説明

リチウムイオンキャパシターの負極被膜及び電極被膜形成用塗料組成物

【課題】本発明は、自動車用やクレーンなど、パワー用途に対応する単位体積あたりの高エネルギー密度と内部抵抗の低減による高出力密度のキャパシターに適するリチウムイオンキャパシターの負極被膜と電極被膜形成用塗料組成物を提供する。
【解決手段】分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物を金属箔上に塗布し、加熱乾燥して被膜化させたリチウムイオンキャパシターの負極被膜であって、前記導電助剤が少なくともケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛の何れかからなり、前記負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、前記負極被膜の比表面積が7〜75m/gの範囲であり、前記負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用やクレーンなど、パワー用途に対応する単位体積あたりの高エネル
ギー密度と内部抵抗の低減による高出力密度のキャパシターに適するリチウムイオンキャ
パシターの負極被膜及び電極被膜形成用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシター(Electric Double Layer Capacitor:EDLC)は容量が大きく、高出力でメンテナンスフリーなどの特長により、自発光式道路鋲、瞬間電圧低下補償装置や太陽電池の平滑化電源、クレーンなどの回生電源、自動車のアイドリングストップ電源などで使用が開始され、今後、更なる拡大が期待されている。また、負極にリチウムイオンのインターカレーション反応を利用するリチウムイオンキャパシター(Lithium- Ion Capacitor:LIC)はEDLCよりエネルギー密度を約4倍高くできるため、高容量化が望まれる産業用や自動車用などの電源としての展開が期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エネルギー密度や出力密度に関し、室温での特性と同時に、低温での特性、特に静電容量が低下することのない改良された蓄電装置を提供することを目的に、負極の50%体積累積径(D50)が0.1〜2.0μmである負極活物質粒子から形成し、さらに負極活物質粒子の全メソ孔容積が0.005〜1.0cm/gで、比表面積が0.01〜1000m/gである炭素材料又はポリアセン系物質を負極とするリチウムイオンキャパシターが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、低温特性、エネルギー密度のさらなる向上及び高出力化が図られた蓄電デバイス用負極活物質を提供することを目的に、コアとなる炭素粒子と、炭素粒子の表面及び/又は内部に形成されたグラフェン構造を有する繊維状炭素との炭素複合体からなり、全メソ孔容積が0.005〜1.0cm/g、細孔径100〜400Åのメソ孔が全メソ孔容積の25%以上を占めるように構成し、さらに炭素複合体の比表面積が0.01〜2000m/gである負極材料、また炭素粒子が易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛及びポリアセン系物質のうちの少なくとも一つからなる負極活物質が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、リチウムイオンキャパシターにおいて高いエネルギー密度、高い出力密度、高い耐久性が得られる負極材料を提供することを目的に、負極活物質にd002の平均格子面間隔が0.335〜0.337nmの黒鉛を使用し、さらに負極活物質には90%体積累積径(D90)と10%体積累積径(D10)の差(D90−D10)≦7.0μmの黒鉛、また50%体積累積径(D50)がD50≦4.0μmであるリチウムイオンキャパシターが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−303330号公報
【特許文献2】特開2008−66053号公報
【特許文献3】特開2008−103596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、自動車用やクレーンなど、パワー用途に対しては単位体積あたりの高エネルギー密度と内部抵抗の低減による高出力密度のキャパシターが要求され、リチウムイオンキャパシターの用途拡大にあたっては、さらなる内部抵抗の低減とコストの低減が重要な課題となっている。
【0008】
黒鉛は、炭素原子からなる六角網面が積層された構造を有し、積層された層間内に規則的にリチウムイオン吸蔵サイトを有する。リチウムイオン電池の負極材料として使用する場合、容量が高く、電圧低下の少ない電池が設計でき、PC用、携帯電話用などの民生用途で広く使用されている。しかしながら、容量が高い結晶性の高い黒鉛ほど被膜内で黒鉛が配向しやすく、出力を必要とする用途には改善が必要であった。またリチウムイオンキャパシターの負極被膜としては微粒子化して使用することが提案されているが、被膜構造の最適化と抵抗値低減の検討が不十分であり、内部抵抗が高く、また容量がばらつくなどの問題があった。
【0009】
黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池の負極形成用塗料としては、バインダーをポリフッ化ビニリデン粉末、媒体をN−メチルピロリドンなどとした有機溶剤系スラリーのタイプがあるものの、リチウムイオン二次電池より検討の浅いリチウムイオンキャパシターにおいては、負極形成用塗料についての検討は殆どされていないものと、本発明者らは考えている。
【0010】
さらに、リチウムイオンキャパシターでは、負極にリチウムイオンをプレドープする必要があるために、負極材料の設計は、リチウムイオン電池用負極材の設計方法とは方向性が異なる。具体的には、内部抵抗の低減と容量の向上が最優先になり、不可逆容量の許容範囲は大きくなる。このため、リチウムイオンキャパシター用負極電極の設計にあたっては、高比表面積化、小粒径化、塗膜構造の最適化など、従来にはない設計が必要になる。
【0011】
リチウムイオンキャパシターを普及化させるためには、キャパシターの容量の向上と内部抵抗の低減を達成する電極被膜を得る必要がある。そこで、本発明の課題は、負極被膜中の構成粒子の粒度、特に被膜の主構成材である黒鉛の粒度を最適化し、電極被膜形成用塗料組成物の塗工条件を最適化し、得られる被膜の膜構造を最適化することによって、単位体積あたりの高エネルギー密度と内部抵抗の低減による高出力密度のキャパシターに適するリチウムイオンキャパシターの負極被膜及び電極被膜形成用塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物を金属箔上に塗工法で塗布した後、60〜180℃の加熱温度で被膜化させたリチウムイオンキャパシターの負極被膜であって、
前記導電助剤が少なくともケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛のいずれかからなり、
前記負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲で、D90粒子径が30μm以下であり、
前記負極被膜の比表面積が7〜75m/gの範囲であり、
負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲であることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの負極被膜とする。
ここで「前記負極被膜中の構成粒子」は、前記負極被膜を主に構成する粒状配合材である黒鉛及び導電助剤を含む粒子を言い、負極被膜を構成する粒子を微細化することにより、リチウムイオンの拡散抵抗が低減し内部抵抗の低減、すなわち、出力の向上に寄与する。また、電被膜形成用ペースト(塗料組成物)の塗工性が被膜の平滑さと密度に影響を及ぼし、被膜の平滑さが優れた負極被膜を形成するために重要な要件となる。
【0013】
また、前記課題を解決するために、本発明は、分散剤を含む水媒体中に、黒鉛及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物を金属箔上に塗布し、加熱乾燥して被膜化させたリチウムイオンキャパシターの負極被膜であって、
前記負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、
前記負極被膜の比表面積が7〜20m/gの範囲であり、
前記負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲であることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの負極被膜とする。
【0014】
また、前記課題を解決するために、本発明は、前記負極被膜のラマン分光スペクトルのR値が0.4〜1.3の範囲であり、Dバンドの半値幅W値が17〜40の範囲である前記のリチウムイオンキャパシターの負極被膜とすることが好ましい。負極被膜構成粒子の中で特に黒鉛粒子の微粒子化により固有の構造が劣化していないことが重要である。
【0015】
また、前記課題を解決するために、本発明は、前記負極被膜の膜厚40μmのシート抵抗値が80Ω以下である前記のリチウムイオンキャパシターの負極被膜とすることが好ましい。内部抵抗を低減するためには電気抵抗を低減することが重要である。
【0016】
また、前記課題を解決するために、本発明は、前記負極被膜の塗膜密度が0.8〜1.2g/cm範囲である前記のリチウムイオンキャパシターの負極被膜とすることが好ましい。リチウムイオンキャパシターの容量を向上するためには塗膜密度を高くする必要がある。前記構成とすることにより、容量と出力がともに優れたリチウムイオンキャパシターが得られる機序による。
【0017】
また、前記課題を解決するために、本発明は、分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物であって、
前記導電助剤がケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛のいずれかからなり、
粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルのR値が0.25〜0.7の範囲であり、
Dバンドの半値幅W値が17〜30の範囲である前記黒鉛と、
ラマン分光スペクトルのR 値が0.2〜1.65の範囲であり、Dバンドの半値幅W値が17〜95の範囲である前記導電助剤とを添加してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの電極被膜形成用塗料組成物とする。
【0018】
また、前記課題を解決するために、本発明は、分散剤を含む水媒体中に、黒鉛及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物であって、
粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルのR値が0.25〜0.7の範囲であり、
Dバンドの半値幅W値が17〜30の範囲である前記黒鉛を添加してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの電極被膜形成用塗料組成物とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリチウムイオンキャパシターの負極被膜を前記のように構成したことにより、リチウムイオンキャパシターの容量向上、出力向上、コスト低減が可能となった。また、負極被膜を構成する活物質材は、黒鉛の微粒子化による粒径と構造の最適化が重要であることから、係る黒鉛の構造を規定することによって最適で安定した品質の負極被膜が得られる。その他の配合材である導電助剤、水溶性分散剤及び水系バインダーの最適配合で高品位なリチウムイオンキャパシター用負極被膜が得られる。更に、本発明に係る負極被膜形成用ペーストは水媒体品であるため作業環境が良くなり、製造コストの低減にも寄与する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の第一の特徴は、主に黒鉛及び導電助剤から構成されるリチウムイオンキャパシターの負極被膜において、負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が 0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲で、D90粒子径が30μm以下で、負極被膜の比表面積が7〜75m/gの範囲で、負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲とする。負極被膜中の粒度分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)による被膜断面を観察する方法により行う。また、事前に負極被膜形成用ペーストを試料対象にして、レーザー回折式粒度分布測定によって粒度分布を特定することが可能であり、係る測定によって特定された粒度分布も本発明の構成粒子の粒度分布として含まれる。
【0021】
10%体積累積径のD10粒子径、すなわち構成粒子の粒子径下限に近い方の値は0.3μm以上、好ましくは0.4μm以上である。D10粒子径が0.3μm未満では、黒鉛の結晶性が低下し、容量が大きく低下することから好ましくない。換言すれば、0.3μm未満の体積基準粒子量は負極被膜中に10%未満とすることが好ましい。
【0022】
いわゆる平均粒子径であるD50粒子径(50%体積累積径)は、0.5〜15μmの範囲、好ましくは1〜7μmの範囲、特に好ましくは1.5〜5μmの範囲である。D50粒子径が0.5μm未満では微粒子が多くなるため、粒子間の接触抵抗が大きくなり、負極被膜の電気抵抗値が上昇するので好ましくない。一方、負極被膜構成粒子の平均粒子径が15μmを越えると粒子径が大きすぎるためにリチウムイオンの細孔内拡散抵抗が高くなり目標とする内部抵抗の電極を得ることが困難となる。
【0023】
また、D90粒子径(90%体積累積径)、すなわち構成粒子の粒子径上限に近い方の値は30μm未満、好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。D90粒子径が30μm以上となると、膜厚60μm以下の塗工においてスジむらなどの塗膜欠陥が生じやすくなり、塗工時の歩留まりを低下させ好ましくない。
【0024】
次に、負極被膜の比表面積は7〜75m/gの範囲、好ましくは7〜50m/gの範囲、特に好ましくは8〜25m/gの範囲である。被膜の比表面積は、容量と出力(内部抵抗)を最適化するのに重要で、比表面積が7〜75m/gの場合に容量、内部抵抗ともに優れた特性を示す。被膜の比表面積が75m/gを超えると、主構成材である黒鉛粒子では構造が劣化し容量低下を引き起こすおそれがある。被膜の電気抵抗値や被膜の密度は、比表面積が増加するほど低下する傾向がある。この傾向から負極被膜の比表面積は7〜75m/gの範囲が好ましい。
【0025】
また、被膜の比表面積は、主構成材の黒鉛粒子の比表面積と相関がある。一方、黒鉛粒子の粒度と黒鉛粒子の比表面積に相関はない。この理由は以下のとおりである。黒鉛粒子をビーズを媒体とした乾式粉砕機で粉砕処理すると、粒子の粉砕と同時に粒子同士の凝集も発生し、粒子径約1μm以下の粒子を得るのは難しくなる。乾式粉砕処理を進めることで一次粒子の集合体からなる比表面積の大きな粒子となってしまうが、このような方法で調整された粒子は粒子径が大きく、比表面積の大きい黒鉛となる。もちろんこのような黒鉛粒子も本発明に使用できる。
【0026】
負極被膜の表面粗さは、0.1〜1.5μmの範囲、特に好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。被膜の表面粗さは、塗工の均一性や得られる被膜の密度及び被膜の硬さに影響する。被膜の表面粗さが1.5μm以上では、被膜の密度が小さくなり容量の低下を招く。また、表面粗さが0.1μm以下の場合は、黒鉛粒子の微細化が進み、固有の構造が崩壊し、容量が低下する。また、被膜中に微細な黒鉛粒子が充填されるために被膜の硬度が高くなりすぎ、電極加工工程のスリット時や捲回時に問題を発生するおそれがある。
【0027】
以上よりペースト粒度をD10粒径が0.3μm以上、D50粒径が0.5〜15μm、D90粒径が30μm以下に規定することは、塗工性能向上、塗膜特性向上、電極特性向上のために重要である。また、黒鉛を用いたリチウムイオンキャパシターの負極被膜としての容量や出力(内部抵抗)を最適化する上で、負極被膜構成粒子の粒度分布と負極被膜の比表面積及び表面粗さが重要である。
【0028】
リチウムイオンキャパシターの高容量と内部抵抗を低減するためには、黒鉛の微粒子化により構造が劣化していないことと、導電助剤が最適に分散されていることが必要であり、被膜としてのラマン分光スペクトルのR値が0.4〜1.3の範囲で、Dバンドの半値幅W値が17〜40の範囲とすることが重要である。被膜は黒鉛と導電助剤及び分散剤とバインダーから構成されるが、本発明者らは、被膜のラマン分光特性が被膜中の黒鉛と導電助剤との配合量、それら粒子の分散状態で変化することを見出し、黒鉛粒子の周辺にどの様に導電助剤が分散しているかを被膜のラマン分光特性で測定し、最適な被膜構成状態を数値化した。
【0029】
すなわち、被膜としてのラマンスペクトルのR値が0.4以下となるのは、使用する黒鉛のR値が小さくなり過ぎるか、導電助剤量が少な過ぎるときに発生する。黒鉛のR値が小さ過ぎる場合、リチウムイオンがインターカラントするサイトが少なくなり、内部抵抗の増加を招く。また、導電助剤量が少な過ぎる場合は、塗膜のシート抵抗が上昇し内部抵抗の増加を招く。逆に被膜としてのラマンスペクトルのR値が1.3以上では、黒鉛の微細化により構造が劣化すると共にエッジサイトが増加した被膜構成になっており、不可逆容量の増加や容量の低下が生じる。すなわち、被膜のラマンスペクトルのR値は、被膜の内部抵抗及び容量と相関があり、0.4〜1.3の範囲であることが重要であり好ましい。
【0030】
一方、Dバンドの半値幅W値が17以下では、黒鉛表面の結晶性がよく規則的な層間が多いことに起因すると考えるが、リチウムイオンの放電時の抵抗が高くなると推定され、内部抵抗が高くなる。逆に、Dバンドの半値幅W値が40以上になると、黒鉛の微細化によりアモルファス化が進行した状態になるので、黒鉛の固有の構造が劣化し、容量の低下を生じる。また、導電助剤量を多くした場合にもDバンドの半値幅W値が40以上になるが、黒鉛の配合量が減少することになり容量の低下を招く。
【0031】
負極被膜の膜厚40μm時のシート抵抗値は80Ω以下であり、好ましくは10〜60Ω、さらに好ましくは15Ω〜40Ωの範囲である。負極被膜の内部抵抗を低減するには電気抵抗を低減する必要がある。黒鉛の結晶構造の最適化と導電助剤の配合量を最適化することにより、シート抵抗値が10Ω程度になることが分かっている。黒鉛の結晶性を上げて、粒度を大きくし、さらに導電助剤の配合量を増加することによりシート抵抗値を10Ω以下にすることを達成できるが、内部抵抗の上昇及び容量低下を招く。また、黒鉛の微細化、比表面積の増加などによりシート抵抗値が上昇するが、80Ω以上になると、電気抵抗が高くなり過ぎ内部抵抗を低減する効果が認められない。
【0032】
さらに、容量の向上には被膜密度が高いことが必要で、本発明に基づく被膜形成用ペーストを塗布し、乾燥後の被膜の密度は0.8〜1.2cm/gの範囲であることが必要で、好ましくは0.95〜1.2cm/gの範囲である。以上、負極被膜の特性値について述べてきたが、これらを達成する個々の因子は、用いる材料に起因する。すなわち主に黒鉛からなる構成粒子のD10粒子径は0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μm、D90粒子径が30μm以下の範囲である。この点は負極被膜の特性値と同じである。
【0033】
黒鉛粒子のラマンスペクトルにおけるR値は0.25〜0.7、W値は17〜30の範囲である。この要件は、活物質の構造を規定したもので、微粒子化によりR値、W値は増加することとなるが、この範囲においては容量の低下がなく問題が認められない。なお、特に好ましくは黒鉛のD10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が1〜8μmの範囲、D90粒子径が15μm以下で、ラマンスペクトルにおけるR値が0.25〜0.6、W値が18〜28の範囲である。
【0034】
また、導電助剤としてラマン分光スペクトルのR値が0.2〜1.6の範囲で、Dバンドの半値幅W値が17〜95の範囲のケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛のいずれかを用いることが好ましい。ケッチェンブラックは、R値が1.5〜1.6、W値が68前後の構造を有し、黒鉛化が進んだ中空のカーボンブラックであると言える。アセチレンブラックはR値が1.0〜1.1、W値が90前後の構造を有する。また、導電助剤で用いる黒鉛はD50粒子径が4μm前後で結晶性が良く、R値が0.25前後、W値が18前後のものが高い導電性を示すことから好ましい。
【0035】
導電助剤の配合量は最少に留めて低い抵抗値にすることが重要であるが、最少の添加量にするためには嵩密度が低く、微粒子材料が効果的である。嵩密度の最も低いケッチェンブラックは最少の配合量で効果が得られる。アセチレンブラックは、ケチェンブラックよりは嵩密度が高いが、他の配合材料との相性が良く、高密度の被膜が得られる。導電助剤としてケッチェンブラック、アセチレンブラックを配合した負極被膜は、黒鉛活物質粒子間の接触抵抗を低減でき、電気抵抗が低減している。また、結晶性の良い鱗片状黒鉛は嵩密度が低く導電性もよいことから、導電助剤としても効果がある。
【0036】
さらに、分散剤が、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はアンモニウム塩であり、またバインダーが、スチレンブタジエン系エラストマー又はアクリル系エラストマーのいずれかのエマルションであることも有効である。カルボキシメチルセルロースとしては、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩やカルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩が代表的である。本発明においては、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はアンモニウム塩を用いる。特に、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を用いた場合は、黒鉛や導電助剤の分散安定性がよく、ペースト(塗料組成物)が一部乾燥しても、水への再溶解性が良く、塗工前の攪拌により未溶解物の無い塗料が作製できる。
【0037】
バインダーとしては(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系エラストマー、スチレン・ブタジエン共重合体などのスチレンブタジエン系エラストマー、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリブタジエンなどが使用できる。バインダーはそれぞれ単体で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらを調整することにより、塗布・被膜化後の塗膜密度の向上、膜構造の最適化が可能となり、容量の向上、内部抵抗の低減が達成できる。さらに、黒鉛粒子を微細化したことにより、塗工時の塗布ムラなどの欠陥が改善でき、歩留まり向上に寄与できる。なお、水系のペーストによりペースト製造時、塗工時の作業環境及び安全性に優れ、また導電助剤、分散剤、バインダーの最適化により、低抵抗で密着性の良い被膜が得られる。
【0038】
また、ペースト(塗料組成物)の粘度構成としては、25℃におけるB型粘度計による30rpmの粘度値が600〜2400mPa・s 、60rpmでの粘度値が500〜2300mPa・sとすることが好ましい。塗工法で負極被膜を形成する場合、被膜の膜厚は20μm〜80μm程度に設定するのが一般的で、塗工機としてはダイコーター、ブレードコーター、コンマコーター、リップコーター、リバースロールコーターなどが用いられるが、最近は、リチウムイオン電池用電極の形成に用いられるダイコーターが用いられている。ダイコーターは、膜厚が均一な被膜が形成でき、また回路的な要素のパターン塗工も可能である。ダイコーターを用いてすじムラなどの塗膜欠陥が少なく、均一な塗工を行うためには、特にD90粒子径を小さくし、ダイのエッジやマニフォールド内に粗粒子や異物が付着すること、又は詰まりの発生を防止する必要がある。この点では、本発明の第一点目でも規定したように、被膜のD90粒子径を30μm以下に調整することが必要である。なお、回転子30rpmでの粘度が600〜2500mPa・s 、60rpmでの粘度が500〜2300mPa・sにすることで、ダイコーターでの均一塗工が可能になる。
【実施例】
【0039】
以下に、この発明の実施例について説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(塗料及び試料の調整)
カルボキシメチルセルロース(CMC)を純水に溶解した水溶液中に粒子径、比表面積、構造の異なる黒鉛粒子と、導電助剤としてケッチェンブラック、アセチレンブラック又は黒鉛を配合してボールミルで3時間分散させた。その後アクリル系エマルジョン又はSBR系エマルジョンを所定量配合し30分間攪拌した。検討に用いた配合を表1及び表2に示す。
【0040】
(塗料の粘度評価)
作製した塗料の粘度をBL型粘度計を用いて、回転数30rpm、60rpm時の粘度を測定した。測定温度は25℃とした。粘度の測定に際しては、塗料をプロペラ型の攪拌翼を有する攪拌機を用い、1000prmの攪拌条件で30分間攪拌してから行った。
【0041】
(塗料の粒度分布)
レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した。屈折率は2.00−0.1iを用いた。
【0042】
(被膜の作製)
作製した塗料を、ギャップ100μmのブレードコーターを用い、厚さ19μmの銅箔上に塗工した。その後、100℃で30分間の熱風乾燥後、75℃で30分間、真空乾燥機で乾燥し、厚さ40μmの電極被膜を作製した。
【0043】
(被膜、活物質の比表面積)
作製した電極被膜及びペースト材料として用いた黒鉛粒子や導電助剤粒子の比表面積及び細孔構造は、Micromeritics社製ASAP2010を用い、窒素吸着によりBET法で測定した。
【0044】
(被膜の表面粗さ)
表面粗さ形状測定機を用いて、作製した電極被膜の中心線平均粗さを計測した。測定の際、触針径は2μmを用い、測定速度0.3mm/s、測定長さ4mm、カットオフ値0.8mmとした。
【0045】
(被膜、活物質のラマン分光特性)
作製した電極被膜及び炭素材料の表面構造の分析手法として、ラマン分光法(Renishow社製のNRS-2100)により、Gバンド(1580cm−1付近)とDバンド(1360cm−1付近)のピークの面積比であるR値(I1360/I1580)を求めた。測定には波長514nmのアルゴン(Ar)レーザー光を用いた。面積の測定にあたっては、Gバンド近傍とDバンド近傍の2つのピークの曲線の形がローレンツ関数に近似すると仮定し、これにフィッテイングさせて書き直し、面積比よりR値を求めた。
活物質のラマン分光特性は、使用する活物質をスライドグラス上に適量採取し、上記方法でR値を測定した。
【0046】
(被膜の密度評価)
乾燥後の電極をφ13mmの大きさに打ち抜き、電極重量を測定した。下地の銅箔の重量を差し引き、被膜の密度を算出した。
【0047】
(被膜のシート抵抗値)
作製した電極被膜を四端針法にてシート抵抗値を測定した。
【0048】
(容量、内部抵抗評価)
フェノール系のアルカリ賦活活性炭を活物質とする正極活物質ペーストを40μmのアルミニウム箔にブレードコーターを用いて塗布・造膜化し、被膜厚さ100μm、φ20mmの正極電極を作製した。
次に、黒鉛を活物質とする負極活物質ペーストをブレードコーターで厚さ19μmの銅箔に塗布・造膜化し、被膜厚さ50μm、φ20mmの負極電極を作製した。
なお、正極・負極電極の造膜化は以下のとおりである。
ペースト塗工膜の乾燥は100℃で30分熱風乾燥後、減圧下120℃で12時間乾燥後した。その後、アルゴン雰囲気のグローブボックス中に移し、黒鉛による負極へのリチウムイオンドープを行った。まず、φ20mm黒鉛電極にセパレータを介してリチウム金属を重ね、単極セルを作成した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/プロピレンカーボネート(PC)(但し、容量比がEC:DMC:PC=30:30:40である)からなる溶媒に溶質の六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が1.2モル/リットル(M/l)のモル濃度で溶解されたものを使用した。負極への充電は充電容量が350mAh/gになった時に停止し、半充電の負極を作成した。その後活性炭よりなる正極を半充電の負極とセパレータを介して対向させ、試験用セルを作成した。
測定温度25℃、放電電流20mAとして、充電電圧が3.8Vから2.2Vに低下するまでの静電容量(F)を求めた。また、放電電流20mA時の容量[mAh/g]を求めた。さらに、放電電流20mAのときの初期の電圧低下より内部抵抗(Ω)を求めた。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例は分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用ペーストを用いた例である。容量の向上と内部抵抗の低減のためには黒鉛の適性構造と導電助剤の組合わせが重要である。実施例は、黒鉛の物性を比表面積12〜150m/g、ラマン分光分析のR値0.25〜0.70、W値17〜30と変化させて検討した結果を示す。
【0051】
比較例1は活物質として難黒鉛化炭素を用いた例である。難黒鉛化炭素は、内部抵抗が低く、容量も比較的高くリチウムイオンキャパシタ用負極として使用されている。しかし、さらなる容量向上や、コスト低減のためには、黒鉛を負極で用いることが重要であり、黒鉛を用いて内部抵抗を低減するための検討を行った。比較例1、3及び実施例1から4は被膜中の構成粒子の粒度分布であるD10粒子径、D50粒子径及びD90粒子径を変化させ、また被膜の比表面積及び表面粗さの最適化を検討した結果を示す。
ここで、粒子径と比表面積とは必ずしも相関がなく、微粒子が造粒又は凝集して、粒子径が大きくなった黒鉛も使用できる。
【0052】
比較例2は、被膜構成粒子のD50粒径が8.2μmであって発明の範囲内にあるが、塗膜比表面積が5m/gと小さく、発明の範囲外にある。また塗膜のラマン分光分析のR値は0.38、W値が17.5で何れも小さく発明の範囲外にある。すなわち黒鉛の結晶性がよく、黒鉛のエッジ面の少ない構造となり、内部抵抗が6.3Ωと高い。また、比較例3はD50粒径が18μmと大きく発明の範囲外にある例であり、被膜厚さが60μmの塗工性において、塗布ムラが大きく、塗布品質及び生産性の点で問題がある。また、被膜の平滑度(塗膜表面粗さ)が2.1μmであり、塗膜の均一性の点で信頼性に問題がある。
【0053】
実施例1〜4は被膜のD50粒径が1〜15μm、比表面積が7〜75m2/gの例であるが、塗布性がよく、また、被膜の平滑度(塗膜表面粗さ)は0.1から1.4μmであり、均一な被膜を形成できる。さらに容量、内部抵抗ともに良好な結果を示す。
【0054】
また、実施例1はD10粒子径が0.3μm、D50粒子径が1.0μm、D90粒子径が2.1μmで、被膜の比表面積が17m/gの例である。均一に分散されているため、塗膜表面粗さは0.1μmであり、平滑な被膜を形成でき、薄膜電極の形成が可能である。微粒子化が進んでいるため塗膜密度は0.81g/ccで低下傾向があるため、容量は22mAhで低下傾向であるが内部抵抗が低い特徴がある。
【0055】
また実施例2は被膜の比表面積が7m/ccで下限の例であるが、黒鉛の結晶性が良いため容量は25mAh/gと高い値を示すが、内部抵抗が高く、本発明の上限である。
【0056】
実施例3は被膜の比表面積が75m/gの例であるが、内部抵抗が低く良好である。しかし、黒鉛の結晶構造の劣化があり、目標容量をクリアしているものの容量の低下が確認できる。
【0057】
実施例4は被膜のD50粒径が15μmであり、比表面積が47μmの例である。微粒子の凝集でD50粒子は大きくなっているが、被膜の比表面積が大きく内部抵抗、容量ともに良好であった。60μmの膜厚においても塗膜の平滑度は1.4μmであり、塗布ムラがなく問題は認められなかった。
【0058】
実施例1〜4で示したが、分散剤としてはCMC−Na、CMC−NHが使用でき、バインダーとしてはSBR系エラストマー又はアクリル系エラストマーのエマルジョンが使用可能である。
【0059】
以上の結果より、負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.8〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下で、該負極被膜の比表面積が7〜75m/gの範囲で、該負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲であることが重要でることが確認できた。
【0060】
【表2】

【0061】
表2は、活物質として黒鉛を用い、導電助剤としてアセチレンブラック、ケッチェンブラック及び黒鉛を用いて被膜構造の最適化について検討した実施例と、発明の範囲外の材料を用いた比較例を示す。
比較例4は、負極被膜中の構成粒子の微細化を進めた例である。活物質としての黒鉛をD50粒径が0.7μmになるまで微粒子化を進めることにより塗膜密度は0.79g/ccまで低下しており、容量も21mAh/g以下になった。
【0062】
比較例5は導電助剤としてケッチェンブラックを用い、粘度の高い例を示す。30rpmの粘度が2550mPa・s、60rpmの粘度が2400mPa・sのペーストは、塗料の広がりが低下し、60μmの均一被膜の形成が難しいことを確認した。
また、嵩密度の低いケッチェンブラックの配合量が多いため、塗膜密度の低下をきたし、容量が低下することを確認した。塗膜のラマン分光分析のR値及びW値はケッチェンブラックを増加させることで増大する。本実施例の塗膜はR値が1.4、W値が41であるが、塗膜構造の最適化のためにはR値、W値を本値よりも小さい数値の範囲に設定する必要があることが確認された。
【0063】
実施例5は導電助剤としてアセチレンブラック、ケッチェンブラックを用い、シート抵抗値の低減を図った例である。塗膜密度は0.82まで低下したが、シート抵抗は20Ωまで低減でき、容量、静電容量、内部抵抗ともに良好な結果が得られた。
【0064】
また、実施例6は実施例3と同様に活物質として比表面積の大きな黒鉛を用いた例であるが、結晶性の良い黒鉛助剤を用いて電気抵抗値の低減を検討した例である。実施例3と比較し内部抵抗は高いものの、容量が高くなり良好な結果を示した。
【0065】
実施例7は導電助剤を用いず活物質として黒鉛を用いて被膜を形成した例である。被膜の比表面積を20m/gに抑えたために、被膜のシート抵抗は80Ωになり、内部抵抗が5Ωで容量も良好であった。
【0066】
比較例6は被膜の比表面積が85m/gの例である。内部抵抗は3.5Ωで良好であるが容量が20mAh/gまで低下し、黒鉛の結晶構造の劣化が進んでいる。
【0067】
以上のようにリチウムイオンキャパシター用負極電極は、比表面積やラマン分光特性で塗膜構造を規定し、また使用材料の構造を規定することで容量、内部抵抗に優れた、負極被膜が得られることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物を金属箔上に塗布し、加熱乾燥して被膜化させたリチウムイオンキャパシターの負極被膜であって、
前記導電助剤が少なくともケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛のいずれかからなり、
前記負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、
前記負極被膜の比表面積が7〜75m/gの範囲であり、
前記負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲であることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの負極被膜。
【請求項2】
分散剤を含む水媒体中に、黒鉛及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物を金属箔上に塗布し、加熱乾燥して被膜化させたリチウムイオンキャパシターの負極被膜であって、
前記負極被膜中の構成粒子の粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、
前記負極被膜の比表面積が7〜20m/gの範囲であり、
前記負極被膜の表面粗さが0.1〜1.5μmの範囲であることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの負極被膜。
【請求項3】
前記負極被膜のラマン分光スペクトルのR値が0.4〜1.3の範囲であり、Dバンドの半値幅W値が17〜40の範囲である請求項1又は2に記載のリチウムイオンキャパシターの負極被膜。
【請求項4】
前記負極被膜の膜厚40μmのシート抵抗値が80Ω以下である請求項1〜3の何れかに記載のリチウムイオンキャパシターの負極被膜。
【請求項5】
前記負極被膜の塗膜密度が0.8〜1.2g/cmの範囲である請求項1〜4の何れかに記載のリチウムイオンキャパシターの負極被膜。
【請求項6】
分散剤を含む水媒体中に、黒鉛、導電助剤及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物であって、
前記導電助剤が少なくともケッチェンブラック、アセチレンブラック及び黒鉛のいずれかからなり、
粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルのR値が0.25〜0.7の範囲であり、
Dバンドの半値幅W値が17〜30の範囲である前記黒鉛と、
ラマン分光スペクトルのR 値が0.2〜1.65の範囲であり、Dバンドの半値幅W値が17〜95の範囲である前記導電助剤とを添加してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの電極被膜形成用塗料組成物。
【請求項7】
分散剤を含む水媒体中に、黒鉛及びバインダーを含有してなる電極被膜形成用塗料組成物であって、
粒度分布は、D10粒子径が0.3μm以上、D50粒子径が0.5〜15μmの範囲、D90粒子径が30μm以下であり、且つ、ラマン分光スペクトルのR値が0.25〜0.7の範囲であり、
Dバンドの半値幅W値が17〜30の範囲である前記黒鉛を添加してなることを特徴とするリチウムイオンキャパシターの電極被膜形成用塗料組成物。


【公開番号】特開2010−114206(P2010−114206A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284445(P2008−284445)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】