説明

ランキンサイクルシステム

【課題】外気温度の変動に依存せず、システムの効率を高めることのできるランキンサイクルシステムを提供する。
【解決手段】車両(1)に搭載されるランキンサイクルシステム(10)において、媒体が循環する媒体経路(11)と、車両に搭載されたエンジンの排熱によって媒体を気化させる蒸発器(12)と、気化された媒体により回転エネルギーを発生させる膨張器(13)と、気化された媒体を凝縮して液化させる凝縮器(14)と、液化された媒体を循環させるポンプ(15)と、を備え、凝縮器は、車室の後方側に配置され、車室内の空気を用いて熱交換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの廃熱を利用してエネルギーを生成するランキンサイクルシステムにおける凝縮器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱によって媒体である液体を気化させ、この気化された媒体によってエネルギーを取り出すランキンサイクル熱機関(ランキンサイクルシステム)が知られている。また、このランキンサイクルシステムを車両に搭載し、車両のエンジンの排熱を利用してエネルギーを取り出すシステムも知られている。エンジンの排熱は、冷却水等を用いて、エンジンや排気管からの熱を取得し、これを蒸発器に供給することで媒体を加熱する。また、車室外の走行風を用いて凝縮器を冷却することで熱交換が行われ、媒体が液化される。
【0003】
一方、車室内の空調を冷凍サイクルによって調節する自動車用空気調和装置において、媒体の熱交換を行う熱交換器の冷却に、走行風のみならず、車室の排気を用いるよう構成した自動車用空気調和装置が知られている(特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−225330号公報
【特許文献2】特開2005−162158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、車両にランキンサイクルシステムを搭載した場合は、凝縮器は車室外の空気によって冷却される。この場合、凝縮器の熱交換効率は外気温度に依存するため、特に夏季など外気温度が高い場合には、凝縮器の熱交換が充分に行われず、ランキンサイクルシステムの効率が低くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、外気の温度の変動に依存せず、システムの効率を高めることのできるランキンサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載されるランキンサイクルシステムにおいて、媒体が循環する媒体経路と、車両に搭載されたエンジンの排熱によって媒体を気化させる蒸発器と、気化された媒体により回転エネルギーを発生させる膨張器と、気化された媒体を凝縮して液化させる凝縮器と、液化された媒体を循環させるポンプと、を備え、凝縮器は、車室の後方側に配置され、車両の車室内の空気を用いて熱交換を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、凝縮器は、車室の後方側に配置された、車室内の空気及び車室外の走行風の少なくとも一方を凝縮器へと送風するように構成された送風ダクトに配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、車室の後方側、かつ、凝縮器の近傍に、蒸発器、膨張器、凝縮器及びポンプが一つのユニットとして配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、車両は、車室内の空気温度を調節する空調装置を備え、空調装置は、車両の車室後方側の空気温度を冷却するエバポレータを備え、凝縮器は、車両の車室の後方側に配置された、エバポレータを通過した空気を車室内及び凝縮器の少なくとも一方に送風するように構成された送風ダクトに配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、車両は、車室内の空気及び車室外の空気の少なくとも一方を導入し、導入された空気を加熱又は冷却することにより車両前方側の車室内空気温度を調節する第1の空調装置と、車両の車室内の空気及び車室外の空気の少なくとも一方を導入し、導入された空気を加熱又は冷却することにより車両後方側の車室内空気温度を調節する第2の空調装置と、を備え、凝縮器は、車室の後方側に配置された、第2の空調装置により冷却された空気を車室内及び凝縮器の少なくとも一方に送風する送風ダクトに配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、凝縮器は車室の後方側に配置され、車室内の空気を用いて熱交換を行うので、車室内からの排気を利用することによって、冷却側空気と被冷却側媒体との温度差を大きくとることができ、凝縮器の熱交換効率を高めることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、車室内の空気及び車室外の走行風の少なくとも一方を凝縮器へと送風するので、温度差の大きい車室内の空気と、流量の大きい車室外の走行風とによって、凝縮器の熱交換効率を高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、車室の後方側に、蒸発器、膨張器、凝縮器及びポンプを一つのユニットとして配置したので、車両の空間の利用効率を高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、エバポレータを通過した空気を車室内及び凝縮器の少なくとも一方に送風するので、エバポレータを通過した温度差の大きい空気と、流量の大きい車室外の空気とによって、凝縮器の熱交換効率を高めることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によると、第2の空調装置により冷却された空気を車室内及び凝縮器の少なくとも一方に送風するので、第2の空調装置により冷却された温度差の大きい空気と、流量の大きい車室外の空気とによって、凝縮器の熱交換効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1の実施の形態の車両1に搭載されたランキンサイクルシステム10を、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態のランキンサイクルシステム10の構成図である。
【0018】
ランキンサイクルシステム10は、媒体が循環する媒体経路11と、車両の冷却水からの熱を用いて媒体を気化させる蒸発器12と、気化された媒体により回転エネルギーを発生させる膨張器13と、気化された媒体を凝縮して液化させる凝縮器14と、液化された媒体を循環させるポンプ15とによって構成される。なお、本実施の形態では、媒体はR134aを用いるが、その他の媒体を用いてもよい。
【0019】
なお、図1では、媒体経路11は、気化された媒体が循環する経路を鎖線とし、液化された媒体が循環する経路を実線として示している。
【0020】
膨張器13は、その回転軸を発電機16と共有している。これにより、膨張器13の回転エネルギーが発電機16に伝わり、発電機16が発電される。
【0021】
本実施の形態のランキンサイクルシステム10は、このように構成することによって、車両1のエンジン排熱から得た熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、この回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。電気エネルギーは図示しない蓄電器に蓄電される。なお、蓄電器は、例えばバッテリやキャパシタ等により構成される。
【0022】
車両1を駆動するエンジン25を中心とするエンジン冷却システム20は、冷却水が循環する冷却水経路21と、熱を大気へと放出するラジエタ22とによって構成される。なお、ラジエタ22にはファン29が備えられている。
【0023】
また、冷却水経路21は、その冷却水の一部が、エンジン25から排気管23の触媒24及び消音器27の間に備えられた排熱回収器26を通じて、ランキンサイクルシステム10の蒸発器12へと送るように構成されている。すなわち、エンジン25が発生する熱及び排気管23に発生する熱を吸収した冷却水が、蒸発器12へと送られるように構成されている。この冷却水の熱により蒸発器12が媒体を熱することによって、媒体が気化される。
【0024】
また、冷却水経路21の一部は、エンジン25の熱を吸収した冷却水をヒータ28へと送るように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態では、エンジン25の熱を吸収した冷却水を、排熱回収器26によって排気管23の熱を吸収させて蒸発器12に送るよう構成したが、この構成でなくてもよい。例えば、エンジン25の熱を吸収した冷却水のみを蒸発器12へと送ってもよい。また、エンジン冷却システム20とは別の冷却水流路を備え、ポンプ等を用いて排熱回収器26の熱のみを蒸発器12へと送るように構成してもよい。
【0026】
ここで、ランキンサイクルシステム10では、凝縮器14が媒体と熱交換を行うことにより気化された媒体を凝縮して、冷媒を液化させる。従来、凝縮器14は、エンジン冷却システム20のラジエタ22と同様に車両前方側に配置され、走行風等によって熱を大気へと放出することにより熱交換を行っていた。しかしながら、外気温度は季節により変動する。また、エンジンルームはエンジンの熱が対流する。そのため、夏季など外気温度が高くなった場合は、凝縮器14の熱交換が充分に行われず、熱交換効率が低下してしまい、ランキンサイクルの効率が低下してしまうという問題があった。
【0027】
そこで本発明の第1の実施の形態では、以下に説明するように凝縮器14を構成した。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施の形態のランキンサイクルシステムを搭載した車両1の構成図である。
【0029】
車両1には、ランキンサイクルシステム10と、エンジン冷却システム20と、冷凍サイクルシステム30とが搭載されている。
【0030】
冷凍サイクルシステム30は、冷媒が循環される循環経路31中に、車両前方側に備えられたコンプレッサ32、コンデンサ33、リキッドタンク34、膨張弁35及びエバポレータ36を備える。これらが車両前方側の空気温度を調節する空調装置30aを構成する。なお、冷媒は一般的にR134aが用いられる。
【0031】
コンプレッサ32は、冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒としてコンデンサ33に送出する。コンデンサ33は、冷媒を凝縮して液化する。リキッドタンク34は、冷媒を気液分離して、液相の冷媒のみを膨張弁35に送出する。膨張弁35は、液相の冷媒を膨張させることにより気化させ、低温低圧の冷媒としてエバポレータ36に送出する。エバポレータ36は、送出された低温の冷媒とエバポレータ36を通過する空気とを熱交換させ、空気を冷却する。ブロアファン37は、車室外の空気又は車室内の空気を空調ダクト38によりエバポレータ36を介して車室内に送る。切換ダンパ39は、車室内の空気をエバポレータ36に送るか、車室外の空気をエバポレータ36に送るかを切り換える。
【0032】
また、空調ダクト38には、ヒータ28が配置され、エンジン25により加熱された冷却水が通過する。
【0033】
一般的に、冷凍サイクルシステム30により構成される空調装置は、車室後方側に、車内の空気を排気するための送風通路を備えている。
【0034】
本実施の形態では、ランキンサイクルシステム10の凝縮器14を車室後方側に配置した。そして、この凝縮器14の周辺に、車室内の空気を凝縮器14に送る送風ダクト40を備えた。
【0035】
送風ダクト40は、車室内又は車室外と連通しており、車室内の空気を凝縮器14に送るか、車室外の空気(例えば走行風)を凝縮器14に送るかを切り換える切換ダンパ41が備えられている。また、凝縮器14にはファン42が備えられている。ファン42は、送風ダクト40及び凝縮器14を通過した空気を、車室外へと排出するように構成されている。
【0036】
このように、本実施の形態では、車両後方側に車室内の空気を排出する送風ダクト40を備え、ランキンサイクルシステム10の凝縮器14に、車室内の空気を送るように構成した。このように構成することによって、季節の変化に対して比較的温度変動が少ない車室内の空気を凝縮器14に送ることができる。また、比較的流量が大きい車室外の走行風も凝縮器14に送ることができる。これによって、凝縮器14の熱交換効率が高まり、ランキンサイクルシステム10の効率が低下してしまうことを防ぐことができる。
【0037】
なお、図2では図示しないが、ランキンサイクルシステム10の蒸発器12、膨張器13、ポンプ15は、車両前方側(例えばエンジンルーム)に配置する。そして、媒体経路11の一部が、車両後方側に配置された凝縮器14へと連通するように構成されている。
【0038】
図3は、本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクト40の具体的な構成の一例である。
【0039】
図3(A)は、車両1の断面図であり、図3(B)及び図3(C)は、送風ダクト40の要部の拡大図である。
【0040】
前述のように、ランキンサイクルシステム10の凝縮器14は、車両後方側に備えられる。そして、送風ダクト40により、車室内の空気、及び/又は、車室外の走行風を送るように構成した。
【0041】
図3(A)に示すように、車両1(例えば、セダンタイプ、ステーションワゴンタイプ等)において、車室の後方側には荷室44が存在する。この荷室44の一部に送風ダクト40を構成し、この送風ダクト40の後方側に凝縮器14を配置した。例えば、荷室44の後方側とリアバンパーフェイシャルとの間の空間に凝縮器14及びファン42配置する。そして、この送風ダクト40には、後部座席の後方側から車室内の空気を凝縮器14に送出するか、車両1の下部から車室外の空気を凝縮器14に送出するかを切り換える切換ダンパ41を備える。
【0042】
図3(B)は、車室内の空気を凝縮器14に送るように切換ダンパ41を切り換えた状態を示す。この状態では、適切に空調された車室内の空気を凝縮器14に送るので、例えば夏季など外気温度が高い場合、冬季など外気温度が低い場合などにも、凝縮器14に対して適切な温度の空気を送ることができ、凝縮器14の熱交換効率が高まる。
【0043】
図3(C)は、車室外の空気を凝縮器に送出するように切換ダンパ41を切り換えた状態を示す。この状態では、車室外の走行風を凝縮器14に送るので、車室内の空気よりも多くの流量の空気を凝縮器14に送ることができ、凝縮器14の熱交換効率が高まる。
【0044】
特に、外気温が凝縮器14を冷却するのに適切な温度である場合には、車室内の空気を凝縮器14に送ることによる冷凍サイクルシステム30の損失によって車両1の燃費が低下することを防ぐこともできる。
【0045】
なお、この図3(B)及び図3(C)に示した例では、切換ダンパ41を、車室内又は車室外のいずれか一方に切り換えた状態を示したが、切換ダンパ41の開度を調節することにより、車室内の空気及び車室外の空気を混合した空気を凝縮器14に送ることができる。例えば、車室内の空気を3割、車室外の空気を7割として混合した空気を凝縮器14に送るように切換ダンパ41の開度を制御することができる。
【0046】
図4は、本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクト40の具体的な構成の他の例である。
【0047】
図4(A)は、車両1の断面図であり、図4(B)及び図4(C)は、送風ダクト40の要部の拡大図である。
【0048】
前述のように、ランキンサイクルシステム10の凝縮器14は、送風ダクト40と共に車両後方側に配置される。そして、この送風ダクト40により、車室内の空気を通風可能に構成した。
【0049】
図4に示す例では、図3に示した例とは異なり、車両後方側の送風ダクト40について、荷室44の前側に凝縮器14及び切換ダンパ41を配置した。
【0050】
このように構成であっても、前述の図3において説明したのと同様の効果が得られる。
【0051】
すなわち、図4(B)に示すように、車室内の空気を凝縮器に送出するように切換ダンパ41を切り換えた状態では、適切に空調された車室内の空気を凝縮器14に送るので、例えば夏季など外気温度が高い場合や冬季など外気温度が低い場合などにも、凝縮器14に対して適切な温度の空気を送ることができ、凝縮器14の熱交換効率が高まる。
【0052】
また、図4(C)に示すように、車室外の空気を凝縮器に送るように切換ダンパ41を切り換えた状態では、車室外の走行風を凝縮器14に送るので、車室内の空気よりも多くの流量の空気を凝縮器14に送ることができ、凝縮器14の熱交換効率が高まる。特に、外気温が凝縮器14を冷却するのに適切な温度である場合には、車室内の空気を凝縮器14に送ることによる冷凍サイクルシステム30の損失によって車両1の燃費が低下することを防ぐこともできる。
【0053】
なお、図3において前述したように、切換ダンパ41の開度を調節することによって、車室内の空気と車室外の空気とを混合した空気を凝縮器14に送ることができる。
【0054】
図5は、本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクト40の具体的な構成の、さらに他の例である。
【0055】
前述の図3及び図4に示す構成例では、ランキンサイクルシステム10の蒸発器12、膨張器13、ポンプ15を、車両前方側のエンジンルームに配置し、凝縮器14のみを車両後方側に配置した。一方、図5に示す構成例では、ランキンサイクルシステム10の蒸発器12、膨張器13及びポンプ15を一つのユニット10aとして、車両後方側であって、凝縮器14の近傍に配置した。
【0056】
車両後方側には、一般的にスペアタイヤを搭載する空間がある。近年、ランフラットタイヤ等の採用によりスペアタイヤは不要となっている。一方、エンジンルーム内にはエンジン25を初めとした多様な補機類のため、ランキンサイクルシステム10を配置する空間が少なくなっている。そこで、スペアタイヤ搭載用の空間に、ランキンサイクルシステム10のユニット10aを配置した。
【0057】
図5に示すように、ランキンサイクルシステム10のユニット10aを、車両後方側に配置した。このように構成することによって、車両内の空間を有効に利用することができる。
【0058】
なお、図5のように構成する場合は、排気管23の車両後方側に排熱回収器26を備え、冷却水経路21の一部を、エンジン25からこの車両後方側に備えられた排熱回収器26へと連通するように構成し、さらに、排熱回収器26から、蒸発器12を経由してエンジン25側に戻るように冷却水経路21を構成することが好適である。このように構成することにより、媒体経路11を車両前方側から延長する必要がなくなるので、媒体経路11を大幅に短縮でき、媒体流路11における熱損失を少なくすることができる。
【0059】
以上のように本発明の第1の実施の形態では、車両1に搭載したランキンサイクルシステム10において、車両後方側に凝縮器14を配置し、この凝縮器14に車室内の空気及び/又は車室外の走行風を送ることによって、凝縮器14の熱交換効率を高めることができ、ランキンサイクルシステム10の効率を高めることができる。
【0060】
また、凝縮器14の熱交換効率を高めることができることから、凝縮器14を小型化することができ、スペース効率を高めることができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態では、前述の第1の実施の形態と異なり、車両後方側に空調装置(第2の空調装置)を備える車両1に本発明を適用した場合の実施形態である。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0062】
図6は、本発明の第2の実施の形態のランキンサイクルシステム10を搭載した車両1の構成図である。
【0063】
前述の第1の実施の形態と同様に、車両1には、ランキンサイクルシステム10と、エンジン冷却システム20と、冷凍サイクルシステム30とが搭載されている。
【0064】
冷凍サイクルシステム30は、前述のように、冷媒が循環される循環経路31中に、車両前方側に配置されたコンプレッサ32、コンデンサ33、リキッドタンク34、膨張弁35及びエバポレータ36を備える。そして、車両前方側の空気温度を調節するため、このエバポレータ36の周辺に備えられたブロアファン37、空調ダクト38、切換ダンパ39及びヒータ28等が、第1の空調装置30aを構成する。
【0065】
ここで、本実施の形態では、車両1に、車両後方側の空調のための後方側空調ダクト50を備える。この後方側空調ダクト50には、前述の空調ダクト38と同様に、エバポレータ51、ブロアファン52、ヒータ55等が備えられている。これらが、車両後方側の空気温度を調節する第2の空調装置30bを構成する。
【0066】
これら第1の空調装置30aと、第2の空調装置30bとは、循環経路31、コンプレッサ32、コンデンサ33、リキッドタンク34、膨張弁35及びエバポレータ36を共有し、共通の冷媒によって、車両前方側の空気温度又は車両後方側の空気温度を調節する。
【0067】
後方側空調ダクト50には、ブロアファン52によって送出された空気を、ヒータ55を経由して車室内に送出するか、ヒータ55を経由せずに車室内に送出するか、を切り換える切換ダンパ53が備えられている。
【0068】
なお、図6において、後方側空調ダクト50の左側が車室内からの空気の吸入側、後方側空調ダクト50の右側が車室内への空気の排出側を示す。
【0069】
後方側空調ダクト50には、ブロアファン52によってエバポレータ51を通過した空気を車室内に送るか、凝縮器14に送るか、を切り換える切換ダンパ54が備えられている。
【0070】
また、後方側空調ダクトの凝縮器14付近には、車室内の空気を凝縮器14に送るか、車室外の空気を凝縮器14に送るか、を切り換える切換ダンパ41が備えられている。
【0071】
このように構成することによって、後方側空調ダクト50に備えられるエバポレータ51によって冷却された空気を凝縮器14に直接送ることができるので、凝縮器14の熱交換効率が高まり、ランキンサイクルシステム10の効率を高めることできる。また、冷却された空気のみならず、車室外の走行風を凝縮器14に送ることができるので、冷凍サイクルシステム30の効率を下げることなく、凝縮器14を適切に冷却することができ、ランキンサイクルシステム10の効率を高めると共に、車両1の燃費を向上させることができる。
【0072】
図7は、本発明の第2の実施の形態の車両1における送風ダクト40の具体的な構成の一例である。
【0073】
図7に示すように、第2の空調装置は、車両後方側、より具体的には、後部座席と荷室44との間に配置されている。そして、ランキンサイクルシステム10の凝縮器14は、第2の空調装置のエバポレータ51によって冷却された空気、及び/又は、車室外の走行風が送られるように構成されている。
【0074】
以上のように、本発明の第2の実施の形態では、前述の第1の実施の形態と同様に、車両1に搭載したランキンサイクルシステム10において、車両後方側に凝縮器14を配置した。そして、凝縮器14に、後方側空調ダクト50に備えられたエバポレータ51を通過した空気及び/又は車室外の走行風を送ることによって、凝縮器14の熱交換効率を高めることができ、ランキンサイクルシステム10の効率を高めることができる。
【0075】
また、凝縮器14の熱交換効率を高めることができることから、凝縮器14を小型化することができ、スペース効率を高めることができる。
【0076】
なお、第2の実施の形態では、図6に示すように、後部座席と荷室44との間に凝縮器14を配置したが、このような構成に限られない。すなわち、前述の第1の実施の形態の図3に示したように、車両後端側に凝縮器14を配置してもよい。また、図5に示したように、ランキンサイクルシステム10の蒸発器12、膨張器13及びポンプ15を一つのユニットとして、送風ダクト40及び凝縮器14と共に車両後方側に配置してもよい。
【0077】
また、第2の実施の形態では、エバポレータ51、ブロアファン52、ヒータ55により構成される第2の空調装置は、車両後方側の空気温度を調節する目的で備えられるが、これに限定されることはない。例えば、ハイブリッド車両においては、一般的に車両後方側に大型のバッテリが配置されるが、第2の空調装置によってこのバッテリを冷却するように構成してもよい。この場合にも、この第2の空調装置により冷却された空気によって凝縮器14を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態のランキンサイクルシステムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のランキンサイクルシステムを搭載した車両の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクトの具体的な構成の一例である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクトの具体的な構成の他の例である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の車両1における送風ダクトの具体的な構成の、さらに他の例である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のランキンサイクルシステムを搭載した車両の構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の車両1における送風ダクトの具体的な構成の一例である。
【符号の説明】
【0079】
1 車両
10 ランキンサイクルシステム
11 媒体経路
12 蒸発器
13 膨張器
14 凝縮器
15 ポンプ
20 エンジン冷却システム
26 排熱回収器
30 冷凍サイクルシステム
36 エバポレータ
40 送風ダクト
50 後方側空調ダクト
51 エバポレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されるランキンサイクルシステム(10)において、
媒体が循環する媒体経路(11)と、前記車両(1)に搭載されたエンジンの排熱によって媒体を気化させる蒸発器(12)と、前記気化された媒体により回転エネルギーを発生させる膨張器(13)と、前記気化された媒体を凝縮して液化させる凝縮器(14)と、前記液化された媒体を循環させるポンプ(15)と、を備え、
前記凝縮器(14)は、前記車両(1)の車室の後方側に配置され、車室内の空気を用いて熱交換を行うことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
前記凝縮器(14)は、前記車両(1)の車室の後方側に配置された、車室内の空気及び車室外の走行風の少なくとも一方を前記凝縮器(14)へと送風するように構成された送風ダクト(40)に配置されることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
車室の後方側、かつ、前記凝縮器(14)の近傍に、前記蒸発器(12)、前記膨張器(13)、前記凝縮器(14)及び前記ポンプ(15)が、一つのユニットとして配置されることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
前記車両(1)は、車室内の空気温度を調節する空調装置を備え、前記空調装置は、車室後方側の空気温度を冷却するエバポレータ(51)を備え、
前記凝縮器(14)は、前記車両(1)の車室の後方側に配置された、前記エバポレータ(51)を通過した空気を車室内及び前記凝縮器(14)の少なくとも一方に送風するように構成された送風ダクト(40)に配置されることを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のランキンサイクルシステムにおいて、
前記車両(1)は、
車室内の空気及び車室外の空気の少なくとも一方を導入し、前記導入された空気を加熱又は冷却することにより車両前方側の車室内空気温度を調節する第1の空調装置と、
車室内の空気及び車室外の空気の少なくとも一方を導入し、前記導入された空気を加熱又は冷却することにより車両後方側の車室内空気温度を調節する第2の空調装置と、
を備え、
前記凝縮器(14)は、前記車両(1)の車室の後方側に配置された、前記第2の空調装置により冷却された空気を車室内及び前記凝縮器(14)の少なくとも一方に送風する送風ダクト(40)に配置されることを特徴とするランキンサイクルシステム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−85060(P2009−85060A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254461(P2007−254461)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】