説明

ランキンサイクルに従って動作する閉回路と該閉回路を使用する方法

【課題】回路の全体の性能を低下させずに、熱エネルギーを電気エネルギーなどの容易に使用可能なエネルギーに変換する。
【解決手段】本発明は、液体の状態の作動流体用の循環圧縮ポンプ(12)と、流体を蒸発させる高温熱源(22)に曝されている熱交換器(20)と、蒸気の状態の流体を膨張させる膨脹手段(28)と、入口の面(38)と出口の面(40)との間で冷却用流体が通過して流体を凝縮させる冷却用熱交換器(32)と、を有するランキンサイクルに従って動作する閉回路に関する。本発明によれば、この回路は冷却用熱交換器(32)からの熱エネルギーをとらえて電気エネルギーに変換する熱電対列(44)を有しており、この熱電対列が、冷却用熱交換器の出口の面(40)からの、加熱された冷却用流体の流れの中に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルに従って動作する閉回路に関する。本発明は、特にこの回路に由来する熱エネルギーが回収され他のエネルギーに変換されることを可能にする装置を備えているような回路に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、ランキンサイクルは、作動流体の相(液体/気体)の変化に関連する特別な特徴を有する閉回路熱力学サイクルである。
【0003】
このサイクルは、一般には液体の水である作動流体がエントロピー一定の状態で圧縮される段階と、この圧縮された液体が熱源と接触して加熱および蒸発する次の段階と、に概ね分けることができる。それからこの蒸気は、他の段階で、膨脹器内でエントロピー一定の状態で膨脹し、それから、最後の段階で、この膨脹した蒸気が冷源と接触して冷却されて凝縮する。
【0004】
これらのさまざまな段階を実施するために、回路は、液体の水を圧縮する圧縮器と、圧縮された水を少なくとも部分的に蒸発させるために高温の流体に曝される蒸発器と、この蒸気のエネルギーを力学的エネルギーや電気エネルギーなどの他のエネルギーに変換する、蒸気を膨脹させるタービンのような膨脹器と、この蒸気を液体に変換するために、蒸気に含まれている熱を一般には外気である冷源に伝達させ、当該外気に曝されている凝縮器と、有している。
【0005】
特に特許文献1により、特に自動車で使用される内燃エンジンの排気ガスによって運ばれる熱エネルギーを、蒸発器を通して流れる流体の加熱および蒸発をもたらす高温熱源として使用することも知られている。
【0006】
これは、排気段階で失われるエネルギーを、ランキンサイクル回路を通して自動車で使用可能なエネルギーに変換する目的で、排気段階で失われるエネルギーの大部分を回収することによって、このエンジンのエネルギー効率を改善することができる。
【0007】
さらに、この回路では、水蒸気に含まれている熱は、この蒸気を液体の水に変換する凝縮器に曝されている外気に伝達される。この変換中に、水蒸気は熱エネルギーを空気に伝達し、それからこの高温の空気は直接大気に放出される。
【0008】
そのため、使用可能であるはずの大量の熱エネルギーが失われてしまう。
【0009】
特許文献2は、加圧されている水蒸気が横切り、また冷却塔から流入する冷却用流体に曝されている凝縮器を備えた発電所を開示している。この凝縮器は、水蒸気の熱を回収してその熱を電気エネルギーに変換する熱電モジュールが配置された複数のチューブを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2,884,555号明細書
【特許文献2】米国特許第6,367,261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載の装置の主な欠点は、エネルギーの変換を実現するために大きな温度差が必要になることである。そのため、凝縮器の入口で水蒸気の温度および圧力を上昇させなければならないが、それによってこの発電所に備えられた蒸気タービンの効率が損なわれる。
【0012】
本発明は、回路全体の性能を低下させずに熱エネルギーを電気エネルギーなどの容易に使用可能なエネルギーに変換するように、熱エネルギーの全てまたは大部分を回収できる回路および方法によって、前述の欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液体の状態の作動流体用の循環圧縮ポンプと、流体を蒸発させる高温熱源に曝されている熱交換器と、蒸気の状態の流体を膨張させる膨脹手段と、入口の面と出口の面との間で冷却用流体が通過して流体を凝縮させる冷却用熱交換器と、を有するランキンサイクルに従って動作する閉回路であって、冷却用熱交換器からの熱エネルギーをとらえて電気エネルギーに変換する熱電対列を有し、当該熱電対列が、冷却用熱交換器の出口の面からの、加熱された冷却用流体の流れの中に配置されていることを特徴とする、回路に関する。
【0014】
熱電対列は、冷却用熱交換器の出口の面上に配置することができる。
【0015】
冷却用流体は、空気または水とすることができる。
【0016】
高温熱源は、内燃エンジンの排気ガスに由来するものであって良い。
【0017】
また、本発明は、ランキンサイクルに従って動作する閉回路であって、流体の状態の作動流体用の循環圧縮ポンプと、流体を蒸発させる高温熱源に曝されている熱交換器と、蒸気の状態の流体を膨張させる膨脹手段と、入口の面と出口の面との間で冷却用流体に曝され、流体を凝縮させる冷却用熱交換器と、を有する回路、を使用する方法であって、この回路の動作中に、冷却用熱交換器の出口の面からの、加熱された冷却用流体の流れの中に配置されている熱電対列によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために冷却用交換器からの熱エネルギーをとらえることを特徴とする方法に関する。
【0018】
本方法では、熱交換器に曝している高温熱源に、内燃エンジンの排気ガスの熱エネルギーを使用することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例によって示す以降の説明によって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ランキンサイクルに従って動作する閉回路に由来する熱エネルギーを回収する装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、ランキンサイクル閉回路10は、この回路10内を時計回り(矢印A)に循環する本例では水である作動流体用の循環圧縮手段12を有している。以降の説明で圧縮器と呼ぶこの手段12は、入口14と出口16との間でこの水を圧縮することを可能にし、ここでは水は液体の状態のまま高圧になっている。
【0022】
この圧縮器12は、電気モータ18などの任意の公知の手段によって回転駆動されることが有利である。
【0023】
この回路10は、圧縮蒸気の状態で流出する圧縮された水が通過する、蒸発器と呼ばれる熱交換器20も備えている。
【0024】
この蒸発器20は、内燃エンジン26の排気ライン24を循環している排気ガスに由来する高温熱源22に曝されている。
【0025】
このエンジン26は自動車の内燃エンジンであることが好ましい。
【0026】
この回路10は、入口の位置で高圧に圧縮された水蒸気を受け取る膨脹器28つまりエキスパンダを有しており、水蒸気は低圧の膨脹した蒸気の状態で流出する。
【0027】
例として、このエキスパンダは、ロータ(不図示)が水蒸気によって回転駆動される膨脹タービンである。このロータは、例えば発電機30のように、回収された力学的エネルギーを他のエネルギーに変換する任意の公知の装置に接続されていることが有利である。
【0028】
この回路10は、膨脹した低圧の蒸気用の入口34と、熱交換器32の通過後に液体の水に変換された液体用の出口36と、を備えている冷却用の熱交換器32も有している。冷却用の熱交換器32は以降の説明では凝縮器と呼ばれる。本明細書において、凝縮器32は、たとえばフィンが設けられているチューブ形式の熱交換器であり、蒸気は複数のチューブ内を循環し、冷却用流体がチューブおよびフィンに曝されている。この熱交換凝縮器32は、冷却用流体Ffに面している入口の面38と、加熱された冷却用流体がこの凝縮器32から放出される出口の面40と、を備えた平行六面体の組み立て品であることが有利である。
【0029】
本例の場合、この冷却用流体は、膨脹した蒸気を冷却することによって凝縮器32の入口の面38と出口の面40との間で凝縮器32を通して流れる雰囲気温度の外気である。この冷却は、蒸気を凝縮させ、この蒸気を凝縮器32の出口36では液体に変換するという効果がある。したがって、蒸気と冷却用空気との間の熱交換のため、冷却用空気は蒸気に含まれている熱エネルギーを得て、結果として、凝縮器32の出口の面40の位置で高温の気流となる(図では複数の矢印Fcで示されている)。
【0030】
もちろん、水などの他の任意の冷却用流体を蒸気の凝縮に使用することができる。
【0031】
この回路10は、凝縮器32によって供給された熱エネルギーを変換する手段42も有している。より具体的には、これらの手段42は、高温の流体に含まれている熱エネルギーを回収して、力学的エネルギーや電気エネルギーなどの他のエネルギーに変換する。
【0032】
これらの変換手段42は、高温の気流Fc内に配置された、凝縮器32の熱エネルギーから電気エネルギーを得ることができる連続した複数の熱電対列(thermopile)44を有していることが有利である。
【0033】
より具体的には、これらの熱電対列44は、凝縮器32の入口の面と出口の面との間の気体の循環を妨げることのないように、凝縮器32の出口の面40上またはその近くに配置されている。
【0034】
本発明の範囲から逸脱することなく、これらの熱電対列44は、凝縮器32内に組み込まれた要素であっても良く、この凝縮器32の構成要素であっても良い。
【0035】
これら熱電対列44は、得た熱をその場で電気エネルギーに変換する効果、特にゼーベック効果を有している。それから、この電気エネルギーは、複数の熱電対列44に接続された導体46によって利用可能である。
【0036】
作動流体が複数の矢印で示されている方向に液体または気体の状態で循環するように、流体循環ライン48,50,52および54によって、この回路10のさまざまな要素は連続的に接続されている。
【0037】
したがって、熱エネルギーの回収および電気エネルギーへの変換をする装置42を備えている回路10と、排気ライン24を備えている内燃エンジン26と、を含む組み立て品は、自動車に搭載されることが有利である。
【0038】
動作中、水は、電気モータ18により回転駆動される圧縮器12の作用によって、回路10内を図に関して時計回り(矢印A)に循環する。
【0039】
この構成において、水は、10バール(106パスカル)程度の圧力と30℃近くの温度で、圧縮された液体の状態で圧縮器12から流出する。この圧縮された水は、流体循環ライン48を通り、蒸発器20内に到達する。この圧縮された水は、蒸発器20を通して流れ、約300℃の温度の高圧の圧縮蒸気の状態で蒸発器20から流出する。この水蒸発は、蒸発器20が曝されているエンジン26の排気ガスからの熱によって実現される。それから水蒸気は、そのエネルギーを膨脹器28に伝達しながら膨脹器28を通して流れ、このエネルギーは発電機30の駆動に使用される。この膨脹器28から流出した膨脹した水蒸気は、凝縮器32を通して流れ、凝縮器32から液体の状態で流出する。それから、この液体の水は、流体循環ライン54を通して、圧縮されるために圧縮器12まで運ばれる。
【0040】
凝縮器32を通過する時に、蒸気は入口34の位置で約100℃になっており、この蒸気は約30℃の温度になり大部分が液体の状態で出口36から流出する。この通過中に、蒸気に含まれている熱量が、凝縮器32の入口の面32と出口の面40との間で凝縮器32に曝されている低温の気体(矢印Ff)によって捕らえられる。この気体は、蒸気によって過熱された気流Fcとして出口の面40に到達するように、凝縮器32を進むにつれて加熱される。
【0041】
熱電対列44により、高温の気体(矢印Fc)は、これらの熱電対列44に熱エネルギーの大部分を伝達しながら熱電対列44を通して流れ、通過後に高温の気流Fcよりも低い温度の気流Fc’となる。
【0042】
したがって、捕らえられた熱は、これらの熱電対列44によって電気エネルギーに変換される。
【0043】
この電気エネルギーは、電池や自動車の付属品などの任意の装置に、複数の導体46によって電流として運ばれる。
【0044】
ここで、凝縮器32に進入する水蒸気は(100℃から数度の範囲の)ほぼ一定の温度であって良い。これによって、高温気体の狭い温度範囲内での最大効率の領域で複数の熱電対列44を使用できるようになる。
【符号の説明】
【0045】
10 回路
12 圧縮器(循環圧縮手段)
14、34 入口
16、36 出口
18 電気モータ
20 蒸発器(熱交換器)
22 高温熱源
24 排気ライン
26 内燃エンジン
28 膨脹器
30 発電機
32 凝縮器(熱交換器)
38 入口の面
40 出口の面
42 変換手段
44 熱電対列
46 導体
48,50,52,54 流体循環ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の状態の作動流体用の循環圧縮ポンプ(12)と、前記流体を蒸発させる高温熱源(22)に曝されている熱交換器(20)と、蒸気の状態の前記流体を膨張させる膨脹手段(28)と、入口の面(38)と出口の面(40)との間で冷却用流体が通過して前記流体を凝縮させる冷却用熱交換器(32)と、を有するランキンサイクルに従って動作する閉回路であって、
前記冷却用熱交換器(32)からの熱エネルギーをとらえて電気エネルギーに変換する熱電対列(44)を有し、
前記熱電対列が、前記冷却用熱交換器の前記出口の面(40)からの、加熱された前記冷却用流体の流れの中に配置されていることを特徴とする、回路。
【請求項2】
前記熱電対列(44)は、前記冷却用熱交換器の前記出口の面(40)上に配置されている、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記冷却用流体は空気である、請求項1または2に記載の回路。
【請求項4】
前記冷却用流体は水である、請求項1または2に記載の回路。
【請求項5】
前記高温熱源(22)は、内燃エンジン(26)の排気ガスに由来する、請求項1に記載の回路。
【請求項6】
ランキンサイクルに従って動作する閉回路(10)であって、流体の状態の作動流体用の循環圧縮ポンプ(12)と、前記流体を蒸発させる高温熱源(22)に曝されている熱交換器(20)と、蒸気の状態の前記流体を膨張させる膨脹手段(28)と、入口の面(38)と出口の面(40)との間で冷却用流体に曝され、前記流体を凝縮させる冷却用熱交換器(32)と、を有する前記回路を使用する方法であって、
前記回路の動作中に、前記冷却用熱交換器の前記出口の面(40)からの、加熱された前記冷却用流体の流れの中に配置されている熱電対列(44)によって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために前記冷却用交換器からの熱エネルギーをとらえることを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記熱交換器(20)に曝している前記高温熱源(22)に、内燃エンジン(26)の排気ガスの熱エネルギーを使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−226483(P2011−226483A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91727(P2011−91727)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】