リチウムイオン再充電可能電池セル用添加剤
本発明のリチウム最充電可能電池セルは、構造化シリコン、即ちアノードはシリコンファイバ又は粒子を含む複合アノードを持つリチウムイオンセルの電解質にビニレンカーボネート(VC)及び場合によりフルオロエチレンカーボネートを添加するものである。当該添加により前記セルのサイクル性能に大きな改良が得られる。電解質の全量に基づき、VC含有量は3.5から8重量%の範囲が、最適であることが見出された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン再充電可能電池セル、該セルに使用する電解液及び特にある量の添加剤を含む電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン再充電可能電池セルは現在ではカーボン/グラファイト系アノードを使用する。グラファイト系アノード電極を含む従来のリチウムイオン再充電可能電池セルは図1に示される。電池は単一のセルを含み得るが1以上のセルを含んでもよい。
【0003】
電池セルは一般的に、アノードとして銅集電体10及びカソードとしてアルミニウム集電体12を含む。これらは外部で負荷又は適切に再充電電源に接続される。留意すべきは、本発明で使用される用語「アノード」及び「カソード」とは負荷の設けられる電池の内容で理解されるべきものであるということである。即ち、用語「アノード」とは電池の負極を、又「カソード」とは電池の正極を意味する。グラファイト系複合アノード14は前記集電体19に重なり、リチウム含有金属酸化物系複合カソード層が集電体12に重なる。多孔性プラスチックスペーサー20が該グラファイト系複合アノード層14及びリチウム含有金属酸化物系複合カソード層16の間に設けられている。液体電解質材料が該多孔性プラスチックスペーサー20、複合アノード層14及び複合カソード層16内に分散されている。ある場合には、多孔性プラスチックスペーサー又はセパレーター20はポリマー電解質材料に置き換えられ、かかる場合にはポリマー電解質材料25は、複合アノード層14及び複合カソード層16内に存在する。
【0004】
電池セルが完全に充電された際、リチウムはリチウム含有金属酸化物から電解質を経てグラファイト系アノードへ移動されてグラファイトと反応してリチウム炭素化合物、通常LiC6を生成する。前記グラファイトは、複合アノード層内で電気化学的活性物質であり、理論上最大容量として372mAhg−1を持つ。疑問を避けるために、用語「活性物質」とは、電池操作の際に、リチウムイオンが挿入されかつ排出される、全ての物質を意味する。
【0005】
シリコンがグラファイトの代わりに活性アノード物質として使用され得ることは知られている(例えば、Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries, M. Winter, J. O. Besenhard, M. E. Spahr, and P.Novak in Adv. Mater. 1998, 10, No. 10 and Nano- and bulk-silicon-based insertion anodes for lithium-ion secondary cells, U. Kasavajjula, C. Wang and A.J. Appleby in J. Power Sources 163, pp1003-1039,
2007を参照)。シリコンが、リチウムイオン再充電可能セルで活性アノード物質として使用される場合には、現在使用されているグラファイト系に比較して非常に高い容量を与えることができるであろうということが一般的に考えられている。結晶性シリコンは、電気化学的セル内にリチウムと反応して化合物Li21Si5へ変換され、これは理論上最大容量4200mAh/gを持つ。しかしいくつかの異なるLi−Si合金が存在し、これらはリチウム挿入により生成され、例えば、温度、結晶状態、充電電圧及び充電速度に依存する。例えば、室温では、最大容量は3600mAh/gとなりこれは合金Li15Si4に相当する(“Structural changes in silicon anodes during lithium insertion/extraction”, M.N. Obrovac and Leif Christensen, Electrochem. & Solid State Lett., 7, A93-A96, 2004)。従って、グラファイトがリチウム再充電可能電池において交換され得るとすると、単位質量当たり、単位容積当たりの貯蔵エネルギの相当な増加が達成されることとなる。残念なことは、Li−イオンセルのシリコンアノード材料は、充電及び放電の際に、電池の充電段階及び放電段階においてリチウムイオンが挿入及び除去されることに伴う大きな容積変化を示すことである。完全にリチウム化されたLi−Si合金の容量は、合金化されていない場合に比べて3−4倍大きくなる。この変化はカーボン系アノードで見られる変化よりもずっと大きい。かかる膨張及び縮小の結果として、それぞれのサイクルでシリコン材料は機械的分解され及び電気的に分離され、その結果電極は短いサイクル寿命となる。
【0006】
膨張及び縮小間にアノード活性物質の構造的破壊の可能性は、Li−Si合金相が充電−放電サイクル間に共存が許容される場合にはさらに増加され得る。最初のアノード材料が結晶性シリコンであり、リチウムが挿入される初めの充電サイクルの際に結晶構造を失いアモルファス合金となる。このアモルファス段階で前記アノードが脱リチウムされると(即ちセルが放電すると)、その後シリコンアノードはアモルファスのままとなる。しかし、シリコンアノード材料が完全にリチウム化されると、アノード電位はゼロに近くなり、結晶Li15Si4相が形成される。放電(脱リリウム)では、この結晶性合金相はアモルファスLi−Si合金に変換されて戻る。この結晶相は最大の充電容量を持つけれども、この形成は避けることが好ましい。というのは連続するサイクルにおいて結晶からアモルファスへの繰り返される転移からアノードに追加の応力が生じるからである。結晶相の形成は、充電の際のシリコンアノード材料への過剰の充電を避け、アノードの電圧を制限することにより防止され得る(即ち、より低い電圧を超えて充電されることを許容しないということであり、このより低い電圧は、とりわけ内部セル抵抗に依存するが通常は15−50mVである)。シリコンアノード材料の充電レベルに限定を設定することはまた、アノードへの機械的応力を制御し、シリコン材料はひび割れ(クラッキング)することを最小にする。この理由で、シリコンを、シリコン1g当たり3400mAhを超える充電はしないことが好ましく、最も好ましくは2500mAh/g以下に上限を設定することである。これは、シリコンの全量が活性物質とした理論上の最大値の、80%未満の充電及び好ましくは60%未満の充電に相当するものであり、このような割合はまた、シリコン及び一以上の他の活性物質(例えば、例えばカーボン)との混合物にも適用され得る(カーボンの理論上最大値は372mAh/gでありシリコンでは4200mAh/gである)。
【0007】
セルの性能に及ぼす他の因子は、シリコン表面上の固体電解質界面(SEI)層の形成である。最初シリコン材料の表面は薄い自然酸化膜があり、これは低導電性を持つ。最初の充電において、この層は、SEI層で置き換えられる。SEI層はより高いイオン伝導性を持ち、電解質と溶媒の還元との反応から形成される。SEI層は種々の異なる生成物からなる。例えば、Li2CO3、LiF、Li2O、リチウムアルキルカーボネート、ポリマー性炭化水素などである。それぞれの生成物は、充電の異なる段階で生成し始め、アノード電池に依存する。いくつかの反応を以下に例示する。
RO.CO.OR’+2Li+2e−→ROLi(s)+R’OLi(s)+CO(g)
RO.CO.OR’+2Li+2e−→Li2CO3(s)+R.R’(g)
LiPF6⇔LiF(s)+PF5
Li2CO3(s)+PF5→2LiF(s)+POF3CO2(g)
POF3+nLi+ne−→LiF(s)+LixPOFz(s)
ここでR及びR’は一般的にアルキル基;RO.CO.OR’はリチウム塩(例えばLiPF6)の溶媒をあたえるための電解質の一部としてセル中に存在する。容量変化に耐える良好なイオン伝導性を持つ安定なSEI層はセルの適切な作用に不可欠であり、この意味で、いくつかのSEI生成物は他のものよりもずっと好ましい。例えば、SEIのひとつの好ましい成分は一般的に、Li2CO3であると考えられている。
【0008】
SEI生成の欠点は、それがリリウム及び電解質を消費するということであり、システム中に留まり、セルの充電容量へ寄与することを抑制する、ということである。過剰なSEI形成は、イオン、抵抗値を増加させセルの性能を落とすこととなる。従って、シリコンアノード材料の表面領域及び表面領域体容積比率を制御することが好ましい。最初のサイクルの後、サイクル間でのシリコンの膨張、縮小の繰り返しはSEIにひび割れを起こす可能性があり、これにより新たなシリコン表面が暴露されてよりSEI層の生成(さらなる液電解質及びリチウムの消費)へと導くこととなる。これは、セルの充電/放電効率を低下させ、セルを乾固させてしまいサイクル寿命を低以下させることとなる。ひび割れは通常、充電中の低アノード電圧で生じ(容積変化が最大)、この点で非常に多くのSEI生成物が暴露された表面で一時に形成される可能性がある。このことが低品質のSEI層を形成させること、及びこれを避けるためには他のものよりも好ましいSEI生成物を持つことが望ましい、ということが考えられている。
【0009】
SEI層の主部分は最初のサイクルで形成されるということ、及びこのプロセスが、通常初期のサイクルで見られる不可逆容量かつ低充電効率の原因である、ということは理解されるべきである。続くサイクルでは、シリコンがひび割れにより暴露される場合には新たなSEI領域が継続的に形成される。また、最初のSEI層がひび割れか破損され場合には、このプロセスが、リチウムの作動損失の原因であり、かつ作動充電効率を決定するものである。最初のSEI層の品質は、その後のサイクルでの新たなSEI形成の品質に大きく影響する。好ましくはSEI層は次の性質を有するものである。
・高いイオン伝導性
・低い導電性
・比較的薄い
・安定
・フレキシブル−シリコンが膨張する際に伸び、収縮する際に縮むことができる(ひび割れが多いほど、SEIがより生成されリチウムが消費される)
SEI形成プロセスは電解質添加剤の使用により影響され得る。ビニレンカーボネート(VC)、ハロゲン化環状カーボネート(例えばフルオロエチレンカーボネート(FEC)及びジフルオロエチレンカーボーネート(DFEC)など))、CO2、シリルエステル(例えばスルトン及びリン酸及びホウ酸のエステル)などのビニル基を含む環状カーボネートが、電解質添加剤として使用されている。
【0010】
電解質への全ての添加材は電解質の性質へ悪影響を与えるべきではない。電解質は添加剤の添加により、及び添加剤の添加と共に悪影響を受ける可能性があり、従って電解質は、該添加によりリチウムを完全に消費するものであってはならず、
・高いイオン伝導性を維持し、
・粘性は高すぎず、
・セルの温度で安全に操作され、
・電気化学的にカソード材料と適合性があり(SEI層はカソード層にも形成され、カソード性能が低下することは望ましくない)
添加剤の濃度は、効果的である一方で電解質の作用及び特に上記性質をいくからでも損なうものであってはならない。
【0011】
ビニレンカーボネート(VC):
【0012】
【化1】
は、グラファイト アノードセルについて、セルの充電及び放電性能を改良するための電解質添加剤として知られている。例えばUS7862933,JP04607488及びJ. Electrochem. Soc., 156(2), A103-A113 (2009)を参照すること。これ(VC)はグラファイトアノード上のSEI層の組成又は性質を変更するものであり、シリコン系アノード上のSEIの組成又は性質とは完全に異なるものであると考えられている。通常グラファイトアノードを持つセル中の電解質のVC含有量は約2重量%である。
【0013】
フルオロエチレンカーボネート(FEC):
【0014】
【化2】
は、電池電解質への添加剤として知られている。例えば、US7862933,US2010/0136437,JP04607488,JP2008234988及びUS2007/0072074を参照のこと。
【0015】
添加剤としてのシリル、ボレート及びホスフェートエステルを含む電解質については、JP 04607488, JP 2008234988及びUS 2010/0136437に開示されている。
【0016】
さらにアノード材料の構造がSEI層形成に大きく影響する。本発明は構造化されたシリコン材料に関するものであり、これは開いた構造(即ち、物体中の空間を含む)を有し、SEI層の成長を可能とし、かつ充電の際にシリコン含有アノードの膨張(即ち、アノードのリチウム化)を可能とするものである。かかる構造化シリコンからなるアノードの多孔度(porosity)は比較的高く、例えば、>30%容積多孔度又は、>40%である。かかる開いた構造は、粒子自体の構造からもたらされるものであり、例えば構造化エレメントを持つものであり得る。例えば、ピラー又は類似の突出構造であり、その表面には前記エレメント間に空間を与え、それによりSEIの成長及びリチウム化の際のシリコン膨張を可能にするものである。他の実施態様では、粒子の構造はその中にボイドを含むことができるものであり、同様の作用を奏する。又は粒子は次のように形状化されているものである。即ち、粒子間に空間があり、SEI成長及び、アノードの集電体状に堆積された際にリチウム化の際のシリコンの膨張を可能とする、形状である。かかる粒子は一般的には長い形状であり、アスペクト比(最初及び最長寸法の)が少なくとも5、場合により少なくとも10例えば少なくとも25である。かかる構造は単純な(即ち、構造化されていない)シリコン粒子又は膜よりもより複雑な表面形態(morphology)を持ち、表面で多くの鋭い角や変化を持ち、このために薄くてフレキシブル(弾性)な、非多孔性のSEI生成物コーティングを全暴露シリコン表面に形成することが困難となる。構造化シリコンから形成される物体の多孔性は該物体中に生成されたボイド空間を持つ可能性を増加し、これにより電解質の狭いアクセス通路を持つこととなる。従って、使用される全ての電解質の粘度が、電解質がかかるボイド区間に出入できない(これはかかる空間が利用不可能となる)ほどの高くならないようにすることが重要である。
【0017】
Chanらは、Journal of Power Sources 189 (2009) 1132-1140で、添加剤なしの標準の電解質中でリチウム化の際の、シリコンナノワイヤ上へのSEI生成物層の形成につき研究した。かれらが見出したことは、SEI層の形態は、薄膜アノード状で通常見られるものとは大きく異なるものであり、不均一で、低量のLiF及びいくらかの粒子が、シリコンの表面に接着されるというよりはアノード表面のナノワイヤに隣接して蓄積されている、ということである。このことは、高度に構造化され、多孔性シリコン材料についてのSEI層の形態及び組成は、他のシリコンアノードで添加剤が既に使用されてきたものとは非常に異なる、ということを示す。
【0018】
本発明の電極で使用される構造化シリコン材料は、従って、上で記載された性質を達成するために添加剤及び添加剤濃度範囲を見出すという特定の問題を提供する。前記の説明から、構造化電気活性材料特に構造化シリコン材料の表面に安定したSEI層を形成されることのできる電解質溶液の必要性がある、ということは理解されるであろう。
【0019】
関連する従来技術には以下のものが挙げられる。
US-7 476 469には、再充電可能(二次)電池が開示され、これはアノード、リチウムコバルト酸化物カソード及び非水溶性電解質の介在部からなる。アノードは、とりわけ、アモルファスシリコン薄膜層であり、集電体状に分散され通常1−20μm厚さである。この明細書にはまた、結晶性シリコンの使用が記載されてはいるがこの使用については例示されていない。電解質は環状又は鎖状カーボネートを含み、これにはエチレンカーボネートも含まれる。電解質はまた、ビニレンカーボネートも含み得る。これは充電放電サイクル性能を改善すると言われている。ビニレンカーボネートの量は、電解質の他の成分の0.5から80容積%であると説明されている。しかしこの引用の教示は使用されたアノード材料にタイプに限定がある(アモルファスシリコンの薄膜又は、nmサイズの顆粒状微細結晶性シリコン)。
【0020】
US-2009/0053589には、電池セルが開示され、これはカソード、アノード及び電解質を含む。アノードは活性物質として粉末状又は薄膜状の特別の合金であり、例えばシリコン、スズ及び遷移金属の合金で、種々のミクロ結晶性及びアモルファス相であり、これらは高価なものである。ミクロ結晶材料は、結晶子サイズが5から90nmである。電解質は種々の環状カーボネートを含み得る。これにはVC又はFECが含まれる。例として、VC又はFECの量は電解質の10%であり、最初のサイクルの容量損失を低減させると言われている。またこの教示は、使用される特別の粉末又は薄膜合金アノード材料が限定されている。
【0021】
US2009/0305129にはリチウム二次電池が開示され、アノードを含み、これはシリコン又はシリコン合金で熱分解で調製されたものの多結晶粒子を含む。電池のサイクル性能を増加するために、シリコンアノード材料は粒子サイズが3から30μmを持つシリコン粒子内の結晶子サイズがナノサイズでなければならない(100nm未満)。明細書には、CO2(約0.4重量%)及び/又はフッ素含有カーボネート、例えばFEC(約10重量%)がエチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート電解質に添加され得ることが教示されている。というのはそれらはリチウムとシリコン粒子の反応をスムーズに生じさせ、使用できなくなるまでの充電/放電サイクル数を増加させると言われている。シリコン純度は95%以上である。
【0022】
Nam-Soon Choi らはJournal of Power Sources 161 (2006) 1254-1259で、厚さ200nmを持つ薄膜シリコン電極は、3%FECをエチレンカーボネート/自エチレンカーボネート電解質に添加することで改良されることを開示する。
【0023】
L. El OuataniらはJournal of the Electrochem. Soc. 156 (2009) A103-A113で、VCの添加はVCの添加されない場合に比べてグラファイトアノード上により薄いSEI層を形成すること、およびVCはSEIに余分の酸素含有化合物を導入することを開示する。これらの化合物のひとつはVCはからのポリマーである。これは、リチウム含有ダイマーとは明らかに異なる。ここでリチウム含有ダイマーは電解質内のエチレンカーボネート(EC)溶媒の還元による反応生成物であり、式1に従って生じるものである。
2EC+2Li+2e−→LiO.CO.O.CH2.CH2.O.CO.OLi(s)+C2H4(g)
VCは式2に従い還元されると考えられる。
nVC→
【0024】
【化3】
上記式はともに、ラジカル還元メカニズムで進行すると考えられている。SEI層のリチウム関与メカニズムのいくつかは酸素含有炭化水素から来るものと考えられる。これはポリ(エチレンオキシド):LiX材料でのメカニズムと類似の方法である。この場合、リチウム関与は、ECからのダイマーと比較して、VCはからのポリマーとの方がより好ましいと思われる。
【0025】
Libao ChenらはJournal of Power Sources 174 (2007) 538-543で、電解質に1重量%のVCの存在は、250nm厚さの薄シリコン膜のサイクル性能を、同じ膜でVCの添加されていない電解質で比較して改良したことを開示する。改良は、VC添加剤を含むシリコンアノードの表面上のより薄い均一なSEI層に拠るものである。SEI層はかなりの量のLiFを含むことが見出された。予期しないことに、少量のSiOxがまた観察され、このことはSEI層のホールを介してリチウム化シリコンと電解質が相互作用した結果によると思われる。シリコン材料は、小粒子である必要がある。というのは膜全体はほんの250nmだからである。
【0026】
Sheng Shui Zhangは、Journal of Power Sources 162 (2006) 1379-1394で、FECはVCは及びHFに分解されることを開示する。フッ化水素の存在は通常リチウムイオン電池性能を害するものと考えられている。というのはこれはリチウムカーボネートと反応してフッ化リチウム、水及び二酸化炭素を生成するからである。しかし、HFはリチウム金属電極上のSEI層の品質を改良し、堆積をスムーズにし、かつデンドライト形成のリスクを低減させる、ことが報告されている。
【0027】
繰り返し膨張及び収縮からシリコン材料で生成される内部応力は、非常に小さな(サブミクロン)寸法のシリコン材料を用いることで低減され得る、ということが示唆されてきた。しかし、これはまた次の欠点を持つ。即ち、薄膜の場合に(例えばLibao Chenらの上記文献)、単位容積当たりの利用可能なアノード容量が低減され、サブミクロン粒子の場合にはシリコン表面対容積比が増加し、操作中に生成されるSEI生成物の比率が増加してリチウム及び電解質消費が増加する結果となるからである。活性物質内の長距離間の接続性についても良くない。
【0028】
ハイブリッド電気自動車での使用に適する電池はUS7,862,933に開示されている。それぞれの電池はグラファイト系アノード、カソード、セパレーター及び電解質液を含む。電解質溶液は基本溶媒として環状カーボネート、直鎖又は分枝カーボネート及びビニル基を含む環状カーボネートからなる。ただしこれらのカーボネート成分にハロゲン置換体が含まれ、かかる置換基は例示されておらず、置換体としては0.2から0.4堆積%VCを含む電池のみが例示さている。
【0029】
US2010/0124707には、ポータブル電子装置の使用に適する電池が開示されている。それぞれの電池はカソード、アノード及び電解質液からなる。アノードは集電体でありそこに適用されているアノード活性物質を持つ。アノード活性物質は、複数の球状及び非球状のアノード活性物質粒子を含み、これはシリコンをひとつの成分として含み、シリコン含有材料を粗面化した集電体表面上にスプレーして調製されるものである。電解質液は通常環状カーボネート及び直鎖状又は鎖状カーボネートを含み、これらは共にハロゲンを置換基又はハロゲン化置換基として含む。ビニル基、スルトン基及び酸無水物を含む環状カーボネートが添加剤として使用され得る。電解質塩としての単純なおよび複雑なリチウム塩の例示が開示されている。ビニル基又はハロゲン化環状カーボネートを含む環状カーボネートの混合物を含む電池の例示はされていない。
【0030】
US2006/0003226には、再充電可能リチウムイオン電池が開示され、シリコン及び/又はシリコン合金を含む活性物質の粒子を含む層を焼結させて得られるアノードと集電体状のバインダとを含む。アノード活性粒子は通常100μm以下の平均直径、好ましくは50μm以下およびより好ましくは10μmを持つ。電池はまた非水溶性電解質を含み、これは環状及び直鎖状カーボネートの混合物を含み及びそこに二酸化炭素を溶解させている。溶解二酸化炭素は、電極表面で安定なSEI層の形成を通じてアノード材料の膨張を制限すると考えられている。電解質はまた場合により、少なくとも1重量%のフッ化環状又は直鎖カーボネートを含むことが可能である。ただしフッ化溶媒を含む電解質を含む電解質液は例示されていない。CO2を含む電解質を含む電池は、添加剤としてVCを含む電解質での電池と比較して、より長いサイクル寿命を示すことが観察された。
【0031】
US7674552には、フッ化リチウム−水酸化リチウムコーティングアノード及び電解質を含むリチウムイオン電池が開示されている。アノードは、アノード活性物質を集電体上に、気相蒸着、電気めっき又は粒子状電気活性物質の分散物のスラリー堆積により堆積させて形成される。ただし気相蒸着のみが開示されている。電解質は好ましく、LiClO4の溶液を含み、溶媒としてフッ化環状カーボネート及び直鎖又は鎖状カーボネートの混合物(通常1:1混合)を含む。他の適切な溶媒としては、スルホラン、アセトニトリル及び直鎖及びVCが挙げられる。アノードコーティングは、この電解質を含む電池を少なくとも30サイクル充放電させることで形成される。前記コーティングのLi2F+とLi2OH+との比は少なくとも1であった。より高いLi2F+とLi2OH+との比を持つ電池は、極めて優れた、30サイクル以上の充放電効率を示した。
【0032】
US2010/0136437には、銅コーティング粒子シリコン電気活性アノード材料へのフッ化物コーティングの形成方法が開示され、その方法は、カーボネートを含む環状フッ化物を含む電解質溶媒中のアノードを含む電池を100を超えて充電/放電サイクルさせることによる。第一回目の充電放電操作は充電速度0.005及び0.03Cの間で実施される。電解質は適切には、15から40体積%のフッ化環状カーボネートであり、例えばフルオロエチレンカーボネートであり、場合によりさらに0.5から5重量%のVC、0.1から1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメチルスルホネート及び/又は0.1から1重量%のジメチルスルホンを含む。しかしVC、4−ブタンジオールジメチルスルホネート及び/又は0.1から1重量%のジメチルスルホンのひとつ以上を含む電解質溶液の例示はない。US2010/0136437により調製された電池の例には、0.3から3μmの平均粒子サイズのシリコン粒子及びジエチレンカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)のいずれかとの混合物を含む電解質液を含む。
【0033】
JP04607488には、シリコン、スズ又はグラファイト又はグラファイトその酸化物から形成され得るアノード活性物質を持つアノードを含むリチウムイオン電池が開示されているが電気活性グラファイトを持つアノードのみが開示されている。該電池はさらにカソード、セパレーター及び電解質を含む。電解質は適切には、基本溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを5:95から80:20の比、好ましくは4:6の比で混合したものを含み、0.1から10重量%のシリルエステル添加剤を含む。炭酸、リン酸及びホウ酸のシリルエステルが含まれる。さらに場合により添加剤は0.2から0.5重量%のテトラフルオロボレート及び0.1から10重量%のビニル基を含む環状カーボネートを含む。シリルエステルは電池の非可逆最初のサイクル損失を減少させると考えられている。ボレートは電解質液の粘度を維持するために寄与し、VCの選択的な存在は電解質溶媒の還元的切断を減少させると考えられている。
【0034】
JP2008234988には、銅集電体へ適用される活性物質を持つアノードが開示されている。活性物質は、シリコン系層を含み、ひとつ以上のコーティング層へ適用されており、該コーティング層は、スカンジウム、イッテルビウム、チタン及びハフニウムのフッ化物などの遷移金属フッ化物のアルカリ金属塩を含む。アノードはカソード、セパレーター及び電解質と共に電池構造に含まれる。電解質は通常、環状及び鎖状カーボネートを基本溶媒として含み、かつセル性能を改良するために、1から2重量%の例えばスルトン、コハク酸、コハク酸無水物又はスルホ安息香酸無水物が1及び5%の範囲で含まれる。この効果は電解質がDEC及びFECの混合物である場合に最も顕著である。
【0035】
US7659034には、リチウムイオン電池であって、シリコン系合金材料が負極に適用されたものが開示されている。0.05重量%以上の二酸化炭素又はビニルエチレンカーボネートが選択的に電解溶媒に添加され、これによりセル寿命を改良しかつ容量維持を強化する。
【0036】
US2007/0037063には、再充電可能リチウムイオン電池であって、エチレンカーボネート化合物を含む電解質を含むものが開示されている。通常基本電解質溶媒は環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートを30:70の比で含む。電解質溶媒は、場合によりさらに、0.1から15重量%のFEC及び場合により3重量%までのVCを含むことができる。FEC添加剤を含む電解質を含むセル性能は、電解質のみを含むセルに比べてよりよい非可逆サイクル効率に関連づけられる。
【0037】
US2007/0072074には、リチウムイオン電池でのガス発生を低減する方法が開示されている。これは電解質液に2から10重量%のEFC添加剤をLiBF4を含む電解質の0.1から1Mとを組み合わせて含ませることによる。電解質はまた2重量%までのVCを含み得る。シリコン系アノードは、シリコン含有粒子材料のスラリーを集電体上に適用するか、又は集電体上にシリコン含有薄膜を形成する蒸気堆積を用いることで調製され得る。しかし開示されているのは、気堆積を用いる技術のみである。アノード調製のために使用されるシリコン−含有粒子のサイズおよい形状については開示されていない。
【0038】
US2008/0241647には、円筒状のリチウムイオン電池が開示されている。これはカソード、電解質及びアノードを含む。アノードはアノード活性物質を含み、これはシリコン含有及び/シリコン合金粒子で粒子直径が5から15μmのものである。電解質は適切には、基本溶媒を含みこれは環状及び鎖状カーボネートからなり、かつさらに0.4重量%までの及び場合により10重量%までのCO2を含む。US2004/0151987には、カソード、アノード、セパレーター及び電解質を含む電池が開示されている。アノードは適切には、集電体表面上に、シリコン含有スラリー又は蒸気堆積による薄膜堆積から調製される。シリコン含有スラリーは適切には、シリコン粒子を含みこれは直径約10μmを持つものである。電解質は適切には、基本溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを3:7の比で含む混合物を含み、さらに0.1から30重量%、好ましくは5重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
上記示したように、強くかつフレキシブルなSEI層の形成に寄与する電解質を含み、長期間にわたる充電/放電寿命を維持するリチウムイオン電池の要求が存在する。本発明はかかる要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
(a)厚すぎず薄すぎない好ましいSEI生成物層、(b)優れたアノード性能及び(c)優れたアノード寿命などを達成するというバランスは、特定構造の電気活性物質又は電気活性粒子を、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート又はそれらの混合物を特定の量用いることで達成される。好ましくは前記構造化電気活性物質又は電気活性粒子は、構造化シリコン材料又はシリコン含有粒子であるか、それを含むものである。好ましくはビニル基を含む前記環状カーボネートは、ビニレンカーボネート,メチルビニレンカーボネート,エチルビニレンカーボネート,プロピルビニレンカーボネート,フェニールビニルカーボネート,ジメチルビニレンカーボネート,ジエチルビニレンカーボネート,ジプロピルビニレンカーボネート,ジフェニールビニレンカーボネート,ビニルエチレンカーボネート及び4,5−ジビニルエチレンカーボネートを含む群から選択される。ビニルエチレンカーボネート,ジビニルエチレンカーボネート及びビニレンカーボネートが好ましい。さらに、ハロゲン化環状カーボネートは適切に、限定されるものではないが、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−5−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,テトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ビストロフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−メチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,4−ジフルオロ−5−(1,1−ジフルオロエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む群から選択される。フッ化環状カーボネート及びその混合物が好ましい。フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)(FEC)及びジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)(DFEC)が特に好ましい。
【0041】
特に、(a)厚すぎず薄すぎない好ましいSEI生成物層、(b)優れたアノード性能及び(c)優れたアノード寿命などを達成するというバランスは、特定構造のシリコン材料又は粒子を、VCの存在下で、及び場合によりまた1つ又は2つのフッ化エチレンカーボネート(即ちFEC)及び/又はジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を特定の量用いることで達成される。
【0042】
特にここで記載される構造化シリコン材料などの構造化電気活性物質は知られている。特に本発明により使用される構造化シリコンは一般的に知られたものであるが、このうちの特定の構造化シリコン材料であって上記添加剤を上記バランスを達成するために使用する構造化シリコン材料については全く新規なものである。
【0043】
本発明の第一の側面はリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記リチウムイオン再充電可能電池セルは:
−以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料−粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に、例えば、ピラー、ナノワイヤ又は類似の突出物などの伸長構造である、離間構造エレメントを持ち、前記表面上の前記構造エレメントの最小寸法が10μm以下、特に1000nm以下、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも100nmであり、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が1を超え、最も好ましくは5である、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧50nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧2−30nm、より好ましくは≧50nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも10nm、好ましくは≧20から30nm、好ましくは少なくとも50nm、例えば10から500nm、好ましくは50から500nmであり、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5、最適には少なくとも10及び場合により少なくとも100である、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドの直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)以下で定められる基板粒子、
(i)又はこれらの混合物、
−電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソードで、及び
−電解質を含み、前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である。
【0044】
構造化電極材料
用語「電気活性物質」とは、材料であって、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムなどの金属イオン電荷キャリアを、電池の充電段階及び放電段階で、その構造中に取り込みかつ実質的にその構造から放出できる材料を意味すると理解されるべきである。好ましくは前記材料はリチウムを挿入しかつ放出し得るものである。
【0045】
電気活性物質含有粒子には適切には、限定されるものではないが、Si,Sn,Ge,Ga,Se,Te,B,P,BC,BSi,SiC,SiGe,SiSn,GeSn,WC,SiO2,TiO2,BN,Bas,AIN,AlP,AlAs,AlSb,GaN,GaP,GaAs,GaSb,InN,InP,InAs,ZnO,ZnS,ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe,CdTe,HgS,HgSe,HgTe,BeS,BeSe,BeTe,MgS,MgSe,GeS,GeSe,GeTe,SnS,SnSe,SnTe,PbO,PbSe,PbTe,CuF,CuCl,CuBr,CuI,AgF,AgCl,AgBr,AgI,BeSin2,CaCN2,ZnGeP2,CdSnAs2,ZnSnSb2,CuGeP3,CuSi2P3,Si3N4,Ge3N4,Al2O3,Al2CO,C又はそれらの混合物を含む群から選択されるものである。
【0046】
ここで意味する構造を形成するために使用される電気活性物質には、p−タイプ又はn−タイプドーパントなどのドーパントもまた含まれる。ドーパントは適切には、前記材料構造中に含まれて前記材料の導電性を改良する。シリコンへのp−タイプドーパントの例は、B,Al,In,Mg,Zn,Cd及びHgが挙げられる。シリコンへのn−タイプドーパントの例は、P,As,Sb及びCが挙げられる。
【0047】
電気活性物質の粒子を含むアノードの導電性はまた、前記構造中に化学添加剤を含ませることでも強化され得る。これにより抵抗性を低減しまた導電性を改善する。
【0048】
前記粒子の導電性又は前記粒子を含むアノード材料の導電性はまた、前記粒子又は前記粒子を含む材料上に導電性材料を、前記粒子を形成するために使用される電気活性物質よりもより高い導電性を持つ電気活性物質でコーティングすることでも強化することができる。適切な導電性材料には、金属又は合金であって、銅又はカーボンなどのセルコンポーネントと適合するものである。
【0049】
用語「シリコン含有電気活性物質」とは、電気活性物質であって、シリコンをその構造内に含むものを意味すると、理解されるべきである。シリコン含有電気活性物質は90%を超える純度を持つことができる。シリコン含有電気活性物質は適切には99.99%未満の純度を持つシリコンを含むことができる。好ましくは、シリコン含有電気活性物質は、90から99.99%の純度、好ましくは95から99.99%の純度、より好ましくは99.90%から99.99%の純度、特に好ましくは99.95%から99.99%の純度を持つシリコンを含むことができる。シリコン含有電気活性物質はまた、シリコンと鉄及び銅などとの金属合金を含み得る。これらの金属はリチウムなどの電荷キャリアが電池の充電段階及び放電段階で前記金属合金中に挿入・放出することを妨げないものである。以下説明するように、シリコン含有電気活性物質はまた、電気活性又は非電気活性コア上に1以上のシリコンコーティングを持つ構造、又はシリコンコアとそれへ適用された1以上のコーティングを持つ構造を含むことができ、それぞれのコーティング層の構造はコーティングされる前の層又はコアの組成(前記コアはコーティング層に先行する)とは異なるものである。
【0050】
用語「シリコン含有電気活性物質」とは、スズ、ゲルマニウム、ガリウム及びそれらの混合物などの電気活性物質をも意味するものと、理解されるべきである。この意味で、電気活性物質及び他のシリコン構造の意味は、スズ、ゲルマニウム、ガリウム及びその混合物から形成される同様の粒子及び構造をも意味するものと、理解されるべきである。しかし、シリコンを含む電気活性物質が好ましいことは理解されるべきである。
【0051】
上記のように、構造化電気活性物質は電気活性物質を含む粒子から製造され、それはアノード活性物を与え、これは開いた構造(即ち、アノード活性物内に空間を有する)を持ち、SEIの成長を可能とし、かつ充電段階(即ち、アノードのリチウム化段階)で前記アノード内で前記電気活性物質が膨張することを可能とするものである。前記アノード活性物の開いた構造は前記粒子自体から生じるものであってよい。例えば、粒子表面にピラー又は類似の突出物などの構造エレメントを持つことができ、これによりエレメント間に空間を与えこれによりSEIの成長及びリチウム化段階でのシリコンの膨張を可能とする。
【0052】
特に構造化電気活性物質はシリコンコーティング粒子からなる構造化シリコン材料であり、アノード活性物を与えこれは開かれた(即ち、前記体間に空間を有する)構造であり、これによりSEI成長を可能とし、アノードの充電(即ち、リチウム化)の際のアノード膨張を可能とする。前記開かれた構造は前記粒子自体から生じるものであってよい。例えば、粒子表面にピラー又は類似の突出物などの構造エレメントを持つことができ、これによりエレメント間に空間を与えこれによりSEIの成長及びリチウム化段階でのシリコンの膨張を可能とする。
【0053】
他の実施態様では、それぞれの粒子は構造中にボイドを含み、該ボイドは前記粒子が、ここで意味するピラー化粒子と同様の機能を満たすことを可能にする。
【0054】
または、前記粒子は次のように形状化され得る。即ち、SEIの成長のために粒子間に空間を提供し、かつアノードの集電体上に堆積される際に、リチウム化段階で電気活性物質の膨張を可能とするように、である。かかる粒子は通常細長く、アスペクト比(最小と最大寸法の比)が少なくとも5及び場合により少なくとも10、例えば少なくとも25又は少なくも100である。
【0055】
特に前記粒子は、次のように形状化され得る。即ち、SEIの成長のために粒子間に空間を提供し、かつアノードの集電体上に堆積される際に、リチウム化段階で電気活性物質の膨張を可能とするように、である。かかる粒子は通常細長く、アスペクト比(最小と最大寸法の比)が少なくとも5及び場合により少なくとも10、例えば少なくとも25である。上記の第一の場合(即ち、構造化エレメントを含む粒子)、構造化エレメントの最小寸法は少なくとも50nm、好ましい少なくとも100nm及び10μm以下である。構造化エレメントは好ましくは、アスペクト比(前記エレメントの最小寸法に対する最大寸法の比)が1を超え、最も好ましくは少なくとも5であり、これにより電気活性物質内の長距離間接続が改良されることとなる。構造化電気活性物質粒子の最大寸法(好ましくは離間構造エレメントを表面上に持つシリコン粒子である)は好ましくは60μm未満、最も好ましくは30μm未満である。該粒子が2つ以上の寸法においてこれらよりも大きい場合には、前記カソード寸法に適合する層厚さのセルアノードの製造が困難となる。
【0056】
本実施態様で、再充電可能電池セルに含むための種々の構造化材料及び粒子のサイズ、成分及び形状について説明した。これらの材料及び/又は粒子は再充電可能電池セルに、前記粒子の少なくとも50%(重量%)がここで説明したサイズの範囲、成分又は形状を有するものであり、場合により少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%例えば95%がそうである。
【0057】
特に記載されない限り、ここで示された全てのパーセントは重量%である。上記の構造エレメントであり、最小寸法が少なくとも0.01μm、例えば少なくとも0.05μm、アスペクト比が少なくとも5である構造エレメントとして、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、チューブ及びロッドなどの細長い構造が挙げられる。これらの細長い構造は適切に、複合電極材料へ成形され、リチウムイオン電池のアノードを形成するための集電体へ層として適用され得るものである。
【0058】
上で示したように、細長い構造は場合によりフェルト形状で提供され得る。ここで細長い構造がランダムに縺れ合った結果、複合電極又はアノード材料中で接続ネットワークを形成することとなる。例えば、複合体内の細長い構造間での多重交差形成などである。又は、細長い構造は足場構造へと形成され得る。これは細長い構造が相互に接続された3次元配置を含む。
【0059】
用語「複合電極材料」とは、混合物を含む材料を意味し、該混合物は実質的に均一混合物であり、1以上の電気活性物質と少なくとも1以上のさらなる成分を含み、該成分は、限定されるものではないが、バインダ、導電性材料、粘度調節剤、フィラー、架橋促進剤、カップリング剤及び接着促進剤を含む群から選択されるものが挙げられる。前記複合体の成分は適切に混合され均一な複合電極材料を形成し、これをコーティング剤として基板又は集電体上に適用し複合電極を形成する。好ましくは、複合電極材料の成分は溶媒を用いて混合され電極混合物を形成する。前記電極混合物はその後基板又は集電体へ適用され乾燥されて複合電極材料を形成する。複合電極材料は適切に、集電体上に接着性物の形で与えられ、それにより材料の成分の秩序は、前記複合材料を含む電池の100回の充電放電サイクルに対しても維持されることとなる。好ましくは、複合電極材料は多孔性であり、液体電解質が複合体へ浸透し、電気活性物質の表面の少なくとも一部を濡らすことができる、ものである。複合体の多孔性は次のように定められ得る。即ち、前記液体電解質が接近・浸透可能な複合体に含まれるボイド空間の総容積を、前記複合体の全要容積に対するパーセントで表現されたものである。前記多孔性は水銀多孔度測定方法で測定され得る。前記複合体は多孔度を少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%有するものである。多孔度は80%未満、好ましくは60%以下である。最も好ましい多孔度は25−50%の範囲である。
【0060】
用語「電極混合物」とは、キャリア又は溶媒としてのバインダの溶液中の電気活性物質のスラリー又は分散物を含む組成物を意味するものと理解されるべきである。また、溶媒又は液体キャリア中の、電気活性物質及びバインダのスラリー又は分散物を意味すると理解されるべきである。
【0061】
以下に、上記説明された構造化シリコン粒子の例(ただしこれらに限定されるものはない)の幾つかを示す。本特許出願は構造化シリコン粒子のみに限定されることはなく、ここで記載された他の電気活性物質の構造化粒子又はエレメントへ拡張される、ということは理解されるべきである。
・シリコン系ファイバ、直径が少なくとも10nm、好ましくは少なくとも30nmおよびさらに好ましくは少なくとも50nmである。好ましくは本発明の第一の側面のシリコン系ファイバは、直径10から500nm、好ましくは10から250nm、より好ましくは50から250nm及び特に好ましくは80から200nmのものである。これらのシリコン含有ファイバは好ましくは長さが、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも1μm、及び好ましくは500μm以下である。長さ1から150μm、好ましくは1から80μm及び特に5から60μmのものは、本発明の第一の側面によるセルの製造に適切に使用される。また、このファイバはフェルトへ又はフェルトなどを含む足場へ形成され得る。該ファイバはまた、コア−シェルの細長い構造のコアを形成することができる。例えば外側に導電性コーティングされたシリコン系ナノワイヤ、又は導電性チューブ構造(即ちカーボンナノチューブ)でチューブ内部にシリコン系材料を含む(即ち、シリコン含有チューブ)ものである。ここで定める寸法を持つ他の電気活性物質のファイバ(即ち、例えば、スズコーティングチューブ、ガリウムコーティングチューブ)もまた、本発明に含まれる。
・シリコン系チューブ、壁厚が≧10nm、例えば≧50nm又は場合により≧100nmであり、長さが≧1μm,例えば≧2μmである。シリコン系チューブについては一般に3つの独立した寸法で定義される。第一の寸法(通常壁厚)が適切には、0.01μmから2μm、好ましくは0.05μmから2μm、より好ましくは0.08から0.5μmの範囲である。前記第二の寸法は適切には、前記第一の寸法の2.5倍と100倍の間であるべきである。第三の寸法は、前記第一の寸法の10倍と500倍との間である。前記第三の寸法は例えば、500μmである。シリコン以外の電気活性物質から形成されるチューブもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系リボン、厚さ50から200nm、例えば80から150nm、幅250nmから1μm、例えば500から800nm、及び長さ≧1μm、例えば≧5μmである。またかかるリボンを含むフェルト。シリコン系リボンはまた、3つの独立する寸法で定められる。第一の寸法は適切には、0.05μmから2μm、好ましくは0.08μmから2μm、より好ましくは0.1μmから0.5μmである。第二の寸法は適切には、第一の寸法の少なくとも2倍又は3倍である。第三の寸法の合計長さは5例えば500μm程度である。シリコン以外の電気活性物質から形成されるリボンもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系フレーク、厚さ50から200nm、例えば80から150nm、及び2つの他の寸法は、1から20μm、例えば3から15μmである。シリコン系フレークはまた、3つの独立した寸法で定められる。第一の寸法は適切には0.05から0.5μm、好ましくは0.08から0.2μm、より好ましくは0.1から0.15μmである。第二の寸法は適切には、第一の寸法の10倍から200倍の範囲である。第三の寸法は第一の寸法の10倍から200倍の範囲であるべきである。第三の寸法の総長さは、例えば500μm程度である。シリコン以外の電気活性物質から形成されるフレークもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系ピラー化粒子は、シリコン系粒子コア、直径5から25μm、例えば8から18μmを含み、かつシリコンピラーのアレイ、ロッド又はナノワイヤが該コアに付されている。前記ピラーは、直径少なくとも50nmから10μm以下、特に1000nm未満、好ましくは50から250未満、例えば100から200nmであり、長さが少なくとも0.5μmから200μm以下、好ましくは1から50μm、より好ましくは1から5μm、例えば2から4μmの範囲である。前記粒子のコアは、規則的であっても不規則的断面であってよく、球状又は非球状であってよい。シリコン系ピラー化粒子の最大直径は一般に40μm未満例えば30μm未満である。シリコン以外の他の電気活性物質から形成されるピラー化粒子も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン以外の粒子コアを含むシリコン含有粒子、前記コアは直径5から25μm、例えば8から18μmであり、該コアに付されたシリコン含有ピラー、ナノワイヤ、又はロッドを持つ。前記ピラーは、長さが少なくとも0.5μmから200μm以下、好ましくは1から100μmの範囲、より好ましくは1から50μmの範囲である。前記ピラーの平均直径は好ましくは1000nm未満、より好ましくは250nm未満である。粒子コアは規則的又は不規則的断面であってよく球状又は非球状であり得る。組み込まれた構造化された粒子の最大寸法は一般的に40μm未満、例えば30μm未満となる。
・シリコン含有粒子コアを含む粒子、前記コアが直径5から25μm、例えば8から18μmであり、該コアに、シリコン以外の電気活性物質から形成されるピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径10から500nm、好ましくは50から250nm、例えば100から200nmであり、長さが1から5μm例えば2から4μmである。粒子コアは規則的又は不規則的断面を持ってよく、球状又は非球状であってよい。組み込まれた構造粒子の最大寸法は一般的に40μm未満例えば30μm未満である。
・シリコン含有多孔性粒子、シリコン系粒子を含み、その中に多くのボイド又はポアを持つ。隣接するポア間の壁の少なくともいくつかは厚さ≧10nm、好ましくは≧20nm、≧30nm又は≧50nm、例えば≧75nmであり、長さは≧100nmを超えて伸びており、例えば≧150nmであり、多孔性粒子の直径は1から30μm、例えば5から20μmである。好ましくは本発明のセルに含まれる多孔性粒子は主直径が1から15μm、好ましくは3から15μmの範囲であり、直径が1nmから1500nm、好ましくは3.5から750nm及び特に好ましくは50nmから500nmの範囲の直径のポアを含む。シリコン以外の他の電気活性物質から形成される多孔性粒子も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系多孔性粒子断片、前記断片はシリコン含有多孔性粒子から得られる。好ましくはシリコン系多孔性粒子断片は、多孔性粒子断片を含み、最大寸法が少なくとも1μm、好ましくは少なくとも3μmであり、ポア壁厚さは少なくとも0.01μm、適切には0.05μm、好ましくは少なくとも0.1μmである。多孔性粒子断片の直径は、1から40μmの範囲、好ましくは1から20μm、より好ましくは3から10μmの範囲である。シリコン以外の他の電気活性物質から形成される多孔性粒子の断片も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン含有ナノロッド構造、シリコン含有柱状束を含み、直径が50から100nmの範囲、及び長さが2から5μmの範囲である。構造中のそれぞれのナノロッドは直径が少なくとも10nmを持つ。
・ここで記載のシリコン含有基板及びシリコン以外の電気活性物質から形成される基板粒子はまた、本発明の範囲に含まれる。
・ここで記載のシリコン含足場構造及びシリコン以外の電気活性物質から形成される足場構造はまた、本発明の範囲に含まれる。
【0062】
用語「ファイバ」とは、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及び以下説明するロッドを含む意味であり、これらの用語は交換可能に使用される、ということを理解されるべきである。しかし、本発明の用語「ピラー」は、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント又はロッドであって、粒子基板の1つの端に付されているような構造を記載するために使用されるものである、ということは理解されるべきである。ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド及びフィラメントは1つの実施態様では、付されていた基板からピラーを剥がして得ることができるものである。
【0063】
シリコン系フィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッドにつきここで具体的に説明する。シリコン以下の電気活性物質から形成されるフィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッドもまた、本発明の範囲に含まれる。さらに、用語「シリコン系フィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッド」とは、細長いエレメントであり、2つの小さい寸法と1つの大きな寸法で定義されるものであり、前記大きい寸法と小さい寸法とのアスペクト比が通常5:1から1000:1の範囲のものである、という意味で理解されるべきである。この意味で、該用語はそれぞれ交換可能に使用され得る。分枝した構造は主軸に付される枝の数に応じて、バイポッド、トリポッド又はテトラポッドなどと参照される。
【0064】
上記において、用語「ナノワイヤ」とは、次のエレメントを意味するものとして理解されるべきである。即ち、直径が1nmから500nmの範囲で、長さが0.1μmから500μmの範囲であり、アスペクト比が10を超え、好ましくは50を超え、特に好ましくは100を超えるものである。好ましくはナノワイヤは直径が20nmから400nmの範囲、より好ましくは20nmから200nmの範囲、特に100nmである。本発明の組成物に含まれるナノワイヤの例はUS2010/0297502及びUS2010/0285358に開示されている。
【0065】
用語「ピラー化粒子」とは、粒子コアと該コアから伸びている複数のピラーを含む粒子を意味するものとして理解されるべきである。ピラー化粒子は直接集電体に適用され得る。又は複合電極材料中に含まれ、ネットワーク中で別の粒子として又はこれらの混合物として提供され、該ネットワーク中では、1つの粒子のピラーが重なるか又は直接他の粒子のピラーと接続される。ピラー化粒子は最も好ましくは、複合電極材料中で別々の粒子の形で与えられ、充電及び放電サイクル段階で、前記電極材料中の他のピラー化粒子の膨張・収縮に何らの影響を与えることなく、膨張し収縮できるものであり、これにより相当な数の充電及び放電サイクルにわたり電極材料の導電性維持に寄与することができる、というものである。
【0066】
用語「多孔性粒子」とは、その内にボイドまたはチャンネルのネットワークを含む粒子を意味する、ものと理解されるべきである。これらのボイド又はチャンネルは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルをも含むものである。多孔性粒子は通常、実質的に球形状かつ相対的になめらかな表面形態により特徴的である。多孔性粒子に関して定義される用語「ポア」、「チャンネル」とは、これらのボイド又はチャンネルは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルをも含むものを意味するものとして、理解されるべきである。ポア及び/又はチャンネルのネットワークは適切には、前記粒子内を通じる3次元のポア及び/又はチャンネル配置を含み、その中でポア及び/又はチャンネル開口部が多孔性粒子の表面上の2以上の平面上に与えられるものである。多孔性粒子は通常主直径が1から30μmの範囲、好ましくは1から15μmの範囲、より好ましくは3から15μmの範囲であり、直径1nmから1500nm、好ましくは3.5から750nm、特には50nmから500nmの範囲のポアを含む。かかる粒子は通常、シリコン粒子又はウェハのステインエッチングなどの技術を用いて製造され、又はシリコン合金例えばシリコンとアルミニウム合金の粒子のエッチングにより製造される。かかる多孔性粒子の製造方法は着られており例えばUS2009/0186267,US2004/0214085及びUS7,569,202に記載されている。
【0067】
用語「多孔性粒子断片」とは、シリコン含有多孔性粒子からの全ての断片を意味するとして理解されるべきである。かかる断片には、実質的に不規則な形状及び表面形態を持つ構造が含まれ、これらの構造は、該断片が得られる前記多孔性粒子内のポア又はポアのネットワークを定め又は境界を当初定めていたシリコン材料から得られ、断片自体はポア、チャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークを含むことはない。かかる断片は以後フラクタルと参照する。これらのフラクタル構造(ポア、チャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークが欠けた)の表面形態は、当初のシリコン構造により境界付けられていたポア又はチャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークからのぎざぎざや不規則性を含み得る。これらのフラクタル断片は通常、その表面上に伸びるピークや谷の存在で特徴付けられ、スパイク状の外観を持つ粒子を含み、また粒子の表面から伸びる複数のリッジを含む外観を持つ粒子を含む。該ピークはピーク高さ及びピーク幅で特徴付けられる。ピーク高さはピークの底部(ピークが前記フラクタルの本体の合流する位置)とピークの頂上との距離として定義される。ピーク幅はピークの1つの側と他の半分高さでの最小距離として定義される。用語「電気活性物質含有多孔性粒子断片」とはまた、多孔性断片であって、シリコン含有壁により分離され定められたポア及び/又はチャンネルのネットワークを含む多孔性断片を意味する。これらの断片はポア含有断片として参照する。多孔性粒子断片自体と同様に断片が得られる多孔性粒子に関する用語「ポア」又は「チャンネル」とは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルを意味するものとして理解されるべきである。多孔性粒子断片に含まれるこれらのポア及び/又はチャンネルはまた、規則的形状及び表面形態により特徴付けられる。対照的に、断片が得られる多孔性粒子は実質的に球状の形状及び相対的になめらかな表面で特徴付けられる。フラクタル及び多孔性粒子断片を含むポアは以後一緒に説明され、まとめてシリコン含有多孔性粒子断片と参照される。
【0068】
フェルトは、電気活性物質のファイバ特にシリコンファイバが共に結合し合いマットを形成した構造である(例えばWO2009/010757に記載)か、又は多重の交差を持つファイバの相互結合されたネットワークを形成するためのランダム又は非ランダムに配置されたものである。非結合フェルト構造はまた、本発明の範囲に含まれる。ピラー化粒子はWO2009/010758に開示されている。ピラーは、WO2007/083152,WO2007/083155,WO2010/040985及びWO2010/040986に開示される方法で粒子をエッチングして生成され得る。ファイバは上記のように基板上又は粒子上をエッチングしてピラー化し、該基板からピラーを引き剥がすことでファイバを形成する(例えば超音波)。特に好ましい構造粒子はシリコンファイバ又はシリコンピラー化粒子であり、アノード構造内でシリコン−シリコン結合を生成して電極構造を強化できる。
【0069】
電気活性多孔性粒子は、種々の方法で製造でき、例えばUS7569202,US2004/0214085,US7244513及びPCT/GB2010/000943が参照できる。シート状の粒子例えばフレーク及びリボン状粒子はWO2008/139157に記載の方法で製造され得る。
【0070】
用語「足場」とは、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ロッド、フレーク、リボン及びチューブをなどから選択される1以上の構造エレメントの3次元配置を意味し、かかる構造は接触する点で共に結合されているものである。この構造エレメントは、3次元配置でランダム又は非ランダムに配置され得る。3次元足場は、シリコン、スズ、ゲルマニウム又はガリウムなどの電気活性物質を含むコアを持つコーティングされた又はコーティングされていない構造を含み得る。又は足場はヘテロ構造であってよく、3次元配置構造であって電気活性物質又は非電気活性物質系足場材料を含み、これが小さな島、ナノワイヤ又は前記足場が形成された電気活性物質とは異なる組成を持つ電気活性物質のコーティング上に堆積されるものを含む。好ましくは、このタイプの足場は、カーボンファイバのネットワーク、スレッド、ワイヤ又は小さな島を有するナノワイヤ、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、スズ又はこれらの合金又はこれらの混合物などの電気活性物質でコーティングされた薄膜を含む。足場はシリコン系コーティングを含む場合、1以上の追加のコーティング層がさらに適用されてよい。コーティング層は連続的に実質的に全ての足場構造表面に適用されてよい。又はコーティング層は不連続であってよく、足場構造の表面のある領域のコーティングが存在しないことで特徴付けられてもよい。1つの実施態様で、コーティング材料はランダムに分配されてよく、又はある一定のパターンで足場構造上の表面に分配されてもよい。本発明のバインダ組成物中の含まれ得る足場構造の例はUS2010/0297502に開示されている。
【0071】
本発明の電池セルの製造に使用される複合電極材料中に含まれる、粒子、チューブ、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、シート及びリボン及び足場は、結晶性、ミクロ結晶性、多結晶性又はアモルファスであってよく、又はアモルファス構造中の結晶性又は多結晶性領域であってよい。これらの構造は例えばWO2009/010758に開示されるエッチング技術又はUS2010/0330419に開示の電子スピニングを用いて製造できる。又はこれらは例えばUS2010/0297502に開示される、触媒気相−液相−固相方法などの成長技術を用いて製造することができる。US2010/0297502に開示される方法を用いて、カーボン粒子基板などの導電性基板表面に、ナノ粒子、ナノワイヤ及びナノチューブを成長させることができる、ということは当業者には明らかである。
【0072】
チューブ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、シート及びリボンなどの細長い構造はまた、基板に初めから成長させるか又はそこから刈り取ることができる。初めから成長させる構造は当業者に知られた技術で製造され得る。例えばJP2004-281317及びUS2010/0285358を参照できる。適切な技術の例には、例えばアニーリング又はインパクト技術を用いる基板への貼付けを含む。他の技術には、化学蒸着、物理蒸着、エピタキシャル成長、原子層堆積などが挙げられ、これらの技術は最初から成長させる結果となる。又は前記構造は上で説明したようなエッチング技術を用いても形成され得る。
【0073】
ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、ピラー、シート、リボン及びチューブが基板に付されている場合に、これらの構造の組成物は、該基板の組成物と同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
用語「カーボン基板」とは、少なくとも50w/w%から100w/w%カーボンを含み、その上でのナノ粒子、ナナオワイヤ又はナノチューブなどの成長を支持するために使用され得る基板を意味するものと、理解されるべきである。
【0075】
用語「基板粒子」とは、粒子又は顆粒状基板上に形成された電気活性物質の分散物を含む粒子を意味するものとして、理解されるべきである。前記基板は電気活性物質であっても、非電気活性物質であってもよく又は導電性物質であってもよい。基板が電気活性物質である場合、それは適切に前記基板上に分散される電気活性物質の材料とは異なる組成物を持ち得る。好ましくは、粒子状又は顆粒状基板がカーボン系材料、例えばグラファイト、グラフェン又はカーボンブラックなどの導電性カーボンである。好ましくは、分散電気活性物質は、シリコン、ガリウム又はゲルマニウム又はそれらの混合物を含む群から選択される1以上である。好ましい基板粒子は、直径が1nmから500nm、好ましくは1から50nmの範囲の電気活性物質のナノ粒子であり、カーボン基板(基板粒子が直径5から40μm、好ましくは20μmを持つ)の粒子又は顆粒上に分散されているものである。シリコンが分散される電気活性物質として好ましい。シリコンナノ粒子により基板のカバー率は完全に又は不完全にであってよく、好ましくは不完全である。本発明の電気活性物質と組み合わせて使用され得る基板粒子の例は、US6589696に開示されている。用語「シリコン系」とは、ここで定める純度及び構造を持つシリコンを含む元素状シリコンなどのシリコン含有材料から、また同様にシリコンと、アルミニウム、スズ、銀、鉄、ビスマス、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、鉛、チタン及びそれらの混合物との合金からも形成される構造を含むものとして、理解されるべきである。
【0076】
用語「シリコン系」はまた、ここで定めたシリコン含有材料からほとんど完全に形成される構造と同様に、2以上の構造成分を含む構造もまた含むものである。前記2以上に構造成分とは、少なくとも1つの成分がその隣接する成分とは異なる組成を持つ材料から形成されるものである。この意味で、シリコン系粒子なる用語は、シリコン以外の材料からなるコアでそこに適用されたシリコン含有コーティングコアを含む構造も、シリコンコーティングされたコアに非シリコン含有コーティングが適用された構造も含まれる。
【0077】
用語「チューブ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ファイバ、ロッド、フィラメント、シート及びリボン」とは、コーティングされたかコーティングされていない細長いエレメントであり、例えばワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ファイバ、ロッド、フィラメント、シート、チューブ及びリボンが挙げられるものを意味するものとして、理解されるべきである。非コーティング細長いエレメント、粒子、多孔性粒子及び多孔性粒子断片は、シリコン含有粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片には、シリコン含有粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、フィラメント、シート、チューブ及びリボンであり、構造の断面を通じて均一な組成を持つものを含み、同様に粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであってシリコン含有コア又は基本層を持ち、これらがシリコン含有材料を含みかつ第一のシリコン純度を持つコア又は基本層と、シリコン含有材料で第二のシリコン純度を持つ外層とを含むものであって、前記第二の純度が前記第一の純度とは異なる、ものをも含まれる。
【0078】
コーティング粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンには、粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであって、シリコンなどの電気活性物質のコアを含みかつ1以上のコーティングがそこに適用されているもの、が含まれる。粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであって、シリコン以外のコアに1以上のシリコンなどの電気活性物質を含むコーティングが適用されているものも含まれる。コーティングが適用される場合には、適用される本発明油面を連続的にカバーするか、又は下地の暴露部分を部分的にのみカバーしてもよい。多重コーティングが適用される場合には、それぞれのコーティングは連続的又は不連続のいずれでもよく、前層により生成された暴露表面を完全に又は部分的に重なってもよい。
【0079】
多重層がコア又は下地表面(例えば基板)に適用される場合、それぞれのコーティング層が先行する層(又はコア又は基板であって、問題となるコーティングが最初のコーティング層である場合)とは異なる組成を持つことが好ましい(必須ではないが)。本発明のバインダ成分と混合可能な電気活性物質には、コアシェル構造、周りに1以上のシェル又は層を持つコアを含む構造を持つ1以上のエレメントを含み、それぞれのシェル又は層はその先行するシェルの組成とは異なる組成を持つ。
【0080】
疑いを避けるために、コーティング構造は次の構造を含むことができる。即ち、コアと1以上のコーティング層が電気活性物質を含む構造、コアが電気活性物質を含み全てのコーティング層が非電気活性物質から形成される構造及びコアが非電気活性物質を含み、1以上のコーティング層が電気活性物質から形成される、構造である。1以上の電気活性コーティング層が適用された電気活性物質コアを含む構造もまた含まれる。ここで参照される粒子及び細長いエレメントが電気活性物質のコーティングを含む場合に、これらのコーティングされた細長いエレメントのコア及び粒子は、カーボン、好ましくはハードカーボン又はグラファイト、電気活性セラミックス材料又はシリコン、スズ、ゲルマニウム、ガリウム又はそれらの合金又はそれらの混合物などの適切な金属から適切に選択される。ここで参照されるシリコン含有構造には、コーティングを含み、このコーティングは好ましくは、アモルファスカーボン、グラファイト、電気活性ハードカーボン、導電性カーボン、カーボン系ポリマー又はカーボンブラックからなる群から選択される1以上の種類を含むカーボンコーティングを含む。コーティングは通常シリコン含有構造へ、コーティングされたシリコン含有構造の5から40重量%の範囲となる厚さで適用される。シリコン含有粒子及び細長いエレメントへのコーティング方法は、当業者に知られている。化学蒸着、熱分解及びメカノフージョン技術などが含まれる。堆積技術はUS2009/0239151及びUS2007/0212538に開示されている。熱分解は、WO2005/011030,JP2008/186732,CN101442124及びJP04035760に開示されている。カーボンコーティングは、電気活性物質の表面でSEI生成物層の形成及び安定化を制御するために助けとなり得る。上で示したように、カーボン系以外のコーティングも使用され得る。適切な代わりのコーティングの例には、アルミニウム、銅、金及びスズなどの金属、また同様に導電性セラミックス及びポリマー系コーティングも含まれる。好ましくは電気活性細長いエレメント又は粒子はシリコンを含有し、前記コーティングがシリコン含有コーティングである。
【0081】
本発明の第一の側面によるセルに設けられる電気活性物質粒子の直径は、当業者に知られる種々の方法で決定され得る。かかる技術には空気溶出分析、光学粒度測定、光学計数方法及びレーザー回折分析などが含まれる。
【0082】
シリコン材料はドープされていてもよくされていなくてもよい。単結晶でも多結晶でもアモルファスでも、又は結晶とアモルファスの混合物でもよい。しかし我々は以下の点見出した。即ち、上で説明した構造化された寸法の形を持つものであれば、膨張/収縮損傷効果を最小限とするために多結晶及び/又はアモルファスシリコン(最初の充電に先立って)であることは必要ない、ということであり、これはUS2009/0305129,US2009/0053589及びUS7476469で教示するものとは逆である、ということである。本質的に単結晶及び/又は結晶サイズが>1μmであるものが好ましい。というのは一般的により安価に調製でき、電極操作の際により均一なSEI層を形成することが可能となるからである。
【0083】
構造化電気活性物質は適切には、電極中の活性物質の全量の少なくとも5重量%、より適切には10重量%、好ましくは20重量%、より好ましくは少なくとも50重量%および特に好ましくは70重量%である。特に構造化電気活性物質が構造化シリコン材料であり、電極中の活性物質の全量の少なくとも10重量%、より好ましくは20重量%例えば50重量%である。構造化シリコン材料は適切には、電極内の活性物質の全量の5から90重量%、より適切には25から90重量%、好ましくは30から80重量%及び特に40から70重量%である。
【0084】
ここで説明された構造化電気活性物質は、適切に複合電極材料へ形成され、集電体の表面へ適用されてアノードを形成し、本発明の電池セル中に、ここで説明された電解質組成物と共に含まれるものである。特にアノードは、ここで記載された構造化シリコン材料を含む複合電極材料から適切に形成される。
【0085】
ビニル基を含む環状カーボネート及び/又はハロゲン化環状カーボネート(例えばFEC及び/又はDFEC)を電解質添加剤としてここで定めるある濃度範囲で使用することは、構造化電気活性物質、特に構造化シリコン材料を含むリチウムインセルのサイクル性能を改善する上で顕著な効果を持つことが見出された。特に、VC及び/又はフッ化エチレンカーボネート、特にFEC、DFEC又はそれらの混合物を電解質添加剤としてある定められた濃度範囲で使用することが、構造化電気活性物質、特に構造化シリコン材料を含むリチウムインセルのサイクル性能を改善する上で顕著な効果を持つことが見出された。
【0086】
以下の開示から次の点が理解されるべきである。即ち、ビニル基含有環状カーボネート及びハロゲン化環状カーボネートの両方の電解質中濃度は、これらがお互いに独立して添加されるのか又は混合物として存在するのかに依存するということである。一般に、ビニル基を含む環状カーボネートは適切には、少なくとも電解質の量に対して1重量%, 重量%,3重量%,5重量%,10重量%又は15重量%含み得る。ハロゲン化環状カーボネートは、一般に、電解質液の70重量%を超えない濃度であり得る。
【0087】
しかし、電解質がビニル基を含む環状カーボネートを唯一つの添加剤として含む場合には、これは適切には、電解質全量の3.5から8重量%、好ましくは4.5から6重量%及び特に5から6重量%である。ビニル基含有環状カーボネートを3.5から8重量%、特に5から6重量%含む電解質を含む電池は、ビニル基含有環状カーボネートをかかる範囲に入らない濃度で含む電解質を含む電池と比較して、優れた性能を示すことが観測された。この効果は適切には、電解質にVCのみを添加する特別の場合にも例示される(即ち、フッ素化エチレンカーボネートが添加される)。サイクル性能の改良は、添加VCがグラファイトアノード技術で使用されるものと同じ量が添加される場合には特に顕著ではないが、これらの効果を奏するための添加される必要な量(電極重量に対して2%)は、グラファイトアノード技術から明らかとなるであろうよりも実質的に多いものである。しかしVCのみの量が多すぎると(電解質重量に対し約8%)、セル性能は、電解質の抵抗増加(低イオン伝導性)によるものと思われる。高いVC含有量はまた、コストを上げ、電解質の棚寿命を低減させる。われわれの次の知見を得た。VC含有量が電解質の重量に対し、3.5から8%、特に5から6%の場合に、構造化シリコン材料のアノードを用いることで非常に改良されたサイクル性能が達成され、かつ同時に電解質抵抗を維持し、セルのコスト及び使用寿命を商業的に許容されるレベルにすることでできる、ということである。最適の結果はVC含有量が4.5から6%、例えば約5から6%であると、考えられる。本発明の第一の側面の好ましい第一の実施態様においては、電解質は5から6重量%のビニル基を有する環状カーボネートを含むものである。ビニレンカーボネートを5から6%含む電解質と、シリコンファイバ又はピラー化粒子から選択される構造化シリコンを含む電池は特に好ましい。
【0088】
ここで記載した添加剤のパーセントは添加剤を含む電解質液の全重量に比較した添加剤の重量に基づき計算される。例えば、添加剤としてVCなどのビニル基を有する環状カーボネートを5%含む電解質液は、95gの電解質にビニル基を含むカーボネート(VCなど)を5g添加して製造される。
【0089】
ハロゲン化環状カーボネートが単独で使用される場合、これは適切には電解質の総重量の少なくとも5%、好ましくは少なくとも12%およびより好ましくは少なくとも15%含まれる。電解質液中のハロゲン化環状カーボネートの濃度は通常75重量%、好ましくは70重量%、より好ましくは50重量%特に30重量%を超えない。以下の知見が得られた。電解質液がフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)をハロゲン化環状カーボネートとして5重量%から50重量%の間の濃度で含む場合には、この電解質液を用いて製造された電池は50サイクルを超えて90%を超える効率が得られる、ということである。特に優れた結果は、電解質液が少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む場合に得られた。本発明の特に好ましい第二の実施態様は、10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む電解質液と、シリコンファイバ及びシリコンピラー化粒子から選択される構造化シリコンとを含む電池セルを提供するものである。
【0090】
上記添加剤に加えて、電解質液は通常基本溶媒として、鎖状又は直鎖カーボネートとビニル基を含む環状カーボネート以外の環状カーボネートとの混合物を含む。鎖状又は直鎖カーボネートと、ビニル基を含む環状カーボネート以外の環状カーボネートとの比は、適切には、容積比で7:3から3:7の比、好ましくは7:3から1:1の比である。ハロゲン化環状カーボネートが電解質液に添加される場合には、前記基本溶媒中の環状カーボネートと完全に又は部分的に置換され得る。この場合には、全環状カーボネート量(基本環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネートとの和)と、鎖状又は直鎖カーボネートとの比は上で定めた比の範囲に維持される。
【0091】
または、ハロゲン化環状カーボネートは基本電解質液に添加され得る。この添加は、通常、環状カーボネートと、鎖状(又は直鎖)カーボネートとの比を変える。しかし前記電解質液に添加されるハロゲン化環状カーボネートの量は、上で定めた環状と直鎖カーボネートの容積比範囲を超えないように充分な量であるべきである。
【0092】
従って、本発明のひとつの実施態様では、ハロゲン化環状カーボネートが部分的に基本溶媒環状カーボネートと置換され、環状及び鎖状(又は直鎖)カーボネートの30:70混合物を含む電解質液は、適切には、15容量%のハロゲン化環状カーボネート、15容積%の基本溶媒環状カーボネート及び70容積%の基本溶媒鎖状(又は直鎖)カーボネートを含む。ハロゲン化環状カーボネートの濃度が30容積%に増加する場合には、環状及び鎖状カーボネートを30:70の比内に維持するためには70容積%の基本溶媒鎖状(又は直鎖)カーボネートのみを添加する必要があり、追加の基本溶媒環状カーボネートは必要ない。というのはハロゲン化環状カーボネートがこの実施態様では環状カーボネートを完全に置換するものだからである。次の点が理解されるべきである。同様の考え方が、環状および鎖状(又は直鎖)カーボネートを基本溶媒として異なる比率で含む電解質液を調製する際に適用される、ということである。
【0093】
ハロゲン化環状カーボネートが添加剤として使用される場合には、これは適切には、環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートの混合物を含む基本溶媒へ添加される。ハロゲン化環状カーボネートは基本溶媒へ、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%例えば30重量%の量で添加され得る。基本溶媒は適切には環状カーボネートと鎖状又は直鎖カーボネートとを、7:3と3:7の比の間、好ましくは7:3と1:1の比の間で含む。
【0094】
基本溶媒として使用可能な環状カーボネートには、限定されるものではないが、エチレンカーボネート(EC),ジエチレンカーボネート(DEC),プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート,γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンが挙げられる。基本溶媒として使用可能な鎖状又は直鎖カーボネートには、限定されるものではないが、ジメチルカーボネート(DMC),ジエチルカーボネート(DEC),エチルメチルカーボネート(EMC),メチルプロピルカーボネート,ジブチルカーボネート(DBC)及びメチルオクチルカーボネート(MOC)が挙げられる。好ましい基本環状カーボネートはエチレンカーボネート(EC)である。好ましい鎖状(又は直鎖)カーボネートはエチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである。特に好ましい第三の実施地用では、基本溶媒は、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物である。本発明の第一の側面の好ましい実施態様では、シリコンファイバ材料及びシリコンピラー化粒子から選択される構造化シリコン材料と環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートとを30:70から70:30の比で、好ましくは30:70から1:1の比で含む混合物を含む電解質とを含む電池を提供するものである。ここで前記電解質は少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも12重量%例えば15又は30重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む。本発明の第一の側面の特に好ましい実施態様では、シリコンファイバ材料及びシリコンピラー化粒子又はそれらの混合物から選択される構造化シリコン材料とエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合物を3:7から1:1の間の比で含む電解質とを含む電池を提供するものである。
【0095】
理論に縛られることなく、次のように考えられる。即ち、電解質添加剤としてFEC及びDFECなどのハロゲン化環状カーボネートの使用は、フッ化リチウム及びエチレンカーボネートを含む安定なSEI層を形成させる、ということである。ハロゲン化環状カーボネートとシリコン表面との反応により形成されるSEI層は、例えば、エチルカーボネートとシリコン表面の反応で生成されるSEI層よりも低密度でありよりフレキシブルであると考えられ、これにより長時間のサイクルに対して安定な構造が維持され得ることとなる。
【0096】
ビニル基を持つ環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネート、特にフッ化環状カーボネートを含む環状カーボネート混合物を含む電解質は、電池に含まれる場合に特に有益な結果を与えることが見出されている。ビニル基を持つ環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネートは共に適切に、電解質液全体に対して少なくとも3.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%含む。これらを合計した量は通常は、電解質液全体に対して70重量%未満、適切には50重量%未満及び好ましくは30重量%未満である。ビニル基を持つ環状カーボネートの濃度は電解質の全量に対して、好ましくは少なくとも1重量%、適切には3重量%であり、ハロゲン化環状カーボネートの濃度は電解質の全量に対して、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも12重量%例えば15重量%である。特に利益のある電解質液は、FEC及び/又はDFECなどの1以上のフッ化エチレンカーボネートと組み合わせてVCが使用されるものであり、この場合、かかる添加剤の合計量は電解質液全量に対して3.5%を超える量、例えば5%である。合わせた量は通常は、電解質イオン抵抗を大きく増加させないように、電解質全量に対して、70重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40%未満及び場合により30%未満である。かかる添加剤混合物を含む電解質液は、フッ化エチレンカーボネート(FEC及び/又はDFEC)の1つ又は両方の全量に対して、好ましくは1重量%のVC及び少なくとも3重量%、適切には少なくとも12重量%及び好ましくは少なくとも15重量%を含む。VC及び1以上のフッ化エチレンカーボネートが電解質液に存在する場合、VCの量は一般的には電解質全量の10%を超えず、例えば8%を超えない。本発明の好ましい第五の実施態様では、この混合物は1から8重量%のVCと3から60重量%、好ましくは5から50重量%、より好ましくは10から40重量%及び特に15から80重量%のFECが含まれる。
【0097】
本発明の第一の側面の好ましい実施態様では、添加剤としてビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池が提供される。好ましい第六の実施態様では、電解質は添加剤として、2重量%のビニレンカーボネート及び5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む。本発明の第一の側面の第七の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第八の好ましい実施態様は、2重量%のビニレンカーボネート及び10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十の好ましい実施態様は、2重量%のビニレンカーボネート及び30重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十一好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十二の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十三の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び30重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の発明者は次の知見を見出した。即ち、VCは、1以上のフッ化エチレンカーボネート(又はFEC及び/又はDFEC)と共に電解質添加剤と共に存在する場合に相乗作用を示すように見える、ということである。理論に束縛されることなく、フッ化エチレンカーボネートとVCとを電解質液に添加する有利な効果についての1つの説明は、フッ化エチレンカーボネート対Li/Li+の還元電位がエチレンカーボネート(EC,電解質として最も普通に使用されている溶媒のひとつ)の場合に比べて高く、従ってフッ化エチレンカーボネート(FEC及び/又はDFEC)の還元が初めに、最初の充電形成の際に生じる、ということである。フッ化エチレンカーボネートはまた、ラジカルイオンへ還元されやすく、これがVCの重合を開始させる−上式(2)を参照。
【0098】
CO2が溶解限度まで添加され得る。というのはわれわれは次の知見を得たからである。即ち、それによりリチウムセルの寿命をさらに増加されるから、ということである。理論に束縛されることなく、CO2の存在は暴露されたシリコン表面の優れた品質のLi2CO3SEI層を形成するための助けとなると考えられる。CO2は電解質液にCO2ガスを通じることで添加でき、CO2がその中に溶解する。電解質液に溶解するCO2の量は、最終液の少なくとも0.05重量%及び0.5重量%以下であり、好ましくは0.05から0.25重量%、より好ましくは0.16から0.2重量%の範囲である。
【0099】
特に、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート又はそれらの混合物を含む電解質液へCO2を、少なくとも0.05重量%及び0.5重量%以下、例えば0.05と0.25%の間で、好ましくは0.1と0.2%の間で、特に0.16と0.2%重量%の間で添加することは、かかる電解質液を含むセルの性能を更に改良するものである。ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2の混合物を含む電解質液は、特に優れた性能を示すことが見出された。ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2の混合物を含む電解質液は、この混合物を70重量%以下(電解質液全量に対して)、通常は50重量%未満、好ましくは30重量%未満含むものである。添加剤の混合物は適切には、電解質液の少なくとも4重量%、通常少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%例えば少なくとも20重量%含む。1つの実施態様では電解質液は適切には、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2を含む環状カーボネートの混合物を4重量%から70重量%、通常は10から50重量%、好ましくは12から50重量%、より好ましくは15から30重量%含む。ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2を含む環状カーボネートの混合物を含む電解質液は、適切には、電解質液の全量に対して、この混合物を少なくとも3.5重量%、通常は少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは15重量%、特には30重量%、例えば50重量%含む。本発明の好ましい実施態様において、ハロゲン化環状カーボネートは、全電解質液に対して、5から50重量%、好ましい6.5から50重量%、好ましくは10から30重量%特に15から30重量%の範囲で含む。かかる混合物中でビニル基を持つ環状カーボネートの濃度は適切には、少なくとも1重量%、2重量%、3重量%、5重量%又は10重量%であり、濃度範囲は1から10重量%、2から5重量%及び特に2から3重量%が好ましい。
【0100】
本発明の第一の側面の第十四の特に好ましい実施態様では、添加剤として、5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十五の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のビニレンカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。
【0101】
本発明の第一の側面の第十六の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十七の特に好ましい実施態様では、添加剤として10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十八の特に好ましい実施態様では、添加剤として15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十九の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第二十の特に好ましい実施態様では、添加剤として10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第二十一の特に好ましい実施態様では、添加剤として15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。
【0102】
本発明者は、活性物質及び電解質を含む電池であり、前記電解質がハロゲン化環状カーボネート、ビニル基を含む環状カーボネート及びCO2を含む電池が、これまでに使用されてきたことを、信じるものではない。かつ本発明は、リコン含有電気活性材料、リチウムを電気化学的に挿入・放出し得る活性物質を含むカソード及び電解質を含む電池であり、該電解質が、1から8重量%のビニル基を持つ環状カーボネート、3から70重量%のフッ化環状カーボネート及び0.05から0.5重量%、好ましくは0.05から0.2重量%のCO2を含む、電池を提供するものである。この実施態様での電池に含まれるシリコン含有材料は、上で説明した構造化されたシリコン材料と同様に、そのままの粒子などの構造化されていないシリコン材料及びシリコン薄膜を含む。そのままの粒子とは、バルクシリコン含有材料を研削及び篩分け及び/又は分類することで得られる粒子である。そのままの粒子は適切には、最大寸法が40μm未満、好ましくは25μm未満である。好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が1から8重量%のビニレンカーボネート、3から70重量%のフルオロエチレンカーボネート及び0.05から0.25重量%のCO2を含むものである。特に好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が1から2から6重量%のビニレンカーボネート、5から50重量%のフルオロエチレンカーボネート及び0.16から0.20重量%のCO2を含むものである。特に好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が本発明の第一の側面の好ましい16から21の実施態様により定められる電解質を含むものである。
【0103】
理解されるべきことは、ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2は、セルの寿命の間に消費されるということであり、ここで表す添加物の量は、最初にセルが製造される際に電解質に存在する量を意味するということである。特に電解質がVC、FEC又はDFECなどのフッ化エチレンカーボネート及びCO2の混合物を含む場合には、これらはセルの寿命の間(例えばセルの充電・放電及びSEI層の形成)に消費されるということであり、ここで表されたこれらの添加剤の量はセルが製造される際に電解質中に存在する最初の量を意味する。
【0104】
例えばファイバ、フェルト、足場、ピラー束、チューブ、多孔性粒子又はピラー化粒子などの上で記載のシリコン含有材料に加えて、アノードは他の活性材料を含むことができる。即ち、電池のサイクル間にリチウム化及び脱リチウム化され得るもので例えばグラファイト又はスズなどである。しかしアノードには、少なくとも5重量%、適切には少なくとも10重量%、より適切には少なくとも20重量%、場合により少なくとも50重量%及び好ましくは70重量%の活性物質が上で説明した構造化シリコンである。アノードはまた他の添加剤を含むことができる。例えばカーボンブラック、アセチレンブラック又はカーボンファイバなどであり、これらはリチウムセルにアノードの導電性を高めるために添加されることが知られている。電気活性材料含有粒子のそれぞれは1つのタイプの電気活性材料から全てなっていてもよいし、又は他の電気活性又は非電気活性材料を含んでいてもよい。例えばカーボン又はスズである。ここで他の材料が非活性である場合、それはアノードの導電性を高めるものであり得る。例えば電気活性材料はカーボンコーティングされてよい。特にそれぞれのシリコン含有粒子は完全にシリコンからなっていてもよく、又は他の活性又は非活性材料、例えばカーボン又はスズを含んでいてよい。ここで他の材料が非活性である場合、それはアノードの導電性を高めるものであり得る。例えば電気活性材料はカーボンコーティングされてよい。
【0105】
コストの理由で、本発明で電気活性材料としてシリコンが使用される場合、純度が99.97以下の純度例えば99.80%以下又は99.7%以下、好ましくは少なくとも90%である安価なシリコンが、少なくとも99.99%又は少なくとも99.999%の純度を持つ高純度(従ってより高価)のシリコンよりも好ましい。ただしかかる高純度のシリコンの使用が本発明の範囲から除外されているものではない。好ましくは、最初のシリコン材料は結晶性である。シリコン含有ファイバ及びピラー化粒子を製造するための出発材料の例は、SilgrainHQ又はJetmilledLowFeが挙げられ、これらはElkemから供給されるものであり、直径が10から50μm、適切には15から40μm及び好ましくは25μmである。これは主に単結晶性ファイバ又はピラー化粒子へ製造されるものである。
【0106】
上で説明した添加剤とは別に、電解質は全ての電解質であり得る。これらはシリコンアノードを用いるリチウムイオン電池で操作され得るものであり、例えばリチウム6フッ化リン(LiPF6)、LiBF4、リチウムビス(リチウムオキザラート)ボレート(LiBOB)又はLiClO4又はそれらの混合物などのリチウム塩であり、1以上の環状及びジアルキルカーボネート(例えばエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなど)に溶解性のものが挙げられる。他の電解質塩の例は、JP2008234988,US7659034,US2007/0037063,US7862933,US2010/0124707,US2006/0003226,US7476469,US2009/0053589及びUS2009/0053589に開示されている。好ましくは電解質塩はLiPF6又はLiPF6及びリチウムビスオキザラートボレート(LiBOB)の混合物である。好ましい電解質液は、0.9から0.95MのLiPF6及び0.05から0.1MのLiBOBからなる。
【0107】
電解質液中のリチウム塩の濃度は限定されないが、好ましくは0.5から1.5Mの範囲である。より多くの添加剤量を使用する場合には、リチウム塩の濃度を上げて最終的な電解質液でのリチウムの過剰な喪失を防止する。
【0108】
アノード材料はバインダにより一体化されて維持され得る。我々は次の知見を得た。PAA(ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩)が特にここで記載するセルには適している、ということである。他の好ましいバインダにはCMC及びPVdFを含む。またアノードはフェルトへ成形され、また銅集電体へ結合され得る。これらについてはそれぞれWO2009/010758及びWO2009/010759に開示されている。
【0109】
複合アノード電極で使用される活性物質、バインダ及び添加剤(例えば導電性補強剤)は一般に次のものが挙げられる。ここで乾燥成分の重量に基づく。
活性物質 60から95%、ここで10から95%,より好ましくは20から95%(乾燥アノード成分に基づく)が上で記載の構造化シリコン粒子、
バインダ 5から20%、通常は5から15%、
添加剤 0から20%(例えば導電性添加剤又はフィラー)、であって合計100%とする。
【0110】
カソード材料は全ての材料であり当業者にリチウムイオン電池に適するものとして知られている材料であり得る。例として、LiCoO2、混合金属酸化物(MMO、例えばLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2又はLi(LiaNixMnyCoz)O2),リン酸系カソード材料で例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNiO2、非リチウム化カソード例えばV6O13及び硫黄/ポリスルフィドカソードなどが挙げられる。好ましいカソード材料はLiCoO2及びMMOである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は本発明によるセルの模式図である。
【図2】図2は、異なる添加物を含む電解質を含むリチウムイオンセルでのシリコンファイバのサイクルを示すグラフである。
【図3】図3は、シリコンファイバと、異なる量のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図4】図4は、シリコンファイバと、4から10重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図5】図5は、シリコンピラー化粒子と、2から10重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図7】図7は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図8】図8は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図9】図9は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図10】図10は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図11】図11は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図12】図12は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図13】図13は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図14】図14は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図15】図15は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%FECを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート、5%FEC及びその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図16】図16は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%FECを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート、5%FEC及びその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図17】図17は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び3%VC+5%FEC及びその中にCO2を最初溶解させた電解質、及び(b)LiPF6、3%VC+10%FEC及びその中にCO2を溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図18】図18は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び3%VC+5%FEC及びその中にCO2を最初溶解させた電解質、及び(b)LiPF6、3%VC+10%FEC及びその中にCO2を溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図19】図19は、ピラー化シリコン粒子と(a)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒(添加剤なし)を含む電解質及び(b)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2を含む電解質、(c)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2と3重量%ビニレンカーボネート(VC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質及び(d)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒及び溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネート(FEC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図20】図20は、ピラー化シリコン粒子と(a)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒(添加剤なし)を含む電解質及び(b)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2を含む電解質、(c)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2と3重量%ビニレンカーボネート(VC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質及び(d)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒及び溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネート(FEC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図21】図21は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と30重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図22】図22は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と30重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図23】図23は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び50:50のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図24】図24は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び50:50のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図25】図25は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒含む電解質(添加剤なし)、及び(c)及び(d)LiPF6及び30:70のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図26】図26は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒含む電解質(添加剤なし)、及び(c)及び(d)LiPF6及び30:70のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図27】図27は、電解質組成としてLiPF6を30:70のEC及びEMC混合物及びその中に添加剤としてCO2を溶解させ、かつ2重量%VCを含む電池であって、(a)構造化シリコンが粉末シリコンであって平均直径25μmを持ちかつ電解質がさらに5重量%FECを添加剤として含むもの、及び(b)構造化シリコンがヒピラー化シリコン粒子であって平均直径25μmを持ちかつ電解質がさらに10重量%FECを添加剤として含むもの、の放電容量を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1に示される一連の再充電可能な電池セルを組み合立て、一連の試験に使用した。評価は、繰り返し充電/放電サイクルを実行する電池について、種々の添加剤の種々の量により効果についてなされた。
【0113】
電極及びセルの製造
アノードを次のように調製した:構造化シリコン材料を所望量カーボンに添加し、脱イオン水中でビーズミリングした。得られた混合物をIKAオーバーヘッド攪拌装置を用いて1200rpmで43時間処理した。この混合物に、溶媒又は水中に所望量のバインダを添加した。混合物全体を、Thinky(R)ミキサで約15分間最終的に処理した。混合物の粘度は通常は20rpmで1000から1400mPasであった。構造化シリコン坐は上で記載のファイバかピラー化粒子であった。カーボンは導電性を改良するために添加され、非活性物質であるカーボンブラック(例えば、Super-P(R)、KejtenBlack(R))、アセチレンブラック(例えば、DenkaBlack)又はカーボンファイバであった。構造化シリコン材料の量は、乾燥シリコン−バインダ混合物にして74から80%であった。バインダは乾燥混合物及びカーボンの量に対して8から12%、カーボンは12から16重量%であった。表1には、シリコン、カーボン及びバインダの試験セルで使用された正確な量がまとめられている。
【0114】
アノードを混合物は、ドクラーブレード方法を用いて、10μm厚さ銅ホイル(集電体)に30から35μmでコーティングした。得られた電極を乾燥した。
【0115】
使用したカソード材料は市販のリチウムコバルト酸化物の電極(LiCoO2)又はMMO電極(又は例えばLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2)であった。
【0116】
特に留意しない限り、使用された電解質は、リチウムヘキサフルオロホスフェート、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(3:7の容積比)及び異なる量の添加剤を含む(以下示される)。電解質にCO2が添加される場合には、それは電解質全体の0.16から0.2重量%であった。
【0117】
二種類のタイプの試験セルを調製した。
【0118】
ソフトペアセル(SPセル)
・アノードとカソード電極片を所望のサイズに切り出す。
・電極を真空下120℃で再乾燥する。
・アノード及びカソードにタグを超音波溶接する。
・電極を巻き取る/折り畳みセルにする。それらの間にはTonenChemicalCooporation供給の多孔性ポリエチレンセパレータ(以下Tonenセパレータとする)層をはさむ。
・巻き取られたセルをアルミニウムラミネートバッグに包み込み、一方側はシールせずに電解質充填用に開けておいた。
・セルに所望の電解質を部分的減圧下で充填した。
・1時間電解質を電極に吸収させた。
・バッグの端を真空シールした。
【0119】
「スウェージロック」セル(SWセル)
・12mm直径のアノード及びカソードを調製し真空下一晩乾燥させた。
・アノードディスクを、「スウェージロック」フィッティングから製造された2電極セル内に設置した。
・直径12.8mm及び16μm厚さのTonen(R)セパレータを2つアノードをディスクに重ねて設けた。
・40μlの電解質をセルに添加した。
・カソードディスクを濡れたセパレータに重ねて設けてセルを作った。
・電解質を30分間電極に吸収させた。
・バネ付きの12mm直径プランジャをカソードに重ねて設け、最終的にセルを密閉シールした。バネにより電極及び電解質の界面が密に維持された。
【0120】
組み立てたセルをArbin電池サイクル試験装置へ接続し連続充電放電サイクル試験を行った。定電流:定電圧(CC−CV)試験手順は充電時の容量制限及び電圧上限制限及び放電時の電圧低減制限を行った。ソフトパックペアセルについてはそれぞれ電圧制限は4.2V及び3Vであった。試験手順は、活性アノード材料が、結晶相Li15Si4合金の形成を避けるために25mVのアノードを電位未満に充電されないことを確実にするものとした。種々の試験が種々の添加剤を用いて行われた。これらは実施例1から7に記載されている。表1にはそれぞれの試験で用いた試験セルのバッチのいくつかの重要なパラメータが与えられている。
【0121】
【表1】
実施例1
ビニレンカーボネート(VC)及びビニレンエチルカーボネートの種々の量を含む電解質を調製し、表1に記載にパラメータを持ついくつかのソフトパックペアセルで使用した。それぞれのセルの活性物質は、直径100から200nmの長さ30から80μmのシリコンファイバであった。これはシリコンウェハをエッチングし、基板から引き剥がして(例えば超音波で)得られた形状である(WO 2007/083155に記載)。
【0122】
一連のサイクルで、セルは1200mA.hr.g−1まで充電されてその後放電された。放電容量を測定し結果を図2に示した。充電/放電サイクルの回数における、1200mA.hr.g−1の放電容量を維持する能力が再充電可能な電池の予想寿命の指針となる。
【0123】
図2のグラフで、次の添加剤を含む2つのセルが試験された:
2%VEC
1%VC
1%VC+1%VEC
2%VC
4%VC
上のグラフから分かるように、4%VCを添加により、カーボンアノードの再充電可能なリチウムイオン電池で使用される通常のVC濃度での範囲で、非常な改善が見られる。
【0124】
実施例2
実施例1と同様の試験を、VC添加剤をより広い範囲で含むものを試験した(2%VC、4%VC及び8%VC)。再び上で記載のウェハからのファイバを用いたソフトパックペアセルを1200mAhrg−1に充電した。結果を図3に示す。ここで明らかなように、8%のVC添加は、2又は4%VC添加に比べてセル寿命が大きく改善された。
【0125】
留意すべきことは、所与のセルが所与の電解質組成に関してその容量を減少させるまでに達成するサイクル数は、所与のセルの他の因子にも依存するということである。例えば、電極厚さ(重量)及びカソード活性物質とシリコンアノード材料との比率などである。また具体的なかかる時間を決める条件である、例えば温度、充電/放電速度及び放電深さなどにも依存する。ここで説明されるグラフの全てにおいて、試験されたセルはこれらの外部因子を最小化するように設計されている。しかし該因子は実施例ごとに、グラフごとに異なり、従って1つのグラフと他のグラフの結果とを比較することは不可能である。むしろ所与のグラフ内で、結果は、異なる電解質組成の効果について絶対的(これは上記の因子に依存し得る)というよりは相対的な測定を与えるものである。
【0126】
実施例3
表1及び2に示されるパラメータを持つ、さらなるソフトパックペアセルが、より広いより高い範囲のVC添加剤、4%から10%を含む場合につき、試験された。セルは実施例1及び2と類似であり、同じアノードを材料(ファイバ)で1200mAhrg−1充電された。ただしアノードコーティング重量はより高かった。結果を図4に示した。ここでプロットはVC添加剤の次のパーセントを示す。
4% VC
6% VC
8% VC
10% VC
図4から分かるように、寿命増加の効果はVCが10%添加されると小さくなり、最大の効果は約6%VCである。
【0127】
実施例4
ソフトパックペアセルを表1のパラメータに従って作成した。実施例1から3とは対照的に、アノードのシリコン構造化材料は、WO2009/010758に記載のように、冶金グレードのシリコン粒子、サイズ15から25μmの粒子をエッチングして調製されたものである。粒子に付いている得られるピラーは直径80から200nmであり、長さは1から5μmであり、粒子コアの30から40%が部分的にカバーされているものである。試験は上で説明した方法と同様に行った。ただし、それぞれのサイクルで、粒子のコアではなくてピラーのみをリチウム化するために、セルを1200mAmhrg−1ではなくて600mAhrg−1充電した。
【0128】
4%及び10%VC添加物を含むセルで試験した。結果は図5に示される。図から分かるように、4%VC添加剤を含むセルの性能は10%VC添加しても改善されない。この条件では4%のVC添加は、シリコンの好ましい表面反応を達成するために充分であり、さらなるVC添加はそれ以上の効果を与えない、と考えられる。
【0129】
実施例5
表1に記載のパラメータを持つソフトパックペアセルを調製した。構造化シリコン活性アノードを材料は実施例4のピラー化粒子であった。この場合には、カソードをLi1+xNio0.8Co0.15Al0.05O2であり、アノードのバインダはポリアクリルアミド(PAA)であった。
【0130】
試験は、5%VC電解質添加剤のみ、又は5%VC及び5%FEC電解質添加剤の組み合わせのいずれかであった。セルは900mAhrg−1充電した。結果を図6,7,及び8に示した。図6では、5%VC+5%FEC添加剤を含む2つのセルが5%VCのみを含む2つのセルよりもより優れたサイクルを持つことが示される。図7は、全てのセルに対してセルの充電/放電効率をプロットする。これから、運転効率は全てのセルについてほぼ99%であることが分かる。図8は、それぞれのセルの充電電圧終端をプロットする。より高い電圧は、より高い内部抵抗を示し、これはセル中に残る遊離リチウムのレベルを示すものである。放電電圧終端が最大値(この場合4.2V)に到達すると、このセルにはもはや、完全充電容量(この場合には900mAhrg−1)まで充電するには充分な遊離リチウムイオンが存在しない、ということを意味する。図8は、5%VCのみを含む2つのセルは、5%VC+5%FEC添加剤を含む2つのセルよいも早く遊離リチウムを消費してしまうことを示す。
【0131】
5%VC+5%FECセル中の低電圧は、1つ以上の次の効果によるものと考えられる。即ち、(a)電解質が低抵抗であり、同一の運転効率を維持する、(b)形成されるSEI層が低イオン抵抗性である、(c)可逆的放電による運転損失の比率が増加し、従ってカソードの脱リチウム化の程度をよりゆっくりと増加する、ことである。
【0132】
実施例6
一群の、「スウェージロック」セルをシリコンファイバを含むアノードを用いて製造した。シリコンファイバは、冶金グレードシリコン(WO2009/010758に記載)の200から800μmサイズのエッチングされたシリコンから剥がしたピラーにより製造された。前記ファイバは直径100から200nm及び長さ10から40μmであった。全てのセルはLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2カソードを含む。半分のセルが5%VC添加剤を含み、他の半分が2%VC及び5%FEC添加剤及び溶解CO2を含む。CO2はセル中の電解質に前記セルをシールする前に30分間バブリングして添加した。これにより、電解質中にCO2が0.26重量%(電解質全重量に対するパーセント)であることが計算された。
【0133】
セルは1200mAh/gに充電した。図9から11には、それぞれの添加剤の組み合わせにつき1つのセルにつき群全体を示すものとして、充電/放電サイクル数対放電容量(図9)、効率(図10)及び充電電圧終端(図11)のプロットを示す。これらのプロットで、LiPF6および5%ビニレンカーボネートを含む電解質を含むセルは参照番号NF173とされ、同じ電解質ではあるが5%FEC及び2%VCさらに溶解CO2を含む電解質を含むセルをNF198と参照される。これらの結果は、5%FEC、2%VC及びCO2を含むセルは5%VCのみを含む同じセルよりも非常に優れた性能を示すことを示す。即ち、完全容量で、より高い効率及び低運転リチウム損失を示す。
【0134】
実施例7
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである。半分のセルはLiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質を持つ。他の半分は5%VC添加剤を含む同じ電解質及びさらに溶解CO2を含む。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0135】
セルは1200mAh/g以下にちょうど充電した。図12から14には、充電/放電サイクル数対放電容量(図12)、効率(図13)及び充電電圧終端(図14)のプロットを示す。これらのプロットでは、LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質を持つセルをNF55と参照し、LiPF6及び5%ビニレンカーボネート及びCO2を含む電解質を含むセルをNF67と参照する。これらの結果は、5%VC+CO2を含むセルは5%VC+のみを含む同じセルに比べてより優れた性能を示すことを示す。
【0136】
実施例8
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである。半分のセルはLiPF6及び5%FECを含む電解質を持つ。他の半分は2%VC及び5%FEC添加剤及び溶解CO2を含む。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0137】
セルは1200mAh/g充電した。図15から16には、充電/放電サイクル数対放電容量(図15)及び充電電圧終端(図16)のプロットを示す。これらのプロットでは、LiPF6及び5%FECを含む電解質を持つセルをNF196と参照し、LiPF6及び2%VC、5%FEC及びCO2を含む電解質を含むセルをNF196と参照する。これらの結果は、2%VC+5%FEC+CO2を含むセルは5%VC+のみを含む同じセルに比べてより優れた性能を示すことを示す。
【0138】
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである(NF183と参照)。半分のセルはLiPF6及び3%VC+5%FEC及び溶解CO2を含む電解質を持つ。他の半分は3%VC+10%FEC及び溶解CO2を含む(NF279と参照)。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0139】
セルは1200mAh/g充電した。図17から18には、充電/放電サイクル数対放電容量(図17)及び充電電圧終端(図18)のプロットを示す。これらの結果は、10%FECを含むセルは5%FECを含む同じセルに比べてより優れた効率を示すことを示す。
【0140】
上の結果及び他の観察結果から、われわれは、アノードの構造化シリコン材料を含むセルについて、次のことを見出した。
(a)単一添加剤として3.5%VC未満の使用はほとんど効果がない(この結果を、通常2重量%VCが添加される場合の従来のグラファイトセルと比較して)。VCのみの形での添加剤としての最善の改良は5%VCを含む場合と思われる。これ以上のVC+濃度は顕著な優れた効果を奏さない様に見える。
(b)5%FEC添加剤自体を用いることはVC添加剤以上の改良は見られない。
(c)セルに5%VC及び5%FECの組み合わせ添加剤を用いることは5%VCのみ、又は5%FECのみを用いる場合に比べてより優れた性能を与える。
(d)5%VCを含むセルにCO2を添加することは同じであるがCO2が添加されない場合に比べて改良された効果を示す。
(e)2%VC+5%FEC+CO2を含むセルは、5%VCのみ又は5%FECのみを含む場合に比べて改良された効果を示す。
(f)2%VC+10%FEC+CO2を含むセルは、2%VC+5%FEC+CO2を含む場合に比べて改良された効果を示す。
【0141】
VCの減少は、ポリアルキルリチウムカーボネート種を生成し、これが溶媒及びアニオンの還元を抑制するものと考えられる(Aurbach at al. Electrochimica Acta 47 (2002) 4445-4450)。次に知見が得られた。即ち、VCを持つSEI抵抗値はVCを含まないものよりも小さく、これはVCの存在がSEI膜中のリチウムイオンの透過性を改良する、ということである。
【0142】
理論に束縛されるものではないが、FEC、VC及びCO2の相乗作用は、より高いイオン伝導性を持ち、容易にリチウムイオン輸送し得るシリコンの表面に形成される高品質のSEI相の形成により説明され得る。FECはより正電位で還元され、さらにVCとCO2の還元が続き、これによりコンパクトで、保護性の高い導電性SEI層を形成する。即ち、1EC:3EMC中に、1MのLiPF6、10重量%FEC+3重量%VC及び0.28重量%CO2の電解質液中のシリコン上のSEI相の抵抗値は、上記の添加剤の1つのみを含む電解質と比べてより低くなり得る。
【0143】
実施例10から14
種々の量のビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンエチルカーボネート(VEC)及びCO2を含む電解質を調製し、いくつかのSWセルで表1に記載のパラメータに従って用いた。それぞれのセルの活性アノード材料はピラー化粒子であり、Silgrain(RTM)シリコン粉末、平均直径25μmを用いてWO2009/010758に記載の方法でエッチングして得られたものである。ただし例外として、1つのアノードはエッチングされていないシリコン粉末を用いた。全てのセルはLi1+xNo0.8Co0.15Al0.05O2カソードを持つ。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート基本溶液(30:70比率)又はフルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(比率30:70又は50:50)の基本溶液中にLiPF6を含むものである。
【0144】
一連のサイクルで、それぞれのセルは、最初C/50で容量1200mA.hr.g−1まで充電され、その後同じ速度で放電させた。セルはその後C/2からC/3の充電速度で1200mAh/gへサイクルされた。可逆的放電容量を測定し結果を示す。
【0145】
実施例10
上で記載にようにして一群のAWセルを作った。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)の基本液中にLiPF6を含む。最初のセルは(a)追加の電解質添加剤を含まない。第二のセルは(b)溶解CO2を電解質添加剤として含んでいた。他のセルは(c)溶解CO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含んでいた。セル(d)は溶解CO2、3重量%VC及び15重量%FECを電解質添加剤として含んでいた。
【0146】
セルは1200mAh/gに充電した。図19、20は充電/放電サイクル数対放電容量(図19)及び充電電圧終端(図20)のプロットを示す。この結果は、溶解CO2及びVC又は5%溶解CO2、VC及びFECを含むセル(c)及び(d)は添加剤なし又は添加剤としてCO2のみを含むものに比べて、よりよい性能を示すことを示す。
【0147】
実施例11
上で記載にようにして一群のAWセルを作った。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)の基本液中にLiPF6を含む。2つのセル(a)及び(b)が溶解CO2、3重量%VC及び15重量%FECを添加剤として含む。セル(c)及び(d)は、溶解CO2、3重量%VC及び30重量%FECを添加剤として含む。
【0148】
セルは1200mAh/gに充電した。図21、22は充電/放電サイクル数対放電容量(図19)及び充電電圧終端(図20)のプロットを示す。この結果は、少なくとも150サイクルを超えて、これらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示す。
【0149】
実施例12
上で記載にようにして一群のSWセルを作った。電解質は、(a)及び(b)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)に溶解させたCO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。(c)及び(d)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(50:50比率)に溶解させたCO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。混合後に、セル(a)及び(b)中の電解質は31.5重量%のフルオロエチレンカーボネート及び、セル(c)及び(d)は52.5重量%のフルオロエチレンカーボネートを含む。
【0150】
セルは1200mAh/gに充電した。図23、24は充電/放電サイクル数対放電容量(図23)及び充電電圧終端(図24)のプロットを示す。この結果は、少なくとも150サイクルを超えて、これらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示す。
【0151】
実施例13
上で記載にようにして一群のSWセルを作った。電解質は、(a)及び(b)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)で添加剤は含まない。(c)及び(d)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。
【0152】
セルは1200mAh/gに充電した。図25、26は充電/放電サイクル数対放電容量(図25)及び充電電圧終端(図26)のプロットを示す。図25のデータからは80サイクルまでこれらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示すが、セル(c)及び(d)についてのサイクル数対電圧の傾斜は、100サイクルでのセル(a)及び(b)についての傾斜よりも低い。このことは、セル(c)及び(d)はセル(a)及び(b)よりもより長いサイクルとなることが予想され得る。
【0153】
実施例14
SWセルを、平均直径25μm(ElkemSILGRAIN(RTM)シリコン粉末)の粉末シリコンを用いて調製した。30:70のエチルカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を含み溶解CO2、5%FEC及び2重量%VCを添加剤として含む電解質液に1MのLiPF6を含む電解質液を用いた。
【0154】
さらにSWセルを、平均直径25μmのシリコンピラー化粒子(上記及びWO2009/010758に記載の方法で冶金グレードシリコン粒子からエッチングにより調製された)を用いて調製した。この方法で、得られるピラー化粒子は、シリコンコア上に平均長さ3μm及び平均直径200nmのシリコンピラーのアレイを含むものである。電解質液は、30:70のエチルカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)混合物を含む電解質液中に1MのLiPF6を含み、添加剤として溶解CO2,10重量%FEC及び2重量%VCを持つものである。両方のセルともアノードコーティング重量は12gsmである。
【0155】
セルに1200mAh/gに充電する。図27は、充電/放電サイクル数対放電容量のプロットを示す。これから、シリコンピラー化粒子を用いて調製したアノードは600サイクルを超えてサイクルされ得るものであることが分かる。即ち、より低いコーティング重量は、より高いコーティング重量を持つ等価のセルよりもより高いサイクル数を可能とすることが分かる。粉末シリコン粒子から調製されたアノードは数サイクルで失効した。
【0156】
構造化シリコン材料を主に含むアノードを用いて使用する場合に、当該添加剤を組み合わせることは、シリコン表面の最初のサイクルで形成されるSEI層の品質を改良し、さらに続くセル充電/放電サイクルの際に効果的なSEI構造を維持するものと、考えられる。上の例で、FECのいくらか又は全てがDFECに置換されてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン再充電可能電池セル、該セルに使用する電解液及び特にある量の添加剤を含む電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン再充電可能電池セルは現在ではカーボン/グラファイト系アノードを使用する。グラファイト系アノード電極を含む従来のリチウムイオン再充電可能電池セルは図1に示される。電池は単一のセルを含み得るが1以上のセルを含んでもよい。
【0003】
電池セルは一般的に、アノードとして銅集電体10及びカソードとしてアルミニウム集電体12を含む。これらは外部で負荷又は適切に再充電電源に接続される。留意すべきは、本発明で使用される用語「アノード」及び「カソード」とは負荷の設けられる電池の内容で理解されるべきものであるということである。即ち、用語「アノード」とは電池の負極を、又「カソード」とは電池の正極を意味する。グラファイト系複合アノード14は前記集電体19に重なり、リチウム含有金属酸化物系複合カソード層が集電体12に重なる。多孔性プラスチックスペーサー20が該グラファイト系複合アノード層14及びリチウム含有金属酸化物系複合カソード層16の間に設けられている。液体電解質材料が該多孔性プラスチックスペーサー20、複合アノード層14及び複合カソード層16内に分散されている。ある場合には、多孔性プラスチックスペーサー又はセパレーター20はポリマー電解質材料に置き換えられ、かかる場合にはポリマー電解質材料25は、複合アノード層14及び複合カソード層16内に存在する。
【0004】
電池セルが完全に充電された際、リチウムはリチウム含有金属酸化物から電解質を経てグラファイト系アノードへ移動されてグラファイトと反応してリチウム炭素化合物、通常LiC6を生成する。前記グラファイトは、複合アノード層内で電気化学的活性物質であり、理論上最大容量として372mAhg−1を持つ。疑問を避けるために、用語「活性物質」とは、電池操作の際に、リチウムイオンが挿入されかつ排出される、全ての物質を意味する。
【0005】
シリコンがグラファイトの代わりに活性アノード物質として使用され得ることは知られている(例えば、Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries, M. Winter, J. O. Besenhard, M. E. Spahr, and P.Novak in Adv. Mater. 1998, 10, No. 10 and Nano- and bulk-silicon-based insertion anodes for lithium-ion secondary cells, U. Kasavajjula, C. Wang and A.J. Appleby in J. Power Sources 163, pp1003-1039,
2007を参照)。シリコンが、リチウムイオン再充電可能セルで活性アノード物質として使用される場合には、現在使用されているグラファイト系に比較して非常に高い容量を与えることができるであろうということが一般的に考えられている。結晶性シリコンは、電気化学的セル内にリチウムと反応して化合物Li21Si5へ変換され、これは理論上最大容量4200mAh/gを持つ。しかしいくつかの異なるLi−Si合金が存在し、これらはリチウム挿入により生成され、例えば、温度、結晶状態、充電電圧及び充電速度に依存する。例えば、室温では、最大容量は3600mAh/gとなりこれは合金Li15Si4に相当する(“Structural changes in silicon anodes during lithium insertion/extraction”, M.N. Obrovac and Leif Christensen, Electrochem. & Solid State Lett., 7, A93-A96, 2004)。従って、グラファイトがリチウム再充電可能電池において交換され得るとすると、単位質量当たり、単位容積当たりの貯蔵エネルギの相当な増加が達成されることとなる。残念なことは、Li−イオンセルのシリコンアノード材料は、充電及び放電の際に、電池の充電段階及び放電段階においてリチウムイオンが挿入及び除去されることに伴う大きな容積変化を示すことである。完全にリチウム化されたLi−Si合金の容量は、合金化されていない場合に比べて3−4倍大きくなる。この変化はカーボン系アノードで見られる変化よりもずっと大きい。かかる膨張及び縮小の結果として、それぞれのサイクルでシリコン材料は機械的分解され及び電気的に分離され、その結果電極は短いサイクル寿命となる。
【0006】
膨張及び縮小間にアノード活性物質の構造的破壊の可能性は、Li−Si合金相が充電−放電サイクル間に共存が許容される場合にはさらに増加され得る。最初のアノード材料が結晶性シリコンであり、リチウムが挿入される初めの充電サイクルの際に結晶構造を失いアモルファス合金となる。このアモルファス段階で前記アノードが脱リチウムされると(即ちセルが放電すると)、その後シリコンアノードはアモルファスのままとなる。しかし、シリコンアノード材料が完全にリチウム化されると、アノード電位はゼロに近くなり、結晶Li15Si4相が形成される。放電(脱リリウム)では、この結晶性合金相はアモルファスLi−Si合金に変換されて戻る。この結晶相は最大の充電容量を持つけれども、この形成は避けることが好ましい。というのは連続するサイクルにおいて結晶からアモルファスへの繰り返される転移からアノードに追加の応力が生じるからである。結晶相の形成は、充電の際のシリコンアノード材料への過剰の充電を避け、アノードの電圧を制限することにより防止され得る(即ち、より低い電圧を超えて充電されることを許容しないということであり、このより低い電圧は、とりわけ内部セル抵抗に依存するが通常は15−50mVである)。シリコンアノード材料の充電レベルに限定を設定することはまた、アノードへの機械的応力を制御し、シリコン材料はひび割れ(クラッキング)することを最小にする。この理由で、シリコンを、シリコン1g当たり3400mAhを超える充電はしないことが好ましく、最も好ましくは2500mAh/g以下に上限を設定することである。これは、シリコンの全量が活性物質とした理論上の最大値の、80%未満の充電及び好ましくは60%未満の充電に相当するものであり、このような割合はまた、シリコン及び一以上の他の活性物質(例えば、例えばカーボン)との混合物にも適用され得る(カーボンの理論上最大値は372mAh/gでありシリコンでは4200mAh/gである)。
【0007】
セルの性能に及ぼす他の因子は、シリコン表面上の固体電解質界面(SEI)層の形成である。最初シリコン材料の表面は薄い自然酸化膜があり、これは低導電性を持つ。最初の充電において、この層は、SEI層で置き換えられる。SEI層はより高いイオン伝導性を持ち、電解質と溶媒の還元との反応から形成される。SEI層は種々の異なる生成物からなる。例えば、Li2CO3、LiF、Li2O、リチウムアルキルカーボネート、ポリマー性炭化水素などである。それぞれの生成物は、充電の異なる段階で生成し始め、アノード電池に依存する。いくつかの反応を以下に例示する。
RO.CO.OR’+2Li+2e−→ROLi(s)+R’OLi(s)+CO(g)
RO.CO.OR’+2Li+2e−→Li2CO3(s)+R.R’(g)
LiPF6⇔LiF(s)+PF5
Li2CO3(s)+PF5→2LiF(s)+POF3CO2(g)
POF3+nLi+ne−→LiF(s)+LixPOFz(s)
ここでR及びR’は一般的にアルキル基;RO.CO.OR’はリチウム塩(例えばLiPF6)の溶媒をあたえるための電解質の一部としてセル中に存在する。容量変化に耐える良好なイオン伝導性を持つ安定なSEI層はセルの適切な作用に不可欠であり、この意味で、いくつかのSEI生成物は他のものよりもずっと好ましい。例えば、SEIのひとつの好ましい成分は一般的に、Li2CO3であると考えられている。
【0008】
SEI生成の欠点は、それがリリウム及び電解質を消費するということであり、システム中に留まり、セルの充電容量へ寄与することを抑制する、ということである。過剰なSEI形成は、イオン、抵抗値を増加させセルの性能を落とすこととなる。従って、シリコンアノード材料の表面領域及び表面領域体容積比率を制御することが好ましい。最初のサイクルの後、サイクル間でのシリコンの膨張、縮小の繰り返しはSEIにひび割れを起こす可能性があり、これにより新たなシリコン表面が暴露されてよりSEI層の生成(さらなる液電解質及びリチウムの消費)へと導くこととなる。これは、セルの充電/放電効率を低下させ、セルを乾固させてしまいサイクル寿命を低以下させることとなる。ひび割れは通常、充電中の低アノード電圧で生じ(容積変化が最大)、この点で非常に多くのSEI生成物が暴露された表面で一時に形成される可能性がある。このことが低品質のSEI層を形成させること、及びこれを避けるためには他のものよりも好ましいSEI生成物を持つことが望ましい、ということが考えられている。
【0009】
SEI層の主部分は最初のサイクルで形成されるということ、及びこのプロセスが、通常初期のサイクルで見られる不可逆容量かつ低充電効率の原因である、ということは理解されるべきである。続くサイクルでは、シリコンがひび割れにより暴露される場合には新たなSEI領域が継続的に形成される。また、最初のSEI層がひび割れか破損され場合には、このプロセスが、リチウムの作動損失の原因であり、かつ作動充電効率を決定するものである。最初のSEI層の品質は、その後のサイクルでの新たなSEI形成の品質に大きく影響する。好ましくはSEI層は次の性質を有するものである。
・高いイオン伝導性
・低い導電性
・比較的薄い
・安定
・フレキシブル−シリコンが膨張する際に伸び、収縮する際に縮むことができる(ひび割れが多いほど、SEIがより生成されリチウムが消費される)
SEI形成プロセスは電解質添加剤の使用により影響され得る。ビニレンカーボネート(VC)、ハロゲン化環状カーボネート(例えばフルオロエチレンカーボネート(FEC)及びジフルオロエチレンカーボーネート(DFEC)など))、CO2、シリルエステル(例えばスルトン及びリン酸及びホウ酸のエステル)などのビニル基を含む環状カーボネートが、電解質添加剤として使用されている。
【0010】
電解質への全ての添加材は電解質の性質へ悪影響を与えるべきではない。電解質は添加剤の添加により、及び添加剤の添加と共に悪影響を受ける可能性があり、従って電解質は、該添加によりリチウムを完全に消費するものであってはならず、
・高いイオン伝導性を維持し、
・粘性は高すぎず、
・セルの温度で安全に操作され、
・電気化学的にカソード材料と適合性があり(SEI層はカソード層にも形成され、カソード性能が低下することは望ましくない)
添加剤の濃度は、効果的である一方で電解質の作用及び特に上記性質をいくからでも損なうものであってはならない。
【0011】
ビニレンカーボネート(VC):
【0012】
【化1】
は、グラファイト アノードセルについて、セルの充電及び放電性能を改良するための電解質添加剤として知られている。例えばUS7862933,JP04607488及びJ. Electrochem. Soc., 156(2), A103-A113 (2009)を参照すること。これ(VC)はグラファイトアノード上のSEI層の組成又は性質を変更するものであり、シリコン系アノード上のSEIの組成又は性質とは完全に異なるものであると考えられている。通常グラファイトアノードを持つセル中の電解質のVC含有量は約2重量%である。
【0013】
フルオロエチレンカーボネート(FEC):
【0014】
【化2】
は、電池電解質への添加剤として知られている。例えば、US7862933,US2010/0136437,JP04607488,JP2008234988及びUS2007/0072074を参照のこと。
【0015】
添加剤としてのシリル、ボレート及びホスフェートエステルを含む電解質については、JP 04607488, JP 2008234988及びUS 2010/0136437に開示されている。
【0016】
さらにアノード材料の構造がSEI層形成に大きく影響する。本発明は構造化されたシリコン材料に関するものであり、これは開いた構造(即ち、物体中の空間を含む)を有し、SEI層の成長を可能とし、かつ充電の際にシリコン含有アノードの膨張(即ち、アノードのリチウム化)を可能とするものである。かかる構造化シリコンからなるアノードの多孔度(porosity)は比較的高く、例えば、>30%容積多孔度又は、>40%である。かかる開いた構造は、粒子自体の構造からもたらされるものであり、例えば構造化エレメントを持つものであり得る。例えば、ピラー又は類似の突出構造であり、その表面には前記エレメント間に空間を与え、それによりSEIの成長及びリチウム化の際のシリコン膨張を可能にするものである。他の実施態様では、粒子の構造はその中にボイドを含むことができるものであり、同様の作用を奏する。又は粒子は次のように形状化されているものである。即ち、粒子間に空間があり、SEI成長及び、アノードの集電体状に堆積された際にリチウム化の際のシリコンの膨張を可能とする、形状である。かかる粒子は一般的には長い形状であり、アスペクト比(最初及び最長寸法の)が少なくとも5、場合により少なくとも10例えば少なくとも25である。かかる構造は単純な(即ち、構造化されていない)シリコン粒子又は膜よりもより複雑な表面形態(morphology)を持ち、表面で多くの鋭い角や変化を持ち、このために薄くてフレキシブル(弾性)な、非多孔性のSEI生成物コーティングを全暴露シリコン表面に形成することが困難となる。構造化シリコンから形成される物体の多孔性は該物体中に生成されたボイド空間を持つ可能性を増加し、これにより電解質の狭いアクセス通路を持つこととなる。従って、使用される全ての電解質の粘度が、電解質がかかるボイド区間に出入できない(これはかかる空間が利用不可能となる)ほどの高くならないようにすることが重要である。
【0017】
Chanらは、Journal of Power Sources 189 (2009) 1132-1140で、添加剤なしの標準の電解質中でリチウム化の際の、シリコンナノワイヤ上へのSEI生成物層の形成につき研究した。かれらが見出したことは、SEI層の形態は、薄膜アノード状で通常見られるものとは大きく異なるものであり、不均一で、低量のLiF及びいくらかの粒子が、シリコンの表面に接着されるというよりはアノード表面のナノワイヤに隣接して蓄積されている、ということである。このことは、高度に構造化され、多孔性シリコン材料についてのSEI層の形態及び組成は、他のシリコンアノードで添加剤が既に使用されてきたものとは非常に異なる、ということを示す。
【0018】
本発明の電極で使用される構造化シリコン材料は、従って、上で記載された性質を達成するために添加剤及び添加剤濃度範囲を見出すという特定の問題を提供する。前記の説明から、構造化電気活性材料特に構造化シリコン材料の表面に安定したSEI層を形成されることのできる電解質溶液の必要性がある、ということは理解されるであろう。
【0019】
関連する従来技術には以下のものが挙げられる。
US-7 476 469には、再充電可能(二次)電池が開示され、これはアノード、リチウムコバルト酸化物カソード及び非水溶性電解質の介在部からなる。アノードは、とりわけ、アモルファスシリコン薄膜層であり、集電体状に分散され通常1−20μm厚さである。この明細書にはまた、結晶性シリコンの使用が記載されてはいるがこの使用については例示されていない。電解質は環状又は鎖状カーボネートを含み、これにはエチレンカーボネートも含まれる。電解質はまた、ビニレンカーボネートも含み得る。これは充電放電サイクル性能を改善すると言われている。ビニレンカーボネートの量は、電解質の他の成分の0.5から80容積%であると説明されている。しかしこの引用の教示は使用されたアノード材料にタイプに限定がある(アモルファスシリコンの薄膜又は、nmサイズの顆粒状微細結晶性シリコン)。
【0020】
US-2009/0053589には、電池セルが開示され、これはカソード、アノード及び電解質を含む。アノードは活性物質として粉末状又は薄膜状の特別の合金であり、例えばシリコン、スズ及び遷移金属の合金で、種々のミクロ結晶性及びアモルファス相であり、これらは高価なものである。ミクロ結晶材料は、結晶子サイズが5から90nmである。電解質は種々の環状カーボネートを含み得る。これにはVC又はFECが含まれる。例として、VC又はFECの量は電解質の10%であり、最初のサイクルの容量損失を低減させると言われている。またこの教示は、使用される特別の粉末又は薄膜合金アノード材料が限定されている。
【0021】
US2009/0305129にはリチウム二次電池が開示され、アノードを含み、これはシリコン又はシリコン合金で熱分解で調製されたものの多結晶粒子を含む。電池のサイクル性能を増加するために、シリコンアノード材料は粒子サイズが3から30μmを持つシリコン粒子内の結晶子サイズがナノサイズでなければならない(100nm未満)。明細書には、CO2(約0.4重量%)及び/又はフッ素含有カーボネート、例えばFEC(約10重量%)がエチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート電解質に添加され得ることが教示されている。というのはそれらはリチウムとシリコン粒子の反応をスムーズに生じさせ、使用できなくなるまでの充電/放電サイクル数を増加させると言われている。シリコン純度は95%以上である。
【0022】
Nam-Soon Choi らはJournal of Power Sources 161 (2006) 1254-1259で、厚さ200nmを持つ薄膜シリコン電極は、3%FECをエチレンカーボネート/自エチレンカーボネート電解質に添加することで改良されることを開示する。
【0023】
L. El OuataniらはJournal of the Electrochem. Soc. 156 (2009) A103-A113で、VCの添加はVCの添加されない場合に比べてグラファイトアノード上により薄いSEI層を形成すること、およびVCはSEIに余分の酸素含有化合物を導入することを開示する。これらの化合物のひとつはVCはからのポリマーである。これは、リチウム含有ダイマーとは明らかに異なる。ここでリチウム含有ダイマーは電解質内のエチレンカーボネート(EC)溶媒の還元による反応生成物であり、式1に従って生じるものである。
2EC+2Li+2e−→LiO.CO.O.CH2.CH2.O.CO.OLi(s)+C2H4(g)
VCは式2に従い還元されると考えられる。
nVC→
【0024】
【化3】
上記式はともに、ラジカル還元メカニズムで進行すると考えられている。SEI層のリチウム関与メカニズムのいくつかは酸素含有炭化水素から来るものと考えられる。これはポリ(エチレンオキシド):LiX材料でのメカニズムと類似の方法である。この場合、リチウム関与は、ECからのダイマーと比較して、VCはからのポリマーとの方がより好ましいと思われる。
【0025】
Libao ChenらはJournal of Power Sources 174 (2007) 538-543で、電解質に1重量%のVCの存在は、250nm厚さの薄シリコン膜のサイクル性能を、同じ膜でVCの添加されていない電解質で比較して改良したことを開示する。改良は、VC添加剤を含むシリコンアノードの表面上のより薄い均一なSEI層に拠るものである。SEI層はかなりの量のLiFを含むことが見出された。予期しないことに、少量のSiOxがまた観察され、このことはSEI層のホールを介してリチウム化シリコンと電解質が相互作用した結果によると思われる。シリコン材料は、小粒子である必要がある。というのは膜全体はほんの250nmだからである。
【0026】
Sheng Shui Zhangは、Journal of Power Sources 162 (2006) 1379-1394で、FECはVCは及びHFに分解されることを開示する。フッ化水素の存在は通常リチウムイオン電池性能を害するものと考えられている。というのはこれはリチウムカーボネートと反応してフッ化リチウム、水及び二酸化炭素を生成するからである。しかし、HFはリチウム金属電極上のSEI層の品質を改良し、堆積をスムーズにし、かつデンドライト形成のリスクを低減させる、ことが報告されている。
【0027】
繰り返し膨張及び収縮からシリコン材料で生成される内部応力は、非常に小さな(サブミクロン)寸法のシリコン材料を用いることで低減され得る、ということが示唆されてきた。しかし、これはまた次の欠点を持つ。即ち、薄膜の場合に(例えばLibao Chenらの上記文献)、単位容積当たりの利用可能なアノード容量が低減され、サブミクロン粒子の場合にはシリコン表面対容積比が増加し、操作中に生成されるSEI生成物の比率が増加してリチウム及び電解質消費が増加する結果となるからである。活性物質内の長距離間の接続性についても良くない。
【0028】
ハイブリッド電気自動車での使用に適する電池はUS7,862,933に開示されている。それぞれの電池はグラファイト系アノード、カソード、セパレーター及び電解質液を含む。電解質溶液は基本溶媒として環状カーボネート、直鎖又は分枝カーボネート及びビニル基を含む環状カーボネートからなる。ただしこれらのカーボネート成分にハロゲン置換体が含まれ、かかる置換基は例示されておらず、置換体としては0.2から0.4堆積%VCを含む電池のみが例示さている。
【0029】
US2010/0124707には、ポータブル電子装置の使用に適する電池が開示されている。それぞれの電池はカソード、アノード及び電解質液からなる。アノードは集電体でありそこに適用されているアノード活性物質を持つ。アノード活性物質は、複数の球状及び非球状のアノード活性物質粒子を含み、これはシリコンをひとつの成分として含み、シリコン含有材料を粗面化した集電体表面上にスプレーして調製されるものである。電解質液は通常環状カーボネート及び直鎖状又は鎖状カーボネートを含み、これらは共にハロゲンを置換基又はハロゲン化置換基として含む。ビニル基、スルトン基及び酸無水物を含む環状カーボネートが添加剤として使用され得る。電解質塩としての単純なおよび複雑なリチウム塩の例示が開示されている。ビニル基又はハロゲン化環状カーボネートを含む環状カーボネートの混合物を含む電池の例示はされていない。
【0030】
US2006/0003226には、再充電可能リチウムイオン電池が開示され、シリコン及び/又はシリコン合金を含む活性物質の粒子を含む層を焼結させて得られるアノードと集電体状のバインダとを含む。アノード活性粒子は通常100μm以下の平均直径、好ましくは50μm以下およびより好ましくは10μmを持つ。電池はまた非水溶性電解質を含み、これは環状及び直鎖状カーボネートの混合物を含み及びそこに二酸化炭素を溶解させている。溶解二酸化炭素は、電極表面で安定なSEI層の形成を通じてアノード材料の膨張を制限すると考えられている。電解質はまた場合により、少なくとも1重量%のフッ化環状又は直鎖カーボネートを含むことが可能である。ただしフッ化溶媒を含む電解質を含む電解質液は例示されていない。CO2を含む電解質を含む電池は、添加剤としてVCを含む電解質での電池と比較して、より長いサイクル寿命を示すことが観察された。
【0031】
US7674552には、フッ化リチウム−水酸化リチウムコーティングアノード及び電解質を含むリチウムイオン電池が開示されている。アノードは、アノード活性物質を集電体上に、気相蒸着、電気めっき又は粒子状電気活性物質の分散物のスラリー堆積により堆積させて形成される。ただし気相蒸着のみが開示されている。電解質は好ましく、LiClO4の溶液を含み、溶媒としてフッ化環状カーボネート及び直鎖又は鎖状カーボネートの混合物(通常1:1混合)を含む。他の適切な溶媒としては、スルホラン、アセトニトリル及び直鎖及びVCが挙げられる。アノードコーティングは、この電解質を含む電池を少なくとも30サイクル充放電させることで形成される。前記コーティングのLi2F+とLi2OH+との比は少なくとも1であった。より高いLi2F+とLi2OH+との比を持つ電池は、極めて優れた、30サイクル以上の充放電効率を示した。
【0032】
US2010/0136437には、銅コーティング粒子シリコン電気活性アノード材料へのフッ化物コーティングの形成方法が開示され、その方法は、カーボネートを含む環状フッ化物を含む電解質溶媒中のアノードを含む電池を100を超えて充電/放電サイクルさせることによる。第一回目の充電放電操作は充電速度0.005及び0.03Cの間で実施される。電解質は適切には、15から40体積%のフッ化環状カーボネートであり、例えばフルオロエチレンカーボネートであり、場合によりさらに0.5から5重量%のVC、0.1から1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメチルスルホネート及び/又は0.1から1重量%のジメチルスルホンを含む。しかしVC、4−ブタンジオールジメチルスルホネート及び/又は0.1から1重量%のジメチルスルホンのひとつ以上を含む電解質溶液の例示はない。US2010/0136437により調製された電池の例には、0.3から3μmの平均粒子サイズのシリコン粒子及びジエチレンカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)のいずれかとの混合物を含む電解質液を含む。
【0033】
JP04607488には、シリコン、スズ又はグラファイト又はグラファイトその酸化物から形成され得るアノード活性物質を持つアノードを含むリチウムイオン電池が開示されているが電気活性グラファイトを持つアノードのみが開示されている。該電池はさらにカソード、セパレーター及び電解質を含む。電解質は適切には、基本溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを5:95から80:20の比、好ましくは4:6の比で混合したものを含み、0.1から10重量%のシリルエステル添加剤を含む。炭酸、リン酸及びホウ酸のシリルエステルが含まれる。さらに場合により添加剤は0.2から0.5重量%のテトラフルオロボレート及び0.1から10重量%のビニル基を含む環状カーボネートを含む。シリルエステルは電池の非可逆最初のサイクル損失を減少させると考えられている。ボレートは電解質液の粘度を維持するために寄与し、VCの選択的な存在は電解質溶媒の還元的切断を減少させると考えられている。
【0034】
JP2008234988には、銅集電体へ適用される活性物質を持つアノードが開示されている。活性物質は、シリコン系層を含み、ひとつ以上のコーティング層へ適用されており、該コーティング層は、スカンジウム、イッテルビウム、チタン及びハフニウムのフッ化物などの遷移金属フッ化物のアルカリ金属塩を含む。アノードはカソード、セパレーター及び電解質と共に電池構造に含まれる。電解質は通常、環状及び鎖状カーボネートを基本溶媒として含み、かつセル性能を改良するために、1から2重量%の例えばスルトン、コハク酸、コハク酸無水物又はスルホ安息香酸無水物が1及び5%の範囲で含まれる。この効果は電解質がDEC及びFECの混合物である場合に最も顕著である。
【0035】
US7659034には、リチウムイオン電池であって、シリコン系合金材料が負極に適用されたものが開示されている。0.05重量%以上の二酸化炭素又はビニルエチレンカーボネートが選択的に電解溶媒に添加され、これによりセル寿命を改良しかつ容量維持を強化する。
【0036】
US2007/0037063には、再充電可能リチウムイオン電池であって、エチレンカーボネート化合物を含む電解質を含むものが開示されている。通常基本電解質溶媒は環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートを30:70の比で含む。電解質溶媒は、場合によりさらに、0.1から15重量%のFEC及び場合により3重量%までのVCを含むことができる。FEC添加剤を含む電解質を含むセル性能は、電解質のみを含むセルに比べてよりよい非可逆サイクル効率に関連づけられる。
【0037】
US2007/0072074には、リチウムイオン電池でのガス発生を低減する方法が開示されている。これは電解質液に2から10重量%のEFC添加剤をLiBF4を含む電解質の0.1から1Mとを組み合わせて含ませることによる。電解質はまた2重量%までのVCを含み得る。シリコン系アノードは、シリコン含有粒子材料のスラリーを集電体上に適用するか、又は集電体上にシリコン含有薄膜を形成する蒸気堆積を用いることで調製され得る。しかし開示されているのは、気堆積を用いる技術のみである。アノード調製のために使用されるシリコン−含有粒子のサイズおよい形状については開示されていない。
【0038】
US2008/0241647には、円筒状のリチウムイオン電池が開示されている。これはカソード、電解質及びアノードを含む。アノードはアノード活性物質を含み、これはシリコン含有及び/シリコン合金粒子で粒子直径が5から15μmのものである。電解質は適切には、基本溶媒を含みこれは環状及び鎖状カーボネートからなり、かつさらに0.4重量%までの及び場合により10重量%までのCO2を含む。US2004/0151987には、カソード、アノード、セパレーター及び電解質を含む電池が開示されている。アノードは適切には、集電体表面上に、シリコン含有スラリー又は蒸気堆積による薄膜堆積から調製される。シリコン含有スラリーは適切には、シリコン粒子を含みこれは直径約10μmを持つものである。電解質は適切には、基本溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを3:7の比で含む混合物を含み、さらに0.1から30重量%、好ましくは5重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
上記示したように、強くかつフレキシブルなSEI層の形成に寄与する電解質を含み、長期間にわたる充電/放電寿命を維持するリチウムイオン電池の要求が存在する。本発明はかかる要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
(a)厚すぎず薄すぎない好ましいSEI生成物層、(b)優れたアノード性能及び(c)優れたアノード寿命などを達成するというバランスは、特定構造の電気活性物質又は電気活性粒子を、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート又はそれらの混合物を特定の量用いることで達成される。好ましくは前記構造化電気活性物質又は電気活性粒子は、構造化シリコン材料又はシリコン含有粒子であるか、それを含むものである。好ましくはビニル基を含む前記環状カーボネートは、ビニレンカーボネート,メチルビニレンカーボネート,エチルビニレンカーボネート,プロピルビニレンカーボネート,フェニールビニルカーボネート,ジメチルビニレンカーボネート,ジエチルビニレンカーボネート,ジプロピルビニレンカーボネート,ジフェニールビニレンカーボネート,ビニルエチレンカーボネート及び4,5−ジビニルエチレンカーボネートを含む群から選択される。ビニルエチレンカーボネート,ジビニルエチレンカーボネート及びビニレンカーボネートが好ましい。さらに、ハロゲン化環状カーボネートは適切に、限定されるものではないが、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−5−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,テトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ビストロフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−メチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−トリフルオロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,4−ジフルオロ−5−(1,1−ジフルオロエチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン,4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−フルオロ−4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む群から選択される。フッ化環状カーボネート及びその混合物が好ましい。フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)(FEC)及びジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)(DFEC)が特に好ましい。
【0041】
特に、(a)厚すぎず薄すぎない好ましいSEI生成物層、(b)優れたアノード性能及び(c)優れたアノード寿命などを達成するというバランスは、特定構造のシリコン材料又は粒子を、VCの存在下で、及び場合によりまた1つ又は2つのフッ化エチレンカーボネート(即ちFEC)及び/又はジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を特定の量用いることで達成される。
【0042】
特にここで記載される構造化シリコン材料などの構造化電気活性物質は知られている。特に本発明により使用される構造化シリコンは一般的に知られたものであるが、このうちの特定の構造化シリコン材料であって上記添加剤を上記バランスを達成するために使用する構造化シリコン材料については全く新規なものである。
【0043】
本発明の第一の側面はリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記リチウムイオン再充電可能電池セルは:
−以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料−粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に、例えば、ピラー、ナノワイヤ又は類似の突出物などの伸長構造である、離間構造エレメントを持ち、前記表面上の前記構造エレメントの最小寸法が10μm以下、特に1000nm以下、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも100nmであり、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が1を超え、最も好ましくは5である、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧50nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧2−30nm、より好ましくは≧50nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも10nm、好ましくは≧20から30nm、好ましくは少なくとも50nm、例えば10から500nm、好ましくは50から500nmであり、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5、最適には少なくとも10及び場合により少なくとも100である、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドの直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)以下で定められる基板粒子、
(i)又はこれらの混合物、
−電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソードで、及び
−電解質を含み、前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である。
【0044】
構造化電極材料
用語「電気活性物質」とは、材料であって、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムなどの金属イオン電荷キャリアを、電池の充電段階及び放電段階で、その構造中に取り込みかつ実質的にその構造から放出できる材料を意味すると理解されるべきである。好ましくは前記材料はリチウムを挿入しかつ放出し得るものである。
【0045】
電気活性物質含有粒子には適切には、限定されるものではないが、Si,Sn,Ge,Ga,Se,Te,B,P,BC,BSi,SiC,SiGe,SiSn,GeSn,WC,SiO2,TiO2,BN,Bas,AIN,AlP,AlAs,AlSb,GaN,GaP,GaAs,GaSb,InN,InP,InAs,ZnO,ZnS,ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe,CdTe,HgS,HgSe,HgTe,BeS,BeSe,BeTe,MgS,MgSe,GeS,GeSe,GeTe,SnS,SnSe,SnTe,PbO,PbSe,PbTe,CuF,CuCl,CuBr,CuI,AgF,AgCl,AgBr,AgI,BeSin2,CaCN2,ZnGeP2,CdSnAs2,ZnSnSb2,CuGeP3,CuSi2P3,Si3N4,Ge3N4,Al2O3,Al2CO,C又はそれらの混合物を含む群から選択されるものである。
【0046】
ここで意味する構造を形成するために使用される電気活性物質には、p−タイプ又はn−タイプドーパントなどのドーパントもまた含まれる。ドーパントは適切には、前記材料構造中に含まれて前記材料の導電性を改良する。シリコンへのp−タイプドーパントの例は、B,Al,In,Mg,Zn,Cd及びHgが挙げられる。シリコンへのn−タイプドーパントの例は、P,As,Sb及びCが挙げられる。
【0047】
電気活性物質の粒子を含むアノードの導電性はまた、前記構造中に化学添加剤を含ませることでも強化され得る。これにより抵抗性を低減しまた導電性を改善する。
【0048】
前記粒子の導電性又は前記粒子を含むアノード材料の導電性はまた、前記粒子又は前記粒子を含む材料上に導電性材料を、前記粒子を形成するために使用される電気活性物質よりもより高い導電性を持つ電気活性物質でコーティングすることでも強化することができる。適切な導電性材料には、金属又は合金であって、銅又はカーボンなどのセルコンポーネントと適合するものである。
【0049】
用語「シリコン含有電気活性物質」とは、電気活性物質であって、シリコンをその構造内に含むものを意味すると、理解されるべきである。シリコン含有電気活性物質は90%を超える純度を持つことができる。シリコン含有電気活性物質は適切には99.99%未満の純度を持つシリコンを含むことができる。好ましくは、シリコン含有電気活性物質は、90から99.99%の純度、好ましくは95から99.99%の純度、より好ましくは99.90%から99.99%の純度、特に好ましくは99.95%から99.99%の純度を持つシリコンを含むことができる。シリコン含有電気活性物質はまた、シリコンと鉄及び銅などとの金属合金を含み得る。これらの金属はリチウムなどの電荷キャリアが電池の充電段階及び放電段階で前記金属合金中に挿入・放出することを妨げないものである。以下説明するように、シリコン含有電気活性物質はまた、電気活性又は非電気活性コア上に1以上のシリコンコーティングを持つ構造、又はシリコンコアとそれへ適用された1以上のコーティングを持つ構造を含むことができ、それぞれのコーティング層の構造はコーティングされる前の層又はコアの組成(前記コアはコーティング層に先行する)とは異なるものである。
【0050】
用語「シリコン含有電気活性物質」とは、スズ、ゲルマニウム、ガリウム及びそれらの混合物などの電気活性物質をも意味するものと、理解されるべきである。この意味で、電気活性物質及び他のシリコン構造の意味は、スズ、ゲルマニウム、ガリウム及びその混合物から形成される同様の粒子及び構造をも意味するものと、理解されるべきである。しかし、シリコンを含む電気活性物質が好ましいことは理解されるべきである。
【0051】
上記のように、構造化電気活性物質は電気活性物質を含む粒子から製造され、それはアノード活性物を与え、これは開いた構造(即ち、アノード活性物内に空間を有する)を持ち、SEIの成長を可能とし、かつ充電段階(即ち、アノードのリチウム化段階)で前記アノード内で前記電気活性物質が膨張することを可能とするものである。前記アノード活性物の開いた構造は前記粒子自体から生じるものであってよい。例えば、粒子表面にピラー又は類似の突出物などの構造エレメントを持つことができ、これによりエレメント間に空間を与えこれによりSEIの成長及びリチウム化段階でのシリコンの膨張を可能とする。
【0052】
特に構造化電気活性物質はシリコンコーティング粒子からなる構造化シリコン材料であり、アノード活性物を与えこれは開かれた(即ち、前記体間に空間を有する)構造であり、これによりSEI成長を可能とし、アノードの充電(即ち、リチウム化)の際のアノード膨張を可能とする。前記開かれた構造は前記粒子自体から生じるものであってよい。例えば、粒子表面にピラー又は類似の突出物などの構造エレメントを持つことができ、これによりエレメント間に空間を与えこれによりSEIの成長及びリチウム化段階でのシリコンの膨張を可能とする。
【0053】
他の実施態様では、それぞれの粒子は構造中にボイドを含み、該ボイドは前記粒子が、ここで意味するピラー化粒子と同様の機能を満たすことを可能にする。
【0054】
または、前記粒子は次のように形状化され得る。即ち、SEIの成長のために粒子間に空間を提供し、かつアノードの集電体上に堆積される際に、リチウム化段階で電気活性物質の膨張を可能とするように、である。かかる粒子は通常細長く、アスペクト比(最小と最大寸法の比)が少なくとも5及び場合により少なくとも10、例えば少なくとも25又は少なくも100である。
【0055】
特に前記粒子は、次のように形状化され得る。即ち、SEIの成長のために粒子間に空間を提供し、かつアノードの集電体上に堆積される際に、リチウム化段階で電気活性物質の膨張を可能とするように、である。かかる粒子は通常細長く、アスペクト比(最小と最大寸法の比)が少なくとも5及び場合により少なくとも10、例えば少なくとも25である。上記の第一の場合(即ち、構造化エレメントを含む粒子)、構造化エレメントの最小寸法は少なくとも50nm、好ましい少なくとも100nm及び10μm以下である。構造化エレメントは好ましくは、アスペクト比(前記エレメントの最小寸法に対する最大寸法の比)が1を超え、最も好ましくは少なくとも5であり、これにより電気活性物質内の長距離間接続が改良されることとなる。構造化電気活性物質粒子の最大寸法(好ましくは離間構造エレメントを表面上に持つシリコン粒子である)は好ましくは60μm未満、最も好ましくは30μm未満である。該粒子が2つ以上の寸法においてこれらよりも大きい場合には、前記カソード寸法に適合する層厚さのセルアノードの製造が困難となる。
【0056】
本実施態様で、再充電可能電池セルに含むための種々の構造化材料及び粒子のサイズ、成分及び形状について説明した。これらの材料及び/又は粒子は再充電可能電池セルに、前記粒子の少なくとも50%(重量%)がここで説明したサイズの範囲、成分又は形状を有するものであり、場合により少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%例えば95%がそうである。
【0057】
特に記載されない限り、ここで示された全てのパーセントは重量%である。上記の構造エレメントであり、最小寸法が少なくとも0.01μm、例えば少なくとも0.05μm、アスペクト比が少なくとも5である構造エレメントとして、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、チューブ及びロッドなどの細長い構造が挙げられる。これらの細長い構造は適切に、複合電極材料へ成形され、リチウムイオン電池のアノードを形成するための集電体へ層として適用され得るものである。
【0058】
上で示したように、細長い構造は場合によりフェルト形状で提供され得る。ここで細長い構造がランダムに縺れ合った結果、複合電極又はアノード材料中で接続ネットワークを形成することとなる。例えば、複合体内の細長い構造間での多重交差形成などである。又は、細長い構造は足場構造へと形成され得る。これは細長い構造が相互に接続された3次元配置を含む。
【0059】
用語「複合電極材料」とは、混合物を含む材料を意味し、該混合物は実質的に均一混合物であり、1以上の電気活性物質と少なくとも1以上のさらなる成分を含み、該成分は、限定されるものではないが、バインダ、導電性材料、粘度調節剤、フィラー、架橋促進剤、カップリング剤及び接着促進剤を含む群から選択されるものが挙げられる。前記複合体の成分は適切に混合され均一な複合電極材料を形成し、これをコーティング剤として基板又は集電体上に適用し複合電極を形成する。好ましくは、複合電極材料の成分は溶媒を用いて混合され電極混合物を形成する。前記電極混合物はその後基板又は集電体へ適用され乾燥されて複合電極材料を形成する。複合電極材料は適切に、集電体上に接着性物の形で与えられ、それにより材料の成分の秩序は、前記複合材料を含む電池の100回の充電放電サイクルに対しても維持されることとなる。好ましくは、複合電極材料は多孔性であり、液体電解質が複合体へ浸透し、電気活性物質の表面の少なくとも一部を濡らすことができる、ものである。複合体の多孔性は次のように定められ得る。即ち、前記液体電解質が接近・浸透可能な複合体に含まれるボイド空間の総容積を、前記複合体の全要容積に対するパーセントで表現されたものである。前記多孔性は水銀多孔度測定方法で測定され得る。前記複合体は多孔度を少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%有するものである。多孔度は80%未満、好ましくは60%以下である。最も好ましい多孔度は25−50%の範囲である。
【0060】
用語「電極混合物」とは、キャリア又は溶媒としてのバインダの溶液中の電気活性物質のスラリー又は分散物を含む組成物を意味するものと理解されるべきである。また、溶媒又は液体キャリア中の、電気活性物質及びバインダのスラリー又は分散物を意味すると理解されるべきである。
【0061】
以下に、上記説明された構造化シリコン粒子の例(ただしこれらに限定されるものはない)の幾つかを示す。本特許出願は構造化シリコン粒子のみに限定されることはなく、ここで記載された他の電気活性物質の構造化粒子又はエレメントへ拡張される、ということは理解されるべきである。
・シリコン系ファイバ、直径が少なくとも10nm、好ましくは少なくとも30nmおよびさらに好ましくは少なくとも50nmである。好ましくは本発明の第一の側面のシリコン系ファイバは、直径10から500nm、好ましくは10から250nm、より好ましくは50から250nm及び特に好ましくは80から200nmのものである。これらのシリコン含有ファイバは好ましくは長さが、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも1μm、及び好ましくは500μm以下である。長さ1から150μm、好ましくは1から80μm及び特に5から60μmのものは、本発明の第一の側面によるセルの製造に適切に使用される。また、このファイバはフェルトへ又はフェルトなどを含む足場へ形成され得る。該ファイバはまた、コア−シェルの細長い構造のコアを形成することができる。例えば外側に導電性コーティングされたシリコン系ナノワイヤ、又は導電性チューブ構造(即ちカーボンナノチューブ)でチューブ内部にシリコン系材料を含む(即ち、シリコン含有チューブ)ものである。ここで定める寸法を持つ他の電気活性物質のファイバ(即ち、例えば、スズコーティングチューブ、ガリウムコーティングチューブ)もまた、本発明に含まれる。
・シリコン系チューブ、壁厚が≧10nm、例えば≧50nm又は場合により≧100nmであり、長さが≧1μm,例えば≧2μmである。シリコン系チューブについては一般に3つの独立した寸法で定義される。第一の寸法(通常壁厚)が適切には、0.01μmから2μm、好ましくは0.05μmから2μm、より好ましくは0.08から0.5μmの範囲である。前記第二の寸法は適切には、前記第一の寸法の2.5倍と100倍の間であるべきである。第三の寸法は、前記第一の寸法の10倍と500倍との間である。前記第三の寸法は例えば、500μmである。シリコン以外の電気活性物質から形成されるチューブもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系リボン、厚さ50から200nm、例えば80から150nm、幅250nmから1μm、例えば500から800nm、及び長さ≧1μm、例えば≧5μmである。またかかるリボンを含むフェルト。シリコン系リボンはまた、3つの独立する寸法で定められる。第一の寸法は適切には、0.05μmから2μm、好ましくは0.08μmから2μm、より好ましくは0.1μmから0.5μmである。第二の寸法は適切には、第一の寸法の少なくとも2倍又は3倍である。第三の寸法の合計長さは5例えば500μm程度である。シリコン以外の電気活性物質から形成されるリボンもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系フレーク、厚さ50から200nm、例えば80から150nm、及び2つの他の寸法は、1から20μm、例えば3から15μmである。シリコン系フレークはまた、3つの独立した寸法で定められる。第一の寸法は適切には0.05から0.5μm、好ましくは0.08から0.2μm、より好ましくは0.1から0.15μmである。第二の寸法は適切には、第一の寸法の10倍から200倍の範囲である。第三の寸法は第一の寸法の10倍から200倍の範囲であるべきである。第三の寸法の総長さは、例えば500μm程度である。シリコン以外の電気活性物質から形成されるフレークもまた本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系ピラー化粒子は、シリコン系粒子コア、直径5から25μm、例えば8から18μmを含み、かつシリコンピラーのアレイ、ロッド又はナノワイヤが該コアに付されている。前記ピラーは、直径少なくとも50nmから10μm以下、特に1000nm未満、好ましくは50から250未満、例えば100から200nmであり、長さが少なくとも0.5μmから200μm以下、好ましくは1から50μm、より好ましくは1から5μm、例えば2から4μmの範囲である。前記粒子のコアは、規則的であっても不規則的断面であってよく、球状又は非球状であってよい。シリコン系ピラー化粒子の最大直径は一般に40μm未満例えば30μm未満である。シリコン以外の他の電気活性物質から形成されるピラー化粒子も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン以外の粒子コアを含むシリコン含有粒子、前記コアは直径5から25μm、例えば8から18μmであり、該コアに付されたシリコン含有ピラー、ナノワイヤ、又はロッドを持つ。前記ピラーは、長さが少なくとも0.5μmから200μm以下、好ましくは1から100μmの範囲、より好ましくは1から50μmの範囲である。前記ピラーの平均直径は好ましくは1000nm未満、より好ましくは250nm未満である。粒子コアは規則的又は不規則的断面であってよく球状又は非球状であり得る。組み込まれた構造化された粒子の最大寸法は一般的に40μm未満、例えば30μm未満となる。
・シリコン含有粒子コアを含む粒子、前記コアが直径5から25μm、例えば8から18μmであり、該コアに、シリコン以外の電気活性物質から形成されるピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径10から500nm、好ましくは50から250nm、例えば100から200nmであり、長さが1から5μm例えば2から4μmである。粒子コアは規則的又は不規則的断面を持ってよく、球状又は非球状であってよい。組み込まれた構造粒子の最大寸法は一般的に40μm未満例えば30μm未満である。
・シリコン含有多孔性粒子、シリコン系粒子を含み、その中に多くのボイド又はポアを持つ。隣接するポア間の壁の少なくともいくつかは厚さ≧10nm、好ましくは≧20nm、≧30nm又は≧50nm、例えば≧75nmであり、長さは≧100nmを超えて伸びており、例えば≧150nmであり、多孔性粒子の直径は1から30μm、例えば5から20μmである。好ましくは本発明のセルに含まれる多孔性粒子は主直径が1から15μm、好ましくは3から15μmの範囲であり、直径が1nmから1500nm、好ましくは3.5から750nm及び特に好ましくは50nmから500nmの範囲の直径のポアを含む。シリコン以外の他の電気活性物質から形成される多孔性粒子も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン系多孔性粒子断片、前記断片はシリコン含有多孔性粒子から得られる。好ましくはシリコン系多孔性粒子断片は、多孔性粒子断片を含み、最大寸法が少なくとも1μm、好ましくは少なくとも3μmであり、ポア壁厚さは少なくとも0.01μm、適切には0.05μm、好ましくは少なくとも0.1μmである。多孔性粒子断片の直径は、1から40μmの範囲、好ましくは1から20μm、より好ましくは3から10μmの範囲である。シリコン以外の他の電気活性物質から形成される多孔性粒子の断片も本発明の範囲に含まれる。
・シリコン含有ナノロッド構造、シリコン含有柱状束を含み、直径が50から100nmの範囲、及び長さが2から5μmの範囲である。構造中のそれぞれのナノロッドは直径が少なくとも10nmを持つ。
・ここで記載のシリコン含有基板及びシリコン以外の電気活性物質から形成される基板粒子はまた、本発明の範囲に含まれる。
・ここで記載のシリコン含足場構造及びシリコン以外の電気活性物質から形成される足場構造はまた、本発明の範囲に含まれる。
【0062】
用語「ファイバ」とは、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及び以下説明するロッドを含む意味であり、これらの用語は交換可能に使用される、ということを理解されるべきである。しかし、本発明の用語「ピラー」は、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント又はロッドであって、粒子基板の1つの端に付されているような構造を記載するために使用されるものである、ということは理解されるべきである。ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド及びフィラメントは1つの実施態様では、付されていた基板からピラーを剥がして得ることができるものである。
【0063】
シリコン系フィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッドにつきここで具体的に説明する。シリコン以下の電気活性物質から形成されるフィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッドもまた、本発明の範囲に含まれる。さらに、用語「シリコン系フィラメント、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、フィラメント、ピラー及びロッド」とは、細長いエレメントであり、2つの小さい寸法と1つの大きな寸法で定義されるものであり、前記大きい寸法と小さい寸法とのアスペクト比が通常5:1から1000:1の範囲のものである、という意味で理解されるべきである。この意味で、該用語はそれぞれ交換可能に使用され得る。分枝した構造は主軸に付される枝の数に応じて、バイポッド、トリポッド又はテトラポッドなどと参照される。
【0064】
上記において、用語「ナノワイヤ」とは、次のエレメントを意味するものとして理解されるべきである。即ち、直径が1nmから500nmの範囲で、長さが0.1μmから500μmの範囲であり、アスペクト比が10を超え、好ましくは50を超え、特に好ましくは100を超えるものである。好ましくはナノワイヤは直径が20nmから400nmの範囲、より好ましくは20nmから200nmの範囲、特に100nmである。本発明の組成物に含まれるナノワイヤの例はUS2010/0297502及びUS2010/0285358に開示されている。
【0065】
用語「ピラー化粒子」とは、粒子コアと該コアから伸びている複数のピラーを含む粒子を意味するものとして理解されるべきである。ピラー化粒子は直接集電体に適用され得る。又は複合電極材料中に含まれ、ネットワーク中で別の粒子として又はこれらの混合物として提供され、該ネットワーク中では、1つの粒子のピラーが重なるか又は直接他の粒子のピラーと接続される。ピラー化粒子は最も好ましくは、複合電極材料中で別々の粒子の形で与えられ、充電及び放電サイクル段階で、前記電極材料中の他のピラー化粒子の膨張・収縮に何らの影響を与えることなく、膨張し収縮できるものであり、これにより相当な数の充電及び放電サイクルにわたり電極材料の導電性維持に寄与することができる、というものである。
【0066】
用語「多孔性粒子」とは、その内にボイドまたはチャンネルのネットワークを含む粒子を意味する、ものと理解されるべきである。これらのボイド又はチャンネルは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルをも含むものである。多孔性粒子は通常、実質的に球形状かつ相対的になめらかな表面形態により特徴的である。多孔性粒子に関して定義される用語「ポア」、「チャンネル」とは、これらのボイド又はチャンネルは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルをも含むものを意味するものとして、理解されるべきである。ポア及び/又はチャンネルのネットワークは適切には、前記粒子内を通じる3次元のポア及び/又はチャンネル配置を含み、その中でポア及び/又はチャンネル開口部が多孔性粒子の表面上の2以上の平面上に与えられるものである。多孔性粒子は通常主直径が1から30μmの範囲、好ましくは1から15μmの範囲、より好ましくは3から15μmの範囲であり、直径1nmから1500nm、好ましくは3.5から750nm、特には50nmから500nmの範囲のポアを含む。かかる粒子は通常、シリコン粒子又はウェハのステインエッチングなどの技術を用いて製造され、又はシリコン合金例えばシリコンとアルミニウム合金の粒子のエッチングにより製造される。かかる多孔性粒子の製造方法は着られており例えばUS2009/0186267,US2004/0214085及びUS7,569,202に記載されている。
【0067】
用語「多孔性粒子断片」とは、シリコン含有多孔性粒子からの全ての断片を意味するとして理解されるべきである。かかる断片には、実質的に不規則な形状及び表面形態を持つ構造が含まれ、これらの構造は、該断片が得られる前記多孔性粒子内のポア又はポアのネットワークを定め又は境界を当初定めていたシリコン材料から得られ、断片自体はポア、チャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークを含むことはない。かかる断片は以後フラクタルと参照する。これらのフラクタル構造(ポア、チャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークが欠けた)の表面形態は、当初のシリコン構造により境界付けられていたポア又はチャンネル又はポア又はチャンネルのネットワークからのぎざぎざや不規則性を含み得る。これらのフラクタル断片は通常、その表面上に伸びるピークや谷の存在で特徴付けられ、スパイク状の外観を持つ粒子を含み、また粒子の表面から伸びる複数のリッジを含む外観を持つ粒子を含む。該ピークはピーク高さ及びピーク幅で特徴付けられる。ピーク高さはピークの底部(ピークが前記フラクタルの本体の合流する位置)とピークの頂上との距離として定義される。ピーク幅はピークの1つの側と他の半分高さでの最小距離として定義される。用語「電気活性物質含有多孔性粒子断片」とはまた、多孔性断片であって、シリコン含有壁により分離され定められたポア及び/又はチャンネルのネットワークを含む多孔性断片を意味する。これらの断片はポア含有断片として参照する。多孔性粒子断片自体と同様に断片が得られる多孔性粒子に関する用語「ポア」又は「チャンネル」とは、粒子表面から前記粒子内部へ伸びているチャンネルと同じく、粒子の総容積内で閉じているか又は部分的に閉じているボイド又はチャンネルを意味するものとして理解されるべきである。多孔性粒子断片に含まれるこれらのポア及び/又はチャンネルはまた、規則的形状及び表面形態により特徴付けられる。対照的に、断片が得られる多孔性粒子は実質的に球状の形状及び相対的になめらかな表面で特徴付けられる。フラクタル及び多孔性粒子断片を含むポアは以後一緒に説明され、まとめてシリコン含有多孔性粒子断片と参照される。
【0068】
フェルトは、電気活性物質のファイバ特にシリコンファイバが共に結合し合いマットを形成した構造である(例えばWO2009/010757に記載)か、又は多重の交差を持つファイバの相互結合されたネットワークを形成するためのランダム又は非ランダムに配置されたものである。非結合フェルト構造はまた、本発明の範囲に含まれる。ピラー化粒子はWO2009/010758に開示されている。ピラーは、WO2007/083152,WO2007/083155,WO2010/040985及びWO2010/040986に開示される方法で粒子をエッチングして生成され得る。ファイバは上記のように基板上又は粒子上をエッチングしてピラー化し、該基板からピラーを引き剥がすことでファイバを形成する(例えば超音波)。特に好ましい構造粒子はシリコンファイバ又はシリコンピラー化粒子であり、アノード構造内でシリコン−シリコン結合を生成して電極構造を強化できる。
【0069】
電気活性多孔性粒子は、種々の方法で製造でき、例えばUS7569202,US2004/0214085,US7244513及びPCT/GB2010/000943が参照できる。シート状の粒子例えばフレーク及びリボン状粒子はWO2008/139157に記載の方法で製造され得る。
【0070】
用語「足場」とは、ファイバ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ロッド、フレーク、リボン及びチューブをなどから選択される1以上の構造エレメントの3次元配置を意味し、かかる構造は接触する点で共に結合されているものである。この構造エレメントは、3次元配置でランダム又は非ランダムに配置され得る。3次元足場は、シリコン、スズ、ゲルマニウム又はガリウムなどの電気活性物質を含むコアを持つコーティングされた又はコーティングされていない構造を含み得る。又は足場はヘテロ構造であってよく、3次元配置構造であって電気活性物質又は非電気活性物質系足場材料を含み、これが小さな島、ナノワイヤ又は前記足場が形成された電気活性物質とは異なる組成を持つ電気活性物質のコーティング上に堆積されるものを含む。好ましくは、このタイプの足場は、カーボンファイバのネットワーク、スレッド、ワイヤ又は小さな島を有するナノワイヤ、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、スズ又はこれらの合金又はこれらの混合物などの電気活性物質でコーティングされた薄膜を含む。足場はシリコン系コーティングを含む場合、1以上の追加のコーティング層がさらに適用されてよい。コーティング層は連続的に実質的に全ての足場構造表面に適用されてよい。又はコーティング層は不連続であってよく、足場構造の表面のある領域のコーティングが存在しないことで特徴付けられてもよい。1つの実施態様で、コーティング材料はランダムに分配されてよく、又はある一定のパターンで足場構造上の表面に分配されてもよい。本発明のバインダ組成物中の含まれ得る足場構造の例はUS2010/0297502に開示されている。
【0071】
本発明の電池セルの製造に使用される複合電極材料中に含まれる、粒子、チューブ、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、シート及びリボン及び足場は、結晶性、ミクロ結晶性、多結晶性又はアモルファスであってよく、又はアモルファス構造中の結晶性又は多結晶性領域であってよい。これらの構造は例えばWO2009/010758に開示されるエッチング技術又はUS2010/0330419に開示の電子スピニングを用いて製造できる。又はこれらは例えばUS2010/0297502に開示される、触媒気相−液相−固相方法などの成長技術を用いて製造することができる。US2010/0297502に開示される方法を用いて、カーボン粒子基板などの導電性基板表面に、ナノ粒子、ナノワイヤ及びナノチューブを成長させることができる、ということは当業者には明らかである。
【0072】
チューブ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、シート及びリボンなどの細長い構造はまた、基板に初めから成長させるか又はそこから刈り取ることができる。初めから成長させる構造は当業者に知られた技術で製造され得る。例えばJP2004-281317及びUS2010/0285358を参照できる。適切な技術の例には、例えばアニーリング又はインパクト技術を用いる基板への貼付けを含む。他の技術には、化学蒸着、物理蒸着、エピタキシャル成長、原子層堆積などが挙げられ、これらの技術は最初から成長させる結果となる。又は前記構造は上で説明したようなエッチング技術を用いても形成され得る。
【0073】
ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、ロッド、ピラー、シート、リボン及びチューブが基板に付されている場合に、これらの構造の組成物は、該基板の組成物と同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
用語「カーボン基板」とは、少なくとも50w/w%から100w/w%カーボンを含み、その上でのナノ粒子、ナナオワイヤ又はナノチューブなどの成長を支持するために使用され得る基板を意味するものと、理解されるべきである。
【0075】
用語「基板粒子」とは、粒子又は顆粒状基板上に形成された電気活性物質の分散物を含む粒子を意味するものとして、理解されるべきである。前記基板は電気活性物質であっても、非電気活性物質であってもよく又は導電性物質であってもよい。基板が電気活性物質である場合、それは適切に前記基板上に分散される電気活性物質の材料とは異なる組成物を持ち得る。好ましくは、粒子状又は顆粒状基板がカーボン系材料、例えばグラファイト、グラフェン又はカーボンブラックなどの導電性カーボンである。好ましくは、分散電気活性物質は、シリコン、ガリウム又はゲルマニウム又はそれらの混合物を含む群から選択される1以上である。好ましい基板粒子は、直径が1nmから500nm、好ましくは1から50nmの範囲の電気活性物質のナノ粒子であり、カーボン基板(基板粒子が直径5から40μm、好ましくは20μmを持つ)の粒子又は顆粒上に分散されているものである。シリコンが分散される電気活性物質として好ましい。シリコンナノ粒子により基板のカバー率は完全に又は不完全にであってよく、好ましくは不完全である。本発明の電気活性物質と組み合わせて使用され得る基板粒子の例は、US6589696に開示されている。用語「シリコン系」とは、ここで定める純度及び構造を持つシリコンを含む元素状シリコンなどのシリコン含有材料から、また同様にシリコンと、アルミニウム、スズ、銀、鉄、ビスマス、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、鉛、チタン及びそれらの混合物との合金からも形成される構造を含むものとして、理解されるべきである。
【0076】
用語「シリコン系」はまた、ここで定めたシリコン含有材料からほとんど完全に形成される構造と同様に、2以上の構造成分を含む構造もまた含むものである。前記2以上に構造成分とは、少なくとも1つの成分がその隣接する成分とは異なる組成を持つ材料から形成されるものである。この意味で、シリコン系粒子なる用語は、シリコン以外の材料からなるコアでそこに適用されたシリコン含有コーティングコアを含む構造も、シリコンコーティングされたコアに非シリコン含有コーティングが適用された構造も含まれる。
【0077】
用語「チューブ、ワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ファイバ、ロッド、フィラメント、シート及びリボン」とは、コーティングされたかコーティングされていない細長いエレメントであり、例えばワイヤ、ナノワイヤ、スレッド、ピラー、ファイバ、ロッド、フィラメント、シート、チューブ及びリボンが挙げられるものを意味するものとして、理解されるべきである。非コーティング細長いエレメント、粒子、多孔性粒子及び多孔性粒子断片は、シリコン含有粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片には、シリコン含有粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、フィラメント、シート、チューブ及びリボンであり、構造の断面を通じて均一な組成を持つものを含み、同様に粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであってシリコン含有コア又は基本層を持ち、これらがシリコン含有材料を含みかつ第一のシリコン純度を持つコア又は基本層と、シリコン含有材料で第二のシリコン純度を持つ外層とを含むものであって、前記第二の純度が前記第一の純度とは異なる、ものをも含まれる。
【0078】
コーティング粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンには、粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであって、シリコンなどの電気活性物質のコアを含みかつ1以上のコーティングがそこに適用されているもの、が含まれる。粒子、多孔性粒子、多孔性粒子断片、ピラー化粒子、基板粒子、ワイヤ、ナノワイヤ、ファイバ、スレッド、ピラー、ロッド、シート、チューブ及びリボンであって、シリコン以外のコアに1以上のシリコンなどの電気活性物質を含むコーティングが適用されているものも含まれる。コーティングが適用される場合には、適用される本発明油面を連続的にカバーするか、又は下地の暴露部分を部分的にのみカバーしてもよい。多重コーティングが適用される場合には、それぞれのコーティングは連続的又は不連続のいずれでもよく、前層により生成された暴露表面を完全に又は部分的に重なってもよい。
【0079】
多重層がコア又は下地表面(例えば基板)に適用される場合、それぞれのコーティング層が先行する層(又はコア又は基板であって、問題となるコーティングが最初のコーティング層である場合)とは異なる組成を持つことが好ましい(必須ではないが)。本発明のバインダ成分と混合可能な電気活性物質には、コアシェル構造、周りに1以上のシェル又は層を持つコアを含む構造を持つ1以上のエレメントを含み、それぞれのシェル又は層はその先行するシェルの組成とは異なる組成を持つ。
【0080】
疑いを避けるために、コーティング構造は次の構造を含むことができる。即ち、コアと1以上のコーティング層が電気活性物質を含む構造、コアが電気活性物質を含み全てのコーティング層が非電気活性物質から形成される構造及びコアが非電気活性物質を含み、1以上のコーティング層が電気活性物質から形成される、構造である。1以上の電気活性コーティング層が適用された電気活性物質コアを含む構造もまた含まれる。ここで参照される粒子及び細長いエレメントが電気活性物質のコーティングを含む場合に、これらのコーティングされた細長いエレメントのコア及び粒子は、カーボン、好ましくはハードカーボン又はグラファイト、電気活性セラミックス材料又はシリコン、スズ、ゲルマニウム、ガリウム又はそれらの合金又はそれらの混合物などの適切な金属から適切に選択される。ここで参照されるシリコン含有構造には、コーティングを含み、このコーティングは好ましくは、アモルファスカーボン、グラファイト、電気活性ハードカーボン、導電性カーボン、カーボン系ポリマー又はカーボンブラックからなる群から選択される1以上の種類を含むカーボンコーティングを含む。コーティングは通常シリコン含有構造へ、コーティングされたシリコン含有構造の5から40重量%の範囲となる厚さで適用される。シリコン含有粒子及び細長いエレメントへのコーティング方法は、当業者に知られている。化学蒸着、熱分解及びメカノフージョン技術などが含まれる。堆積技術はUS2009/0239151及びUS2007/0212538に開示されている。熱分解は、WO2005/011030,JP2008/186732,CN101442124及びJP04035760に開示されている。カーボンコーティングは、電気活性物質の表面でSEI生成物層の形成及び安定化を制御するために助けとなり得る。上で示したように、カーボン系以外のコーティングも使用され得る。適切な代わりのコーティングの例には、アルミニウム、銅、金及びスズなどの金属、また同様に導電性セラミックス及びポリマー系コーティングも含まれる。好ましくは電気活性細長いエレメント又は粒子はシリコンを含有し、前記コーティングがシリコン含有コーティングである。
【0081】
本発明の第一の側面によるセルに設けられる電気活性物質粒子の直径は、当業者に知られる種々の方法で決定され得る。かかる技術には空気溶出分析、光学粒度測定、光学計数方法及びレーザー回折分析などが含まれる。
【0082】
シリコン材料はドープされていてもよくされていなくてもよい。単結晶でも多結晶でもアモルファスでも、又は結晶とアモルファスの混合物でもよい。しかし我々は以下の点見出した。即ち、上で説明した構造化された寸法の形を持つものであれば、膨張/収縮損傷効果を最小限とするために多結晶及び/又はアモルファスシリコン(最初の充電に先立って)であることは必要ない、ということであり、これはUS2009/0305129,US2009/0053589及びUS7476469で教示するものとは逆である、ということである。本質的に単結晶及び/又は結晶サイズが>1μmであるものが好ましい。というのは一般的により安価に調製でき、電極操作の際により均一なSEI層を形成することが可能となるからである。
【0083】
構造化電気活性物質は適切には、電極中の活性物質の全量の少なくとも5重量%、より適切には10重量%、好ましくは20重量%、より好ましくは少なくとも50重量%および特に好ましくは70重量%である。特に構造化電気活性物質が構造化シリコン材料であり、電極中の活性物質の全量の少なくとも10重量%、より好ましくは20重量%例えば50重量%である。構造化シリコン材料は適切には、電極内の活性物質の全量の5から90重量%、より適切には25から90重量%、好ましくは30から80重量%及び特に40から70重量%である。
【0084】
ここで説明された構造化電気活性物質は、適切に複合電極材料へ形成され、集電体の表面へ適用されてアノードを形成し、本発明の電池セル中に、ここで説明された電解質組成物と共に含まれるものである。特にアノードは、ここで記載された構造化シリコン材料を含む複合電極材料から適切に形成される。
【0085】
ビニル基を含む環状カーボネート及び/又はハロゲン化環状カーボネート(例えばFEC及び/又はDFEC)を電解質添加剤としてここで定めるある濃度範囲で使用することは、構造化電気活性物質、特に構造化シリコン材料を含むリチウムインセルのサイクル性能を改善する上で顕著な効果を持つことが見出された。特に、VC及び/又はフッ化エチレンカーボネート、特にFEC、DFEC又はそれらの混合物を電解質添加剤としてある定められた濃度範囲で使用することが、構造化電気活性物質、特に構造化シリコン材料を含むリチウムインセルのサイクル性能を改善する上で顕著な効果を持つことが見出された。
【0086】
以下の開示から次の点が理解されるべきである。即ち、ビニル基含有環状カーボネート及びハロゲン化環状カーボネートの両方の電解質中濃度は、これらがお互いに独立して添加されるのか又は混合物として存在するのかに依存するということである。一般に、ビニル基を含む環状カーボネートは適切には、少なくとも電解質の量に対して1重量%, 重量%,3重量%,5重量%,10重量%又は15重量%含み得る。ハロゲン化環状カーボネートは、一般に、電解質液の70重量%を超えない濃度であり得る。
【0087】
しかし、電解質がビニル基を含む環状カーボネートを唯一つの添加剤として含む場合には、これは適切には、電解質全量の3.5から8重量%、好ましくは4.5から6重量%及び特に5から6重量%である。ビニル基含有環状カーボネートを3.5から8重量%、特に5から6重量%含む電解質を含む電池は、ビニル基含有環状カーボネートをかかる範囲に入らない濃度で含む電解質を含む電池と比較して、優れた性能を示すことが観測された。この効果は適切には、電解質にVCのみを添加する特別の場合にも例示される(即ち、フッ素化エチレンカーボネートが添加される)。サイクル性能の改良は、添加VCがグラファイトアノード技術で使用されるものと同じ量が添加される場合には特に顕著ではないが、これらの効果を奏するための添加される必要な量(電極重量に対して2%)は、グラファイトアノード技術から明らかとなるであろうよりも実質的に多いものである。しかしVCのみの量が多すぎると(電解質重量に対し約8%)、セル性能は、電解質の抵抗増加(低イオン伝導性)によるものと思われる。高いVC含有量はまた、コストを上げ、電解質の棚寿命を低減させる。われわれの次の知見を得た。VC含有量が電解質の重量に対し、3.5から8%、特に5から6%の場合に、構造化シリコン材料のアノードを用いることで非常に改良されたサイクル性能が達成され、かつ同時に電解質抵抗を維持し、セルのコスト及び使用寿命を商業的に許容されるレベルにすることでできる、ということである。最適の結果はVC含有量が4.5から6%、例えば約5から6%であると、考えられる。本発明の第一の側面の好ましい第一の実施態様においては、電解質は5から6重量%のビニル基を有する環状カーボネートを含むものである。ビニレンカーボネートを5から6%含む電解質と、シリコンファイバ又はピラー化粒子から選択される構造化シリコンを含む電池は特に好ましい。
【0088】
ここで記載した添加剤のパーセントは添加剤を含む電解質液の全重量に比較した添加剤の重量に基づき計算される。例えば、添加剤としてVCなどのビニル基を有する環状カーボネートを5%含む電解質液は、95gの電解質にビニル基を含むカーボネート(VCなど)を5g添加して製造される。
【0089】
ハロゲン化環状カーボネートが単独で使用される場合、これは適切には電解質の総重量の少なくとも5%、好ましくは少なくとも12%およびより好ましくは少なくとも15%含まれる。電解質液中のハロゲン化環状カーボネートの濃度は通常75重量%、好ましくは70重量%、より好ましくは50重量%特に30重量%を超えない。以下の知見が得られた。電解質液がフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)をハロゲン化環状カーボネートとして5重量%から50重量%の間の濃度で含む場合には、この電解質液を用いて製造された電池は50サイクルを超えて90%を超える効率が得られる、ということである。特に優れた結果は、電解質液が少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む場合に得られた。本発明の特に好ましい第二の実施態様は、10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む電解質液と、シリコンファイバ及びシリコンピラー化粒子から選択される構造化シリコンとを含む電池セルを提供するものである。
【0090】
上記添加剤に加えて、電解質液は通常基本溶媒として、鎖状又は直鎖カーボネートとビニル基を含む環状カーボネート以外の環状カーボネートとの混合物を含む。鎖状又は直鎖カーボネートと、ビニル基を含む環状カーボネート以外の環状カーボネートとの比は、適切には、容積比で7:3から3:7の比、好ましくは7:3から1:1の比である。ハロゲン化環状カーボネートが電解質液に添加される場合には、前記基本溶媒中の環状カーボネートと完全に又は部分的に置換され得る。この場合には、全環状カーボネート量(基本環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネートとの和)と、鎖状又は直鎖カーボネートとの比は上で定めた比の範囲に維持される。
【0091】
または、ハロゲン化環状カーボネートは基本電解質液に添加され得る。この添加は、通常、環状カーボネートと、鎖状(又は直鎖)カーボネートとの比を変える。しかし前記電解質液に添加されるハロゲン化環状カーボネートの量は、上で定めた環状と直鎖カーボネートの容積比範囲を超えないように充分な量であるべきである。
【0092】
従って、本発明のひとつの実施態様では、ハロゲン化環状カーボネートが部分的に基本溶媒環状カーボネートと置換され、環状及び鎖状(又は直鎖)カーボネートの30:70混合物を含む電解質液は、適切には、15容量%のハロゲン化環状カーボネート、15容積%の基本溶媒環状カーボネート及び70容積%の基本溶媒鎖状(又は直鎖)カーボネートを含む。ハロゲン化環状カーボネートの濃度が30容積%に増加する場合には、環状及び鎖状カーボネートを30:70の比内に維持するためには70容積%の基本溶媒鎖状(又は直鎖)カーボネートのみを添加する必要があり、追加の基本溶媒環状カーボネートは必要ない。というのはハロゲン化環状カーボネートがこの実施態様では環状カーボネートを完全に置換するものだからである。次の点が理解されるべきである。同様の考え方が、環状および鎖状(又は直鎖)カーボネートを基本溶媒として異なる比率で含む電解質液を調製する際に適用される、ということである。
【0093】
ハロゲン化環状カーボネートが添加剤として使用される場合には、これは適切には、環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートの混合物を含む基本溶媒へ添加される。ハロゲン化環状カーボネートは基本溶媒へ、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%例えば30重量%の量で添加され得る。基本溶媒は適切には環状カーボネートと鎖状又は直鎖カーボネートとを、7:3と3:7の比の間、好ましくは7:3と1:1の比の間で含む。
【0094】
基本溶媒として使用可能な環状カーボネートには、限定されるものではないが、エチレンカーボネート(EC),ジエチレンカーボネート(DEC),プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート,γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンが挙げられる。基本溶媒として使用可能な鎖状又は直鎖カーボネートには、限定されるものではないが、ジメチルカーボネート(DMC),ジエチルカーボネート(DEC),エチルメチルカーボネート(EMC),メチルプロピルカーボネート,ジブチルカーボネート(DBC)及びメチルオクチルカーボネート(MOC)が挙げられる。好ましい基本環状カーボネートはエチレンカーボネート(EC)である。好ましい鎖状(又は直鎖)カーボネートはエチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである。特に好ましい第三の実施地用では、基本溶媒は、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物である。本発明の第一の側面の好ましい実施態様では、シリコンファイバ材料及びシリコンピラー化粒子から選択される構造化シリコン材料と環状カーボネート及び鎖状又は直鎖カーボネートとを30:70から70:30の比で、好ましくは30:70から1:1の比で含む混合物を含む電解質とを含む電池を提供するものである。ここで前記電解質は少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも12重量%例えば15又は30重量%のハロゲン化環状カーボネートを含む。本発明の第一の側面の特に好ましい実施態様では、シリコンファイバ材料及びシリコンピラー化粒子又はそれらの混合物から選択される構造化シリコン材料とエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合物を3:7から1:1の間の比で含む電解質とを含む電池を提供するものである。
【0095】
理論に縛られることなく、次のように考えられる。即ち、電解質添加剤としてFEC及びDFECなどのハロゲン化環状カーボネートの使用は、フッ化リチウム及びエチレンカーボネートを含む安定なSEI層を形成させる、ということである。ハロゲン化環状カーボネートとシリコン表面との反応により形成されるSEI層は、例えば、エチルカーボネートとシリコン表面の反応で生成されるSEI層よりも低密度でありよりフレキシブルであると考えられ、これにより長時間のサイクルに対して安定な構造が維持され得ることとなる。
【0096】
ビニル基を持つ環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネート、特にフッ化環状カーボネートを含む環状カーボネート混合物を含む電解質は、電池に含まれる場合に特に有益な結果を与えることが見出されている。ビニル基を持つ環状カーボネートとハロゲン化環状カーボネートは共に適切に、電解質液全体に対して少なくとも3.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%含む。これらを合計した量は通常は、電解質液全体に対して70重量%未満、適切には50重量%未満及び好ましくは30重量%未満である。ビニル基を持つ環状カーボネートの濃度は電解質の全量に対して、好ましくは少なくとも1重量%、適切には3重量%であり、ハロゲン化環状カーボネートの濃度は電解質の全量に対して、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも12重量%例えば15重量%である。特に利益のある電解質液は、FEC及び/又はDFECなどの1以上のフッ化エチレンカーボネートと組み合わせてVCが使用されるものであり、この場合、かかる添加剤の合計量は電解質液全量に対して3.5%を超える量、例えば5%である。合わせた量は通常は、電解質イオン抵抗を大きく増加させないように、電解質全量に対して、70重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40%未満及び場合により30%未満である。かかる添加剤混合物を含む電解質液は、フッ化エチレンカーボネート(FEC及び/又はDFEC)の1つ又は両方の全量に対して、好ましくは1重量%のVC及び少なくとも3重量%、適切には少なくとも12重量%及び好ましくは少なくとも15重量%を含む。VC及び1以上のフッ化エチレンカーボネートが電解質液に存在する場合、VCの量は一般的には電解質全量の10%を超えず、例えば8%を超えない。本発明の好ましい第五の実施態様では、この混合物は1から8重量%のVCと3から60重量%、好ましくは5から50重量%、より好ましくは10から40重量%及び特に15から80重量%のFECが含まれる。
【0097】
本発明の第一の側面の好ましい実施態様では、添加剤としてビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池が提供される。好ましい第六の実施態様では、電解質は添加剤として、2重量%のビニレンカーボネート及び5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む。本発明の第一の側面の第七の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第八の好ましい実施態様は、2重量%のビニレンカーボネート及び10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十の好ましい実施態様は、2重量%のビニレンカーボネート及び30重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十一好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十二の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十三の好ましい実施態様は、5重量%のビニレンカーボネート及び30重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の発明者は次の知見を見出した。即ち、VCは、1以上のフッ化エチレンカーボネート(又はFEC及び/又はDFEC)と共に電解質添加剤と共に存在する場合に相乗作用を示すように見える、ということである。理論に束縛されることなく、フッ化エチレンカーボネートとVCとを電解質液に添加する有利な効果についての1つの説明は、フッ化エチレンカーボネート対Li/Li+の還元電位がエチレンカーボネート(EC,電解質として最も普通に使用されている溶媒のひとつ)の場合に比べて高く、従ってフッ化エチレンカーボネート(FEC及び/又はDFEC)の還元が初めに、最初の充電形成の際に生じる、ということである。フッ化エチレンカーボネートはまた、ラジカルイオンへ還元されやすく、これがVCの重合を開始させる−上式(2)を参照。
【0098】
CO2が溶解限度まで添加され得る。というのはわれわれは次の知見を得たからである。即ち、それによりリチウムセルの寿命をさらに増加されるから、ということである。理論に束縛されることなく、CO2の存在は暴露されたシリコン表面の優れた品質のLi2CO3SEI層を形成するための助けとなると考えられる。CO2は電解質液にCO2ガスを通じることで添加でき、CO2がその中に溶解する。電解質液に溶解するCO2の量は、最終液の少なくとも0.05重量%及び0.5重量%以下であり、好ましくは0.05から0.25重量%、より好ましくは0.16から0.2重量%の範囲である。
【0099】
特に、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート又はそれらの混合物を含む電解質液へCO2を、少なくとも0.05重量%及び0.5重量%以下、例えば0.05と0.25%の間で、好ましくは0.1と0.2%の間で、特に0.16と0.2%重量%の間で添加することは、かかる電解質液を含むセルの性能を更に改良するものである。ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2の混合物を含む電解質液は、特に優れた性能を示すことが見出された。ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2の混合物を含む電解質液は、この混合物を70重量%以下(電解質液全量に対して)、通常は50重量%未満、好ましくは30重量%未満含むものである。添加剤の混合物は適切には、電解質液の少なくとも4重量%、通常少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも15重量%例えば少なくとも20重量%含む。1つの実施態様では電解質液は適切には、ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2を含む環状カーボネートの混合物を4重量%から70重量%、通常は10から50重量%、好ましくは12から50重量%、より好ましくは15から30重量%含む。ビニル基を含む環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2を含む環状カーボネートの混合物を含む電解質液は、適切には、電解質液の全量に対して、この混合物を少なくとも3.5重量%、通常は少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは15重量%、特には30重量%、例えば50重量%含む。本発明の好ましい実施態様において、ハロゲン化環状カーボネートは、全電解質液に対して、5から50重量%、好ましい6.5から50重量%、好ましくは10から30重量%特に15から30重量%の範囲で含む。かかる混合物中でビニル基を持つ環状カーボネートの濃度は適切には、少なくとも1重量%、2重量%、3重量%、5重量%又は10重量%であり、濃度範囲は1から10重量%、2から5重量%及び特に2から3重量%が好ましい。
【0100】
本発明の第一の側面の第十四の特に好ましい実施態様では、添加剤として、5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十五の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のビニレンカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。
【0101】
本発明の第一の側面の第十六の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十七の特に好ましい実施態様では、添加剤として10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十八の特に好ましい実施態様では、添加剤として15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、3重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第十九の特に好ましい実施態様では、添加剤として5重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第二十の特に好ましい実施態様では、添加剤として10重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。本発明の第一の側面の第二十一の特に好ましい実施態様では、添加剤として15重量%のフルオロエチレンカーボネート又はジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物、2重量%のビニルカーボネート及び0.2重量%のCO2を含む電解質を含む電池を提供する。
【0102】
本発明者は、活性物質及び電解質を含む電池であり、前記電解質がハロゲン化環状カーボネート、ビニル基を含む環状カーボネート及びCO2を含む電池が、これまでに使用されてきたことを、信じるものではない。かつ本発明は、リコン含有電気活性材料、リチウムを電気化学的に挿入・放出し得る活性物質を含むカソード及び電解質を含む電池であり、該電解質が、1から8重量%のビニル基を持つ環状カーボネート、3から70重量%のフッ化環状カーボネート及び0.05から0.5重量%、好ましくは0.05から0.2重量%のCO2を含む、電池を提供するものである。この実施態様での電池に含まれるシリコン含有材料は、上で説明した構造化されたシリコン材料と同様に、そのままの粒子などの構造化されていないシリコン材料及びシリコン薄膜を含む。そのままの粒子とは、バルクシリコン含有材料を研削及び篩分け及び/又は分類することで得られる粒子である。そのままの粒子は適切には、最大寸法が40μm未満、好ましくは25μm未満である。好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が1から8重量%のビニレンカーボネート、3から70重量%のフルオロエチレンカーボネート及び0.05から0.25重量%のCO2を含むものである。特に好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が1から2から6重量%のビニレンカーボネート、5から50重量%のフルオロエチレンカーボネート及び0.16から0.20重量%のCO2を含むものである。特に好ましい電池は、シリコン含有電気活性材料(構造化及び非構造化シリコン材料を含む)、リチウムを挿入・放出可能な活性物質を含むカソード及び電解質を含むものであり、前記電解質が本発明の第一の側面の好ましい16から21の実施態様により定められる電解質を含むものである。
【0103】
理解されるべきことは、ビニル基を持つ環状カーボネート、ハロゲン化環状カーボネート及びCO2は、セルの寿命の間に消費されるということであり、ここで表す添加物の量は、最初にセルが製造される際に電解質に存在する量を意味するということである。特に電解質がVC、FEC又はDFECなどのフッ化エチレンカーボネート及びCO2の混合物を含む場合には、これらはセルの寿命の間(例えばセルの充電・放電及びSEI層の形成)に消費されるということであり、ここで表されたこれらの添加剤の量はセルが製造される際に電解質中に存在する最初の量を意味する。
【0104】
例えばファイバ、フェルト、足場、ピラー束、チューブ、多孔性粒子又はピラー化粒子などの上で記載のシリコン含有材料に加えて、アノードは他の活性材料を含むことができる。即ち、電池のサイクル間にリチウム化及び脱リチウム化され得るもので例えばグラファイト又はスズなどである。しかしアノードには、少なくとも5重量%、適切には少なくとも10重量%、より適切には少なくとも20重量%、場合により少なくとも50重量%及び好ましくは70重量%の活性物質が上で説明した構造化シリコンである。アノードはまた他の添加剤を含むことができる。例えばカーボンブラック、アセチレンブラック又はカーボンファイバなどであり、これらはリチウムセルにアノードの導電性を高めるために添加されることが知られている。電気活性材料含有粒子のそれぞれは1つのタイプの電気活性材料から全てなっていてもよいし、又は他の電気活性又は非電気活性材料を含んでいてもよい。例えばカーボン又はスズである。ここで他の材料が非活性である場合、それはアノードの導電性を高めるものであり得る。例えば電気活性材料はカーボンコーティングされてよい。特にそれぞれのシリコン含有粒子は完全にシリコンからなっていてもよく、又は他の活性又は非活性材料、例えばカーボン又はスズを含んでいてよい。ここで他の材料が非活性である場合、それはアノードの導電性を高めるものであり得る。例えば電気活性材料はカーボンコーティングされてよい。
【0105】
コストの理由で、本発明で電気活性材料としてシリコンが使用される場合、純度が99.97以下の純度例えば99.80%以下又は99.7%以下、好ましくは少なくとも90%である安価なシリコンが、少なくとも99.99%又は少なくとも99.999%の純度を持つ高純度(従ってより高価)のシリコンよりも好ましい。ただしかかる高純度のシリコンの使用が本発明の範囲から除外されているものではない。好ましくは、最初のシリコン材料は結晶性である。シリコン含有ファイバ及びピラー化粒子を製造するための出発材料の例は、SilgrainHQ又はJetmilledLowFeが挙げられ、これらはElkemから供給されるものであり、直径が10から50μm、適切には15から40μm及び好ましくは25μmである。これは主に単結晶性ファイバ又はピラー化粒子へ製造されるものである。
【0106】
上で説明した添加剤とは別に、電解質は全ての電解質であり得る。これらはシリコンアノードを用いるリチウムイオン電池で操作され得るものであり、例えばリチウム6フッ化リン(LiPF6)、LiBF4、リチウムビス(リチウムオキザラート)ボレート(LiBOB)又はLiClO4又はそれらの混合物などのリチウム塩であり、1以上の環状及びジアルキルカーボネート(例えばエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなど)に溶解性のものが挙げられる。他の電解質塩の例は、JP2008234988,US7659034,US2007/0037063,US7862933,US2010/0124707,US2006/0003226,US7476469,US2009/0053589及びUS2009/0053589に開示されている。好ましくは電解質塩はLiPF6又はLiPF6及びリチウムビスオキザラートボレート(LiBOB)の混合物である。好ましい電解質液は、0.9から0.95MのLiPF6及び0.05から0.1MのLiBOBからなる。
【0107】
電解質液中のリチウム塩の濃度は限定されないが、好ましくは0.5から1.5Mの範囲である。より多くの添加剤量を使用する場合には、リチウム塩の濃度を上げて最終的な電解質液でのリチウムの過剰な喪失を防止する。
【0108】
アノード材料はバインダにより一体化されて維持され得る。我々は次の知見を得た。PAA(ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩)が特にここで記載するセルには適している、ということである。他の好ましいバインダにはCMC及びPVdFを含む。またアノードはフェルトへ成形され、また銅集電体へ結合され得る。これらについてはそれぞれWO2009/010758及びWO2009/010759に開示されている。
【0109】
複合アノード電極で使用される活性物質、バインダ及び添加剤(例えば導電性補強剤)は一般に次のものが挙げられる。ここで乾燥成分の重量に基づく。
活性物質 60から95%、ここで10から95%,より好ましくは20から95%(乾燥アノード成分に基づく)が上で記載の構造化シリコン粒子、
バインダ 5から20%、通常は5から15%、
添加剤 0から20%(例えば導電性添加剤又はフィラー)、であって合計100%とする。
【0110】
カソード材料は全ての材料であり当業者にリチウムイオン電池に適するものとして知られている材料であり得る。例として、LiCoO2、混合金属酸化物(MMO、例えばLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2又はLi(LiaNixMnyCoz)O2),リン酸系カソード材料で例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNiO2、非リチウム化カソード例えばV6O13及び硫黄/ポリスルフィドカソードなどが挙げられる。好ましいカソード材料はLiCoO2及びMMOである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は本発明によるセルの模式図である。
【図2】図2は、異なる添加物を含む電解質を含むリチウムイオンセルでのシリコンファイバのサイクルを示すグラフである。
【図3】図3は、シリコンファイバと、異なる量のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図4】図4は、シリコンファイバと、4から10重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図5】図5は、シリコンピラー化粒子と、2から10重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図7】図7は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図8】図8は、シリコンピラー化粒子と(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含む電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図9】図9は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図10】図10は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図11】図11は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図12】図12は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、5%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図13】図13は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対効率を示すプロットである。
【図14】図14は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート及び5%FECを含みその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図15】図15は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%FECを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート、5%FEC及びその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図16】図16は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び5%FECを含む電解質、及び(b)LiPF6、2%ビニレンカーボネート、5%FEC及びその中にCO2を最初の溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図17】図17は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び3%VC+5%FEC及びその中にCO2を最初溶解させた電解質、及び(b)LiPF6、3%VC+10%FEC及びその中にCO2を溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図18】図18は、シリコンファイバと(a)LiPF6及び3%VC+5%FEC及びその中にCO2を最初溶解させた電解質、及び(b)LiPF6、3%VC+10%FEC及びその中にCO2を溶解させた電解質とを含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図19】図19は、ピラー化シリコン粒子と(a)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒(添加剤なし)を含む電解質及び(b)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2を含む電解質、(c)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2と3重量%ビニレンカーボネート(VC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質及び(d)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒及び溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネート(FEC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図20】図20は、ピラー化シリコン粒子と(a)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒(添加剤なし)を含む電解質及び(b)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2を含む電解質、(c)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および溶解CO2と3重量%ビニレンカーボネート(VC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質及び(d)LiF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒及び溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネート(FEC)(30:70EC/EMC混合物へ添加)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図21】図21は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と30重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図22】図22は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と15重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)と30重量%フルオロエチレンカーボネートを含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図23】図23は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び50:50のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図24】図24は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質、及び(c)及び(d)LiPF6及び50:50のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として溶解CO2、3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図25】図25は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒含む電解質(添加剤なし)、及び(c)及び(d)LiPF6及び30:70のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対放電容量を示すプロットである。
【図26】図26は、ピラー化シリコン粒子と(a)及び(b)LiPF6及び30;70のエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒含む電解質(添加剤なし)、及び(c)及び(d)LiPF6及び30:70のフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物溶媒および添加剤として3重量%ビニレンカーボネート(VC)を含む電解質を含むアノードを持つリチウムイオンセルのサイクルによる、サイクル数対充電電圧終端を示すプロットである。
【図27】図27は、電解質組成としてLiPF6を30:70のEC及びEMC混合物及びその中に添加剤としてCO2を溶解させ、かつ2重量%VCを含む電池であって、(a)構造化シリコンが粉末シリコンであって平均直径25μmを持ちかつ電解質がさらに5重量%FECを添加剤として含むもの、及び(b)構造化シリコンがヒピラー化シリコン粒子であって平均直径25μmを持ちかつ電解質がさらに10重量%FECを添加剤として含むもの、の放電容量を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1に示される一連の再充電可能な電池セルを組み合立て、一連の試験に使用した。評価は、繰り返し充電/放電サイクルを実行する電池について、種々の添加剤の種々の量により効果についてなされた。
【0113】
電極及びセルの製造
アノードを次のように調製した:構造化シリコン材料を所望量カーボンに添加し、脱イオン水中でビーズミリングした。得られた混合物をIKAオーバーヘッド攪拌装置を用いて1200rpmで43時間処理した。この混合物に、溶媒又は水中に所望量のバインダを添加した。混合物全体を、Thinky(R)ミキサで約15分間最終的に処理した。混合物の粘度は通常は20rpmで1000から1400mPasであった。構造化シリコン坐は上で記載のファイバかピラー化粒子であった。カーボンは導電性を改良するために添加され、非活性物質であるカーボンブラック(例えば、Super-P(R)、KejtenBlack(R))、アセチレンブラック(例えば、DenkaBlack)又はカーボンファイバであった。構造化シリコン材料の量は、乾燥シリコン−バインダ混合物にして74から80%であった。バインダは乾燥混合物及びカーボンの量に対して8から12%、カーボンは12から16重量%であった。表1には、シリコン、カーボン及びバインダの試験セルで使用された正確な量がまとめられている。
【0114】
アノードを混合物は、ドクラーブレード方法を用いて、10μm厚さ銅ホイル(集電体)に30から35μmでコーティングした。得られた電極を乾燥した。
【0115】
使用したカソード材料は市販のリチウムコバルト酸化物の電極(LiCoO2)又はMMO電極(又は例えばLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2)であった。
【0116】
特に留意しない限り、使用された電解質は、リチウムヘキサフルオロホスフェート、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(3:7の容積比)及び異なる量の添加剤を含む(以下示される)。電解質にCO2が添加される場合には、それは電解質全体の0.16から0.2重量%であった。
【0117】
二種類のタイプの試験セルを調製した。
【0118】
ソフトペアセル(SPセル)
・アノードとカソード電極片を所望のサイズに切り出す。
・電極を真空下120℃で再乾燥する。
・アノード及びカソードにタグを超音波溶接する。
・電極を巻き取る/折り畳みセルにする。それらの間にはTonenChemicalCooporation供給の多孔性ポリエチレンセパレータ(以下Tonenセパレータとする)層をはさむ。
・巻き取られたセルをアルミニウムラミネートバッグに包み込み、一方側はシールせずに電解質充填用に開けておいた。
・セルに所望の電解質を部分的減圧下で充填した。
・1時間電解質を電極に吸収させた。
・バッグの端を真空シールした。
【0119】
「スウェージロック」セル(SWセル)
・12mm直径のアノード及びカソードを調製し真空下一晩乾燥させた。
・アノードディスクを、「スウェージロック」フィッティングから製造された2電極セル内に設置した。
・直径12.8mm及び16μm厚さのTonen(R)セパレータを2つアノードをディスクに重ねて設けた。
・40μlの電解質をセルに添加した。
・カソードディスクを濡れたセパレータに重ねて設けてセルを作った。
・電解質を30分間電極に吸収させた。
・バネ付きの12mm直径プランジャをカソードに重ねて設け、最終的にセルを密閉シールした。バネにより電極及び電解質の界面が密に維持された。
【0120】
組み立てたセルをArbin電池サイクル試験装置へ接続し連続充電放電サイクル試験を行った。定電流:定電圧(CC−CV)試験手順は充電時の容量制限及び電圧上限制限及び放電時の電圧低減制限を行った。ソフトパックペアセルについてはそれぞれ電圧制限は4.2V及び3Vであった。試験手順は、活性アノード材料が、結晶相Li15Si4合金の形成を避けるために25mVのアノードを電位未満に充電されないことを確実にするものとした。種々の試験が種々の添加剤を用いて行われた。これらは実施例1から7に記載されている。表1にはそれぞれの試験で用いた試験セルのバッチのいくつかの重要なパラメータが与えられている。
【0121】
【表1】
実施例1
ビニレンカーボネート(VC)及びビニレンエチルカーボネートの種々の量を含む電解質を調製し、表1に記載にパラメータを持ついくつかのソフトパックペアセルで使用した。それぞれのセルの活性物質は、直径100から200nmの長さ30から80μmのシリコンファイバであった。これはシリコンウェハをエッチングし、基板から引き剥がして(例えば超音波で)得られた形状である(WO 2007/083155に記載)。
【0122】
一連のサイクルで、セルは1200mA.hr.g−1まで充電されてその後放電された。放電容量を測定し結果を図2に示した。充電/放電サイクルの回数における、1200mA.hr.g−1の放電容量を維持する能力が再充電可能な電池の予想寿命の指針となる。
【0123】
図2のグラフで、次の添加剤を含む2つのセルが試験された:
2%VEC
1%VC
1%VC+1%VEC
2%VC
4%VC
上のグラフから分かるように、4%VCを添加により、カーボンアノードの再充電可能なリチウムイオン電池で使用される通常のVC濃度での範囲で、非常な改善が見られる。
【0124】
実施例2
実施例1と同様の試験を、VC添加剤をより広い範囲で含むものを試験した(2%VC、4%VC及び8%VC)。再び上で記載のウェハからのファイバを用いたソフトパックペアセルを1200mAhrg−1に充電した。結果を図3に示す。ここで明らかなように、8%のVC添加は、2又は4%VC添加に比べてセル寿命が大きく改善された。
【0125】
留意すべきことは、所与のセルが所与の電解質組成に関してその容量を減少させるまでに達成するサイクル数は、所与のセルの他の因子にも依存するということである。例えば、電極厚さ(重量)及びカソード活性物質とシリコンアノード材料との比率などである。また具体的なかかる時間を決める条件である、例えば温度、充電/放電速度及び放電深さなどにも依存する。ここで説明されるグラフの全てにおいて、試験されたセルはこれらの外部因子を最小化するように設計されている。しかし該因子は実施例ごとに、グラフごとに異なり、従って1つのグラフと他のグラフの結果とを比較することは不可能である。むしろ所与のグラフ内で、結果は、異なる電解質組成の効果について絶対的(これは上記の因子に依存し得る)というよりは相対的な測定を与えるものである。
【0126】
実施例3
表1及び2に示されるパラメータを持つ、さらなるソフトパックペアセルが、より広いより高い範囲のVC添加剤、4%から10%を含む場合につき、試験された。セルは実施例1及び2と類似であり、同じアノードを材料(ファイバ)で1200mAhrg−1充電された。ただしアノードコーティング重量はより高かった。結果を図4に示した。ここでプロットはVC添加剤の次のパーセントを示す。
4% VC
6% VC
8% VC
10% VC
図4から分かるように、寿命増加の効果はVCが10%添加されると小さくなり、最大の効果は約6%VCである。
【0127】
実施例4
ソフトパックペアセルを表1のパラメータに従って作成した。実施例1から3とは対照的に、アノードのシリコン構造化材料は、WO2009/010758に記載のように、冶金グレードのシリコン粒子、サイズ15から25μmの粒子をエッチングして調製されたものである。粒子に付いている得られるピラーは直径80から200nmであり、長さは1から5μmであり、粒子コアの30から40%が部分的にカバーされているものである。試験は上で説明した方法と同様に行った。ただし、それぞれのサイクルで、粒子のコアではなくてピラーのみをリチウム化するために、セルを1200mAmhrg−1ではなくて600mAhrg−1充電した。
【0128】
4%及び10%VC添加物を含むセルで試験した。結果は図5に示される。図から分かるように、4%VC添加剤を含むセルの性能は10%VC添加しても改善されない。この条件では4%のVC添加は、シリコンの好ましい表面反応を達成するために充分であり、さらなるVC添加はそれ以上の効果を与えない、と考えられる。
【0129】
実施例5
表1に記載のパラメータを持つソフトパックペアセルを調製した。構造化シリコン活性アノードを材料は実施例4のピラー化粒子であった。この場合には、カソードをLi1+xNio0.8Co0.15Al0.05O2であり、アノードのバインダはポリアクリルアミド(PAA)であった。
【0130】
試験は、5%VC電解質添加剤のみ、又は5%VC及び5%FEC電解質添加剤の組み合わせのいずれかであった。セルは900mAhrg−1充電した。結果を図6,7,及び8に示した。図6では、5%VC+5%FEC添加剤を含む2つのセルが5%VCのみを含む2つのセルよりもより優れたサイクルを持つことが示される。図7は、全てのセルに対してセルの充電/放電効率をプロットする。これから、運転効率は全てのセルについてほぼ99%であることが分かる。図8は、それぞれのセルの充電電圧終端をプロットする。より高い電圧は、より高い内部抵抗を示し、これはセル中に残る遊離リチウムのレベルを示すものである。放電電圧終端が最大値(この場合4.2V)に到達すると、このセルにはもはや、完全充電容量(この場合には900mAhrg−1)まで充電するには充分な遊離リチウムイオンが存在しない、ということを意味する。図8は、5%VCのみを含む2つのセルは、5%VC+5%FEC添加剤を含む2つのセルよいも早く遊離リチウムを消費してしまうことを示す。
【0131】
5%VC+5%FECセル中の低電圧は、1つ以上の次の効果によるものと考えられる。即ち、(a)電解質が低抵抗であり、同一の運転効率を維持する、(b)形成されるSEI層が低イオン抵抗性である、(c)可逆的放電による運転損失の比率が増加し、従ってカソードの脱リチウム化の程度をよりゆっくりと増加する、ことである。
【0132】
実施例6
一群の、「スウェージロック」セルをシリコンファイバを含むアノードを用いて製造した。シリコンファイバは、冶金グレードシリコン(WO2009/010758に記載)の200から800μmサイズのエッチングされたシリコンから剥がしたピラーにより製造された。前記ファイバは直径100から200nm及び長さ10から40μmであった。全てのセルはLi1+xNi0.8Co0.15Al0.05O2カソードを含む。半分のセルが5%VC添加剤を含み、他の半分が2%VC及び5%FEC添加剤及び溶解CO2を含む。CO2はセル中の電解質に前記セルをシールする前に30分間バブリングして添加した。これにより、電解質中にCO2が0.26重量%(電解質全重量に対するパーセント)であることが計算された。
【0133】
セルは1200mAh/gに充電した。図9から11には、それぞれの添加剤の組み合わせにつき1つのセルにつき群全体を示すものとして、充電/放電サイクル数対放電容量(図9)、効率(図10)及び充電電圧終端(図11)のプロットを示す。これらのプロットで、LiPF6および5%ビニレンカーボネートを含む電解質を含むセルは参照番号NF173とされ、同じ電解質ではあるが5%FEC及び2%VCさらに溶解CO2を含む電解質を含むセルをNF198と参照される。これらの結果は、5%FEC、2%VC及びCO2を含むセルは5%VCのみを含む同じセルよりも非常に優れた性能を示すことを示す。即ち、完全容量で、より高い効率及び低運転リチウム損失を示す。
【0134】
実施例7
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである。半分のセルはLiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質を持つ。他の半分は5%VC添加剤を含む同じ電解質及びさらに溶解CO2を含む。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0135】
セルは1200mAh/g以下にちょうど充電した。図12から14には、充電/放電サイクル数対放電容量(図12)、効率(図13)及び充電電圧終端(図14)のプロットを示す。これらのプロットでは、LiPF6及び5%ビニレンカーボネートを含む電解質を持つセルをNF55と参照し、LiPF6及び5%ビニレンカーボネート及びCO2を含む電解質を含むセルをNF67と参照する。これらの結果は、5%VC+CO2を含むセルは5%VC+のみを含む同じセルに比べてより優れた性能を示すことを示す。
【0136】
実施例8
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである。半分のセルはLiPF6及び5%FECを含む電解質を持つ。他の半分は2%VC及び5%FEC添加剤及び溶解CO2を含む。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0137】
セルは1200mAh/g充電した。図15から16には、充電/放電サイクル数対放電容量(図15)及び充電電圧終端(図16)のプロットを示す。これらのプロットでは、LiPF6及び5%FECを含む電解質を持つセルをNF196と参照し、LiPF6及び2%VC、5%FEC及びCO2を含む電解質を含むセルをNF196と参照する。これらの結果は、2%VC+5%FEC+CO2を含むセルは5%VC+のみを含む同じセルに比べてより優れた性能を示すことを示す。
【0138】
一群の「スウェージロック」セルを作成し試験した。アノード及びカソード材料は実施例6と同じである(NF183と参照)。半分のセルはLiPF6及び3%VC+5%FEC及び溶解CO2を含む電解質を持つ。他の半分は3%VC+10%FEC及び溶解CO2を含む(NF279と参照)。CO2は実施例6と同様に添加された。
【0139】
セルは1200mAh/g充電した。図17から18には、充電/放電サイクル数対放電容量(図17)及び充電電圧終端(図18)のプロットを示す。これらの結果は、10%FECを含むセルは5%FECを含む同じセルに比べてより優れた効率を示すことを示す。
【0140】
上の結果及び他の観察結果から、われわれは、アノードの構造化シリコン材料を含むセルについて、次のことを見出した。
(a)単一添加剤として3.5%VC未満の使用はほとんど効果がない(この結果を、通常2重量%VCが添加される場合の従来のグラファイトセルと比較して)。VCのみの形での添加剤としての最善の改良は5%VCを含む場合と思われる。これ以上のVC+濃度は顕著な優れた効果を奏さない様に見える。
(b)5%FEC添加剤自体を用いることはVC添加剤以上の改良は見られない。
(c)セルに5%VC及び5%FECの組み合わせ添加剤を用いることは5%VCのみ、又は5%FECのみを用いる場合に比べてより優れた性能を与える。
(d)5%VCを含むセルにCO2を添加することは同じであるがCO2が添加されない場合に比べて改良された効果を示す。
(e)2%VC+5%FEC+CO2を含むセルは、5%VCのみ又は5%FECのみを含む場合に比べて改良された効果を示す。
(f)2%VC+10%FEC+CO2を含むセルは、2%VC+5%FEC+CO2を含む場合に比べて改良された効果を示す。
【0141】
VCの減少は、ポリアルキルリチウムカーボネート種を生成し、これが溶媒及びアニオンの還元を抑制するものと考えられる(Aurbach at al. Electrochimica Acta 47 (2002) 4445-4450)。次に知見が得られた。即ち、VCを持つSEI抵抗値はVCを含まないものよりも小さく、これはVCの存在がSEI膜中のリチウムイオンの透過性を改良する、ということである。
【0142】
理論に束縛されるものではないが、FEC、VC及びCO2の相乗作用は、より高いイオン伝導性を持ち、容易にリチウムイオン輸送し得るシリコンの表面に形成される高品質のSEI相の形成により説明され得る。FECはより正電位で還元され、さらにVCとCO2の還元が続き、これによりコンパクトで、保護性の高い導電性SEI層を形成する。即ち、1EC:3EMC中に、1MのLiPF6、10重量%FEC+3重量%VC及び0.28重量%CO2の電解質液中のシリコン上のSEI相の抵抗値は、上記の添加剤の1つのみを含む電解質と比べてより低くなり得る。
【0143】
実施例10から14
種々の量のビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンエチルカーボネート(VEC)及びCO2を含む電解質を調製し、いくつかのSWセルで表1に記載のパラメータに従って用いた。それぞれのセルの活性アノード材料はピラー化粒子であり、Silgrain(RTM)シリコン粉末、平均直径25μmを用いてWO2009/010758に記載の方法でエッチングして得られたものである。ただし例外として、1つのアノードはエッチングされていないシリコン粉末を用いた。全てのセルはLi1+xNo0.8Co0.15Al0.05O2カソードを持つ。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート基本溶液(30:70比率)又はフルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(比率30:70又は50:50)の基本溶液中にLiPF6を含むものである。
【0144】
一連のサイクルで、それぞれのセルは、最初C/50で容量1200mA.hr.g−1まで充電され、その後同じ速度で放電させた。セルはその後C/2からC/3の充電速度で1200mAh/gへサイクルされた。可逆的放電容量を測定し結果を示す。
【0145】
実施例10
上で記載にようにして一群のAWセルを作った。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)の基本液中にLiPF6を含む。最初のセルは(a)追加の電解質添加剤を含まない。第二のセルは(b)溶解CO2を電解質添加剤として含んでいた。他のセルは(c)溶解CO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含んでいた。セル(d)は溶解CO2、3重量%VC及び15重量%FECを電解質添加剤として含んでいた。
【0146】
セルは1200mAh/gに充電した。図19、20は充電/放電サイクル数対放電容量(図19)及び充電電圧終端(図20)のプロットを示す。この結果は、溶解CO2及びVC又は5%溶解CO2、VC及びFECを含むセル(c)及び(d)は添加剤なし又は添加剤としてCO2のみを含むものに比べて、よりよい性能を示すことを示す。
【0147】
実施例11
上で記載にようにして一群のAWセルを作った。電解質は、エチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)の基本液中にLiPF6を含む。2つのセル(a)及び(b)が溶解CO2、3重量%VC及び15重量%FECを添加剤として含む。セル(c)及び(d)は、溶解CO2、3重量%VC及び30重量%FECを添加剤として含む。
【0148】
セルは1200mAh/gに充電した。図21、22は充電/放電サイクル数対放電容量(図19)及び充電電圧終端(図20)のプロットを示す。この結果は、少なくとも150サイクルを超えて、これらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示す。
【0149】
実施例12
上で記載にようにして一群のSWセルを作った。電解質は、(a)及び(b)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)に溶解させたCO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。(c)及び(d)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(50:50比率)に溶解させたCO2及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。混合後に、セル(a)及び(b)中の電解質は31.5重量%のフルオロエチレンカーボネート及び、セル(c)及び(d)は52.5重量%のフルオロエチレンカーボネートを含む。
【0150】
セルは1200mAh/gに充電した。図23、24は充電/放電サイクル数対放電容量(図23)及び充電電圧終端(図24)のプロットを示す。この結果は、少なくとも150サイクルを超えて、これらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示す。
【0151】
実施例13
上で記載にようにして一群のSWセルを作った。電解質は、(a)及び(b)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)で添加剤は含まない。(c)及び(d)は、フルオロエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート(30:70比率)及び3重量%VCを電解質添加剤として含むの基本液中にLiPF6を含む。
【0152】
セルは1200mAh/gに充電した。図25、26は充電/放電サイクル数対放電容量(図25)及び充電電圧終端(図26)のプロットを示す。図25のデータからは80サイクルまでこれらのセルの性能間にはほとんど差がないことを示すが、セル(c)及び(d)についてのサイクル数対電圧の傾斜は、100サイクルでのセル(a)及び(b)についての傾斜よりも低い。このことは、セル(c)及び(d)はセル(a)及び(b)よりもより長いサイクルとなることが予想され得る。
【0153】
実施例14
SWセルを、平均直径25μm(ElkemSILGRAIN(RTM)シリコン粉末)の粉末シリコンを用いて調製した。30:70のエチルカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を含み溶解CO2、5%FEC及び2重量%VCを添加剤として含む電解質液に1MのLiPF6を含む電解質液を用いた。
【0154】
さらにSWセルを、平均直径25μmのシリコンピラー化粒子(上記及びWO2009/010758に記載の方法で冶金グレードシリコン粒子からエッチングにより調製された)を用いて調製した。この方法で、得られるピラー化粒子は、シリコンコア上に平均長さ3μm及び平均直径200nmのシリコンピラーのアレイを含むものである。電解質液は、30:70のエチルカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)混合物を含む電解質液中に1MのLiPF6を含み、添加剤として溶解CO2,10重量%FEC及び2重量%VCを持つものである。両方のセルともアノードコーティング重量は12gsmである。
【0155】
セルに1200mAh/gに充電する。図27は、充電/放電サイクル数対放電容量のプロットを示す。これから、シリコンピラー化粒子を用いて調製したアノードは600サイクルを超えてサイクルされ得るものであることが分かる。即ち、より低いコーティング重量は、より高いコーティング重量を持つ等価のセルよりもより高いサイクル数を可能とすることが分かる。粉末シリコン粒子から調製されたアノードは数サイクルで失効した。
【0156】
構造化シリコン材料を主に含むアノードを用いて使用する場合に、当該添加剤を組み合わせることは、シリコン表面の最初のサイクルで形成されるSEI層の品質を改良し、さらに続くセル充電/放電サイクルの際に効果的なSEI構造を維持するものと、考えられる。上の例で、FECのいくらか又は全てがDFECに置換されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記リチウムイオン再充電可能電池セルは:
以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に離間構造エレメントを持ち、前記表面上の前記構造エレメントの最小寸法が少なくとも10nmであり、かつ10μm以下、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が少なくとも5である、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも10nm、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5である、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドが直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)粒子基板上の電気活性物質の分散を含む基板粒子、
(i)又はこれらの混合物、
電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソード、及び
電解質を含み、
前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である、チウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記電気活性物質がシリコン含有電気活性物質である、チウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載のリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記セルが:
以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に離間構造エレメントを持ち、前記構造エレメントの最小寸法が少なくとも50nmであり、かつ10μm以下であり、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が少なくとも5であり、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧50nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは平均≧50nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも50nm、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5ある、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドの直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)又はこれらの混合物、
電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソード、及び
電解質を含み、
前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である、リチウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記(a)で定める電極材料が、最小寸法が1000nm未満である、セル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有ファイバ、ガリウム含有ファイバ及びシリコン含有ファイバを含む群から選択されるファイバであり、直径10から500nm及び長さ1から150μmであり、場合により前記ファイバは前記ファイバを含む足場又はフェルト形状である、セル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有ファイバ、ガリウム含有ファイバ及びシリコン含有ファイバを含む群から選択されるファイバであり、直径50から250nm及び長さ1から80μmであり、場合により前記ファイバは前記ファイバを含む足場又はフェルト形状である、セル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有チューブ、ガリウム含有チューブ及びシリコン含有チューブを含む群から選択されるチューブであり、壁厚さが≧10nmであり、かつ長さが1≧μmである、セル。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有チューブ、ガリウム含有チューブ及びシリコン含有チューブを含む群から選択されるチューブであり、壁厚さが≧50nmであり、かつ長さが≧1μmである、セル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有リボン、ガリウム含有リボン及びシリコン含有リボンを含む群から選択されるリボンであり、幅が50から200nm、幅500nmから1μmであり、かつ長さが1≧μmであり、又は前記リボンを含むフェルトである、セル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有フレーク、ガリウム含有フレーク及びシリコン含有フレークを含む群から選択されるフレークであり、厚さが50から200nmであり、かつ他の2つの寸法が1から20μmの範囲である、セル。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、直径5から25μmのシリコン系粒子コアで前記コアにシリコンピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径1000nm以下であり、長さが1から5μmである、セル。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、直径10から25μmのシリコン系粒子コアで前記コアにシリコンピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径50から250nmであり、長さが1から5μmである、セル。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、前記ピラーも含む粒子全体の最大寸法が40μm未満である、セル。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有多孔性粒子であり、その中に分散された2以上のボイド又はポアを含む、セル。
【請求項15】
請求項14に記載のセルであり、隣接するポアの壁の少なくともいくつかが、厚さ≧10nmを持ち、長さが≧100nmを超え、多孔性粒子の直径が1から50μmである、セル。
【請求項16】
請求項14又は15のいずれか1項に記載のセルであり、隣接するポア間の壁の少なくともいくつかは厚さ≧50nmであり、長さが≧100nmを超え、多孔性粒子の直径が1から30μmである、セル。
【請求項17】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、ナノロッドのカラム状束であり、直径50から100nm及び長さが2から5μmであり、それぞれのナノロッドが直径少なくとも10nmである、セル。
【請求項18】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、基板粒子であり、粒子上コア上に電気活性物質が分散されている、セル。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載のセルであり、前記アノードがシリコン以外の活性物質を含み、電気化学的に可逆的にリチウムと反応し得る、セル。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコンがカーボンコーティングされている、セル。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン粒子が、純度90から99.990重量%、例えば95から99.80重量%である、セル。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載のセルであり、前記アノード中の実質的に全ての活性物質がシリコン及び/又はリチウム−シリコンの化学量論的又は非化学量論的リチウム−シリコン化合物を含み、及び/又は固体−電解質インタフェースを形成する材料を含む、セル。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、日塗る基を持つ環状カーボネート及びフッ化環状カーボネートを含む、セル。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載のセルであり、前記フッ化環状カーボネートが、最初、前記電解質全体量の3.5から70重量%を含む、セル。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が前記フッ化環状カーボネートを、最初、前記電解質全体量の3.5から30重量%を含む、セル。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載のセルであり、さらにビニル基を持つ環状カーボネートの量が前記電解質の0%である場合には、フッ化環状カーボネートの量は前記電解質液の全量に対して少なくとも12重量%含み、かつアノードシリコン材料は、前記構造化シリコン材料と同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、少なくとも1重量%,2重量%,3重量%,5重量%,10重量%又は15重量%含む、セル。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、3.5から7重量%含む、セル。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか1項に記載のセルであり、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、前記電解質全量について、最初、4.5から7重量%含む、セル。
【請求項30】
請求項1乃至29のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、ビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートとを含み、前記混合物は前記電解質全量について最初の量が少なくとも3.5%であり、場合により少なくとも5%含む、セル。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも10重量%含む、セル。
【請求項32】
請求項1乃至31のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも15重量%含む、セル。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも30重量%含む、セル。
【請求項34】
請求項1乃至33のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、50重量%以下のフッ化環状カーボネートを含む、セル。
【請求項35】
請求項27に記載のセルであり、前記ビニル基を持つ環状カーボネートがビニレンカーボネートである、セル。
【請求項36】
請求項28に記載のセルであり、前記フッ化環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項37】
請求項1乃至36のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、最初、0.05から0.25重量%の溶解CO2を含む、セル。
【請求項38】
請求項1乃至37のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、ビニル基を持つ環状カーボネート、フッ化環状カーボネート及び溶解CO2を含む、セル。
【請求項39】
請求項38に記載のセルであり、活性材料を含む前記アノードがさらに、構造化シリコン材料同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項40】
請求項38又は39のいずれか1項に記載のセルであり、前記ビニル基を持つ環状カーボネートがビニレンカーボネートであり、前記フッ化環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項41】
請求項1乃至40のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質液がさらに、C1〜8の鎖状カーボネートを含む、セル。
【請求項42】
請求項41に記載のセルであり、前記C1〜8鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの1つ以上から選択される、セル。
【請求項43】
請求項1乃至42のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質液がさらに、ビニル基を持つ環状カーボネート又はフッ化環状カーボネート以外の環状カーボネートを含む、セル。
【請求項44】
請求項43に記載のセルであり、前記環状カーボネートが、エチルカーボネート、プロピルカーボネート、ブチルカーボネートを含む群から選択される1以上である、セル。
【請求項45】
請求項41乃至44のいずれか1項に記載のセルであり、前記環状カーボネート(ビニル基を持つ環状カーボネート及び/又はフッ化環状カーボネートを含む)とC1〜8鎖状カーボネートとの比が、30:70から50:50の範囲である、セル。
【請求項46】
請求項41乃至45のいずれか1項に記載のセルであり、前記C1〜8鎖状カーボネートが、
ジメチルカーボネート又はエチルメチルカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項47】
請求項41乃至46のいずれか1項に記載のセルであり、前記環状カーボネートがエチルカーボネートである、セル。
【請求項48】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載のセルであり、シリコン含有電気活性物質、電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質及び電解質を含み、(1)前記電解質が1から8重量%のビニル基を持つ環状カーボネート、3から70重量%のフッ化環状カーボネート及び0.05から0.25重量%のCO2及び(2)シリコン含有材料が、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造化シリコン材料同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項49】
請求項1乃至48のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質がさらに電解質塩を含み、前記電解質塩が、0.7から2Mの濃度で前記電解質液に溶解する、セル。
【請求項50】
請求項41に記載のセルであり、前記電解質塩が1Mの濃度で溶解する、セル。
【請求項51】
請求項41又は42のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、LiPF6、LiBOB、LiCO4又はそれらの混合物を含む群から選択される電解質塩を含むリチウムの1る又は混合物を含む、セル。
【請求項52】
請求項43に記載のセルであり、前記電解質がLiPF6を0.9Mの濃度で、かつLiBOBを0.1Mの濃度で含む、セル。
【請求項53】
請求項1乃至52のいずれか1項に記載のセルを充電する方法であり、アノード物質の理論的最大充電量の、80%未満及び好ましくは60%以下で充電することを含む、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であり、前記アノード活性物が実質的に全てシリコン材料から形成され、前記方法が、前記電池を、シリコン1グラム当たり3400mAhr未満、例えば2500mAhr/g以下に充電する、方法。
【請求項1】
リチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記リチウムイオン再充電可能電池セルは:
以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に離間構造エレメントを持ち、前記表面上の前記構造エレメントの最小寸法が少なくとも10nmであり、かつ10μm以下、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が少なくとも5である、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも10nm、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5である、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドが直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)粒子基板上の電気活性物質の分散を含む基板粒子、
(i)又はこれらの混合物、
電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソード、及び
電解質を含み、
前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である、チウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記電気活性物質がシリコン含有電気活性物質である、チウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載のリチウムイオン再充電可能電池セルであり、前記セルが:
以下(a)から(i)から選択される電気活性物材料粒子;
(a)粒子であり、前記粒子表面上に離間構造エレメントを持ち、前記構造エレメントの最小寸法が少なくとも50nmであり、かつ10μm以下であり、アスペクト比(前記エレメントの最大寸法と最小寸法との比として定める)が少なくとも5であり、
(b)粒子であり、少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは≧10nm、好ましくは≧50nmである、
(c)粒子であり、粒子断片を含み、前記断片は少なくとも1つのボイドを有し、それぞれのボイドが1以上の壁で定められ、前記壁の厚さは平均≧50nmである、
(d)粒子であり、最小寸法が少なくとも50nm、アスペクト比(最小寸法の最大寸法との比として定める)が少なくとも5ある、
(e)粒子であり、ナノロッドの柱状束を有し、前記束が直径50から100nmであり、長さ2から5μmであり、それぞれのナノロッドの直径が少なくとも10nmである、
(f)フェルト構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(g)足場構造であり、上記(d)で定められる粒子から形成される、
(h)又はこれらの混合物、
電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質を含むカソード、及び
電解質を含み、
前記電解質が0から8重量%のビニル基を含む環状カーボネートと0から70重量%のフッ化環状カーボネートを含み、ただしビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートの全量が前記電解質の全量に対して3.5重量%から7重量%の範囲である、リチウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記(a)で定める電極材料が、最小寸法が1000nm未満である、セル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有ファイバ、ガリウム含有ファイバ及びシリコン含有ファイバを含む群から選択されるファイバであり、直径10から500nm及び長さ1から150μmであり、場合により前記ファイバは前記ファイバを含む足場又はフェルト形状である、セル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有ファイバ、ガリウム含有ファイバ及びシリコン含有ファイバを含む群から選択されるファイバであり、直径50から250nm及び長さ1から80μmであり、場合により前記ファイバは前記ファイバを含む足場又はフェルト形状である、セル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有チューブ、ガリウム含有チューブ及びシリコン含有チューブを含む群から選択されるチューブであり、壁厚さが≧10nmであり、かつ長さが1≧μmである、セル。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有チューブ、ガリウム含有チューブ及びシリコン含有チューブを含む群から選択されるチューブであり、壁厚さが≧50nmであり、かつ長さが≧1μmである、セル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有リボン、ガリウム含有リボン及びシリコン含有リボンを含む群から選択されるリボンであり、幅が50から200nm、幅500nmから1μmであり、かつ長さが1≧μmであり、又は前記リボンを含むフェルトである、セル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセルであり、前記電気活性物質含有粒子が、スズ含有フレーク、ガリウム含有フレーク及びシリコン含有フレークを含む群から選択されるフレークであり、厚さが50から200nmであり、かつ他の2つの寸法が1から20μmの範囲である、セル。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、直径5から25μmのシリコン系粒子コアで前記コアにシリコンピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径1000nm以下であり、長さが1から5μmである、セル。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、直径10から25μmのシリコン系粒子コアで前記コアにシリコンピラーのアレイを持ち、前記ピラーが直径50から250nmであり、長さが1から5μmである、セル。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有ピラー化粒子であり、前記ピラーも含む粒子全体の最大寸法が40μm未満である、セル。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、シリコン含有多孔性粒子であり、その中に分散された2以上のボイド又はポアを含む、セル。
【請求項15】
請求項14に記載のセルであり、隣接するポアの壁の少なくともいくつかが、厚さ≧10nmを持ち、長さが≧100nmを超え、多孔性粒子の直径が1から50μmである、セル。
【請求項16】
請求項14又は15のいずれか1項に記載のセルであり、隣接するポア間の壁の少なくともいくつかは厚さ≧50nmであり、長さが≧100nmを超え、多孔性粒子の直径が1から30μmである、セル。
【請求項17】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、ナノロッドのカラム状束であり、直径50から100nm及び長さが2から5μmであり、それぞれのナノロッドが直径少なくとも10nmである、セル。
【請求項18】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン含有粒子が、基板粒子であり、粒子上コア上に電気活性物質が分散されている、セル。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載のセルであり、前記アノードがシリコン以外の活性物質を含み、電気化学的に可逆的にリチウムと反応し得る、セル。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコンがカーボンコーティングされている、セル。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載のセルであり、前記シリコン粒子が、純度90から99.990重量%、例えば95から99.80重量%である、セル。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載のセルであり、前記アノード中の実質的に全ての活性物質がシリコン及び/又はリチウム−シリコンの化学量論的又は非化学量論的リチウム−シリコン化合物を含み、及び/又は固体−電解質インタフェースを形成する材料を含む、セル。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、日塗る基を持つ環状カーボネート及びフッ化環状カーボネートを含む、セル。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載のセルであり、前記フッ化環状カーボネートが、最初、前記電解質全体量の3.5から70重量%を含む、セル。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が前記フッ化環状カーボネートを、最初、前記電解質全体量の3.5から30重量%を含む、セル。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載のセルであり、さらにビニル基を持つ環状カーボネートの量が前記電解質の0%である場合には、フッ化環状カーボネートの量は前記電解質液の全量に対して少なくとも12重量%含み、かつアノードシリコン材料は、前記構造化シリコン材料と同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、少なくとも1重量%,2重量%,3重量%,5重量%,10重量%又は15重量%含む、セル。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、3.5から7重量%含む、セル。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか1項に記載のセルであり、前記ビニル基を含む環状カーボネートを、前記電解質全量について、最初、4.5から7重量%含む、セル。
【請求項30】
請求項1乃至29のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、ビニル基を含む環状カーボネートとフッ化環状カーボネートとを含み、前記混合物は前記電解質全量について最初の量が少なくとも3.5%であり、場合により少なくとも5%含む、セル。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも10重量%含む、セル。
【請求項32】
請求項1乃至31のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも15重量%含む、セル。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、フッ化環状カーボネートを少なくとも30重量%含む、セル。
【請求項34】
請求項1乃至33のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、50重量%以下のフッ化環状カーボネートを含む、セル。
【請求項35】
請求項27に記載のセルであり、前記ビニル基を持つ環状カーボネートがビニレンカーボネートである、セル。
【請求項36】
請求項28に記載のセルであり、前記フッ化環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項37】
請求項1乃至36のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、最初、0.05から0.25重量%の溶解CO2を含む、セル。
【請求項38】
請求項1乃至37のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、ビニル基を持つ環状カーボネート、フッ化環状カーボネート及び溶解CO2を含む、セル。
【請求項39】
請求項38に記載のセルであり、活性材料を含む前記アノードがさらに、構造化シリコン材料同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項40】
請求項38又は39のいずれか1項に記載のセルであり、前記ビニル基を持つ環状カーボネートがビニレンカーボネートであり、前記フッ化環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項41】
請求項1乃至40のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質液がさらに、C1〜8の鎖状カーボネートを含む、セル。
【請求項42】
請求項41に記載のセルであり、前記C1〜8鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの1つ以上から選択される、セル。
【請求項43】
請求項1乃至42のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質液がさらに、ビニル基を持つ環状カーボネート又はフッ化環状カーボネート以外の環状カーボネートを含む、セル。
【請求項44】
請求項43に記載のセルであり、前記環状カーボネートが、エチルカーボネート、プロピルカーボネート、ブチルカーボネートを含む群から選択される1以上である、セル。
【請求項45】
請求項41乃至44のいずれか1項に記載のセルであり、前記環状カーボネート(ビニル基を持つ環状カーボネート及び/又はフッ化環状カーボネートを含む)とC1〜8鎖状カーボネートとの比が、30:70から50:50の範囲である、セル。
【請求項46】
請求項41乃至45のいずれか1項に記載のセルであり、前記C1〜8鎖状カーボネートが、
ジメチルカーボネート又はエチルメチルカーボネート又はそれらの混合物である、セル。
【請求項47】
請求項41乃至46のいずれか1項に記載のセルであり、前記環状カーボネートがエチルカーボネートである、セル。
【請求項48】
請求項1乃至47のいずれか1項に記載のセルであり、シリコン含有電気活性物質、電気化学的にリチウムを挿入しかつまた放出することができる活性物質及び電解質を含み、(1)前記電解質が1から8重量%のビニル基を持つ環状カーボネート、3から70重量%のフッ化環状カーボネート及び0.05から0.25重量%のCO2及び(2)シリコン含有材料が、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造化シリコン材料同様に非構造化シリコン材料を含む、セル。
【請求項49】
請求項1乃至48のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質がさらに電解質塩を含み、前記電解質塩が、0.7から2Mの濃度で前記電解質液に溶解する、セル。
【請求項50】
請求項41に記載のセルであり、前記電解質塩が1Mの濃度で溶解する、セル。
【請求項51】
請求項41又は42のいずれか1項に記載のセルであり、前記電解質が、LiPF6、LiBOB、LiCO4又はそれらの混合物を含む群から選択される電解質塩を含むリチウムの1る又は混合物を含む、セル。
【請求項52】
請求項43に記載のセルであり、前記電解質がLiPF6を0.9Mの濃度で、かつLiBOBを0.1Mの濃度で含む、セル。
【請求項53】
請求項1乃至52のいずれか1項に記載のセルを充電する方法であり、アノード物質の理論的最大充電量の、80%未満及び好ましくは60%以下で充電することを含む、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であり、前記アノード活性物が実質的に全てシリコン材料から形成され、前記方法が、前記電池を、シリコン1グラム当たり3400mAhr未満、例えば2500mAhr/g以下に充電する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2012−527740(P2012−527740A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519070(P2012−519070)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000856
【国際公開番号】WO2011/154692
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(509040226)ネグゼオン・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Nexeon Ltd
【住所又は居所原語表記】136 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 3SB,United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000856
【国際公開番号】WO2011/154692
【国際公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(509040226)ネグゼオン・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Nexeon Ltd
【住所又は居所原語表記】136 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 3SB,United Kingdom
【Fターム(参考)】
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