縁をライナーと共に上記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を形成させているので、予め天板部の周縁を肩絞りに近い状態にリング状に塑性加工して環状傾斜部を形成しておくことで、後のキャッピング工程で肩絞り加工を行っても肩絞りに要する力が極僅かで済み、キャッピングに要する全体の力が少なくて済む。また、キャップ本体(シェル)とライナーとを肩絞り加工の前に予め同時に絞り加工するので、より精度の高いライナー形成が可能になる。したがって、キャッピング時のヘッド圧を低い状態にしても、十分な肩絞り状態が得られると共に正確にキャッピングすることができ、低荷重のキャッピングによっても良好な密封性が得られる。
なお、キャップ本体の形状は、最初から肩絞り状態に変形されておらず、通常のインシェルモールド方式でライナー成形可能なので、従来の生産金型を使用することができる。
【0023】
また、本発明のライナー付き金属キャップは、前記筒状周壁部に、前記雄ねじ部に対応した雌ねじ部が成形されていることを特徴とする。
また、本発明のライナー付き金属キャップの製造方法は、前記絞り加工工程後に、前記筒状周壁部に、前記雄ねじ部に対応した雌ねじ部を成形するねじ部成形工程を有していることを特徴とする。
【0024】
これらライナー付き金属キャップ及びその製造方法では、筒状周壁部に、雄ねじ部に対応した雌ねじ部を予め成形しておくので、事前ねじ成形(プレスクリュー)が施されており、キャッピングと同時にねじ部を成形するロールオン方式に比べて、キャッピングをねじ込み方式で行うことで、さらに低いキャッピング圧でキャッピングすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るライナー付き金属キャップ及びその製造方法では、先に内面にライナーが形成された天板部の周縁をライナーと共に上記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を形成させているので、キャッピング時のヘッド圧を低い状態にしても、十分な肩絞り状態が得られると共に正確にキャッピングすることができ、低荷重のキャッピングによっても良好な密封性が得られる。
したがって、上記本発明のライナー付き金属キャップを使用したねじ付き容器及びその製造方法によれば、キャッピングのためにアルミニウム製等のボトルに今までのような強度を必要とせず、低荷重でも適切な密封性が得られ、より材質の薄いボトル(ねじ付き容器)を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法の第1実施形態において、キャップ本体(シェル)を示す断面図である。
【図2】第1実施形態において、プリフォーム(絞り加工)前のライナー付き金属キャップを示す断面図である。
【図3】第1実施形態において、図2と異なるライナー形状とされたプリフォーム(絞り加工)前のライナー付き金属キャップを示す断面図である。
【図4】第1実施形態において、プリフォーム(絞り加工)されたライナー付き金属キャップを示す断面図である。
【図5】第1実施形態において、プリフォーム(絞り加工)されたライナー付き金属キャップをボトル缶の口部に被せた状態でキャッピングマシンにセットし、肩絞り加工を行う前の状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態において、プリフォーム(絞り加工)されたライナー付き金属キャップがキャッピングマシンでキャッピングされる状態を示す要部を断面とした説明図である。
【図7】第1実施形態において、ライナー付き金属キャップがキャッピングされたキャップ付きボトルを示す要部を拡大した断面図である。
【図8】本発明に係るライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法の第2実施形態において、プリフォーム(絞り加工)された後にさらにねじ加工を施したライナー付き金属キャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法の第1実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態のライナー付き金属キャップは、アルミニウム製ボトル缶、PETボトル等の口部がネジ形状になっているボトル(ねじ付き容器)において、それに使用されるライナー付き金属キャップである。このライナー付き金属キャップ1の製造方法は、図1に示すように、まず天板部2と該天板部2の周縁から垂下した筒状周壁部3とからなるシェルであるキャップ本体4を従来の生産金型を使用して作製する。
【0029】
次に、図2に示すように、この従来と同様に生産されたキャップ本体4における天板部2の内面に、所定形状のライナー5を成形する(ライナー成形工程)。このライナー5の成形方法は、例えばインシェルモールド方式、フローイン方式、ライナー中央接着によるシートライナー挿入方式等が採用可能である。このときのライナー5の形状は、図2に示すように、単にフラットでなく、ライナー5の外周部に一定の高さの壁状になったものや、図3に示すように、外周に向かって一定の角度を持って厚くなる外周部を有した形状でも良い。
【0030】
なお、キャップ本体4は、先にライナー5を成形し、その後、ナール、ブリッジ等を形成しても良い。また、先にナール,ブリッジを形成し、その後、ライナー5を成形しても良い。
【0031】
この後、図4に示すように、プリフォームとして、天板部2の周縁をライナー5と共に筒状周壁部3の垂下方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部2aを形成する(絞り加工工程)。すなわち、ライナー5を含めた状態でキャップ本体4の周縁を一定の角度で下方(上記垂下の方向)に絞り加工を加えて環状傾斜部2aを形成することにより、本実施形態のライナー付き金属キャップ1が作製される。このように、上記絞り加工により天板部2の周縁には予めプリフォームが施されて環状傾斜部2aが形成されると共に、ライナー5の外周部も同時に変形される。
【0032】
このときの絞り加工を加える環状傾斜部2aの寸法は、キャップ本体4と同心円とされ、キャッピングマシンのヘッドのボア径と同等か、より小さいことが重要である。また、この環状傾斜部2aの寸法は、ボトル本体(ねじ付き容器本体)の口部の内径と同等かやや大きいことが望ましい。なお、追加工(絞り加工)により絞る径がボア径より大きいと、キャッピング時に大きな力で肩絞りする必要がある。また、絞り加工の径が小さすぎると、キャッピング時に安定した形状が得られず、斜め絞りの原因になったりする。
なお、環状傾斜部2aは、プリフォームによる絞り径の内側から10°から90°の角度θの範囲内で傾斜して形成される。
【0033】
このライナー付き金属キャップ1をキャッピングする場合は、通常の方法で可能である。すなわち、図5及び図6に示すように、キャップ1をボトル本体(ねじ付き容器本体)6の口部7に被せた後、上から一定の荷重を加えながら、ローラー8により側方から筒状周壁部3を口部7の雄ねじ部7aに押しつけて、口部7の雄ねじ部7aに沿って筒状周壁部3に雌ねじ部3aを形成する。
【0034】
このとき、プレッシャーパッド10により天板部2を筒状周壁部3の垂下方向に押し付けると同時に、プレッシャーブロック9により天板部2の周壁に形成されている環状傾斜部2aを筒状周壁部3の垂下方向にさらに変形させて、図7に示すように、傾斜部2bとなるように肩絞りする。このように、キャッピング時のヘッドのプレッシャーブロック9が肩絞り状態でセットされている状態で、雌ねじ部3aの形成がなされることが重要である。なお、プリフォームされたキャップ1の絞り径dと肩絞り加工の絞り径Dとの関係は、D>dとなるように設定される。
【0035】
また、このキャッピング時のシーリングにより、ライナー5とボトル本体6の口部7との接する部分が非接着状態又は弱接着状態に接触して密封状態を確保している。
このように、キャップ1を口部7に装着して螺着状態にキャッピングすると共に環状傾斜部2aを筒状周壁部3の垂下方向にさらに変形させて肩絞り加工を施すことで、キャッピングとシーリングとを行っている(肩絞り加工工程)。
さらに、上記のねじ部成形及び肩絞り加工と共に、キャップ1の裾部3bをボトル本体6のかぶら部に巻きつけることにより、ロールオンキャッピングは完了する。
【0036】
このようにキャッピングされたキャップ付きボトル(ねじ付き容器)11は、図7に示すように、ボトル本体6の雄ねじ部7aが形成された口部7にライナー付き金属キャップ1を装着したボトルであって、上記ライナー付き金属キャップ1が口部7に装着されて螺着状態にキャッピングされていると共に環状傾斜部2aが筒状周壁部3の垂下方向にさらに肩絞り加工で変形されている。
【0037】
このように本実施形態では、先に内面にライナー5が形成された天板部2の周縁をライナー5と共に筒状周壁部3の垂下方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部2aを形成させているので、予め天板部2の周縁を肩絞りに近い状態にリング状に塑性加工して環状傾斜部2aを形成しておくことで、後のキャッピング工程で肩絞り加工を行っても肩絞りに要する力が極僅かで済み、キャッピングに要する全体の力が少なくて済む。
【0038】
すなわち、予め天板部2の周縁が、通常のキャップがキャッピングされる時に絞り変形が施される形状に近い形状に、予め加工されているため、上からの大きな荷重を加えることなく適正なシーリングができる。これにより低荷重でも適切な密封性が得られ、より材質の薄いボトル本体6を使用することができる。
【0039】
また、キャップ本体4とライナー5とを肩絞り加工の前に予め同時に絞り加工するので、より精度の高いライナー5の形成が可能になる。すなわち、キャップ本体4にライナー5が賦形された後、ライナー5とキャップ本体4とが同時に肩絞り加工されるため、キャップ1としては安定した形状のものが供給できる。
【0040】
したがって、キャッピング時のヘッド圧を低い状態にしても、十分な肩絞り状態が得られると共に正確にキャッピングすることができ、低荷重のキャッピングによっても良好な密封性が得られる。
なお、キャップ本体4の形状は、最初から肩絞り状態に変形されておらず、通常のインシェルモールド方式でライナー成形可能なので、従来の生産金型を使用することができる。
このように、シーリング時に上から加える荷重が非常に少なくて済み、キャッピングが安定してできるので、使用されるアルミニウム製のボトル本体6は今までのような強度を必要とせず、ボトル本体6のさらなる薄肉化が可能になる。
【0041】
次に、本発明に係るライナー付き金属キャップ及びその製造方法並びにキャップ付き容器及びその製造方法の第2実施形態について、図8を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0042】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、キャッピング時に同時に筒状周壁部3に雌ねじ部3aを形成するロールオンキャッピング方式を採用しているのに対し、第2実施形態のライナー付き金属キャップ21及びその製造方法では、図8に示すように、絞り加工工程後に、筒状周壁部3に、口部7の雄ねじ部7aに対応した雌ねじ部3aを予め成形(ねじ部成形工程)するプレスクリュー方式を採用している点である。
【0043】
すなわち、第2実施形態では、低荷重方式であるプレスクリュー方式として、天板部2の周縁を絞り状態に加工して環状傾斜部2aを形成した後、さらにネジ工程を施した状態のキャップ21を作製している。
この場合、キャップ21のPPバンド部である裾部3bは内側に巻き込まれておらず、キャッピング後、裾部3bがボトル缶顎部に沿って内側に巻き込まれることにより、PP機能を果たす状態になる。なお、このプレスクリュー型のキャップ21はロールオン方式ではなく、ねじ込みによってキャッピングする。然る後、裾部3bをロール等で内側に巻き込むことにより,PP(ピルファープルーフ)性を得ることができる。
【0044】
したがって、第2実施形態のキャップ21では、筒状周壁部3に、雄ねじ部7aに対応した雌ねじ部3aを予め成形しておくので、事前ねじ成形(プレスクリュー)が施されており、キャッピングと同時にねじ部を成形するロールオン方式に比べて、キャッピングをねじ込み方式で行うことで、さらに低いキャッピング圧でキャッピングすることができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,21…ライナー付き金属キャップ、2…天板部、2a…環状傾斜部、3…筒状周壁部、3a…雌ねじ部、4…キャップ本体、5…ライナー、6…ボトル本体(ねじ付き容器本体)、7…ボトル本体の口部、7a…雄ねじ部、11…キャップ付きボトル(キャップ付き容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記天板部の内面に成形されたライナーと、を備え、ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部に装着されて螺着状態にキャッピングされると共に前記天板部の周縁が前記垂下の方向に肩絞り加工により変形されて前記口部を密封状態に封じるライナー付き金属キャップであって、
前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を有していることを特徴とするライナー付き金属キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のライナー付き金属キャップにおいて、
前記筒状周壁部に、前記雄ねじ部に対応した雌ねじ部が成形されていることを特徴とするライナー付き金属キャップ。
【請求項3】
ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部にライナー付き金属キャップを装着したねじ付き容器であって、
請求項1又は2に記載のライナー付き金属キャップが前記口部に装着されて螺着状態にキャッピングされていると共に前記環状傾斜部が前記垂下の方向にさらに肩絞り加工で変形されていることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項4】
ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部に螺着されて該口部を密封状態に封じるライナー付き金属キャップの製造方法であって、
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体の前記天板部の内面にライナーを成形するライナー成形工程と、
該ライナー成形工程後に、前記天板部の周縁を前記ライナーと共に前記垂下の方向に変形加工させて傾斜させた環状傾斜部を形成する絞り加工工程と、を有していることを特徴とするライナー付き金属キャップの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のライナー付き金属キャップの製造方法において、
前記絞り加工工程後に、前記筒状周壁部に、前記雄ねじ部に対応した雌ねじ部を成形するねじ部成形工程を有していることを特徴とするライナー付き金属キャップの製造方法。
【請求項6】
ねじ付き容器本体の雄ねじ部が形成された口部にライナー付き金属キャップを装着したねじ付き容器を製造する方法であって、
請求項4又は5に記載のライナー付き金属キャップを前記口部に装着して螺着状態にキャッピングすると共に前記環状傾斜部を前記垂下の方向にさらに変形加工させる肩絞り加工工程と、を有していることを特徴とするキャップ付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−37497(P2011−37497A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187898(P2009−187898)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】