説明

リシノール酸(共)重合体ゴム組成物、リシノール酸(共)重合体ゴム架橋体およびその用途

【課題】環境にやさしく、成形加工性にも優れるリシノール酸(共)重合体ゴム組成物、および従来のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物と比べて、ゴム用途に適した低温特性を維持しつつ、柔軟性および機械的特性に優れるゴム架橋体を提供すること。
【解決手段】本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、所定の重量平均分子量を有するリシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、補強剤(B)10〜200重量部およびイオウ系化合物(C)0.01〜5重量部を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物、および該ゴム組成物を架橋することにより得られるリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体に関する。より詳しくは、環境にやさしく、成形加工性に優れるリシノール酸(共)重合体ゴム組成物に関する。また、機械的特性および柔軟性に優れるリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ゴムは優れたゴム弾性と耐熱性を有することから、自動車用のタイヤや防振ゴム、及び各種シール材として幅広く利用されている。その原料ゴムには、天然ゴムをはじめとして、スチレンブタジエンゴムやブタジエンゴム、およびエチレンプロピレンゴムなどの合成ゴムが用いられており、年間の使用量は2千万トンを超える。
【0003】
近年、脱石油資源化や原油高騰の影響で天然ゴム回帰の傾向が見られるものの、天然ゴムの生産は労働集約的で供給安定性および品質安定性を欠き、さらにタンパク質除去量の程度によってはアレルギーの問題が生じるなどの課題を抱え、天然物由来合成ゴム材料の開発が強く望まれている(例えば、非特許文献1〜6参照)。
【0004】
天然物由来の高分子材料に関して、その代表的なものとして、乳酸発酵により乳酸モノマーを得、これを化学的に重合させることにより、ポリ乳酸(PLA)が得られており、すでに実用化されている。乳酸以外にもコハク酸やプロパンジオールなど種々得られており、今後これらを用いたバイオベースポリマーの実用化が進むものと考えられる。
【0005】
しかしながら、これらの天然物由来の高分子材料は、いずれも硬質および軟質系のプラスチック素材であって、汎用ゴム様の物性を有する素材ではない。
【0006】
一方、ひまし油に由来するリシノール酸(12−ヒドロキシ−cis−9−オクタデセン
酸)メチルを、油脂加水分解酵素(リパーゼ)により、重合して合成された高分子量(例えば、重量平均分子量98000)のポリリシノール酸が開示されている(例えば、非特許文献7参照)。また、高分子量のポリリシノール酸、カーボンブラック、過酸化物系架橋剤を含むポリリシノール酸ゴム組成物も開示され、かかるポリリシノール酸ゴム組成物は、過酸化物架橋されることでゴム様の物性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. M. Bristow, B. Westall, Polymer. 8, 609 (1974).
【非特許文献2】A. Subramaniam,Rubber Chem. Technol. 45, 345-358 (1976).
【非特許文献3】S. Nair, Rubber World. 198, 27-30 (1988).
【非特許文献4】J. S. Dick, C. Harmon, A. Vare, Polymer Testing 18, 327-362 (1999).
【非特許文献5】D. J. Siler, K. Cornish, R. G.Hamilton, J. Allergy Clin. Immunol.98, 895-902 (1996).
【非特許文献6】G. Pailhories, Clin Rev. Allergy 1993, 11, 391-402.
【非特許文献7】H. Ebata, K. Toshima, S. Matsumura, Macromol. Biosci., 7, 798(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このリシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られたゴム架橋体は、実用にあたり、機械的特性および柔軟性に、依然として改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、優れた機械的特性および柔軟性を有するゴム架橋体に成形・架橋することができるリシノール酸(共)重合体ゴム組成物およびそのようなリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の架橋剤を用いることにより、架橋剤として過酸化物を用いたリシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られたゴム架橋体に比べて機械的特性および柔軟性が格段に優れるゴム架橋体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は以下に記載した事項により特定される。
【0012】
本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)から測定される重量平均分子量が20,000以上であるリシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、補強剤(B)10〜200重量部およびイオウ系化合物(C)0.01〜5重量部含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記補強剤(B)が、カーボンブラックであることが好ましい。
【0014】
また、上記リシノール酸(共)重合体ゴム組成物が、リシノール酸(共)重合体(A)、補強剤(B)およびイオウ系化合物(C)の他に、加硫促進剤(D)0.1〜15重量部を含むことが好ましい。
【0015】
また、上記リシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、架橋して得られるリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体とすることが好ましい。
【0016】
また、上記リシノール酸(共)重合体ゴム架橋体は、タイヤ、履物、導電性ゴム、コンベヤベルト用カバーゴム、医療用ゴム製品または床材料とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物によれば、従来のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物と比べて、ゴム用途に適した低温特性を維持しつつ、柔軟性および機械的特性に優れるゴム架橋体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物およびリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体について、構成要件ごとに詳細に説明する。
【0019】
[リシノール酸(共)重合体(A)]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマト
グラフィー)から測定される重量平均分子量は、20,000以上であり、好ましくは40,000〜300,000である。このような範囲の重量平均分子量を有するリシノール酸(共)重合体(A)を用いることにより、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物から
成形されたゴム架橋体に、優れた機械的性質、ゴム弾性および成形加工性を付与すること
ができる。
【0020】
また、このような範囲の重量平均分子量を有するリシノール酸(共)重合体(A)は、
下記反応式(I)に示されるように、リシノール酸(12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセン
酸)エステル誘導体、またはリシノール酸エステル誘導体および12−ヒドロキシステアリン酸エステル誘導体(例えば、ヒドロキシステアリン酸メチルエステル)から、リパーゼを触媒に用いた重合反応を経て合成することができる。
【0021】
上記重合反応において、リシノール酸エステル誘導体単独を重合した場合、単独重合体であるリシノール酸重合体が得られる。一方、リシノール酸エステル誘導体とともに12−ヒドロキシステアリン酸エステル誘導体を重合した場合、共重合体であるリシノール酸共重合体が得られる。
【0022】
また、重合反応が良好であり、高分子量のリシノール酸(共)重合体が得られることから、リシノール酸エステル体は、リシノール酸メチルであることが好ましい。
【0023】
また、リシノール酸メチルエステル誘導体と12−ヒドロキシステアリン酸メチルエステル誘導体との仕込みモル比(12−リシノール酸メチルエステル誘導体/12−ヒドロキシステアリン酸メチルエステル誘導体)は、100/0〜20/80であることが好ましい。この仕込みモル比が上記範囲から逸脱すると、架橋反応性が低く、またゴム弾性も悪化する場合がある。
【0024】
【化1】

【0025】
(反応式I)
また、リパーゼとしては、Burkholderia cepacia由来の固定化リ
パーゼ(たとえばシグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、リパーゼPS−C(商品名)、PS−D(商品名)等)が好ましく、この場合、高温でもリパーゼが失活しにくいために、反応温度を90℃まで上げることができる。また、反応条件としては、バルク条件下において、撹拌機つき反応器によるバッチ法とすることが好ましい。
【0026】
また、反応時間としては、触媒濃度、重合温度などの条件によって異なるが、通常4〜7日間である。
【0027】
また、上記反応式(I)に示されるように、リパーゼを用いた重合反応は可逆反応であり、効率的な重合反応を進行させるためには、生成したアルコールを逐次除去することが好ましい。具体的には、反応系における圧力状態を減圧状態に維持したり、合成ゼオライト(例えば、モレキュラーシーブ4A)等の吸湿剤を反応系に非接触で設置した上で合成反応を実施したりすることが挙げられる。このような条件下において重合反応を実施することにより、単純かつ容易に重合反応を進行することができ、高分子量のリシノール酸(共)重合体を効率よく合成することができる。
【0028】
[補強剤(B)]
補強剤(B)の種類としては、カーボンブラック、シリカ、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸、クレー等が挙げられる。
【0029】
この中でも、ゴムマトリックスへの均一分散性と優れた補強性、および汎用性(コスト)という観点から、補強剤(B)は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0030】
カーボンブラックの種類は特に限定されないが、使用目的に応じて、通常ゴム工業において用いられる公知のタイプ、例えば、ファーネスブラック(ASTM D 1765による分類)、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0031】
具体的なカーボンブラックとしては、市販されている「旭#50HG」(商品名;旭カーボン株式会社製)、「シースト(商品名)」シリーズ;SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック(東海カーボン株式会社製)が挙げられる。この中でも、「旭#50HG」、「シーストHAF」のカーボンブラックが好ましい。また、「旭#50HG」(商品名;旭カーボン株式会社製)や「シースト(商品名)」シリーズのカーボンブラック(東海カーボン株式会社製)をシランカップリング剤等で表面処理して使用してもよい。
【0032】
また、重質炭酸カルシウムとしては、市販されている「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等を用いることができる。
【0033】
[イオウ系化合物(C)]
イオウ系化合物(C)によりリシノール酸(共)重合体ゴム組成物を架橋することで、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系架橋剤を用いた場合と比べて、ゴム架橋体に同等の低温特性を与えつつ、格段に優れた柔軟性や機械的特性を付与することができる。
【0034】
イオウ系化合物の種類としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。この中でも、イオウやテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0035】
[リシノール酸(共)重合体ゴム組成物]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物には、リシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、イオウ系化合物(C)が0.01〜5.0重量部、好ましくは
0.05〜5.0重量部、さらに好ましくは0.1〜4.0重量部含まれる。このような含有量でリシノール酸(共)重合体ゴム組成物にイオウ系化合物(C)が含まれることにより、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物が優れた架橋特性を有し、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生を低減することができる。
【0036】
また、本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物には、リシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、補強剤(B)が10〜200重量部、好ましくは20〜180重量部、さらに好ましくは30〜160重量部含まれる。このような範囲でリシノール酸(共)重合体ゴム組成物に補強剤(B)が含まれることにより、得られるゴム架
橋体の引張強度、引裂強度、耐摩耗性等の機械的特性を向上させることができる。また、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の混練加工性、ゴム架橋体の機械的特性を向上させることができ、得られるゴム架橋体の永久歪みを小さくすることができる。
【0037】
[加硫促進剤(D)]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物には、リシノール酸(共)重合体(A
)、補強剤(B)およびイオウ系化合物(C)の他に、加硫促進剤(D)を、リシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部添加してもよい。このような含有量でリシノール酸(共)重合体ゴム組成物に加硫促進剤(D)が含まれることにより、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物が優れた架橋特性を有し、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生をより低減することができる。
【0038】
また、加硫促進剤(D)の種類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベン
ゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB−P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素(例えば、「サンセラー22−C」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N,N'−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系
;その他亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0039】
[加硫助剤(E)]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、加硫助剤(E)を含んでいてもよい。加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。その含有量は、通常、ゴム組成物100重量部に対して、1〜20重量部である。
【0040】
[その他の成分]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、目的に応じて、軟化剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、活性剤、吸湿剤、発泡剤、発泡助剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0041】
〔軟化剤〕
本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、その用途に応じて、軟化剤を含んでいてもよい。軟化剤の具体例としては、プロセスオイル(例えば、「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名;出光興産株式会社製)など)、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、およびワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、およびコールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ひまし油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、およびヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ、およびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、およびラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、およびクマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、およびジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロク
リスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。なかでも、石油系軟化剤が好ましく、特にプロセスオイルが好ましい。
【0042】
また、軟化剤の含有量は、その用途により適宜選択でき、通常、ゴム組成物100重量部に対して、最大200重量部、好ましくは最大150重量部、より好ましくは最大130重量部が望ましい。
【0043】
〔老化防止剤〕
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物から製造されたゴム製品は、さらに製品寿命を長くするために、老化防止剤を含有してもよい。また、老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0044】
具体的には、フェニルブチルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−pフェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0045】
これらの老化防止剤は、単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、このような老化防止剤の含有量は、成分(A)100重量部に対して、通常0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7.0重量部、さらに好ましくは0.7〜5.0重量部である。老化防止剤の含有量が上記範囲内であると、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の架橋時における加硫阻害を低減することができ、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生を低減することができる。
【0046】
〔活性剤〕
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、必要に応じて、活性剤を単独あるいは2種以上含有していてもよい。活性剤の具体的な例としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン、「アクチングB」(商品名;吉冨製薬株式会社製)、「アクチングSL」(商品名;吉冨製薬株式会社製)などのアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例えば、「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」および「Struktol FA541」(商品名;Schill & Seilacher社製))などのアミン系活性剤;「ZEONET ZP」(商品名;日本ゼオン株式会社製)などの過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例えば、「アーカード2HF」(商品名;ライオン・アクゾ株式会社製))などが挙げられる。これらのうち、「アーカード2HF」が好ましい。活性剤の含有量は、成分(A)100重量部に対して、0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜4重量部である。
【0047】
また、本発明のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でリシノール酸(共)重合体以外のゴム成分を配合することもできる。ゴム組成物全体における本発明の共重合体ゴムの含有量は、好ましくは20重量%以上である。
【0048】
[発泡剤]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、必要に応じて、発泡剤を単独あるいは2種以上含有していてもよい。発泡剤の種類としては、有機発泡剤 又はマイクロバ
ルーンが挙げられ、その含有量としては、ゴム 100重量部に1〜10重量部、好まし
くは1〜5重量部を配合するとよい。発泡剤の含有量をこのような範囲内にすると、より適度な発泡倍率の発泡ゴム 組成物が得られ好ましい。
【0049】
有機発泡剤 は、特に限定されるものではなく、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホ
ニルヒドラジド系化合物等が好ましく、なかでもアゾ化合物がより好ましい。アゾ化合物はアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられ、ニトロソ化合物はN,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等が挙げられ、スルホニルヒドラジド系化合物は、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。また、その他に、p−トルエンスルホニルアジド、4,4′−ジフェニルスルホニルアジド、4,4′−オキシビスベンゾソスルホニルヒドラジド等の有機発泡剤 を用いる
こともできる。これらは単独で若しくは2種以上併せて用いられる。特に好ましくは、加熱上昇、温度によるガス発生量の点から、アゾジカルボンアミドを用いるとよい。
【0050】
また、マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を殻とする微細な中空体である。なお、マイクロバルーンを使用した場合、ポリマー殻が発泡ゴム中に残ることから、本発明では有機発泡剤 を使用することが好ましい。
【0051】
[吸湿剤]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は、カーボンブラック中の水を除去するために、吸湿剤を含有していてもよい。
【0052】
また、吸湿剤の種類としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ4A、ゼオライト、ホワイトカーボン等が挙げられ、これら1種類で使用してもよく、2種類以上で使用してもよい。この中でも、酸化カルシウムが好ましい。吸湿剤の含有量は、成分(A)100重量部に対して、0.5〜15重量部、好ましくは1.0〜12重量部、さらに好ましくは1.0〜10重量部である。
【0053】
[リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の特性]
(i)デュロメーターA(JIS K 6253)
本願発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られる架橋ゴムは、カーボンブラック(B)を多く含むことにより、機械的特性や硬度を向上させることができる。また、参考例1〜6と実施例2〜5とを比較するとわかるように、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られる架橋ゴムは、カーボンブラックが多く含まれる場合であっても、比較的優れた柔軟性(デュロメーターA(JIS K 6253))を維持することができる。
【0054】
また、ゴム架橋体の柔軟性を示す物性であるデュロメーターA(JIS K 6253)の値(A硬度)は、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られる架橋ゴムの用途に応じて適宜調整することができ、所望の値には、下記関係式から算出したカーボンブラックの含有量を調整することで達成できる。
【0055】
【数1】

【0056】
(ここで、Xは、カーボンブラックを含まない場合のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物から得られるゴム架橋体のA硬度であり、通常18〜30である。)
また、本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム組成物は架橋したときに、得られる架橋体のデュロメーターA(JIS K 6253)によるA硬度値が40〜65であることが好ましい。ここで、かかる硬度値は、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物を、160℃で12分間プレスし、厚み1mmの架橋ゴムシートを調製して、この架橋ゴムシートを10枚重ね、1cm厚みとした上で測定される。
【0057】
また、過酸化物系架橋剤に代えてイオウ系化合物を用いることで、上記硬度値を有し、柔軟性と機械的強度に優れるゴム架橋体が得られる。また、このような範囲の硬度値は、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物に含まれる補強剤(B)の含有量(重量比)により
調節され、具体的には、補強剤(B)の含有量を、リシノール酸(共)重合体(A)10
0重量部に対して、通常19〜90重量部とすることで得られる。
【0058】
[リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物は、上記所定重量部のリシノール酸(共)重合体(A)、補強剤(B)およびイオウ系化合物(C)と、必要により配合される上記のような他の成分とから、一般的なゴム配合物の調製方法によって調製することができる。
【0059】
例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類およびロール類を用いてリシノール酸(共)重合体(A)、補強剤(B)およびイオウ系化合物(C)および他の成分を80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、必要に応じてさらにイオウ系化合物(C)単独あるいはイオウ系化合物(C)とともに、加硫促進剤(D)または加硫助剤などを加えて、オープンロールなどのロ−ル類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のゴム組成物
(配合ゴム)が得られる。上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には
、イオウ系化合物(C)、加硫促進剤(D)、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0060】
[リシノール酸(共)重合体ゴム架橋体の製造方法]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体は、上記リシノール酸(共)重合体ゴム組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)等の加熱形態の加熱槽等種々の成形法によって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入して加熱処理することにより架橋して得ることができる。この加熱処理には、HAV(熱空気)、PCM(ガラスビーズ流動床)、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いることができる。また、加熱(架橋)する際の温度としては、一般的に140〜300℃、好ましくは150〜270℃、さらに好ましくは150〜250℃で、0.5〜30分間、好ましくは0.5〜20分間、さらに好ましくは0.5〜15分間加熱する。また、成形、架橋に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物 は通常連続的に成形・架橋される。
【0061】
[リシノール酸(共)重合体ゴム架橋体の用途]
本発明に係るリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体は、上記リシノール酸(共)重合体ゴム組成物を架橋してなることを特徴とするものであり、用途に応じて発泡させてもよい。また、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物は成形加工性に優れ、得られるゴム架橋体は永久歪みが小さく、柔軟性および機械的特性に優れているために、各分野のゴム製品とし
て非常に有用である。リシノール酸(共)重合体ゴム架橋体の用途としては、例えば、タイヤ、履物、ゴムロール、導電性ゴム、コンベヤベルト用カバーゴム、医療用ゴム製品、床材料等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。リシノール酸(共)重合体、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物等の各物性は、以下に従い測定した。
【0063】
〔重量平均分子量〕
リシノール酸(共)重合体の重量平均分子量は、GPCを用いた分子量測定によって、ポリスチレン換算により算出した。
【0064】
以下に、測定に用いた装置および測定条件を以下に示した。
ポンプ:880-PU(日本分光工業(株))
カラム:Shodex K-804L+K-800D(昭和電工(株))
検出器:830-RI(日本分光工業(株))
レコータ゛ー:807IT(日本分光工業(株))
溶離液:クロロホルム (1%エタノールを含む)
測定条件:流速 1.0 mL/min
:注入量 200 μL(2 mg / mL)
:温度 25℃
検量線用標準試料:Special polystyrene standard(ケムコ化学(株))
(Mw = 600,000、Mw = 50,000、Mw = 17,500、Mw = 9,000、Mw = 2,200、Mw = 906)
〔製造例1〕(リシノール酸重合体 P−1の製造)
実施例1および2で使用したリシノール酸重合体(P−1)を、以下のように、攪拌子を備えた容積10mlの試験管を用いてバッチ式に合成した。
【0065】
まず、試験管にリシノール酸メチルエステル(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)500mg、およびBurkholderia cepacia由来の固定化リパーゼ150mg(シグマ
アルドリッチ ジャパン株式会社製、リパーゼPS−C(商品名))を入れ、80℃にて7日間、撹拌反応を行った。ただし、反応系より縮合物(メタノール)を除去するため、試験管上部にはモレキュラーシーブ4Aを充填した管を付して反応を行った。7日間の反応後、得られたリシノール酸重合体粗生成物(固定化リパーゼ含む)に対して、8mlのクロロホルムを添加し、リシノール酸(共)重合体を溶解させた後、濾過することでクロロホルムに対して不溶解である固定化リパーゼを取り除いた。次いで、エバポレーターにてクロロホルムを濃縮し、約1mlの濃厚リシノール酸重合体を調製した。得られたポリマー溶液を貧溶媒であるメタノール中に滴下することで高分子量リシノール酸重合体を沈殿させ、デカンテーションすることによって、目的とするリシノール酸重合体(重量平均分子量52,000)を400mg沈殿物として得た。同様の操作を繰り返すことで、リシノール酸重合体を5g調製した。重合条件および得られたポリマーの重量平均分子量を
表1に示す。
【0066】
〔製造例2〕(リシノール酸重合体 P−2の製造)
実施例3〜5および比較例2で使用されたリシノール酸重合体(P−2)は、触媒として用いた酵素の使用量(酵素量)を変更した以外はP−1と同様の条件で合成して得られた。重合条件および得られたポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
【0067】
〔製造例3〕(リシノール酸重合体 P−3の製造)
実施例6で使用されたリシノール酸重合体(P−3)は、触媒として用いた固定化リパー
ゼPS−C(商品名)を固定化リパーゼPS−D(商品名)に変更した以外はP−2と同様の条件で合成して得られた。重合条件および得られたポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
【0068】
〔製造例4〕(リシノール酸共重合体 P−4の製造)
実施例7で使用されたリシノール酸共重合体(P−4)は、原料として用いたモノマー種を、リシノール酸メチルエステル単独から、リシノール酸メチルエステルと12−ヒドロキシステアリン酸メチルエステルとからなるモノマーブレンド(等モル仕込み比)に変更した以外はP−2と同様の条件で合成して得られた。重合条件および得られたポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
【0069】
〔製造例5〕(リシノール酸重合体 P−5の製造)
比較例1で使用されたリシノール酸重合体(P−5)は、原料として用いたモノマー種を変更した以外はP−1と同様の条件で合成して得られた。重合条件および得られたポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
【0070】
また、参考例1〜6で使用された、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム P−6(参考例1,2)、ブタジエンゴム P−7(日本ゼオン株式会社製、Nipol 1220)(参考例3,4)およびは天然ゴム P−8(参考例5,6)については、それぞれ市販品をそのまま用いた。
【0071】
各ポリマーの特性値を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
[物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法]
以下、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の各物性の測定方法を示す。
【0074】
〔加硫挙動解析:リシノール酸(共)重合体ゴム組成物の未加硫物性〕
測定装置:アルファテクノロジーズ(株)社製
ローターレスレオメーターMDR2000P(MDR2000P)
測定項目:架橋速度tc(90)(分)、JIS K6300−2(2001)に従い160℃におけるtc(90)を測定した。
【0075】
:最大トルクS'max(dNm)、160℃で30分後の最大トルク(S'ma
x)を測定した。
【0076】
:最小トルクS'min(dNm)、160℃で30分後の最小トルク(S'mi
n)を測定した。
【0077】
:Δトルク(dNm)、160℃で30分後の(S'max−S'min)を測定した。
【0078】
以下、リシノール酸(共)重合体ゴム組成物を架橋した際の各物性値(加硫物性)の測定方法を示す。
【0079】
〔デュロメーターA硬度(度)〕
160℃で12分間熱プレスして架橋したゴムシートを被験試料とし、JIS K625
3に準拠し、デュロメーターA硬度計により(JIS A硬度)測定した。
【0080】
〔引張特性〕
160℃で12分間熱プレスして架橋したゴムシートを被験試料とし、JIS K 6251に従って、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、ゴムシートの引張りモジュラスM100%〜M300%(MPa)、破断時の強度TB(MPa)および伸びEB(%)を測定した。
【0081】
〔永久伸び(PS)〕
160℃で12分間熱プレスして架橋したゴムシートを被験試料とし、室温にて100%伸長した状態で24時間保持した後開放し、1時間後の残留歪み量を測定することで求めた。
【0082】
〔低温柔軟性(tanδ-Tg)〕
160℃で12分間熱プレスして架橋したゴムシートから、幅10mm、厚さ2mm、長さ30mmの短冊状のサンプルを調製した。このサンプルを用いて、レオメトリック社製のRDS−IIにより、歪み0.5%、周波 数1Hzの条件で粘弾性の温度分散(−70
℃から25℃)を測定した。tanδ-Tg(℃)はtanδの温度依存性曲線からピーク温度を読
み取ることにより導出した。
【0083】
〔実施例1〕
製造例1で得られたリシノール酸重合体(P−1)5gとSRF級カーボンブラック(旭カーボン(株)社製、旭#50HG)3.5g、酸化亜鉛2種0.25gおよびステアリン酸0.05gを混合した後、ロール温度50℃の3本ロール(株式会社小平製作所社製3本ロール、ロール径:φ63.5 × 150mmL、ロール回転数:後15rpm、中3
8rpm、前90rpm)を用いて、薄通しを7回行うことで配合物を得た。
【0084】
得られた上記配合物を3本ロールに巻きつけ、サンセラーM0.025g、サンセラーTT0.05gおよび粉末イオウ0.075gを混合した後、ロール温度50℃の3本ロ
ール(上述)を用いて、ロール間隙0.1で薄通しを7回行うことでリシノール酸(共)重合体ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性を、上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、測定した。さらに、160℃で、20分間プレスし、厚み1mmのゴムシートを調製した。上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、得られたゴムシートのデュロメーターA硬度、並びに引張特性として100〜300%モジュラス(MPa)、破断点強度TB(MPa)および破断点伸びEB(%)をそれぞれ測定した。また、上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、ゴム弾性評価として永久伸び試験、低温柔軟性の評価として粘弾性試験をそれぞれ行った。評価結果を表2に示す。
【0085】
〔実施例2〕
架橋剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を
表2に示す。
【0086】
〔実施例3〕
使用したリシノール酸(共)重合体をP−1からP−2に変更した以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0087】
〔実施例4〕
カーボングラックの配合量を変更した以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0088】
〔実施例5〕
カーボングラックの配合量を変更した以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0089】
〔実施例6〕
リシノール酸(共)重合体をP−1からP−3に変更した以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0090】
〔実施例7〕
リシノール酸(共)重合体をP−1からP−4に変更した以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0091】
〔比較例1〕
リシノール酸(共)重合体をP−1からP−5に変更した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果をに示す。
【0092】
〔参考例1〕
三井化学(株)社製 X−4010(P−6)100gとSRF級カーボンブラック(旭カーボン(株)社製、旭#50HG)70g、酸化亜鉛2種5.0gおよびステアリン酸1.0gをロール温度50℃の6インチオープンロール(日豊工機株式会社製、ロール回転数:前15rpm、後ろ18rpm)を用いて、ロール間隙0.2mmで丸め通し6回
、薄通しを3回行うことで配合物を得た。
【0093】
得られた上記配合物を6インチオープンロールに巻きつけて、サンセラーM0.25g、サンセラーTT0.5gおよび粉末イオウ1.5gを混合した後、ロール間隙0.2mmで切り替えしを左右3回、丸め通しを6回、さらに薄通し3回行った。混練されたゴム組成物をシート形状に分出し、上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、未架橋ゴム物性を評価した。
【0094】
また、分出ししたシート上配合物を160℃で12分間プレスし、厚み1mmのゴムシートを調製した。上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、得られたゴムシートのデュロメーターA硬度、並びに引張特性として100〜300%モジュラス(MPa)、破断点強度TB(MPa)および破断点伸びEB(%)をそれぞれ測定した。また、上記「物性値(未加硫物性および加硫物性)の測定方法」に基づいて、ゴム弾性評価として永久伸び試験、低温柔軟性の評価として粘弾性試験をそれぞれ行った。評価結果を表3に示す。
【0095】
〔参考例2〕
架橋剤の配合量を変更した以外は、参考例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を参考例1と同様に評価した。結果を
表3に示す。
【0096】
〔参考例3〕
ポリマーをP−6からP−7に変更した以外は、参考例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を参考例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0097】
〔参考例4〕
ポリマーをP−1からP−7に変更し、さらに架橋剤の配合量を変更した以外は、参考例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を参考例1と同様に評価した。結果を3に示す。
【0098】
〔参考例5〕
ポリマーをP−1からP−8に変更した以外は、参考例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を参考例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0099】
〔参考例6〕
ポリマーをP−1からP−8に変更し、さらに架橋剤の配合量を変更した以外は、参考例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性および架橋ゴム物性を参考例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0100】
〔比較例2〕
製造例2で得られたリシノール酸重合体(P−2)5gとSRF級カーボンブラック(旭カーボン(株)社製、旭#50HG)3.5gを混合した後、ロール温度50℃の3本ロール(株式会社小平製作所社製3本ロール、ロール径:φ63.5 × 150mmL、ロー
ル回転数:後15rpm、中38rpm、前90rpm)を用いて、薄通しを7回行うことで配合物を得た。
【0101】
得られた上記配合物を3本ロールに巻きつけ、架橋剤をジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)社製、パークミルD)0.103g(0.38mmol)を混合した後、ロー
ル温度50℃の3本ロール(上述)を用いて、ロール間隙0.1で薄通しを7回行うことでリシノール酸(共)重合体ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物の未架橋ゴム物性を測定した。さらに、170℃で、20分間プレスし、厚み1mmのゴムシートを調製した。得られた架橋ゴム物性を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量が20,000以上であるリシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、補強剤(B)10〜200重量部およびイオウ系化合物(C)0.01〜5重量部を含むことを特徴とするリシノール酸(共)重合体ゴム組成物。
【請求項2】
前記補強剤(B)が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物。
【請求項3】
前記リシノール酸(共)重合体ゴム組成物が、リシノール酸(共)重合体(A)、補強剤(B)およびイオウ系化合物(C)の他に、リシノール酸(共)重合体(A)100重量部に対して、加硫促進剤(D)0.1〜15重量部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム組成物を架橋して得られるリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体。
【請求項5】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とするタイヤ。
【請求項6】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とする履物。
【請求項7】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とするゴムロール。
【請求項8】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とする導電性ゴム。
【請求項9】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とするコンベヤベルト用カバーゴム。
【請求項10】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とする医療用ゴム製品。
【請求項11】
請求項4に記載のリシノール酸(共)重合体ゴム架橋体からなることを特徴とする床材料。

【公開番号】特開2009−235397(P2009−235397A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49168(P2009−49168)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】