説明

ラミネート布帛の製造方法

【課題】 耐久性のある優れた剥離強度を有すると共に、軽量性を有しながらボリューム感のあるソフト風合いを有するラミネート布帛の製造方法を提供する。
【解決手段】 熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させるラミネート布帛の製造方法、並びに熱膨張性マイクロカプセルを含有する接着剤を使用して、樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維布帛を貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させるラミネート布帛の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カジュアル用、スポーツ用、アウトドア用等の各種衣料用途あるいは防水シーツ用、テント用等の非衣料用途等に用いられるラミネート布帛の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂フィルムと繊維布帛とを貼合、あるいは繊維布帛と繊維布帛とを貼合したラミネート布帛が、各種分野に多く用いられている。例えば、織編物同士を貼合したものがカジュアルウェアやカジュアルパンツ等に、織編物と防水膜とを貼合したものが介護用防水シーツ等に、織編物と透湿防水膜とを貼合したものが透湿防水性布帛としてのウインドブレーカーやスキーウェア等に使用されている。そして、織編物と透湿防水膜とを貼合した後、さらに裏布を貼合したものがアウトドアウェア等に使用されている。
【0003】
これらのラミネート布帛に要求される代表的な機能として、剥離強度と風合いとが挙げられる。通常、両者は相反するものである。例えば、繊維布帛の片面に水溶性高分子を非全面状にコーティングした後、同じコーティング面にポリウレタン樹脂をさらにコーティングし、このポリウレタン樹脂を凝固させると同時に前記水溶性物質を溶出する透湿防水性コーティング布帛の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このコーティング布帛は、ソフト風合いを有している反面、剥離強度は約10N/2.54cmであり、着用や洗濯の繰り返しによって剥離耐久性が低下するという問題がある。
【0004】
また、優れた剥離強度、耐久性を得たい場合には、全面に膜を接着するのが一般的である。この場合、薄地の繊維布帛に膜を接着すれば、しなやかな風合いが阻害されてペーパーライクになりやすい。一方、中厚地の繊維布帛に膜を接着する場合には接着剤を大量に使用して耐久性を向上させる必要があるため、風合い硬化と重量増加を招きやすいといった問題が生ずる。
【特許文献1】特開2004−169233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、耐久性のある優れた剥離強度を有すると共に、軽量性を有しながらボリューム感のあるソフト風合いを有するラミネート布帛の製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、接着剤層として熱膨張性マイクロカプセルを含有したものを用いて通常の全面接着の手法により貼合した後、マイクロカプセルを発泡させれば、耐久性のある優れた剥離強度とソフト風合いとを有するラミネート布帛が得られることを知見して本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
【0008】
(1)熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることを特徴とするラミネート布帛の製造方法。
(2)熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維布帛を貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることを特徴とするラミネート布帛の製造方法。
(3)防水性を有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のラミネート布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた剥離強度を有し、かつその耐久性が優れていると共に、軽量性を有しながらボリューム感のあるソフト風合いのラミネート布帛を得ることができる。特に、本発明を薄地のラミネート布帛の製造に適用した場合であっても、得られる布帛はペーパーライク感がなく、ソフト感でかつ厚み感があり、断熱、防風性を有し、ひいては保温効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いる繊維布帛としては、例えば織物、編物、不織布等が挙げられる。
【0012】
また、繊維布帛を構成する繊維としては、ナイロン6やナイロン66で代表されるポリアミド系合成繊維やポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系合成繊維の他、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維、又はトリアセテート等の半合成繊維、あるいはナイロン6/綿、ポリエチレンテレフタレート/綿等の混合繊維等が挙げられる。
【0013】
本発明において、繊維布帛を撥水加工しておくと、後述の接着剤が繊維布帛内部へ浸透し難くなるので好ましい。撥水加工に用いる撥水剤としては、ポリシロキサン系撥水剤やフッ素系撥水剤等の公知のものが使用でき、加工方法も、一般に行われているパディング法、スプレー法等、公知の方法に準ずればよい。
【0014】
本発明においては、繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合するにあたり、熱膨張性マイクロカプセルを含有する接着剤を使用する。
【0015】
接着剤を形成しうる樹脂としては、天然ゴムの他、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは複数を混合して用いることができる。
【0016】
中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を採用すると、防水性に優れたラミネート布帛を得ることができるため好ましい。特に、ポリウレタン系樹脂を採用すると、透湿防水性の他、柔軟性にも優れたラミネート布帛を得ることができるためより好ましい。ポリウレタン系樹脂としては、イソシアネート成分とポリオール成分との反応で得られる重合体からなるポリマーが挙げられる。イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。ポリオール成分としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。
【0017】
そして、本発明で用いる接着剤として、上記の樹脂をそのまま使用してもよいが、加工工程上、ホットメルト樹脂、水に溶解した水系樹脂溶液、水に分散したエマルジョン系樹脂溶液又は有機溶剤に溶解した溶剤型樹脂溶液などに調合したもの使用することが好ましい。なお、ポリウレタン系樹脂を使用する場合は、接着剤として、耐久性の点から硬化型のホットメルト樹脂や溶剤型樹脂に調合したものを採用することが好ましい。
【0018】
接着剤を調合する際は、貼合の対象となるものの素材を考慮することが好ましい。例えば、ポリアミド系繊維布帛同士を貼合するのであれば、接着剤中に含有される樹脂間の溶解パラメーター値を近似させながら、接着剤にポリアミド系樹脂を添加することが好ましい。これは、樹脂間の溶解パラメーター値に大きな差があると、接着性に悪影響を及ぼす場合があるからである。
【0019】
また、本発明で用いる熱膨張性マイクロカプセルとしては、イソブタン、イソペンタン、n−ペンタン等の低沸点炭化水素を塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の熱可塑性樹脂の殻壁で内包したものが挙げられる。この熱膨張性マイクロカプセルは、120〜250℃の熱処理によって、殻壁内部のガス圧を上昇させると同時に殻壁をも軟化させ、20〜70倍に体積膨張させることができる。
【0020】
熱膨張性マイクロカプセルの粒子径としては、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。粒子径が5μm未満であると、ラミネート布帛の風合いとボリューム感とが低下する傾向にあるため好ましくなく、一方、100μmを超えると、接着剤の使用量が増える傾向にあり、コスト面で不利なだけでなく風合い硬化も引き起こす場合があるため好ましくない。
【0021】
接着剤中における熱膨張性マイクロカプセルの含有量としては、1〜40質量%であることが必要であり、2〜30質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの含有量が1質量%未満になると、風合い及びボリューム感が低下し、一方、40質量%を超えると、接着界面における剥離耐久性が低下する。
【0022】
本発明においては、まず、上記の接着剤を使用して繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合する。
【0023】
貼合の方法としては、例えばTダイ、コーティングマシン等を用いて接着剤を繊維布帛上にコーティングした後、他の繊維布帛を圧着又は熱圧着する、あるいは離型紙又は離型フィルム上に接着剤をコーティングした後、接着剤を繊維布帛へ転写し、しかる後に他の繊維布帛を圧着又は熱圧着すればよい。なお、上記の繊維布帛と他の繊維布帛とは、品質管理の点から同一素材からなることが好ましい。
【0024】
また、他の繊維布帛を圧着又は熱圧着などする際、繊維布帛上における接着剤が積層されている部分(以下、接着剤層と記すことがある)の厚みとしては、特に限定されるものではなく、繊維布帛の表面形態、平滑性、厚み等を考慮して適宜決定すればよい。具体的には、5〜300μmが好ましく、特に熱膨張性マイクロカプセルの発泡前の粒子径から発泡後の粒子径までの間に相当する厚みに設定すれば、剥離耐久性と風合いとの向上に効果的である。
【0025】
本発明においては、繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合した後、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる。これにより、接着剤層の厚みが増し、剥離耐久性に優れた、ボリューム感のあるソフト風合いのラミネート布帛が得られる。熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる方法としては、公知の方法で熱処理すればよく、処理条件としては、120〜250℃で20〜120秒間が好ましい。
【0026】
また、本発明の方法により得られるラミネート布帛の防水性又は透湿防水性を向上させる目的で、熱膨張性マイクロカプセルの発泡前もしくは発泡後、あるいは発泡前後に布帛を撥水加工してもよい。
【0027】
次に、本発明のもう一つの態様について説明する。
【0028】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維布帛を貼合した後、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させるラミネート布帛の製造方法を含むものである。
【0029】
樹脂フィルムを形成しうる樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6,10等のポリアミド系樹脂やポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、又はポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等の可撓性を有する樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは複数を混合して用いることができる。
【0030】
中でも、上述と同様、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が防水性の点で好ましく、特に、ポリウレタン系樹脂が透湿防水性の他、柔軟性の点でより好ましい。この場合のポリウレタン系樹脂は、接着剤を形成しうる樹脂として使用できるポリウレタン系樹脂と同一でもよい。
【0031】
樹脂フィルムは、上記の樹脂を含有するホットメルト樹脂、水に溶解した水系樹脂溶液、水に分散したエマルジョン系樹脂溶液又は有機溶剤に溶解した溶剤型樹脂溶液などを用い、例えば、離型紙又は離型フィルム上に上記の樹脂をコーティングし、乾燥するといった公知の手段により容易に作製できる。
【0032】
樹脂フィルムに繊維布帛を貼合する方法として、樹脂フィルムの一方の面のみを対象とする場合は、接着剤を繊維布帛上にコーティングして接着剤層を形成した後、樹脂フィルムを圧着又は熱圧着する、あるいは離型紙又は離型フィルム上に接着剤をコーティングして接着剤層を形成した後、接着剤層を繊維布帛へ転写し、しかる後に樹脂フィルムを圧着又は熱圧着すればよい。その他、樹脂フィルム上に接着剤層を形成した後、繊維布帛を圧着又は熱圧着してもよい。
【0033】
一方、樹脂フィルムの両面を対象とする場合は、上記の方法に準じて樹脂フィルムの一方の面に繊維布帛を貼合した後、さらにもう一方の面に繊維布帛を貼合すればよい。なお、この場合、用いる接着剤は、両面同じであってもよく異なっていてもよい。
【0034】
繊維布帛を貼合した後は、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることでラミネート布帛を得ることができる。その後は、上述と同様の理由により、ラミネート布帛を撥水加工してもよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における布帛の性能の測定及び評価は、下記の方法に準拠する。また、各処方における含有量の単位である「部」は、「質量部」を示す。
(1)剥離強度
JIS L−1089法に準じ、経方向の剥離強度を測定した。
(2)剥離耐久性
洗濯30回(JIS L−0217、103法)後の剥離状況を肉眼で観察した。
(3)風合い
ハンドリングにて、下記のように4段階の評価を行った。
【0036】
◎…非常にソフト ○…ソフト △…普通 ×…硬い
(4)耐水圧
JIS L−1092、高水圧法で測定した。
(5)透湿度
JIS L−1099、A−1法で測定した。
【0037】
(実施例1)
経緯糸に78dtex/48fのナイロンフィラメント糸を用い、経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平織物を製織し、通常の方法により精練及び染色(酸性染料、日本化薬株式会社製、「Kayanol Blue NR(商品名)」1%omf)した後、エマルジョンタイプのフッ素系撥水剤(旭硝子株式会社製、「アサヒガードGS−10(商品名)」)を固形分濃度で6質量%含む水分散液でパディング(絞り率25%)し、乾燥して170℃で40秒間熱処理し、繊維布帛を得た。
【0038】
一方で、22dtex/7fのナイロンフィラメント糸を用いて、針密度28本/2.54cmにてトリコット編地を編成し、通常の方法により精練を行い、他の繊維布帛を得た。
【0039】
上記の繊維布帛上にコンマコータを用いて、下記処方1に示す組成の固形分濃度55%、粘度2000mPa・s/20℃の樹脂溶液を50g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを8質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して上記他の繊維布帛を貼合し、40℃で1日間エージングした後、150℃で1分間熱処理することにより熱膨張性マイクロカプセルを発泡させ、さらに40℃で1日間エージングして、ラミネート布帛を得た。
【0040】
なお、圧着後の接着剤層に相当する部分の断面形態を光学写真撮影により調べたところ、マイクロカプセルは直径が40〜60μmに膨張していた。
【0041】
〈処方1〉
ポリウレタン系樹脂(日本ポリウレタン工業株式会社製、「ニッポラン3214(商品名)」固形分50質量%) 100部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製、「コロネートHX(商品名)」架橋剤) 7部
熱膨張性マイクロカプセル(大日精化工業株式会社製、「マイクロスフェアーM520D(商品名)」平均粒子径:約15μm、発泡温度:約150℃) 5部
酢酸エチル(溶媒) 10部
【0042】
(比較例1)
処方1からマイクロスフェアーM520Dを省く以外は、実施例1と同一の方法にてラミネート布帛を得た。
【0043】
(比較例2)
処方1においてマイクロスフェアーM520Dの使用量を5部に替えて50部(約47質量%含有)とした以外は、実施例1と同一の方法にてラミネート布帛を得た。
【0044】
ここで、実施例1及び比較例1、2で得られたラミネート布帛の性能評価を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、実施例1で得られたラミネート布帛は、風合いがソフトで、かつ優れた剥離強度及び剥離耐久性を有していた。
【0047】
これに対し、接着剤層に熱膨張性マイクロカプセルを含有しない比較例1で得たラミネート布帛は、優れた剥離強度を有しているものの風合いが硬く、その結果、洗濯によって連続的に揉まれた部分が剥離していた。また、接着剤層に熱膨張性マイクロカプセルを多量に含有する比較例2で得たラミネート布帛は、風合いはソフトであるものの剥離強度及び剥離耐久性に劣っていた。
【0048】
(実施例2)
離型紙(リンテック株式会社製、「EV130TPO(商品名)」)の離型面に下記処方2に示す組成の固形分濃度18%、粘度4000mPa・s/20℃の樹脂溶液を、コンマコータを用いて100g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、厚み約20μmの樹脂フィルムを得た。
【0049】
次いで、この樹脂フィルムの一方の面に下記処方3に示す組成の固形分濃度50%、粘度2000mPa・s/20℃の樹脂溶液を、コンマコータを用いて40g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを5質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して実施例1で使用した繊維布帛を貼合し、40℃で1日間エージングした後、離型紙を剥離し、さらに150℃で1分間熱処理することにより熱膨張性マイクロカプセルを発泡させ、40℃で1日間エージングして、ラミネート布帛を得た。
【0050】
なお、圧着後の接着剤層に相当する部分の断面形態を光学写真撮影により調べたところ、マイクロカプセルは直径が40〜50μmに膨張していた。
【0051】
〈処方2〉
高防水性ポリウレタン樹脂(セイコー化成株式会社製、「ラックスキンU390(商品名)」固形分20質量%) 100部
メチルエチルケトン(溶媒) 12部
【0052】
〈処方3〉
ポリウレタン系樹脂(日本ポリウレタン工業株式会社製、「ニッポラン3214(商品名)」固形分50質量%) 100部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製、「コロネートHX(商品名)」架橋剤) 7部
熱膨張性マイクロカプセル(大日精化工業株式会社製、「マイクロスフェアーM520D(商品名)」平均粒子径:約15μm、発泡温度:約150℃) 3部
酢酸エチル(溶媒) 10部
【0053】
(実施例3)
離型紙(リンテック株式会社製、「EV130TPO(商品名)」)の離型面に上記処方2に示す組成の樹脂溶液を、コンマコータを用いて60g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、厚み約12μmの樹脂フィルムを作製した。
【0054】
次いで、この樹脂フィルムの一方の面に上記処方3に示す樹脂溶液を、コンマコータを用いて50g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを5質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して実施例1で使用した繊維布帛を貼合し、離型紙を剥離した。
【0055】
さらに、樹脂フィルムのもう一方の面に同じく上記処方3に示す樹脂溶液を、コンマコータを用いて50g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを5質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して実施例1で使用した他の繊維布帛を貼合した。
【0056】
そして、40℃で1日間エージングした後、150℃で1分間熱処理することにより、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させ、40℃で1日間エージングして、ラミネート布帛を得た。
【0057】
なお、圧着後の接着剤層に相当する部分の断面形態を光学写真撮影により調べたところ、マイクロカプセルは直径が40〜50μmに膨張していた。
【0058】
(比較例3、4)
処方3からマイクロスフェアーM520Dを省く以外は、実施例2、3と同一の方法にてラミネート布帛(比較例3、4)を得た。
【0059】
ここで、実施例2、3及び比較例3、4で得られたラミネート布帛の性能評価を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、実施例2、3で得られたラミネート布帛は、風合いがソフトで、かつ優れた剥離強度及び剥離耐久性を有していた。特に実施例3で得られたラミネート布帛は、防水性を具備するものであった。
【0062】
これに対し、接着剤層に熱膨張性マイクロカプセルを含有しない比較例3、4で得たラミネート布帛は、優れた剥離強度は有しているものの風合いが硬く、その結果、洗濯によって連続的に揉まれた部分が剥離していた。
【0063】
(実施例4)
経緯糸に33dtex/24fのナイロンフィラメント糸を用い、経糸密度250本/2.54cm、緯糸密度200本/2.54cmの平織物を製織し、通常の方法により精練を及び染色(酸性染料、日本化薬株式会社製、「Kayanol Cyanine Green G(商品名)」1%omf)した後、エマルジョンタイプのフッ素系撥水剤(旭硝子株式会社製、「アサヒガードLS−317(商品名)」)を固形分濃度で8質量%含む水分散液でパディング(絞り率25%)し、乾燥した後、170℃で40秒間熱処理し、繊維布帛を得た。
【0064】
一方で、離型紙(リンテック株式会社製、「EV130TPO(商品名)」)の離型面に下記処方4に示す組成の固形分濃度19質量%、粘度3500mPa・s/20℃の樹脂溶液を、コンマコータを用いて60g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、樹脂フィルムを得た。
【0065】
次いで、この樹脂フィルムの一方の面に下記処方5に示す組成の固形分濃度41%、粘度1500mPa・s/20℃の樹脂溶液を、コンマコータを用いて60g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを10質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して上記繊維布帛を貼合し、40℃で1日間エージングした後、離型紙を剥離し、さらに150℃で1分間熱処理することにより熱膨張性マイクロカプセルを発泡させ、40℃で1日間エージングして、ラミネート布帛を得た。
【0066】
なお、圧着後の接着剤層に相当する部分の断面形態を光学写真撮影により調べたところ、マイクロカプセルは直径が45〜60μmに膨張していた。
【0067】
〈処方4〉
透湿性ポリウレタン系樹脂(セイコー化成株式会社製、「ラックスキンU2524(商品名)」固形分25質量%) 60部
ポリウレタン系マット剤(セイコー化成株式会社製、「ラックスキンU2524M(商品名)」固形分20質量%) 40部
イソプロピルアルコール(溶媒) 10部
トルエン(溶媒) 10部
【0068】
〈処方5〉
透湿性ポリウレタン系樹脂(セイコー化成株式会社製、「ラックスキンUD−108(商品名)」固形分50質量%) 100部
熱膨張性マイクロカプセル(大日精化工業株式会社製、「マイクロスフェアーM520D(商品名)」平均粒子径:約15μm、発泡温度:約150℃) 6部
ポリアミド系ホットメルト樹脂(アトフィナ・ジャパン株式会社製、「プラタミドH−103(商品名)」) 3部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製、「コロネートHL(商品名)」架橋剤) 4部
メチルエチルケトン(溶媒) 20部
N,N−ジメチルホルムアミド(溶媒) 20部
【0069】
(実施例5)
まず、実施例4と同じく樹脂フィルムの一方の面に繊維布帛を貼合した。次いで、離型紙を剥離した後、該樹脂フィルムのもう一方の面に上記処方5に示す樹脂溶液を、コンマコータを用いて60g/mコーティングし、100℃で2分間乾燥して、熱膨張性マイクロカプセルを10質量%含有する接着剤層を形成した。その後、30kPaの圧力を負荷して実施例1で使用した他の繊維布帛を貼合した。
【0070】
そして、40℃で1日間エージングした後、150℃で1分間熱処理することにより、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させ、40℃で1日間エージングして、ラミネート布帛を得た。
【0071】
なお、圧着後の接着剤層に相当する部分の断面形態を光学写真撮影により調べたところ、マイクロカプセルは直径が40〜60μmに膨張していた。
【0072】
(比較例5、6)
処方5からマイクロスフェアーM520Dを省く以外は、実施例4、5と同一の方法にてラミネート布帛(比較例5、6)を得た。
【0073】
ここで、実施例4、5と比較例5、6で得られたラミネート布帛の性能評価を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3から明らかなように、実施例4、5で得られたラミネート布帛は、非常に風合いがソフトでかつ高い透湿防水性を有すると共に優れた剥離強度及び剥離耐久性を有していた。
【0076】
これに対し、接着剤層に熱膨張性マイクロカプセルを含有しない比較例5、6で得たラミネート布帛は、透湿性に劣るだけでなく、風合いも硬くペーパーライク感が強いものであった。さらに、優れた剥離強度は有しているものの、洗濯によって連続的に揉まれた部分は剥離していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、繊維布帛と他の繊維布帛とを貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることを特徴とするラミネート布帛の製造方法。
【請求項2】
熱膨張性マイクロカプセルを1〜40質量%含有する接着剤を使用して、樹脂フィルムの少なくとも片面に繊維布帛を貼合した後、前記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることを特徴とするラミネート布帛の製造方法。
【請求項3】
防水性を有することを特徴とする請求項1又は2記載のラミネート布帛の製造方法。


【公開番号】特開2007−217841(P2007−217841A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42402(P2006−42402)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】