説明

ラインヘッドの組み立て方法、ラインヘッド、画像形成装置

【課題】光軸と直角方向における発光素子基板とレンズアレイの位置を調整すると、レンズアレイの表層が剥がれて塵埃を発生させてしまう。この塵埃が光路にあると、光量の低下や、光散乱によって、感光体に結像される像が歪んでしまうという課題がある。
【解決手段】レンズ64を備えた樹脂層83bが光透過性基板としてのガラス基板80a上に形成されてなるレンズアレイ80と、レンズアレイ80を支持するための支持部材としてのスペーサー81,82とを含むラインヘッド13を組み立てる方法であって、レンズアレイ80の樹脂層83bとスペーサー81,82とを、樹脂層83bより硬い球形のギャップ材91を混ぜ込んだ接着剤90で接合する組み立て方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインヘッドの組み立て方法、ラインヘッド、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる複写機、プリンター等の画像形成装置には、回転する感光体の表面を露光処理して静電潜像を形成する露光手段が備えられている。このような露光手段としては、例えば発光ダイオードなどの複数の発光素子を、感光体の軸方向に配列した構造のラインヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、発光素子が形成されたガラスなどの発光素子基板と、レンズが形成された2枚のレンズアレイを備え、発光素子から照射された光を、2枚のレンズアレイを通して感光体に照射するラインヘッドが記載されている。このようなラインヘッドでは、レンズの光軸方向において、発光素子基板とレンズアレイの間や、2枚のレンズアレイの間には、レンズアレイを支持する支持部材としてのスペーサーが設けられる。発光素子の光軸やレンズの光軸が一致するように、発光素子基板やレンズアレイは、このスペーサーによって支持される。
光軸と直角方向において、発光素子の光軸の位置と、レンズアレイのレンズの光軸の位置がずれると、感光体に形成される像が歪んだりする。そこで、特許文献2では、レンズアレイに位置決めマークを形成し、レンズアレイの位置を調整する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−98613号公報
【特許文献2】特開2008−152040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズアレイにスペーサーを接触させた状態で、光軸と直角方向におけるレンズアレイとスペーサーとの相対的な位置を移動させて調整すると、レンズアレイとスペーサーが当接しながら相対的に移動するため、レンズアレイの表層が剥がれて塵埃を発生させてしまうことがある。この塵埃がラインヘッド内の光路にあると、ラインヘッドから照射される光の光量が低下したり、光が散乱したりしてしまう。そのため、感光体に結像される像が歪んでしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]レンズを備えた樹脂層が光透過性基板上に形成されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイを支持するための支持部材とを含むラインヘッドを組み立てる方法であって、前記レンズアレイの前記樹脂層と前記支持部材とを、前記樹脂層より硬い球形のギャップ材を混ぜ込んだ接着剤で接合することを特徴とするラインヘッドの組み立て方法。
【0008】
この構成によれば、レンズアレイの樹脂層と支持部材とを接合するための接着剤に混ぜ込んだギャップ材は、樹脂層より硬い。これにより、光軸方向における距離を固定することができる。また、接着剤に混ぜ込んだギャップ材は球形である。これにより、球形のギャップ材が転がりながら相対的な位置が調整される。そのため、レンズアレイの端部と支持部材との摩擦抵抗を低下させることができるので、レンズアレイの端部が剥がれてラインヘッド内に塵埃が発生することを抑制できる。
【0009】
[適用例2]前記レンズアレイの前記樹脂層に前記接着剤を介して前記支持部材を当接し、前記レンズの光軸方向と直交または略直交する平面方向にレンズアレイの位置調整をして接着剤を硬化させる上記ラインヘッドの組み立て方法。
【0010】
この構成によれば、レンズアレイに形成されたレンズの光軸の位置を調整することができる。
【0011】
[適用例3]前記接着剤は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする上記ラインヘッドの組み立て方法。
【0012】
この構成によれば、位置調整工程において、光軸と直角方向の位置を調整した後に、紫外線を接着剤に照射し、レンズアレイと支持部材を接着することができる。
【0013】
[適用例4]上記のラインヘッドの組み立て方法を用いて製造されたラインヘッド。
この構成によれば、レンズアレイの表層が剥がれてラインヘッド内に塵埃が発生することを抑制できる。
【0014】
[適用例5]上記のラインヘッドを備えた画像形成装置。
この構成によれば、レンズアレイの表層が剥がれてラインヘッド内に塵埃が発生することを抑制できる。そのため、ラインヘッドから照射される光の光量が低下したり、散乱したりすることを抑制できるので、感光体に結像される像が歪んでしまうことを抑制できる。従って、画像形成装置から形成される画像の画像品質が劣化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の画像形成装置の全体構成を示す概略図。
【図2】ラインヘッドの斜視図。
【図3】ラインヘッドを主走査方向から見た断面図。
【図4】複数の発光素子群と複数のレンズの配置を示す図。
【図5】レンズアレイとスペーサーとの接合部分を示す図。
【図6】支持部としてのスペーサーによって支持されたレンズアレイを主走査方向から見た断面図。
【図7】レンズアレイとスペーサーとを接合する工程におけるフローチャート。
【図8】レンズアレイとスペーサーとが当接していることを示す主走査方向から見た断面図。
【図9】レンズアレイを備えた状態を示す図。
【図10】スペーサーを備えた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照し、本実施例におけるラインヘッドおよび画像形成装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す概略図である。画像形成装置1は、帯電工程・露光工程・現像工程・転写工程・定着工程を含む一連の画像形成プロセスによって画像を記録媒体Pに記録する電子写真方式のプリンターである。本実施例では、画像形成装置1は、いわゆるタンデム方式を採用するカラープリンターである。このような画像形成装置1は、図1に示すように、帯電工程・露光工程・現像工程のための画像形成ユニット10と、転写工程のための転写ユニット20と、定着工程のための定着ユニット30と、紙などの記録媒体Pを搬送するための搬送機構40と、この搬送機構40に記録媒体Pを供給する給紙ユニット50とを有している。
【0018】
画像形成ユニット10は、イエローのトナー像を形成する画像形成ステーション10Yと、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ステーション10Mと、シアンのトナー像を形成する画像形成ステーション10Cと、ブラックのトナー像を形成する画像形成ステーション10Kとの4つの画像形成ステーションを備えている。
【0019】
各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kは、それぞれ、静電的な潜像を担持する感光ドラム(感光体)11を有し、その周囲(外周側)には、帯電ユニット12、ラインヘッド(露光ユニット)13、現像装置14、クリーニングユニット15が配設されている。各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kを構成するこれらの装置は、同じ構成であるため、以下、1つの装置について説明する。
【0020】
感光ドラム11は、全体形状が円筒状をなすものである。感光ドラム11の外周面(円筒面)には、感光層(不図示)が形成され、ラインヘッド13からの光(出射光)を受光する受光面(被照射面)(不図示)を構成している。また、この感光ドラム11は、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。
【0021】
帯電ユニット12は、コロナ帯電などにより感光ドラム11の受光面を一様に帯電させるものである。ラインヘッド13は、パーソナルコンピューター(不図示)などのホストコンピューターから画像情報を受け、これに応じて、感光ドラム11の受光面に向けて光を放射する。一方、感光ドラム11の受光面は、一様に帯電された状態となっており、光の放射パターンに対応した潜像が形成される。
【0022】
現像装置14は、トナーを貯留する貯留部(不図示)を有しており、当該貯留部から、静電的な潜像を担持する感光ドラム11の受光面にトナーを供給し、付与する。これにより、感光ドラム11上の潜像がトナー像として可視化(現像)される。クリーニングユニット15は、感光ドラム11の受光面に当接するゴム製のクリーニングブレード151を有し、後述する一次転写後の感光ドラム11上に残存するトナーをクリーニングブレード151により掻き落として除去するようになっている。
【0023】
転写ユニット20は、各画像形成ステーション10Y、10M、10C、10Kの感光ドラム11上に形成された各色のトナー像を一括して記録媒体Pに転写するようになっている。
【0024】
各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kでは、それぞれの感光ドラム11が1回転する間に、帯電ユニット12による感光ドラム11の受光面の帯電と、ラインヘッド13による受光面の露光と、現像装置14による受光面へのトナーの供給と、一次転写ローラー22との圧着による中間転写ベルト21への一次転写と、クリーニングユニット15による受光面111のクリーニングとが順次行なわれる。
【0025】
転写ユニット20は、エンドレスベルト状の中間転写ベルト21を有し、この中間転写ベルト21は、複数(図1に示す構成では4つ)の一次転写ローラー22と駆動ローラー23と従動ローラー24とで張架されており、駆動ローラー23の回転により、図1に示す矢印方向に、感光ドラム11の周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動される。
【0026】
各一次転写ローラー22は、それぞれ対応する感光ドラム11に中間転写ベルト21を介して対向配設されており、感光ドラム11上の単色のトナー像を中間転写ベルト21に転写(一次転写)するようになっている。この一次転写ローラー22は、一次転写時に、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。
【0027】
中間転写ベルト21上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうちの少なくとも1色のトナー像が担持される。例えば、フルカラー画像の形成時には、中間転写ベルト21上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が中間転写像として形成される。
【0028】
転写ユニット20は、中間転写ベルト21を介して駆動ローラー23に対向配設される二次転写ローラー25と、中間転写ベルト21を介して従動ローラー24に対向配設されるクリーニングユニット26とを有している。
【0029】
二次転写ローラー25は、中間転写ベルト21上に形成された単色あるいはフルカラーなどのトナー像(中間転写像)を、給紙ユニット50から供給される紙、フィルム、布等の記録媒体Pに転写(二次転写)するようになっている。二次転写ローラー25は、二次転写時に、中間転写ベルト21に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。このような二次転写時には、駆動ローラー23は、二次転写ローラー25のバックアップローラーとしても機能する。
【0030】
クリーニングユニット26は、中間転写ベルト21の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード261を有し、二次転写後の中間転写ベルト21上に残存するトナーをクリーニングブレード261により掻き落として除去するようになっている。
【0031】
定着ユニット30は、定着ローラー301と、定着ローラー301に圧接される加圧ローラー302とを有しており、定着ローラー301と加圧ローラー302との間を記録媒体Pが通過するよう構成されている。また、定着ローラー301は、その内側に当該定着ローラーの外周面を加熱するヒーターが内蔵されており、通過する記録媒体Pを加熱および加圧することができる。このような構成の定着ユニット30より、トナー像の二次転写を受けた記録媒体Pを加熱および加圧して、トナー像を記録媒体Pに融着させて永久像として定着する。
【0032】
搬送機構40は、前述した二次転写ローラー25と中間転写ベルト21との間の二次転写部へ給紙タイミングを計りつつ記録媒体Pを搬送するレジストローラー対41と、定着ユニット30での定着処理済みの記録媒体Pを挟持搬送する搬送ローラー対42、43、44とを有している。
【0033】
このような搬送機構40は、記録媒体Pの一方の面のみに画像形成を行う場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを搬送ローラー対42により挟持搬送して、画像形成装置1の外部へ排出する。また、記録媒体Pの両面に画像形成する場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦搬送ローラー対42により挟持した後に、搬送ローラー対42を反転駆動するとともに、搬送ローラー対43、44を駆動して、当該記録媒体Pを表裏反転してレジストローラー対41へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
【0034】
給紙ユニット50は、未使用の記録媒体Pを収容する給紙カセット51と、給紙カセット51から記録媒体Pを1枚ずつレジストローラー対41へ向け給送するピックアップローラー52とを備えている。
【0035】
次に、ラインヘッド13について説明する。図2は、ラインヘッド13の斜視図である
。図3は、図2のラインヘッド13を主走査方向D1から見たA−A線における断面図である。図3に示すように、ラインヘッド13は、感光ドラム11の受光面111に対向して配置されている。また、ラインヘッド13は、主走査方向D1が、感光ドラム11の回転軸と平行となるように配置されている。
【0036】
レンズアレイ80とレンズアレイ83は、レンズアレイ80,83を支持するための支持部材としてのスペーサー81,82を挟んで長手方向を主走査方向D1にして備えられる。さらに、レンズアレイ83と発光素子基板87は、レンズアレイ83を支持するための支持部材としてのスペーサー84,85を挟んで長手方向を主走査方向D1にして備えられる。
【0037】
遮光部材86は、長手方向を主走査方向D1にして発光素子基板87とレンズアレイ83との間に備えられる。発光素子基板87は、ガラスや樹脂などの透明性を有する基板から形成され、収容部材88を介してベース89に備えられる。
【0038】
レンズアレイ80、レンズアレイ83の発光素子基板87側には、複数の凸曲面からなるレンズ64がそれぞれ形成されている。レンズ64の構成材料としては、光学特性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂材料および/またはガラス材料が好適に用いられる。
【0039】
発光素子基板87のベース89側には、例えば有機EL(Organic Electroluminescence)、発光ダイオードなどの発光素子群71が備えられる。発光素子群71は、収容部材88に形成された凹部881の空間領域内に収容される。
【0040】
凹部881には、発光素子群71を構成する発光素子(不図示)と電気的に接続された導線類(不図示)、または、各発光素子を駆動させるための回路(不図示)が収納されている。
【0041】
発光素子群71から光軸方向D3に照射された光Lは、発光素子基板87、遮光部材86に形成された貫通孔861、レンズアレイ83に形成されたレンズ64、スペーサー81とスペーサー82との間に形成された空間領域、レンズアレイ80に形成されたレンズ64を通過し感光ドラム11の受光面111に照射される。
【0042】
図4は、光軸方向D3から見た図で、発光素子基板87における複数の発光素子群71と、レンズアレイ80,83における複数のレンズ64の配置を示す図である。図4に示すように、レンズ64は、主走査方向D1に複数列配置されるとともに、主走査方向D1に直交する副走査方向D2に複数行配置されている。
【0043】
複数のレンズ64は、互いに離間して、3行n列(nは2以上の整数)の行列状に配置されている。レンズアレイ80に形成されている一つのレンズ64と、レンズアレイ83に形成されている一つのレンズ64とは、図3に示すように、光軸が一致するように対向し配置されている。
【0044】
図4に示すように、複数の発光素子群71は、複数のレンズ64に対応して、互いに離間し、3行n列(nは2以上の整数)の行列状に配置されている。また、各発光素子群71は、それぞれ、複数(本実施例では8つ)の発光素子74で構成されている。
【0045】
各発光素子群71を構成する8つの発光素子74は、発光素子基板87のベース89側の面に沿って配置されている。各発光素子74から発せられた図3の光Lは、それぞれ一対のレンズ64を通過し、感光ドラム11の受光面111上で集光する。
【0046】
また、図4に示すように、8つの発光素子74は、互いに離間して、主走査方向D1に4列配置され、副走査方向D2に2行配置されている。このように、8つの発光素子74は、2行4列の行列状をなしている。1つの列(発光素子列)に属する互いに隣接した2つの発光素子74同士は、主走査方向D1にずれて配置されている。そして、このように2行4列の行列状をなす8つの発光素子74では、主走査方向D1に隣接する発光素子74同士の間を、次の行の1つの発光素子74で補完している。
【0047】
図5は、図2の部分Bを拡大した図で、レンズアレイ80とスペーサー82との接合部分を示す図である。図6は、支持部としてのスペーサー81,82によって支持されたレンズアレイ80,83を主走査方向D1から見た断面図である。
【0048】
本実施例のレンズアレイ80は、光透過性基板としてのガラスで形成されたガラス基板80aと、樹脂で形成された樹脂層80bとから構成されている。レンズ64は、樹脂層80bに形成されたものである。
【0049】
レンズアレイ80は、樹脂層80bに凸曲面S1が形成されたレンズ64を有し、副走査方向D2における範囲C2に形成されたレンズ形成部802と、光軸方向D3と直角方向の第1の平面としての平坦面S2を有し、レンズアレイ80の副走査方向D2における範囲C1に形成された端部801とから構成される。図6の端部801は、レンズアレイ80の副走査方向D2における両端部に形成される。
【0050】
同様に、レンズアレイ83は、樹脂層83bに凸曲面S1が形成されたレンズ64を有し、副走査方向D2における範囲C2に形成されたレンズ形成部832と、光軸方向D3と直角方向の第1の平面としての平坦面S2を有し、レンズアレイ80の副走査方向D2における範囲C1に形成された端部831とから構成される。図6の端部831は、レンズアレイ83の副走査方向D2における両端部に形成される。
【0051】
スペーサー81,82は、レンズアレイ80とレンズアレイ83の間の光軸方向D3における距離を規制するものである。端部801に形成された平坦面S2の副走査方向D2の長さM1は、スペーサー81,82に形成された平坦面S3の副走査方向D2の長さM2より長い。
【0052】
図5、図6に示すように、平坦面S2と平坦面S3との間の接着用混合剤によって、レンズアレイ80とスペーサー81,82とが接合されている。接着用混合剤は、接着剤90にギャップ材91を混ぜたものである。
【0053】
図6のスペーサー81,82におけるレンズアレイ83側の平坦面S4と、レンズアレイ83におけるスペーサー81,82側の平坦面S5との間にも、接着剤90にギャップ材91を混ぜた接着用混合剤が備えられ、レンズアレイ83とスペーサー81,82とが接合されている。
【0054】
レンズアレイ80に形成されたレンズ64と対向する位置にあるレンズアレイ83に形成されたレンズ64とは光軸Eが一致するように備えられている。
【0055】
次に、レンズアレイ80とスペーサー81,82とを接合する方法について説明する。図7は、レンズアレイ80とスペーサー81,82とを接合する工程におけるフローチャートである。
【0056】
図7の準備工程S100では、図6の光軸方向D3と直角方向の第1の平面としての平坦面S2が端部801に形成されたレンズアレイ80と、第2の平面としての平坦面S3が形成されたスペーサー81,82と、端部801における樹脂層80bの材質より硬い球形のギャップ材91を接着剤90に混ぜた接着用混合剤と、を用意する。
【0057】
塗布工程S110では、レンズアレイ80の平坦面S2またはスペーサー81,82の平坦面S3に準備工程S100で用意した接着用混合剤を塗布する。
【0058】
図8は、レンズアレイ80とスペーサー81,82とが当接していることを示す主走査方向D1から見た断面図である。当接工程S120では、平面を有する台1000の上に、レンズ64を台1000とは反対側に向けてレンズアレイ80を置く。そして、レンズアレイ80の端部801に形成された平坦面S2に、スペーサー81,82の平坦面S3をそれぞれ当接させる。
【0059】
位置調整工程S130では、レンズアレイ80とスペーサー81,82との光軸方向D3と直角方向における相対的な位置を調整する。すなわち、主走査方向D1と副走査方向D2におけるレンズアレイ80とスペーサー81,82との相対的な位置を調整する。本実施例においては、台1000に固定されたレンズアレイ80に対して、スペーサー81,82をそれぞれ移動させる。
【0060】
位置調整工程S130が実施された後、接着剤90は硬化し、レンズアレイ80とスペーサー81,82とは接合される。
【0061】
前述したように、準備工程S100では、球形を有し、材質がレンズアレイ80における樹脂層80bやレンズアレイ83における樹脂層83bの材質より硬いギャップ材91を用意する。このため、接着剤90に混合されたギャップ材91がレンズアレイ80とスペーサー81,82に挟まれながら、主走査方向D1と副走査方向D2におけるレンズアレイ80とスペーサー81,82との相対的な位置を調整するとき、ギャップ材91は球形を保持できる。これにより、レンズアレイ80とレンズアレイ83との光軸方向D3における距離を規制することができる。
【0062】
また、準備工程S100では、球形を有するギャップ材91を用意する。このため、主走査方向D1と副走査方向D2におけるレンズアレイ80とスペーサー81,82との相対的な位置をそれぞれ調整するとき、ギャップ材91は、レンズアレイ80とスペーサー81,82とに挟まれながら転がることができる。
【0063】
これにより、スペーサー81,82の平坦面S3は、レンズアレイ80の平坦面S2と面接触しながらスライドすることがない。従って、レンズアレイ80の端部801とスペーサー81,82との摩擦抵抗を低下させることができるので、レンズアレイ80の端部801における樹脂層80bが剥がれて塵埃が発生することを抑制できる。
【0064】
また、レンズアレイ80における第1の平面としての平坦面S2は、スペーサー81,82における第2の平面としての平坦面S3より広い。
【0065】
この構成によれば、接着剤90にギャップ材91が混合された接着用混合剤を介して、スペーサー81,82の平坦面S3をレンズアレイ80の平坦面S2と当接しながら、光軸方向D3と直角方向、すなわち主走査方向D1や副走査方向D2に移動させることができる。これにより、スペーサー81,82とレンズアレイ80における光軸方向D3と直交または略直交する平面方向における相対的な位置を調整することができる。
【0066】
以上、説明した工程によって、レンズアレイ80とスペーサー81,82とを接合することができる。
【0067】
図9は、図8の状態から、さらにレンズアレイ83を備えた状態を示す図である。スペーサー81,82またはレンズアレイ83に接着剤90にギャップ材91を混合した接着用混合剤を塗布し、スペーサー81,82にレンズアレイ83を当接させる。そして、スペーサー81,82とレンズアレイ83との光軸方向D3と直交または略直交する平面方向における、すなわち主走査方向D1、副走査方向D2における位置調整を行う。
【0068】
位置調整が実施された後、接着剤90は硬化し、レンズアレイ83とスペーサー81,82とは接合される。
【0069】
図10は、図9の状態から、さらにスペーサー84,85を備えた状態を示す図である。レンズアレイ83にスペーサー84,85を接合する場合も、図7に示したフローチャートの工程と同じ方法で行う。
【0070】
図9の状態にある光軸方向D3と直角方向の平坦面S2が端部831に形成されたレンズアレイ83と、平坦面S3が形成されたスペーサー84,85と、端部831における樹脂層83bの材質より硬い球形のギャップ材91を接着剤90に混合した接着用混合剤と、を用意する(準備工程S100)。
【0071】
スペーサー84,85における平坦面S3またはレンズアレイ83の端部831における平坦面S2に接着剤90にギャップ材91を混合した接着用混合剤を塗布し(塗布工程S110)、平坦面S2に平坦面S3を当接させる(当接工程S120)。
【0072】
そして、スペーサー84,85とレンズアレイ83との光軸方向D3と直交または略直交する平面方向における、すなわち主走査方向D1、副走査方向D2における位置調整を行う(位置調整工程S130)。
【0073】
位置調整工程S130が実施された後、接着剤90は硬化し、レンズアレイ83とスペーサー84,85とは接合される。
【0074】
以上、説明した本実施例におけるラインヘッド13の組み立て方法は、レンズ64を備えた樹脂層83bが光透過性基板としてのガラス基板80a上に形成されてなるレンズアレイ80,83と、レンズアレイ80,83を支持するための支持部材としてのスペーサー81,82,84,85とを含むラインヘッド13を組み立てる方法であって、レンズアレイ80,83の樹脂層83bとスペーサー81,82,84,85とを、樹脂層83bより硬い球形のギャップ材91を混ぜ込んだ接着剤90で接合する。
【0075】
また、レンズアレイ80,83の樹脂層83bに接着剤90を介してスペーサー81,82,84,85を当接し、レンズ64の光軸方向D3と直交または略直交する平面方向にレンズアレイ80,83の位置調整をして接着剤を硬化させる。
【0076】
このようにすることにより、レンズアレイ80に形成されたレンズ64に対向するレンズアレイ83に形成されたレンズ64を通る光軸Eが一致するようにすることができる。
【0077】
また、ギャップ材91は球形であるので、スペーサー84,85がレンズアレイ83に当接しながら光軸方向D3と直角方向の位置を調整するとき、ギャップ材91は転がることができる。これにより、スペーサー84,85とレンズアレイ83との摩擦抵抗を抑制できるので、レンズアレイ83に対するスペーサーの位置調整工程において、レンズアレイ83の樹脂層83bが剥がれて塵埃になることを抑制できる。
【0078】
接着剤90は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型接着剤を用い、位置調整工程S130が終了した時点で、レンズアレイとスペーサーとの間にある接着剤に対して紫外線を照射するようにしてもよい。これにより、レンズアレイ80,83とスペーサー81,82,84,85との光軸方向D3または光軸方向D3と直角方向における相対的な位置を早く固定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…画像形成装置、13…ラインヘッド、80,83…レンズアレイ、81,82,84,85…スペーサー、801,831…端部、802,832…レンズ形成部、90…接着剤、91…ギャップ材、D3…光軸方向、S2,S3…平坦面、S100…準備工程、S110…塗布工程、S120…当接工程、S130…位置調整工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを備えた樹脂層が光透過性基板上に形成されてなるレンズアレイと、前記レンズアレイを支持するための支持部材とを含むラインヘッドを組み立てる方法であって、
前記レンズアレイの前記樹脂層と前記支持部材とを、前記樹脂層より硬い球形のギャップ材を混ぜ込んだ接着剤で接合することを特徴とするラインヘッドの組み立て方法。
【請求項2】
前記レンズアレイの前記樹脂層に前記接着剤を介して前記支持部材を当接し、前記レンズの光軸方向と直交または略直交する平面方向にレンズアレイの位置調整をして接着剤を硬化させる請求項1記載のラインヘッドの組み立て方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のラインヘッドの組み立て方法であって、
前記接着剤は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型接着剤であることを特徴とするラインヘッドの組み立て方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のラインヘッドの組み立て方法を用いて製造されたラインヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載のラインヘッドを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31565(P2011−31565A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182190(P2009−182190)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】