説明

ラッカー層上に電気グリッド線を転写する方法

【課題】有機光電子デバイスで使用されるベース基板上に堆積された硬化ラッカー層上に電気回路及び機能的光構造を同時に形成する。
【解決手段】ベース基板上に硬化ラッカー層を形成する。その後、転写基板のあわせ面を硬化ラッカー層に接触させる。あわせ面は、第一部分上に電気回路及び第二部分上に機能的光構造のネガ像を含む。その後、あわせ面を硬化ラッカー層に接触させ、それによって、電気回路の少なくとも一部を硬化ラッカー層に埋め込み、硬化ラッカー層に機能的光構造を複製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで開示される本発明は、一般に、半導体デバイスに関する。より詳しくは、本発明は、半導体デバイスに電気グリッド線を形成する方法に関する。
【0002】
透明導電酸化物(TCO)(例:インジウム酸化スズ(ITO)、アンチモンドープされた酸化スズ、カドミウム酸化スズ)は、半導体デバイス(例:薄膜光電デバイス(TF-PV)又は有機発光デバイス(OLED))での電極層として汎用される。
【0003】
しかしながら、大面積半導体デバイスの場合、TCO層によって提供される導電度は、十分でない。これは、半導体デバイスでの電圧降下に繋がることが多い。例えば、OLEDの場合、電圧降下は、OLEDでの不均一な光強度として見ることができる。
【0004】
これに対する可能なオプションは、より厚い電極層を使用することである。なぜなら、より厚い電極層を使用すると抵抗が減少し、それによって電圧降下を減少させるからである。しかしながら、より厚い電極層は、透過率を減少させる。従って、電極層によって提供される導電度を増大させるために、電極層の導電度を補うために導電グリッド線が半導体デバイスで使用される。
【0005】
導電グリッド線は、いくつかの方法(例えばフォトリソグラフィー)によって半導体デバイスでの表面上に形成可能である。しかしながら、フォトリソグラフィープロセスと関連したコストは、非常に高い。高価な材料及び装置コストに加えて、フォトリソグラフィープロセスで生成される廃棄物材料の処分も高額である。さらに、フォトリソグラフィープロセスは、単一の生産サイクルで処理される基板要素数が制限されているので、プロセススループットが低い。
【0006】
導電グリッド線を製造するためのより低コストな方法は、印刷法を用いることである。しかしながら、印刷プロセスを用いて達成される構造分解能は比較的粗い。
【0007】
さらに、導電グリッド線を形成するために使用される従来技術でのプロセスは、形成された表面から導電グリッド線が突出する構造が形成される。この突出部は、半導体デバイスの機能上の問題に繋がる。
【0008】
上記議論に照らすと、従来技術の1又は複数の欠点を克服するために、半導体デバイスに導電グリッド線を転写又は形成する方法における改良に対する要求がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、有機光電子デバイス(例えば、OLED)で使用されるベース基板上に堆積された硬化ラッカー層上に電気回路及び機能的光構造を同時に形成する方法を提供する。この方法は、電気回路と、機能的光構造のネガ像との両方を含む転写基板をOLEDの硬化ラッカー層に対してスタンピングすることを含む。バスバーの形態である電気回路は、転写基板に脱離可能に取り付けられ、これによって、硬化ラッカー層上への機能的光構造の形成とほぼ同時に、バスバーがスタンピングの間に硬化ラッカー層に転写される。
【0010】
また、バスバーは、ほぼ完全に硬化ラッカー層に埋め込まれ、従って、平坦な表面が次の層(例えば、電極層)の堆積のために提供される。これは、電極層の厚さの不均一性を防ぎ、その後の電気的な問題を防ぐ。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、有機光電子デバイスで使用されるベース基板上に堆積された硬化ラッカー層上に電気回路及び機能的光構造を同時に形成する方法を提供する。この方法は、ベース基板上に硬化ラッカー層を形成することを含む。その後、転写基板のあわせ面を、硬化ラッカー層に接触させる。あわせ面は、第一部分上に電気回路及び第二部分上に機能的光構造のネガ像を含む。さらに、電気回路は、転写基板と電気回路の間の密着性が電気回路と硬化ラッカー層の間の密着性より実質的に小さくなるように、あわせ面に脱離可能に取り付けらる。硬化ラッカー層に対してあわせ面を接触させることは、電気回路の少なくとも一部を硬化ラッカー層に埋め込み、硬化ラッカー層に機能的光構造を複製することを可能にする。その後、硬化ラッカーは、硬化プロセスを経て、それによって、電気回路を硬化ラッカー層上に固定する。次に、転写基板が取り外される。
【0012】
いくつかの実施形態では、電気回路は、ベース基板に渡って電流パスを確立するための電気グリッド線である。
【0013】
いくつかの実施形態では、転写基板は、フレキシブル転写基板である。
【0014】
いくつかの実施形態では、硬化ラッカー層は、散乱粒子をさらに備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、有機光電子デバイスは、薄膜光電デバイス(TF-PV)及び有機発光デバイス(OLED)の一つである。
【0016】
いくつかの実施形態では、硬化プロセスは、熱硬化及び光硬化の少なくとも1つから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
新規であると信じられている本発明の特徴は、添付の請求の範囲で詳細に言及している。本発明は、添付図面と共に次の説明を参照して最もよく理解することができる。これらの図面及び関連する説明は、本発明のいくつかの実施形態を例示するために提供され、本発明の範囲を限定しない。
【0018】
【図1】図1a及び1bは、本発明の実施形態による、それぞれ、例示的OLED及び例示的TF-PVデバイスでは層のスタックを例示する。
【0019】
【図2a−b】図2a及び2bは、それぞれ、本発明の実施形態による、電気回路及び機能的光構造の転写の後の、例示的有機光電子デバイスを製造する間の例示的ステージの断面図及び上面図を例示する。
【0020】
【図3】図3a、3b、3c、3d及び3eは、本発明の実施形態による、例示的転写基板の形成の種々のステージの概略図を示す。
【0021】
【図4】図4は、本発明の実施形態による、有機光電子デバイスを製造する例示的プロセスを説明するフローチャートである。
【0022】
当業者は、図中の要素は、簡潔さ及び明確さのための例示であり、寸法は必ずしも正確ではないことを理解するであろう。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、本発明の理解を向上させるために、他の要素に比べて誇張している。
【0023】
明細書中には説明があって図面には記載していない構造がある場合、そのような構造が明細書から省略されていると解釈すべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が半導体デバイスを製造する方法に関連した方法ステップと装置コンポーネントの組み合わせを利用することに注目すべきである。従って、装置コンポーネント及び方法ステップは、図面中では慣用的な記号を用いて表され、本発明の理解に関連がある部分のみを詳細に表している。これは、当業者にとって明らかな内容を詳細に記載しすぎて本発明の開示をぼやかすことが無いようにするためである。
【0025】
明細書は、本発明の新規であると思われる特徴を規定する請求の範囲で締めくくっているが、本発明は、次の説明と、符号を付した図面からより良く理解されるであろう。
【0026】
本発明の詳細な実施形態をここに開示しているが、開示された実施形態は、本発明の単なる例示であり、本発明は、種々の形態で実施可能であることを理解すべきである。従って、ここで開示される具体的な構造及び機能の詳細は、権利範囲を限定するものと解釈すべきではなく、請求の範囲の基礎となり、かつ本発明を種々の形態で実施する際に当業者に与える教示の代表的な基礎であるとして解釈すべきである。さらに、ここで示される用語とフレーズは、限定的に解釈すべきではなく、本発明の理解可能な説明を提供するためものであると解釈すべきである。
【0027】
本明細書では、「一つ」は、1又は複数を意味している。「他の」は、「少なくとも第2の」を意味しており、「含む」及び/又は「有する」は、他の要素の追加を許容するオープンな用語である。「連結」又は「作動的に連結」は、結合されていることを意味するが、直接である必要はなく、機械的である必要もない。
【0028】
ここで図面を参照すると、本発明の実施形態による、例示的OLED100aでの層のスタックを図1aに示す。OLED100aは、外部光取り出し層102、ベース基板104、内部光取り出し層106、電気回路108、第一電気コンタクト110、1又は複数の有機層112及び114、第二電気コンタクト116及びカバー基板118を含むように示す。カバー基板118は、ベース基板104との間に、内部光取り出し層106、電気回路108、第一電気コンタクト110、1又は複数の有機層112及び114、及び第二電気コンタクト116を封じ込める。
【0029】
説明の目的で、OLED100aは、本発明の説明に関連する層のみを含むように示した。しかしながら、本発明がリストされた層に限定されないことは理解すべきである。いくつかの場合には、OLED100aは、効率を高めるか又は信頼性を向上させるために、本発明の範囲から逸脱することなく追加の層を含んでもよい。
【0030】
OLED100aのいくつかの実例は、有機発光ダイオード(OLED)、白色有機発光ダイオード(W-OLED)、アクティブ-マトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)、パッシブ-マトリックス有機発光ダイオード(PMOLED)、フレキシブル有機発光ダイオード(FOLED)、積層有機発光ダイオード(SOLED)、タンデム有機発光ダイオード、透明有機発光ダイオード(TOLED)、上面発光有機発光ダイオード、底面発光有機発光ダイオード、蛍光ドープされた有機発光ダイオード(F-OLED)及びリン光有機発光ダイオード(PHOLED)を含むがこれに限定されない。
【0031】
ベース基板104は、OLED100aに対して強度を提供し、使用時にOLED100aの発光面としても役立つ。ベース基板104の例は、ガラス、フレキシブルガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及び他の透明又は半透明材料を含むがこれに限定されない。
【0032】
第一電気コンタクト110及び第二電気コンタクト116は、1又は複数の有機層112及び114を横切って電圧を印加するために使用される。第一電気コンタクト110は、例えば、透明導電層(TCL)(例:透明導電酸化物(TCO)、PEDOT-PSS、他の透明ポリマー)又は薄い金属層で実施可能である。TCOは、ドープされた金属酸化物であり、TCOの例は、アルミニウム-ドープされた酸化亜鉛(AZO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、ボロンドープされた酸化亜鉛(BZO)、ガリウムドープされた酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)及びインジウムドープされた酸化スズ(ITO)を含むがこれに限定されない。さらに、第二電気コンタクト116は、電荷キャリアを注入するのに適切な仕事関数を有する金属(例えば、カルシウム、アルミニウム、金、及び銀)で実施可能である。
【0033】
1又は複数の有機層112及び114は、有機エレクトロルミネセンス材料(例:発光ポリマー、蒸着した低分子材料、発光デンドリマ又は分子状にドープされたポリマー)で実施可能である。
【0034】
OLEDでは、1又は複数の有機層112及び114によって放射された光は、ベース基板104を通過する必要がある。しかしながら、高屈折率材料から、より低屈折率材料又は媒体と界面へ光が入射すると、その光は、θc=sin-1(n2/n1)によって定義される臨界角θcより大きい全ての入射角について全反射(TIR)となる(n1及びn2は、それぞれ、高屈折率材料及び低屈折率材料の屈折率である)。同じ理由により、1又は複数の有機層112及び114によって放射された光は、ベース基板104との界面に到達すると、相当な量の光が反射されて1又は複数の有機層112及び114に戻される。
【0035】
これは、機能的光構造を有する内部光取り出し層106の存在によって防止可能である。機能的光構造は、ベース基板104との界面で1又は複数の有機層112又は114によって放射された光の伝播方向を変えることができる。これは、OLED100aへ戻る光の反射(又はTIR)を減少させるのを助ける。内部光取り出し層106上の機能的光構造は、放射された光の伝播方向を回折によって変化させることを容易にするために光の波長のオーダーでの寸法を有する形状を含んでもよい。内部光取り出し層106上の機能的光構造は、放射された光の伝播方向を屈折によって変化させることを容易にするために光の波長より大きい寸法を有する形状を含んでもよい。従って、TIRを除去又は減少させる吸収及び散乱要素として働く機能的光構造を有する内部光取り出し層106の存在は、OLED100aの効率を増大させる。同様に、外部光取り出し層102は、ベース基板104と周囲媒体の間の界面でのTIRを減少又は除去する
【0036】
機能的光構造は、回折又は屈折による光伝播方向の変化を引き起こすことができる。通常、光の波長のオーダーでの寸法を有する機能的光構造は、通常、回折によって光伝播方向を変化させる。回折によって光伝播方向を変化させる機能的光構造の例は1D回折格子及び2D回折格子を含むがこれに限定されない。光の波長より大きい寸法を有する機能的光構造は、通常、屈折によって光伝播方向を変化させる。屈折によって光伝播方向を変化させる機能的光構造の例は、レンズ、コーン、及びピラミッドを含むがこれに限定されない。
【0037】
さらに、大面積OLEDの場合、第一電気コンタクト110のTCO層によって提供される導電度は、十分でなく、大面積OLEDでの電圧降下に繋がる。この電圧降下は、大面積OLEDでの不均一な光強度として見ることができる。これは、第一電気コンタクト110に加えて電気回路108を提供することによって防止可能である。電気回路108は、第一電気コンタクト110によって提供される導電度を補うことができる。電気回路108は、高導電度の金属線又はバスバーのグリッド、又は電気グリッド線、又はベース基板104及び第一電気コンタクト110の全表面に渡って電流パスを提供することができる回路の形態にすることができる。例えば、OLEDでは、これは、均一の電圧が全表面に渡って提供され、不均一な発光をもたらす電圧降下がないことを保証する。図では電気回路108は、内部光取り出し層106に設けられ、これによって、電気回路108が内部光取り出し層106の表面の外に突出せず、それによって第一電気コンタクト110が堆積される平坦な表面を提供するように示している。これは、第一電気コンタクト110の厚さの不均一性を防ぎ、電気的な問題又はデバイス劣化を防ぐ。一実施形態では、 電気回路108は、10%より小さい表面被覆率を有する。さらに、電気回路108での各金属線又は各バスバーの幅は、約50ミクロン〜数ミリメートルの範囲である。さらに、電気回路108での各金属線又は各バスバーの高さは、200nm〜50ミクロンの範囲である。
【0038】
別の実施形態では、平坦化層が第一電気コンタクト110と内部光取り出し層106の間に提供可能である。平坦化層は、第一電気コンタクト110の堆積のために平坦な表面を提供する。平坦化層は、通常、光取り出しを阻害しないように内部光取り出し層106より屈折率が高い材料で形成される。
【0039】
図1bを参照すると、本発明の実施形態による、例示的TF-PVデバイス100bでの層のスタックを示す。TF-PVデバイス100bは、透明基板120、光トラッピング層122、電気回路124、第一電気コンタクト126、1又は複数の吸収層128及び130、第二電気コンタクト132及びカバー基板134を含むように示す。一実施形態では、TF-PVデバイスは、有機光電デバイス又は無機光電デバイスであってもよく、1又は複数の吸収層128及び130は、無機及び有機材料半導体の両方を含む。
【0040】
TF-PVデバイス100bでは、1又は複数の吸収層128及び130に当たる光は、吸収層128及び130を通じた電気の生成を可能にし、この電気は、第一及び第二電気コンタクト126及び132によって外部回路へ取り出される。TF-PVデバイス100bでは、機能的光構造を含む光トラッピング層122は、TF-PVデバイス100b内に送られた光の光路を増大させるように提供される。同様に、OLED100aについて説明したように、大面積TF-PVデバイスの場合、第一電気コンタクト126のTCO層によって提供される導電度は、十分でなく、大面積TF-PVデバイスでの電圧降下に繋がる。この電圧降下は、第一電気コンタクト126に加えて電気回路124を提供することによって防止可能である。電気回路124は、図1aを用いて定義した電気回路108に特性が類似している。
【0041】
図2aに移ると、例示的光電子デバイス(例えば、FIG1a及び1bに示すOLED100a及びTF-PV100b)を製造する間の例示的ステージの断面図を示す。図示のステージは、1又は複数の電気回路206及び機能的光構造204がベース基板202に転写された後である。図1a及び1bを用いて説明した機能的光構造204は、OLED及びTF-PVデバイスの場合に、それぞれ、光取り出し及び光トラッピングを可能にする。機能的光構造204は、通常、好ましくは周期的及び本質的にほぼ周期的の一つである、サブミクロンサイズのマイクロテクスチャーである。機能的光構造は、通常、複製プロセスによって有機光電子デバイス上に形成される。複製プロセスによれば、機能的光構造204のネガ像に対応するマイクロ-テクスチャー表面を有する転写基板が、ベース基板202上に堆積された硬化ラッカー層203に接触され、それによって硬化ラッカー層上に機能的光構造204がインプリントされる。
一実施形態では、電気回路は、転写基板と電気回路206の間の密着性が電気回路206と硬化ラッカー層の間の密着性より実質的に小さくなるように、設けられる。一実施形態では、硬化ラッカー層は、有機光電子デバイスの光管理特性をさらに高める散乱粒子を含むことができる。また、散乱粒子の存在によって、角度色シフト問題が減少する。散乱粒子を用いた散乱は、屈折率傾斜を有するか又は屈折率が互いに異なる複数層構成の硬化ラッカー層を用いることによって得ることができる。 別の実施形態では、TiO2又はZrO2粒子などを有する硬化ラッカーを使用してもよい。また、ボイド又は空気又は真空を有する硬化ラッカー層が散乱を得るために使用可能である。
【0042】
本発明によれば、機能的光構造204を形成するために使用される転写基板は、機能的光構造204のネガ像に加えて電気回路206を含む。転写基板は、図3を用いてより詳しく説明される。
【0043】
一実施形態では、硬化材料の層(例:光硬化樹脂ラッカー又はゾルゲル材料)がベース基板202上に形成される。その後、機能的光構造204のネガ像に加えて電気回路206を含む転写基板が硬化材料層へ押圧される。この結果、硬化材料の層上に機能的光構造204がインプリントされ、同時に、電気回路206の少なくとも一部が硬化ラッカー層に埋め込まれる。一実施形態では、機能的光構造204及び電気回路206が転写され、これによって、電気回路206が機能的光構造204の表面の外に突出せず、第一電気コンタクトの堆積のための平坦な表面が形成される。これは、第一電気コンタクトの厚さの不均一性を防ぐのを助け、それによって将来の電気的な問題を防ぐ。図2bは、図2aに示すステージでの例示的有機光電子デバイスの上面図を示す。図示の通り、電気回路206は、表面に渡って広がるグリッド線の形態であり、基板の第一部分を占める。さらに、機能的光構造204は、図の影部分によって表される第二部分を占めるように見ることができる。
【0044】
図に示される機能的光構造204及び電気回路206は、単なる図示であり、本発明の説明を容易にする目的で提供される。図は、実寸ではなく、本発明の概念の理解を容易にするために提供されることを理解すべきである。
【0045】
上記の通り、機能的光構造及び電気回路を生成するために、転写基板を形成する必要がある。図3a、3b、3c、3d及び3eは、本発明の実施形態による、例示的転写基板300の形成の種々のステージでの概略図を示す。転写基板300は、ベース308、あわせ面310、機能的光構造312及び電気回路314を含むように示される。
【0046】
図3aは、機能的光構造の像304を有する父基板302を示す。父基板302は、通常、ベースの上に形成されたフォトレジスト層を有するベースを含む。父基板302のベースの例は、ガラス板、半導体ウエハー及び平坦な金属プレートを含むがこれに限定されない。フォトレジスト層の例は、ノボラックのようないずれの相変化材料であってもよい。
【0047】
一実施形態では、フォトリソグラフィープロセス又は熱リソグラフィープロセスは、機能的光構造の像304を形成するためにフォトレジスト層上で実行される。しかしながら、機能的光構造の像304は、レーザービームレコーディング、電子ビームリソグラフィー、電子投影リソグラフィー、ナノ-インプリントリソグラフィー、及びホログラフィーのようなプロセスを用いて形成可能であることを理解すべきである。この方法は、フォトリソグラフィープロセスに関連して説明したが、制限的であることを意図しておらず、むしろ、本発明の分かりやすい説明を提供する。
【0048】
プロセスの間にフォトレジスト層は、集束サブミクロン-サイズレーザースポットを用いることによって局所的に照射される。レーザースポットは、静止したスポット下で基板を動かすか又は静止した基板上でスポットを動かすか又は両方の組み合わせによってによってフォトレジスト層に渡って走査可能である。実際の適用では、半径方向に直線的に移動するレーザースポットと、回転する基板の組合せが使用される。別の実施形態では、x、y-ステージを使用して、基板又はレーザースポットを横方向に動かしてもよい。
【0049】
機能的光構造の像304の詳細は、調節可能である。また、このプロセスは、機能的光構造の像304として種々の特徴及び形状の形成を可能にする。例えば、基板の一定の直線移動とレーザースポットの連続的強度の組み合わせにより、直線形状の特徴が得られる。パルス変調されたレーザースポットの場合には、点線又は破線形状の特徴が得られる。
【0050】
さらに、機能的光構造の像304の高さは、制御可能である。機能的光構造の像304の横方向サイズ特徴も調節可能である。通常、集束レーザースポットを用いて生成可能である特徴は、使用される光の波長のオーダーでの寸法を有する。
【0051】
父基板302の現像後、複数の転写基板300を形成するために父基板302が複製される。この複製プロセスは、転写基板300の大量生産に必要である。なぜなら、フォトリソグラフィーの使用は、高価であり、複数の転写基板300を形成するためにフォトリソグラフィーをスケールアップすることは、経済的に現実的でないからである。従って、経済的なプロセスを用いて父基板302から転写基板を生成する必要がある。
【0052】
一実施形態では、父基板302は、電気めっきプロセスを用いることによって複写可能である。しかしながら、他の方法も可能であることを理解すべきである。図3bに移ると、電気めっき法では父基板302に対して、金属(典型的にはニッケル-合金又は銀-合金)層でスパッタし、めっきプロセスのための導電電極及びシード層306を形成する。一実施形態では、転写基板は、フレキシブル転写基板であってもよい。
【0053】
次に、図3cに移ると、転写基板300がシード層306の上に成長する。転写基板300は、典型的には、ニッケル又は銀のような金属である。転写基板300は、次に、父基板302から取り外され、あわせ面310を有するベース308を含む。あわせ面310は、有機光電子デバイスのベース基板上に堆積された硬化ラッカー層と接触する転写基板300表面である。あわせ面310は、図3dに示すように、その表面の第一部分上に機能的光構造のネガ像312をさらに含む。ネガ像は、図3a及び3dに照らして説明可能である。像312は、像304のネガ像であり、その逆も成り立つ。例えば、円錐形状が有機光電子デバイスのベース基板上に形成される機能的光構造で所望される場合、対応する中空円錐が転写基板上のネガ像312に設けられる。
【0054】
その後、図3eに示すように、電気回路314は、潤滑剤又は界面活性剤を用いてあわせ面を処理することによって、あわせ面310の第二部分に脱離可能に取り付けられる。これによって、電気回路314があわせ面に取り付けられる。電気回路314を転写基板300に取り付けるために使用される処理は、転写基板300と電気回路314の間の密着性が、電気回路314と硬化ラッカー層の間の密着性より実質的に小さくなるようにする。
【0055】
転写基板300は、機能的光構造の高度に最適化された効率的なデザインを有するという利点を有する。使用される電気めっき法は、サブミクロンサイズスケールでの寸法まで非常に精度が高く、大面積表面にスケールアップするのが容易且つ安価である。さらに、機能的光構造の特徴は、正確に最適化及び制御可能である。また、機能的光構造の特徴の横方向寸法及び深さは、独立して最適化可能である。機能的光構造は、ブミクロンレベルで制御され且つ正確な距離を有する周期的又はほぼ周期的構造である。
【0056】
図に示される機能的光構造、電気回路、転写基板は、単なる例示であり、本発明の説明を容易にする目的で提供したものである。図は実寸ではなく、本発明の概念の理解を容易にするために提供されることを理解すべきである。
【0057】
図4に移ると、本発明の実施形態による、有機光電子デバイス(例えばOLED100a)を製造する方法400を示すフローチャートを示す。方法400を説明するために、図1、2及び3参照するが、方法400が他の適切なデバイスを製造するために実行可能であることは理解されるであろう。さらに、本発明は、方法400にリストされるステップの順序に限定されない。さらに、方法400は、図4に示されるものより多い又はより少ないステップ数を含むことができる。
【0058】
さらに、この説明の目的のために、方法400は、OLED及び光取り出しを参照して説明した。しかしながら、本発明が光トラッピングのような光管理目的のTF-PVデバイスで実施可能であることは当業者に明らかであろう。
【0059】
方法400は、ステップ402で開始される。ステップ404では、実質的に平坦な表面を有する基板(例えばベース基板104)が提供される。
【0060】
その後、ステップ406では硬化ラッカー材料がベース基板104上に塗布されて、硬化ラッカー層が形成される。硬化ラッカー材料の例は、紫外線硬化材料、光硬化樹脂ラッカー、アクリレート、シリカ又はシリカ-チタニアベースのゾルゲル材料を含むことができるがこれに限定されない。しかしながら、硬化ラッカー層は、本発明の範囲から逸脱することなく類似の特性を有する材料で形成可能であることは理解すべきである。さらに、ラッカーは、ブラシ又はローラー、分注、スロットダイコーティング、スピン-コーティング、スプレーコーティング、又は印刷を用いることによって堆積可能である。
【0061】
その後、ステップ408では、転写基板(例えば転写基板300)が提供される。転写基板300は、あわせ面310に機能的光構造のネガ像312及び電気回路314を含む。ステップ410では、転写基板300は、硬化ラッカー材料と接触され、機能的光構造をラッカー層上に複製し、同時に電気回路314を転写する。図2aを参照すると、ベース基板202上の電気回路206及び機能的光構造204の形成を見ることができる。
【0062】
複製のいくつかの方法が可能である。一実施形態では光硬化ラッカー(例:光硬化樹脂ラッカー又はゾルゲル材料)は、ベース基板104上に塗布可能である。その後、転写基板300をラッカー層に接触させて、機能的光構造をラッカー層にインプリントし、電気回路をラッカー層に転写することができる。この後に、光硬化プロセスを用いて、ベース基板104の表面上の硬化ラッカー層に機能的光構造及び電気回路314を固定することができる。
【0063】
別の実施形態では、熱硬化ラッカー(例:熱硬化樹脂ラッカー又はゾルゲル材料)がベース基板104上に塗布可能である。その後、転写基板300をラッカー層に接触させて、それによって機能的光構造をインプリントし、電気回路の少なくとも一部をラッカー層内に埋め込む。この後に、加熱して、ベース基板104の表面上の硬化ラッカー層に機能的光構造及び電気回路314を固定することができる。
【0064】
方法400は、ベース基板104上に周期的又はほぼ周期的な機能的光構造及び電気回路を同時に形成することを可能にし、それによって有機光電子デバイスを製造する間の生産時間を低減する。
【0065】
次に、ステップ412では、TCO層(例えば第一電気コンタクト110)は、内部光取り出し層106上に従来の既知の方法で堆積される。第一電気コンタクト110は、種々の方法(例:ディップコーティング、スピンコーティング、ドクターブレード、スプレーコーティング、スクリーン印刷、スパッタリング、ガラスマスタリング、フォトレジストマスタリング、電鋳法、及びエバポレーション)を用いることによって堆積可能である。一実施形態では、第一電気コンタクト110は、アノードとして役立つ。
【0066】
その後、ステップ414では、1又は複数の有機層(例えば1又は複数の有機層112及び114)は、第一電気コンタクト110上に堆積される。1又は複数の有機層112及び114は、種々の方法(例:ディップコーティング、スピンコーティング、ドクターブレード、スプレーコーティング、スクリーン印刷、スパッタリング、ガラスマスタリング、フォトレジストマスタリング、全ての種類のCVD、電鋳法、及びエバポレーション)を用いることによって堆積可能である。
【0067】
その後、ステップ416及び418では、第二電気コンタクト及びカバー基板が従来の方法を用いて形成される。その後、方法400は、ステップ420で完了する。
【0068】
上記の種々の実施形態は、有機光電子デバイスの電気回路及び機能的光構造を同時に形成する方法を提供する。本発明によって提供される方法は、いくつかの利点を有する。この方法は、転写基板の使用を可能にするので、最適化され且つ効率的な機能的光構造を形成するために最も可能性がある技術が使用可能である。電気回路が硬化ラッカー層の表面の外に突出せず、平坦な表面が得られ、この上に、第一電気コンタクトが堆積される。これは、第一電気コンタクトの厚さの不均一性を防ぎ、例えば光電子デバイスでのショートによるその後の電気的な問題又はデバイス劣化を防ぐ。
【0069】
好ましい実施形態に基づいて本発明の開示を行ってきたが、種々の修正及び改良は、当業者に明らかになるであろう。従って、本発明の精神及び範囲は、前記例によって制限されず、法律によって許容される最も広い意味で理解される。
【0070】
本明細書中で参照した全ての文献は、ここに参照取り込みされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板上に堆積された硬化ラッカー層上に電気回路及び機能的光構造を同時に形成する方法であって、前記ベース基板は、有機光電子デバイスで使用され、前記方法は、
前記ベース基板上に前記ラッカー層を形成し、
転写基板を前記硬化ラッカー層に対して接触させ、
前記硬化ラッカー層を硬化させて、それによって、前記硬化ラッカー層上に前記電気回路を固定し、
前記転写基板を取り外す工程を備え、
前記転写基板は、あわせ面によって定義され、
前記あわせ面は、第一部分上に前記電気回路及び第二部分上に前記機能的光構造のネガ像を有し、
前記電気回路は、前記転写基板と前記電気回路の間の密着性が前記電気回路と前記硬化ラッカー層の間の密着性より実質的に小さくなるように、前記あわせ面に脱離可能に取り付けられ、
前記接触は、前記電気回路の少なくとも一部を前記硬化ラッカー層に埋め込むと同時に、前記硬化ラッカー層上に前記機能的光構造を複製することを可能にし、
前記機能的光構造は、光トラッピング及び光取り出しの一つを可能にする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記電気回路は、前記ベース基板に渡って電流パスを確立するための電気グリッド線である、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記転写基板は、フレキシブル転写基板である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記硬化ラッカー層は、散乱粒子をさらに備える、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記有機光電子デバイスは、薄膜光電デバイス(TF-PV)及び有機発光デバイス(OLED)の一つである、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記硬化は、熱硬化及び光硬化の少なくとも1つから選択される、方法。

【図1】
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【図2a−b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222346(P2012−222346A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49283(P2012−49283)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(508064610)モーザー ベイアー インディア リミテッド (13)
【Fターム(参考)】