説明

ライノウイルスの新規中和性免疫原(NIMIV)およびワクチン応用のためのその利用

本発明は、ヒトライノウイルス感染症を予防または処置するための方法および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトライノウイルス感染症を予防または処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトライノウイルス(HRV)は、一般的な風邪に関する単独の最も重要な病原体を表す(Arruda et al., J. Clin. Microbiol. 35:2864-2868 (1997)(非特許文献1);Couch, "Rhinoviruses." In: Fields, B.N., Knipe, D. M. (Eds.), Virology. Raven Press, New York, 607-629 (1990)(非特許文献2);Turner, Antivir. Res. 49(1):1-14 (2001)(非特許文献3))。一般的な風邪の大発生の約3分の1を引き起こすHRVは、約100の血清型によって表され、それらに感染した患者の回復期の血清は、完全な交叉中和性ではない。HRVによって誘導される上気道疾患はしばしば軽度で、自己限定的であるが、仕事または学校を休むことによって引き起こされる社会経済的影響は膨大であり、不適切な抗生物質の使用の程度は有意である。上気道疾患は、米国において少なくとも2500万回の仕事を休む、および2300万回の学校を休む原因であると推定されている(Anzueto et al., Chest 123(5):1664-1672 (2003)(非特許文献4);Rotbart, Antivir. Res. 53:83-98 (2002)(非特許文献5))。
【0003】
HRV感染症とより重度の医学的合併症のあいだに関連があるという証拠が増えつつある。たとえば、HRVによる風邪は、急性の内耳炎および副鼻腔炎に対する重要な素因因子であり、成人および小児における喘息の悪化の誘導における主要な要因である。HRV感染症はまた、嚢胞性線維症、気管支炎、および他の基礎呼吸器障害を有する人における下気道症候群にも関連している(Gern, Pediatr. Infect. Dis. J. 23:S78-S86 (2004)(非特許文献6);Anzueto et al., Chest 123(5):1664-1672 (2003)(非特許文献7);Gern et al., Clin. Microbiol. Rev. 12(1):9-18 (1999)(非特許文献8);Pitkaranta et al., J. Clin. Microbiol. 35:1791-1793 (1997)(非特許文献9);Pitkaranta et al., Pediatrics 102:291-295 (1998)(非特許文献10);Rotbart, Antivir. Res. 53:83- 98 (2002)(非特許文献11))。
【0004】
今日まで、HRV感染症によって引き起こされた疾患の予防または処置のいずれに対しても有効な抗ウイルス治療は承認されていない。このため、HRV感染症を予防する、HRVによって誘発される病気の期間を短縮する、症状の重症度を弱める、二次的な細菌感染症および基礎疾患の悪化を最小限にする、ならびにウイルス伝播を低減させることが可能な物質を発見するために、対処されていない重要な医学的要求が存在する。予防的HRVワクチンは、HRV感染症の数およびその臨床的影響を低減させるために、広く多様な血清型に対して保護的でなければならない。
【0005】
構造タンパク質の保存された領域のみに対応する合成ペプチドに基づく(McCray et al., Nature 329:736-738 (1987)(非特許文献12))または生物学的融合体の一部として(Brown et al., Vaccine 9:595-601 (1991)(非特許文献13);Francis et al., Proc. Natl Acad. Sci U.S.A. 87:2545-2549 (1990)(非特許文献14))HRVワクチンを作製しようとする試みは、選ばれたペプチドの免疫原性が低いためにある程度の成功しか収めていないが、この低い免疫原性はウイルス表面上での曝露が少ないこと(抗体に対するアクセスが限定的)またはコンフォーメーションの制約により部分的に説明できる。
【0006】
本発明は、これらの制限を克服して、HRV感染症を予防および処置するために保護的血清型交叉反応性中和抗体応答を誘発するワクチンを特色とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Arruda et al., J. Clin. Microbiol. 35:2864-2868 (1997)
【非特許文献2】Couch, "Rhinoviruses." In: Fields, B.N., Knipe, D. M. (Eds.), Virology. Raven Press, New York, 607-629 (1990)
【非特許文献3】Turner, Antivir. Res. 49(1):1-14 (2001)
【非特許文献4】Anzueto et al., Chest 123(5):1664-1672 (2003)
【非特許文献5】Rotbart, Antivir. Res. 53:83-98 (2002)
【非特許文献6】Gern, Pediatr. Infect. Dis. J. 23:S78-S86 (2004)
【非特許文献7】Anzueto et al., Chest 123(5):1664-1672 (2003)
【非特許文献8】Gern et al., Clin. Microbiol. Rev. 12(1):9-18 (1999)
【非特許文献9】Pitkaranta et al., J. Clin. Microbiol. 35:1791-1793 (1997)
【非特許文献10】Pitkaranta et al., Pediatrics 102:291-295 (1998)
【非特許文献11】Rotbart, Antivir. Res. 53:83- 98 (2002)
【非特許文献12】McCray et al., Nature 329:736-738 (1987)
【非特許文献13】Brown et al., Vaccine 9:595-601 (1991)
【非特許文献14】Francis et al., Proc. Natl Acad. Sci U.S.A. 87:2545-2549 (1990)
【発明の概要】
【0008】
本発明は、単離されたライノウイルス中和性免疫原IV(NimIV)ペプチドを提供する。このペプチドは、ヒトライノウイルス(たとえば、HRV14)のような任意の血清型のライノウイルスに由来しうる。ペプチドには、たとえばヒトライノウイルスのウイルス構造タンパク質1(VP1)のカルボキシル末端領域のアミノ酸277〜283位(たとえば、アミノ酸275〜285位)が含まれうる。例示的な配列には以下が含まれる:

およびA-X1-X2-I-X3-X4-R-X5-B、式中X1=PまたはTであり;X2=V、K、またはIであり;X3=K、E、I、またはAであり;X4=KまたはRであり;X5=S、E、D、T、R、T、またはKであり;A=追加のアミノ酸0〜10個であり;およびB=追加のアミノ酸0〜10個である。
【0009】
本発明にはまた、NimIVペプチドまたはその相補体をコードする単離核酸分子が含まれる。さらに、本発明には本発明のペプチドおよび核酸分子が含まれるベクター(たとえば、HRV14ベクター)が含まれる。ベクターは、たとえばヒトライノウイルスベクター、たとえば、NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスの血清型とは異なる血清型のヒトライノウイルスベクターとなりうる。一例において、NimIVペプチドまたは核酸分子は、該ベクターに当初存在するNimIV配列の代わりに該ヒトライノウイルスベクターに存在する。他の例において、NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスは、ヒトライノウイルス6(HRV6)またはヒトライノウイルス72(HRV72)である。後者のペプチドは、たとえばヒトライノウイルス14(HRV14)ベクターに含まれてもよい。他の例において、ベクターのVP1タンパク質または核酸分子は、NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスのVP1タンパク質または核酸に置換される。さらなる例において、ベクターには、それに対してNimIVペプチドがクロスリンクする不活化ヒトライノウイルス、またはそれに対してNimIV配列が融合するB型肝炎コア配列が含まれる(たとえば、Fiers et al., Virus Res. 103:173-176, 2004;WO 2005/055957;米国特許出願第2003/0138769 Al号;米国特許出願第2004/0146524A1号;米国特許出願第2007/0036826 Al号を参照されたい)。
【0010】
本発明にはさらに、本明細書に記述のペプチド、核酸分子、およびベクターが含まれる薬学的組成物が含まれる。任意で、薬学的組成物にはまた、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、および/またはアジュバントの一つまたは複数が含まれる。例示的なアジュバントには、キチン微粒子およびアルミニウム化合物が含まれる。さらに、組成物には、任意で一つまたは複数の付加的なヒトライノウイルス中和性免疫原が含まれうる。
【0011】
対象におけるライノウイルスに対して免疫応答を誘導する方法も同様に本発明に含まれる。これらの方法は、単離されたNimIVペプチドまたは核酸分子を対象に投与する段階を伴う。いくつかの例において、対象はライノウイルス感染症を発症していないが発症のリスクを有する。他の例において、対象はライノウイルス感染症にかかっている。
【0012】
定義
「投与」または「投与する」とは、哺乳動物(たとえば、ヒト)に本発明の組成物の用量を与える方法を意味し、方法は、たとえば鼻腔内、局所塗布、全身、吸入、経口、静脈内、皮下、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内、点鼻、直腸内、強膜内(intrascleral)、点眼、眼内、または筋肉内である。好ましい投与法は、様々な要因、たとえば薬学的組成物の成分、可能性があるまたは実際の疾患の部位(たとえば、処置される腫瘍または血管状態の位置)、および疾患の重症度に応じて変化しうる。
【0013】
「ヒトライノウイルス」(HRV)は、ピコルナウイ科ライノウイルス属の任意のメンバーを意味する。HRVは、そのおよそ100個が存在することが知られている血清型によって分類することができる。たとえば、HRV14、HRV6、HRV37、およびHRV92はそれぞれ、血清型番号14、6、37、および92のヒトライノウイルスを指す。
【0014】
「薬学的に許容される担体」は、それと共に投与される化合物の予防的または治療特性を保持しながら、処置哺乳動物に生理的に許容される担体を意味する。一つの例示的な薬学的に許容される担体は、生理食塩液である。他の生理的に許容される担体およびその製剤は当業者に公知であり、その例は、たとえば参照により本明細書に組み入れられる、Remington 's Pharmaceutical Sciences, (18th edition), ed. A. Gennaro, 1990, Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて記述される。
【0015】
「中和性免疫原」(Nim)は、ヒトに導入された場合に、抗HRV中和抗体を誘発するヒトライノウイルス(HRV)配列を意味する。本明細書において記述される組み換え型HRVワクチンの場合、NimIV血清型は、Nimの起源を特異的に記述するために上つき文字で示される(たとえば、NimIVHRV6はHRV6血清型に由来するNimIV配列を指す)。
【0016】
「中和性免疫原IVペプチド」または「NimIVペプチド」は、ライノウイルス構造タンパク質1(VP1)のカルボキシル末端領域(たとえば、参照としてHRV14(NTEPVIKKRKGDIKSY)を用いた場合、アミノ酸274〜289位、図12B参照)からの配列を有するペプチドである。NimIVペプチドには、以下に記述されるように、明記された配列、付加的な隣接配列、またはコアの保存された配列のみが含まれうる。さらに、ペプチドは非改変であってもよく、このように天然に存在するNimIV配列と同一であってもよく、またはペプチドの免疫原性が実質的に維持される限り、一つもしくは複数の置換、欠失、挿入、または他の改変(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の置換、欠失、または挿入)が含まれてもよい。さらに、NimIVペプチドはLもしくはDアミノ酸、またはその混合物を含んでもよい。
【0017】
本発明において用いることができるNimIVペプチド配列の例を以下に記述する。ペプチドは、たとえば長さがアミノ酸5〜30、8〜25、10〜20、14〜19、15〜18、または16〜17個となりうる。ペプチドには、コアNimIV配列が含まれてもよく、任意で付加的なNimIV配列またはリンカー配列(たとえば、アミノおよび/またはカルボキシル末端終末上でのアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)に隣接されてもよい。コアNimIV配列の例には、

と共に、これらの配列と整列する他のHRV配列が含まれる(たとえば、図11を参照されたい)。コア配列は、たとえばA-X1-X2-I-X3-X4-R-X5-Bによって定義されてもよく、式中X1=PまたはTであり;X2=V、K、またはIであり;X3=K、E、I、またはAであり;X4=KまたはRであり;X5=S、E、D、T、R、T、またはKであり;A=追加のアミノ酸0〜10個であり;およびB=追加のアミノ酸0〜10個である。Aおよび/またはBの配列は、天然に存在するNimIV/VP1配列、人工配列(たとえば、リンカー配列)、またはその混合物となりうる。
【0018】
「中和性免疫原IV核酸分子」、または「NimIV核酸分子」は、本明細書において定義されるNimIVペプチドまたはその相補体をコードする核酸分子である。
【0019】
NimIVペプチドまたは核酸分子は、それが天然に存在するウイルスにおいて近接している隣接配列を含まない場合、「単離されている」。そのようなペプチドまたは核酸分子は、たとえばVP1の完全長の配列、VP1のカルボキシル末端半分、VP1のカルボキシル末端の4分の1、またはVP1のカルボキシル末端のアミノ酸15〜30個、または核酸配列の対応する領域によって限定されてもよい(たとえば、Laine et al., J. Gen. Virol. 87: 129-138, 2006を参照されたい)。
【0020】
NimIVペプチドは、天然に存在する配列、人工的な配列(たとえば、リンカー)、またはその組み合わせであってもよい、アミノおよび/またはカルボキシル末端終末上でおそらく必要最低限(たとえば、アミノ酸1〜10個、2〜9個、3〜8個、4〜7個、または5〜6個)の隣接配列と共にその配列のみが含まれる場合、明記された配列「から本質的になる」。そのような配列は、より大きい配列(たとえば、異種ウイルスまたは他のベクター配列)の状況において存在しうる。
【0021】
NimIV核酸分子は、天然に存在する配列、人工的な配列(たとえば、リンカー)、またはその組み合わせであってもよい、5'および/または3'末端上でおそらく必要最低限(たとえば、ヌクレオチド3〜30個、6〜27個、9〜24個、12〜21個、または15〜18個)の隣接配列と共にその配列のみが含まれる場合、明記された配列「から本質的になる」。そのような配列はより大きい配列(たとえば、異種ウイルスまたは他のベクター配列)の状況において存在しうる。
【0022】
本発明の他の特色および長所は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】CR6ゲノムの構造領域のダイアグラム(下のパネル)、ならびにHRV6およびHRV14のNimIV配列のアミノ酸アラインメント(上のパネル)である。
【図2】図2Aおよび2Bは、モルモットポリクローナル抗体抗HRV14(図2A)および抗HRV6(図2B)による、CR6(HRV6配列であるNimIV配列を例外として、HRV14配列が含まれるキメラ;同様に本明細書においてCR6と呼ばれる;それぞれの対の右側の棒グラフ(緑色))およびHRV14(それぞれの対の左側の棒グラフ(茶色))のプラーク減少中和アッセイの結果を示すグラフである。20K、40K、60K、80Kはそれぞれ、抗体2×104、4×104、6×104、および8×104の力価に対応する。上(緑色)および下(茶色)の破線はそれぞれ、HRV14およびHRV6のプラーク数の50%低減を示す。
【図3】図3A〜3Dは、HRV14およびCR6の三次元モデルである。図3Aおよび3Bは、Chimeraソフトウェア(http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/)を用いて公知の結晶構造(Che et al., J. Virol. 72:4610-4622 (1998))に基づいて設計されたHRV14ウイルス粒子の3Dモデルである。VP1、Vp2、およびVP2をそれぞれ、暗青色、紫紅色、および灰色で示す。HRV14粒子は空間充填モデルとして示され、Nimは、そのファンデルワールス表面上に色分けされる。緑色、青色、および紫紅色の網目模様の表面はそれぞれ、NimIII、NimIV、およびNimIIを描写する。NimIVとNimIIIとの接触を、K287を通して提供されるように示す。このモデルにおいてNimIは、暗緑色によって示されるNimI特異的Fab17によって覆われていることに注意されたい。図3Cおよび3Dは、 Accelrys Discovery Studio vl .5.1(Accelrys Software, Inc.)を用いて調製された3Dモデルである。図3C−HRV14粒子のNimI、NimII、NimIII、およびNimIVの空間充填モデル。Nimのアミノ酸残基をファンデルワールス固体表面によって描写する。陽性および陰性荷電表面をそれぞれ、青色および赤色で示す。図3D−HRV14およびCR6ウイルスの空間充填モデルの比較(NimIIIおよびNimIVのみを示す)。CR6の構造を公知の結晶構造(上記参照)およびタンパク質配列CR6に関する情報(図1を参照されたい)に基づいて予測した。注意:HRV14のNimIVからの陽性荷電K287がNimIIIの陰性荷電に密接に接触しているが、CR6ではK287T置換によりこの接触がない。
【図4】マウス抗HRV37、抗HRV92、および抗HRV6血清によるCR6の中和の結果を示す。図4Aは、HRV14、HRV37、HRV6、およびHRV92に関するNimIVのアラインメントである。HRV14鋳型に従ってアミノ酸を番号付けする(下)。同一の領域を四角(青色)で示す。図4Bは、対応する精製ウイルスに対して生成された抗HRV37、抗HRV92、および抗HRV6マウス抗体による、HRV14(それぞれの対の左側の棒グラフ;茶色)およびCR6(それぞれの対の右側の棒グラフ;緑色)のプラーク減少中和試験(PRNT)試験の結果を示す一連のグラフである。50%中和力価を、グラフ上の破線または対応するグラフの真下の写真の枠で囲んだパネルにおいて数値(50%NUT)で示す。
【図5】NimIVHRV6およびNimIVHRV14特異的合成ペプチドに基づく実験データを示す。図5Aは、モルモット抗HRV14(GP14)および抗HRV6(GP6)ポリクローナル抗体によって検出された、KLH-連結ペプチドH6(NimIVHRV6)およびH14(NimIVHRV14)のウェスタンブロットである。図5Bは、同じ抗体によって検出された遊離のH6およびH14ペプチドのウェスタンブロットである:レーン(1)−タンパク質重量マーカー、レーン(2)−H6-KLH(A)またはH6(B)、レーン(3)−H14-KLH(A)またはH14(B)。図5Cは、GP6およびGP14によるH6およびH14のELISA分析の結果を示すグラフである。
【図6】マウス抗HRV14-NimIVHRV6血清によるHRV14およびHRV6のプラーク減少中和試験(PRNT)試験の結果を示すグラフである。これらのデータは、HRV14カプシドのバックグラウンドにおけるNimIVHRV6の免疫優性を示す。
【図7】HRV14およびCR6のプラーク減少中和試験(PRNT)試験の結果を示すグラフであり、NimIIIモノクローナル抗体(Mab5)によるCR6の中和は、HRV14より約10倍弱かったことを示す。
【図8】HRV14およびCR6のプラーク減少中和試験(PRNT)試験の結果を示すグラフであり、NimIIモノクローナル抗体(Mab16)によるCR6の中和は、HRV14より約5倍強かったことを示す。
【図9】HRV14およびCR6のプラーク減少中和試験(PRNT)試験の結果を示すグラフであり、NimIモノクローナル抗体(Mab17)によるCR6の中和は、HRV14より約1.5倍弱かったことを示す。
【図10】NimIVがNimI、NimII、およびNimIII(50%中和力価)に影響を及ぼすことを示す表である。
【図11】NimIIIおよびNimIV配列のアラインメントと共に、HRV構造タンパク質におけるこれらの配列の位置を示す。
【図12】図12Aは、CR6およびCR72キメラのVP1配列のアラインメントである。図12Bは、HRV6、HRV72、およびHRV14のNimIVのアラインメントと共に、HRVゲノムの概略図である。
【図13】NimIVがドナー血清型の中和特徴をキメラ組み換え体に付与することを示す1対のグラフである。図13Aは、GP72抗体によるCR72(白い棒グラフ)およびHRV14(黒い棒グラフ)の中和力価を示す。図13Bは、GP6抗体によるCR6(白い棒グラフ)およびHRV14(黒い棒グラフ)の中和力価を示す。注意:GP6およびGP72はそれぞれ、HRV6およびHRV72に対するモルモットポリクローナル抗体(ATCC)である。
【図14】HRV14骨格の他のNim(HRV14、CR6、およびCR72(中和)に対するNimI、II、III Mab)におけるNimIV置換の効果を示す表である。
【図15】HRV14、HRV6、HRV72、CR6、およびCR72に対する抗CR6および抗CR72マウス抗血清の50%中和力価を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
一般的に、本発明は、ヒトライノウイルス(HRV)の新規免疫原性座およびHRV感染症を予防または処置するためのワクチンにおけるその使用に関する。本発明は、ワクチンとして用いることができる新規HRV中和性免疫原(Nim)NimIVを本発明者らが発見したことに基づく。以下に記述されるこのワクチンは、いくつかの態様を含む。これらには、異種NimIV抗原、合成NimIVペプチドを、単独で、またはウイルス、タンパク質、もしくは化学的に連結した担体の状況で、および生物学的担体の状況で血清型が多様なNimIVペプチドの生物学的または化学的融合体の混合物を表示する一つまたは多数の組み換え型HRVが含まれる。広いアレイのHRV血清型に対してNimIV特異的免疫応答を誘発するそのようなHRVワクチンは、HRV感染症の予防的および治療的処置の双方にとって有用である。NimIV抗原、NimIVが含まれるワクチン組成物、およびそのような組成物を用いる方法を、以下に詳しく記述する。
【0025】
中和性免疫原IV(NimIV)
ライノウイルス(HRV)の三つの主要な表面中和性免疫原(NimI、NimII、およびNimIII)は、非常に特異的な中和性免疫応答を誘発する。Nim特異的抗体は、細胞受容体(ICAM-1)に対するウイルスの付着を遮断する。本発明は、構造タンパク質VP1のC-末端でアミノ酸約17〜25個の配列の枝を包含し、分子進化実験において同定された新規Nim(NimIV)の発見に基づく。本発明者らは、NimIVが異なるHRV血清型のあいだで交換可能であることを証明する。たとえば、ドナー血清型HRV(たとえば、HRV6またはHRV72)のNimIVがもう一つの血清型宿主ウイルス(たとえば、HRV14)に導入される場合、これは得られたキメラ組み換え体にドナー血清型の中和特徴を付与して、宿主ウイルスの中和特徴を有意に変化させる。組み換え型HRVワクチンにNimIVを組み入れることによって、広いアレイのHRV血清型に対して向けられる血清型交叉反応性免疫応答が得られるであろう。
【0026】
キメラNimIV抗原を利用する組み換え型HRVワクチン
理想的なHRVワクチンの一つの特徴は、HRV感染症のリスクを有する人を広範囲のHRV血清型から保護できることである。本発明のワクチンは、ヒトにおいて疾患を引き起こす多数のHRV血清型(たとえば、大多数、またはより理想的には全てのHRV血清型)に対する保護的および治療的免疫応答を誘発できることを特色とする。これは、ワクチンにおいて多数のNimIV配列を用いることによって成就することができ、これは、たとえばドナー血清型からのNimIV抗原を小さい群の宿主血清型HRVに付加することを伴いうる。以下に示すように、移入されたNimIV抗原は、血清型特異的である強い中和抗体応答を誘発する。キメラまたは組み換え型ワクチンの状況において、第一の血清型NimIV抗原を第二の血清型宿主HRVと組み合わせると、双方のHRV血清型に対する中和抗体を誘発して、このようにNimIV座でキメラではないワクチンと比較して、保護または治療利益が広くなる。たとえば、HRV14のNimIVHRV14(すなわち、HRV血清型14におけるNimIV抗原)を、NimIVHRV6に交換すると、HRVワクチンCR6が得られる(以下に詳術する)。このワクチンは、HRV14およびHRV6血清型の双方に対する中和抗体の生成を誘導する。もう一つの例において、HRV14のNimIVHRV14をNimIVHRV72に交換すると、HRVワクチンCR72を生じる(以下に詳述する)。このワクチンは、HRV14およびHRV72血清型の双方に対する中和抗体を生成する。このように構築された、多数のドナー血清型NimIV抗原と限られた数の宿主血清型HRVの組み合わせとを含む組み換え型HRVの混合物は、HRV感染症の予防または処置のための理想的なワクチンを表す。
【0027】
NimIVペプチド
本発明の第二の態様は、NimIV遺伝子座のアミノ酸配列に対応する合成または天然に由来するNimIVペプチドを用いることである。そのようなペプチドの例は本明細書において他所で提供される(たとえば、発明の概要および実験的実施例を参照されたい)。広範囲のHRV血清型からプールされたペプチドの混合物の投与は、HRV感染症の予防または処置のために広い保護的中和抗体応答を誘発する。NimIVペプチドの混合物の投与は、単独で、または薬学的に許容されるアジュバントもしくは免疫系の刺激剤と共に起こりうる(下記参照)。
【0028】
NimIV融合分子
本発明のもう一つの局面は、HRVワクチンとして用いられる、生物学的担体に対するNimIV抗原の化学または生物学的融合である。この状況において、一つまたは多数の血清型に由来するNimIVペプチドは、NimIVペプチドの分解半減期、組織透過性および特異性、検出、または免疫原性を改善するために、適した生物学的担体(たとえば、B型肝炎コア抗原)に結合させる。多くのHRV血清型に由来するそのようなNimIV融合分子の混合物を用いて、HRV感染症を予防または処置するためにヒトをワクチン接種する。他の例において、NimIVペプチド(多くの異なる血清型に由来してもよい)をHRV担体にクロスリンクさせる。
【0029】
投与および用量
本発明はまた、本明細書において記述されるように、一つまたは複数のヒトライノウイルスワクチンの予防的または治療的有効量が含まれる組成物を提供する。HRVワクチンの混合物は、同じ薬学的組成物(一つの用量型)で存在してもよく、または同時もしくは異なる時期に投与される異なる薬学的組成物(異なる用量型)で存在してもよい。組成物は、多様な薬物送達系において用いるために製剤化することができる。一つまたは複数の生理的に許容される賦形剤または担体もまた、適当な製剤の組成物に含めることができる。ウイルスは凍結乾燥型となりえて、または生理食塩液もしくは水のような、生理的に適合性の溶液もしくは緩衝液に溶解することができる。標準的な調製および製剤化法は、たとえばRemington 's Pharmaceutical Sciences (18th edition), ed. A. Gennaro, 1990, Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて記述されるように用いることができる。
【0030】
組成物は、予防的および/または治療的処置のための鼻腔内、非経口、局所塗布、経口、または局所投与のために意図される。典型的に、組成物は、鼻腔内(たとえば、エアロゾル吸入または点鼻液)、非経口(たとえば、筋肉内、皮下、または静脈内注射)、経口での摂取によって、または局所適用もしくは関節内注射によって投与される。付加的な投与経路には、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内と共に、点眼、強膜内、眼窩内、直腸内、または局所塗布投与が含まれる。デポー注射または腐食性のインプラントもしくは成分のような手段による徐放性投与もまた、本発明において具体的に含まれる。このように、本発明は、容認される担体、好ましくは水溶性担体、たとえば水、緩衝液、生理食塩液、PBS糖に溶解または懸濁した上記の物質が含まれる粘膜または非経口投与のための組成物を提供する。組成物は、生理的条件を近似するために必要な、pH調節剤および緩衝剤、等張性調節剤、湿潤剤、洗浄剤等のような、薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。本発明はまた、錠剤、カプセル剤等を製剤化するための結合剤または増量剤のような不活性成分を含有してもよい経口送達のための組成物を提供する。さらに、本発明は、クリーム、軟膏等を製剤化するために溶媒または乳化剤のような不活性成分を含有してもよい、局所投与のための組成物を提供する。
【0031】
これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌してもよく、または濾過滅菌してもよい。得られた水溶液は、そのまま用いるために、または凍結乾燥して包装されてもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水性担体と混合される。調製物のpHは典型的に3〜11のあいだ、たとえば5〜9、6〜8、または7〜7.5のような7〜8であろう。得られた固体剤形の組成物は、それぞれが錠剤またはカプセル剤の密封包装のような、上記の物質または複数の物質の固定量を含有する、多数の1回投与単位で包装されてもよい。組成物にはまた、投与のために溶解される凍結乾燥型での活性成分が含まれうる。
【0032】
ワクチンの有効量を含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。予防的応用において、組成物はHRV感染症に対する感受性が増加した対象(たとえば、ヒト対象)に投与することができる。本発明の組成物は、臨床または臨床下疾患の発症を遅らせる、低減させる、または予防するために十分な量で被験者(たとえば、ヒト)に投与されるであろう。治療応用において、組成物は、疾患およびその合併症の症状を治癒または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で、HRV感染症に既に罹っている患者(たとえば、ヒト)に投与される。この目的を成就するために適当な量は、「治療的有効量」として定義される。適切な投与量および療法の決定は、当業者によって容易に決定されうる。この使用のために有効な量は、疾患または状態の重症度、ならびに患者の体重および全身状態に依存する可能性があるが、一般的に患者あたりの用量あたり物質または複数の物質は、約0.5 mg〜約3000 mgの範囲である。ワクチンは、1回限り、またはプライミング/追加免疫養生法で投与することができる。初回投与および追加免疫投与のための適した養生法は、初回投与の後にその後の投与を1回またはそれより多く毎時間、毎日、毎週、または毎月の間隔で反復量を投与することが典型的である。本発明の組成物に存在する物質の総有効量を、1回量として、またはボーラスもしくは比較的短期間での注入として哺乳動物に投与することができ、または多数回の投与がより持続的な期間で投与される(たとえば、4〜6、8〜12、14〜16、もしくは18〜24時間、または2〜4日、1〜2週間毎、1ヶ月に1回投与)分画処置プロトコールを用いて投与することができる。
【0033】
本発明の組成物に存在し、哺乳動物(たとえば、ヒト)に適用される本発明の方法において用いられる一つまたは複数の物質の治療的有効量は、哺乳動物の年齢、体重、免疫系の完全性、および状態の個々の差を検討して当業者によって決定されうる。本発明の物質は、対象(たとえば、ヒト、マウス、家畜(たとえば、畜牛、ヒツジ、またはブタ)、家庭内ペット(たとえば、ネコまたはイヌ)のような哺乳動物)に、処置された対象において望ましい結果(たとえば、感受性がある個体におけるHRV感染症の予防、または感染個体における症状の減弱化)を生じる量である有効量で投与される。そのような治療的有効量は、当業者によって経験的に決定されうる。
【0034】
本発明のワクチンは、他のワクチン接種アプローチと共に、処置に対する他のアプローチ(たとえば低分子に基づくアプローチ)と併用して用いることができる。たとえば、ワクチンは、同じまたは異なる抗原が含まれる他の組み換え型ワクチンと併用して投与することができる。本発明の併用法には、本発明のワクチンを他の型の抗原と同時投与することが含まれる。または、本発明のワクチンは、本発明のワクチンまたは他のアプローチのいずれかをプライミング剤として用いた後、追加免疫として他のアプローチを用いる、またはその逆であるプライミング-追加免疫戦略において、他のアプローチ(サブユニットまたはHBcアプローチのような(HBc-M2e;Fiers et al., Virus Res. 103:173-176, 2004;WO 2005/055957;米国特許出願第2003/0138769 Al号;米国特許出願第2004/0146524A1号;米国特許出願第2007/0036826 Al号))と併用して用いることができる。さらに、本発明には、本発明のワクチンをプライミング剤および追加免疫剤の双方として利用するプライミング-追加免疫戦略が含まれる。
【0035】
本発明のワクチンは、標準的な方法を用いて哺乳動物(たとえば、ヒト対象)のような対象に投与することができる。鼻腔内投与の場合、ベクターは点鼻液の剤形で、またはエアロゾル化もしくは噴霧化製剤の吸入によって投与することができる。
【0036】
本発明のベクターは、ヒトのような対象に生ワクチンまたは死菌ワクチンとして投与することができる。生ワクチンは、当業者に公知の方法を用いて鼻腔内投与することができる(たとえば、Grunberg et al., Am. J. Respir. Crit. Car. Med. 156:609-616, 1997を参照されたい)。適切な用量および養生法は、当業者によって容易に決定されうる。一例として、用量範囲は、たとえば103〜108 pfu/用量となりうる。ワクチンは、都合よくは1回用量で投与することができるが、当業者にとって必要であると決定されれば、追加免疫も同様に行うことができる。不活化ワクチンに関して、ウイルスは、たとえばホルマリンまたはUV処置によって死滅させることができ、任意で適切なアジュバント(たとえば、キチンまたは変異体LT;上記を参照されたい)と共に約108 pfu/用量で鼻腔内に投与することができる。そのようなアプローチにおいて、1回より多く(たとえば、2〜3回)の用量を投与することが都合がよい可能性がある。
【0037】
本発明のワクチンに含まれるペプチドまたはタンパク質の大きさは、当業者によって適切であると決定されうるように、長さがたとえばアミノ酸3〜1000個、たとえばアミノ酸5〜500、10〜100、20〜55、25〜45、または35〜40個の範囲となりうる。このように、長さがアミノ酸7〜25、12〜22、および15〜20個の範囲のペプチドを本発明において用いることができる。さらに、本明細書において記載されるペプチドには付加的な配列が含まれうる、または同様に当業者に適切であると決定されうるように長さを低減させることができる。本明細書において記載されるペプチドは、本明細書において示されるように本発明のベクターに存在することができ、またはたとえば一つもしくは複数のアミノ酸(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれより多いアミノ酸)の置換もしくは欠失によって改変することができる。さらに、ペプチドは、より大きいペプチドの状況でワクチンに存在することができる。任意で、上記のおよび本明細書において他所で記述されるペプチドには、そのような配列がペプチド配列と天然に会合する(すなわち、ペプチドがインフルエンザウイルスゲノムに近接している配列)か否か(たとえば、合成リンカー配列)によらず、アミノおよび/またはカルボキシル末端終末に付加的な配列が含まれる。このように、ペプチドには、片側または双方の末端でたとえば1〜25、2〜20、3〜15、4〜10、または4〜8個のアミノ酸配列が含まれうる。特異的例として、ペプチドにはアミノおよび/またはカルボキシル末端終末で1〜3個のリンカー配列が含まれてもよい。
【0038】
アジュバント
ワクチン応用に関して、任意で、当業者に公知であるアジュバントを用いることができる。アジュバントは、投与経路に基づいて選択される。鼻腔内投与の場合、キチン微粒子(CMP)を用いることができる(Asahi-Ozaki et al., Microbes and Infection 8:2706-2714, 2006;Ozdemir et al., Clinical and Experimental Allergy 36:960-968, 2006;Strong et al., Clinical and Experimental Allergy 32:1794-1800, 2002)。粘膜経路(たとえば、鼻腔内または経口経路)による投与において用いるために適している他のアジュバントには、大腸菌の熱不安定毒素(LT)またはその変異誘導体が含まれる。不活化ウイルスの場合、たとえばアルミニウム化合物(たとえば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、またはヒドロキシリン酸アルミニウム化合物)、リポソーム製剤、(たとえば、QS21)、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピッドA、もしくはポリホスファジンのような合成アジュバントが含まれる非経口アジュバントを用いることができる。さらに、アジュバント活性を有するサイトカインをコードする遺伝子をベクターに挿入することができる。このように、GM-CSF、IL-2、IL-12、IL-13、またはIL-5のようなサイトカインをコードする遺伝子を異物抗原遺伝子と共に挿入して、それによって免疫応答が増強したワクチンを産生することができる、または細胞性、液性、もしくは粘膜応答に対してより特異的に向けられる免疫を調節することができる。または、サイトカインは、周知である手段(たとえば、直接接種、裸のDNA、ウイルスベクターにおいて等)によって組み換え型ワクチンウイルスとは個別に、同時にまたは連続的に送達することができる。
【0039】
実験例
NimIVの同定
本発明者らは、ウイルス構造タンパク質1(VP1)のC-末端の、長さがアミノ酸17〜25個の非保存配列を包含する中和性免疫原NimIVを発見した。このエピトープは、HRV血清型のあいだで交換することができる。置換される場合、NimIVは、異種HRVにその中和特徴を付与する。NimIVに対応する合成ペプチドは、ELISAおよびウェスタンブロット実験においてウイルス特異的抗体によって認識されることが示された。
【0040】
二つの可変キメラHRV14-NimIVHRV6(CR6)およびHRV14-NimIVHRV72(CR72)を、以下に記述されるように行われた分子進化実験(VP1遺伝子シャッフリング)の際に単離した。図12Aにおいて表されるアラインメントにおいて示されるように、CR6およびCR72のVP1配列には、CR6およびCR72においてそれぞれNimIVHRV14のNimIVHRV6およびNimIVHRV72への置換と共にいくつかの個々のアミノ酸置換が含まれた。NimIVのアラインメント(図12B)は、全てのNimIVウイルスが保存的な中心ドメイン(PVIKKRK/E)を含有するが、隣接領域は可変であることを示した。興味深いことに、279位および282位のアミノ酸は、全てのHRV血清型(RM2506)において十分に保存されているか、または類似であることが示された。CR6およびCR72キメラは、ポリクローナルモルモット抗体GP6およびGP72(ATCC)によって強く中和されることが示されたが、これらの抗体はいずれも骨格ウイルス(HRV14;図13)を中和しなかった。HRV6またはHRV72に由来するマウスポリクローナル抗体も同様に、CR6およびCR72におけるNimIV決定基が表面に曝露されて、中和抗体が結合するために都合のよいコンフォメーションで存在することによって証明されるように、GP6またはGP72より10倍低い力価でCR6およびCR72を中和することが示された。キメラにおけるこれらのエピトープのコンフォメーションは、最もおそらく、野生型ウイルスのコンフォメーションに対応する。
【0041】
NimIV置換の単離法としてのDNAシャッフリング
NimIVの発見は、VP1のC-末端部分のアミノ酸18個の、HRV6の対応するアミノ酸17個の領域への置換を保有するHRVキメラCR6の生成後に可能となった(図1を参照されたい)。この配列は、DNAシャッフリング(方法の論評に関しては、Patten et al., "Applications of DNA shuffling to pharmaceuticals and vaccines," Curr Opin Biotechnol 8:724-733 (1997)を参照されたく;使用例には、Zhang et al., "Broadly cross-reactive mimotope of hypervariable region 1 of hepatitis C virus derived from DNA shuffling and screened by phage display library," J Med Virol 71 :511-517 (2003), Castle, et al., "Discovery and directed evolution of a glyphosate tolerance gene," Science 304:1151-1154(2004), Pekrun et al., "Evolution of a human immunodeficiency virus type 1 variant with enhanced replication in pig-tailed macaque cells by DNA shuffling," J Virol 76:2924-2935 (2002), Toth et al., "Improvement of the movement and host range properties of a plant virus vector through DNA shuffling," Plant J 30:593-600 (2002), Kaper et al., "DNA family shuffling of hyperthermostable beta-glycosidases," Biochem J 368:461-470 (2002). Wang et al., "Directed evolution of substrate- optimized GroEL/S chaperonins," Cell 111 : 1027-1039 (2002), and Hurt et al., "Highly specific zinc finger proteins obtained by directed domain shuffling and cell- based selection," Proc Natl Acad Sci U.S.A 100:12271-12276 (2003)が含まれる)の後に、この断片をHRV14感染性クローンに再度クローニングすることによって得られた。およそ100個のVP1配列がDNAシャッフリング実験に含まれた(Ledford et al., "VPl sequencing of all human rhinovirus serotypes: insights into genus phylogeny and susceptibility to antiviral capsid-binding compounds," J Virol 78:3663-3674 (2004))。
【0042】
CR6はGP6およびGP14の双方によって中和される
CR6キメラの中和特異性は、親HRV14ベクター(pWR3.26感染性クローン)とは異なることが示された。HRV14特異的ポリクローナルモルモットAbs(GP14;図2A)によって検出された中和のほかに、本発明者らは、モルモットHRV6-特異的抗体によるCR6の中和を発見したが(GP6;図2B)、親HRV14は、GP6によって中和されない(図2)。このことは、HRV6のC-末端ドメインが免疫原性であって中和性であることを示している。
【0043】
CR6は、NimIおよびNimIIによって強く中和されるが、NimIII特異的mAbによって中和されない
HRV14バックグラウンドにNimIVHRV6(CR6)が存在することによって、他のNim(HRV14)のNAが変化する。NimHRV14特異的mAbによるPRNTにより、CR6のNimIII特異的中和が減少するが(〜10倍;図7)、NimII特異的NAは増加し(5倍;図8);NimI特異的中和はごくわずかに影響を受ける(1.5倍;図9および16)ことが明らかとなった。これらの知見を図10に要約する。
【0044】
骨格Nimの中和能に及ぼすNimIVHRV6およびHRV72の効果
骨格Nimの中和特徴に及ぼすNimIV置換の効果を調べるために、CR6およびCR72に対するHRV14 Nim特異的マウスモノクローナル抗体のパネルを用いた(図14)。双方のキメラのNimIの中和能は、たとえ影響を受けたとしてもごくわずかであったが、CR6のNimIIおよびNimIIIはそれぞれ、5倍高く、10倍低い中和率を証明した。対照的に、CR72のNimIII依存的中和は影響を受けなかった。残念なことに、NimII特異的抗体によるCR72の中和は、抗体供給が限られたために試験しなかった。これらのデータは、NimIVとNimIIIドメインとのあいだの強い相互作用を証明し、このことは結晶学およびこれまでに得られた変異誘発データと一致する。
【0045】
CR6およびHRV14内でのNimIVと他のNimとの相互作用のモデリング
これらの結果は、CR6のコンフォメーション完全性にとってNimIV HRV6が重要であることを証明する。公知の結晶構造に基づいて3Dモデリングを行い(Che et al., "Antibody-mediated neutralization of human rhinovirus 14 explored by means of cryoelectron microscopy and X-ray crystallography of virus-Fab complexes," J Virol 72:4610-4622 (1998))、HRV14におけるNimIIIとNimIVとの密な接触が明らかとなったが、CR6粒子では明らかではなかった(図3B、D)。HRV14におけるこの接触は、NimIIIの陰性荷電残基と相互作用することを通して、VP1のK287の陽性荷電に関連した(図3B、D)。CR6において、T287に変異すると、この接続は廃止された(図3D)。興味深いことに、NimIII特異的中和に及ぼすK287での変異の負の効果はこれまでに報告されたが(Sherry et al., "Use of monoclonal antibodies to identify four neutralization immunogens on a common cold picornavirus, human rhinovirus," J Virol 57:246-257 1986))、著者らは、その領域に対して特異的なモノクローナル抗体による中和に対するエスケープ変異体が存在しないことにより、VP1のC-末端領域は中和性免疫原(Nim)ではないと主張した。CR6におけるNimIVHRV6はNimI特異的中和にごくわずかに影響を及ぼしたが、これはこのエピトープがNimIVからより離れていることによって部分的に説明することができるであろう(図3C)。
【0046】
CR6の独自の特徴は、NimII特異的中和に対するその5倍高い感受性である(図14)。この増強は、NimIVHRV6とNimIIHRV14との直接の物理的接触では説明できないであろう。3Dモデリングにより、ウイルス粒子においてこれらのNimが離れて位置することが明らかとなった(図3A〜C)。最もおそらく、この現象は、VP2におけるコンフォメーション変化によって説明できるが、これによって、おそらくウイルス粒子の表面上でNimIIのモノクローナル抗体結合曝露に対してより好都合となった。
【0047】
CR6の交叉中和プロフィール
100個全ての血清型のNimIVとNimIVHRV6のアラインメントにより、その二つの最も近いマッチが同定された:HRV37およびHRV92のC-末端終末(図4Aを参照されたい)。分析により。NimIVにおいて三つの領域が存在することが明らかとなった:アミノ酸6個からなる保存的(コア)領域(P-V-I-K-K-R)およびコアから上流および下流の二つの領域。コアはまた、近縁のウイルス7個(HRV14、HRV72、HRV83、HRV86、HRV35、HRV79、およびHRV3;図11を参照されたい)のNimIVにおいても検出された。100個全てのHRV血清型においてR282が保存されることが見いだされたことは注目に値する。図4Aにおいて示されるように、NimIVHRV6およびNimIVHRV37の下流の領域のアミノ酸6個はほぼ同一であるが(D/E-N-I-T-T-Y)、HRV92の対応する配列はそれらとは全く異なる(S-L-I-T-N-Y)。NimIVHRV6およびNimIVHRV92の上流の領域は同一のアミノ酸2個を有するが、NimIVHRV37の対応する領域は、NimIVHRV6との明らかな類似性を露出しない。NimIVにおけるこの差は、エピトープの一部がCR6ウイルスの中和にとって重要であることを査定する機会を提供した。このことを試験するために、本発明者らは、三つ全ての血清型に対するマウス回復期血清を生成して、それらをCR6の中和に関して試験した(図4B)。NimIVHRV6およびNimIVHRV37の下流の領域における広い相同性にもかかわらず、抗HRV37血清は中和を明らかにせず、中和にとって下流の領域が重要でないことを確認した。逆に、抗HRV92血清は、抗HRV6よりごくわずかに減少したNAを証明した。これらの三つの血清試料はいずれもHRV14を中和することができなかった。これらの結果は、NimIVの機能的解体を表し、コアおよび下流の領域に対して上流の交叉中和活性がより高い証拠を提供する。マウス抗体によるこれらのウイルスの異なる認識が、NimIV特異的配列とのその真の相互作用を反映するかという疑問に答えるために、本発明者らはNimIVHRV14およびNimIVHRV6特異的ペプチドを合成して、同じ抗体の組によってウェスタンおよびELISAアッセイを行った。
【0048】
NimIV特異的ペプチドGP14およびGP6の免疫反応性は血清型特異的ペプチドを識別する
GP6およびGP14は、ウェスタンブロット(図5A〜5B)およびELISA(図5C)アッセイにおいて特異的に相同なNimIV特異的ペプチドを認識する。図5Aおよび5Bはそれぞれ、KLH-結合材料および遊離のペプチドによるウェスタンブロットの結果を表す。KLHの分子量が高いこと(〜3×105 kDa)により、図5Aにおけるタンパク質バンドは、薄く広がっているように見える。所定のペプチドの免疫反応性は、ペプチド/抗体の異種組み合わせ(GP6/NimIVHRV14またはGP14/NimIVHRV6)によってシグナルが検出されないことから、非常に特異的である。KLH結合材料における異種組み合わせのシグナルの軌跡は、KLHの特色に帰因する。これらの結果は、GP6およびGP14をそれぞれ生成するために用いられたHRV6およびHRV14精製試料の表面上でのNimIVエピトープの直線性および高い特異性に関する証拠である。これらのペプチドのあいだのいかなる明らかな交叉反応性も、これらのNimのコア部分の低い免疫原性に関する証拠とはならなかった。この声明が真実でないならば、高い交叉免疫反応性がこの実験において認められるはずである。
【0049】
GP6およびGP14によるこれらのペプチドの認識の高い特異性はまた、ELISAによっても確認されている(図5C)。H14とGP14、H6とGP6の低い反応性は、ウイルス粒子の表面上でのNimIVエピトープ表示の差を示すことができるであろう。これらの結果は、図2において記載されるPRNTデータと逆である。いずれの実験においても、HRV14とHRV6またはそのNimIV特異的ペプチドのあいだに明らかな交叉反応性は同定されなかった。
【0050】
インビボ試験:抗CR6血清はHRV6を中和する
11〜12週齢の雌性Blb/cマウスを、アジュバント(水酸化アルミニウム)と混合したウイルス浮遊液(105 pfu/ml)または擬似液(希釈剤)100μlのいずれかによって腹腔内に3回(1、14、および28日目)免疫した。マウスを49日目に最終的に採血した。血清抗体レベルに関して試験するために、接種前(ベースライン)、および免疫後30〜40日目に、イソフルオラン吸入麻酔下で後眼窩経路によって、または麻酔なしで下顎経路によって(容量は7.7μl/g体重に過ぎない)採血した。PRNTアッセイは、マウス2匹からの血清プールによってHRV6が特異的に中和されることを証明した(図6)。アッセイは、HRV14ウイルスの中和の減少も同様に示し、これはCR6におけるNimIVHRV6が免疫優性エピトープであるという証拠を提供する。
【0051】
方法
ペプチドおよび共役体
HRV6(CKNIVPVIKKRENITTY)、HRV14(CNTEPVIKKRKGDIKSY)、およびHRV72(CNPKPVIKKREGDIKTY)の構造領域のC-末端終末にそれぞれ対応するオリゴペプチドNimIVHRV6、NimIVHRV72、およびNimIVHRV14を、Biosynthesis, Inc(Lewisville, TX)によって標準的な固相合成によって調製した。ペプチド材料の一部を、クロスリンク剤であるスクシニミジル-4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレン(sMBS)および還元剤TCEP・HCl トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP HCL)を用いることによって、コンコレパス・コンコレパス(Concholepas concholepas)(KLH)からのヘモシアニンに共役させた。
【0052】
細胞培養、ウイルス成長、および試薬
HRV血清型6、14、35、37、72、83、86、92の保存液(ATCC)を標的H1 HeLa細胞の連続感染によって高い力価まで増幅した。HeLa細胞(ATCC)は、ルーチンでの成長のために、5%ウシ胎児血清(JRH Biosciences, KS)を有する最小基本培地(Invitrogen)において維持した。細胞を継代のあいだコンフルエント下生育条件で維持した。34℃で48時間後、ウイルスは、-80℃および37℃での3回の凍結融解サイクルによって細胞から放出された。細胞の破片を捨てて、増幅されたウイルスを含有する上清をアリコートにして、-80℃で凍結した。HRV血清型6、14、72、92、および37のモルモット抗血清は、ATCCから得た。
【0053】
VP1遺伝子シャッフリングウイルスライブラリ
VP1のDNA断片をHRV血清型6、14、35、37、72、79、83、86、および92のRNAからRT-PCRによって増幅した。さらなるクローニング目的のために、血清型83、86、92のVP1遺伝子において提示される内部AvrII部位を、組み換えPCRのために除去する。PCR断片を全て共にプールしてシャッフルした後、改変HRV14 cDNAベクターpWR3.26(ATCC)においてクローニングを行った。簡単に説明すると、プールしたPCR断片2μgをDNアーゼI(Amersham Pharmacia Biotech, Inc)によって処置して、50〜100 bpのDNA断片の分画をゲル精製して、プライマーを用いずに94℃で30秒、50℃で1分、72℃で1分のPCR 15〜25サイクルの後に、クローニングプライマーを用いて94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間のPCR 25サイクルに供した。増幅されたシャッフルVP1配列のライブラリを、XhoIおよびAvrII部位で改変pWR3.26プラスミドにクローニングする。その目的に関してHRV14 cDNAクローンpWR3.26を、VP1配列の5'部位でXhoI部位を挿入することによって改変する(図12)。XhoIおよびAvrII部位は、VP1フォワードおよびリバースクローニングプライマーにそれぞれ組み入れられる。
【0054】
VP1シャッフリングプラスミドDNAライブラリを、MluI消化によって直線状にして、T7転写キット(Epicentere, Inc)によってインビトロで転写する。lipofectine(Invitrogen, Inc)によってRNAをH1-HeLa細胞(ATCC)にトランスフェクトする。34℃で2〜4日間インキュベートした後に細胞を回収する。細胞試料を3回の凍結融解サイクルに供して、上清を用いてH1-HeLa細胞の単層に感染させる。ウイルスライブラリは-80℃で保存する。
【0055】
HRV14-NimIV組み換え型ウイルスの単離
HRV14-NimIVHRV6(CR6)キメラを、上記のウイルスライブラリからプラーク精製する。他のHRV14-NimIVHRVX組み換え体を単離するために、ウイルスライブラリからの総RNAを、VP1遺伝子の3'-末端にアニールした血清型特異的リバースプライマー8個によって行った異なるRT-PCR反応8回の鋳型として用いる。VP1遺伝子の上流の保存領域と相補的な同じフォワードプライマーをこれらの反応の全てにおいて用いた。得られたPCR断片を、VP1シャッフリング体に関して先に記述したようにpWR3.26プラスミドに再度クローニングする。転写およびH1 HeLa細胞にトランスフェクション後、個々のウイルスをプラーク精製してシークエンシングする。
【0056】
動物プロトコール
8週齢のBalb/cマウス(1群10匹)を0日目にプライミングした後、容積500μlにおいてアジュバント(水酸化アルミニウム)100μgと混合した、〜1.0×106 pfu/用量の(1)HRV14-NimIVHRV6、(2)HRV14-NimIVHRV72、(3)親HRV14、または陰性対照としての擬似液(培養上清)のいずれかを含有する濾過した細胞培養培地の腹腔内投与によって、14および28日目に追加免疫する。
【0057】
KLHペプチドに共役させた(またはさせない)NimIVHRV6およびNimIVHRV6を8週齢の雌性Balb.cマウスの免疫のために用いる。マウスを、Titermax GoldにおけるKLH-結合ペプチド15μgの100μl(1:1乳剤)の皮下経路によって0日目にプライミングして、PBS 100μlに溶解した「遊離の」ペプチド15μgの腹腔内投与によって2回(36および49日目)追加免疫する。
【0058】
血清中のNimIV特異的抗体力価を、対応する合成NimIVペプチドをコーティングしたマイクロタイタープレートにおいて行う確立されたELISAによって決定する。
【0059】
プラーク減少中和試験(PRNT)
調べたHRVおよそ50 pfu(完全なMEM+5%FBS培養培地)を、全量300μlにおいて試料血清の様々な希釈液と共に混合して、4℃で終夜インキュベートする。それぞれの混合物100μlを用いて12ウェル組織培養プレートにおいてH1 HeLa細胞1ウェルに感染させる(6×105個H1-HeLa細胞/ウェルで播種して、37℃インキュベーターにおいて終夜インキュベートする)。34℃で1時間インキュベートした後、細胞に、Pen/Strepと共に10%FBSを有するMEMにおける0.4%アガロース1 mlを重層して、34℃でおよそ3日間インキュベートする。次に単層をホルムアルデヒド(3.7%最終濃度)によって固定して、70%メタノールにおける1%クリスタルバイオレットによって染色する。
【0060】
ELISA
96ウェルプレートを5μg/ml NimIV特異的ペプチドまたは精製HRV14ウイルスによって4℃で終夜コーティングする。プレートを異なる希釈の抗血清と共に37℃で1時間インキュベートした後、1:1000ヤギ抗マウスIgG-AP共役体(Southern Biotech, Inc)と共に37℃で1時間インキュベートする。プレートを、販売元(Sigma, Inc)によって記述されるとおりにアルカリホスファターゼ基質において展開する。
【0061】
ウェスタンブロット
ペプチド20μgを、短時間の電気泳動の後10%トリス-グリシンSDSゲル(Novex, Invitrogen, Inc)にローディングして、ペプチドをニトロセルロースメンブレン(Bio-Rad, Inc)に転写する。メンブレンに対する非特異的結合は、ブロッキング溶液(PBS/0.05%Tweenにおける5%脱脂乳)においてメンブレンを室温で1時間浸漬することによって達成される。メンブレンを、ブロッキング溶液において1:1000倍のモルモット抗HRV6または抗HRV14ポリクローナル抗体(ATCC)と共に4℃で終夜インキュベートする。PBS/0.05%Tweenにおいて15分間の洗浄を3回行った後、メンブレンをブロッキング溶液においてヤギ抗マウスIgG-AP共役抗体(Southern Biotech)と共に室温で1時間インキュベートする。メンブレンをAP基質(Sigma SIGMA FAST(商標)BCIP/NBT)において10分間展開した。
【0062】
他の態様
本明細書において言及した全ての出版物、特許出願および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0063】
本発明の記述の方法およびシステムの様々な改変および変更が、当業者に明らかとなるであろうが、それらも本発明の範囲および趣旨に含まれる。本発明は、特異的な望ましい態様に関連して記述してきたが、特許請求に記載の発明は、そのような特異的態様に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。実際に、医学、薬学、または関連領域の分野における当業者にとって明白である本発明を実行するための記述の様式の様々な改変は、本発明の範囲に含まれると意図される。本明細書における「一つ」および「その」のような単数形の使用は、文脈上逆の意味を示す場合を除き、対応する複数形を示すことを除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたライノウイルス中和免疫原IV(NimIV)ペプチド。
【請求項2】
ヒトライノウイルス14(HRV14)NimIVペプチドである、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ヒトライノウイルスのウイルス構造タンパク質1(VP1)のカルボキシル末端領域のアミノ酸277〜283位を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
ヒトライノウイルスのVP1のカルボキシル末端領域のアミノ酸275〜285位を含む、請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
ペプチドの配列が

ならびにA-X1-X2-I-X3-X4-R-X5-Bからなる群より選択される配列を含み、式中X1=PまたはTであり;X2=V、K、またはIであり;X3=K、E、I、またはAであり;X4=KまたはRであり;X5=S、E、D、T、R、T、またはKであり;A=追加のアミノ酸0〜10個であり;およびB=追加のアミノ酸0〜10個である、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
NimIVペプチドまたはその相補体をコードする単離された核酸分子。
【請求項7】
単離されたNimIVペプチドまたは核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
ヒトライノウイルスベクターである、請求項7記載のベクター。
【請求項9】
NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスの血清型とは異なる血清型のベクターである、請求項8記載のベクター。
【請求項10】
NimIVペプチドまたは核酸分子が、ベクターに当初存在するNimIV配列の代わりにヒトライノウイルスベクターに存在する、請求項9記載のベクター。
【請求項11】
ヒトライノウイルス14(HRV14)ベクターである、請求項8記載のベクター。
【請求項12】
NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスがヒトライノウイルス6(HRV6)またはヒトライノウイルス72(HRV72)である、請求項7記載のベクター。
【請求項13】
ヒトライノウイルスベクターがヒトライノウイルス14(HRV14)ベクターであり、NimIVペプチドが由来する該ヒトライノウイルスがヒトライノウイルス6(HRV6)またはヒトライノウイルス72(HRV72)である、請求項8記載のベクター。
【請求項14】
前記ベクターのVP1タンパク質または核酸分子が、NimIVペプチドが由来するヒトライノウイルスのVP1タンパク質または核酸によって置換されている、請求項10記載のベクター。
【請求項15】
NimIVペプチドがクロスリンクしている不活化ヒトライノウイルスを含む、請求項7記載のベクター。
【請求項16】
NimIV配列が融合しているB型肝炎コア配列を含む、請求項7記載のベクター。
【請求項17】
請求項1記載のペプチドまたは請求項6記載の核酸分子を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
ペプチドがベクター内に含まれる、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントの一つまたは複数をさらに含む、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項20】
アジュバントがキチン微粒子およびアルミニウム化合物からなる群より選択される、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
一つまたは複数の付加的なヒトライノウイルス中和性免疫原をさらに含む、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項22】
単離されたNimIVペプチドまたは核酸分子を対象に投与する段階を含む、対象におけるライノウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項23】
対象がライノウイルス感染症にかかっていないが、発症のリスクを有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
対象がライノウイルス感染症にかかっている、請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−504759(P2010−504759A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530456(P2009−530456)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/021053
【国際公開番号】WO2008/057158
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】