ラマン分光法を使用して生物試料のタンパク質プロファイルを得る方法
本発明は、例えば、特定の個人によって提供される試料のタンパク質プロファイルを得るために、生物試料のタンパク質含有量を分析するための方法を提供する。試料中のタンパク質およびタンパク質断片を化学的および/または物理的特性に基づいて分離し、固体基板上または流動中の液体の流れの離散的な位置に分離された状態で維持する。次いで、離散的な位置からのスペクトルが、離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質または断片の構造または識別についての情報を提供するように、離散的な位置において分離された状態のタンパク質または断片によって形成されるのでラマンスペクトルが検出される。離散的な位置のタンパク質または断片は、金または銀などの金属をコーティングされてもよいおよび/または分離されたタンパク質は、SERSスペクトルを提供するように化学的エンハンサーと接触されてもよい。本発明を実施する方法およびキットも提供されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、試料中の分析物の存在を同定するのに有用な方法および装置に関し、さらに特に、ラマン分光法を使用して複合生物試料のタンパク質またはペプチドプロファイルを得る方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
ゲノムレベルのDNA配列決定の顕著な成功により、本発明者らは25年前に想像を絶する知識の入り口に置かれた。この分岐点のデータの、ヒト疾病の診断、段階分け、理解および治療に有用である知識への変換を可能にするには、本発明者らは推定30,000超のヒトタンパク質の配列を知るだけでなく、本発明者らは、疾病の差し迫った発症を予告するタンパク質発現の主要な変化を同定することを必要とする。本発明者らはまた、疾病のサブタイプを分子レベルにおいて正確に分類し、疾病の過程に密接に関係するタンパク質の機能、相互作用および活動を調節する方法を理解することも必要である。タンパク質の機能を理解する最も基礎的な方法の1つは、発現レベルの変化を増殖状態、細胞周期段階、疾病の病期、外部からの刺激、他のタンパク質の発現レベルまたは他の変数の関数として関連させることである。DNAマイクロアレイ分析は、ゲノム規模でのmRNA発現分析の超並列方法を提供するが、mRNAのインビボにおける濃度とコードされるタンパク質の直接的な関係がないことが多い。mRNAのタンパク質への翻訳速度の差およびインビボにおけるタンパク質分解速度の差は、mRNAのタンパク質発現プロファイルへの外挿を混乱させる2つの要因である。
【0003】
さらに、このようなマイクロアレイ分析は、タンパク質機能調節の主要な役割を果たすことが多い、翻訳後タンパク質修飾を検出、同定または定量することができない。タンパク質発現分析は、メッセージレベルではなく、生物的エフェクタータンパク質分子レベルを測定するという点においておそらく大きな利点を提供する。現在では、25,000以上の遺伝子のmRNA発現の相対的レベルを同時にプロファイリングすることにマイクロアレイ分析の能力を接近させることができるタンパク質プロファイリング技術は利用可能でない。
【0004】
従って、種々の生物試料における低濃度の分析物の検出および分析に払われる関心がますます高くなっている。このような分析物の定性分析は、一般に、高い濃度レベルに限定されるが、定量分析は、通常、放射性同位体または蛍光試薬による標識化を必要とする。このような手法は、一般に、時間がかかり、不便である、例えば、種々の様式の質量分析法がタンパク質プロファイリングのために広範に使用されている(図1参照)。
【0005】
また、ソリッド-ステートセンサ、特にバイオセンサは、化学的、生物的および薬学的研究および疾病診断における利用が増加していることにより、最近大きな注目を集めている。一般に、バイオセンサは2つの要素:特異性の高い認識要素および分子認識事象を定量化可能な信号に変換する変換構造からなる。バイオセンサは、オリゴヌクレオチド対、抗体-抗原、ホルモン-受容体、酵素-基質およびレクチン-糖タンパク質相互作用を含む種々の生物分子複合体を検出するように開発されている。信号変換は、一般に、電気化学的、電界効果トランジスタ、光吸収、蛍光または干渉デバイスを用いて実施される。
【0006】
ラマン分光法または表面プラスモン共鳴も、生物試料の個々の分子の感度の高い正確な検出または同定という目標を達成しようと使用されている。光線が関心対象の媒体を通過するとき、ある量の光線は、散乱として公知の現象において元も方向からそれる。散乱される光線の一部は、光線の吸収および高いエネルギー状態への電子の励起により元の励起光線とは周波数が異なり、異なる波長の光線を放射する。吸収される光線のエネルギーと放射される光線のエネルギーの差は媒体の振動エネルギーに一致する。この現象はラマン散乱として公知であり、関心対象の媒体または分子をラマン散乱光線を用いて特徴づけ、分析する方法はラマン分光法と呼ばれる。ラマン発光スペクトルの波長は、試料中のラマン散乱分子の化学的組成および構造に特徴的であり、ラマン散乱光線の強度は試料中の分子の濃度に依存する。
【0007】
ラマンスペクトルは、赤外スペクトルと同様に、分析対象の試料(分析物)に特異的な分子振動に対応するバンドの波長分布からなる。ラマン分光法を実施する際には、光源からのビーム、一般に、レーザーが試料に集束され、それによって非弾性的に散乱される放射線を生じ、光学的に回収され、波長-分散的スペクトロメーターに方向づけられ、検出器が衝突する光子のエネルギーを電気信号強度に変換する。
【0008】
従来、入射光の非弾性散乱光への変換が非常に悪いことが、水溶液の分析などの赤外分光法によって実施が困難であった適用にラマン分光法を制限していた。しかし、粗面化した銀電極に近接している分子をラマン励起源に接触させると、形成される信号強度は、6桁も増加することが発見された。
【0009】
散乱効率のこの大幅な増加の原因となる機序は、現在、多くの研究の主題となっているが、この現象は、以下の3つの条件:(1)金属の自由電子吸収は、好ましくは、レーザービーム形態の250〜2500ナノメーター(nm)の波長の光線によって励起されうること;(2)使用する金属は適当なサイズ(通常、径5〜1000 nmの粒子、または等しい形態の表面)であり、表面プラスモンフィールドを形成するのに必要な光学特性を有すること;および(3)分析物分子が、プラスモンフィールドにカップリングするために効果的に一致する光学特性(吸収)を有することが満足されると生じることが一般に受け入れられている。
【0010】
特に、金、銀、銅およびある種の他の金属のナノ粒子は、電磁放射線の局所効果を増強する働きをすることができる。このような粒子に隣接して配置される分子は、ラマン分光分析の非常に大きな感度を示す。SERSは、この表面増強ラマン散乱効果を使用して、関心対象の生物分子を特徴づけ、分析する技法である。
【0011】
塩化ナトリウムおよび塩化リチウムは、関心対象の分子が導入される前または導入された後に、金属ナノ粒子または金属コーティング表面に適用されるとSERS信号を増強する化学物質として同定されている。しかし、これらの化学的エンハンサーを使用する技法は、1ヌクレオチドまたはタンパク質などの低濃度の分析物分子を信頼性高く検出するほどの感度が証明されていない。唯一の種類のヌクレオチド、デオキシアデノシン一リン酸および唯一の種類のタンパク質、ヘモグロビンが1分子レベルで検出されている。結果として、SERSは、血漿などの複合生物試料のタンパク質含有量を分析するのに好適であると考えられなかった。
【0012】
従って、ラマン分光分析技法を使用して、タンパク質の特徴に関するさらに多くの情報を提供する、血清などの複合生物試料のタンパク質組成を分析し、個々のタンパク質を信頼性高く検出および/または同定する方法の必要性が当技術分野において存在する。さらに、複合試料中の低濃度レベルのタンパク質を定性的および定量的に検出するハイスループット手段の必要性も存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の種々の態様は、ラマン分光法を使用して複合生物試料のタンパク質プロファイルを得て、分析する方法に関する。以下の詳細な説明は、開示されている本発明の態様のさらに完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細を含む。しかし、本発明の態様はこれらの具体的な詳細がなくても実施することができることが当業者に明らかである。他の例において、当技術分野において周知の装置、方法、手法および個々の要素は本明細書において詳細に記載されていない。
【0014】
本発明は、タンパク質の化学的および/または物理的特性に基づいて試料中のタンパク質およびタンパク質断片を分離し、固体基板上または流動中の液体の流れの中の離散的な位置に分離されたタンパク質を分離された状態で維持することによって、生物試料のタンパク質含有量を分析する方法を提供する。次いで、離散的な位置の分離されたタンパク質によって形成されるラマンスペクトルを検出し、離散的な位置のスペクトルは、離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板、銀、金、銅またはアルミニウムのイオンを保持する容器を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキットを提供する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのシステムを提供する。本発明のシステムは、タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板としてこのような要素を含む。本発明のシステムは、少なくとも1つのタンパク質を含有する化合物を含む試料、ラマン分光計および試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータをさらに含む。
【0017】
以下のパラグラフは、本発明の種々の態様を理解する際に有用となる種々の概念および用語を考察する。
【0018】
本明細書において使用する「複合生物試料」という用語は、宿主の生体液などの数百のタンパク質を含有する分析物を含有する試料を意味する。試料は直接調査しても、または試料中のタンパク質-含有分子を変性もしくは断片化するように前処理して、それらをより容易に検出できるようにしてもよい。さらに、関心対象の分析物は、関心対象の分析物が試料中に存在する場合にのみ存在が検出される、関心対象の分析物に相補的な特定の結合ペアメンバーなどの関心対象の分析物を実証する物質を検出することによって判定してもよい。従って、分析物を実証する物質は、アッセイにおいて検出される分析物となる。生体液は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液等であってもよい。
【0019】
本明細書において使用する「タンパク質」という用語は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質ならびに抗原、糖タンパク質、リポタンパク質等などのタンパク質-含有分析物を含む。
【0020】
本発明による一態様において、患者試料などの複合生物混合物からタンパク質組成情報を得る方法が提供される。生物試料中のタンパク質は水溶液または親水性溶媒に溶解される。任意に、試料中のタンパク質は、還元剤、界面活性剤、カオトロピック塩等から選択される薬剤を使用して変性してもよい。ジスルフィド結合を還元するために使用することができる一般的な化学物質には、DTT、DTE、2-メルカプトエタノール等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質を変性するために使用することができる代表的な界面活性剤には、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LDS)、Triton X 100(登録商標)、Tween-20(登録商標)等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質を変性するために使用することができる典型的なカオトロピック塩には、GuSCN、NaSCN、GuClO4、NaClO4および尿素が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質の断片化はタンパク質を変性する別の方法であり、タンパク質を消化するための化学的切断剤またはトリプシンなどのセリン-プロテアーゼを使用して実施することができる。タンパク質は、ラマン分光またはSERS分析のために未変性の構造(未-変性)で維持されてもよい。
【0021】
精度および分解能を増加するために、数多くの公知の方法のいずれかを使用して、化学的および物理的特性により分析中の試料中のタンパク質またはタンパク質断片を分離する。サイズ分離は、例えば、物理的サイズまたは分子量(質量)に基づいている。電苛分離は表面電苛または等電点に基づいている。親水性分離は、タンパク質または断片と疎水性媒体の相互作用に基づいている。親和性分離は配列構造および立体配座に基づいている。一般的なタンパク質分離様式は液体クロマトグラフィーである。タンパク質およびペプチド分離の限定するものではない方法には、サイズ排除、逆相、イオン交換、アフィニティー(FPLC、通常のクロマトグラフィーまたは微小流動装置を使用)および電気泳動(キャピラリー電気泳動またはチップ電気泳動など)が挙げられる。これらの技法のいずれかおよび当技術分野において公知の他の技法は、タンパク質分離のために単独で使用してもまたは併用使用してもよい。
【0022】
試料中のタンパク質または断片は、一旦分離されたら、分離された状態で維持される。本発明の一態様において、分離されたタンパク質または断片は、固体基板上の間隔をおいた離散的な位置に堆積して固定することによって分離された状態で維持される。試料を堆積して固定する方法には、接触ライティング(contact writing)、接触スポッティング、液体噴霧、乾燥粒子噴霧(すなわち、エレクトロスプレー)等が挙げられる。エレクトロスプレー適用において、タンパク質またはタンパク質断片は電場に暴露されてタンパク質または粒子がイオン化され、基板の特定の離散的な位置に分析物を誘導する助けとする。
【0023】
ナノ-エレクトロスプレー技術は質量分析法において広範に使用されており、ナノ-エレクトロスプレーイオン源は当技術分野において公知である。これらの小型化エレクトロスプレー源は、分析物溶液が噴霧される内径約1μmのチップを有する金属化ガラスキャピラリーニードルからなる。ナノ-エレクトロスプレーによって形成される液滴は、従来のエレクトロスプレー源のものより容積が約100倍小さく、ペプチドがイオン化することができない大きい液滴における材料の損失を生じないで、試料の効率的な使用を可能にする。イオン電流は、キャピラリーニードルを通過する流速が極めて低くても(20〜40 nl min-1)、増加される。非常に少量(1〜2μl)のタンパク質を含有する混合物に、ナノ-エレクトロスプレー質量分析法を実施することができるので、ナノ-スプレーディポジション装置への供給流は、試料中のタンパク質を分離するために使用されるナノ-エレクトロスプレー質量分析計から得ることができることが考慮される。エレクトロスプレーおよびナノ-エレクトロスプレー技法ならびにそれらの用途は、Covey, T. R. and Devan, P. Nanospray Electrospray Ionization Development: LC/MS, CE/MS Application. Practical Spectroscopy Series, Volume 32: Applied Electrospray Mass Spectrometry; Pramanik, B. N.; Ganguly, A. K.; Gross, M. L., Eds.; Marcel Dekker: New York, NY, 2002に要約されている。
【0024】
基板アレイのサイズはアレイの最終用途に依存する。約10〜数百万の異なる別個の基板部位を含むアレイを製造することができる。一般に、アレイは、表面サイズに応じて、10以上〜10億以上もの多数のこのような部位を含む。従って、超高密度、高密度、中密度、低密度または超低密度アレイを製造することができる。超高密度アレイは、アレイあたり約10,000,000〜約2,000,000,000部位である。高密度アレイは約100,000〜約10,000,000部位の範囲である。中密度アレイは、約10,000〜約50,000部位である。低密度アレイは、一般に、10,000未満の部位である。超低密度アレイは1,000未満の部位である。
【0025】
部位はパターン、すなわち規則的なデザインもしくは構造を含んでも、またはランダムに分布されてもよい。例えば、部位がX-Y座標面にアドレスを指定することができるように、規則的な部位パターンを使用することができる。基板の表面は、個々の部位への分析物の結合を可能にするように修飾することができる。従って、基板の表面は、別個部位が形成されるように修飾することができる。一態様において、基板の表面は、壁、すなわち基板の表面にくぼみを有するように修飾することができる。これは、フォトリトグラフィー、スタンピング技法、成型技法およびマイクトエッチング技法を含むが、これらに限定されない種々の公知の技法を使用して実施することができる。当業者に理解されるように、使用される技法は基板の組成および形状に依存する。または、基板の表面は、分析物またはプローブを基板の離散的な位置に結合するために使用することができる化学的に誘導された部位を含むように修飾することができる。対応する反応性官能基またはリンカー分子を有する分子を共有結合するために、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基などの化学的な官能基のパターンの追加を使用することができる。
【0026】
離散的な位置のサイズは、一般に、約0.1μm〜10 mm、例えば、1μm〜1 mmまたは5μm〜500μmの範囲内である。
【0027】
図3は、ウェットエレクトロスプレー100による試料堆積の一例を示す。HPLC 110によって分離されているタンパク質断片(点線)は電源180によって供給される電場によってイオン化され、平坦な表面140に絶縁体130によって分離されている金属島120から製造される基板に堆積される。イオン化された分子は、集束管150を通過後、金属島に濃縮される。集束管の内側面はイオン化された粒子と同じ電苛を有し、集束管の回収口160は堆積口170より大きい。水分子は、当技術分野において公知であるように、エレクトロスプレー過程において除去される。または、試料は、Anal. Chem., 2001, 73:6047に記載されているように、アルミニウムなどの基板へのウェットエレクトロスプレーディポジションを使用して、変性させないで堆積させ、固定することができる。このウェットエレクトロスプレー技法において、タンパク質の未変性の特性を保持する機能的に活性なタンパク質フィルムを製造することができる。
【0028】
図4に示すように、エレクトロスプレー装置200において、タンパク質の親水性溶媒210溶液はキャピラリー230からエレクトロスプレーされ、固定するためにマスク240によって形成された修飾されていてもよい基板島220に吸着または共有結合される。この技法を使用して分離された状態で固定されると、機能的に活性なタンパク質は、分子間化学結合の無傷の三次元配座および空間的関係により、ラマンスキャニングなどのスキャニング分析のためのさらに特異的な/独自の分子署名(molecular signatures)を保持する傾向がある。固定前または後にタンパク質またはペプチドを濃縮する機序(基板または装置)を使用してもよい。
【0029】
直接分析物と接触する材料は本明細書において基板といわれ、金、銀、銅およびアルミニウムなどの金属、またはシリコン、ガラスおよびセラミックなどの材料を含む。基板は平坦および/または多孔性表面であってもよく、タンパク質と固体基板の相互作用を増加するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーで基板をコーティングしてもよい。堆積後、分析物を表面にさらに固定するのに十分な、例えば、約100℃において約2時間分離された分析物を基板上で加熱または焼くことができる。
【0030】
SERS-活性ナノ粒子を製造するために、基板に固定されたタンパク質および/または断片に、LiClまたはNaClなどの化学的エンハンサー塩の存在下において、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている個々の形態または集合体で銀コロイド粒子を接触させる。ラマン分光計を使用して、試料領域から分光学的信号を回収する。高濃度のタンパク質を含有する試料については、通常のラマン分光法を使用してタンパク質の量を正確に定量することができる。スペクトルと試料の位置の関係を記録して、相関させる。
【0031】
または、試料のタンパク質は、微小流動システム内の液体の流れの中に分離された状態で維持することもできる。任意に、液体中の分離されたタンパク質試料を別の流体の流れの中の金属コロイドの流れと混合して、分析物を固定しないで、タンパク質断片のSERS検出を可能にすることができる。微小流体環境における数多くの混合方法が文献から利用可能である(Stroock et al., Science 295, 647(2002); Johnson et al., Anal. Chem., (2001))。または、その後のSERS検出のために、金属コロイドの流れをUpchurch Scientific Inc.製のシンプルマイクロミキシングティーを使用してタンパク質断片試料のアウトレットストリームと混合してもよい。
【0032】
ラマンスペクトルおよび/またはSERSスキャニングを実施して、基板の離散的な位置に固定されたまたは流動中の液体中のタンパク質および/またはタンパク質断片を当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている技法を使用して分析して、分析中の試料のタンパク質組成に関する情報を得る。
【0033】
データ分析.
典型的には、ピークおよびベースライン分析、システムノイズ、素量化、プロトコールエラー分析等に関係する従来のスペクトル分析に基づいて、試料について収集したスペクトルプロファイル(または分子署名)を分析する。所定の基板位置のスペクトルのピーク位置、ライン形状および相対的なピーク強度を分析して、異なるタンパク質の相対的な濃度をこの情報から推定する。主成分分析(PCA)などの統計的な多変量解析技法を、ラマンスペクトルを分析するために使用することもできる。例えば、アミド基などのタンパク質骨格のスペクトル特性の強度を使用して、特定の基板位置のタンパク質の総量を定量することができる。種々の化学的バンドを有するタンパク質は同定可能な異なるスペクトル特性を示し、ある種のタンパク質の存在はそれらのスペクトル特性によって検出することができる。試料についてのこれらの方法によって得られるタンパク質プロファイル以外に、ある種の追加の試料情報(例えば、患者情報、対照同定または実験条件)をプロファイリング情報に関連させることができる。例えば、スペクトル情報を、試料が特定の疾病を有する患者由来であるまたは望ましい成果を有する特定の薬剤を服用している患者由来であるかどうかなどの情報と相関させることができる。血清などの特定の種類の試料のためのタンパク質ライブラリーを作製する、医学的に関連のあるラマン痕跡情報のデータベースを作製するために、(統計的に有意であるのに十分に大きい)かなりの数の平行試料からこのような情報を蓄積することができる。また、個々の試料のプロファイルを既存のタンパク質ライブラリーと比較して、異常またはライブラリーのプロファイルの標準と患者試料との差を判定することができる。図6は、この過程を示すブロックダイグラムである。このような技法は、薬剤開発、臨床診断または生物化学的な調査などの目的に有用である。
【0034】
別の態様において、本発明は、タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板;および銀、金、銅またはアルミニウムのイオンを保持する容器を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキットを提供する。本発明のキットは、任意に、タンパク質変性剤をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明のさらに別の態様において、タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板としてこのような要素を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのシステムが提供される。本発明のシステムは、さらに、少なくとも1つのタンパク質-含有化合物を含む試料、ラマン分光計;および試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータをさらに含む。一態様において、ラマン分光計は、複数の離散的な位置から連続的に受信されるSERS信号のスキャナーであり、離散的な位置に固定されている試料含有量のハイスループットスクリーニングに有用である。本発明の方法の一局面において、本発明のゲルマトリックスに組み入れられ、本明細書に記載されているある種の他の分析物分離技法に使用されるSERS-活性ナノ粒子は複合有機-無機ナノ粒子(「COINs」)である。これらのSERS-活性プローブ構築物はコアおよび表面を含み、コアは第1の金属およびラマン-活性有機化合物を含む金属コロイドを含む。COINは、第1の金属と異なる第2の金属を含んでもよく、第2の金属はナノ粒子の表面の上層を形成する層を形成する。COINsは、さらに、金属層の上層を形成する有機層を含んでもよく、有機層はプローブを含む。SERS-活性ナノ粒子の表面に結合するのに好適なプローブには、抗体、抗原、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、受容体、リガンド等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0036】
好適なSERS信号を得るのに必要な金属はCOINに固有であり、多種多様のラマン-活性有機化合物を粒子に組み入れることができる。実際、異なる構造、混合物および比のラマン-活性有機化合物を含有するナノ粒子を使用することによって独自のラマン痕跡を形成することができる。従って、COINsを使用する本明細書に記載されている方法は、試料中の多数の分析物の同時検出に有用であり、生体液の「プロファイル」の含有量を迅速に定量分析する。また、多数のCOINsを1つのナノ粒子に組み入れることができるので、1つのCOIN粒子からのSERS信号は、本明細書に記載されているナノ粒子を含有しないラマン-活性材料で得られるSERS信号と比較して強力である。この状況により、COINsを使用しないラマン-技法と比較して感度が高くなる。
【0037】
本明細書において使用する「コロイド」という用語は、液体、通常水に懸濁しているナノメートルサイズの金属粒子をいう。本発明のナノ粒子への使用が考慮される典型的な金属は、貨幣金属、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等が挙げられる。
【0038】
本明細書において使用する「ラマン-活性有機化合物」は、レーザーによる励起に応答して独自のSERS痕跡を生ずる有機分子をいう。種々のラマン-活性有機化合物が、COINsの要素としての使用が考慮されている。ある態様において、ラマン-活性有機化合物は多環式芳香族またはヘテロ芳香族化合物である。典型的には、ラマン-活性化合物は、約300ダルトン未満の分子量を有する。
【0039】
ラマン-活性有機化合物の限定するものではない追加の例には、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルバイオレット、クレシルブルーバイオレット(cresyl blue violet)、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン等が挙げられる。これらおよび他のラマン-活性有機化合物は市販品供給業者(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手することができる。
【0040】
ある態様において、ラマン-活性化合物は、アデニン、アデニン、4-アミノ-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジン、2-フルオロアデニン、N6-ベンゾイルアデニン(benzolyadenine)、キネチン、ジメチル-アリル-アミノ-アデニン、ゼアチン、ブロモ-アデニン、8-アザ-アデニン、8-アザグアニン、6-メルカプトプリン、4-アミノ-6-メルカプトピラゾール(3,4-d)ピリミジン、8-メルカプトアデニンまたは9-アミノ-アクリジン、4-アミノ-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジンまたは2-フルオロアデニンである。一態様において、ラマン-活性化合物はアデニンである。
【0041】
蛍光化合物を本明細書に記載されているCOINsおよび他のラマン-活性化合物プローブ構築物に組み入れる場合には、蛍光化合物には、染料、本質的に蛍光のタンパク質、ランタニドリン光体(phosphors)等を挙げることができるが、それに限定されるわけではない。COINsおよび他のラマン-活性プローブ構築物に組み入れて光信号を提供するのに有用な染料には、例えば、テキサスレッド、ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン)、ローダミン-NHSおよびTAMRA(5/6-カルボキシテトラメチルローダミンNHS)などのローダミンおよび誘導体;5-ブロモメチルフルオレセインおよびFAM(5'-カルボキシフルオレセインNHS) などのフルオレセインおよび誘導体、Lucifer Yellow、IAEDANS、7-Me2、N-クマリン-4-アセテート、7-OH-4-CH3-クマリン-3-アセテート、7-NH2-4CH3-クマリン-3-アセテート(AMCA)、モノブロモビマン、カスケードブルーなどのピレントリスルホネートおよびモノブロモトリメチル-アンモニオビマンが挙げられる。
【0042】
COINsは、標準的な金属コロイド化学を使用して、本発明の方法に使用するために容易に作製される。COINsの製造は、金属が有機化合物を吸着することができるということも利用している。実際、ラマン-活性有機化合物は、金属コロイドの形成中に金属に吸着されるので、特別な結合化学を必要としなで、多数のラマン-活性有機化合物をCOINに組み入れることができる。
【0043】
一般に、本発明の方法に使用されるCOINsは以下のように製造される。好適な金属陽イオン、還元剤および少なくとも1つの好適なラマン-活性有機化合物を含有する水溶液を調製する。次いで、溶液の成分を、金属陽イオンを還元する条件に接触させて、中性のコロイド金属粒子を形成する。金属コロイドの形成は好適なラマン-活性有機化合物の存在下において生じるので、ラマン-活性有機化合物は、コロイド形成中に金属の容易に吸着される。この簡単な種類のCOINはI型COINといわれる。I型COINsは、典型的には、膜ろ過によって単離することができる。また、異なるサイズのCOINsは遠心分離によって濃縮することができる。
【0044】
別の態様において、COINsは、第1の金属と異なる第2の金属を含んでもよく、第2の金属は、ナノ粒子表面の上層を形成する層を形成する。この種類のSERS-活性ナノ粒子を調製するためには、好適な第2の陽イオンおよび還元剤を含有する水溶液にI型COINs入れる。次いで、ナノ粒子表面の上層を形成する金属層を形成するために、第2の金属陽イオンを還元する条件下に、溶液の成分を接触させる。ある態様において、第2の金属層は、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等などの金属を含む。この型のCOINはII型COINsといわれる。II型COINsは、I型COINsと同じ方法で単離および/または濃縮することができる。典型的にはI型およびII型COINsは実質的に球形で、サイズは約20 nm〜60 nmの範囲である。ナノ粒子のサイズは、検出中に、COINsを照射するために使用される光線の波長に対して非常に小さくなるように選択される。
【0045】
典型的には、金属層の表面に有機化合物を共有結合することによって、有機化合物をII型COINsの第2の金属層に結合する。金属層への有機層の共有結合は、例えば、チオール-金属結合などの、当業者に周知の種々の方法で実施することができる。別の態様において、金属層に結合される有機分子は架橋されて、分子ネットワークを形成することができる。
【0046】
本発明の方法に使用されるCOINsは、例えば、酸化鉄等などの磁気材料を含有するコアを含んでもよい。磁性COINsは、一般的に利用可能な磁性粒子取り扱いシステムを使用して、遠心分離しないで取り扱うことができる。実際、磁力は、特定の生物プローブでタグ化した磁性COIN粒子に結合している生物標的を分離するための機序として使用することができる。
【0047】
本発明のシステムにおいておよび本発明の方法を実施する際において、ラマン分光計は、ラマン分光法によって本発明の方法によって得られるラマン信号を検出し、定量するように設計されている検出装置の一部となってもよい。ラマン分光法を使用して、例えば、金属ナノ粒子に結合しているタンパク質のラマン信号を検出するための方法は当技術分野において公知である。(例えば、米国特許第5,306,403号;同第6,002,471号;同第6,174,677号参照)。表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光法(SERS)およびコヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)のバリエーションが開示されている。
【0048】
ラマン検出装置の限定するものではない例は米国特許第6,002,471号に開示されている。励起ビームは、532 nmの波長の倍波Nd:YAGレーザーまたは365 nm波長の倍波Ti:サファイヤレーザーによって発生される。パルスレーザービームまたは連続波レーザーを使用することができる。励起ビームは共焦点光学系および顕微鏡対物を通過し、流動通路および/またはフロー-スルーセルに集束する。分離されたタンパク質のラマン放射光線は顕微鏡対物および共焦点光学系によって収集されて、スペクトル分離のためにモノクロメーターにカップリングされる。共焦点光学系は、バックグラウンド信号を低下するために、干渉フィルター、バリヤーフィルター、共焦点ピンホール、レンズおよびミラーの組み合わせを含む。共焦点光学系だけでなく、標準的なフルフィールド光学系も使用することができる。ラマン放射信号は、信号の計数およびデジタル化のためのコンピュータに接続されているアバランシェフォトダイオードまたはCCDアレイを含む、ラマン検出器によって検出される。
【0049】
単一光子計数モードで作動されるガリウム-ヒ素光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を有するSpex Model 1403の2重格子分光光度計含む、別の例のラマン検出装置は米国特許第5,306,403号に開示されている。励起源は、SpectraPhysics製のModel 166の 514.5 nmラインのアルゴンイオンレーザーおよびクリプトンイオンレーザー(Innova 70, Coherent)の647.1 nmラインを含む。
【0050】
別の励起源は、337 nmの窒素レーザー(Laser Science Inc.)および325 nmのヘリウム-カドミウムレーザー(Liconox)(米国特許第6,174,677号)、光発光ダイオード、Nd:YLFレーザーおよび/または種々のイオンレーザーおよび/または色素レーザーを含む。励起ビームはバンドパスフィルター(Corion)でスペクトル的に精製されて、流動中のキャリヤーストリーム中の離散的な位置の流動通路または固体基板上の離散的な位置に6倍対物レンズ(Newport, Model L6X)を使用して集束することができる。対物レンズは、ホログラフィックビームスプリッター(Kaiser Optical Systems, Inc., Model HB 647-26N18)を使用して、励起ビームおよび放射されるラマン信号のために直角の構造を形成することによって、金属ナノ粒子に結合しているラマン-活性タンパク質を励起するためおよびラマン信号を回収するために使用することができる。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems, Inc.)を使用して、レイリー散乱放射線を低下することができる。別のラマン検出器は、赤色-増感(red-enhanced)インテンシファイア(intensified)電苛結合素子(RE-ICCD)検出システム(Princeton Instruments)を備えたISA HR-320スペクトログラフ含む。フーリエ変換スペクトログラフ(Michaelson干渉計に基づく)、電苛注入装置、フォトダイオードアレイ、InGaAs検出器、エレクトロン-マルチプライド(electron-multiplied) CCD、インテンシファイア(intensified) CCDおよび/またはフォトトランジスタアレイなどの他の種類の検出器を使用することができる。
【0051】
通常のラマン散乱、共鳴ラマン散乱、表面増強ラマン散乱、表面増強共鳴ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導ゲイン(stimulated gain)ラマン分光法、ハイパー-ラマン散乱、分子光学レーザーイグザミナー(molecular optical laser examiner)(MOLE)またはラマンマイクロプローブまたはラマン顕微鏡または共焦点ラマンマイクロ分光法、三次元またはスキャニングラマン、ラマン飽和(Raman saturation)分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマンデカップリング分光法またはUV-ラマン顕微鏡を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の任意の好適な形態または構成のラマン分光法または関連する技法を、本発明の方法を実施する際にタンパク質の(SERS信号などの)ラマン信号を検出するために使用することができる。
【0052】
本発明のある局面において、本発明の方法を実施する際に特定のタンパク質によって形成されるラマン信号を検出するためのシステムは情報処理システムを含む。例示的な情報処理システムは、情報を通信するためのバスおよび情報を処理するためのプロセッサを含む適当なコンピュータであってもよい。本発明の一態様において、プロセッサは、Intel Corp.(Santa Clara, Calif.)社製のPentium(登録商標) IIファミリー、Pentium(登録商標) IIIファミリーおよびPentium(登録商標) 4ファミリーのプロセッサを含むが、これらに限定されないPentium(登録商標)ファミリーのプロセッサから選択される。本発明の別の態様において、プロセッサは、Celeron(登録商標)、Itanium(登録商標)またはPentium Xeon(登録商標)プロセッサ(Intel Corp., Santa Clara, Calif.)であってもよい。本発明の種々の他の態様において、プロセッサは、Intel(登録商標) IA-32またはIntel(登録商標) IA-64アーキテクチャなどのIntel(登録商標)アーキテクチャに基づいてもよい。または、他のプロセッサを使用することができる。情報処理および制御システムは、メモリ、ディスプレイ、キーボードおよび/または他のデバイスなどの当技術分野において公知の任意の周辺デバイスをさらに含んでもよい。
【0053】
特定の例において、検出装置を情報処理システムに機能的に接続することができる。検出装置からのデータはプロセッサによって処理され、データはメモリに保存することができる。種々の患者試料の放射プロファイルのデータもメモリに保存することができる。プロセッサは、基板の別個の「スポット」からの放射スペクトルと複数の同様の患者試料の分析から得られるデータの編集を比較して、試料の特定のタンパク質もしくは断片を同定するまたは分析中の試料中のタンパク質とタンパク質ライブラリーの対応するタンパク質の差を同定することができる。プロセッサは、検出装置からのデータを分析して、例えば、健康の個人の対応するタンパク質に存在しない特定のタンパク質の翻訳後修飾の存在を判定することができる。情報処理システムはまた、バックグラウンド信号の減算などの標準的な手順も実施することができる。
【0054】
本発明のある方法はプログラムされたプロセッサの制御下で実施することができるが、本発明の別の態様において、本発明の方法は、Field Programmable Gate Arrays(FPGAs)、TTL ロジックまたはApplication Specific Integrated Circuits(ASICs)などの任意のプログラム式またはハードコードされたロジックによって完全にまたは部分的に実行することができる。さらに、開示されている方法はプログラム式汎用コンピュータ要素および/またはカスタムハードウェア要素の任意の組み合わせによって実施することができる。
【0055】
データ収集演算の後、データは、典型的には、データ解析演算に報告される。解析演算を容易にするために、検出装置でえられたデータは、上記のものなどのデジタルコンピュータを使用して分析される。典型的には、コンピュータは、検出装置からのデータの受信および保存ならびに収集されたデータの解析および報告のために適当にプログラムされる。
【0056】
本発明のある態様において、特注設計されたソフトウェアパッケージを、検出装置から得られるデータを解析するために使用することができる。本発明の別の態様において、データ解析は、情報処理システムおよび公共利用可能なソフトウェアパッケージを使用して実施することができる。
【0057】
本発明は、以下の限定するものではない実施例によってさらに例示される。
【0058】
実施例 1
標準的なペプチドについての実験.
以下の表1に示す標準的なペプチドを合成し、標準的なペプチドの10μlのストック溶液(100 ng/μl)をアルミニウム基板の離散的な位置に堆積させて、乾燥させた。ラマン分光法は、80μlの1:2コロイド銀/水および20 nlの0.5 M LiClからなるSERSコロイド溶液を用いて実施した。各ペプチドについて合計1500スペクトルを収集した:100フレームについて各々5回の実験を3スキャン。スペクトルの正規化後にペプチドのラマン信号を識別することができるかどうかを判定するために、主成分分析(PCA)を実施した。図7は、ペプチドの各々について収拾したラマンスペクトルを示す。PCA分析の結果は図8に示す。
【0059】
(表1)ペプチド標準
【0060】
実施例 2
この実験の目的は、タンパク質標的のラマンタグ化または標識化しないで、モデルの複合タンパク質のタンパク質プロファイルを得るための最適な試料検出条件を設定することである。試薬用のコウシ細胞培養血清を試料源として使用した。最初の実験において、全コウシ血清試料の3つのセットをアルミニウム基板に堆積させ、コロイド銀(水で1:2希釈したAg 溶液160μLの+BSA(20μL 1% BSA)+LiCl(40μL 0.5 M LiCl)を含有する)のカバーを適用する際の各段階が調製された後に空気-乾燥した状態または濡れた状態で試験した。以下の表2は、各試料についての試料検出条件の組み合わせを示す。試料は、820 〜900の波長範囲で励起し、SERS信号は1秒の試験期間に収集した。試料5(ウェット-ドライ-ウェット)および9(ウェット-ウェット-ウェット)だけがSERSスペクトルを生じ、これらの条件下ではウェット試料がドライ試料より好ましいことを示している。
【0061】
(表2)
【0062】
全コウシ血清のSERS検出限界を求めるために、コウシ血清の水による連続希釈液を使用して上記の実験を反復した。これは、全コウシ血清のSERS検出限界は0.1%コウシ血清水溶液である(励起波長785 nm、収集時間1secを使用)であることが求められることを意味する。
【0063】
1% BSAおよび1%コウシ血清(アルミニウム基板に空気乾燥)のSERSスペクトルを収集し(収集時間1sec)、比較した。図9Aおよび9Bに示すように、BSAおよびコウシ血清は、それぞれ、同様のSERSスペクトルを有する。類似性および差を理解するために、2つの異なる製造供給元:New England Biolabs(3.33 mg/ml BSAの1×PBS溶液)およびRoche Chemicals(2.5 mg/ml BSAの1×PBS溶液)製のBSAを使用してSERSスペクトルを収集した。New England BiolabsのBSA試料は、Roche Chemicalsの試料よりはるかに強いSERS信号を生じた(820〜900 nm、1secのスペクトル収集を使用)。BSAの純度またはアセチル化修飾のBSA間の差がSERSスペクトルの差の原因である可能性があると思われることが仮定された。
【0064】
実施例3
この実験の目的は、コウシ血清をモデル試料として使用して、無傷のタンパク質を含有する複合タンパク質混合物のHPLC分離したタンパク質分画からSERSデータを得るための最適な条件を設定することであった。この実験の準備として、低分子量タンパク質標準をHPLCによって分別した。1×PBSにおける1.33μg/μl濃度を各々に使用し、注入容量は10μlであった。使用した標準はホスホリラーゼ(97 kDa);BSA(66 kDa);卵白アルブミン(45 kDa);炭酸脱水素酵素(30 kDa);トリプシンインヒビター(20.1 kDa);およびα-ラクトアルブミン(14.4 kDa)であった。
【0065】
14000 rpmで10分遠心分離することによって0.45μmスピンフィルターでろ過後、Zorbax GF-220カラムおよび注入容量10μlを使用して、水で1:30希釈して、コウシ血清をHPLCで分離した。分画1〜11を12.5分の溶出時間にわたって収集し、約20分後に追加の1つの分画を収集した。UV-Vis測定を得るにはタンパク質濃度は非常に低いことが見出された。従って、タンパク質アッセイキャリブレーションキット(Micro BCA)を使用して、タンパク質を紫に染色して、分画をA562で読んだ。しかし、おそらくBSAである分画10を除いて、濃度は依然低かった。アルブミン枯渇キットは、コウシ血清中のBSAの優位を十分に低下することができなかった。以下の表3は、関心対象のHPLC分画の推定されるタンパク質濃度を示す。
【0066】
(表3)
【0067】
分画からSERSスペクトルを得るための調製において、10μlの各分画を1×PBSおよび1:10希釈したコウシ血清と共にアルミニウム基板にスポットし、約2時間空気乾燥させた。1×PBSからはSERS信号は得られなかったが、10%コウシ血清(404.8μg/mLのコウシ血清を含有する分画9)から強力なSERS信号が得られた。他の低濃度コウシ血清分画からはSERS信号は得られなかった。
【0068】
SERS信号を得るために、低濃度分画を約5時間凍結乾燥し、水に再溶解することによってさらに高い濃度の分画を得た。次いで、10μlの各分画を、2.5mg/ml BSA(Roche)、3.33 mg/ml BAS(NEW)および1:10希釈したコウシ血清をアルミニウム基板にスポットすることによってSERS試料を得た。スポットは、約2時間基板上で空気乾燥させた。以下の表4は、濃縮した分画における濃度を示す。
【0069】
(表4)
【0070】
次いで、図10に示すように、ラマン信号を濃縮した試料から得た。
【0071】
これらの実験から、ラマンタグまたはラマン標識化を使用しないSERS信号の収集に供される意図の分画において分画において高濃度のタンパク質を作製するためには高度に濃縮したタンパク質試料をHPLC分離に使用しなければならないことが判定された。アルブミン枯渇キットは、高濃度コウシ血清に無効であることも見出された。
【0072】
実施例4
SERS-活性化学構造へのアクセスは低分子における方が容易なので、ペプチドはタンパク質より強いSERS信号を提供することが仮定された。異なる配列のペプチドは、タンパク質プロファイリングに使用することができる独自のSERS痕跡を提供することも仮定された。この仮説を試験するために、コウシ血清試料を、移動相として1×PBS、試料容量20μlおよびアイソクラチック方法を使用し、操作時間20分のZorbax GF-250カラム(ジオール、サイズ排除)によるHPLC分離に供した。クロマトグラフの主要なアルブミンピーク(UV測定)は、標品注入によるアルブミンと確認された。アルブミンの主要な吸収ピークは205 nmおよび225 nmである。しかし、コウシ血清の主要なHPLCピーク(BSA)のUV吸光度プロファイルは、吸収ピークが均一でないことを示しており、ピークに多数のタンパク質が存在することを示している。
【0073】
全タンパク質の代わりにペプチドを用いて実施するSERS信号への影響を求めるために、コウシ血清試料にトリプシン消化を実施して、ペプチド混合物を酸性媒体によるC18カラムのHPLCで分離した。C18カラムの脂肪族鎖-コーティングシリカがペプチドに結合し、TFA-CH3CN移動相が、疎水性によりペプチドを溶出する。移動相中の酸は、ペプチドの酸性基をプロトン化して、それらをカラムに長く滞在させるのに必要である。HPLC分離は、試料容量50 μlおよび消化前の1.4μg/μl(?21 μM)の試料濃度を使用した。各分画は?80 pmolのペプチドを有した。HPLCは、Zorbax SB-C18カラムを、緩衝液Aとして0.1% TFAおよび緩衝液Bとしてアセトニトリルを含有する移動相緩衝液と共に使用した。手法は、0〜?5分はA 100%;5〜?40分はA100%からB 100%まで濃度勾配させた。トリプシン消化後のコウシ血清のHPLC分離のクロマトグラフを図11Aに示す。HPLCペプチド分画はUV吸収(215 nm) (図11B)およびSERSスペクトルについても測定した (図11C)。
【0074】
これらの実験の結果は、適切なタンパク質試料調製が重要であり、タンパク質分別または変性は、ラマン-活性ドメインまたはアミノ酸残基を銀表面に接触させる際に有用であることを示している。
【0075】
本発明は上記の実施例を参照して記載されているが、改良および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解される。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】複合生物試料のタンパク質プロファイルを提供するための質量分析法に使用される一般的な過程を示すブロックダイアグラムである。
【図2】複合生物試料のタンパク質プロファイルを提供するためのSERSスペクトルを使用する本発明の方法に使用される一般的な過程を示すブロックダイアグラムである。
【図3】エレクトロスプレーにより本発明の方法において試料を堆積させる装置を示す図面である。タンパク質断片はHPLCで分離され、イオン化され、平坦な面に絶縁体で分離されている金属島からなる基板に堆積される。集束管を通過後、イオン化した分子は金属島に濃縮される。集束管の内側面はイオン化した粒子と同じ電苛を有し、集束管の回収口は堆積口より大きい。
【図4】ウェットエレクトロスプレーにより本発明の方法において試料を堆積させる別の装置を示す図である。分離されたタンパク質の親水性溶媒溶液はイオンとしてエレクトロスプレーされ、固定のためにフラット面のマスクまたはスクリーンによって分離されている修飾されていてもよい基板島に吸着または共有結合される。
【図5】高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分離されたコウシ血清ペプチド鎖から得られるSERS信号の蓄積である。
【図6】血液試料のラマン分光法によって得られるタンパク質プロファイリング結果を分析するための本発明の過程を示すブロックダイグラムである。個々の試料の結果をタンパク質ライブラリーに組み入れ、個々の試験試料について得られるラマンプロファイル結果のさらなる分析(例えば、診断)に使用する。
【図7】ラマンタグを使用しないで、表1の標準的なペプチドについて回収したSERSスペクトルを示すSERSスペクトログラフである。
【図8】図7のラマンスペクトルについて実施した主成分分析(PCA)の結果を示すグラフである。
【図9】ラマンタグを使用しないで、BSAおよびコウシ血清についてそれぞれ得られたSERSスペクトログラフである。
【図10】ラマン標識を使用しないで、コウシ血清の濃縮したHPLC分画から得られるSERSスペクトルを示すSERSスペクトログラフである。
【図11A】トリプシン-消化し、HPLC-分離したコウシ血清分画のクロマトグラフである。
【図11B】HPLCクロマトグラフを図11Aに示すトリプシン-消化したコウシ血清分画のUV吸収(215 nm)のグラフである。
【図11C】HPLCクロマトグラフを図11Aに示すトリプシン-消化したコウシ血清分画のSERSスペクトログラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、試料中の分析物の存在を同定するのに有用な方法および装置に関し、さらに特に、ラマン分光法を使用して複合生物試料のタンパク質またはペプチドプロファイルを得る方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
ゲノムレベルのDNA配列決定の顕著な成功により、本発明者らは25年前に想像を絶する知識の入り口に置かれた。この分岐点のデータの、ヒト疾病の診断、段階分け、理解および治療に有用である知識への変換を可能にするには、本発明者らは推定30,000超のヒトタンパク質の配列を知るだけでなく、本発明者らは、疾病の差し迫った発症を予告するタンパク質発現の主要な変化を同定することを必要とする。本発明者らはまた、疾病のサブタイプを分子レベルにおいて正確に分類し、疾病の過程に密接に関係するタンパク質の機能、相互作用および活動を調節する方法を理解することも必要である。タンパク質の機能を理解する最も基礎的な方法の1つは、発現レベルの変化を増殖状態、細胞周期段階、疾病の病期、外部からの刺激、他のタンパク質の発現レベルまたは他の変数の関数として関連させることである。DNAマイクロアレイ分析は、ゲノム規模でのmRNA発現分析の超並列方法を提供するが、mRNAのインビボにおける濃度とコードされるタンパク質の直接的な関係がないことが多い。mRNAのタンパク質への翻訳速度の差およびインビボにおけるタンパク質分解速度の差は、mRNAのタンパク質発現プロファイルへの外挿を混乱させる2つの要因である。
【0003】
さらに、このようなマイクロアレイ分析は、タンパク質機能調節の主要な役割を果たすことが多い、翻訳後タンパク質修飾を検出、同定または定量することができない。タンパク質発現分析は、メッセージレベルではなく、生物的エフェクタータンパク質分子レベルを測定するという点においておそらく大きな利点を提供する。現在では、25,000以上の遺伝子のmRNA発現の相対的レベルを同時にプロファイリングすることにマイクロアレイ分析の能力を接近させることができるタンパク質プロファイリング技術は利用可能でない。
【0004】
従って、種々の生物試料における低濃度の分析物の検出および分析に払われる関心がますます高くなっている。このような分析物の定性分析は、一般に、高い濃度レベルに限定されるが、定量分析は、通常、放射性同位体または蛍光試薬による標識化を必要とする。このような手法は、一般に、時間がかかり、不便である、例えば、種々の様式の質量分析法がタンパク質プロファイリングのために広範に使用されている(図1参照)。
【0005】
また、ソリッド-ステートセンサ、特にバイオセンサは、化学的、生物的および薬学的研究および疾病診断における利用が増加していることにより、最近大きな注目を集めている。一般に、バイオセンサは2つの要素:特異性の高い認識要素および分子認識事象を定量化可能な信号に変換する変換構造からなる。バイオセンサは、オリゴヌクレオチド対、抗体-抗原、ホルモン-受容体、酵素-基質およびレクチン-糖タンパク質相互作用を含む種々の生物分子複合体を検出するように開発されている。信号変換は、一般に、電気化学的、電界効果トランジスタ、光吸収、蛍光または干渉デバイスを用いて実施される。
【0006】
ラマン分光法または表面プラスモン共鳴も、生物試料の個々の分子の感度の高い正確な検出または同定という目標を達成しようと使用されている。光線が関心対象の媒体を通過するとき、ある量の光線は、散乱として公知の現象において元も方向からそれる。散乱される光線の一部は、光線の吸収および高いエネルギー状態への電子の励起により元の励起光線とは周波数が異なり、異なる波長の光線を放射する。吸収される光線のエネルギーと放射される光線のエネルギーの差は媒体の振動エネルギーに一致する。この現象はラマン散乱として公知であり、関心対象の媒体または分子をラマン散乱光線を用いて特徴づけ、分析する方法はラマン分光法と呼ばれる。ラマン発光スペクトルの波長は、試料中のラマン散乱分子の化学的組成および構造に特徴的であり、ラマン散乱光線の強度は試料中の分子の濃度に依存する。
【0007】
ラマンスペクトルは、赤外スペクトルと同様に、分析対象の試料(分析物)に特異的な分子振動に対応するバンドの波長分布からなる。ラマン分光法を実施する際には、光源からのビーム、一般に、レーザーが試料に集束され、それによって非弾性的に散乱される放射線を生じ、光学的に回収され、波長-分散的スペクトロメーターに方向づけられ、検出器が衝突する光子のエネルギーを電気信号強度に変換する。
【0008】
従来、入射光の非弾性散乱光への変換が非常に悪いことが、水溶液の分析などの赤外分光法によって実施が困難であった適用にラマン分光法を制限していた。しかし、粗面化した銀電極に近接している分子をラマン励起源に接触させると、形成される信号強度は、6桁も増加することが発見された。
【0009】
散乱効率のこの大幅な増加の原因となる機序は、現在、多くの研究の主題となっているが、この現象は、以下の3つの条件:(1)金属の自由電子吸収は、好ましくは、レーザービーム形態の250〜2500ナノメーター(nm)の波長の光線によって励起されうること;(2)使用する金属は適当なサイズ(通常、径5〜1000 nmの粒子、または等しい形態の表面)であり、表面プラスモンフィールドを形成するのに必要な光学特性を有すること;および(3)分析物分子が、プラスモンフィールドにカップリングするために効果的に一致する光学特性(吸収)を有することが満足されると生じることが一般に受け入れられている。
【0010】
特に、金、銀、銅およびある種の他の金属のナノ粒子は、電磁放射線の局所効果を増強する働きをすることができる。このような粒子に隣接して配置される分子は、ラマン分光分析の非常に大きな感度を示す。SERSは、この表面増強ラマン散乱効果を使用して、関心対象の生物分子を特徴づけ、分析する技法である。
【0011】
塩化ナトリウムおよび塩化リチウムは、関心対象の分子が導入される前または導入された後に、金属ナノ粒子または金属コーティング表面に適用されるとSERS信号を増強する化学物質として同定されている。しかし、これらの化学的エンハンサーを使用する技法は、1ヌクレオチドまたはタンパク質などの低濃度の分析物分子を信頼性高く検出するほどの感度が証明されていない。唯一の種類のヌクレオチド、デオキシアデノシン一リン酸および唯一の種類のタンパク質、ヘモグロビンが1分子レベルで検出されている。結果として、SERSは、血漿などの複合生物試料のタンパク質含有量を分析するのに好適であると考えられなかった。
【0012】
従って、ラマン分光分析技法を使用して、タンパク質の特徴に関するさらに多くの情報を提供する、血清などの複合生物試料のタンパク質組成を分析し、個々のタンパク質を信頼性高く検出および/または同定する方法の必要性が当技術分野において存在する。さらに、複合試料中の低濃度レベルのタンパク質を定性的および定量的に検出するハイスループット手段の必要性も存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の種々の態様は、ラマン分光法を使用して複合生物試料のタンパク質プロファイルを得て、分析する方法に関する。以下の詳細な説明は、開示されている本発明の態様のさらに完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細を含む。しかし、本発明の態様はこれらの具体的な詳細がなくても実施することができることが当業者に明らかである。他の例において、当技術分野において周知の装置、方法、手法および個々の要素は本明細書において詳細に記載されていない。
【0014】
本発明は、タンパク質の化学的および/または物理的特性に基づいて試料中のタンパク質およびタンパク質断片を分離し、固体基板上または流動中の液体の流れの中の離散的な位置に分離されたタンパク質を分離された状態で維持することによって、生物試料のタンパク質含有量を分析する方法を提供する。次いで、離散的な位置の分離されたタンパク質によって形成されるラマンスペクトルを検出し、離散的な位置のスペクトルは、離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板、銀、金、銅またはアルミニウムのイオンを保持する容器を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキットを提供する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのシステムを提供する。本発明のシステムは、タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板としてこのような要素を含む。本発明のシステムは、少なくとも1つのタンパク質を含有する化合物を含む試料、ラマン分光計および試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータをさらに含む。
【0017】
以下のパラグラフは、本発明の種々の態様を理解する際に有用となる種々の概念および用語を考察する。
【0018】
本明細書において使用する「複合生物試料」という用語は、宿主の生体液などの数百のタンパク質を含有する分析物を含有する試料を意味する。試料は直接調査しても、または試料中のタンパク質-含有分子を変性もしくは断片化するように前処理して、それらをより容易に検出できるようにしてもよい。さらに、関心対象の分析物は、関心対象の分析物が試料中に存在する場合にのみ存在が検出される、関心対象の分析物に相補的な特定の結合ペアメンバーなどの関心対象の分析物を実証する物質を検出することによって判定してもよい。従って、分析物を実証する物質は、アッセイにおいて検出される分析物となる。生体液は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液等であってもよい。
【0019】
本明細書において使用する「タンパク質」という用語は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質ならびに抗原、糖タンパク質、リポタンパク質等などのタンパク質-含有分析物を含む。
【0020】
本発明による一態様において、患者試料などの複合生物混合物からタンパク質組成情報を得る方法が提供される。生物試料中のタンパク質は水溶液または親水性溶媒に溶解される。任意に、試料中のタンパク質は、還元剤、界面活性剤、カオトロピック塩等から選択される薬剤を使用して変性してもよい。ジスルフィド結合を還元するために使用することができる一般的な化学物質には、DTT、DTE、2-メルカプトエタノール等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質を変性するために使用することができる代表的な界面活性剤には、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LDS)、Triton X 100(登録商標)、Tween-20(登録商標)等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質を変性するために使用することができる典型的なカオトロピック塩には、GuSCN、NaSCN、GuClO4、NaClO4および尿素が挙げられるが、それに限定されるわけではない。タンパク質の断片化はタンパク質を変性する別の方法であり、タンパク質を消化するための化学的切断剤またはトリプシンなどのセリン-プロテアーゼを使用して実施することができる。タンパク質は、ラマン分光またはSERS分析のために未変性の構造(未-変性)で維持されてもよい。
【0021】
精度および分解能を増加するために、数多くの公知の方法のいずれかを使用して、化学的および物理的特性により分析中の試料中のタンパク質またはタンパク質断片を分離する。サイズ分離は、例えば、物理的サイズまたは分子量(質量)に基づいている。電苛分離は表面電苛または等電点に基づいている。親水性分離は、タンパク質または断片と疎水性媒体の相互作用に基づいている。親和性分離は配列構造および立体配座に基づいている。一般的なタンパク質分離様式は液体クロマトグラフィーである。タンパク質およびペプチド分離の限定するものではない方法には、サイズ排除、逆相、イオン交換、アフィニティー(FPLC、通常のクロマトグラフィーまたは微小流動装置を使用)および電気泳動(キャピラリー電気泳動またはチップ電気泳動など)が挙げられる。これらの技法のいずれかおよび当技術分野において公知の他の技法は、タンパク質分離のために単独で使用してもまたは併用使用してもよい。
【0022】
試料中のタンパク質または断片は、一旦分離されたら、分離された状態で維持される。本発明の一態様において、分離されたタンパク質または断片は、固体基板上の間隔をおいた離散的な位置に堆積して固定することによって分離された状態で維持される。試料を堆積して固定する方法には、接触ライティング(contact writing)、接触スポッティング、液体噴霧、乾燥粒子噴霧(すなわち、エレクトロスプレー)等が挙げられる。エレクトロスプレー適用において、タンパク質またはタンパク質断片は電場に暴露されてタンパク質または粒子がイオン化され、基板の特定の離散的な位置に分析物を誘導する助けとする。
【0023】
ナノ-エレクトロスプレー技術は質量分析法において広範に使用されており、ナノ-エレクトロスプレーイオン源は当技術分野において公知である。これらの小型化エレクトロスプレー源は、分析物溶液が噴霧される内径約1μmのチップを有する金属化ガラスキャピラリーニードルからなる。ナノ-エレクトロスプレーによって形成される液滴は、従来のエレクトロスプレー源のものより容積が約100倍小さく、ペプチドがイオン化することができない大きい液滴における材料の損失を生じないで、試料の効率的な使用を可能にする。イオン電流は、キャピラリーニードルを通過する流速が極めて低くても(20〜40 nl min-1)、増加される。非常に少量(1〜2μl)のタンパク質を含有する混合物に、ナノ-エレクトロスプレー質量分析法を実施することができるので、ナノ-スプレーディポジション装置への供給流は、試料中のタンパク質を分離するために使用されるナノ-エレクトロスプレー質量分析計から得ることができることが考慮される。エレクトロスプレーおよびナノ-エレクトロスプレー技法ならびにそれらの用途は、Covey, T. R. and Devan, P. Nanospray Electrospray Ionization Development: LC/MS, CE/MS Application. Practical Spectroscopy Series, Volume 32: Applied Electrospray Mass Spectrometry; Pramanik, B. N.; Ganguly, A. K.; Gross, M. L., Eds.; Marcel Dekker: New York, NY, 2002に要約されている。
【0024】
基板アレイのサイズはアレイの最終用途に依存する。約10〜数百万の異なる別個の基板部位を含むアレイを製造することができる。一般に、アレイは、表面サイズに応じて、10以上〜10億以上もの多数のこのような部位を含む。従って、超高密度、高密度、中密度、低密度または超低密度アレイを製造することができる。超高密度アレイは、アレイあたり約10,000,000〜約2,000,000,000部位である。高密度アレイは約100,000〜約10,000,000部位の範囲である。中密度アレイは、約10,000〜約50,000部位である。低密度アレイは、一般に、10,000未満の部位である。超低密度アレイは1,000未満の部位である。
【0025】
部位はパターン、すなわち規則的なデザインもしくは構造を含んでも、またはランダムに分布されてもよい。例えば、部位がX-Y座標面にアドレスを指定することができるように、規則的な部位パターンを使用することができる。基板の表面は、個々の部位への分析物の結合を可能にするように修飾することができる。従って、基板の表面は、別個部位が形成されるように修飾することができる。一態様において、基板の表面は、壁、すなわち基板の表面にくぼみを有するように修飾することができる。これは、フォトリトグラフィー、スタンピング技法、成型技法およびマイクトエッチング技法を含むが、これらに限定されない種々の公知の技法を使用して実施することができる。当業者に理解されるように、使用される技法は基板の組成および形状に依存する。または、基板の表面は、分析物またはプローブを基板の離散的な位置に結合するために使用することができる化学的に誘導された部位を含むように修飾することができる。対応する反応性官能基またはリンカー分子を有する分子を共有結合するために、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基などの化学的な官能基のパターンの追加を使用することができる。
【0026】
離散的な位置のサイズは、一般に、約0.1μm〜10 mm、例えば、1μm〜1 mmまたは5μm〜500μmの範囲内である。
【0027】
図3は、ウェットエレクトロスプレー100による試料堆積の一例を示す。HPLC 110によって分離されているタンパク質断片(点線)は電源180によって供給される電場によってイオン化され、平坦な表面140に絶縁体130によって分離されている金属島120から製造される基板に堆積される。イオン化された分子は、集束管150を通過後、金属島に濃縮される。集束管の内側面はイオン化された粒子と同じ電苛を有し、集束管の回収口160は堆積口170より大きい。水分子は、当技術分野において公知であるように、エレクトロスプレー過程において除去される。または、試料は、Anal. Chem., 2001, 73:6047に記載されているように、アルミニウムなどの基板へのウェットエレクトロスプレーディポジションを使用して、変性させないで堆積させ、固定することができる。このウェットエレクトロスプレー技法において、タンパク質の未変性の特性を保持する機能的に活性なタンパク質フィルムを製造することができる。
【0028】
図4に示すように、エレクトロスプレー装置200において、タンパク質の親水性溶媒210溶液はキャピラリー230からエレクトロスプレーされ、固定するためにマスク240によって形成された修飾されていてもよい基板島220に吸着または共有結合される。この技法を使用して分離された状態で固定されると、機能的に活性なタンパク質は、分子間化学結合の無傷の三次元配座および空間的関係により、ラマンスキャニングなどのスキャニング分析のためのさらに特異的な/独自の分子署名(molecular signatures)を保持する傾向がある。固定前または後にタンパク質またはペプチドを濃縮する機序(基板または装置)を使用してもよい。
【0029】
直接分析物と接触する材料は本明細書において基板といわれ、金、銀、銅およびアルミニウムなどの金属、またはシリコン、ガラスおよびセラミックなどの材料を含む。基板は平坦および/または多孔性表面であってもよく、タンパク質と固体基板の相互作用を増加するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーで基板をコーティングしてもよい。堆積後、分析物を表面にさらに固定するのに十分な、例えば、約100℃において約2時間分離された分析物を基板上で加熱または焼くことができる。
【0030】
SERS-活性ナノ粒子を製造するために、基板に固定されたタンパク質および/または断片に、LiClまたはNaClなどの化学的エンハンサー塩の存在下において、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている個々の形態または集合体で銀コロイド粒子を接触させる。ラマン分光計を使用して、試料領域から分光学的信号を回収する。高濃度のタンパク質を含有する試料については、通常のラマン分光法を使用してタンパク質の量を正確に定量することができる。スペクトルと試料の位置の関係を記録して、相関させる。
【0031】
または、試料のタンパク質は、微小流動システム内の液体の流れの中に分離された状態で維持することもできる。任意に、液体中の分離されたタンパク質試料を別の流体の流れの中の金属コロイドの流れと混合して、分析物を固定しないで、タンパク質断片のSERS検出を可能にすることができる。微小流体環境における数多くの混合方法が文献から利用可能である(Stroock et al., Science 295, 647(2002); Johnson et al., Anal. Chem., (2001))。または、その後のSERS検出のために、金属コロイドの流れをUpchurch Scientific Inc.製のシンプルマイクロミキシングティーを使用してタンパク質断片試料のアウトレットストリームと混合してもよい。
【0032】
ラマンスペクトルおよび/またはSERSスキャニングを実施して、基板の離散的な位置に固定されたまたは流動中の液体中のタンパク質および/またはタンパク質断片を当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている技法を使用して分析して、分析中の試料のタンパク質組成に関する情報を得る。
【0033】
データ分析.
典型的には、ピークおよびベースライン分析、システムノイズ、素量化、プロトコールエラー分析等に関係する従来のスペクトル分析に基づいて、試料について収集したスペクトルプロファイル(または分子署名)を分析する。所定の基板位置のスペクトルのピーク位置、ライン形状および相対的なピーク強度を分析して、異なるタンパク質の相対的な濃度をこの情報から推定する。主成分分析(PCA)などの統計的な多変量解析技法を、ラマンスペクトルを分析するために使用することもできる。例えば、アミド基などのタンパク質骨格のスペクトル特性の強度を使用して、特定の基板位置のタンパク質の総量を定量することができる。種々の化学的バンドを有するタンパク質は同定可能な異なるスペクトル特性を示し、ある種のタンパク質の存在はそれらのスペクトル特性によって検出することができる。試料についてのこれらの方法によって得られるタンパク質プロファイル以外に、ある種の追加の試料情報(例えば、患者情報、対照同定または実験条件)をプロファイリング情報に関連させることができる。例えば、スペクトル情報を、試料が特定の疾病を有する患者由来であるまたは望ましい成果を有する特定の薬剤を服用している患者由来であるかどうかなどの情報と相関させることができる。血清などの特定の種類の試料のためのタンパク質ライブラリーを作製する、医学的に関連のあるラマン痕跡情報のデータベースを作製するために、(統計的に有意であるのに十分に大きい)かなりの数の平行試料からこのような情報を蓄積することができる。また、個々の試料のプロファイルを既存のタンパク質ライブラリーと比較して、異常またはライブラリーのプロファイルの標準と患者試料との差を判定することができる。図6は、この過程を示すブロックダイグラムである。このような技法は、薬剤開発、臨床診断または生物化学的な調査などの目的に有用である。
【0034】
別の態様において、本発明は、タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板;および銀、金、銅またはアルミニウムのイオンを保持する容器を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキットを提供する。本発明のキットは、任意に、タンパク質変性剤をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明のさらに別の態様において、タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板としてこのような要素を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのシステムが提供される。本発明のシステムは、さらに、少なくとも1つのタンパク質-含有化合物を含む試料、ラマン分光計;および試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータをさらに含む。一態様において、ラマン分光計は、複数の離散的な位置から連続的に受信されるSERS信号のスキャナーであり、離散的な位置に固定されている試料含有量のハイスループットスクリーニングに有用である。本発明の方法の一局面において、本発明のゲルマトリックスに組み入れられ、本明細書に記載されているある種の他の分析物分離技法に使用されるSERS-活性ナノ粒子は複合有機-無機ナノ粒子(「COINs」)である。これらのSERS-活性プローブ構築物はコアおよび表面を含み、コアは第1の金属およびラマン-活性有機化合物を含む金属コロイドを含む。COINは、第1の金属と異なる第2の金属を含んでもよく、第2の金属はナノ粒子の表面の上層を形成する層を形成する。COINsは、さらに、金属層の上層を形成する有機層を含んでもよく、有機層はプローブを含む。SERS-活性ナノ粒子の表面に結合するのに好適なプローブには、抗体、抗原、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、受容体、リガンド等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0036】
好適なSERS信号を得るのに必要な金属はCOINに固有であり、多種多様のラマン-活性有機化合物を粒子に組み入れることができる。実際、異なる構造、混合物および比のラマン-活性有機化合物を含有するナノ粒子を使用することによって独自のラマン痕跡を形成することができる。従って、COINsを使用する本明細書に記載されている方法は、試料中の多数の分析物の同時検出に有用であり、生体液の「プロファイル」の含有量を迅速に定量分析する。また、多数のCOINsを1つのナノ粒子に組み入れることができるので、1つのCOIN粒子からのSERS信号は、本明細書に記載されているナノ粒子を含有しないラマン-活性材料で得られるSERS信号と比較して強力である。この状況により、COINsを使用しないラマン-技法と比較して感度が高くなる。
【0037】
本明細書において使用する「コロイド」という用語は、液体、通常水に懸濁しているナノメートルサイズの金属粒子をいう。本発明のナノ粒子への使用が考慮される典型的な金属は、貨幣金属、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等が挙げられる。
【0038】
本明細書において使用する「ラマン-活性有機化合物」は、レーザーによる励起に応答して独自のSERS痕跡を生ずる有機分子をいう。種々のラマン-活性有機化合物が、COINsの要素としての使用が考慮されている。ある態様において、ラマン-活性有機化合物は多環式芳香族またはヘテロ芳香族化合物である。典型的には、ラマン-活性化合物は、約300ダルトン未満の分子量を有する。
【0039】
ラマン-活性有機化合物の限定するものではない追加の例には、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルバイオレット、クレシルブルーバイオレット(cresyl blue violet)、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン等が挙げられる。これらおよび他のラマン-活性有機化合物は市販品供給業者(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手することができる。
【0040】
ある態様において、ラマン-活性化合物は、アデニン、アデニン、4-アミノ-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジン、2-フルオロアデニン、N6-ベンゾイルアデニン(benzolyadenine)、キネチン、ジメチル-アリル-アミノ-アデニン、ゼアチン、ブロモ-アデニン、8-アザ-アデニン、8-アザグアニン、6-メルカプトプリン、4-アミノ-6-メルカプトピラゾール(3,4-d)ピリミジン、8-メルカプトアデニンまたは9-アミノ-アクリジン、4-アミノ-ピラゾロ(3,4-d)ピリミジンまたは2-フルオロアデニンである。一態様において、ラマン-活性化合物はアデニンである。
【0041】
蛍光化合物を本明細書に記載されているCOINsおよび他のラマン-活性化合物プローブ構築物に組み入れる場合には、蛍光化合物には、染料、本質的に蛍光のタンパク質、ランタニドリン光体(phosphors)等を挙げることができるが、それに限定されるわけではない。COINsおよび他のラマン-活性プローブ構築物に組み入れて光信号を提供するのに有用な染料には、例えば、テキサスレッド、ROX(6-カルボキシ-X-ローダミン)、ローダミン-NHSおよびTAMRA(5/6-カルボキシテトラメチルローダミンNHS)などのローダミンおよび誘導体;5-ブロモメチルフルオレセインおよびFAM(5'-カルボキシフルオレセインNHS) などのフルオレセインおよび誘導体、Lucifer Yellow、IAEDANS、7-Me2、N-クマリン-4-アセテート、7-OH-4-CH3-クマリン-3-アセテート、7-NH2-4CH3-クマリン-3-アセテート(AMCA)、モノブロモビマン、カスケードブルーなどのピレントリスルホネートおよびモノブロモトリメチル-アンモニオビマンが挙げられる。
【0042】
COINsは、標準的な金属コロイド化学を使用して、本発明の方法に使用するために容易に作製される。COINsの製造は、金属が有機化合物を吸着することができるということも利用している。実際、ラマン-活性有機化合物は、金属コロイドの形成中に金属に吸着されるので、特別な結合化学を必要としなで、多数のラマン-活性有機化合物をCOINに組み入れることができる。
【0043】
一般に、本発明の方法に使用されるCOINsは以下のように製造される。好適な金属陽イオン、還元剤および少なくとも1つの好適なラマン-活性有機化合物を含有する水溶液を調製する。次いで、溶液の成分を、金属陽イオンを還元する条件に接触させて、中性のコロイド金属粒子を形成する。金属コロイドの形成は好適なラマン-活性有機化合物の存在下において生じるので、ラマン-活性有機化合物は、コロイド形成中に金属の容易に吸着される。この簡単な種類のCOINはI型COINといわれる。I型COINsは、典型的には、膜ろ過によって単離することができる。また、異なるサイズのCOINsは遠心分離によって濃縮することができる。
【0044】
別の態様において、COINsは、第1の金属と異なる第2の金属を含んでもよく、第2の金属は、ナノ粒子表面の上層を形成する層を形成する。この種類のSERS-活性ナノ粒子を調製するためには、好適な第2の陽イオンおよび還元剤を含有する水溶液にI型COINs入れる。次いで、ナノ粒子表面の上層を形成する金属層を形成するために、第2の金属陽イオンを還元する条件下に、溶液の成分を接触させる。ある態様において、第2の金属層は、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等などの金属を含む。この型のCOINはII型COINsといわれる。II型COINsは、I型COINsと同じ方法で単離および/または濃縮することができる。典型的にはI型およびII型COINsは実質的に球形で、サイズは約20 nm〜60 nmの範囲である。ナノ粒子のサイズは、検出中に、COINsを照射するために使用される光線の波長に対して非常に小さくなるように選択される。
【0045】
典型的には、金属層の表面に有機化合物を共有結合することによって、有機化合物をII型COINsの第2の金属層に結合する。金属層への有機層の共有結合は、例えば、チオール-金属結合などの、当業者に周知の種々の方法で実施することができる。別の態様において、金属層に結合される有機分子は架橋されて、分子ネットワークを形成することができる。
【0046】
本発明の方法に使用されるCOINsは、例えば、酸化鉄等などの磁気材料を含有するコアを含んでもよい。磁性COINsは、一般的に利用可能な磁性粒子取り扱いシステムを使用して、遠心分離しないで取り扱うことができる。実際、磁力は、特定の生物プローブでタグ化した磁性COIN粒子に結合している生物標的を分離するための機序として使用することができる。
【0047】
本発明のシステムにおいておよび本発明の方法を実施する際において、ラマン分光計は、ラマン分光法によって本発明の方法によって得られるラマン信号を検出し、定量するように設計されている検出装置の一部となってもよい。ラマン分光法を使用して、例えば、金属ナノ粒子に結合しているタンパク質のラマン信号を検出するための方法は当技術分野において公知である。(例えば、米国特許第5,306,403号;同第6,002,471号;同第6,174,677号参照)。表面増強ラマン分光法(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光法(SERS)およびコヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)のバリエーションが開示されている。
【0048】
ラマン検出装置の限定するものではない例は米国特許第6,002,471号に開示されている。励起ビームは、532 nmの波長の倍波Nd:YAGレーザーまたは365 nm波長の倍波Ti:サファイヤレーザーによって発生される。パルスレーザービームまたは連続波レーザーを使用することができる。励起ビームは共焦点光学系および顕微鏡対物を通過し、流動通路および/またはフロー-スルーセルに集束する。分離されたタンパク質のラマン放射光線は顕微鏡対物および共焦点光学系によって収集されて、スペクトル分離のためにモノクロメーターにカップリングされる。共焦点光学系は、バックグラウンド信号を低下するために、干渉フィルター、バリヤーフィルター、共焦点ピンホール、レンズおよびミラーの組み合わせを含む。共焦点光学系だけでなく、標準的なフルフィールド光学系も使用することができる。ラマン放射信号は、信号の計数およびデジタル化のためのコンピュータに接続されているアバランシェフォトダイオードまたはCCDアレイを含む、ラマン検出器によって検出される。
【0049】
単一光子計数モードで作動されるガリウム-ヒ素光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を有するSpex Model 1403の2重格子分光光度計含む、別の例のラマン検出装置は米国特許第5,306,403号に開示されている。励起源は、SpectraPhysics製のModel 166の 514.5 nmラインのアルゴンイオンレーザーおよびクリプトンイオンレーザー(Innova 70, Coherent)の647.1 nmラインを含む。
【0050】
別の励起源は、337 nmの窒素レーザー(Laser Science Inc.)および325 nmのヘリウム-カドミウムレーザー(Liconox)(米国特許第6,174,677号)、光発光ダイオード、Nd:YLFレーザーおよび/または種々のイオンレーザーおよび/または色素レーザーを含む。励起ビームはバンドパスフィルター(Corion)でスペクトル的に精製されて、流動中のキャリヤーストリーム中の離散的な位置の流動通路または固体基板上の離散的な位置に6倍対物レンズ(Newport, Model L6X)を使用して集束することができる。対物レンズは、ホログラフィックビームスプリッター(Kaiser Optical Systems, Inc., Model HB 647-26N18)を使用して、励起ビームおよび放射されるラマン信号のために直角の構造を形成することによって、金属ナノ粒子に結合しているラマン-活性タンパク質を励起するためおよびラマン信号を回収するために使用することができる。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems, Inc.)を使用して、レイリー散乱放射線を低下することができる。別のラマン検出器は、赤色-増感(red-enhanced)インテンシファイア(intensified)電苛結合素子(RE-ICCD)検出システム(Princeton Instruments)を備えたISA HR-320スペクトログラフ含む。フーリエ変換スペクトログラフ(Michaelson干渉計に基づく)、電苛注入装置、フォトダイオードアレイ、InGaAs検出器、エレクトロン-マルチプライド(electron-multiplied) CCD、インテンシファイア(intensified) CCDおよび/またはフォトトランジスタアレイなどの他の種類の検出器を使用することができる。
【0051】
通常のラマン散乱、共鳴ラマン散乱、表面増強ラマン散乱、表面増強共鳴ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導ゲイン(stimulated gain)ラマン分光法、ハイパー-ラマン散乱、分子光学レーザーイグザミナー(molecular optical laser examiner)(MOLE)またはラマンマイクロプローブまたはラマン顕微鏡または共焦点ラマンマイクロ分光法、三次元またはスキャニングラマン、ラマン飽和(Raman saturation)分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマンデカップリング分光法またはUV-ラマン顕微鏡を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の任意の好適な形態または構成のラマン分光法または関連する技法を、本発明の方法を実施する際にタンパク質の(SERS信号などの)ラマン信号を検出するために使用することができる。
【0052】
本発明のある局面において、本発明の方法を実施する際に特定のタンパク質によって形成されるラマン信号を検出するためのシステムは情報処理システムを含む。例示的な情報処理システムは、情報を通信するためのバスおよび情報を処理するためのプロセッサを含む適当なコンピュータであってもよい。本発明の一態様において、プロセッサは、Intel Corp.(Santa Clara, Calif.)社製のPentium(登録商標) IIファミリー、Pentium(登録商標) IIIファミリーおよびPentium(登録商標) 4ファミリーのプロセッサを含むが、これらに限定されないPentium(登録商標)ファミリーのプロセッサから選択される。本発明の別の態様において、プロセッサは、Celeron(登録商標)、Itanium(登録商標)またはPentium Xeon(登録商標)プロセッサ(Intel Corp., Santa Clara, Calif.)であってもよい。本発明の種々の他の態様において、プロセッサは、Intel(登録商標) IA-32またはIntel(登録商標) IA-64アーキテクチャなどのIntel(登録商標)アーキテクチャに基づいてもよい。または、他のプロセッサを使用することができる。情報処理および制御システムは、メモリ、ディスプレイ、キーボードおよび/または他のデバイスなどの当技術分野において公知の任意の周辺デバイスをさらに含んでもよい。
【0053】
特定の例において、検出装置を情報処理システムに機能的に接続することができる。検出装置からのデータはプロセッサによって処理され、データはメモリに保存することができる。種々の患者試料の放射プロファイルのデータもメモリに保存することができる。プロセッサは、基板の別個の「スポット」からの放射スペクトルと複数の同様の患者試料の分析から得られるデータの編集を比較して、試料の特定のタンパク質もしくは断片を同定するまたは分析中の試料中のタンパク質とタンパク質ライブラリーの対応するタンパク質の差を同定することができる。プロセッサは、検出装置からのデータを分析して、例えば、健康の個人の対応するタンパク質に存在しない特定のタンパク質の翻訳後修飾の存在を判定することができる。情報処理システムはまた、バックグラウンド信号の減算などの標準的な手順も実施することができる。
【0054】
本発明のある方法はプログラムされたプロセッサの制御下で実施することができるが、本発明の別の態様において、本発明の方法は、Field Programmable Gate Arrays(FPGAs)、TTL ロジックまたはApplication Specific Integrated Circuits(ASICs)などの任意のプログラム式またはハードコードされたロジックによって完全にまたは部分的に実行することができる。さらに、開示されている方法はプログラム式汎用コンピュータ要素および/またはカスタムハードウェア要素の任意の組み合わせによって実施することができる。
【0055】
データ収集演算の後、データは、典型的には、データ解析演算に報告される。解析演算を容易にするために、検出装置でえられたデータは、上記のものなどのデジタルコンピュータを使用して分析される。典型的には、コンピュータは、検出装置からのデータの受信および保存ならびに収集されたデータの解析および報告のために適当にプログラムされる。
【0056】
本発明のある態様において、特注設計されたソフトウェアパッケージを、検出装置から得られるデータを解析するために使用することができる。本発明の別の態様において、データ解析は、情報処理システムおよび公共利用可能なソフトウェアパッケージを使用して実施することができる。
【0057】
本発明は、以下の限定するものではない実施例によってさらに例示される。
【0058】
実施例 1
標準的なペプチドについての実験.
以下の表1に示す標準的なペプチドを合成し、標準的なペプチドの10μlのストック溶液(100 ng/μl)をアルミニウム基板の離散的な位置に堆積させて、乾燥させた。ラマン分光法は、80μlの1:2コロイド銀/水および20 nlの0.5 M LiClからなるSERSコロイド溶液を用いて実施した。各ペプチドについて合計1500スペクトルを収集した:100フレームについて各々5回の実験を3スキャン。スペクトルの正規化後にペプチドのラマン信号を識別することができるかどうかを判定するために、主成分分析(PCA)を実施した。図7は、ペプチドの各々について収拾したラマンスペクトルを示す。PCA分析の結果は図8に示す。
【0059】
(表1)ペプチド標準
【0060】
実施例 2
この実験の目的は、タンパク質標的のラマンタグ化または標識化しないで、モデルの複合タンパク質のタンパク質プロファイルを得るための最適な試料検出条件を設定することである。試薬用のコウシ細胞培養血清を試料源として使用した。最初の実験において、全コウシ血清試料の3つのセットをアルミニウム基板に堆積させ、コロイド銀(水で1:2希釈したAg 溶液160μLの+BSA(20μL 1% BSA)+LiCl(40μL 0.5 M LiCl)を含有する)のカバーを適用する際の各段階が調製された後に空気-乾燥した状態または濡れた状態で試験した。以下の表2は、各試料についての試料検出条件の組み合わせを示す。試料は、820 〜900の波長範囲で励起し、SERS信号は1秒の試験期間に収集した。試料5(ウェット-ドライ-ウェット)および9(ウェット-ウェット-ウェット)だけがSERSスペクトルを生じ、これらの条件下ではウェット試料がドライ試料より好ましいことを示している。
【0061】
(表2)
【0062】
全コウシ血清のSERS検出限界を求めるために、コウシ血清の水による連続希釈液を使用して上記の実験を反復した。これは、全コウシ血清のSERS検出限界は0.1%コウシ血清水溶液である(励起波長785 nm、収集時間1secを使用)であることが求められることを意味する。
【0063】
1% BSAおよび1%コウシ血清(アルミニウム基板に空気乾燥)のSERSスペクトルを収集し(収集時間1sec)、比較した。図9Aおよび9Bに示すように、BSAおよびコウシ血清は、それぞれ、同様のSERSスペクトルを有する。類似性および差を理解するために、2つの異なる製造供給元:New England Biolabs(3.33 mg/ml BSAの1×PBS溶液)およびRoche Chemicals(2.5 mg/ml BSAの1×PBS溶液)製のBSAを使用してSERSスペクトルを収集した。New England BiolabsのBSA試料は、Roche Chemicalsの試料よりはるかに強いSERS信号を生じた(820〜900 nm、1secのスペクトル収集を使用)。BSAの純度またはアセチル化修飾のBSA間の差がSERSスペクトルの差の原因である可能性があると思われることが仮定された。
【0064】
実施例3
この実験の目的は、コウシ血清をモデル試料として使用して、無傷のタンパク質を含有する複合タンパク質混合物のHPLC分離したタンパク質分画からSERSデータを得るための最適な条件を設定することであった。この実験の準備として、低分子量タンパク質標準をHPLCによって分別した。1×PBSにおける1.33μg/μl濃度を各々に使用し、注入容量は10μlであった。使用した標準はホスホリラーゼ(97 kDa);BSA(66 kDa);卵白アルブミン(45 kDa);炭酸脱水素酵素(30 kDa);トリプシンインヒビター(20.1 kDa);およびα-ラクトアルブミン(14.4 kDa)であった。
【0065】
14000 rpmで10分遠心分離することによって0.45μmスピンフィルターでろ過後、Zorbax GF-220カラムおよび注入容量10μlを使用して、水で1:30希釈して、コウシ血清をHPLCで分離した。分画1〜11を12.5分の溶出時間にわたって収集し、約20分後に追加の1つの分画を収集した。UV-Vis測定を得るにはタンパク質濃度は非常に低いことが見出された。従って、タンパク質アッセイキャリブレーションキット(Micro BCA)を使用して、タンパク質を紫に染色して、分画をA562で読んだ。しかし、おそらくBSAである分画10を除いて、濃度は依然低かった。アルブミン枯渇キットは、コウシ血清中のBSAの優位を十分に低下することができなかった。以下の表3は、関心対象のHPLC分画の推定されるタンパク質濃度を示す。
【0066】
(表3)
【0067】
分画からSERSスペクトルを得るための調製において、10μlの各分画を1×PBSおよび1:10希釈したコウシ血清と共にアルミニウム基板にスポットし、約2時間空気乾燥させた。1×PBSからはSERS信号は得られなかったが、10%コウシ血清(404.8μg/mLのコウシ血清を含有する分画9)から強力なSERS信号が得られた。他の低濃度コウシ血清分画からはSERS信号は得られなかった。
【0068】
SERS信号を得るために、低濃度分画を約5時間凍結乾燥し、水に再溶解することによってさらに高い濃度の分画を得た。次いで、10μlの各分画を、2.5mg/ml BSA(Roche)、3.33 mg/ml BAS(NEW)および1:10希釈したコウシ血清をアルミニウム基板にスポットすることによってSERS試料を得た。スポットは、約2時間基板上で空気乾燥させた。以下の表4は、濃縮した分画における濃度を示す。
【0069】
(表4)
【0070】
次いで、図10に示すように、ラマン信号を濃縮した試料から得た。
【0071】
これらの実験から、ラマンタグまたはラマン標識化を使用しないSERS信号の収集に供される意図の分画において分画において高濃度のタンパク質を作製するためには高度に濃縮したタンパク質試料をHPLC分離に使用しなければならないことが判定された。アルブミン枯渇キットは、高濃度コウシ血清に無効であることも見出された。
【0072】
実施例4
SERS-活性化学構造へのアクセスは低分子における方が容易なので、ペプチドはタンパク質より強いSERS信号を提供することが仮定された。異なる配列のペプチドは、タンパク質プロファイリングに使用することができる独自のSERS痕跡を提供することも仮定された。この仮説を試験するために、コウシ血清試料を、移動相として1×PBS、試料容量20μlおよびアイソクラチック方法を使用し、操作時間20分のZorbax GF-250カラム(ジオール、サイズ排除)によるHPLC分離に供した。クロマトグラフの主要なアルブミンピーク(UV測定)は、標品注入によるアルブミンと確認された。アルブミンの主要な吸収ピークは205 nmおよび225 nmである。しかし、コウシ血清の主要なHPLCピーク(BSA)のUV吸光度プロファイルは、吸収ピークが均一でないことを示しており、ピークに多数のタンパク質が存在することを示している。
【0073】
全タンパク質の代わりにペプチドを用いて実施するSERS信号への影響を求めるために、コウシ血清試料にトリプシン消化を実施して、ペプチド混合物を酸性媒体によるC18カラムのHPLCで分離した。C18カラムの脂肪族鎖-コーティングシリカがペプチドに結合し、TFA-CH3CN移動相が、疎水性によりペプチドを溶出する。移動相中の酸は、ペプチドの酸性基をプロトン化して、それらをカラムに長く滞在させるのに必要である。HPLC分離は、試料容量50 μlおよび消化前の1.4μg/μl(?21 μM)の試料濃度を使用した。各分画は?80 pmolのペプチドを有した。HPLCは、Zorbax SB-C18カラムを、緩衝液Aとして0.1% TFAおよび緩衝液Bとしてアセトニトリルを含有する移動相緩衝液と共に使用した。手法は、0〜?5分はA 100%;5〜?40分はA100%からB 100%まで濃度勾配させた。トリプシン消化後のコウシ血清のHPLC分離のクロマトグラフを図11Aに示す。HPLCペプチド分画はUV吸収(215 nm) (図11B)およびSERSスペクトルについても測定した (図11C)。
【0074】
これらの実験の結果は、適切なタンパク質試料調製が重要であり、タンパク質分別または変性は、ラマン-活性ドメインまたはアミノ酸残基を銀表面に接触させる際に有用であることを示している。
【0075】
本発明は上記の実施例を参照して記載されているが、改良および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解される。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】複合生物試料のタンパク質プロファイルを提供するための質量分析法に使用される一般的な過程を示すブロックダイアグラムである。
【図2】複合生物試料のタンパク質プロファイルを提供するためのSERSスペクトルを使用する本発明の方法に使用される一般的な過程を示すブロックダイアグラムである。
【図3】エレクトロスプレーにより本発明の方法において試料を堆積させる装置を示す図面である。タンパク質断片はHPLCで分離され、イオン化され、平坦な面に絶縁体で分離されている金属島からなる基板に堆積される。集束管を通過後、イオン化した分子は金属島に濃縮される。集束管の内側面はイオン化した粒子と同じ電苛を有し、集束管の回収口は堆積口より大きい。
【図4】ウェットエレクトロスプレーにより本発明の方法において試料を堆積させる別の装置を示す図である。分離されたタンパク質の親水性溶媒溶液はイオンとしてエレクトロスプレーされ、固定のためにフラット面のマスクまたはスクリーンによって分離されている修飾されていてもよい基板島に吸着または共有結合される。
【図5】高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分離されたコウシ血清ペプチド鎖から得られるSERS信号の蓄積である。
【図6】血液試料のラマン分光法によって得られるタンパク質プロファイリング結果を分析するための本発明の過程を示すブロックダイグラムである。個々の試料の結果をタンパク質ライブラリーに組み入れ、個々の試験試料について得られるラマンプロファイル結果のさらなる分析(例えば、診断)に使用する。
【図7】ラマンタグを使用しないで、表1の標準的なペプチドについて回収したSERSスペクトルを示すSERSスペクトログラフである。
【図8】図7のラマンスペクトルについて実施した主成分分析(PCA)の結果を示すグラフである。
【図9】ラマンタグを使用しないで、BSAおよびコウシ血清についてそれぞれ得られたSERSスペクトログラフである。
【図10】ラマン標識を使用しないで、コウシ血清の濃縮したHPLC分画から得られるSERSスペクトルを示すSERSスペクトログラフである。
【図11A】トリプシン-消化し、HPLC-分離したコウシ血清分画のクロマトグラフである。
【図11B】HPLCクロマトグラフを図11Aに示すトリプシン-消化したコウシ血清分画のUV吸収(215 nm)のグラフである。
【図11C】HPLCクロマトグラフを図11Aに示すトリプシン-消化したコウシ血清分画のSERSスペクトログラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、生物試料のタンパク質含有量を分析するための方法:
a)タンパク質の化学的および/または物理的特性に基づいて、試料中のタンパク質およびタンパク質断片を分離する段階;
b)固体基板上または流動中の液体の流れの離散的な位置に分離された状態に分離されたタンパク質を維持する段階;
c)離散的な位置に分離されたタンパク質によって形成されるラマンスペクトルを検出する段階であって、離散的な位置からのスペクトルが、離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する段階;
c)離散的な位置の1箇所以上において捕捉プローブ/タンパク質複合体を形成するのに好適な条件下において、分離されたタンパク質に捕捉プローブを接触させる段階;
d)複合体に、タンパク質または複合体に結合するラマン-活性プローブ構築物を接触させる段階;ならびに
e)離散的な位置のプローブ構築物/タンパク質複合体によって形成されるラマンスペクトルを検出する段階であって、離散的な位置からのスペクトルが離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する段階。
【請求項2】
情報を試料の源に関する情報と関連させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
捕捉プローブが、複合体のタンパク質に特異的に結合する一次抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ラマン-活性プローブ構築物が、プローブおよび1つ以上のラマンタグとしての二次抗体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ラマン-活性プローブ構築物が独自のSERS痕跡を有するCOINであり、検出されるラマンスペクトルがSERSスペクトルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
分離前に、タンパク質が水溶液または親水性溶媒に溶解される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
分離前に、試料中のタンパク質を変性する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
変性剤が、還元剤、界面活性剤、カオトロピック塩およびタンパク質を変性するために使用されるそれらの組み合わせから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
信号の検出前に、変性タンパク質を基板上で乾燥させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
タンパク質を基板上で固定する前に、基板に1つ以上の有機または無機材料をコーティングする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
分離されたタンパク質が、接触ライティング、接触スポッティング、液体噴霧および乾燥粒子噴霧から選択される手法によって固体基板の離散的な位置に堆積される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
分離されたタンパク質が、ウェットエレクトロスプレイディポジションを使用して、変性することなく堆積される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
基板がアルミニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
基板が、平坦なプレート上に複数の離散的な位置からなる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
検出する段階が、逐次的な離散的な位置においてハイスループットスキャニングを実施するように自動化される、請求項1または14記載の方法。
【請求項16】
基板上の離散的な位置が、金、銀、銅およびアルミニウム金属、ガラス、シリコンならびにセラミック材料から選択される材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
個々の形態または集合体で、離散的な位置のタンパク質に銀ナノ粒子を接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ナノ粒子に少なくとも1つの化学的エンハンサー塩を接触させる段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化学的エンハンサー塩がLiClである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ラマンスペクトルがSERSスペクトルである、請求項17または18記載の方法。
【請求項21】
離散的な位置からのラマンスペクトルまたはSERSスペクトルを回収して、試料のタンパク質プロファイルを蓄積する段階をさらに含む、請求項1または17記載の方法。
【請求項22】
回収が、離散的な位置のハイスループットSERSスペクトルスクリーニングを実施するために自動化される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
SERSスペクトルと試料位置の関係を記録し、関連させる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
スペクトルが、化学結合、残基の組成、残基の構造、残基の相対的な位置、タンパク質の識別およびそれらの組み合わせから選択されるタンパク質の特徴に関する情報を含む、請求項1または22記載の方法。
【請求項25】
分離されたタンパク質または断片を流動中の流れに逐次的に導入して、離散的な位置を形成することによって分離されたタンパク質を分離された状態で維持する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
SERS-活性ナノ粒子の形成に好適な条件下において、分離されたタンパク質の流れと金属コロイドの流れを混合する段階をさらに含み、検出がSERS検出である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
分離されたタンパク質を質量分析法で分析して、分離されたタンパク質またはその断片に含まれる1つ以上の官能基を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
質量分析から得られるデータを有するラマンスペクトルまたはSERSスペクトルから得られるデータを蓄積する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
試料が患者試料である、請求項1または28記載の方法。
【請求項30】
患者試料が、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙および粘液から選択される生体液である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ラマンスペクトルおよび/またはSERSスペクトルから得られるデータに基づいて試料のタンパク質プロファイルを作製する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
種々の異なる患者試料を使用して方法を反復し、複数の異なるタンパク質プロファイルを含むタンパク質ライブラリーを作製する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
試料のタンパク質プロファイルをライブラリーの1つ以上のタンパク質プロファイルと比較して差を検出する段階をさらに含み、、差が患者の疾病を示す、請求項32記載の方法。
【請求項34】
以下を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキット:
a)タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板;ならびに
b)銀、金、銅またはアルミニウムのナノ粒子を保持する容器。
【請求項35】
タンパク質変性剤をさらに含む、請求項34記載のキット。
【請求項36】
以下を含むタンパク質の複合混合物のタンパク質組成物を分析するためのシステム:
a) タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物および中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板;
b)少なくとも1つのタンパク質-含有化合物を含む試料;
c)ラマン分光計;ならびに
d)試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータ。
【請求項37】
ラマン分光計が、複数の離散的な位置から連続的に受信されるSERS信号のスキャナーである、請求項36記載のシステム。
【請求項1】
以下の段階を含む、生物試料のタンパク質含有量を分析するための方法:
a)タンパク質の化学的および/または物理的特性に基づいて、試料中のタンパク質およびタンパク質断片を分離する段階;
b)固体基板上または流動中の液体の流れの離散的な位置に分離された状態に分離されたタンパク質を維持する段階;
c)離散的な位置に分離されたタンパク質によって形成されるラマンスペクトルを検出する段階であって、離散的な位置からのスペクトルが、離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する段階;
c)離散的な位置の1箇所以上において捕捉プローブ/タンパク質複合体を形成するのに好適な条件下において、分離されたタンパク質に捕捉プローブを接触させる段階;
d)複合体に、タンパク質または複合体に結合するラマン-活性プローブ構築物を接触させる段階;ならびに
e)離散的な位置のプローブ構築物/タンパク質複合体によって形成されるラマンスペクトルを検出する段階であって、離散的な位置からのスペクトルが離散的な位置の1つ以上の特定のタンパク質の構造についての情報を提供する段階。
【請求項2】
情報を試料の源に関する情報と関連させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
捕捉プローブが、複合体のタンパク質に特異的に結合する一次抗体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ラマン-活性プローブ構築物が、プローブおよび1つ以上のラマンタグとしての二次抗体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ラマン-活性プローブ構築物が独自のSERS痕跡を有するCOINであり、検出されるラマンスペクトルがSERSスペクトルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
分離前に、タンパク質が水溶液または親水性溶媒に溶解される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
分離前に、試料中のタンパク質を変性する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
変性剤が、還元剤、界面活性剤、カオトロピック塩およびタンパク質を変性するために使用されるそれらの組み合わせから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
信号の検出前に、変性タンパク質を基板上で乾燥させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
タンパク質を基板上で固定する前に、基板に1つ以上の有機または無機材料をコーティングする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
分離されたタンパク質が、接触ライティング、接触スポッティング、液体噴霧および乾燥粒子噴霧から選択される手法によって固体基板の離散的な位置に堆積される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
分離されたタンパク質が、ウェットエレクトロスプレイディポジションを使用して、変性することなく堆積される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
基板がアルミニウムである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
基板が、平坦なプレート上に複数の離散的な位置からなる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
検出する段階が、逐次的な離散的な位置においてハイスループットスキャニングを実施するように自動化される、請求項1または14記載の方法。
【請求項16】
基板上の離散的な位置が、金、銀、銅およびアルミニウム金属、ガラス、シリコンならびにセラミック材料から選択される材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
個々の形態または集合体で、離散的な位置のタンパク質に銀ナノ粒子を接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ナノ粒子に少なくとも1つの化学的エンハンサー塩を接触させる段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化学的エンハンサー塩がLiClである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ラマンスペクトルがSERSスペクトルである、請求項17または18記載の方法。
【請求項21】
離散的な位置からのラマンスペクトルまたはSERSスペクトルを回収して、試料のタンパク質プロファイルを蓄積する段階をさらに含む、請求項1または17記載の方法。
【請求項22】
回収が、離散的な位置のハイスループットSERSスペクトルスクリーニングを実施するために自動化される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
SERSスペクトルと試料位置の関係を記録し、関連させる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
スペクトルが、化学結合、残基の組成、残基の構造、残基の相対的な位置、タンパク質の識別およびそれらの組み合わせから選択されるタンパク質の特徴に関する情報を含む、請求項1または22記載の方法。
【請求項25】
分離されたタンパク質または断片を流動中の流れに逐次的に導入して、離散的な位置を形成することによって分離されたタンパク質を分離された状態で維持する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
SERS-活性ナノ粒子の形成に好適な条件下において、分離されたタンパク質の流れと金属コロイドの流れを混合する段階をさらに含み、検出がSERS検出である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
分離されたタンパク質を質量分析法で分析して、分離されたタンパク質またはその断片に含まれる1つ以上の官能基を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
質量分析から得られるデータを有するラマンスペクトルまたはSERSスペクトルから得られるデータを蓄積する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
試料が患者試料である、請求項1または28記載の方法。
【請求項30】
患者試料が、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙および粘液から選択される生体液である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ラマンスペクトルおよび/またはSERSスペクトルから得られるデータに基づいて試料のタンパク質プロファイルを作製する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
種々の異なる患者試料を使用して方法を反復し、複数の異なるタンパク質プロファイルを含むタンパク質ライブラリーを作製する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
試料のタンパク質プロファイルをライブラリーの1つ以上のタンパク質プロファイルと比較して差を検出する段階をさらに含み、、差が患者の疾病を示す、請求項32記載の方法。
【請求項34】
以下を含む、タンパク質の複合混合物からなるタンパク質組成物を分析するためのキット:
a)タンパク質およびタンパク質断片を離散的な位置に固定するために、正もしくは負に荷電した化合物または中性もしくは疎水性ポリマーがコーティングされている複数の離散的な位置を有する基板;ならびに
b)銀、金、銅またはアルミニウムのナノ粒子を保持する容器。
【請求項35】
タンパク質変性剤をさらに含む、請求項34記載のキット。
【請求項36】
以下を含むタンパク質の複合混合物のタンパク質組成物を分析するためのシステム:
a) タンパク質およびタンパク質断片を固定するために、金属層、正もしくは負に荷電した化合物および中性もしくは疎水性ポリマーから選択されるコーティングを有する複数の離散的な位置を有する基板;
b)少なくとも1つのタンパク質-含有化合物を含む試料;
c)ラマン分光計;ならびに
d)試料を分析するためのアルゴリズムを含むコンピュータ。
【請求項37】
ラマン分光計が、複数の離散的な位置から連続的に受信されるSERS信号のスキャナーである、請求項36記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2007−525662(P2007−525662A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547517(P2006−547517)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/043769
【国際公開番号】WO2005/065541
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/043769
【国際公開番号】WO2005/065541
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
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