説明

ラパマイシン42−エステル誘導体の位置特異的合成

ラパマイシン42−エステル誘導体の位置特異的合成方法を記載する。本方法は、適する有機溶媒中、アシル供与体、例えばビニルエステル、イソプロペニルエステルまたは無水物での42ヒドロキシラパマイシンのリパーゼ触媒アシル化を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラパマイシン(Rapamune(登録商標))は、新規作用メカニズムを有する、天然由来の免疫抑制剤である。CCI−779(3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル)は、インビトロモデルにおいても、インビボモデルにおいても腫瘍成長に有意な阻害効果を実証したラパマイシンのエステルである。
【0002】
ラパマイシンの変性は、主としてその42−ヒドロキシエステル誘導体の製造に集中している。これらの42−ヒドロキシラパマイシンエステル誘導体は、免疫抑制の誘導に、ならびに移植拒絶反応、自己免疫疾患、炎症疾患、成人T細胞白血病/リンパ腫、固形腫瘍、真菌感染およびその他の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
42位でのラパマイシンのエステル化は、ラパマイシンをアシル化剤と直接反応させることによって行われている。しかし、ラパマイシンは、31位および42位に2つの第二ヒドロキシル基を有するので、42−モノアシル化生成物の位置選択的合成を達成するためにこれら2つのヒドロキシル基を区別する試みは、難題を呈した。
【0004】
アルキルエステル(米国特許第4,316,885号)、アミノアルキルエステル(米国特許第4,650,803号)、フッ素化エステル(米国特許第5,100,883号)、アミドエステル(米国特許第5,118,667号)、カルバミン酸エステル(米国特許第5,118,678号)、アルコキシエステル(米国特許第5,233,036号)、炭酸エステル(米国特許第5,260,300号)、ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号 &同第6,277,983号)などの、42−アシル化誘導体の合成を含む多数の特許が発行されている。しかし、立体特異的である方法を記載している特許はない。さらに、これらの方法によって製造されるラパマイシンの42−モノエステルの収率は、その劣った位置選択性および塩基性または酸性条件でのラパマイシン分子の不安定さのため、一般には不良から中程度である。純粋な生成物を得るために、通常は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離が必要とされる。位置選択性を改善するために提案された1つの解決法は、中間体として31−シリル保護ラパマイシンを使用することである。しかし、この方法は、さらに幾つかの操作段階を追加する。
【0005】
必要とされているのは、ラパマイシンエステルの効率的な合成方法である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ラパマイシン42−エステル誘導体のリパーゼ触媒合成を提供する。この単純なプロセスの注目すべき特徴は、位置特性および温和な条件下での卓越した収率である。
【0007】
本発明の他の態様および利点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ラパマイシンおよびアシル供与体の存在下でリパーゼを使用することにより一般式(I)のラパマイシン42−エステルを位置特異的な様式で調製するプロセスを提供する。
【化2】

式中、Rは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはチオ置換基を場合によっては含有する、線状または環状、脂肪族または芳香族、飽和または不飽和炭化水素である。1つの実施形態において、前記ハロゲンは、Cl、Br、IまたはFである。
【0009】
ラパマイシンは、以前に記載されているように調製することができる。例えば、1975年12月30日発行の米国特許第3,929,992号参照。あるいは、ラパマイシンは、市場の供給業者から購入してもよいし[Rapamune(登録商標)、Wyeth]、または代替法を用いて調製してもよい。ラパマイシン出発原料を調製、精製および/または得る手段は、本発明を制限する事項ではない。
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、ラパマイシン42−エステルを製造する際に有用な、ケタール保護ラパマイシン42−エステルの位置特異的製造経路を提供する。1つの実施形態において、本発明は、CCI−779の前駆体である、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのイソプロピリデンケタール保護ラパマイシン42−エステルの製造を提供する(実施例7)。CCI−779は、インビトロモデルにおいても、インビボモデルにおいても、腫瘍成長に対して有意な阻害効果を実証したラパマイシンのエステルである。ラパマイシンのこのヒドロキシエステルおよび他のヒドロキシエステルの使用は、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号、ならびに米国特許公開第2005−0033046号A1(米国特許出願番号10/903,062)に記載されている。
【0011】
ケタール保護基の除去は、穏やかな酸性条件下で達成することができる。一般に、米国特許第6,277,983号およびそこに引用されている文献に掲載されている手順に従うことができる。1つの実施形態において、脱保護は、単層酸性水溶液/有機溶媒系、例えば、テトラヒドロフラン(THF)中の希硫酸、例えば約0から5℃で2N H2SO4/THF中で行われる。しかし、この反応は、完了に約3日またはそれ以上かかり、反応完了後に水性媒体から生成物を回収するために溶媒抽出を必要とする。ケタール保護基の他の除去手順、例えば、Proline CCI-779, Production and Uses Therefor, and Two Step Enzymatic Synthesis of Proline CCI-779 and CCI-779 (Chewら、米国特許仮出願番号60/562,069(2004年4月14日出願)および同60/623,594(2004年10月29日出願)に基づくもの)と題する国際特許出願に記載されているものは、当業者には公知であろう。
【0012】
本明細書で用いる場合、「細菌リパーゼ」は、非真核生物源、例えば、中でもアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)から元来単離された、加水分解およびエステル結合の形成を触媒する酵素を包含する。しかし、本発明で使用するために選択される酵素は、元来の供給源から直接単離および精製されたものである必要はなく、合成もしくは組換えで、または他の適する手段により作製されたものであってもよい。幾つかの市場の供給業者から様々なこれらの酵素を入手することができ、さらに、これらの酵素の製剤は、様々な供給業者による異なる商品名での異なる細菌起源の粗製、不完全精製、精製または固定化された状態で、使用することができる。
【0013】
B型カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica, type B)からのリパーゼは、本発明の実施の際、いっそう特に適することが分かる。今日まで研究したすべてのリパーゼのうち、これが最も高い転化率および最も高い単離収率をもたらす。C.アンタルクチカリパーゼは、例えば、Novo Nordiskから製品名 NOVO SP435もしくはNOVOZYME 435で、またはRoche Molecular Biochemicals and BioCatalyticsから製品名CHIRAZYME L−2で市販されている。
【0014】
シュードモナス・セパシアからのリパーゼPS、特にその固定化形態である、リパーゼPS−C[例えば、Amano(天野エンザイム株式会社)から「Amano」IIリパーゼとして入手することができる]は、反応速度はNOVOZYM 435リパーゼより遅いが、合成の見地からそれと同じ程度に良好に反応を遂行することができる。本発明のプロセスのために、細菌(例えば、C.アンタルクチカ(B型)リパーゼは、アシル供与体とラパマイシンとの間の反応を触媒するために適する溶媒と併せる。当業者は、例えば、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、THF、MeCN、CH2Cl2、CHCl3、ヘキサン、ジオキサンまたはこれらの溶媒を含む混合物の中から適する溶媒を容易に選択することができる。1つの実施形態では、TBME(t−ブチルメチルエーテル)が使用される。本発明の方法において利用されるアシル供与体は、幾つかの活性化エステル、例えばビニルエステル、イソプロペニルエステルおよび無水物の中から選択される。
【0015】
1つの実施形態において、前記ビニルエステルは、式CH2=CH−O−COR1(式中、R1は、非置換であるか、ヒドロキシル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)およびチオで置換されている、アルキル、アルケニル、アリール、ベンジルである)のエステルの中から選択される。適するビニルエステルとしては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルクロロアセテート、ビニルクロトネート、ビニルベンゾエート、およびビニルデカノエートが挙げられる。しかし、当業者は、他の適するビニルエステルを容易に選択することができる。
【0016】
1つの実施形態において、イソプロペニルエステルは、式CH2=C(CH3)−OCOR2(式中、R2は、非置換であるか、ヒドロキシル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)およびチオで置換されている、アルキル、アルケニル、アリール、ベンジルである)のエステルの中から選択される。もう1つの実施形態において、前記アシル供与体は、イソプロペニルアセテートである。
【0017】
用語「アルキル」は、1から10個の炭素原子、好ましくは1から8個の炭素原子、最も好ましくは1から6個の炭素原子を有する、直鎖と分枝鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を指すために本明細書では用いる。
【0018】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および2から8個の炭素原子、好ましくは2から6個の炭素原子を有する、直鎖と分枝鎖両方のアルキル基を包含すると解釈する。
【0019】
用語「アリール」は、炭素環式芳香族環構造を指すために本明細書では用い、これは、単一の環であってもよいし、または縮合もしくは連結している環の少なくとも一部が例えば炭素原子数6〜14の共役芳香族環構造を形成するように互いに縮合もしくは連結している多数の芳香族環であってもよい。アリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリルおよびインダンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「ベンジル」は、式C55CH2の基を指すために本明細書では用いる。
【0021】
適する無水物は、アルカン酸無水物(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7およびC8無水物)の中から容易に選択され、これらは、分枝鎖であってもよいし、直鎖であってもよく、またはハロゲン、ヒドロキシルで置換されていてもよい。
【0022】
1つの実施形態において、本発明の酵素的プロセスは、約20℃から約75℃、または約25℃、27℃、30℃、40℃から約70℃、または約32℃もしくは約37℃から約65℃の範囲内で行うことができる。もう1つの実施形態において、この温度は、約30℃から約55℃である。さらにもう1つの実施形態において、この温度は、ほぼ室温から約45℃である。一般に、この反応は、すべての出発原料が消費されるまでN2下で行われる。この反応は、様々な技法、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターすることができる。あるいは、当業者は他のモニター法を用いることができる。
【0023】
ビニルエステルまたはイソプロペニルエステルをアシル供与体として利用する反応では、酵素(リパーゼ)は、ろ過して除去し、適する溶媒で洗浄される。この溶媒は、その反応において使用するために選択されたものと同じであってもよいし、または反応における溶媒と異なってもよい。溶媒が異なる場合、それは、上で定義した溶媒、または他の一般に使用されている溶媒、例えば数ある中でもアセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、の中から選択することができる。その後、併せた有機溶媒を、適する条件下、例えば減圧下で蒸発除去することができる。その後、残留物を、適する手段により、例えば、適する溶媒で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製するか、適する溶媒(例えば、数ある中でもヘキサン−アセトン、ヘキサン−酢酸エチル、エチルエーテル)で再結晶させる。他の適する精製手段は、当業者には公知である。さらに、当業者は、他の適する溶媒混合物および比率を容易に決定することができる。
【0024】
もう1つの実施形態では、42−エステル誘導体の酵素触媒調製の際に無水物がアシル供与体として使用される。収率は通常高く、約95%である。(実施例9〜11)。こうした実施形態では、無水物および適量の酵素を適する溶媒中でラパマイシンと混合し、光から保護されたN2の存在下で、約16から96時間、さらに好ましくは約24時間から48時間攪拌する。好適には、この反応は、ほぼ室温から約50℃で行われる。酵素のラパマイシンに対する量(w/w)は、無水物の種類および反応の長さに基づき、例えば、ラパマイシンと酵素が(重量ベースで)ほぼ当量(w/w)から、反応をより迅速に行わせるために酵素過剰量まで、変化し得る。場合によっては、反応が、上で述べたのように一定時間たっても完了しなければ、追加の酵素を添加してもよいし、TLCまたはHPLCによって判定して反応が完了するまで、さらなる時間にわたってその混合物を攪拌してもよい。酵素を濾過により除去した後、溶媒を減圧下で除去する。残留物は、適する技法を使用して、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製する。
【0025】
本発明の位置特異的ラパマイシン42−誘導体は、薬学的組成物において有用である。従って、本発明のラパマイシン42−誘導体は、ラパマイシンまたはその誘導体について当該技術分野で説明されている任意の適する方法によって配合することができる。
【0026】
本発明の活性化合物を含有する経口配合薬は、錠剤、カプセル、バッカル形、トローチ、ロゼンジおよび経口液、懸濁液または溶液をはじめとする、従来から使用されているあらゆる経口形態を包含し得る。カプセルは、本活性化合物(複数を含む)と不活性充填剤および/または希釈液、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン)、糖、人口甘味料、粉末セルロース(例えば、結晶性および微結晶性セルロース)、小麦粉、ゼラチン、ゴムなど、との混合物を含有し得る。有用な錠剤型配合薬は、従来どおりの圧縮、湿式造粒または乾式造粒法によって製造することができ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉末糖をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、薬学的に許容される希釈液、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を利用することができる。好ましい界面改質剤としては、非イオン性およびアニオン性界面改質剤が挙げられる。界面改質剤の代表例としては、ポロキサマー188、塩化ベンズアルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における経口配合薬は、活性化合物(複数を含む)の吸収を変化させるために、標準的な遅延または持効性配合を利用することができる。この経口配合は、必要に応じて適切な可溶化剤または乳化剤を含有する、水またはフルーツジュース中の活性成分の投与からも成り得る。
【0027】
1つの実施形態において、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルのための経口配合薬は、米国特許公開第2004−0077677号A1に(米国特許出願10/663,506も)記載されている。こうした経口配合薬は、湿式造粒プロセスを使用して調製された顆粒を含有する。
【0028】
場合によっては、本化合物をエーロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましいこともある。
【0029】
本化合物は、非経口または腹腔内投与することもできる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としてのこれらの活性化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシ−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中での分散液を調製することもできる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防止するために保存薬を含有する。
【0030】
注射使用に適する剤形としては、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。すべての場合において、剤形は、無菌でなければならず、および容易に注射可能な程度に流動性でなければならない。製造および保管条件下で安定でなければならず、ならびに細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されねばならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、適切なそれらの混合物ならびに植物油などを含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0031】
1つの実施形態において、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルの注射用配合薬は、米国特許公開第2004−0167152号A1に(米国特許出願番号10/626,943も)記載されている。
【0032】
本発明において有用な非経口配合薬は、直接注射による投与、または静脈内注入用の滅菌輸液への添加による投与に適する剤形を製造するために使用することができる。
【0033】
経皮投与は、上皮および粘膜組織をはじめとする体表をおよび身体の内層を越えて通過するすべての投与を包含すると理解される。こうした投与は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して、ローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液および座剤(直腸および膣座剤)で行うことができる。
【0034】
経皮投与は、活性化合物と、その活性化合物に対して不活性であり、皮膚に対して非毒性であり、全身吸収用の薬剤を皮膚経由で血流に送達することができる担体とを含有する経皮パッチの使用により達成することができる。担体は、クリーム、軟膏、ペースト、ゲルおよび密封デバイス(occlusive devices)など、任意の数の形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、粘稠液であってもよいし、または水中油型もしくは油中水型の半固体乳剤であってもよい。活性成分を含有する石油または親水性石油に分散された吸収性粉末から成るペーストも好適であり得る。血流への活性成分の放出のために、様々な密封デバイス、例えば、担体と共にもしくは伴わずに活性成分を収容しているレザバーを覆う半透膜、または活性成分を含有するマトリックスを使用することができる。他の密封デバイスは文献において公知である。
【0035】
座剤配合薬は、座剤の融点を変化させる蝋の添加を伴うまたは伴わないカカオ脂、およびグリセリンをはじめとする、伝統的な材料から製造することができる。水溶性座剤基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールも、使用することができる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明に従って製造され、適する送達方法による投与のために配合された位置特異的ラパマイシン42−誘導体を収容しているパッケージングおよびキットを提供する。1つの実施形態において、前記位置特異的ラパマイシン42−誘導体は、単位剤形で存在する。ビン、バイアル、ブリスターパックなどをはじめとする様々な適する容器が当業者には公知である。こうしたパッケージングおよびキットは、例えば使用説明書、注射器、アプリケータなどをはじめとする他の構成要素をさらに収容し得る。
【0037】
以下の実施例は、ラパマイシン42−エステル誘導体の位置特異的製造のための本発明の方法を例証するものである。以下の実施例において例証されるように、カンジダ・アンタルクチカリパーゼは、特に、ビニルアセテートをアシル供与体として使用することによるラパマイシンのその42−アシル誘導体へのエステル交換を触媒する能力の点でよく適している。しかし、上で述べたように、本発明は、そのように限定されず、細菌起源の他の適するリパーゼを利用することができる。例えば、シュードモナス・セパシアからのリパーゼPSおよびその固定化形である、リパーゼPS−C「Amano」II、Lipase PS−Dの反応条件は、より高い温度とより多くの触媒を含み得る。例えば、固定化リパーゼPS−Cを利用する1つの実施形態では、室温でNovozym 435リパーゼの転化率を達成するために倍の量のリパーゼ(すなわち、ラパマイシンの200%(W/W))を必要とし、あるいは、それより少ない酵素量(ラパマイシンに対して100%(w/w))を使用する場合には、温度を約45℃に上昇させることができる]。
【0038】
以下の実施例は、ビニルエステル(実施例1〜8)、イソプロペニルエステル(実施例9)または無水物(実施例10〜12)を使用して本発明のプロセスを例証するものである。
【0039】
1つの実施形態において、TBME(0.5mL)中のラパマイシン(20mg、0.022mmol)、ビニルエステル(50μL)およびNOVOZYM 435リパーゼ(20mg)の混合物を、TLCによりモニターしてすべての出発原料が消費されるまで、室温(rt)または45℃、N2下で攪拌した。酵素を濾過して除去し、TBMEで洗浄した。併せた有機溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を、ヘキサン−アセトン(2:1、v/v)で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製するか、ヘキサン−アセトンから再結晶させた。追加の実施例を以下の図式で図示する。
【実施例1】
【0040】
【化3】

【実施例2】
【0041】
【化4】

【実施例3】
【0042】
【化5】

【実施例4】
【0043】
【化6】

【実施例5】
【0044】
【化7】

【実施例6】
【0045】
【化8】

【実施例7】
【0046】
【化9】

【実施例8】
【0047】
【化10】

【実施例9】
【0048】
【化11】

【0049】
以下のように、本発明に従って、無水物をアシル供与体として使用することによりラパマイシン42−エステル誘導体を調製する。
【0050】
TBME(0.5mL)中のラパマイシン(20mg、0.022mmol)、無水物(30mg)およびNOVOZYM 435リパーゼ(20mg)の混合物を室温で48時間(N2、光から保護)攪拌した。[無水酢酸または無水プロピオン酸の場合、48時間後、別の分のNOVOZYM 435リパーゼ(20mg)およびTBME(0.1mL)を添加し、その混合物をさらに48時間攪拌し、その後、反応を停止させた]。その後、溶媒をN2ガスでのフラッシングにより除去した。残留物を、ヘキサン−アセトン(2:1、v/v)で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物を白色の固体として単離した。
【実施例10】
【0051】
【化12】

【実施例11】
【0052】
【化13】

【実施例12】
【0053】
【化14】

【0054】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が制限されることはない。実際、上述の説明および付随する図から、当業者には、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な変形が明らかとなろう。そうした変形は、添付の特許請求の範囲の中に入ると解釈される。
【0055】
さらに、値は近似値であり、説明のために提供していることは、理解されるはずである。
【0056】
特許、特許出願、出版物、手順などが本出願のいたるところで引用されているが、これらの開示は、それら全文が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書とここに挙げた文献との間に矛盾が存在し得る程に、本明細書においてその開示の言語は管理されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リパーゼの存在下、42−ヒドロキシラパマイシンをアシル供与体でアシル化することを含む、式(I):
【化1】

(式中、Rは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはチオを場合によっては含有する、線状または環状、脂肪族または芳香族、飽和または不飽和炭化水素である)のラパマイシン42−エステル誘導体の位置特異的調製方法。
【請求項2】
使用されるリパーゼが、微生物、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、ムコール・ミーヘイ(Mucor miehei)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマ(Rhizopus delemar)からの細菌リパーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用されるリパーゼが、B型カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica type B)からのもの(NOVOZYME 435リパーゼ)またはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)からのもの(リパーゼPS−C「Aamano」II)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アシル供与体が、ビニルエステル、イソプロペニルエステルまたは無水物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ビニルエステルが、式CH2=CH−O−COR1(式中、R1は、ヒドロキシル、ハロゲンおよびSHから独立して選択される基で場合によっては置換されている、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C6〜C14アリール、ベンジルから成る群より選択される)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ビニルエステルが、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルクロロアセテート、ビニルクロトネート、ビニルベンゾエートおよびビニルデカノエートから成る群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ビニルエステルが、イソプロピリデン保護ビニル3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオネートである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記イソプロペニルエステルが、式CH2=C(CH3)−OCOR2(式中、R2は、ヒドロキシル、ハロゲンおよびSHから独立して選択される基で場合によっては置換されている、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C6〜C14アリール、ベンジルから成る群より選択される)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記イソプロペニルエステルが、イソプロペニルアセテートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記無水物が、ハロゲンおよびヒドロキシルから独立して選択される基で場合によっては置換されている、C1〜C8直鎖または分枝鎖アルカン酸無水物である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記反応が、トルエン、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エチルエーテル、THF、MeCN、CH2Cl2、CHCl3、ヘキサン、ジオキサンまたはこれらの混合物から成る群より選択される有機溶媒中で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応が、20℃から75℃の範囲内で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
CCI−779の前駆体である、イソプロピリデンケタール保護3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルの位置特異的製剤。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って製造された位置特異的ラパマイシン42−誘導体を含む組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の位置特異的ラパマイシン42−誘導体製剤を含む組成物。
【請求項16】
生理適合性担体をさらに含む、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物および前記組成物のための容器を含む製品。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか一項に従って製造された位置特異的ラパマイシン42−誘導体の複数の単位を単位剤形で含む薬学的キット。

【公表番号】特表2007−532134(P2007−532134A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508442(P2007−508442)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012266
【国際公開番号】WO2005/105811
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】