説明

ラミネート装置用の熱板

【課題】ラミネート加工中の熱板面内の温度を均一にできるような熱板及びその熱板を使用したラミネート装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のラミネート装置用の熱板は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板20上に被加工物10を配置し、前記熱板20により加熱した前記被加工物10を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板20と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、前記熱板20内に、ヒータ203又は、ヒータ203及びヒートパイプ204を対として複数組設け、さらに前記熱板20には、前記熱板に載置される被加工物の搬送方向に3箇所以上に温度センサ207を設け、前記熱板面内の温度分布を均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板上に太陽電池モジュール等の被加工物を配置し、熱板により加熱した被加工物を熱板と押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池モジュールを製造する場合、ラミネート装置が使用されている(特許文献1参照)。ラミネート装置は、下方向に向けて膨張自在なダイヤフラムを有する上ケースと、熱板を有する下ケースとを有している。太陽電池モジュールをラミネートする際、まず、構成部材を重ね合わせた太陽電池モジュールを、上ケースと下ケースとで形成される空間に搬送する。次に、ラミネート装置は、上ケースと下ケースとで形成される空間を真空状態にし、熱板上に太陽電池モジュールを配置した後、構成部材を加熱した状態で、上ケースの内部に大気圧を導入する。このようにすることで、太陽電池モジュールは、ダイヤフラムと熱板とで挟圧されて、ラミネートされ、太陽電池モジュールの各構成部材が溶融された充填材により接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−47766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のラミネート装置において、その熱板面内の温度を均一にするために特許文献1の技術が提案されている。特許文献1に記載のラミネート装置は、その熱板内に複数のヒータと温度センサが設けられているが、熱板面内の温度を均一にするためには、ヒータを細かく分割して複数個所に設け、同時に温度センサを複数個設け制御する必要があり熱板の構造が複雑になる。また被加工物の加熱を均一にするためにヒートパイプを熱板の下面に設ける実施形態も提案されている。ヒートパイプを熱板の下面に設けているので、熱板内のヒータに対する熱輸送の効率が悪くヒートパイプによる効果が充分に発現されない。さらにヒートパイプが熱板の下面に設けられているので、熱板の取り付けに余分なスペースが必要となる。
【0005】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ラミネート加工中の熱板の温度を均一にし、それにより被加工物内の温度を均一にできるラミネート装置用の熱板、およびその熱板を使用したラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1の発明のラミネート装置用の熱板は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、前記熱板は、前記熱板内に、ヒータ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、さらに前記熱板は、前記熱板に載置される被加工物の搬送方向に3箇所以上の温度センサを設け、前記熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とする。
第1発明によれば、その熱板内にヒートパイプを設け、また熱板の温度制御用の温度センサを上記のように3箇所以上設けているので、ラミネート加工中において熱板面内の温度を均一にすることができ、被加工物内の温度を均一にすることができる。また熱板の温度を均一にするために設ける温度センサの数量や配置などは簡素化され、温度制御方法も格段に容易になる。
【0007】
第2の発明のラミネート装置用の熱板は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、前記熱板は、上段熱板と下段熱板を積層させた構造とし、前記上段熱板は、前記上段熱板内に、ヒータ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、さらに前記上段熱板は、前記上段熱板に載置される被加工物の搬送方向に3箇所以上の温度センサを設け、前記下段熱板は、前記下段熱板内には、上段熱板に設けたヒータ及びヒートパイプとは直角な方向に前記ヒータのみ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、前記上段熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とする。
第2発明によれば、その熱板を上段と下段の積層構造とし、上段熱板内および下段熱板内にヒートパイプを設け、また熱板の温度制御用の温度センサを上段熱板内に上記のように3箇所以上設けているので、ラミネート加工中において熱板面内の温度を第1発明の熱板を使用した場合に比べさらにその熱板面内の温度を均一にすることができる。その結果として、被加工物内の温度をさらに均一にすることができる。また熱板の温度を均一にするために設ける温度センサの数量や配置などは簡素化され、温度制御方法も格段に容易になる。
【0008】
第3の発明のラミネート装置用の熱板は、第2の発明において、前記請求項2に記載の前記下段熱板において、さらに前記上段熱板に載置される被加工物の搬送方向と直角な方向に3箇所以上の温度センサを設け、前記上段熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とする。
第3発明によれば、その熱板は、第2発明に対して下段熱板にも温度制御用の温度センサを上記のように3箇所以上に設けているので、ラミネート加工中において熱板面内の温度を第2発明の熱板を使用した場合に比べさらにその温度を均一にすることができる。その結果として、被加工物内の温度をさらに均一にすることができる。
【0009】
第4の発明のラミネート装置用の熱板は、第1の発明から第3の発明のいずれかにおいて、前記熱板の前記各組のヒートパイプ及びヒータは、直線状にかつ平行に配設されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、熱板内のヒータおよびヒートパイプは、直線状に平行に配設されているので構造が容易であり、熱板面内の温度を均一に制御することが容易である。
【0010】
第5の発明のラミネート装置は、第1の発明から第4の発明のいずれかのラミネート装置用の熱板を使用することを特徴とする。
第5の発明のラミネート装置によれば、第1発明から第4発明のいずれかの熱板を使用しているので、ラミネート加工する時の熱板面内の温度を均一にすることができる。したがって被加工物をラミネート加工する時の温度を均一にできるので、ラミネート加工後の被加工物内に気泡が残存するようなこともなく、被加工物の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】被加工物としての太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】ラミネート装置の全体の構成を示す図である。
【図3】ラミネート装置のラミネート部の側断面図である。
【図4】ラミネート装置のラミネート加工時におけるラミネート部の側断面図である。
【図5】実施例1の熱板の構成を説明するための図である。
【図6】実施例2の熱板の構成の詳細を説明するための図である。
【図7】実施例2の熱板の構成の詳細を説明するための図である。
【図8】実施例3の下段熱板の温度センサの配置を説明するための図である。
【図9】シースヒータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態に係るラミネート装置について説明する。
ここでは、まず、ラミネート装置でラミネートされる被加工物10について説明する。
図1は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、図示のように、透明なカバーガラス11と裏面材12との間に、充填材13、14を介してストリング15およびストリング15を複数列並列に接続したマトリックス状のものを挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。また、充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂や、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0013】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラスを下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に充填材を被せる。更に、充填材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけである。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0014】
図2は、本実施形態に係るラミネート装置100の全体の構成を示す図である。ラミネート装置100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送ベルト130とを有する。搬送ベルト130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート装置100には、ラミネート前の被加工物10をラミネート装置100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート装置100には、ラミネート後の被加工物10をラミネート装置100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは、連設されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。
【0015】
ラミネート装置100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される図示しない昇降装置が設けられている。昇降装置は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0016】
次に、本施形態に係るラミネート装置100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。図3は、ラミネート装置100において被加工物10をラミネートするラミネート部101の側断面図である。図4は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0017】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0018】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0019】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。
【0020】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0021】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図2の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板122の中央部に正確に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を図2の搬出コンベア300に受け渡す。
【0022】
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、剥離シート140が設けられている。剥離シート140は、被加工物10の充填材13、14(図1参照)が溶融したときに、充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。
【0023】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100によるラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、図3に示すように、搬送ベルト130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。なお、このとき、下チャンバ121や熱板122に配設された上下動可能な図示しない保持ピン等を上昇させることで、被加工物10を熱板122上から離間した位置に保持しておいてもよい。
【0024】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0025】
次に、ラミネート装置100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内の真空引きを行う。同様に、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内の真空引きを行う(真空工程)。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10内に含まれている気泡は、被加工物10外に送出される。なお、上下動可能な図示しない保持ピンにより被加工物10を、熱板122上から離間した位置に保持していた場合は、真空工程の略後半から、保持ピンを下降して被加工物10を熱板122上に載置する。
被加工物10は、後述する温度制御装置の温度制御により加熱された熱板122によって加熱されるので、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14も加熱される。
【0026】
次に、ラミネート装置100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、図4に示すように下方に押し出される(加圧工程)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧され、加熱により溶融された充填材13、14によって各構成部材が接着される。本実施形態のラミネート装置100は、充填材13、14を完全に溶融させて、各構成部材を接着させる、いわゆる全架橋タイプのラミネート装置である。
【0027】
このとき、充填材13、14がカバーガラス11と裏面材12との間からはみ出てしまうことがあるものの、はみ出した充填材13、14は剥離シート140に付着する。このように剥離シート140を介在させることにより、はみ出した充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。従って、剥離シート140は、ダイヤフラム112から次にラミネートする被加工物10に充填材13、14が付着するのを防止する。また、はみ出した充填材13、14が、搬送ベルト130上に付着した場合は、付着した充填材13、14は、図示しないクリーニング機構により除去される。
【0028】
このようにラミネート工程が終了した後、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、図3に示すように、搬送ベルト130を移動させることができるようになる。搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア300に受け渡す。
【0029】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100の熱板122の構成について説明する。
【実施例1】
【0030】
まず実施例1のラミネート装置用の熱板について説明する。 図5は、実施例1の熱板122の構成を示す図である。図5において図3および図4の本発明のラミネート装置100の熱板122は、熱板20としている。図5(a)は、熱板20の平面図であり、図5(b)は熱板20の正面図であり、図5(c)は図5(b)のC−C矢視図である。
熱板20は、全体の大きさが下ケース120内に収まるサイズであって、図5の二点鎖線で示す太陽電池モジュール10よりも大きいサイズで形成される。ここで、本実施例の熱板20の寸法は、幅Whが約1500mm、奥行きDhが約1200mmである。また、この熱板20により加熱される太陽電池モジュール10の寸法は、奥行きdが約1100mm、幅wが約1400mmであり、平面視で長方形状である。尚上記の熱板20のサイズは、参考例であり、この寸法に限定されるものではない。
【0031】
図5において、熱板本体201は、アルミニウム又はアルミニウム合金等により、被加工物10を載置できるような載置面SF有し、パネル状に形成されている。尚材質は、ステンレス等の鉄系材料でも使用することができる。熱板本体201には、ヒータ203およびヒートパイプ204を埋設するために、奥行き方向に溝208が加工されている。この収容溝208にU字状のヒータ203が平行に複数配設されている。ここでは、ヒータとしては、シースヒータSHを使用することができる。シースヒータSHは、図9に示すように、中心にコイル状に加工されたニクロム線SH1と、ニクロム線SH1の周りに充填された酸化マグネシウム等の絶縁材SH2と、絶縁材SH2の全周を覆うシースSH3(外周をなす外皮)とを有するものである。尚ヒータ203は、U字状のものでなく、直線状のヒータを使用しても良い。
ヒートパイプ204は,公知の構成のものを使用することができる。ヒートパイプは、管内に作動液が飽和蒸気圧の状態で密封されていて、ヒートパイプの長さ方向に温度差があると高温部から低温部に蒸気流が発生する。そして作動液は、高温部で蒸発熱を奪い、低温部では凝縮熱を与える。
【0032】
本実施例では、そのU字状のヒータ203の略中央位置にヒータと平行にヒートパイプ204を埋設している。埋設部の構造を図5(b)のA部の拡大図を参照して説明する。ヒータ203とヒートパイプ204は、クッション材205を介して熱板本体201と略同一寸法の裏板206を熱板本体201とボルト等により固定し収容溝208内に埋設固定される。これによりヒータの外周、およびヒートパイプの外周が溝の底面と密着する。このヒータ203とヒートパイプ204を1組の加熱部202とし、熱板20内に複数組配設している。加熱部202は、図5において2点鎖線で囲った領域であり、図5(c)に示すように202Aから202Eの5組が設けられている。また熱板20には、熱電対等の温度センサ207を3つ以上設けることができる。本実施例では、温度センサ207A、207Bおよび207Cを図5(a)の×印位置に設けられている。すなわち熱板20に設置する被加工物の搬送方向の両端部と中央部である。両端部の温度センサが207Aと207Cであり、中央部の温度センサは207Bである。図中2点鎖線で囲んだ各加熱部202のヒータ203は、全て温度制御装置CLに接続されている。各加熱部202は、ヒートパイプの作用により均一な温度にすることができる。また温度センサ207の測定結果が温度制御装置CLに入力され各加熱部のヒータによる発熱量を制御することにより熱板全体の温度を均一に制御することができる。本実施例の熱板によれば、図5における熱板面内の温度のバラツキを±1.5℃以内に制御することができる。一方ヒートパイプを使用しない従来型の熱板ではその温度のバラツキは、±4℃以内である。
【0033】
また加熱部202は、本実施例では全てヒータとヒートパイプを対としているが、一部の加熱部は、ヒータのみとしても良い。
【0034】
またこのような熱板面内の温度を均一にする機能は、ヒータ203、ヒートパイプ204、温度センサ207および温度制御装置CLが協働して実現される。これにより、被加工物である太陽電池モジュール10内の温度を均一にすることができるので、充填材が溶融を開始する時間を略同一にすることができる。したがって、熱板の温度を急激に上昇させても均一な温度に制御できるので、内部に気泡が生じない品質の高い太陽電池モジュールを製造するタクトタイムの短縮を容易に行うことができる。
【0035】
さらにこのように熱板面内の温度を均一にするために熱板内に設けた温度センサは3箇所以上でよく、その数量及び配置を簡素化でき、特許文献1に記載されているように、複数個を多様な位置に設ける必要は無い。したがって温度制御装置の構成は、格段に簡素化でき、ラミネート装置を安価で提供することができる。
【実施例2】
【0036】
次に実施例2のラミネート装置用の熱板について説明する。本実施例の熱板80は、図6に示すように構成されている。図6(a)は、熱板80の平面図であり、図6(b)は、熱板80の正面図であり、図6(c)は図6(a)のF矢視図であり、図7(d)は、図6(b)のC−C矢視図であり、図7(e)は、図6(b)のE−E矢視図である。本実施例の熱板は、上段熱板と下段熱板を積層させた構造としている。上段熱板81は、実施例1の形態の熱板である。図6(b)のA部拡大図に示すようにヒータ813およびヒートパイプ814が収容溝818にクッション材815を介し、その熱板本体811の下面819に実施例1の裏板206に代わり、下段熱板82をボルト締め等により上段熱板81に固定して埋設されている。下段熱板82には、上段熱板81内に複数組(複数加熱部)設けられたヒータ813及びヒートパイプ814と直角な方向にヒータ823及びヒートパイプ824を対として複数組設けている。
【0037】
実施例2における加熱部は、図7(d)および図7(e)のとおりである。上段熱板81では、812A、812B、812C、812Dおよび812Eの5組が加熱部となっている。下段熱板82では、822A、822Bおよび822Cの3組が加熱部となっている。各加熱部には、図6(a)に示すとおり温度センサが設けられている。上段熱板81では、817A、817B、及び817Cの3個設けられている。これは実施例1と同じである。下段熱板82には、温度センサは設けていない。
【0038】
また加熱部822は、本実施例では全てヒータとヒートパイプを対としているが、一部の加熱部は、ヒータのみとしても良い。
【0039】
下段熱板82は、図6(c)のB部拡大図に示すように、熱板本体821が上段熱板の下面819と接触する下段熱板の上面829にヒータ823とヒートパイプ824を埋設する収容溝828を設けている。その収容溝828にヒータ823とヒートパイプ824を埋設して上段熱板81とボルト等により固定している。尚上段熱板と下段熱板を固定した場合に、収容溝部に生じる隙間部は熱伝導性の良好なクッション材825等を充填することが好ましい。
図中2点鎖線で囲んだ各加熱部812及び822のヒータ813及び823は、全て温度制御装置CLに接続されている。各加熱部822は、ヒートパイプの作用により均一な温度にすることができる。また上段熱板812に設けられた温度センサ817の測定結果が温度制御装置CLに入力され各加熱部のヒータによる発熱量を制御することにより熱板面内の温度を均一に制御することができる。本実施例の熱板によれば、図6における熱板面内の温度を実施例1の熱板以上に均一に制御することができる。
【実施例3】
【0040】
実施例2では、下段熱板82には温度センサを設けていないが、本実施例では下段熱板にも図8に示すように、温度センサを設けた構成とすることもできる。本実施例の下段熱板82の実施例1および実施例2と直角な方向(被加工物と直角な方向)に温度センサを設けた構成である。それ以外は、全て実施例2と同様である。図8では、温度センサ827A、827B、827C、及び827Dを設けている。温度センサ827Aと827Dは、熱板の被加工物と直角な方向の両端部であり、温度センサ827Bと827Cは、熱板の中央部である。これらの温度センサ827の測定結果は、温度制御装置CLに入力され各加熱部のヒータによる発熱量を制御することにより熱板面内の温度を均一に制御することができる。本実施例の熱板によれば、熱板面内の温度を実施例1と実施例2の熱板以上に均一に制御することができる。
【実施例4】
【0041】
実施例1から実施例3の熱板20と熱板80に埋設するヒータとしては、図9のシースヒータSHを用いる場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、図示しないが熱パイプ等を用いることができる。熱パイプとは、中空の管部材と、管部材内を流れる加熱したオイル等の熱伝達媒体とから構成されるものである。このような熱パイプを、実施例1から実施例3の熱板20と熱板80に埋設した構成とすることもできる。この熱パイプを温度制御装置CLに接続させ、温度制御装置CLが、管部材内に流す熱伝達媒体の温度を調整することで、熱板20および熱板80の温度を制御することもできる。
また熱パイプ゜には、加熱された熱伝達媒体だけでなく冷却された熱伝達媒体を使用し温度制御装置CLが、管部材内に流す熱伝達媒体の温度を調整することで、熱板20から熱板80の温度を制御することもできる。
【0042】
本発明の熱板は、真空工程の略前半まで、保持ピン等により、被加工物10を熱板上から離間した位置に保持するタイプのラミネート装置に適用可能であるし、このようなラミネート装置に限られず、搬送ベルト130が、太陽電池モジュール10を最初から、熱板122上に載置するタイプのラミネート装置であっても、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
このように実施例1から4の熱板をラミネート装置100に使用することは以下のとおり有用である。
【0044】
本発明のラミネート装置用の熱板は、上記のようにヒートパイプをその熱板内に設けていること、更に熱板内の被加工物の搬送方向に温度センサを3箇所以上設けているので、熱板面内の温度を均一にすることができる。したがって内部に気泡が生じない品質の高い太陽電池モジュール10を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 被加工物(太陽電池モジュール)
11 カバーガラス
13、14 充填材
100 ラミネート装置
101 ラミネート部
110 上ケース
112 ダイヤフラム
113 上チャンバ
120 下ケース
121 下チャンバ
122 熱板
20、80 熱板
201 熱板本体
202 加熱部
203 ヒータ
204 ヒートパイプ
205 クッション材
206 裏板
207 温度センサ
208 収容溝
209 取付面(下面)
CL 温度制御装置
SH シースヒータ
SF 載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、
前記熱板は、前記熱板内に、ヒータ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、
さらに前記熱板は、前記熱板に載置される被加工物の搬送方向に3箇所以上温度センサを設け、
前記熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とするラミネート装置用の熱板。
【請求項2】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、
前記熱板は、上段熱板と下段熱板を積層させた構造とし、
前記上段熱板は、
前記上段熱板内に、ヒータ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、
さらに前記上段熱板は、前記上段熱板に載置される被加工物の搬送方向に3箇所以上温度センサを設け、
前記下段熱板は、
前記下段熱板内には、上段熱板に設けたヒータ及びヒートパイプとは直角な方向に前記ヒータのみ又は、ヒータ及びヒートパイプを対として複数組設け、
前記上段熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とするラミネート装置用熱板。
【請求項3】
前記請求項2に記載の前記下段熱板において、
さらに前記上段熱板に載置される被加工物の搬送方向と直角な方向に3箇所以上温度センサを設け、
前記上段熱板面内の温度分布を均一にすることを特徴とするラミネート装置用の熱板。
【請求項4】
前記熱板の前記各組のヒートパイプ及びヒータは、直線状にかつ平行に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のラミネート装置用の熱板を用いたことを特徴とするラミネート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10330(P2013−10330A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145989(P2011−145989)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】