説明

ランドを有するプリント配線板

【課題】実装に必要な面積の拡大やパターン配線の自由度低下を伴わずブリッジを抑制できるランドを有するプリント配線板を提供すること。
【解決手段】プリント配線板2に、電子部品のリードが挿入される複数のスルーホール12と該スルーホール12の周囲に導電性の四角形ランド10が形成、四角形ランド10は辺の数が4本であり(ランドの辺14a,14b,14c,14d)、かつ、対向する辺が平行な多角形であり、隣り合う四角形ランド10,10の辺が平行となるようにプリント基板に配置されている。そして、四角形ランド10の4つの全ての隅部に円弧状凹部16a,16b,16c,16dが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだへの浸漬により電子部品をはんだ付けする際、近接するランド間に発生するブリッジの抑制と、ランド間の高密度パターン配線を両立できるランド形状を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品をプリント配線板に実装する方法の一つとして、電子部品のリードをプリント配線板に設けたスルーホールに挿入し、プリント配線板を溶融したはんだに浸漬させ、プリント配線板と電子部品のリード間をはんだにより電気的に接続するディップはんだ付け方法がある。
一般的にディップはんだ付けでは、近接する電子部品のリードにはんだが跨るブリッジが発生しやすく、このブリッジの修正に手間とコストがかかる問題がある。
【0003】
ブリッジを抑制する従来技術として、例えば特許文献1に開示されるように、スルーホール72を中心に有する標準的なランド70とスルーホール82を端部に有する長寸法のランド80を互い違いに配置し、標準的なランド70からはんだを符号78の矢印の方向に長寸法のランド80に引き込んでブリッジの発生を抑制する方法がある(図8)。
また、他の従来技術として、例えば、特許文献2に開示されるように、ランド90の形状を矩形形状(菱形など)とし、ランド90の最長の対角線とフローはんだ付けの搬送方向(符号95の矢印方向)が一致するように配置してブリッジを抑制する方法がある(図9)。はんだは、ランド90に沿って符号93の矢印93に流れるため、ブリッジが切れやすくなる。なお、フローはんだ付けとは、ディップはんだ付けの一手法であり、溶融したはんだ槽にはんだ噴流を形成し、かかる噴流にプリント配線板が接するように搬送することではんだ付けする方法である。
【0004】
また、他の従来技術として、特許文献3に開示されるように、ソルダーレジストの開口やランド形状を突起状(図10)や、特許文献4に開示されるように、先細り状+切欠き状(図11(a))とし、はんだの切れを良くすることで、ピン間にブリッジが発生することを防ぐ方法がある。
図10では近接するランド60に突起部66を設け、図11(a)では先細り106a,c,切り欠き106b,dを設ける。図10(a)に示されるようにランド60,60に突起部66,66を設ける。図10(b)に示されるように、スルーホール62には電子部品の電極ピン65が挿入される。そして、プリント配線板2をはんだ槽に浸漬することにより、ランド60にはんだ付けされる。突起部66が設けられることによって、はんだ63とランド60のなす角度は小さくなる。突起部66,66間の導体間隙はせまくなるものの、これによって、はんだが切れやすくなり、ブリッジが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−68298号公報
【特許文献2】登録実用新案第3003062号公報
【特許文献3】特開平5−304353号公報
【特許文献4】特開平7−254774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術で提示した技術はブリッジ発生を抑制しようとする技術であるが、いずれも、以下に記載する問題があった。
【0007】
図8に示される方法では、長寸法のランドが必要となり、実装に必要な面積が増えるため、実装の高密度化を図る際に不利であった。
図9に示される方法では、搬送方向と電極ピンの配列は常に直角をなすため、搬送方向に対し部品配置の方向が固定される問題点があった。
【0008】
図10に示される方法では、ランド間に突起を設けるため、近接するランドの導体間隙が狭くなり、ランド間へのパターン配線の自由度が低下する問題がある。
図11に示す方法では、ソルダーレジスト開口の対角線と配列方向が一致している。四角形において端部は最も中心から離れているため、近接するソルダーレジスト開口間隙は狭くなる。また、図11(b)に示されるように、導体間隙119では、ドリル加工精度とソルダーレジスト精度、ソルダーレジストの切り欠き分およびオーバーレジスト分で規定されるため、狭くなり、ランド間のパターン配線の自由度が低下するという問題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、実装に必要な面積の拡大やパターン配線の自由度低下を伴わずブリッジを抑制できるランドを有するプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1に係る発明は、電極が挿入される複数のスルーホールと該スルーホール周囲に金属箔ランドを有するプリント配線板において、前記金属箔ランドは、辺の数が偶数で、かつ、対向する辺が平行な多角形で、全ての隅部に円弧状の凹部が設けられた形状であり、隣り合う金属箔ランドの辺が平行となるように配置されることを特徴とするランドを有するプリント配線板である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、追加の設備や工程を必要とせず、実装に必要な面積の拡大やパターン配線の自由度低下を伴わずブリッジを抑制できるランドを有するプリント配線板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】四角形ランドの場合の本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】四角形ランドの場合の本発明の実施形態であるプリント基板の要部の断面図である。
【図3】円弧状凹部を説明する図である。
【図4】本発明の原理を説明する図である。
【図5】はんだがスルーホールの中心方向に引き寄せられることを説明する図である。
【図6】六角形ランドの場合の本発明の実施形態を説明する図である。
【図7】八角形ランドの場合の本発明の実施形態を説明する図である。
【図8】標準的なランドと長寸法のランドを互いに配置した従来技術を説明する図である。
【図9】矩形ランドの最長の対角線とフローの搬送方向が一致するように配置した従来技術を説明する図である。
【図10】近接するランド間に突起部を設けた従来技術を説明する図である。
【図11】半円状の切り欠きによりはんだを先細り部に引き込む従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、四角形ランドの場合の本発明の実施形態を説明する図である。図2は、四角形ランドの場合の本発明の実施形態であるプリント基板の要部の断面図である。
プリント配線板2は、合成樹脂などの積層板などにより形成された絶縁層17、該絶縁層17に上,下面を貫通するスルーホール12の周りに形成された金属箔からなる良導性の四角形ランド10を有する。プリント配線板2の上,下面の四角形ランド10は、スルーホール12の壁面に設けられた良導性の導体により電気的に接続されている。符号18はソルダーレジストを表す。なお、図2では四角形ランド10がプリント配線板2の上,下面に設けられているが、はんだ付けの際ははんだ噴流に接する面のみ設けるようにしてもよい。
【0014】
スルーホール12は、例えば、図2に示されるように、電子部品(図示せず)のリードを挿入するために、電子部品のリードの配列方向にプリント配線板2に設けられた複数個の貫通孔である。そして、図1に示されるように、各スルーホール12に設けられた四角形ランド10,10のランドの辺14a,14aが平行となるようにプリント配線板2に配置される。このランドの辺14a,14aの間に、導体配線が配置される場合もある。また、四角形ランド10の4つの角部であるランド隅部には、それぞれ円弧状凹部16a,16b,16c,16dが設けられている。円弧状凹部16a,16b,16c,16dの曲率半径Rは、使用されるはんだの材質や四角形ランド10の大きさに応じて適宜な値を選択することができる。図3に示されるように、曲率半径Rの中心は、ランドの辺を延長した交点Oを円の中心としている。
【0015】
四角形ランド10の全てのランド隅部に円弧状凹部16a,16b,16c,16dを設けることにより、スルーホール12の中心方向にはんだを引き寄せることができる。これによって、近接する四角形ランド10,10間にブリッジが発生することを防止できる。プリント配線板2には通常、複数個の四角形ランド10が2次元状に高密度に配置されていることから、図1に示されるように、はんだをスルーホール12の中心方向に等方的に引き寄せるために、四角形ランド10の全てのランド隅部に円弧状凹部16a,16b,16c、16dを設ける必要がある。
【0016】
図1に示されるように、四角形ランド10,10のランドの辺14a,14aを平行にすることで、導体である四角形ランド10,10の間隔を広くすることができる。また、はんだブリッジの生成が防止されることから、図2の符号19に示されるように、四角形ランド10,10の間隙の大きさが、プリント配線板2にスルーホール12を加工する際に使用する加工用ドリル(図示せず)の加工精度と四角形ランド10の大きさの精度のみで規定されるため、四角形ランド10,10間を広くとることができる。
【0017】
次に、スルーホール12の中心方向にはんだが引き寄せられる原理について、図4を用いて説明する。液相と気相が図4に示されるように、ある曲率半径Rをもって接しているとき、表面張力によって気相と液相で圧力差ΔPが生じる。この圧力差ΔPはラプラスの式より数1式として表すことができる。
【0018】
【数1】

【0019】
図5は、はんだがスルーホール12の中心方向に引き寄せられることを説明する図である。ここでは、図1,図2を用いて説明した四角形ランドを例として説明する。図5(a)は四角形ランド10の円弧状凹部16aの近傍を示しており、図5(b)は(a)の破線ABにおける断面を説明する図である。四角形ランド10の隅部に設けられた円弧状凹部の曲率半径Rに応じて生じる圧力差が、はんだをスルーホール中心(ランド中心)方向に引き込む力として作用する。よって、ランドの隅部(端部)に円弧状の凹部を設けると、その曲率半径Rに応じてはんだと空気の間に圧力差が生じる。この圧力差ΔPはフィレット断面方向でも働き、端部のフィレット4の形状をランド中心方向に凹とする力となって作用し、はんだが切れやすくなる。
【0020】
以上、四角形ランド10を備えたプリント配線板2について説明した。本発明において、ランドの形状は四角形ランド10に限定されるものではなく、図6に示される六角形ランド20や図7に示される八角形ランド30を採用することができる。
【0021】
図6の六角形ランド20は、スルーホール22の周りに形成され、かつ、ランドの辺24a,24b,24c,24d,24e,24f、円弧状凹部26a,26b,26c,26d,26e,26fで外周が形成されている。
図7の八角形ランド30は、スルーホール32の周りに形成され、かつ、ランドの辺34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34h、円弧状凹部36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36hで外周が形成されている。
【0022】
図1,図6,図7に示されるように、本発明においてはランドの辺の数は偶数である。これによって、本発明の実施形態であるプリント配線板2は、電極が挿入される複数のスルーホール12と該スルーホール12の周囲に金属箔ランドを有し、前記金属箔ランドは、辺の数が偶数で、かつ、対向する辺が平行な多角形で、全ての隅部に円弧状の凹部が設けられた形状であり、隣り合う金属箔ランドの辺が平行となるように配置される。
【0023】
本発明は、上述のように、全てのランド隅部に円弧状の凹部を設けることで、スルーホールの中心方向にはんだを引き寄せて、近接するランド間にブリッジが発生することを抑制できる。また、ランドは拡大しないためランド間のパターン配線の自由度が低下せず、実装の高密度化において不利となることもない。
【符号の説明】
【0024】
2 プリント配線板
4 はんだフィレット

10 四角形ランド
12 スルーホール
14a,14b,14c,14d ランドの辺
16a,16b,16c,16d 円弧状凹部
17 絶縁層
18 ソルダーレジスト
19 導体間隙

20 六角形ランド
22 スルーホール
24a,24b,24c,24d,24e,24f ランドの辺
26a,26b,26c,26d,26e,26f 円弧状凹部

30 ハ角形ランド
32 スルーホール
34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34h ランドの辺
36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36h 円弧状凹部


60 ランド
62 スルーホール
63 はんだ
64 はんだとランドのなす角度
65 電極ピン
66 突起部
67 導体間隙

70 標準的なランド
72 スルーホール

80 長寸法のランド
82 スルーホール

90 ランド
92 スルーホール
93 はんだ付け時のはんだの流れ
94 搬送方向

100 ランド
102 スルーホール
104a,104b,104c,104d ランドの辺
106a,106c 先細り
106b,106d 半円状の切り欠き
117 絶縁層
118 ソルダーレジスト
119 導体間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が挿入される複数のスルーホールと該スルーホール周囲に金属箔ランドを有するプリント配線板において、
前記金属箔ランドは、辺の数が偶数で、かつ、対向する辺が平行な多角形で、全ての隅部に円弧状の凹部が設けられた形状であり、
隣り合う金属箔ランドの辺が平行となるように配置されることを特徴とするランドを有するプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−8864(P2013−8864A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140989(P2011−140989)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【特許番号】特許第5059959号(P5059959)
【特許公報発行日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】