説明

ラウドスピーカシステム

音を再生することができる現代の装置に適合する1/4レフλラウドスピーカシステム1。システムは、スピーカ3と、スピーカを収容するキャビネット5と、レフポート7と、キャビネットの外部に位置する四分の一波長共鳴管9とを備える。キャビネットは、レフポートと連通している第1の孔11aを有し、且つスピーカのスピーカ前面3aがキャビネットの第2の孔11b内に設けられ、当該第2の孔は四分の一波長共鳴管と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ前面を有するスピーカと、スピーカを収容するキャビネットと、レフポートと、四分の一波長共鳴管とを備えるラウドスピーカシステムに関する。本発明はまた、このような四分の一波長ラウドスピーカシステムを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、前面と対向する背面とを有するエンクロージャを備えるラウドスピーカシステムであって、スピーカと、中空部材によって形成される四分の一波長共鳴器と、バスレフポートとがエンクロージャ内に配置される、ラウドスピーカシステムを開示している。中空部材はスピーカからエンクロージャの前面まで延びる。レフポートはエンクロージャの背面から内方に延びる。
【0003】
バスレフ方式スピーカユニットがよく知られている。バスレフ方式スピーカユニットは、ダイヤフラムを備えるラウドスピーカを収納するラウドスピーカエンクロージャを有する。エンクロージャはダイヤフラムの後側から出る音を利用し、通常の閉じたボックスのラウンドスピーカよりも低い周波数範囲における効率を高める。より気密であるか又はより気密でない閉じたボックスのラウドスピーカとは対照的に、バスレフ方式スピーカユニットは、エンクロージャ内へ延びると共に、例えば円形断面又は矩形断面のオルガンのパイプのようなものによって形成されているポートを有する。バスレフ方式スピーカユニットの既知の利点は、より小さいボックス内でより多くの低音拡張を行うことができることである。音響学では、可聴スペクトルの特定の周波数帯域を向上させる四分の一波長共鳴管もよく知られている。四分の一波長共鳴管の一端には、共鳴管内で共鳴を起こすようにラウドスピーカが位置しており、他端は或る特定の音圧を有する音用の開いた出口である。
【0004】
特許文献1において開示されているラウドスピーカシステムでは、バスレフシステムがより低い同調周波数に同調され、四分の一波長共鳴器がより高い同調周波数に同調される。
【0005】
既知のラウドスピーカの不利点は、一方で所望の反射量を提供すると共に他方で四分の一波長共鳴器を収容するために、容積の大きいエンクロージャが必要であることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5313525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、始めの段落で記載した類の四分の一波長ラウドスピーカシステムであって、十分な周波数応答を提供すると共に、現代のオーディオ、ビデオ及び/若しくはデータ記録用途並びに/又は再生用途、並びに現代の自動車用途への適用に特に適している、四分の一波長ラウドスピーカシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によるラウドスピーカシステムによって達成され、当該システムは、スピーカ前面を有するスピーカと、スピーカを収容するキャビネットと、レフポートと、キャビネットの外部に位置する四分の一波長共鳴管とを備え、キャビネットは、レフポートと連通している第1の孔を有し、且つスピーカ前面はキャビネットの第2の孔内に設けられ、当該第2の孔は四分の一波長共鳴管と連通している。
【0009】
四分の一波長共鳴管がキャビネットの外部に位置することによって、キャビネット自体が、比較的小さい寸法から成ることができる。これによって、本発明によるラウドスピーカシステムが、レフキャビネットを取り付ける余地が少ししかないが共鳴管を収容するのに十分な空間、特に長さがある場合での用途で使用される際に非常に魅力的になる。このような用途は例えば、平坦なLCD又はプラズマテレビセット又はモニタ、及び車室である。四分の一波長共鳴管は、円形断面又は矩形断面等の任意の適した断面形状を有することができる。使用の際、レフポートがキャビネットの内部の空気と共鳴する。なお、キャビネットとレフポートとの組合せが共鳴する周波数は、レフポートの断面積及び長さ、並びにキャビネットの内部の空気量によって決まる。本発明によるシステムにおけるレフポートの機能は、有用な帯域幅を拡張するために、音放射を、1/4λ共鳴を上回る周波数範囲において向上させるというものである。使用の際に、定常波が四分の一波長共鳴管において発生し、当該定常波の波長は管の長さの4倍に相当する。管の、スピーカ付近に、より詳細にはスピーカ前面付近に位置する端では、音圧が最大であると共に空気速度が最小であり、他端では、音圧が最小であると共に空気速度が最大である。レフポートの存在によって発生する音圧が、四分の一波長共鳴管の存在による音圧に加わる。
【0010】
本発明によるラウドスピーカシステムの非常に好ましい実施の形態は、レフポートがアッパーバス又はミッドレンジレフシステム周波数f1に同調され、四分の一波長共鳴管が共鳴周波数f2に同調される(f2<f1)ことを特徴とする。共鳴周波数f2とレフシステム周波数f1とのこの比は、多くの装置の場合に約200Hzである少なくともクロスオーバ周波数まで、広い周波数範囲にわたって実質的に平坦な周波数応答を得るのに非常に好適であることを証明している。
【0011】
実用的な実施の形態では、レフシステム周波数f1は、共鳴周波数f2の実質的に2倍である。この特定の状況下で、音圧ゲインは、閉じたスピーカボックスに接続されている四分の一波長共鳴器を有するシステムと比較して約10dBであり得る。別の利点はスピーカに関する。通常、スピーカは、電磁式駆動体によって作動される移動可能な円錐体を有するスピーカである。バスレフシステムでは、円錐体のエクスカージョンは、このようなシステムのバスレフポートの同調周波数で最小となることが元より既知である。本発明によるレフシステムの上記実施の形態では、周波数f1は、多くの装置の場合に約150Hzである二分の一波長周波数で円錐体のエクスカージョンの減少に貢献する。
【0012】
本発明によるラウドスピーカシステムの好ましい実施の形態は、スピーカ前面が表面S1を有し、四分の一波長共鳴管が少なくともその長さのうちの少なくともより長い部分にわたって断面S2を有する(S2<S1)ことを特徴とする。この寸法の結果、スピーカと共鳴管との間の音響変化が常に1より大きくなる。これは、共鳴管の空気負荷により、1/4λ共鳴を下回る周波数でスピーカの駆動体質量に、上記断面の比の2乗に等しい係数が加わり、それによって、駆動体にかかる空気負荷が増加することで共鳴が最小にされ、したがって、共鳴器共鳴を下回って、さらに小さくなることを意味する。この係数の実用値は約2である。
【0013】
本発明によるラウドスピーカシステムの好ましい実施の形態は、レフポートがキャビネットの外部に位置することを特徴する。この特徴は、スピーカ、特にその駆動体によって発生する熱を分散するのに貢献する。
【0014】
本発明によるラウドスピーカシステムと、その好ましい実施の形態は、請求項1〜5に規定される。本発明による装置は、請求項6及び7のいずれか一項に規定される。好ましくは、ラウドスピーカシステムは、装置の構造部に少なくとも部分的に一体化され、例えば、ラウドスピーカが自動車の車室構造に一体化される。
【0015】
特許請求の範囲を参照するに当たり、特許請求の範囲で言及される特徴の全ての可能な組合せは本発明の一部をなすことに留意されたい。
【0016】
本発明のこれらの態様及び他の態様は後述する例から明らかであり、当該態様を当該例を参照して明瞭にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるラウドスピーカシステムの実施形態の概略図である。
【図2】本発明によるラウドスピーカシステムでの使用に適したラウドスピーカの概略断面図である。
【図3】図1に示す実施形態の音圧レベル(SPL)対周波数(f)をプロットしたグラフである。
【図4】図1に示す実施形態の電気インピーダンス(Z)対周波数(f)をプロットしたグラフである。
【図5】図1に示す実施形態の音圧レベル(SPL)対周波数(f)を、1/4λ共鳴器に接続されている閉じたスピーカボックスを有する既知のラウドスピーカシステムの音圧レベル(SPL)対周波数(f)と比較してプロットしたグラフである。
【図6】図1に示す実施形態の電気インピーダンス(Z)対周波数(f)を、1/4λ共鳴器に接続されている閉じたスピーカボックスを有する既知のラウドスピーカシステムの電気インピーダンス(Z)対周波数(f)と比較してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態に従って組み立てられたラウドスピーカシステム1の概略図を見ることができる。ラウドスピーカシステム1は、スピーカ前面3aを有するラウドスピーカ3を収容するキャビネット5を備える。例えばプラスチックから成るキャビネット5は、第1の孔11aと、第2の孔11bとを有する。システム1は、レフポート7と、四分の一波長共鳴管9とをさらに備え、これらは両方ともキャビネット5に固定され、この例では両方ともキャビネット5の外部に位置している。レフポート7は、第1の孔11a内に設けられ、孔11a付近に配置されている第1の開いたポート端7aと、キャビネット5の外部に位置している第2の開いたポート端7bとを有する。所望であれば、第1の開いたポート端をキャビネットの内部に位置していてもよい。
【0019】
スピーカ3は、スピーカ前面3aが第2の孔11b内に位置するように配置される。四分の一波長共鳴管9は、その開いた側のうちの一方に、第2の孔11b付近にスピーカ前面3aに対向して配置される第1の管端9aを有すると共に、他方の開いた側に第2の管端9bを有する。
【0020】
この実施形態では、共鳴管9は1.12メートルの長さLを有し、これは、四分の一波長(1/4λ)である76Hzに相当する。
【0021】
レフポート7はレフシステム周波数f1に同調され、四分の一波長共鳴管9は共鳴周波数f2に同調される。この場合、レフシステム周波数は二分の一波長周波数に近く、この例では約150Hzであり、したがって、f1はf2の約2倍である。
【0022】
スピーカ前面3aは表面S1を有し、四分の一波長共鳴管9は少なくとも概ねその全長にわたって断面S2を有する(S2<S1)。共鳴管9は、原則的に全ての種類の断面を有し得る。この例では、管9は丸い断面を有する。
【0023】
ラウドスピーカシステム1は、参照符号100によって概略的に示される装置の一部とすることができ、エンクロージャ及び/又は共鳴管9は、装置の構造部101に取り付けられてもよく、又は一体化されてもよい。このような装置は、オーディオ及び/若しくはビデオ及び/若しくはデータ記録並びに/又は再生装置、又は自動車用装置とすることができる。
【0024】
図2は、図1に示す実施形態のラウドスピーカ3として使用することができるラウドスピーカ203を示す。ラウドスピーカ203は、ラウドスピーカ203をキャビネット205内に取り付ける取り付け要素204を備えるシャーシ221を有する。ラウドスピーカ203は、音を放射するためにシャーシ221に対してエクスカージョン方向206に可動であるダイヤフラム210を備える。ダイヤフラム210は、可撓性サスペンション211を介して取り付け要素204に接続される。ラウドスピーカ203は、シャーシ221のフレーム223に固定される磁石系220を有する駆動体と、空隙227を通じて磁石系220と協働するボイスコイル215とをさらに備える。ボイスコイルは、ダイヤフラム210に固定され、センタリング体213によってセンタリングされる。コイル215に電流を流すことによって、動的な力がダイヤフラム210に加わり、その結果、ダイヤフラム210が方向206のうちの一方向へ移動する。
【0025】
図3は、図1の実施形態の音圧レベル(SPL)対周波数(f)をプロットしたグラフを示す。音圧レベルは、基準音源に対する特定の音源の圧力の対数的な測定値である。これは通常、デシベルで測定される。図1に示す例の音圧レベルは、グラフに示すように、100Hz前後のかなり広い範囲において実質的に一定のままである。さらに、図5に示すグラフから引き出され得るように、音圧レベルは上記範囲において、レフポートを有しない1/4λ共鳴システムより高い。図5では、閉じたスピーカボックス、すなわちレフポートを有しないキャビネットと協働する1/4λ共鳴器を有する既知のラウドスピーカシステムの音圧レベル(SPL)対周波数(f)をプロットしたグラフが点線によって示されている。本発明によるシステムによって得ることができる音圧ゲインは、音圧がレフポートによって発生し、本発明によるシステムに適用される四分の一波長管によって発生する音圧に加わる結果である。上記ゲインは約10dBであり得る。さらに、ラウドスピーカによって発生する熱が、空気流がポートを通ること、及びこのポートがエンクロージャの外部に位置していることの両方に起因して効率的に分散されるため、本発明によるシステムの電力処理能力を高めることができる。
【0026】
図4は、図1の実施形態の駆動体の電気インピーダンス(Z)対周波数(f)をプロットしたグラフを示す。駆動体は、図2に示すラウドスピーカの実施形態に関する記載において参照した駆動体とすることができる。グラフに示すように、200Hzを下回る周波数範囲で考えると、1/4λ共鳴は約76Hzであり、レフ共鳴は約150Hzである。比較のために、図6は、1/4λ共鳴器に接続されている閉じたスピーカボックスを有する既知のラウドスピーカシステムの電気インピーダンス(Z)対周波数(f)を点線でプロットしたグラフを示す。駆動体は、図2に示すラウドスピーカの実施形態に関する記載において参照したような類の駆動体とすることができる。
【0027】
本発明を図面及び以上の記載において詳細に図示及び説明したが、図示及び説明は例示又は例であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されず、例えば、曲線状の共鳴管の代わりに直線状の共鳴管を適用することが可能である。開示された実施形態に対する他の変形形態が、図面、明細書及び特許請求の範囲を検討することで、クレームされる本発明を実施する当業者によって理解及び達成されることができる。特許請求の範囲及び明細書において、単語「備える(含む、有する)」は他の要素を除外せず、且つ不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、当該範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウドスピーカシステム(1)であって、
スピーカ前面(3a)を有するスピーカ(3)と、
前記スピーカを収容するキャビネット(5)と、
レフポート(7)と、
前記キャビネットの外部に位置する四分の一波長共鳴管(9)と、
を備え、
前記キャビネットは、前記レフポートと連通している第1の孔(11a)を有し、且つ前記スピーカ前面は前記キャビネットの第2の孔(11b)内に設けられ、該第2の孔は前記四分の一波長共鳴管と連通している、ラウドスピーカシステム。
【請求項2】
前記レフポートはレフシステム周波数f1に同調され、前記四分の一波長共鳴管は共鳴周波数f2に同調される(f2<f1)、請求項1に記載のラウドスピーカシステム。
【請求項3】
前記レフシステム周波数f1は、前記共鳴周波数f2の実質的に2倍である、請求項2に記載のラウドスピーカシステム。
【請求項4】
前記スピーカ前面は表面S1を有し、前記四分の一波長共鳴管は少なくともその長さのうちのより長い部分にわたって断面S2を有する(S2<S1)、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラウドスピーカシステム。
【請求項5】
前記レフポートは前記キャビネットの外部に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラウドスピーカシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のラウドスピーカシステムを備える、オーディオ及び/若しくはビデオ及び/若しくはデータ記録並びに/又は再生装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のラウドスピーカシステムを備える自動車用装置。
【請求項8】
前記ラウドスピーカシステムは、前記装置の構造部(101)に少なくとも部分的に一体化される、請求項6又は7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−509827(P2010−509827A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535831(P2009−535831)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004096
【国際公開番号】WO2008/056258
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(507176747)ピーエスエス・ベルギー・エヌブイ (10)
【氏名又は名称原語表記】PSS Belgium NV
【住所又は居所原語表記】Hoogveld 50, 9200 Dendermonde, Belgium
【Fターム(参考)】