説明

ライフプラン対応自由区画システム住宅

【課題】単位住居エリア内を複数の個別住居エリアに区画する隔壁の設置および除去を可能として高い設計自由度を得ながらも、十分な遮音性を得ることを可能とするシステム住宅を提供すること。
【解決手段】単位住居エリア内の居住空間を互いに独立した住居機能を有した複数の個別住居エリアOH1,OH2に分割する隔壁を設置可能なシステム住宅であって、隔壁は、両個別住居エリアOH1,OH2の境界で床下空間FSに設置された床下区画構造体200を備え、床下区画構造体200は、両個別住居エリアOH2,OH2間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を備えているとともに、その上端部には、防音区画構造を有した隔壁可動部と、個別住居エリアの床板701に連続して設けられて居住空間側から床下区画構造体200を隠す床部見切材250と、を選択的に接続可能な接続部240を備えていることを特徴とするシステム住宅とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の1つの単位住居エリアを必要に応じて2以上の個別住居エリアに分割する隔壁を設置可能としたシステム住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
住居では、長期間暮らす場合、住人にとって、必要とする住居内の生活空間容量が年月と共に変化するのが一般的である。例えば、世帯を持った直後の夫婦二人の時点では、生活空間容量として、例えば、所謂2DK程度で充分である。その後、子供が生まれるなどして家族数が増えると、新たに1室または2室が必要となる。さらに、子供が独立して、住居から出て家族数が減れば、必要な生活空間容量は減るし、逆に、子供が結婚して同居すれば、必要な生活空間容量がさらに増える。
【0003】
そこで、住居では、上述のような住人の必要な生活空間容量の変化に対応して、改築、増築が行われる場合がある。このような改築、増築などに伴い、壁パネルの交換を容易としたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
上述のような改築、増築は、1戸建ての住居では一般的であるが、いわゆるマンションと呼ばれる集合住宅では難しかったが、本願出願人は、1つの単位住居エリアを、必要に応じ、複数の個別住居エリアに分割したり、元の1つの単位住居エリアに戻したりすることが可能なシステム住宅を発明した(特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2に記載の技術では、1つの単位住居エリアを2つの個別住居エリアに区画する隔壁を設け、この隔壁に、個別住居エリアを連通および閉鎖可能なドアを設けている。したがって、このドアを開閉可能としたときには、隔壁で区画された2つの個別住居エリアを行き来可能として1つの単位住居エリアとして使用可能であり、また、ドアを開閉不可能な閉塞状態としたときには、1つの単位住居エリアを2つの個別住居エリアに分割して使用できる。なお、各個別住居エリアは、それぞれ、外部に出入りする出入口を備えるとともに、台所などの機能も独立して備えている。
【0006】
また、一戸建ての建物において、居室を区画する間仕切り壁の設置および除去を容易とする技術として、特許文献3に記載された技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−322861号公報
【特許文献2】特許第3771501号公報
【特許文献3】特開2000−144989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献2に記載の技術は、単位住居エリアに暮らす住人の必要な生活空間容量の変化に対応して、単位住居エリアを複数の個別住居エリアに分割可能な優れた技術であるが、個別住居エリアを区画する隔壁が固定でドアを介してのみ個別住居エリアを連通可能な構造であった。このため、1つの単位住居エリアを複数の個別住居エリアに分割した状態から全体を単位住居エリアとする非分割状態に変更する場合、隔壁により間取りの変更自由度が制限されていた。
【0009】
また、上述の特許文献1に記載の技術にあっても、壁パネルを取り替えて室内の雰囲気は変更できるが、間取りの変更はできず、設計自由度は限られている。
【0010】
また、特許文献3に記載された技術は、間仕切り壁の設置および除去が容易であり、間取りの変更は可能であるが、間仕切り壁は、梁にハンガを介して吊り下げた構造であり、個別住居エリアを区画する隔壁として用いるには、遮音性などが不十分であった。
【0011】
本発明は、上述の従来の問題点に着目して成されたもので、単位住居エリア内を複数の個別住居エリアに区画する隔壁の設置および除去を可能として高い設計自由度を得ながらも、十分な遮音性を得ることを可能とするシステム住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために本発明は、建物の1フロアに少なくとも1つの単位住居エリアを有し、この単位住居エリア内の居住空間を互いに独立した住居機能を有した複数の個別住居エリアに分割する隔壁を設置可能なシステム住宅であって、前記単位住居エリアの床は、床基盤と床板との間に床下空間が介在された二重床構造とされ、前記隔壁は、前記個別住居エリアの境界で前記床下空間に設置された床下区画構造体を備え、この床下区画構造体は、前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を備えているとともに、その上端部には、前記隔壁の一部を構成し前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を有した隔壁可動部と、前記個別住居エリアの前記床板に連続して設けられて前記居住空間側から前記床下区画構造体を隠す床部化粧材と、を選択的に接続可能な接続部を備えていることを特徴とするシステム住宅とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシステム住宅では、住人の必要な生活空間容量の変化に応じ、床下区画構造体に隔壁可動部を接続して隔壁設置状態として、単位住居エリアを複数の個別住居エリアに分割したり、床下区画構造体の接続部に床部化粧材を接続して隔壁非設置状態として、単位住居エリアを複数の個別住居エリアに分割しない状態としたりすることができる。
【0014】
このように、単位住居エリアの分割状態と非分割状態とでは、隔壁が設置されたり非設置状態としたりできるため、隔壁による間取りの変更自由度の制限が緩和され、高い設計自由度を得ることができる。
しかも、隔壁を形成する床下区画構造体および隔壁可動部は、それぞれ、防音区画構造により各個別住居エリアを区画しているため、高い遮音性を得ることができる。特に、床下区画構造体は、二重床構造の床下空間を区画しているため、音が床下空間を伝達されるのを抑制し、床上のみの防音区画と比較して高い遮音性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1のシステム住宅Aの構造を説明する平面図であって、非分割状態を示している。
【図2】実施例1のシステム住宅Aの構造を説明する平面図であって、分割状態を示している。
【図3】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110に隣接して設置した床下区画構造体200を示す断面図であって、図1のS3−S3線における断面を示している。
【図4】前記床下区画構造体200の剛性保持体210を示す斜視図である。
【図5】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110に隣接して設置した天井区画構造体300を示すであって、図1のS3−S3線における断面を示している。
【図6】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110に隣接して設置した側部区画構造体400a,400bを示す断面図である。
【図7】前記床下区画構造体200に隔壁可動部500を接続した状態を示す断面図であって、図2のS7−S7線における断面を示している。
【図8】前記天井区画構造体300に隔壁可動部500を接続した状態を示す断面図であって、図2のS7−S7線における断面を示している。
【図9】前記側部区画構造体400a,400bに隔壁可動部500を接続した状態を示す断面図である。
【図10】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110の位置に設置した隔壁可動部500の壁ユニット60およびこれに接続状態の床下区画構造体200を示す断面図であって、図2のS10−S10線における断面を示している。
【図11】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110の位置に設置した隔壁可動部500の壁ユニット60およびこれに接続状態の天井区画構造体300を示す断面図であって、図2のS10−S10線における断面を示している。
【図12】実施例1のシステム住宅Aにおける隔壁100の第1可動部設置用開口部110の位置に設置した隔壁可動部500の壁ユニット60およびこれに接続状態の側部区画構造体400bを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に、図面に基づいて、この発明の実施の形態の実施例1のシステム住宅Aについて説明する。
図1および図2は実施例1のシステム住宅Aの構造を説明する平面図である。なお、実施例1のシステム住宅Aは、多層集合住宅のフロアの1区画に本発明を適用した場合を示しているが、単層集合住宅であっても同様である。
単位住居エリアHUは、一対の平行に対向した外壁11,12と、両外壁11,12に直交して外壁11,12に結合された住居区画壁13,14とに囲まれて矩形の居住空間が形成されたエリアである。なお、外壁11は、共用廊下21に面し、外壁12の外にはバルコニー22が設けられ、住居区画壁13,14は、他の単位住居エリアHU2,HU3と区画している。
【0018】
また、単位住居エリアHUは、住居区画壁13,14と平行な隔壁100を備えている。本実施例1のシステム住宅Aは、ライフサイクルに応じ、図1に示すように、隔壁100を単位住居エリアHUの一部のみに設け、1つの単位住居エリアHUの全域を1つの個別住居エリアOHとした非分割状態と、図2に示すように、隔壁100を外壁11,12の間の全長に亘って設け、1つの単位住居エリアHUの全体を図において左右に区画して2つの個別住居エリアOH1,OH2に分割した分割状態とに形態を変更することを可能としている。なお、2つの個別住居エリアOH1,OH2は、符号OH1を付したエリアを第1個別住居エリアと称し、符号OH2を付したエリアを第2個別住居エリアと称する。
【0019】
以下に、図1および図2に基づいて、単位住居エリアHUおよび両個別住居エリアOH1,OH2について説明する。
【0020】
この単位住居エリアHUは、図1に示すようにその全域を1つの個別住居エリアOHとした非分割状態では、第1居室R1、第2居室R2、第3居室R3、リビングダイニングスペースLD、第1台所スペースDK1、第1ユニットバスUB1、第1洗面スペースLT1、第1トイレTT1、第2ユニットバスUB2、第2トイレTT2を備えている。
【0021】
図示のように、第1居室R1は、外壁11、住居区画壁13、間仕切壁31,32、建具41に囲まれている。第2居室R2は、外壁12、住居区画壁13、間仕切壁33、隔壁100および建具42,43に囲まれている。第3居室R3は、外壁12、住居区画壁14、隔壁100、建具44,45に囲まれている。また、第1出入口DR1と第1台所スペースDK1との間には、ドアDR4が設けられている。
【0022】
なお、符号WICはウォークインクロゼット、CL1,CL2はクロゼット、MBはメータボックス、ST1〜ST3は収納部、「洗」は洗濯機スペースを示している。
【0023】
一方、隔壁100により、図2に示すように単位住居エリアHUを第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とに分割した状態では、リビングダイニングスペースLDに、キッチンK2を備え、隔壁100と第2ユニットバスUB2とに挟まれた第2台所スペースDK2が形成され、間取りが変更される。
【0024】
さらに、外壁11には、隔壁100を挟んで第1出入口DR1および第2出入口DR2が設けられている。
したがって、単位住居エリアHUの分割状態では、第1個別住居エリアOH1は、第1居室R1、第2居室R2、第1台所スペースDK1、第1ユニットバスUB1および第1出入口DR1を備え、独立した住居機能を有するとともに、独立して出入可能となっている。
また、第2個別住居エリアOH2は、第3居室R3、第2台所スペースDK2、第2ユニットバスUB2、第2出入口DR2などを備え、独立した住居機能を有するとともに、独立して出入可能となっている。
【0025】
なお、図1に示す非分割状態では、第2出入口DR2は、出入口として使用不可能な閉塞状態で固定され、玄関スペースET2を利用した収納部ST3が設置される。
【0026】
上述のように図2に示す隔壁100は、独立した住居機能を有する第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とに区画することから、住居区画壁13,14と同様に、防音区画構造および耐火区画構造を有しており、以下に、その構造の詳細について説明する。
【0027】
隔壁100は、建物に固定された後述する床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400b,400cと、設置および除去可能な第1隔壁可動部500および第2隔壁可動部600を備えている。
【0028】
第1隔壁可動部500と第2隔壁可動部600とは、第1可動部設置用開口部110と第2可動部設置用開口部120とに、それぞれ設置されている。第1可動部設置用開口部110は、第2台所スペースDK2が形成される位置に開口されており、第2可動部設置用開口部120は、第3居室R3が形成された位置に開口されている。そして、本実施例1では、第1可動部設置用開口部110に第1隔壁可動部500を設置しない状態で、図1に示すように、単位住居エリアHUの全域を個別住居エリアOHとして使用できる非分割状態とし、一方、第1可動部設置用開口部110に第1隔壁可動部500を設置した状態で、図2に示すように、単位住居エリアHUを、両個別住居エリアOH1、OH2に区画した分割状態とする。
【0029】
一方、第2可動部設置用開口部120には、本実施例1では、分割状態および非分割状態の両状態で第2隔壁可動部600が設置されて、第3居室R3を第2居室R2および第1台所スペースDK1に対して区画している。
【0030】
以下、構成の詳細を説明する。
まず、建物に固定された床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400b,400cについて順に説明する。
【0031】
図3に示すように、床下区画構造体200が設けられている床FL1,FL2は、床基盤BSと床板701との間に床下空間FSを介在させた二重床構造となっている。また、床板701は、床基盤BSの上に立設した複数の支柱702で格子状に配置したシステム根太703を支持し、この複数のシステム根太703で床板701を支持した構造となっている。そして、隔壁100の設置位置では、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2との境界に沿って床FL1と床FL2との間に、隔壁100の厚さに相当する寸法の空間OPが設けられ、この空間OPの床下部分に床下区画構造体200が設けられている。
【0032】
この床下区画構造体200は、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とを区画する防音区画構造および耐火区画構造を有しており、以下、その詳細を説明する。
床下区画構造体200は、剛性保持体210、板材組220、束根太230を備えている。
剛性保持体210は、床下区画構造体200の幅方向(図3において左右方向)の中央に配置され、図4に示す金属製のC型チャンネル材の横枠材210aと縦枠材210bとを溶接あるいは締結により梯子状に結合させたもので、図示を省略したアンカ材により床基盤BSに固定されている。なお、横枠材210aどうしは、開口を対向させており、また、縦枠材210bも、水平方向に離間したものどうしで開口を対向させて、背中合わせに当接させている。
【0033】
また、図3および図4に示すように、剛性保持体210の枠内には、吸音・断熱材210cが充填されている。この吸音・断熱材210cとして、本実施例1では、グラスウールを用いているが、これに限定されず、ロックウールや発泡ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームなどを用いることができる。
【0034】
さらに、図3に示すように、剛性保持体210の幅方向両側に、一対の板材組220,220が設けられている。各板材組220は、遮音および耐火機能を有した一対の板材である第1板材221および第2板材222を板厚方向に重ねて形成されている。
第1板材221として、本実施例1では、強化石膏ボードを使用している。この強化石膏ボードは、石膏の芯にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化したボードであり、大型高層建築物で、建築基準法に定められた防火区画を構成する耐火壁構造(耐火1時間)に用いられるものを使用している。
第2板材222として、本実施例1では、一般的な石膏ボードよりも高強度の高強度石膏ボードを用いている。
各板材組220は、それぞれ、剛性保持体210の幅方向両側を覆って設置されており、さらに、第1板材221の下端面と床基盤BSとの間に、遮音シール材220aと気密シール材220bとが並設して介在されているとともに、第2板材222の下端面と床基盤BSとの間に、気密シール材としての接着材220cが充填されている。
【0035】
また、剛性保持体210の幅方向両側に一対の束根太230が設けられている。この束根太230は、剛性保持体210と同様の枠状に形成されて、床基盤BSに固定されている。
【0036】
以上のように、床下区画構造体200では、吸音・断熱材210cおよび一対の遮音性および耐火性を備えた板材組220,220と、板材組220,220と床基盤BSとの間に介在された遮音シール材220a、気密シール材220b、接着材220cとにより、両個別住居エリアOH1,OH2の床下空間FSを区画しており、これにより、防音区画構造および耐火区画構造が構成されている。
【0037】
また、上述した剛性保持体210の上端面と、板材組220の上端面と、束根太230の上端面とは、床FL1,FL2の表面とシステム根太703の上面との間の高さで、同一高さに配置されて接続部240を形成している。
この接続部240は、床部見切材(床部化粧材)250と第1隔壁可動部500とのいずれかを選択的に接続するものである。すなわち、単位住居エリアHUの非分割状態では、図3に示すように接続部240に床部見切材250を接続し、床部見切材250が両個別住居エリアOH1,OH2の境界に形成された床FL1,FL2の間の空間OPを塞いで床下区画構造体200を隠すとともに、床FL1と床FL2とを繋いでいる。
【0038】
一方、単位住居エリアHUの分割状態では、図7に示すように、接続部240に接続した第1隔壁可動部500が、両個別住居エリアOH1,OH2を区画している。
【0039】
次に、図5に示す天井区画構造体300について説明する。
天井区画構造体300は、床下区画構造体200と同様に、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とを区画する防音区画構造および耐火区画構造を有しており、剛性保持体310、板材組320、接続部340を備えている。
【0040】
剛性保持体310は、床下区画構造体200の剛性保持体210と同様に、C型チャンネルを梯子状に組んで形成され、天井CEに図示を省略したアンカにより固定されている。そして、剛性保持体310の枠内に、吸音・断熱材(本実施例1では、グラスウール)310cが充填されている。
【0041】
板材組320は、剛性保持体310の幅方向の両側に当接して設けられており、この板材組320は、床下区画構造体200の板材組220に用いたのと同様の第1板材321と第2板材322とを重ねて形成されている。
【0042】
また、第1板材321の上面と天井CEとの間に、遮音シール材320aと気密シール材320bとが並設して介在されているとともに、第2板材322の上面と天井CEとの間に、気密シール材としての接着材320cが充填されている。
【0043】
以上のように、天井区画構造体300でも、両個別住居エリアOH1、OH2の境界に沿って両個別住居エリアOH1,OH2を区画して設けられた吸音・断熱材310cおよび一対の板材組320,320と、板材組320,320と天井CEとの間に介在された遮音シール材320a、気密シール材320b、接着材320cとにより、防音区画構造および耐火区画構造が構成されている。
【0044】
また、上述した天井区画構造体300の剛性保持体310の下端端面と板材組320の下端面とは、同一高さに配置され、第1隔壁可動部500と天井部化粧材350とを選択的に接続する接続部340を形成している。
単位住居エリアHUの非分割状態では、図5に示すように接続部340に接続した天井部化粧材350が、天井区画構造体300の内部および下端面を覆い隠している。
【0045】
一方、単位住居エリアHUの分割状態では、図8に示すように、接続部340に接続した第1隔壁可動部500が、両個別住居エリアOH1,OH2を区画する。
【0046】
次に、図6に示す側部区画構造体400a,400bおよび、図6では図示を省略した側部区画構造体400cについて説明する。なお、側部区画構造体400cは、側部区画構造体400a,400bと同様の構成となっている。
図1、図2に示すように、側部区画構造体400aは、隔壁100において外壁11に連続して形成され、側部区画構造体400bは、第3居室R3と第1台所スペースDK1とリビングダイニングスペースLDとの境界部分に配置されている。
【0047】
各側部区画構造体400a,400b,400cは、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とを区画する防音区画構造および耐火区画構造を有している。その構造は、天井区画構造体300と同様の構成であり、図6に示すように、吸音・断熱材(本実施例1では、グラスウール)411が充填された剛性保持体410の幅方向両側に板材組420,420を接合して形成されている。なお、外壁11は、室内側面が断熱材11aと石膏ボード11bとで覆われている。
【0048】
剛性保持体410は、C型チャンネルを格子状あるいは梯子状に組んで形成されている。そして、側部区画構造体400aの剛性保持体410は、床下区画構造体200、外壁11、天井CEに図示を省略したアンカにより固定されている。また、側部区画構造体400bの剛性保持体410は、床下区画構造体200および天井CEに図示を省略したアンカにより固定されている。また、側部区画構造体400cの剛性保持体410は、床下区画構造体200、外壁12、天井CEに図示を省略したアンカにより固定されている。
【0049】
板材組420は、床下区画構造体200の板材組220に用いたのと同様の第1板材421と第2板材422とを重ねて形成されている。そして、側部区画構造体400aでは、第1板材421の側端面と外壁11との間に、遮音シール材420aと気密シール材420bとが並設して介在されているとともに、第2板材422の側端面と外壁11との間に、気密シール材としての接着材420cが充填されている。なお、図示は省略するが、遮音シール材420a、気密シール材420bは、第1板材421の上端面および下端面と、天井CEおよび床下区画構造体200との間に、接着材420cは、第2板材422の上端面および下端面と、天井CEおよび床下区画構造体200との間にも、介在されている。
【0050】
また、側部区画構造体400bにあっても、図示は省略するが、第1板材421の上端面および下端面と、天井CEおよび床下区画構造体200との間に、遮音シール材420a、気密シール材420bが介在され、第2板材422の上端面および下端面と、天井CEおよび床下区画構造体200との間に、接着材420cが介在されている。
同様に、側部区画構造体400cにあっても、図示は省略するが、第1板材421の上端面、側端面、下端面と、天井CE、外壁12、床下区画構造体200との間に、遮音シール材420a、気密シール材420bが介在され、第2板材422の上端面、側端面、下端面と、天井CE、外壁12、床下区画構造体200との間に、接着材420cが介在されている。
【0051】
以上のように、側部区画構造体400a,400b,400cでも、両個別住居エリアOH1、OH2の境界に沿って両個別住居エリアOH1,OH2を区画して設けられた吸音・断熱材411および一対の板材組420,420と、板材組420,420の外周縁とこれに接する天井CE、外壁11,12、床下区画構造体200との間に介在された遮音シール材420a、気密シール材420b、接着材420cとにより、防音区画構造および耐火区画構造が構成されている。
【0052】
図6に示すように、側部区画構造体400a,400bの第1可動部設置用開口部110に臨む側端部では、剛性保持体410の側端面と板材組420の側端面とは、同一位置に配置され、第1隔壁可動部500と側部化粧材450とを選択的に接続する接続部440が形成されている。また、側部区画構造体400b,400cにおいて、第2可動部設置用開口部120に臨む側端部にも、同様の接続部440が形成されている(図12参照、側部区画構造体400cの接続部は図示省略)
上述した接続部440は、単位住居エリアHUの非分割状態では、図6に示すように接続部440に側部化粧材450を接続し、側部区画構造体400a,400bの内部および側端面を覆い隠している。
【0053】
一方、単位住居エリアHUの分割状態では、図9に示すように、接続部440に第1隔壁可動部500が接続されて、両個別住居エリアOH1,OH2の区画が行われる。
【0054】
次に、両隔壁可動部500,600について説明する。
ここで両隔壁可動部500,600は同様の構成であるので、第1隔壁可動部500を代表して説明する。
【0055】
第1隔壁可動部500は、床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400bに囲まれた第1可動部設置用開口部110を塞いで設置されて隔壁100を形成する。
【0056】
本実施例1では、同一幅の複数の壁ユニット50を、隔壁100の延在方向に並べて相互に結合させて構成されており、各ユニット50の隔壁100の延在方向の長さは、例えば1.8m〜2.00m程度の長さとする。
【0057】
図7、図8、図9に示すように、第1隔壁可動部500は、前述した床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400b,400cと、同一幅に形成されており、設置時には、第1隔壁可動部500と、床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400b,400cとの外表面が同一面に連続されて1枚の隔壁100を形成する。
第1隔壁可動部500は、床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400b,400cと同様に、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とを区画する防音区画構造および耐火区画構造を有しており、剛性保持体510、板材組520、接続部540を備えている。なお、本実施例1では、第1隔壁可動部500は、複数の壁ユニット50で構成していることから、剛性保持体510、板材組520も、ユニット単位で分割されているものとする。
【0058】
剛性保持体510は、C型チャンネルを梯子状に組んで形成されており、幅方向の中央に、吸音・断熱材(本実施例1では、グラスウール)511が充填されている。そして、剛性保持体510は、床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400a,400bの各剛性保持体210,310,410に図示を省略したボルト・ナットなどの締結具により結合されている。また、隔壁100の延在方向に分割されている第1隔壁可動部500を構成する壁ユニット50の剛性保持体510どうしも、図示は省略するが、ボルト・ナットなどの締結具により結合されている。
【0059】
板材組520は、各板材組220,320,420と同様の第1板材521と第2板材522とを重ねて形成されている。そして、第1板材521の下端面、上端面、側端面と、各区画構造体200,300,400a,400b,400cの第1板材221,321,421との間に、遮音シール材520aと気密シール材520bとが並設して介在されているとともに、第2板材522の下端面、上端面、側端面と、各区画構造体200,300,400a,400b,400cの第2板材222,322,422との間に、気密シール材としての接着材520cが充填されている。これらの遮音シール材520a、気密シール材520b、接着材520cも、各ユニット50の単位で、板材組520の外周に設けられているものとする。
【0060】
接続部540は、第1隔壁可動部500の4周に形成されている。各接続部540は、遮音シール材520a、気密シール材520b、接着材520cを充填するスペースを確保するために、各板材521,522は、剛性保持体510のC型チャンネル材の外表面位置よりも内側に配置している。
【0061】
以上説明した第1隔壁可動部500および同様の構成の第2隔壁可動部600では、両個別住居エリアOH1、OH2の境界に沿って両個別住居エリアOH1,OH2を区画して設けられた吸音・断熱材511および一対の板材組520,520と、板材組520,520の外周とこれに接する各区画構造体200,300,400a,400b,400cとの間に介在された遮音シール材520a、気密シール材520b、接着材520cとにより、防音区画構造および耐火区画構造が構成されている。
【0062】
さらに、第1隔壁可動部500の設置時には、図7に示すように、第1隔壁可動部500と床FL1,FL2との間には、床部見切材251,252が設けられて、両者の隙間が塞がれている。さらに、第1隔壁可動部500の下端部には、巾木550,550が貼設されるとともに、第1隔壁可動部500と床部見切材251,252との間には、図示を省略したシーリング材が充填される。
【0063】
さらに、第1隔壁可動部500を形成する壁ユニット50の1つに、ドアDR3が設けられた壁ユニット60が設けられている。
そこで、以下に、図10〜図12に基づいて、ドアDR3および壁ユニット60について説明する。
ドアDR3は、金属製で内部に吸音・断熱材が充填された構造のもので、壁ユニット60に開口されたドア用開口部610に設けられている。すなわち、ドア用開口部610の内周には、四角の枠状に形成されたドアフレーム620が全周に亘って設けられている。このドアフレーム620には、金属製のものが用いられており、図示のように略L字断面形状の筒状に形成されている。
【0064】
そして、ドアフレーム620は、左右両側が、第1隔壁可動部500の剛性保持体510のC型チャンネル材に結合され、上部が天井区画構造体300の剛性保持体310のC型チャンネル材に結合され、下部が床下区画構造体200の剛性保持体210のC型チャンネル材に結合されている。なお、この結合において、ドアDR3の左右両側および上部は、図11,図12に示すように、それぞれ略L字断面形状の一対のチャンネル材621,621を介して、各区画構造体200,300,400a,400b,400cのC型チャンネル材とドアフレーム620との間に矩形の空間を形成した結合となっており、さらに、この空間部分に、吸音・断熱材(本実施例1では、グラスウール)622が充填されている。また、ドアDR3の下部については、図10に示すように、ドアフレーム620は、剛性保持体210に直接結合されている。
【0065】
また、ドアフレーム620の左右両端面および上端面には、図11,図12に示すように、第1隔壁可動部500の第1板材521との間に遮音シール材520aが介在されているとともに、第2板材522との間に気密シール材としての接着材520cが充填されている。同様に、ドアフレーム620と下端面には、床下区画構造体200の第1板材221および第2板材222との間に、それぞれ、遮音シール材520aおよび接着材520cが設けられている。
【0066】
ドアDR3は、ドアフレーム620に図12に示すヒンジ630により回動可能に取り付けられている。そして、ドアDR3の外周縁は、ドアDR3の外周に取り付けられた弾性材製でリップ状のシール材640と、ドアフレーム620の周縁に取り付けられた遮音シール623とが当接することで、遮音されている。
【0067】
また、ドア用開口部610の内周縁において、ドアDR3よりも第2個別住居エリアOH2側は、第1隔壁可動部500の左右側部が図12に示すように、板状の側縁化粧材651,651で覆われ、上部が図11に示すように板状の上縁化粧材652で覆われ、かつ、床下区画構造体200の上部が、図10に示すように板状の床部見切材653で覆われている。
【0068】
さらに、第1隔壁可動部500の第1個別住居エリアOH1側の面において、ドア用開口部610の左右両側および上側の周縁に、門状のドア枠部材660が設けられている。このドア枠部材660は、ドアフレーム620の外周縁を覆う内縁部661と、この内縁部と第2隔壁可動部600の第1個別住居エリアOH1側面とを繋ぐ、断面L字状のフレーム材662とを備えている。
なお、ドア用開口部610の下縁部において、第1個別住居エリアOH1側でドアフレーム620と床FL2との間には、床部見切材654が設けられている。
【0069】
以上、第1隔壁可動部500について説明したが、ここで、隔壁100の第2可動部設置用開口部120に設置された第2隔壁可動部600について説明を加える。
上述したように、第2隔壁可動部600は、第1隔壁可動部500と同様の構成であり、第2隔壁可動部600は、床下区画構造体200、天井区画構造体300、側部区画構造体400b,400cに囲まれた第2可動部設置用開口部120に設置されている。第1隔壁可動部500との相違点は、実施例1で用いた第2隔壁可動部600には、ドアDR3を有した壁ユニット60が用いられていない点だけであり、他は、上述した第1隔壁可動部500と同様である。
【0070】
(実施例1の作用)
実施例1のシステム住宅Aの作用を簡単に説明する。
実施例1のシステム住宅Aでは、居住者の生活空間容量の変化に応じ、図1に示す非分割状態としたり、図2に示す分割状態としたりすることができる。例えば、結婚後2人で暮らす場合は、単位住居エリアHUを分割状態として、両個別住居エリアOH1,OH2の一方に住んで、もう一方を他人に貸すことができる。その後、子供が生まれるなどして家族が増えると、単位住居エリアHUを非分割状態として単位住居エリアHUの全体を居住空間として使用することができる。その後、子供が独立するなどして家族が減ると、再び単位住居エリアHUを分割状態として、両個別住居エリアOH1,OH2の一方を他人に貸すことができる。本実施例1のシステム住宅Aでは、以上のようなライフプランの設定が可能となる。
【0071】
(非分割状態)
例えば、居住者が3人以上の場合などのように、必要な生活空間容量が大きい場合、図1に示すように、単位住居エリアHUの全体を居住者の生活空間することができる。
【0072】
この図1に示す非分割状態では、個別住居エリアOHの出入口として第1出入口DR1のみが使用され、第2出入口DR2は、出入不能に閉塞されている。
そして、非分割状態では、第1可動部設置用開口部110において第1隔壁可動部500が設置されず、隔壁100が非設置状態となっており、リビングダイニングスペースLDと第1台所スペースDK1とが連通され、大きな開放感を得ることができる。また、この非分割状態では、第2可動部設置用開口部120には第2隔壁可動部600が設置されて隔壁100が設置状態となっており、これにより、第2居室R2と第3居室R3とが区画されている。
【0073】
なお、非分割状態では、第2可動部設置用開口部120に第2隔壁可動部600を非設置状態として、第2居室R2と第3居室R3とを連通させて使用することもでき、この場合も、大きな開放感を得ることができる。逆に、第1可動部設置用開口部110に第1隔壁可動部500を設置するとともに、この第1隔壁可動部500にドアDR3を設けて動線を確保することもできる。
【0074】
このように、本実施例1のシステム住宅Aでは、非分割状態で、複数通りの間取りの変更が可能であり、高い設計自由度を得ることができる。しかも、各可動部設置用開口部110,120には、各隔壁可動部500,600を設置したり、非設置としたりするだけで間取りの変更が可能であり、一体の壁を形成したり取り除いたりするのと比較して、この間取りの変更作業が容易である。
【0075】
(分割状態)
例えば、居住者が2人以下などのように、必要な生活空間容量が小さい場合、図2に示すように、両可動部設置用開口部110,120に両隔壁可動部500,600を設置して、隔壁100の全体を設置状態とし、単位住居エリアHUを、第1個別住居エリアOH1と第2個別住居エリアOH2とに分割することができる。この場合、第2台所スペースDK2に、キッチンK2を設置し、第2出入口DR2を使用可能とすれば、各個別住居エリアOH1,OH2は、台所、浴室、トイレなどの住居機能と独立した出入口を備えることになり、それぞれ独立して生活することができる。
したがって、居住者は、両個別住居エリアOH1,OH2の一方のみに住み、他方を、人に貸すことが可能である。
【0076】
また、この分割状態では、各可動部設置用開口部110,120は、各隔壁可動部500,600で塞がれて隔壁100が両個別住居エリアOH1,OH2が全体に区画されている。そして、この隔壁100を形成する、各区画構造体200,300,400a,400b,400cおよび各隔壁可動部500,600は、両個別住居エリアOH1,OH2を区画した防音区画構造および耐火区画構造を備えており、両個別住居エリアOH1,OH2の間において騒音伝達抑制および出火時の延焼抑制が成される。特に、両個別住居エリアOH1,OH2は、床下空間FSにあっても床下区画構造体200により、防音区画構造および耐火区画構造で仕切られているため、床下空間FSにおける騒音の伝達および延焼が防止され、高い遮音性能および防火性能が得られる。
【0077】
なお、分割状態では、特許文献2に記載されたように、ドアDR3の第3居室R3側は、マガジンラックのような家具部で覆うようにするのが好ましい。
【0078】
(未使用の第1隔壁可動部500の収納)
本実施例1では、前述したように、単位住居エリアHUの非分割状態では、玄関スペースET2を利用した収納部ST3を形成する。この収納部ST3は、本実施例1では、玄関スペースET2のリビングダイニングスペースLD側に建具を設置し、室内側からのみ建具46により開閉できる収納部とする。
【0079】
そして、この収納部ST3には、キッチンK2および第1隔壁可動部500を構成する壁ユニット50,60専用の収納部としてもよい。
【0080】
すなわち、住宅販売時に、居住者の要望に応じた間取りとし、例えば、当初は、単位住居エリアHUを、図1のような非分割状態とした場合、各隔壁可動部500,600のうちで使用しないものは、各壁ユニット50,60に分割して、収納部ST3に収納して販売する。同様に、キッチンK2も、分解して収納部ST3に収納しておく。
【0081】
その後、単位住居エリアHUを分割する場合、収納部ST3に収納された壁ユニット50,60およびキッチンK2を取り出して組み立てて設置すればよいことから、外部から壁ユニット50,60やキッチンK2を搬入する手間が不要であり、施工が容易である。
【0082】
さらに、本実施例1では、第1隔壁可動部500にドアDR3を備えた壁ユニット60を備えているため、収納部ST3を開閉する建具46の代わりに、壁ユニット60を用いて収納部ST3をドアDR3により開閉するようにすれば、収納部ST3を開閉する建具46を別途設置する必要が無くなり、より好ましい。
【0083】
(他の非分割状態の使用例)
実施例1では、第1隔壁可動部500にドアDR3を設置していることから、この第1隔壁可動部500の設置状態で、ドアDR3を開閉可能として、単位住居エリアHUを非分割状態として使用することもできる。この場合、キッチンK2を非設置状態とすることにより、第2台所スペースDK2を居室として使用することができる。この場合、第1台所スペースDK1を共用する2世帯住宅などにも対応できる。
【0084】
このように、第1隔壁可動部500にドアDR3を有した壁ユニット60を用いたことにより、間取りの設定自由度がより高くなる。
【0085】
(実施例の効果)
以上説明したように、実施例1のシステム住宅Aでは、各可動部設置用開口部110,120に、各隔壁可動部500,600を設置したり除去したりすることで、隔壁100を設置状態としたり非設置状態としたりすることができる。
したがって、住人の必要な生活空間容量の変化に応じ、1つの単位住居エリアHUを、分割状態として各個別住居エリアOH1,OH2に分割したり、非分割状態として1つの個別住居アリアOHとして使用したりできる。
【0086】
しかも、非分割状態では、ドアDR3のみで両個別住居エリアOH1,OH2を行き来することが可能だけではなく、各可動部設置用開口部110,120のいずれかあるいは両方を開放して両個別住居エリアOH1,OH2に跨る空間を形成でき、非分割状態と分割状態とで、間取りの変更が可能となり、高い設計自由度を得ることができる。
【0087】
さらに、隔壁100は、建物に固定された各区画構造体200,300,400a,400b,400cおよび建物に対して固定および除去可能な各隔壁可動部500,600が、それぞれ、両個別住居エリアOH1,OH2を区画した防音区画構造および耐火区画構造を備えている。したがって、隔壁100において、一部を除去可能としながらも、両個別住居エリアOH1,OH2を区画した状態では、高い遮音性および耐火性が得られる。特に、床下空間FSを床下区画構造体200で区画しており、この床下区画構造体200が防音構造および耐火構造を備えているため、床下空間FSにおける音の伝達を抑制して高い遮音性能を得ることができる。
【0088】
加えて、建物に固定された各区画構造体200,300,400a,400b,400cと、建物に対して固定および除去可能な各隔壁可動部500,600とを接続する各接続部240,340,440,540には、各遮音シール材220a,320a,420a,520a、各気密シール材220b,320b,420b,520b、気密シール材としての各接着材220c,320c,420c,520cを設置したため、これらを設置しないものと比較して、遮音性能および耐火性能が、いっそう高いものとなる。
【0089】
また、各区画構造体200,300,400a,400b,400cは、各隔壁可動部500,600と床部見切材250および各化粧材350,450を選択的に接続可能な各接続部240,340,440を設けた。したがって、各隔壁可動部500,600の非設置時には、各区画構造体200,300,400a,400b,400cの各接続部240,340,440に、床部見切材250および各化粧材350,450を接続させて、高い外観品質を得ることができる。一方、各隔壁可動部500,600を非設置状態から設置する際には、床部見切材250および各化粧材350,450を取り外すだけで、各隔壁可動部500,600の設置が可能となり、新たに、床下空間FSや外壁11,12や天井CEなどから隔壁を延ばすのと比較して、隔壁100の設置作業が容易である。
【0090】
さらに、床下区画構造体200は、C型チャンネル材により枠組み構造を形成した剛性保持体210を備えているため、床基盤BSを形成後に設置可能であり、建物において床基盤BSを含むコンクリート部分の製造後であっても、購入者の希望に応じて、ライフサイクル対応仕様とすることができ、高い設計自由度を得ることができ、かつ、床下区画構造体200を床基盤BSに固定した後でも、配管作業や配管変更作業が可能であり、配管自由度が高い。
【0091】
また、両隔壁可動部500,600は、複数の壁ユニット50および60に分割しこれらを結合する構造としたため、複数の壁ユニット50,60に分割されないものと比較して、居住空間内への搬入・搬出作業および施工が容易となる。
【0092】
加えて、第1隔壁可動部500には、ドアDR3を設けた壁ユニット60も設けており、第1隔壁可動部500を設置して、ドアDR3により出入可能な状態、第1隔壁可動部500を取り外して第1可動部設置用開口部110を開口した状態、第1可動部設置用開口部110に第1隔壁可動部500を設置するとともに、ドアDR3を閉状態で固定して、居室空間を分割した状態の3態様に変更可能であり、設計自由度がさらに高いものとなる。
【0093】
さらに、本実施例1では、使用しない壁ユニット50,60は、使用しない玄関スペースET2を利用した収納部ST3に収容するようにしたため、収納に場所を取らないとともに、収納専用のスペースが不要となり、効率的であり、しかも、隔壁100の設置・取外のたびに壁ユニット50,60を搬入したり搬出したりするのと比較して、作業性に優れる。
【0094】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0095】
例えば、実施例1では、本発明を、多層集合住宅に適用した例を示したが、これに限定されず、単層集合住宅、あるいは戸建て住宅にも適用可能である。
【0096】
また、実施例1では、床下区画構造体200は、床基盤BSとは別体のものを示したが、これに限定されず、床基盤BSと一体のコンクリート製の部分を備えた構造としてもよい。また、実施例1では、隔壁100を構成する建物に固定される部分として、床下区画構造体200に加え、天井区画構造体300および側部区画構造体400a,400b,400cを備えた構造を示したが、床下区画構造体を備えていれば、隔壁可動部は、直接、天井CEや外壁11,12などに接続させ、天井区画構造体300や側部区画構造体400a,400b,400cの一方、あるいは両方を備えない構成としてもよい。
【0097】
また、実施例1では、隔壁可動部を設置する可動部設置用開口部を2カ所に設けた例を示したが、この数や大きさは、任意である。
【0098】
また、実施例1では、隔壁100を形成する各隔壁可動部500,600は、それぞれ、複数の壁ユニット50あるいは60を結合させて形成するようにした例を示したが、これに限定されるものではなく、室内で組み立てる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
100 隔壁
110 第1可動部設置用開口部
120 第2可動部設置用開口部
200 床下区画構造体
210 剛性保持体
220 板材組
220a 遮音シール材
220b 気密シール材
220c 接着材(気密シール材)
240 接続部
250 床部見切材(床部化粧材)
300 天井区画構造体
310 剛性保持体
320 板材組
320a 遮音シール材
320b 気密シール材
320c 接着材(気密シール材)
340 接続部
350 天井部化粧材
400a 側部区画構造体
400b 側部区画構造体
400c 側部区画構造体
410 剛性保持体
420 板材組
420a 遮音シール材
420b 気密シール材
420c 接着材(気密シール材)
440 接続部
450 側部化粧材
500 第1隔壁可動部
520a 遮音シール材
520b 気密シール材
520c 接着材
540 接続部
600 第2隔壁可動部
610 ドア用開口部
701 床板
A システム住宅
BS 床基盤
CE 天井
DR3 ドア
FS 床下空間
HU 単位住居エリア
OH1 第1個別住居エリア
OH2 第2個別住居エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の1フロアに少なくとも1つの単位住居エリアを有し、
この単位住居エリア内の居住空間を互いに独立した住居機能を有した複数の個別住居エリアに分割する隔壁を設置可能なシステム住宅であって、
前記単位住居エリアの床は、床基盤と床板との間に床下空間が介在された二重床構造とされ、
前記隔壁は、前記個別住居エリアの境界で前記床下空間に設置された床下区画構造体を備え、
この床下区画構造体は、前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を備えているとともに、その上端部には、前記隔壁の一部を構成し前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を有した隔壁可動部と、前記個別住居エリアの前記床板に連続して設けられて前記居住空間側から前記床下区画構造体を隠す床部化粧材と、を選択的に接続可能な接続部を備えていることを特徴とするシステム住宅。
【請求項2】
前記建物には、前記隔壁可動部を設置可能な可動部設置用開口部が設けられ、
この可動部設置用開口部に臨んで、前記可動部設置用開口部の下縁に沿って前記床下区画構造体が設けられているとともに、前記可動部設置用開口部の上縁に沿って天井区画構造体が設けられ、
前記天井区画構造体は、前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を備えているとともに、その下端部には、前記隔壁可動部と前記居住空間から前記天井区画構造体内部を隠す天井部化粧材とを選択的に接続可能な接続部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム住宅。
【請求項3】
前記可動部設置用開口部に臨んで、前記可動部設置用開口部の側縁に沿って側部区画構造体が設けられ、
前記側部区画構造体は、前記個別住居エリア間を区画して音の伝達を抑制する防音区画構造を備えているとともに、前記可動部設置用開口部に臨む側端部に、前記隔壁可動部と前記居住空間から前記側部区画構造体内部を隠す側部化粧材とを選択的に接続可能な接続部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のシステム住宅。
【請求項4】
前記隔壁可動部および各区画構造体は、前記個別住居エリア間を区画して両者間の延焼を抑制する耐火区画構造を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシステム住宅。
【請求項5】
前記可動部設置用開口部を遮蔽して前記隔壁可動部が設置され、
前記隔壁可動部の外周縁と各区画構造体との間に遮音シール材が介在されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のシステム住宅。
【請求項6】
前記隔壁可動部に、前記個別住居エリアを連通可能なドア用開口部が開口され、かつ、このドア用開口部を開閉するドアが設けられていることを特徴とする請求項5に記載のシステム住宅。
【請求項7】
前記床下区画構造体は、枠状に形成された剛性保持体を備え、
前記防音区画構造は、両個別住居エリアを区画して前記剛性保持体に沿って設けられた吸音材と、両個別住居エリアを区画して前記剛性保持体の幅方向両側に設けられた板材と、前記板材の下端面と前記床基盤との間に介在された遮音シール材と、を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のシステム住宅。
【請求項8】
前記隔壁可動部は、複数の壁ユニットに分割可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム住宅。
【請求項9】
前記複数の個別住居エリアは、それぞれ独立した居住空間への出入口を有し、
各出入口の少なくとも1つは、前記単位住居エリアを複数の個別住居エリアに分割しない場合に、前記壁ユニットの収納部を形成可能となっていることを特徴とする請求項8に記載のシステム住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−174242(P2011−174242A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37254(P2010−37254)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【特許番号】特許第4567096号(P4567096)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(510050867)
【出願人】(510050856)
【Fターム(参考)】