説明

ランキンサイクルシステム

【課題】作動流体の上限温度に対する制限が緩和されたランキンサイクルシステムを提供する。
【解決手段】ランキンサイクルシステム200は、作動流体を加圧するためのポンプ101と、ポンプ101によって加圧された作動流体を加熱するための加熱器102と、加熱器102で加熱された高温高圧の作動流体を膨張させることによって作動流体から動力を取り出すための膨張機構3と、膨張機構3に連結された発電機4と、膨張機構3および発電機4を収容している密閉容器1とを有する膨張機100と、膨張機100で膨張した作動流体を冷却するための冷却器103とを備えている。作動流体をポンプ101の出口から加熱器102の入口へと導くための流路内に発電機4が位置するように、その流路の一部が密閉容器1の内部空間24によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化の問題を受けて、太陽光等の自然エネルギーや各種排熱を利用するエネルギーシステムが脚光を浴びている。そのようなエネルギーシステムの一つとして、ランキンサイクルシステムがある。一般的なランキンサイクルシステムでは、高温高圧の作動流体で膨張機を運転し、膨張機によって作動流体から取り出した動力で発電を行う。高温高圧の作動流体は、ポンプおよび熱源(太陽光、地熱、自動車の排熱等)によって作られる。
【0003】
ランキンサイクルシステムの膨張機として、容積式の膨張機構と、その膨張機構にシャフトで連結された発電機とが密閉容器に収容された構造のものが知られている(特許文献1)。この構造の膨張機は、シャフトが密閉容器を貫通していないため、密閉容器外への作動流体の漏れを防ぐメカニカルシールが不要となる点で優れている。
【特許文献1】特開2006−125771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランキンサイクルの理論熱効率は、膨張機の入口における作動流体のエンタルピーが大きくなればなるほど良くなる。すなわち、膨張機に供給する作動流体の圧力および温度は、高ければ高いほど好ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の膨張機においては、密閉容器の内部空間が膨張後の作動流体で満たされる。この場合、膨張後の作動流体の温度が高すぎると発電機がダメージを受ける可能性がある。また、許容範囲内の温度であっても、高温での運転が続くと発電機の寿命が短くなると言われている。また、発電機に永久磁石が用いられている場合には、減磁の問題も出てくる。こうした問題を回避するためには、膨張機に供給する作動流体の温度を制限する必要があるが、作動流体の温度制限は、システムの効率の向上の妨げとなる。
【0006】
こうした問題に鑑み、本発明は、作動流体の上限温度に対する制限が緩和されたランキンサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
作動流体を加圧するためのポンプと、
前記ポンプによって加圧された作動流体を加熱するための加熱器と、
前記加熱器で加熱された高温高圧の作動流体を膨張させることによって作動流体から動力を取り出すための膨張機構と、前記膨張機構に連結された発電機と、前記膨張機構および前記発電機を収容している密閉容器と、を有する膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動流体を冷却するための冷却器と、を備え、
作動流体を前記ポンプの出口から前記加熱器の入口へと導くための流路内に前記発電機が位置するように、前記流路の一部が前記密閉容器の内部空間によって形成されている、ランキンサイクルシステムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のランキンサイクルシステムによれば、作動流体をポンプの出口から加熱器の入口へと導くための流路内に発電機が位置するように、その流路の一部が密閉容器の内部空間によって形成されている。このようにすれば、発電機の周囲および/または内部を比較的低温の作動流体が流れるので、発電機が作動流体によって冷却される。そのため、膨張機構で膨張する作動流体の温度が相当高い場合でも発電機の温度上昇が抑制される。併せて、発電機の熱によって作動流体が予熱されるので、システムの効率が向上する。さらに、発電機を低温に保つことによって、発電機の寿命が短くなったり減磁が起こったりしにくくなるので、システムの信頼性も高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態にかかるランキンサイクルシステムの構成図である。ランキンサイクルシステム200は、ポンプ101、加熱器102、膨張機100A、冷却器103およびこれらの装置を相互に接続している複数の管路14a〜14eを備えている。
【0011】
ポンプ101は、作動流体を加圧する。ポンプ101として、例えば、一般的な容積式ポンプを用いることができる。熱源である加熱器102は、ポンプ101によって加圧された作動流体を加熱する。加熱器102として、例えば、太陽熱集熱器を用いることができる。膨張機100Aは、加熱器102で加熱された高温高圧の作動流体を減圧および膨張させることによって作動流体から動力を取り出すための膨張機構3と、その動力によって発電を行うための発電機4と、動力伝達がなされるように膨張機構3と発電機4とを連結しているシャフト5と、これらを収容している密閉容器1とを有する。冷却器103は、膨張機100Aで膨張および減圧した作動流体を冷却する。冷却器103として、一般的なフィンチューブ型熱交換器を用いることができる。
【0012】
作動流体として、例えば、二酸化炭素、アンモニアおよび炭化水素を用いることができる。安全性や地球温暖化防止の観点から二酸化炭素が好適である。
【0013】
図1に示すように、作動流体をポンプ101の出口から加熱器102の入口へと導くための流路内に発電機4が位置するように、その流路の一部が膨張機100Aの内部を通っている。具体的に、作動流体をポンプ101の出口から加熱器102の入口へと導くための流路は、ポンプ101の出口と密閉容器1の内部空間24とを接続している管路14a(第1管路)と、膨張機100Aの密閉容器1の内部空間24と、密閉容器1の内部空間24と加熱器102の入口とを接続している管路14b(第2管路)とによって形成されている。したがって、密閉容器1の内部空間24は、ポンプ101で加圧された作動流体で満たされる。ポンプ101で加圧された直後の作動流体の状態は、低温高圧である。低温高圧の作動流体が発電機4の周囲および/または内部を流れることによって、発電機4が冷却される。結果として、発電機4の温度上昇が抑制される。
【0014】
図2は、図1に示すランキンサイクルシステムのp−h線図である。作動流体として二酸化炭素を用いた場合のサイクルがA−B−B’−C−D−Aで示されている。作動流体は、ポンプ101によって状態Aから状態Bまで加圧される。ポンプ101で加圧された作動流体は、管路14aを通じて膨張機100Aの密閉容器1の内部空間24に導かれ、さらに、密閉容器1の内部空間24および管路14bを通じて加熱器102へと導かれる。密閉容器1の内部空間24において、作動流体は、ポンプ101の出口(状態B)でのエンタルピーと、加熱器102の入口(状態B’)でのエンタルピーとの差に相当する熱を獲得する。発電機4の熱によって作動流体が予熱されるので、システムの効率が向上する。
【0015】
加熱器102において、作動流体は、状態B’から状態Cまで加熱される。加熱器102で加熱された作動流体は、管路14cを通じて膨張機100Aの膨張機構3に導かれる。膨張機構3において、作動流体は、状態Cから状態Dまで減圧および膨張する。その後、作動流体は、管路14dを通じて冷却器103に導かれ、状態Dから状態Aまで冷却される。冷却器103で冷却された作動流体は、管路14eを通じてポンプ101に戻る。
【0016】
図1に示すように、膨張機100Aにおいて、膨張機構3が密閉容器1内の下側に配置され、発電機4が密閉容器1内の上側に配置されている。作動流体は、発電機4の周囲および/または内部を下から上に向かって流れる。ここで、作動流体とともにサイクルを循環する潤滑油の比重は、作動流体の比重よりも大きい。そのため、作動流体が発電機4の周囲および/または内部を下から上に向かって流れる際、潤滑油は、重力や遠心力の影響を受けて作動流体から分離される。つまり、膨張機100Aによれば、密閉容器1がオイルセパレータとして機能するので、加熱器102での熱交換の妨げとなる潤滑油の循環量を低減できる。また、高温の加熱器102による潤滑油の劣化も防止できる。
【0017】
なお、本実施形態では、シャフト5の軸方向が垂直方向に一致しているが、シャフト5の軸方向が水平方向に一致していてもよい。
【0018】
また、加熱器102が複数の部分に分かれていてもよい。この場合、ポンプ101から吐出された直後の作動流体を密閉容器1の内部空間24に導入してもよいし、一部の加熱器で加熱された作動流体を密閉容器1の内部空間24に導入してもよい。膨張後の作動流体の温度(状態D)よりも低温の作動流体を密閉容器1の内部空間24に導入すれば、膨張後の作動流体で密閉容器1の内部空間24を満たす場合(従来例)を基準として、発電機4を冷却する効果が得られるからである。
【0019】
図3は、図1に示す膨張機100Aの縦断面図である。膨張機100Aは、密閉容器1と、膨張機構3と、発電機4と、シャフト5とを備えている。密閉容器1の底部は、膨張機構3の潤滑油の貯留部25として利用されている。膨張機構3によって作動流体から取り出された動力は、シャフト5を介して発電機4に伝達される。シャフト5は、複数の部品によって構成されていてもよいし、単一の部品によって構成されていてもよい。
【0020】
発電機4は、シャフト5に固定されたロータ22と、ロータ22の周囲に配置されたステータ21とを備えている。ステータ21は、密閉容器1に固定されている。ロータ22とステータ21との間には、作動流体が軸方向に流通できる広さの隙間19が形成されている。隙間19は、作動流体をポンプ101の出口から加熱器102の入口へと導くための流路の一部を形成している。作動流体が隙間19を流通することによって、発電機4を効率よく冷却できる。言い換えれば、作動流体が効率よく熱を獲得しうる。なお、作動流体が軸方向に流通しうる隙間は、ステータ21と密閉容器1との間に形成されていてもよい。発電機4の周囲および内部の少なくとも一方を作動流体が流れることによって、発電機4は冷却されうる。
【0021】
なお、発電機4で発生した電力は、密閉容器1の上部に設けられたターミナル(図示省略)を介してコンバータ等の電源ユニットに供給される。
【0022】
本実施形態では、膨張機構3として、ロータリ型流体機構が採用されている。「ロータリ型」には、ベーンがピストンの外周面を摺動するローリングピストン型やベーンがシリンダの内周面を摺動するスライディングベーン型だけでなく、ピストンとベーンとが一体化されているスイングピストン型が含まれる。また、膨張機構3の型式は、ロータリ型に限定されない。膨張機構3として、スクロール型、往復型、スクリュー型等の他の型式の流体機構を採用してもよい。さらに、膨張機構3の型式は、容積式に限定されず、遠心式であってもよい。
【0023】
図3に示すように、膨張機構3は、第1シリンダ42と、第1シリンダ42よりも厚みのある第2シリンダ44と、これらのシリンダ42,44を仕切っている中板43とを備えている。第1シリンダ42および第2シリンダ44は、互いに同心状に配置されている。膨張機構3は、さらに、第1ピストン46、第1ベーン48、第1ばね50、第2ピストン47、第2ベーン49および第2ばね51を備えている。第1ピストン46は、シャフト5の偏心部5cに嵌合しており、第1シリンダ42の中で偏心回転運動する。第1ベーン48は、第1シリンダ42に形成されたベーン溝42a(図4A参照)に往復動自在に保持されている。第1ベーン48の一端部は、第1ピストン46に接している。第1ばね50は、第1ベーン48の他端部に接しており、第1ベーン48を第1ピストン46に向けて付勢する。第2ピストン47は、シャフト5の偏心部5dに嵌合しており、第2シリンダ44の中で偏心回転運動する。第2ベーン49は、第2シリンダ44に形成されたベーン溝44a(図4B参照)に往復動自在に保持されている。第2ベーン49の一端部は、第2ピストン47に接している。第2ばね51は、第2ベーン49の他端部に接しており、第2ベーン49を第2ピストン47に向けて付勢する。
【0024】
膨張機構3は、さらに、上軸受部材45および下軸受部材41を備えている。上軸受部材45は、密閉容器1に隙間無く嵌め合わされている。潤滑油の移動を許容する貫通孔45aが上軸受部材45に形成されている。シリンダや中板等の膨張機構3の構成部品は、上軸受部材45を介して密閉容器1に固定されている。下軸受部材41および中板43は第1シリンダ42を上下から挟持し、中板43および上軸受部材45は第2シリンダ44を上下から挟持している。上軸受部材45、中板43および下軸受部材41による挟持により、第1シリンダ42および第2シリンダ44内に作動室が形成されている。
【0025】
図4Aに示すように、第1シリンダ42の内側には、吸入側の作動室55a(第1吸入側空間)および吐出側の作動室55b(第1吐出側空間)が形成されている。作動室55aと作動室55bとは、第1ピストン46および第1ベーン48によって区画されている。図4Bに示すように、第2シリンダ44の内側には、吸入側の作動室56a(第2吸入側空間)および吐出側の作動室56b(第2吐出側空間)が形成されている。作動室56aと作動室56bとは、第2ピストン47および第2ベーン49により区画されている。第2シリンダ44における2つの作動室56a,56bの合計容積は、第1シリンダ42における2つの作動室55a,55bの合計容積よりも大きい。第1シリンダ42の吐出側の作動室55bと、第2シリンダ44の吸入側の作動室56aとが、中板43に形成された貫通孔43aを介してつながることによって、作動室55bおよび作動室56aが一つの作動室(膨張室)として機能する。
【0026】
なお、作動室56a,56bの合計容積を作動室55a,55bの合計容積よりも大きくする方法として、第1シリンダ42の厚みと第2シリンダ44の厚みとを異ならせる方法だけでなく、シリンダ42,44の内径やピストン46,47の外径を適切に設定する方法を採用してもよい。
【0027】
図3に示すように、膨張機構3は、さらに、膨張前の作動流体を密閉容器1の外部の流路から直接吸入するための吸入路としての吸入管52と、膨張後の作動流体を密閉容器1の外部の流路に直接吐出するための吐出路としての吐出管53とを備えている。吸入管52は、図1に示す管路14cの一部である。吐出管53は、図1に示す管路14dの一部である。
【0028】
吸入管52は、密閉容器1の外部の流路から下軸受部材41の内部の吸入路41kへと作動流体を導くことができるように、下軸受部材41に直接挿入されている。吐出管53は、上軸受部材45の内部の吐出路45kから密閉容器1の外部の流路へと作動流体を導くことができるように、上軸受部材45に直接挿入されている。このようにすれば、膨張前後の作動流体が発電機4に接触しないので、発電機4の耐熱温度を大幅に上回る温度の作動流体から動力を取り出すことが可能となる。
【0029】
高温高圧の作動流体は、吸入管52および吸入路41kを経て、下軸受部材41に形成された吸入孔41aから第1シリンダ42の作動室55aに流入する。第1シリンダ42の作動室55aに流入した作動流体は、シャフト5の回転に応じて作動室55bに移り、作動室55b、貫通孔43aおよび作動室56aからなる膨張室においてシャフト5を回転させながら膨張して低圧になる。膨張後の作動流体は、作動室56b、吐出孔45a、吐出路45kおよび吐出管53を経て密閉容器1の外部へと導かれる。
【0030】
図1に示すように、シャフト5の下端には、オイルポンプ16が設けられている。シャフト5の内部には、下軸受部材41、上軸受部材45、第1ピストン46および第2ピストン47の摺動部に給油を行うための給油路が、軸方向に延びるように形成されている(図示省略)。
【0031】
密閉容器1には、配管13および配管15が接続されている。配管13は、図1に示す管路14a(第1管路)の一部である。配管15は、図1に示す管路14b(第2管路)の一部である。配管13の開口部は、シャフト5の軸方向に関して膨張機構3と発電機4との間に位置している。配管15の開口部は、発電機4よりも上に位置している。すなわち、配管13(管路14a)の開口部、発電機4および配管15(管路14b)の開口部が、シャフト5の軸方向に関してこの順番で配列している。
【0032】
配管13および配管15が発電機4を挟む位置関係によれば、密閉容器1内での作動流体の流通距離を稼ぎやすいので、発電機4の効率的な冷却に資する。配管13と密閉容器1との接続位置からみて、配管15と密閉容器1との接続位置が、シャフト5を挟んで反対側にある場合にも、流通距離を稼ぐことができる。
【0033】
また、膨張機構3と発電機4との間に仕切り12が設けられている。仕切り12は、密閉容器1の内部空間24を膨張機構3が配置された第1内部空間24aと、発電機4が配置された第2内部空間24bとに区画している。仕切り12は、密閉容器1の横断面にほぼ等しい大きさおよび形状を持った板状部材であり、密閉容器1に隙間無く嵌め合わされている。また、仕切り12は、第1内部空間24aと第2内部空間24bとの間の作動流体の往来を許容するように形成されている。配管13および配管15は、それぞれ、第2内部空間24bに開口している。
【0034】
さらに、仕切り12に隣接する領域において、膨張機構3と発電機4との間の熱移動を妨げるための断熱層27が設けられている。本実施形態では、シャフト5の軸方向が垂直方向に一致し、膨張機構3が密閉容器1内の下側に配置され、発電機4が密閉容器1内の上側に配置されている。潤滑油の量は、油面SLが仕切り12の下面よりも下方に位置するように調整されている。膨張機構4の周囲を満たす潤滑油の油面SLと仕切り12の下面との間における第1内部空間24aによって断熱層27が形成されている。作動流体は、断熱層27で滞留する。
【0035】
仕切り12や断熱層27によって以下のような効果が得られる。図2のp−h線図に示すように、膨張機構3に吸入される作動流体の温度は、例えば200℃と高い。そのため、膨張機構3の構成部品および膨張機構3の周囲を満たす潤滑油は、システムの作動時に高温となる。一方、配管13から第2内部空間24bに導かれる作動流体の温度は、約40℃と低い。膨張機構3や潤滑油の熱が第2内部空間24bを満たす作動流体に移ると、発電機4を冷却する効果が弱まる。本実施形態のごとく、仕切り12や断熱層27を設けることで、膨張機構3や潤滑油の熱が奪われることを抑制できる。その結果、発電機4をより低温に維持することが可能となるので、システムの信頼性の向上を期待できる。また、膨張機構3で膨張するべき作動流体の温度低下を防ぐことによって膨張機構3の効率が向上し、ひいてはシステムの効率も向上する。
【0036】
なお、密閉容器1や膨張機構3が炭素鋼または鋳鉄でできている場合において、仕切り12がステンレス鋼のような熱伝導率の小さい金属でできていると、上述の効果がいっそう高まるので好ましい。場合によっては、仕切り12は、セラミックや耐熱性プラスチックのような非金属材料でできていてもよい。
【0037】
また、仕切り12は、第1内部空間24aと第2内部空間24bとの間の作動流体の往来を許容するための圧力調整孔12hを有する。圧力調整孔12hは、仕切り12を厚さ方向(上下方向)に貫く貫通孔である。仕切り12の下側には、圧力調整孔12hに連なる形で下方に延びる管状部18が設けられている。管状部18によって、圧力調整孔12hの開口の位置が、仕切り12の下面の位置よりも下側に合わせられている。
【0038】
さらに、仕切り12は、シャフト5を通すためのシャフト孔12jを有する。仕切り12の下側には、シャフト孔12jに連なる形で下方に延びる管状部20が設けられている。管状部20によって、シャフト孔12jの開口の位置が、仕切り12の下面の位置よりも下側に合わせられている。管状部18の下端の位置および管状部20の下端の位置は、軸方向に関して互いに一致している。
【0039】
断熱層27は、膨張機構3や潤滑油の熱が上方に流れるのを遮断する。ただし、油面SLの位置が変動することによって油面SLと仕切り12との距離が短くなると、断熱層27の体積が減少して断熱効果が弱まる。そこで、本実施形態のように、管状部18,20を設ければ、油面SLが仕切り12に相当接近した状況下でも、管状部18,20の下端と仕切り12の下面との間に作動流体が閉じこめられる。そのため、常に一定以上の体積の断熱層27を確保でき、十分な断熱効果を確実に得ることができる。もちろん、管状部18,20が無い場合であっても、第1内部空間24aの一部である、仕切り12と上軸受部材45との間の空間によって断熱効果が得られる。
【0040】
また、発電機4と仕切り12との間、かつ、配管13と仕切り12との間に、作動流体の流動を抑制するための抑制板17が設けられている。抑制板17は、小さい貫通孔17hが多数形成された多孔板でできている。仕切り12と抑制板17との間には、適度な広さの隙間30がある。第2内部空間24bにおいては、発電機4のロータ22の旋回によって作動流体が激しく流動するが、隙間30での作動流体の流動は、抑制板17によって抑制されるので比較的小さい。そのため、隙間30を満たす作動流体と仕切り12との間の熱伝達を低減できる。
【0041】
また、本実施形態では、作動流体として二酸化炭素の使用を想定している。図2に示すように、二酸化炭素は、ポンプ101と加熱器102との間の流路において、超臨界状態となりうる。そのため、配管13が配管15よりも下方に位置する構成においても、作動流体は、配管13から配管15へとスムーズに流通しうる。
【0042】
(第2実施形態)
図5は、図3を参照して説明した膨張機100Aに代えて、ランキンサイクルシステム200に採用できる他の膨張機の縦断面図である。図3に示す実施形態と共通の部材には共通の符号を付し、説明を省略することとする。
【0043】
図5に示す膨張機100Bは、膨張機構3と発電機4との位置関係が、図2に示す膨張機100Aと上下逆になっている。すなわち、膨張機100Bでは、膨張機構3が密閉容器1内の上側に配置され、発電機4が密閉容器1内の下側に配置されている。膨張機100Aと同様に、シャフト5の軸方向は垂直方向に一致している。作動流体は、発電機4の周囲および/または内部を上から下に向かって流れる。
【0044】
シャフト5の下端は、軸受60によって支持されている。また、シャフト5の下端には、オイルポンプ16が設けられている。貯留部25に貯められた潤滑油は、オイルポンプ16の働きによって、シャフト5の内部に形成された給油路を通じて膨張機構3に供給される。
【0045】
膨張機構3と発電機4との間には、仕切り12が設けられている。仕切り12は、密閉容器1の内部空間24を、膨張機構3が配置された第1内部空間24aと、発電機4が配置された第2内部空間24bとに区画している。第1内部空間24aには、仕切り12と膨張機構3の軸受部材45との間の空間と、膨張機構3の軸受部材45よりも上の空間とが含まれる。配管13および配管15は、それぞれ、第2内部空間24bに開口している。配管13の開口部は、シャフト5の軸方向に関して仕切り12と発電機4との間にある。配管15の開口部は、シャフト5の軸方向に関して発電機4と軸受60との間にある。油面の位置が配管15の開口部よりも下となるように、貯留部25に潤滑油が貯められている。
【0046】
発電機4の周囲は、配管13を通じて第2内部空間24bに導かれた作動流体で満たされる。発電機4の周囲の作動流体は、配管15を通じて、密閉容器1の外部の流路に速やかに流れ出る。発電機4が作動流体から受ける冷却効果や作動流体が発電機4によって予熱されることに基づく効果については、第1実施形態で説明した通りである。
【0047】
仕切り12には、圧力調整孔12hが形成されている。圧力調整孔12を通じて、第1内部空間24aと第2内部空間24bとの間の作動流体の流通が許容されている。さらに、膨張機構3の軸受部材45には、貫通孔45aが形成されている。したがって、第1内部空間24aにおける軸受部材45よりも上の部分も作動流体で満たされる。第1内部空間24aにおいて、作動流体は膨張機構3の周囲に滞留し、膨張機構3を包囲する。膨張機構3を包囲する作動流体によって断熱効果が得られる。
【0048】
また、本実施形態によれば、膨張機構3が密閉容器1内の上側に配置されているので、膨張機構3の周囲に滞留する作動流体が高温となった場合であっても安定した温度成層が形成される。そのため、膨張機構3を包囲する作動流体が下方に流れにくい。このことと、ロータ22の回転に基づく撹拌作用が仕切り12によって弱められることとが相俟って、膨張機構3を包囲する作動流体に基づく断熱効果がさらに高まる。併せて、配管13を通じて密閉容器1内に導かれる作動流体で発電機4を安定して冷却できる。
【0049】
また、作動流体が発電機4の周囲を上から下に向かって流れる際、潤滑油は、重力や遠心力の影響を受けて作動流体から分離される。つまり、図3を参照して説明した膨張機100Aと同様に、本実施形態の膨張機100Bにおいても、密閉容器1がオイルセパレータとして機能する。したがって、加熱器102での熱交換の妨げとなる潤滑油の循環量を低減できる。また、高温の加熱器102による潤滑油の劣化も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態にかかるランキンサイクルシステムの構成図
【図2】図1に示すランキンサイクルシステムのp−h線図
【図3】図1に示す膨張機の縦断面図
【図4A】図3に示す膨張機のD1−D1横断面図
【図4B】図3に示す膨張機のD2−D2横断面図
【図5】第2実施形態の膨張機の縦断面図
【符号の説明】
【0051】
1 密閉容器
3 膨張機構
4 発電機
5 シャフト
12 仕切り
14 管路
17 抑制板
18,20 管状部
19 隙間
21 ステータ
22 ロータ
24 密閉容器の内部空間
24a 第1内部空間
24b 第2内部空間
27 断熱層
52 吸入管
53 吐出管
100A,100B 膨張機
101 ポンプ
102 加熱器
103 冷却器
200 ランキンサイクルシステム
SL 油面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を加圧するためのポンプと、
前記ポンプによって加圧された作動流体を加熱するための加熱器と、
前記加熱器で加熱された高温高圧の作動流体を膨張させることによって作動流体から動力を取り出すための膨張機構と、前記膨張機構に連結された発電機と、前記膨張機構および前記発電機を収容している密閉容器と、を有する膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動流体を冷却するための冷却器と、を備え、
作動流体を前記ポンプの出口から前記加熱器の入口へと導くための流路内に前記発電機が位置するように、前記流路の一部が前記密閉容器の内部空間によって形成されている、ランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記膨張機構は、膨張前の作動流体を前記密閉容器の外部の流路から直接吸入するための吸入路と、膨張後の作動流体を前記密閉容器の外部の流路に直接吐出するための吐出路とを含む、請求項1に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記膨張機構が前記密閉容器内の下側に配置され、前記発電機が前記密閉容器内の上側に配置されており、
作動流体が前記発電機の周囲および/または内部を下から上に向かって流れる、請求項1または請求項2に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項4】
前記膨張機構が前記密閉容器内の上側に配置され、前記発電機が前記密閉容器内の下側に配置されており、
作動流体が前記発電機の周囲および/または内部を上から下に向かって流れる、請求項1または請求項2に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項5】
前記膨張機が、前記膨張機構と前記発電機とを連結しているシャフトをさらに有し、
前記発電機が、前記シャフトに固定されたロータと、前記ロータの周囲に配置されたステータとを含み、
前記ロータと前記ステータとの間には、作動流体が前記シャフトの軸方向に流通できる広さの隙間が形成されている、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項6】
前記ポンプの出口と前記密閉容器の内部空間とを接続している第1管路と、前記密閉容器の内部空間と前記加熱器の入口とを接続している第2管路とをさらに備え、
前記第1管路、前記密閉容器の内部空間および前記第2管路によって、作動流体を前記ポンプの出口から前記加熱器の入口へと導くための前記流路が形成されており、
前記膨張機が、前記膨張機構と前記発電機とを連結しているシャフトをさらに有し、
前記第1管路の開口部、前記発電機および前記第2管路の開口部が、前記シャフトの軸方向に関してこの順番で配列している、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項7】
前記膨張機が、前記密閉容器の内部空間を前記膨張機構が配置された第1内部空間と前記発電機が配置された第2内部空間とに区画している仕切りをさらに有し、
前記仕切りが、前記第1内部空間と前記第2内部空間との間の作動流体の往来を許容するように形成され、
前記第1管路および前記第2管路が、それぞれ、前記第2内部空間に開口している、請求項6に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項8】
前記仕切りに隣接する領域において、前記発電機と前記膨張機構との間の熱移動を妨げるための断熱層が設けられている、請求項7に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項9】
前記シャフトの軸方向が垂直方向に一致するように、前記膨張機構が前記密閉容器内の下側に配置され、前記発電機が前記密閉容器内の上側に配置されており、
前記膨張機構の周囲を満たす潤滑油の油面と前記仕切りの下面との間における前記第1内部空間によって前記断熱層が形成されている、請求項8に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項10】
前記仕切りが、前記第1内部空間と前記第2内部空間との間の作動流体の往来を許容するための圧力調整孔を有し、
前記仕切りの下側には、前記圧力調整孔に連なる形で下方に延びる管状部が設けられている、請求項9に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項11】
前記仕切りが、前記シャフトを通すためのシャフト孔を有し、
前記仕切りの下側には、前記シャフト孔に連なる形で下方に延びる管状部が設けられている、請求項9または請求項10に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項12】
前記膨張機が、前記発電機と前記仕切りとの間に配置された、作動流体の流動を抑制するための抑制板をさらに有する、請求項7ないし請求項11のいずれか1項に記載のランキンサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174494(P2009−174494A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16280(P2008−16280)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】