説明

リクライニング装置

【課題】操作レバーを付勢するバネの省スペース化を可能にしたリクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング装置において、シートバックフレームの傾動にあたって、渦巻き状のリターンばね30が利用されている。操作後の操作レバー6の復帰には、渦巻き状のバネ40が利用される。このバネ40の外側端部40aは、ベースプレート12に立設された第2の爪部12cに引っ掛けるようにして固定され、バネ40の内側端部40bは、回動軸に固定されたヒンジピン16の遊端部のスリット16aに引っ掛けるようにして連結されている。従って、バネ40により、操作レバー6の復帰時に常に付勢力を与え続けることができる。そして、省スペース化を図るために、リターンばね30の内側のスペースS内にバネ40が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーによりロック機構を解除して、シートクッションに対して回動軸を中心にシートバックを傾動自在にするリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平8−266360号公報がある。この公報に記載された両側ロック式のリクライニング装置は、シートクッションサイド(シートクッションのサイドフレーム)に固定されるベースプレートと、シートバックサイド(シートバックのサイドフレーム)に固定されるアームプレートとを具備し、ベースプレートとアームプレートとの間にロック機構を有している。更に、シートバックに付勢力を付与する渦巻きばねからなるリターンばねの一端は、アームプレートに固定され、リターンばねの他端は、コネクティングロッドの端部に連結されたヒンジピンに固定されている。また、ロック機構のロック解除を行う操作レバーは、引張りコイルばねからなるバネにより付勢され、このバネの一端は、操作レバーに固定され、他端は、アームプレートに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−266360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のリクライニング装置にあっては、バネは、引張りコイルばねからなっているので、持ち上げるようにしてロックを解除させる操作レバーにあっては、操作レバーの下方にしか配置させることができず、従来にあっては、前記バネのための設置スペースを確保する必要があった。
【0005】
本発明は、操作レバーを付勢するバネの省スペース化と操作レバーの設計、配置の自由度の拡大を可能にしたリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、操作レバーによりロック機構を解除して、シートクッションに対して回動軸を中心にシートバックを傾動自在にするリクライニング装置において、
外側端部が前記シートバックのサイドフレーム側に固定されて、内側端部が前記シートクッションのサイドフレーム側に固定された渦巻き状のリターンばねと、
外側端部が前記リターンばねの内側で前記シートクッションの前記サイドフレーム側に固定され、前記内側端部が前記回動軸の端部側に連結されて操作レバーをロック方向に付勢する渦巻き状のバネと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
このリクライニング装置においては、シートバックのリクライニング角度の調整を可能にするロック機構を備え、操作レバーによりロック機構のロックを解除することで、シートクッションに対して回動軸を中心にシートクッションを自由に傾動させることができる。この傾動にあたっては、渦巻き状のリターンばねの付勢力が利用され、このリターンばねの外側端部は、シートバックのサイドフレーム側に固定され、リターンばねの内側端部は、シートクッションのサイドフレーム側に固定されている。従って、リターンばねにより、ロック解除後のシートバックに前方向への付勢力を常に与え続けることができる。また、操作後の操作レバーの復帰には、渦巻き状のバネの付勢力が利用される。このバネの外側端部は、リターンばねの内側でシートクッションのサイドフレーム側に固定され、バネの内側端部は、回動軸の端部側に連結されている。従って、バネにより、操作レバーに常に復帰方向の付勢力を与え続けることができる。しかも、リターンばね及びバネに渦巻きばねを利用し、リターンばねの内側に、バネを配置させているので、リターンばねの内側スペースを有効に活用することができる。従って、バネの省スペース化が可能になり、しかも、一カ所にリターンばね及びバネをまとめることができるので、ばねのレイアウトも良好になり、リターンばね及びバネの組み付け作業性も良くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作レバーを付勢するバネの省スペース化を可能にすると共に操作レバーの設計、配置の自由度を拡大し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るリクライニング装置を適用したシートを示す側面図である。
【図2】本発明に係るリクライニング装置を示す断面図である。
【図3】本発明に係るリクライニング装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリクライニング装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、シート1は、シートクッションに対して傾動自在なシートバックを具備し、シートクッションは、シートクッションフレーム2を骨格として形成され、シートバックは、シートバックフレーム3を骨格として形成されている。
【0012】
このシートバックフレーム3の下端は、シートクッションフレーム2の後端で左右に架け渡された回動軸4に対してフリーに枢着され、操作レバー6を引き上げることによって、シートバックフレーム3をリクライニングさせることができる。
【0013】
図2に示すように、シートバックフレーム3のリクライニングを可能にする両側ロック式のリクライニング装置10は、たとえば、シートクッションフレーム2のサイドフレーム2aに固定されるベースプレート12と、シートバックフレーム3のサイドフレーム3aに固定されるアームプレート14とを具備し、アームプレート14は、ヒンジピン16を中心にして揺動可能であり、ベースプレート12に摺接されている。
【0014】
なお、ヒンジピン16は、挿通孔12aを介してベースプレート12に挿入され、溶接により回動軸4の端部に固定されている。そして、ヒンジピン16は、アームプレート14の内面側に配置されたカラー22により支持されている。
【0015】
また、操作レバー6は、ヒンジピン16に溶接により固定され、操作レバー6を揺動させることにより、回動軸4を同期して回動させることができ、これによって、左右一対のロック機構Rを同期して動作させることができる。
【0016】
次に、ロック機構Rについて説明する。
【0017】
ロック機構Rは、アームプレート14とベースプレート12との間に配置されると共に、ヒンジピン16が貫通するカムプレート18及びロックギアプレート20と、アームプレート14の内壁面に形成されると共に、カムプレート18の回動により上下方向に移動可能なロックギアプレート20に形成された外歯20cに噛合するアームプレート14の内歯14aと、により構成されている。
【0018】
操作レバー6には、ヒンジピン16に対し平行に突出する連結片6aが設けられている。この連結片6aは、ベースプレート12に形成された円弧状のスリット12dを貫通すると共に、カムプレート18に先端が固定されているので、カムプレート18は、ベースプレート12に邪魔されることなく、操作レバー6の操作に追従して揺動する。
【0019】
さらに、カムプレート18には、隣接するロックギアプレート20を上下動させるためのカムピン18aが突出し、このカムピン18aは、ロックギアプレート20に形成されたカム溝20a内に挿入されている。従って、カムプレート18のカムピン18aがヒンジピン16を中心にして回動すると、カムピン18aがカム溝20a内を滑りながら、ロックギアプレート20を上方に移動させることができる。
【0020】
ロックギアプレート20には、ヒンジピン16が貫通する長穴20bが形成され、この長穴20bは、上下方向に延在している。さらに、ロックギアプレート20の下端には、アームプレート14に形成された内歯14aに噛合する外歯20cが形成されている。
【0021】
従って、カムピン18aによりロックギアプレート20が上昇すると、内歯14aから外歯20cが外れて、アームプレート14のロックが解除される。そして、カムピン18aによりロックギアプレート20が下降すると、内歯14aに外歯20cが噛合して、アームプレート14がロックされる。
【0022】
そして、アームプレート14に形成された内歯14aは、回動軸4の回動軸線を中心とした円弧状に形成されている。従って、ロック解除状態において、アームプレート14がベースプレート12に対してフリーになり、ロック時にあっては、円弧状の内歯14aの任意の位置で、ロックギアプレート20の外歯20cが噛合して、アームプレート14が固定されているシートバックフレーム3を任意のリクライニング角度で静止させることができる。
【0023】
図3に示すように、シートバックフレーム3の傾動にあたって、渦巻き状のリターンばね30が利用されている。このリターンばね30は、ベースプレート12及び操作レバー6に沿って配置されている。
【0024】
さらに、リターンばね30の外側端部30aは、アームプレート14に溶接により固定されたブラケット31の爪部31aに引っ掛けるようにして固定されている。また、リターンばね30の内側端部30bは、ベースプレート12に立設された第1の爪部12bに引っ掛けるようにして固定されている。従って、リターンばね30により、ロック解除後のシートバックに常に前傾方向の付勢力を与え続けることができる。
【0025】
また、操作後の操作レバー6の復帰には、渦巻き状のバネ40が利用される。このバネ40の外側端部40aは、ベースプレート12に立設された第2の爪部12cに引っ掛けるようにして固定され、バネ40の内側端部40bは、回動軸4に固定されたヒンジピン16の遊端部のスリット16aに引っ掛けるようにして連結されている。従って、バネ40により、操作レバー6の復帰時に常に付勢力を与え続けることができる。
【0026】
しかも、リターンばね30の内側の円形のスペースS内に第1及び第2の爪部12b,12cを並設させ、バネ40を円形のスペースS内に配設させているので、リターンばね30の内側の円形のスペースSの有効活用が図られている。従って、バネ40の省スペース化が可能になり、しかも、一カ所にリターンばね及びバネ30,40をまとめることができるので、ばねのレイアウトも良好になり、リターンばね及びバネ30,40の組み付け作業性も良くなる。
【0027】
このように構成されたリクライニング装置10にあっては、操作レバー6を持ち上げるように操作することで、ロック機構Rのロックギアプレート20が上昇して、シートバックのロックが解除され、回動軸4を中心にしてシートバックのリクライニング角度を任意の角度に調整することができる。このとき、リターンばね40の付勢力に抗して、乗員によってシートバックを後傾させることができる。
【0028】
また、操作レバー6から手を離すことで、ロック機構Rのロックギアプレート20が降下して、シートバックがロック状態になる。このとき、バネ40の付勢力により、操作レバー6は、元の位置に戻される。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0030】
例えば、ベースプレート12を採用しない場合、第1及び第2の爪部12b,12cは、シートクッションフレーム2のサイドフレーム2aに直接形成されていてもよい。
【0031】
また、アームプレート14を採用しない場合、ブラケット3bは、シートバックフレーム3のサイドフレーム3aに直接固定され、内歯14aが、シートバックフレーム3のサイドフレーム3aに直接形成されていてもよい。
さらに、リクライニング装置のロック機構として、予めユニット化された形態の、いわゆるラウンドリクライナをシートクッションフレームとシートバックフレームとの間に介在させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…シート、2…シートクッションフレーム、2a…シートクッションフレームのサイドフレーム、3…シートバックフレーム、3a…シートバックフレームのサイドフレーム、4…回動軸、10…リクライニング装置、30…リターンばね、30a…外側端部、30b…内側端部、40…バネ、40a…外側端部、40b…内側端部、R…ロック機構、S…スペース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーによりロック機構を解除して、シートクッションに対して回動軸を中心にシートバックを傾動自在にするリクライニング装置において、
外側端部が前記シートバックのサイドフレーム側に固定されて、内側端部が前記シートクッションのサイドフレーム側に固定された渦巻き状のリターンばねと、
外側端部が前記リターンばねの内側で前記シートクッションの前記サイドフレーム側に固定され、前記内側端部が前記回動軸の端部側に連結され前記操作レバーをロック方向に付勢する渦巻き状のバネと、を備えていることを特徴とするリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126246(P2012−126246A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279134(P2010−279134)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】