説明

リサイクル材料の表面処理方法

【課題】装飾用塗膜や異種材料を含むリサイクル材料に対して、所定の表面処理を施すことによって、リペレット化が容易になるばかりか、プレス装置等を用いて、容易かつ精度良く成形処理できる表面処理方法を提供する。
【解決手段】シリコン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物と、空気と、炭化水素ガスと、を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けることによって、リサイクル材料の表面を改質する方法において、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を23以上の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル材料の表面処理方法に関し、特に、装飾用塗膜や異種材料を含むリサイクル材料の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EPDM樹脂を代表とする熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム的性質を有し、所定以上の温度になると、熱可塑性樹脂と同様に軟化するため、射出装置等を用いた成型に使用可能である。
また、ポリエチレン樹脂を代表とするオレフィン樹脂は、比較的安価であって、環境に優しく、かつ、誘電率が低いことからから、リサイクル材料の被覆材として、多用されている。
しかしながら、このような熱可塑性エラストマーやオレフィン樹脂を被覆材としたリサイクル材料は、表面が難接着性であって、その上に、熱硬化性樹脂塗料や紫外線硬化性塗料からなる塗膜を形成した場合や、文字や記号等も印刷した場合に、剥がれやすいという問題が見られた。
また、従来、装飾用塗膜等を備えた成形品をリサイクルする場合、これらの装飾用塗膜等を、薬品等を用いて、予め除去する必要があり、また、金属材料等の異種材料を含む樹脂成形品については、材料ごとに、分別処理する必要があった。
【0003】
そこで、ポリマー基材の表面を改質するための火炎処理方法が開示されている。より具体的には、沸点が101℃のヘキサメチルジシロキサンを含む燃料および酸化剤混合物によって助燃される火炎に対して、ポリマー基材を曝露する火炎処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、出願人は、従来のコロナ処理、プライマー処理、火炎処理等に代替する、固体物質に対する二段階の表面処理方法を提案している(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、主として金属やガラス製品の固体基体の表面に対し、少なくとも1回の酸化炎処理で該表面を変性する工程と、少なくとも1回のケイ酸化炎処理で該表面を変性する工程と、を含む固体基体表面の変性方法を提案している。かかる固体基体表面の変性方法によれば、固体基体の表面を確実に変性処理することができ、印刷用インキや紫外線硬化型塗料等を強固に接着できるという効果を得ることができる。
【0005】
また、出願人は、二段階の表面処理方法を改良した、固体物質に対する一段階の表面処理方法も提案している(例えば、特許文献3参照)。
すなわち、沸点が10℃〜100℃である改質剤化合物を含む燃料ガスを貯蔵するための貯蔵タンク部と、当該燃料ガスを噴射部に移送するための移送部と、当該燃料ガスの火炎を吹き付けるための噴射部と、を含む表面改質装置を準備し、燃料ガスを燃やして得られるケイ酸化炎を、固体物質の表面に対して、全面的または部分的に吹き付け処理することによって、当該処理部の濡れ性を大幅に改善する表面処理方法である。
【0006】
さらに、出願人は、引火点が0〜100℃の範囲であって、沸点が105〜250℃の範囲であるケイ素含有化合物を含む燃料ガスからなるケイ酸化炎を、固体物質の表面に対して、全面的または部分的に吹き付け処理し、当該処理部を活性化させ、濡れ性を改善する表面処理方法についても提案している(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特表2001−500552(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−53982(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−238710(特許請求の範囲)
【特許文献4】WO2004−098792(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたポリマー基材の表面改質方法は、シラン化合物として、沸点が高いヘキサメチルジシロキサン(沸点:101℃)を使用しておらず、また、空気/炭化水素ガスの混合モル比を何ら考慮していないため、このようなシラン化合物を多量に空気等と混合する場合に、不均一に燃焼しやすくなって、改質効果が安定して得られないという問題が見られた。また、空気/炭化水素ガスの混合モル比を何ら考慮していないため、かかるヘキサメチルジシロキサンによる改質効果は、比較的短時間で、低下するという問題も見られた。
【0008】
また、特許文献2に開示された表面改質方法は、シラン化合物として、沸点が高いテトラメトキシシラン(沸点:122℃)等のアルコキシシラン化合物を単独使用していたため、環境条件、例えば、冬場には、このようなアルコキシシラン化合物を多量に空気等と混合する場合に、不均一に燃焼する現象が見られた。また、ケイ酸化炎処理前に、別途酸化炎処理工程を含むため、固体基体表面に対して、より優れた変性効果が得られるものの、その分、表面処理時間が長くかかるという問題も見られた。
【0009】
さらに、特許文献3〜4に開示された表面処理方法であっても、リサイクル材料、特に、異種材料を含むリサイクル材料に対して、所定の表面処理を行うことにより、短時間かつ精度良く一体成形可能になることまでは見出されてなかった。
その上、特許文献3〜4に開示された表面処理方法であっても、空気/炭化水素ガスの混合モル比を何ら考慮していないことから、ケイ素含有化合物の沸点の相違や、周囲の環境条件(温度、湿度)等によっては、固体物質における濡れ性の改善が不十分であって、固体物質の表面に対して、強固な密着性を有する塗膜を形成することが困難な場合も見られた。
【0010】
そこで、本発明の発明者は、ケイ酸化炎等を用いたリサイクル材料の表面改質につき、さらなる研究を行ったところ、所定の改質剤化合物と、空気と、炭化水素ガスと、を含む燃料ガスにおいて、空気/炭化水素ガスの混合モル比を所定範囲の値とするとともに、装飾用塗膜や異種材料を含む成形品等に対して表面処理することによって、リペレット化が容易になるばかりか、プレス装置や射出成形装置、あるいは押し出し成型装置等を用いて、容易かつ精度良く再び成形処理できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、リサイクルが容易かつ短時間となるリサイクル材料の表面改質方法、特に、装飾用塗膜や異種材料を含むリサイクル材料の効率的な表面改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、シリコン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物と、空気と、炭化水素ガスと、を含む燃料ガスからなる火炎を、リサイクル材料の表面に対して吹き付けることによって、リサイクル材料の表面を改質する方法において、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を23以上の値とした表面改質方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、このような特定の燃料ガスを用いて、装飾用塗膜や異種材料を含むリサイクル材料に対して表面処理することによって、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等(シリカ粒子層、チタニア粒子層、アルミナ粒子層を含む。以下、同様である。)を、強固かつ均一に積層することができる。したがって、リサイクル材料のリペレット化が容易になるばかりか、プレス装置等を用いて、容易かつ精度良く、一体成形することができる。
【0012】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、炭化水素ガスが、プロパンガスまたはLPG(プロパンガス単独以外の液化石油ガス)であることが好ましい。
このような種類の炭化水素ガスであれば、安価である一方、所定温度で燃焼することができる。したがって、ケイ素含有化合物等を安定的に熱分解させて、いずれのリサイクル材料に対しても、所定の表面処理を実施することができる。
【0013】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、改質剤化合物が、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも一つのケイ素含有化合物やチタン含有化合物、あるいはアルミニウム含有化合物であることが好ましい。
このような種類のケイ素含有化合物等であれば、自身のもつ蒸気圧を利用して、安定的に蒸発させることにより、燃料ガス中の濃度制御が容易になるばかりか、安定的に熱分解するため、いずれのリサイクル材料に対しても、所定の表面処理として、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を容易に形成することができる。
【0014】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、改質剤化合物の沸点(760mmHg)を20〜250℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このような沸点を有するケイ素含有化合物等であれば、気化熱のみならず、ベーパライザー等を利用して、安定的に蒸発させることにより、燃料ガス中の濃度制御が容易になり、配管中における温度変化や濃度変化に基づく、結露現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、改質剤化合物の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10-10〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
このような改質剤化合物の含有量であれば、気化熱のみならず、ベーパライザー等を利用して、安定的に蒸発させたり、流量制御したりすることにより、配管中における温度変化や濃度変化に基づく、結露現象の発生を効果的に抑制することができる。また、このような改質剤化合物の含有量であれば、安定的に熱分解するため、リサイクル材料の表面に対して、所定の表面処理を効果的に実施することができる。
【0016】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、リサイクル材料が、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、および熱可塑性エラストマーのいずれかであることが好ましい。
このような種類のリサイクル材料であれば、汎用性が高く、安価であるばかりか、容易に表面改質されて、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を形成することができる。
【0017】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、リサイクル材料が、熱硬化性塗料、紫外線硬化性塗料、または熱可塑性塗料からなる塗膜を含むものであることが好ましい。
このように実施することによって、リサイクル工程を著しく短縮化できるとともに、機能性や有用性を向上させた複合的なリサイクル材料を効率的に提供することができる。
【0018】
また、本発明の表面改質方法を実施するにあたり、リサイクル材料が、金属材料またはセラミック材料を含むものであることが好ましい。
このように実施することによって、リサイクル工程を著しく短縮化できるとともに、機能性(導電性)や機械的特性等を向上させた複合的なリサイクル材料を効率的に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態は、シリコン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物と、空気と、炭化水素ガスと、を含む燃料ガスからなる火炎を吹き付けることによって、リサイクル材料の表面を改質する方法において、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を23以上の値とした表面改質方法である。
すなわち、所定の表面改質装置を用いて、所定の改質剤化合物と、空気/炭化水素ガス等を含む燃料ガスからなる火炎を、所定の表面処理条件で吹き付けることにより、リサイクル材料あるいは粉砕した後のリサイクル材料の表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を形成し、リサイクル材料のリペレット化を容易にするばかりか、リサイクル材料の二次加工としての成形も容易かつ精度良く行えるように実施するものである。
【0020】
1.リサイクル工程例
図1および図2に、本発明のリサイクル工程の実施形態および、それと対比して、従来技術の工程例をそれぞれ示す。また、図3および図4に、図1(a)および図2(b)とは別の、本発明のリサイクル工程の実施形態を示す。
すなわち、図1(a)は、リサイクル材料を粉砕工程に供した後、表面処理工程を経て、成形工程に至る本発明のリサイクル工程の一例を示し、図1(b)は、粉砕工程後に、塗膜剥離工程、洗浄工程、乾燥工程および成形工程の順に各工程を経る従来のリサイクル工程の一例を示す。
また、図2(a)は、リサイクル材料を表面処理工程に供した後、粉砕(リペレット)工程を経て、成形工程に至る本願発明のリサイクル工程の一例を示し、図2(b)は、塗膜剥離工程後に、洗浄工程、乾燥工程、粉砕(リペレット)工程および成形工程の順に各工程を経る従来のリサイクル工程の一例を示す。
また、図3は、リサイクル材料を表面処理工程(第1回)に供した後、粉砕(リペレット)工程を実施し、次いで、再度、表面処理工程(第2回)を経て、成形工程に至る本発明のリサイクル工程の一例を示す。
さらに、図4は、まず、リサイクル材料を粉砕工程(第1回)に供した後、表面処理工程を実施し、次いで、さらなる粉砕工程(第2回)を経て、成形工程に至る本発明のリサイクル工程の一例を示す。
【0021】
(1)リサイクル材料
リサイクル材料の種類は特に制限されるものではないが、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、および熱可塑性エラストマーのいずれかであることが好ましい。
この理由は、このような種類のリサイクル材料であれば、汎用性が高く、安価であるばかりか、容易に表面改質されて、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を形成することができるためである。
【0022】
また、リサイクル材料が、熱硬化性塗料、紫外線硬化性塗料、または熱可塑性塗料からなる塗膜を含むものであることが好ましい。
この理由は、このような塗膜を含むリサイクル材料の場合、従来は、処理費用が高くなったり、処理時間が長くかかったり、さらには、薬品や剥離剤を使用しなければならず、環境的にも問題が生じやすかったためである。
すなわち、本発明の表面改質方法であれば、このような各種塗膜を含むリサイクル材料を、予め除去することなく、そのまま表面改質して、新たに成形加工することができるためである。よって、リサイクル工程を著しく短縮化できるとともに、機能性や有用性を向上させた複合的なリサイクル材料を効率的に提供することができる。
【0023】
また、リサイクル材料が、金属材料またはセラミック材料(ガラス材料を含む)を含むものであることが好ましい。
この理由は、このような金属材料やセラミック材料を含むリサイクル材料の場合、従来は、処理費用が高くなったり、処理時間が長くかかったり、さらには、機械的剥離装置(サンディング装置、ブラスト装置等)を使用しなければならず、環境的にも問題が生じやすかったためである。
すなわち、本発明の表面改質方法であれば、このような各種金属材料やセラミック材料を含むリサイクル材料について、リサイクル工程を著しく短縮化できるとともに、機能性(導電性)や機械的特性等を向上させた複合的なリサイクル材料を効率的に提供することができるためである。
【0024】
(2)粉砕工程(リペレット化工程)
粉砕工程の態様についても、特に制限されるものではないが、例えば、リサイクル材料を、粉砕し、所定の平均粒径を有するペレットとする工程である。
具体的には、以下に示すような粗粉砕、中粉砕、および微粉砕を行うことが好ましい。この理由は、このように段階的に実施すると、均一な平均粒径を有するペレットを効率的に得ることができるためである。
ただし、用途によっては平均粒径をより細かくかつ粒度分布を制御するために、粉砕工程の後、分級工程をさらに設けて、ふるい処理等を実施することも好ましい。
そこでまず、粗粉砕は、例えば、平均粒径や平均長さが10〜30mmの範囲内の値、より好ましくは、12〜25mmの範囲内の値になるように、リサイクル材料を粉砕する工程である。かかる粗粉砕として、通常、バンパー等のリサイクル材料を、クラッシャーやチョッパーで、塊状やストリップ状とすることが好ましい。
【0025】
次いで、中粉砕は、平均粒径や平均長さが1〜10mm未満の範囲内の値、より好ましくは、1.2〜8mmの範囲内の値になるように、粗粉砕後のリサイクル材料を、回転ロールや回転ウス等を用いて粉砕する工程である。その場合であっても、通常、一次中粉砕と、二次中粉砕との二段階に分けて、実施することが好ましい。
次いで、微粉砕は、平均粒径や平均長さが100〜1mm未満の範囲内の値、より好ましくは、120〜800μmの範囲内の値になるように、中粉砕後のリサイクル材料を粉砕する工程である。かかる微粉砕のためには、例えば、回転ウス、回転ロール、振動ミル、振動ボールミル、ボールミル、サンドミル、あるいはジェットミルを用いることが好ましい。
なお、粉砕条件(粉砕時間、回転数、粉砕圧力、環境温度等)については、使用する粉砕装置の種類および得られるリサイクル材料の平均粒径等を考慮して、適宜定めることができる。
【0026】
(3)表面処理工程
表面処理工程は、後述するように、所定の表面改質装置を用いて、所定の改質剤化合物と、空気/炭化水素ガス等を含む燃料ガスからなる火炎を、所定の表面処理条件で吹き付けることにより、リサイクル材料あるいは粉砕した後のリサイクル材料の表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を形成する工程である。
【0027】
(4)その他のリサイクル工程の実施態様
図2に示すように、表面処理工程、粉砕(リペレット化)工程および成形工程の順に各工程を実施することも好ましい。この理由は、リサイクル材料の嵩(体積)が比較的小さい場合に、迅速かつ効率的にリサイクル工程を実施することができるためである。
また、図3に示すように、表面処理工程、粉砕(リペレット化)工程を経て、再度、表面処理工程を実施した後に、成形工程を実施することも好ましい。この理由は、複数回(例えば、2回)の表面処理工程を実施することにより、リサイクル材料の表面における改質面積を大きくすることができるためである。また、複数回の表面処理工程を実施することにより、成形工程において、ペレット化したリサイクル材料同士の相溶性を向上させることができるためである。
さらに、図4に示すように、粉砕工程、表面処理工程を経て、再度、粉砕(リペレット化)工程を実施した後に、成形工程を実施することも好ましい。この理由は、リサイクル材料の嵩(体積)が比較的大きい場合であっても、複数回(例えば、2回)の粉砕工程を実施することにより、表面処理工程の時間を短縮化し、改質面積を大きくすることができるためである。また、このように複数回の粉砕工程を実施することにより、成形工程において、ペレット化したリサイクル材料同士の相溶性を向上させることができるためである。
【0028】
よって、このようにして得られたリサイクル材料を用いて、図5(a)〜(c)に示すような成形品210を得ることができる。
すなわち、図5(a)に示すように、リサイクル材料からなる基材200の上に、例えば、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子201と、塗膜202と、を均一かつ安定的に形成することができる。
また、図5(b)に示すように、リサイクル材料からなる基材200の上に、例えば、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子201と、金属層202aと、塗膜202と、を均一かつ安定的に形成することができる。
さらに、図5(c)に示すように、リサイクル材料からなる基材200の上に、例えば、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子(第1層)201aと、金属層202aと、さらなるケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子(第1層)201bと、塗膜202と、を均一かつ安定的に形成することができる。
なお、本発明の実施態様としては、上記のリサイクル工程の実施態様のほかにも、リサイクル材料の嵩(体積)、材質およびコスト性等を考慮して、洗浄工程や乾燥工程等の追加工程を適宜導入することもできる。
【0029】
2.表面改質装置
(1)基本構成
表面改質方法を実施するための表面改質装置につき、図6に示す流体フローを参照しながら説明する。
まず、かかる流体フロー中に示される表面改質装置100は、貯蔵タンク部102と、移送路105と、燃料ガスの貯蔵タンク106、圧縮空気源107と、から基本的に構成されており、それらが配管によって結合されている。
すなわち、貯蔵タンク部102には、シリコン原子、チタン原子、アルミニウム原子を含む改質剤化合物であって、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択された改質剤化合物101が貯蔵してある。したがって、気液平衡を利用したベーパライザー(図示せず)において、改質剤化合物の存在量が低下すると、貯蔵タンク102から、暫時、追加されることになる。
なお、貯蔵タンク部102の内部あるいは外部に、加熱手段103あるいは自然蒸発により気化させる、気液平衡を利用したベーパライザー(図示せず)が設けてある。そして、加熱手段103には、自然蒸発によるベーパライザーを含んで意味する場合がある。
【0030】
また、移送路105は、ベーパライザー(図示せず)において、加熱手段103あるいは自然蒸発により気化した改質剤化合物101を、噴射部(バーナー)104に向かって移送させるための配管である。
そして、表面改質装置100は、後述するプロパンガスやLPGガス等の炭化水素ガスの貯蔵タンク106や、当該炭化水素ガスの燃焼用空気、並びに改質剤化合物を搬送するための空気(キャリア)をそれぞれ供給するための圧縮空気源107をさらに備えている。
【0031】
また、移送路105の途中には、第1のミキサ(サブミキサと称する場合がある。)108や、第2のミキサ(メインミキサと称する場合がある。)109が設けてある。
ここで、第1のミキサ108は、ベーパライザー(図示せず)において気化した改質剤化合物(一部、気化した改質剤化合物の移送用空気を含む)と、圧縮空気源107からの空気と、を均一に混合して、一次燃料ガスとする混合装置である。
また、第2のミキサ109は、一次燃料ガスと、貯蔵タンク106より移送されてくる炭化水素ガスと、を均一に混合して、最終的な燃料ガス(二次燃料ガスと称する場合がある。)とするための混合装置である。
さらには、貯蔵タンク部102と、圧縮空気源107、および貯蔵タンク106のそれぞれの出口には、流体物の流量をコントロールするための流量計付き流量調節バルブ110、111、112がそれぞれ設けられている。
【0032】
(2)貯蔵タンク部
図6に示すように、改質剤化合物を貯えておく貯蔵タンク部102の下方には、加熱用ヒーター等の加熱手段103が備えられており、常温、常圧状態では液状の改質剤化合物101が、蒸発または気化するよう構成されている。
そして、加熱手段103は、加熱機能のみならず、冷却機能を有していることが好ましく、スイッチングは、中央演算処理装置(CPU)(図示せず)によりコントロールされている。すなわち、同CPUは、改質剤化合物の液量センサー、液温センサー等に電気的に接続されていて、改質剤化合物の液量および液温が、規定の範囲内の値や位置に保持されるように、加熱手段103の温度や貯蔵タンク部102からの追加供給量をコントロールしている。
なお、改質剤化合物の液量センサー、液温センサー等としては、改質剤化合物の単位時間当たりの消費量が極めて少ないために、液量センサーとして、プリズムセンサーや赤外線を利用した液量センサー、あるいは、液温センサーとして、サーモスタットや熱電対等の精密センサーが挙げられる。
【0033】
また、第1の実施形態では、常温、常圧状態において、液状の改質剤化合物を使用した例を挙げているが、常温、常圧状態において、気体または固体状の改質剤化合物も使用することができる。
例えば、気体状の改質剤化合物を使用する場合には、貯蔵タンク部102にはあえてヒーターを備える必要はなく、代わりに圧力調整弁等の流量調節手段を設ければよい。したがって、貯蔵タンク部102からベーパライザー(図示せず)に添加される改質剤化合物の温度の影響をうけにくくなって、一定の気液平衡状態を保持しやすくなる。
また、固体状の改質剤化合物を使用する場合には、例えば、その固体状化合物を溶媒に溶解するか、熱で溶融させ、本例の貯蔵タンクからバーナーの火炎近傍迄、配管した液輸送管中を通らせて、バーナー中に直接送り込むことで、所定の表面改質処理を行うことができる。
【0034】
(3)移送部
一部上述したように、図6に示すように、移送部105の途中には、通常「管」構造であって、圧縮空気源107から供給され燃焼用空気と、貯蔵タンク102より送出される気化された改質剤化合物と、を混合するための第1のミキサ108が設けてある。
また、第1のサブミキサ108により混合された混合ガスと、燃料ガスの貯蔵タンク106より送出される燃料ガスと、をさらに均一に混合するための第2のミキサ109が設けられている。
【0035】
(4)噴射部
噴射部(バーナー)104は、図6に示すように、移送部105を経て送られてきた燃焼ガスを燃焼させ、得られた火炎113を、被改質処理面(図示せず)に吹き付け処理するためものである。
かかる火炎113の燃焼状態は、気化した改質剤化合物101の流量および圧縮空気源107より送出される燃焼用空気量、並びに貯蔵タンク106より送出される炭化水素ガスの各流量を、それぞれのガスの配管に設けられている流量計付き流量調節バルブ110、111、112の開度を調節することによって、適宜、最適状態に調整される。
なお、噴射部におけるバーナーの種類は、特に制限されるものではないが、例えば、予混合型バーナー、拡散型バーナー、部分予混合型バーナー、噴霧バーナー、蒸発バーナー、等の何れであっても良い。また、バーナーの形態についても特に制限されるものではない。
【0036】
3.燃料ガス
(1)改質剤化合物
改質剤化合物としては、シリコン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む化合物であり、且つ、一般的なガスバーナーの火炎中で燃焼し得るものであれば特に制限はない。
そして、入手のし易さや取り扱いの容易さを考慮すると、例えば、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
【0037】
ここで、アルキルシラン化合物の好適例としては、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジフェニルシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジフェニルシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジエチルシランなどの置換基を有していてもよいモノシラン化合物、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、クロロヘプタメチルジシランなどの置換基を有していても良いジシラン化合物、オクタメチルトリシランなどの置換基を有していても良いトリシラン化合物などが挙げられる。
【0038】
また、アルコキシシラン化合物の好適例としては、メトキシシラン、ジメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、エトキシシラン、ジエトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0039】
また、シロキサン化合物の好適例としては、テトラメチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。
【0040】
また、シラザン化合物の好適例としては、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
また、アルキルチタン化合物の好適例としては、テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラプロピルチタンなどが挙げられる。
また、アルコキシチタン化合物の好適例としては、チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシドなどが挙げられる。
また、アルキルアルミニウム化合物の好適例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウムなどが挙げられる。
また、アルコキシアルミニウム化合物の好適例としては、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシドなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても混合して用いても良い。
【0041】
以上の改質剤化合物の好適例の中でも、シラン化合物、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、およびシラザン化合物は、取り扱いが容易であり、気化させやすく、また、入手もしやすいことからより好ましい。
特に、ケイ素含有化合物において、分子内または分子末端に窒素原子、ハロゲン原子、ビニル基およびアミノ基の少なくとも一つを有する化合物であることがより好ましい。
より具体的には、ヘキサメチルジシラザン(沸点:126℃)、ビニルトリメトキシシラン(沸点:123℃)、ビニルトリエトキシシラン(沸点:161℃)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(沸点:144℃)、トリフルオロプロピルトリクロロシラン(沸点:113〜114℃)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(沸点:215℃)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:217℃)、ヘキサメチルジシロキサン(沸点:約101℃)、および3−クロロプロピルトリメトキシシラン(沸点:196℃)の少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
この理由は、このようなケイ素含有化合物であれば、キャリアガスとの混合性が向上し、リサイクル材料の表面に、粒状物(水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等)を形成して改質がより均一になるとともに、沸点等の関係で、かかるシラン化合物がリサイクル材料の表面に一部残留しやすくなるため、リサイクル材料と、各種粉体塗膜との間で、より優れた密着力を得ることができるためである。
【0042】
また、改質剤化合物としてのケイ素含有化合物等の添加量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10-10〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるケイ素含有化合物等の添加量が1×10-10モル%未満の値になると、リサイクル材料に対する改質効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかるケイ素含有化合物等の添加量が10モル%を超えると、ケイ素含有化合物等と空気等との混合性が低下し、それにつれてケイ素含有化合物等が不完全燃焼する場合があるためである。
したがって、ケイ素含有化合物等の添加量を、気体状物の全体量を100モル%としたときに、1×10-9〜5モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-8〜1モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
また、燃料ガス中に、改質剤化合物とともに、アルコール化合物を添加することが好ましい。
この理由は、添加したアルコール化合物は、改質剤化合物と均一に溶解して、改質剤化合物を含む混合物としての沸点や引火点の調整が容易になるためである。また、このようなアルコール化合物を添加することにより、火炎の色の調整が容易になって、改質剤化合物とともに、確実に燃焼していることを確認できるためである。
ここで、このようなアルコール化合物としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、改質剤化合物とともに添加するアルコール化合物の添加量を、改質剤化合物の全体量を100モル%としたときに、0.01〜30モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアルコール化合物の添加量が0.01モル%未満の値になると、混合物としての沸点や引火点の調整が困難となる場合があるためである。一方、かかるアルコール化合物の添加量が30モル%を超えると、リサイクル材に対する表面改質効果が発揮されない場合があるためである。
【0044】
(2)空気/炭化水素ガス
また、燃料ガス中に、火炎の温度制御やキャリア効果の発揮等のみならず、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を均一に形成することができるために、所定量の空気を用いることを特徴とする。
すなわち、燃料ガス中に、所定量の空気を導入し、火炎の燃料ガスの一部として用いることを特徴とする、
ここで、このような空気の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、80〜99.9モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる空気の含有量が80モル%未満となると、ケイ素含有化合物の燃焼が不完全になるばかりか、水酸基の生成が不十分となる場合があるためである。一方、かかる空気の含有量が99.9モル%を超えると、表面改質効果が十分に発揮されない場合があるためである。
したがって、空気の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、90〜99.5モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、93〜99モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、空気は、キャリアガスとして用いるほか、燃料ガスの最終段階で加えても良く、空気/炭化水素ガスの値を最終的に所定範囲に調整することができれば良い。
【0045】
(3)炭化水素ガス
また、燃料ガス中に含まれる炭化水素ガスが、プロパンガスまたはLPG(プロパンガス単独以外の液化石油ガス)であることが好ましい。
この理由は、このような種類の炭化水素ガスであれば、安価である一方、所定温度で燃焼することができるためである。したがって、ケイ素含有化合物等を安定的に熱分解させて、いずれのリサイクル材料に対しても、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を、強固かつ均一に積層することができる。
なお、LPGとしては、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ブタン/プロパンの混合ガス、エタン、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)等が挙げられる。
一方、このような炭化水素ガスの含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、0.1〜10モル%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭化水素ガスの含有量が0.1モル%未満となると、火炎温度が低下して、ケイ素含有化合物等の燃焼が不完全になるばかりか、水酸基の生成が不十分となる場合があるためである。一方、かかる炭化水素ガスの含有量が10モル%を超えると、不完全燃焼して、同様に、表面改質効果が十分に発揮されない場合があるためである。
したがって、炭化水素ガスの含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、0.5〜8モル%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜5モル%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(4)空気/炭化水素ガスの混合モル比
次いで、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比について、図7〜11を参照して、詳細に説明する。
まず、図7(a)は、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子10によるリサイクル材料12の表面改質状況の概念図である。
また、図7(b)は、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子10の概念図である。
すなわち、特定の燃料ガスを用いることによって、このような水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子が、強固かつ均一に積層されやすくなることから、ケイ素含有化合物等の沸点の相違や、周囲の環境条件にかかわらず、いずれのリサイクル材料に対しても、所定の表面改質効果を得ることができる。
なお、かかる水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子の平均粒径は特に制限されるものではないが、例えば、0.001〜10μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.01〜2μmの範囲内の値とすることがより好しく、0.05〜0.8μmの範囲内の値とすることがさらに好しい。
【0047】
また、図8(a)〜(d)は、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子10による表面改質状況が、処理程度に準じて変化する様子の概念図である。
図8(a)は、未処理のポリプロピレンフィルム(厚さ:50μm)の表面状態を表しており、図8(b)は、それに対して、実施例1に基づく表面処理を0.6秒間実施した場合の表面改質状況を示している。
したがって、両者を比較することにより、ポリプロピレンフィルムの表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子がまばらに付着していることが理解される。
すなわち、特定の燃料ガスを用いることによって、このような水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子が、ポリプロピレンフィルムの表面に、強固かつ均一に積層されやすくなることから、ケイ素含有化合物等の沸点の相違や、周囲の環境条件にかかわらず、いずれのリサイクル材料に対しても、所定の表面改質効果が得られると言うことができる。
【0048】
ここで、図8(c)は、図8(a)のポリプロピレンフィルムに対して、実施例1に基づく表面処理を1秒間実施した場合の表面改質状況を示している。したがって、両者を比較することにより、ポリプロピレンフィルムの表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子がかなり均一かつ相当量付着していることが理解される。
さらに、図8(d)は、図8(a)のポリプロピレンフィルムに対して、実施例1に基づく表面処理を2秒間実施した場合の表面改質状況を示している。したがって、両者を比較することにより、ポリプロピレンフィルムの表面に、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子が、一部連続的に、かつ多量に付着していることが理解される。
すなわち、ケイ酸化炎処理で得られた水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子が、例えば、図8(b)〜(d)の状態で付着していると、濡れ指数の値が高くなり、所定の表面改質効果が得られると言える。
但し、図8(d)に示すシリカ粒子の場合、その表面における水酸基の量が、図8(b)〜(d)のシリカ粒子と比較して、元素分析方法によって、少ない傾向が見られている。
したがって、本発明において重要なことは、あくまで水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子が、リサイクル材料の表面に付着していることであって、水酸基を表面に多数有しないシリカ粒子が多量に付着していたとしても、優れた表面改質効果は得られないと言える。
【0049】
また、シリカ粒子の表面の水酸基量は、例えば、FT−IRを用いて推定することができる。すなわち、FT−IRで得られる赤外吸収チャートにおいて、吸着水に帰属する3400cm-1付近のピーク高さ(P2)と、遊離水酸基に帰属する3600cm-1付近のピーク高さ(P1)とを比較して、所定範囲内の値であれば、優れた表面改質効果を得る上で、好ましいと言える。
例えば、P1/P2で表される数値が0.2〜1.0程度であれば好ましく、0.3〜0.9程度であればより好ましく、0.4〜0.8程度であればさらに好ましいと言える。
逆に、このような範囲のP1/P2の数値が得られれば、少なくとも水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子ということができる。
【0050】
また、シリカ粒子の表面の水酸基量は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光分析)によっても、推定することができる。すなわち、XPSで得られる粒子表面の元素分析データにおいて、Si:Oの比率が、1:2.2〜1:3.2の範囲内であれば、シリカ粒子の表面の水酸基量が多くて、優れた表面改質効果を得る上で、好ましいと言える。
したがって、Si:Oの比率が、1:2.5〜1:3.0の範囲内であれば、より好ましく、1:2.6〜1:2.9の範囲内であればさらに好ましいと言える。
逆に、このような範囲のSi:Oの比率が得られれば、少なくとも水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子ということができる。
なお、XPSで得られる粒子表面の元素分析データにおいて、同時に、C(炭素)のデータも取得し、Si:Cの比率が、1:0.0001〜0.1の範囲であれば、シリカ粒子の表面のカルボキシル基量ではなくて、水酸基量が多いとさらに推定していうことができる。
【0051】
次いで、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を23以上の値とする理由を、図9を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
ここで、かかる図9は、実施例1等に準拠したデータであって、横軸に空気/炭化水素ガスの混合モル比(−)を採って示してあり、縦軸に、ポリプロピレンフィルムの表面における濡れ指数(dyn/cm)を採って示してある。
【0052】
かかる図9から理解されるように、空気/炭化水素ガスの混合モル比が10〜20程度であると、ほとんど表面改質効果が得られていない。すなわち、表面処理を実施しているにもかかわらず、未処理のポリプロピレンに対する濡れ指数(表面張力相当)である30dyn/cm程度の値しか得られていない。
次いで、空気/炭化水素ガスの混合モル比が20超〜22程度の範囲になると、濡れ指数の値がわずかに増加する傾向があるものの、結局、30dyn/cm程度であって、その増加幅は少なく、表面改質効果が未だ得られていないことが理解される。
【0053】
それに対して、空気/炭化水素ガスの混合モル比が23〜25程度の範囲になると、著しく濡れ指数が増加し、45〜58dyn/cm程度になっていることから、所定の表面改質効果が得られることが理解される。
さらに、空気/炭化水素ガスの混合モル比が25〜38程度の範囲になると、さらに著しく濡れ指数が増加し、70〜72dyn/cm程度になっていることから、優れた表面改質効果が安定的に得られることが理解される。
したがって、図9から、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比が23未満となると、表面改質効果が安定的に発揮されなかったり、あるいは、火炎が消火しやすくなったり、不完全燃焼したりするため、好ましくないといえる。
【0054】
但し、空気/炭化水素ガスの混合モル比が40を超えると、今度は、逆に、得られる濡れ指数の値が若干ばらつく傾向が見られている。これは、空気/炭化水素ガスの混合モル比の関係で、空気があまりに過剰に存在すると、火炎が安定しないためであると推定される。
【0055】
よって、このように空気/炭化水素ガスの混合モル比が23以上である燃料ガスを用いることによって、ケイ素含有化合物等の沸点の相違や、周囲の環境条件にかかわらず、いずれのリサイクル材料に対しても、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を、強固かつ均一に積層することができる。したがって、表面処理したリサイクル材料上に、熱硬化性樹脂塗料や紫外線硬化性塗料からなる塗膜を形成した場合であっても、リサイクル材料と、塗膜との間で、優れた密着性を得ることができる。
但し、ばらつきが少なく、より安定的に表面改質効果が発揮されることから、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を24〜45の範囲内の値とすることがより好ましく、25〜38の範囲内の値とすることがさらに好ましく、28〜35の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
4.表面処理条件
また、表面処理条件に関して、火炎温度を500〜1、500℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる火炎温度が500℃未満の値になると、ケイ素含有化合物の不完全燃焼を有効に防止することが困難になる場合があるためである。
一方、かかる火炎温度が1、500℃を超えると、表面改質する対象のリサイクル材料が、熱変形したり、熱劣化したりする場合があり、使用可能なリサイクル材料の種類が過度に制限される場合があるためである。
したがって、火炎温度を550〜1、200℃の範囲内の値とすることが好ましく、600〜900℃未満の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
また、火炎の吹き付け時間(噴射時間)を、単位面積(100cm)あたり、0.1秒〜100秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる噴射時間が0.1秒未満の値になると、ケイ素含有化合物等による改質効果が均一に発現しない場合があるためである。
一方、かかる噴射時間が100秒を超えると、表面改質する対象のリサイクル材料が、熱変形したり、熱劣化したりする場合があり、使用可能なリサイクル材料の種類が過度に制限される場合があるためである。
したがって、かかる噴射時間を、単位面積(100cm)あたり、0.3〜30秒の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜20秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
1.リサイクル工程
(1)準備工程
実施例1は、難密着性のリサイクル材料として、メラミンーホルムアルデヒド系塗膜を備えたポリプロピレン樹脂からなるバンパーのリサイクルにおける表面処理方法である。
すなわち、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、5重量部のメラミンーホルムアルデヒド系塗膜を含むバンパー(リサイクル材料)を準備し、イソプロピルアルコール(IPA)を用いて十分洗浄した。
【0059】
(2)粉砕処理
表面処理されたリサイクル材料としてのバンパーを、クラッシャーを用いて粗粉砕し、平均粒径が約20mmの塊状とした。
次いで、回転ロールを用いて、平均粒径が5mmの粒状となるまで中粉砕し、その後、振動ボールミルを用いて、平均粒径が2mmの粒状となるまで微粉砕した。
【0060】
(3)表面改質処理
次いで、微粉砕されたリサイクル材料に対して、図6に示す表面改質装置100を用い、下記改質条件にて、表面改質処理を行い、厚さnmオーダの表面改質層を形成した。なお、かかる表面改質層は、不連続層であることが確認されている。
【0061】
(表面改質条件)
改質剤化合物の種類 :テトラメチルシラン(沸点:27℃)
空気を含む改質剤化合物:1.3(リットル/min)
の吐出量
燃料ガス :プロパンガス
空気流量(Air) :84(リットル/min)
ガス流量(LPG) :3.0(リットル/min)
空気/炭化水素ガス :28
の混合モル比
処理時間 :5秒/100cm
環境条件 :25℃、50%Rh
なお、空気を含む改質剤化合物の全体量を100モル%とした場合、改質剤化合物の含有量は、約0.0002モル%である。以下、改質剤化合物の含有量については、同様である。
【0062】
(4)一体成型
次いで、微粉砕されたリサイクル材料を、所定の金型内に充填して、150℃、30kgf/cm、30秒の条件で、プレート状物(長さ10cm、幅5cm、厚さ1.5mm)を成形した。
【0063】
(5)塗膜形成
次いで、得られた一体成型品(プレート状物)の表面に、ポリウレタンアクリレートをプレポリマーとするポリウレタンアクリレート系UV硬化型塗料:IMS−007((株)イシマット・ジャパン製)を塗布した。
その後、紫外線照射装置(露光量:800mJ/cm2、UVランプ)を用いて、UV硬化型塗料を紫外線硬化させ、厚さ15μmの塗膜を形成した。
なお、上述したUV硬化型塗料を用いたことにより、図6(a)に示すように、塗膜202として、クリヤー色の可撓性加飾層を得ることができた。
【0064】
2.評価
(1)外観評価
上記のようにリサイクル工程を実施して成型されたプレート状物の表面上に、形成された可撓性加飾層(塗膜)の表面を目視で観察し、以下に示す基準に基づいて、リサイクル材料と、塗膜との間の外観特性を評価した。
◎:可撓性加飾層表面に、凹凸が全く見られない。
○:可撓性加飾層表面に、凹凸が僅かに見られる。
△:可撓性加飾層表面に、凹凸が少々見られる。
×:可撓性加飾層表面に、凹凸が顕著に見られる。
【0065】
(2)密着性
碁盤目試験(JIS基準)を実施し、以下に示す基準に基づいて、リサイクル材料と、塗膜との間の密着性を評価した。
◎:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、全く剥がれが無い。
○:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が3個以内である。
△:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が10個以内である。
×:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が10個以上である。
【0066】
(3)環境特性
表面改質処理を行う際の、環境条件を、40℃、95%Rhとした以外は、上述したのと同様の表面改質処理を行い、以下の基準に沿って環境特性としての密着性を評価した。
◎:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、全く剥がれが無い。
○:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が3個以内である。
△:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が10個以内である。
×:100個の碁盤目試験(JIS基準)で、剥がれ数が10個以上である。
【0067】
[実施例2〜5、比較例1]
実施例2〜5、比較例1では、燃料ガスにおける空気/炭化水素ガス(LPG)の混合モル比(20〜40)を変えて、実施例1と同様に、密着性や環境特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例6〜10、比較例2]
実施例6〜10および比較例2では、粉砕処理後のみならず、粉砕処理前においても、実施例1等における表面処理(合計2回)を実施したほかは、実施例1等と同様に、密着性や環境特性を評価した。
【0070】
【表2】

【0071】
[実施例11〜15、比較例3]
11〜15、比較例3では、改質剤化合物として、テトラメチルシラン化合物のかわりに、ヘキサメチルジシロキサン/エチルアルコール混合物(重量比99:1)を用いて、沸点(大気圧下測定)を90℃以下としたほかは、実施例1等と同様に、密着性や環境特性を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、所定の改質剤化合物を含むとともに、空気/炭化水素ガスの混合モル比を制御した燃料ガスからなる火炎を、リサイクル材料の表面に対して吹き付けることによって、改質剤化合物の沸点の相違や、周囲の環境条件にかかわらず、いずれのリサイクル材料に対しても、水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等を、強固かつ均一に積層することができるようになった。
したがって、装飾用塗膜や異種材料を含むリサイクル材料であっても、リペレット化が容易になるばかりか、プレス装置等を用いて、容易かつ精度良く、一体成形できるようになった。
すなわち、本発明によれば、従来のリサイクル方法と比較して、製造工程が簡略化されるだけなく、リサイクル時間を著しく短縮できることから、経済面や環境面等の観点からも極めて有利な新規技術であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(a)〜(b)は、本発明のリサイクル工程例およびそれと対比される従来のリサイクル工程例を示す図である(その1)。
【図2】(a)〜(b)は、本発明のリサイクル工程例およびそれと対比される従来のリサイクル工程例を示す図である(その2)。
【図3】本発明のリサイクル工程例を示す図である(その3)。
【図4】本発明のリサイクル工程例を示す図である(その4)。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれリサイクル材料からなる成形品の一態様を説明するための図である。
【図6】表面改質装置に基づく流体フローを示す図である。
【図7】(a)〜(b)は、リサイクル材料の表面改質状況および水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子を説明するために供する図である。
【図8】(a)〜(d)は、表面改質状況を説明するために供する図である。
【図9】空気/炭化水素ガスの混合モル比と、濡れ指数との関係を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0075】
10:改質剤粒子
12:リサイクル材料
100:表面改質装置
101:改質剤化合物
102:貯蔵タンク部
103:加熱手段
104:噴射部(バーナー)
105:移送部
106:貯蔵タンク
107:圧縮空気源
108:第1のミキサ
109:第2のミキサ
110〜112:流量調節バルブ
113:火炎
200:リサイクル材料からなる成形品
201、201a、201b:表面改質層(水酸基を表面に多数有する所定のシリカ粒子等)
202:塗膜
202a:金属蒸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原子、チタン原子またはアルミニウム原子を含む改質剤化合物と、空気と、炭化水素ガスと、を含む燃料ガスに由来した火炎を吹き付けることによって、リサイクル材料の表面を改質する方法において、
前記燃料ガスにおける空気/炭化水素ガスの混合モル比を23以上の値とすることを特徴とするリサイクル材料の表面改質方法。
【請求項2】
前記炭化水素ガスが、プロパンガスまたはLPGであることを特徴とする請求項1に記載の表面改質方法。
【請求項3】
前記改質剤化合物が、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、およびアルコキシアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面改質方法。
【請求項4】
前記改質剤化合物の沸点(760mmHg)を20〜250℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリサイクル材料の表面改質方法。
【請求項5】
前記改質剤化合物の含有量を、燃料ガスの全体量を100モル%としたときに、1×10−10〜10モル%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリサイクル材料の表面改質方法。
【請求項6】
前記リサイクル材料が、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリサイクル材料の表面改質方法。
【請求項7】
前記リサイクル材料が、熱硬化性塗料、紫外線硬化性塗料、または熱可塑性塗料からなる塗膜を含むものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリサイクル材料の表面改質方法。
【請求項8】
前記リサイクル材料が、金属材料またはセラミック材料を含むものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリサイクル材料の表面改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−189742(P2008−189742A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23967(P2007−23967)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(501163657)
【Fターム(参考)】