説明

リニアアクチュエータユニット検査装置、リニアアクチュエータユニット駆動装置及びこれを備えた制振装置

【課題】可動子がケースに覆われて内部が視認できない場合でも、リニアアクチュエータユニットの内部状態を検査可能な検査装置を提供する。
【解決手段】通電により往復動作する可動子14を少なくともケースで包囲し且つ可動子14の往復動方向X両側に対をなす機械ストッパ12・12を有するリニアアクチュエータユニットを、通電がなされてない状態において機械ストッパ12・12間に規定される往復可動範囲Dの中心Dcから可動子14が自重により重力方向X2側にオフセットズレする姿勢に設置しておくと共に、所定振幅Lpで振動する可動子14をオフセットズレした状態から反重力方向X1側にオフセット移動させたときには機械ストッパ12との衝突が発生せず且つ重力方向X2側にオフセット移動させたときには衝突が発生する検査用オフセット距離Ly_chを設定しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータユニットを検査する検査装置、リニアアクチュエータユニット駆動装置及びこれを備えた制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定子に対して可動子を往復動作させるリニアアクチュエータが、コンプレッサ等の種々な用途に対して適用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、一つの適用例として、レシプロモータ等のリニアアクチュエータを自動車等の車両に搭載して加振手段として用い、振動センサで検出される振動に対し逆相となる振動をリニアアクチュエータを通じて制振すべき位置に発生させるアクティブマスダンパー(制振装置)が開示されている。この制振装置では、振動を相殺するための相殺振動をリニアアクチュエータから発生させるべく、リニアアクチュエータの可動子を固定子に対して常に適切な可動範囲内で駆動することを制御の前提としているものの、万一、可動子が適切な可動範囲から超えてしまうことにより可動子を往復動可能に支持する板バネ等の支持部が破損することを防止すべく、可動子の往復動ストロークを規定する機械ストッパが可動子の往復動方向両側に対をなして配置されているのが通例である(特許文献1、2参照)。
【0004】
上記のようなアクティブマスダンパー用のリニアアクチュエータは、主としてエンジンルーム内に置かれることが多いことから、厳しい温度やノイズ、浸水といった劣悪環境でも極めて高い信頼性が求められるため、例えば特許文献3、4に示すように、可動子及び固定子を有するリニアアクチュエータ本体の周囲をケースで包囲することで、可動子を始めとする磁気回路をケースで密閉してユニット化した構成が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/129627号
【特許文献2】特開2007−135350号公報
【特許文献3】特許第4386149号公報
【特許文献4】特開2010−223338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のリニアアクチュエータの製造コストを低減させるための一つの有効な手段として、機械ストッパをケースに設け、リニアアクチュエータ本体とケースとを組立状態にしたときに、対をなす機械ストッパが可動子の往復動方向両側に配置されるように構成することが考えられる。
【0007】
そして、このようなリニアアクチュエータユニットを量産するにあたり、リニアアクチュエータ本体とケースとを組み立てた状態の完成形ユニットが設計通りに動作するか否かの動作確認検査を行う必要がある。検査項目としては、通電に応じた方向に可動子が動作すること(すなわち配線ミスがないこと)や、組立状態で可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパ間に規定される可動子の有効ストロークが設計通りであること(すなわち組付誤差が許容範囲内であること)などが挙げられる。
【0008】
完成形ユニットの動作を検査する簡易な検査方法として、可動子の動作状態を目視又は撮像手段を通じて検査する光学的な検査法が考えられる。しかしながら、この検査方法は、ケースがアルミ製等のように不透明な場合は採用することができない。
【0009】
光学的な検査法を採用するための一つの手段として、ケースの一部に窓を設けることが考えられるが、ケースがコスト高になると共に、ケースの機密性の問題が生じてしまう。
【0010】
光学的な検査法を採用するための上記以外の手段として、アクリル等の透明材質を用いてケース自体を構成することが考えられるが、ケースがコスト高になるうえ、透明といえどもケース越しに視認することになり、検査判定の精度が悪化する可能性がある。
【0011】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、可動子がケースに覆われて内部が視認できない場合でも、リニアアクチュエータユニットの内部状態を検査可能な検査装置、リニアアクチュエータ駆動装置及びこれを備えた制振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明のリニアアクチュエータユニット検査装置は、固定子及び当該固定子に対して所定方向に往復動作し得る可動子を有し通電により前記可動子が往復移動するリニアアクチュエータ本体と、前記リニアアクチュエータ本体の一部を固定した状態で当該リニアアクチュエータ本体の周囲を包囲するケースと、前記リニアアクチュエータ本体と前記ケースの組立状態において前記可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパとを備えたリニアアクチュエータユニットを検査する検査装置であって、通電がされていない状態において前記機械ストッパ間に規定される往復可動範囲の中心から前記可動子が自重により重力方向側にオフセットズレする姿勢に設置された検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、所定振幅で振動する可動子の往復動中心を前記オフセットズレした状態から反重力方向側にオフセット移動させたときには前記機械ストッパとの衝突が発生せず且つ重力方向側にオフセット移動させたときには前記機械ストッパとの衝突が発生する検査用オフセット距離を予め設定しておき、前記所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、前記可動子の往復動中心を反重力方向側に前記検査用オフセット距離分オフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電がなされているときに前記衝突検出手段により衝突が検出された場合に、前記可動子が通電方向に応じた方向に動作しないと前記内部判定部が判定する一方で、前記衝突が検出されない場合に、前記可動子が通電方向に応じた方向に動作すると前記内部判定部が判定するように構成したことを特徴とする。
【0014】
このように構成すれば、ケースに包囲されることで可動子が視認できないリニアアクチュエータユニットについて、検査用通電をなしたときに配線方向等が正しければ、可動子と機械ストッパとが衝突せず、配線方向等が間違っていれば可動子と機械ストッパとが衝突するので、衝突の有無を検出によって、可動子が通電方向に応じた方向に動作するか否かを検査することが可能となる。
【0015】
また、本発明のリニアアクチュエータユニット検査装置は、固定子及び当該固定子に対して所定方向に往復動作し得る可動子を有し通電により前記可動子が往復移動するリニアアクチュエータ本体と、前記リニアアクチュエータ本体の一部を固定した状態で当該リニアアクチュエータ本体の周囲を包囲するケースと、前記リニアアクチュエータ本体と前記ケースの組立状態において前記可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパとを備えたリニアアクチュエータユニットを検査する検査装置であって、検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、往復動方向の一方向である第一動作方向又は他方向である第二動作方向に前記可動子の往復動中心をオフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第一動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量として計測する第一動作方向ストローク検査モードと、前記検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第二動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量として計測する第二動作方向ストローク検査モードとを実行し、前記第一動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値または前記第二動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値の少なくともいずれかの誤差値が判定閾値を越えた場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でないと前記内部判定部が判定する一方で、前記いずれかの誤差値が前記判定閾値を越えない場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であると前記内部判定部が判定するように構成したことを特徴とする。
【0016】
このように構成すれば、ケースに包囲されることで可動子が視認できないリニアアクチュエータユニットについて、オフセット通電していない状態から可動子を機械ストッパに衝突させるために必要なオフセット通電量を、第一動作方向及び第二動作方向のそれぞれについて測定できるので、その測定結果と理想値との誤差値が判定閾値を超えるか否かによって、対をなす機械ストッパ間に規定される可動子の有効ストロークとその理想値(設計値)である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であるか否かを検査することが可能となる。しかも、オフセット通電によってオフセット移動する距離は、板バネのバネ定数やモータ推力係数等によっても変化するので、これらパラメータによって有効ストロークに不良が生じることになり、板バネや永久磁石に起因する不具合を有する初期不良品を間接的に排除することができ、適切に不良品を発見することが可能となる。
【0017】
周りの雑音に影響されることを低減して衝突判定精度を向上させるためには、前記衝突検出手段は、前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動を検出する振動センサと、前記振動センサで検出した振動波形と理想波形との偏差に応じて前記可動子が前記機械ストッパに衝突したか否かを判定する衝突判定部とにより構成されていることが好ましい。
【0018】
検査時に消費する電気エネルギーを抑制するためには、前記検査対象となるリニアアクチュエータユニットが取り付けられると共に、前記振動センサが取り付けられる振動台座部を備え、前記往復動通電は、前記振動台座部の共振周波数と一致する周波数又はその近傍の周波数で前記可動子を往復動作させるように設定されていることが望ましい。
【0019】
上記リニアアクチュエータユニットに対し、通電指令に応じた通電を行うことにより前記可動子の駆動を制御する通常モードを具備するリニアアクチュエータユニット駆動装置に上記検査機能を搭載して、経年劣化によってリニアアクチュエータユニットが交換時期であるか否かを容易に知るためには、検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、往復動方向の一方向である第一動作方向又は他方向である第二動作方向に前記可動子の往復動中心をオフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第一動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量として計測する第一動作方向ストローク検査モードと、前記検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第二動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量として計測する第二動作方向ストローク検査モードとを実行し、前記第一動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値または前記第二動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値の少なくともいずれかの誤差値が判定閾値を越えた場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でないと前記内部判定部が判定する一方で、前記いずれかの誤差値が前記判定閾値を越えない場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であると前記内部判定部が判定するように構成することが好ましい。
【0020】
本発明のリニアアクチュエータユニット駆動装置は、リニアアクチュエータユニットを加振手段として用いる制振装置に適用するのが好適である。すなわち、本発明のリニアアクチュエータユニット駆動装置を適用したものであって、前記振動センサで検出した振動に対し逆相となる振動を制振すべき位置に前記リニアアクチュエータユニットを通じて発生させるための制振通電指令を生成する制振通電指令生成部を備え、前記通常モードにおいて前記制振通電指令生成部で生成された制振通電指令を用いて前記可動子を駆動するように構成した制振装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明した構成によれば、検査用通電をなしたときに配線方向等が正しければ、可動子と機械ストッパとが衝突せず、配線方向等が間違っていれば可動子と機械ストッパとが衝突するので、ケースに包囲されることで可動子が視認できない場合であっても、衝突の有無を検出によって、可動子が通電方向に応じた方向に動作するか否かを検査することが可能となる。
【0022】
若しくは、オフセット通電していない状態から可動子を機械ストッパに衝突させるために必要となるオフセット通電量を、第一動作方向及び第二動作方向のそれぞれについて測定できるので、その測定結果と理想値との誤差値が判定閾値を超えるか否かによって、対をなす機械ストッパ間に規定される可動子の有効ストロークとその理想値(設計値)である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であるか否かを検査することが可能となる。しかも、板バネや永久磁石に起因する不具合を有する初期不良品を間接的に排除することができ、適切に不良品を発見することが可能となる。
【0023】
したがって、可動子の視認できない場合でも、内部状態を検査可能なリニアアクチュエータユニット検査装置、リニアアクチュエータユニット駆動装置及びこれを備えた制振装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータユニット検査装置を模式的に示す図。
【図2】検査対象となるリニアアクチュエータユニットを模式的に示す断面図。
【図3】同検査装置により駆動するリニアアクチュエータユニットの可動子の動作を模式的に示す図。
【図4】同検査装置により駆動するリニアアクチュエータユニットの可動子の動作を模式的に示す図。
【図5】可動子の駆動によって発生する振動に関する模式的な説明図。
【図6】同検査装置で実行されるモード制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】同検査装置で実行されるオフセット通電指令生成処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】同検査装置で実行される内部状態判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータユニット駆動装置が適用される制振装置の構成を模式的に示す構成図。
【図10】図9に示すリニアアクチュエータユニット駆動装置の構成及び機能を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るリニアアクチュエータユニットUを検査する検査装置を、図面を参照して説明する。
【0026】
まず、検査対象となるリニアアクチュエータユニットUについて説明する。図2に示すように、リニアアクチュエータユニットUは、リニアアクチュエータ本体10と、リニアアクチュエータ本体10を収納するためのケース11と、機械ストッパ12とを有する。
【0027】
リニアアクチュエータ本体10は、固定子13及び固定子13に対して所定の往復動方向Xに往復動作し得る可動子14を有し、可動子14を固定子13の外側に配置した、いわゆるアウター型構造を採用しているものである。固定子13は、永久磁石13aを設けた固定子コア13bをシャフト13cに取り付けたもので、シャフト13cを介してケース11の一部である固定土台11aに固定される。可動子14は、その軸方向両端部が板バネ15を介してシャフト13cに固定されることで、所定の往復動方向Xに沿って往復移動可能に板バネ15を介してシャフト13cに支持されている。本実施形態では、図示の通り、リニアアクチュエータユニットUを、その可動子14の往復動方向Xが上下方向となる姿勢で設置される。
【0028】
ケース11は、リニアアクチュエータ本体10の一部、すなわち固定子13を固定した状態で収容し得る、例えばアルミダイキャストを主体として構成されるもので、リニアアクチュエータ本体10(シャフト13c)を取り付ける固定土台11aと、固定土台11aと共にリニアアクチュエータ本体10の周囲を包囲するケース本体11bとを有している。
【0029】
機械ストッパ12は、例えば金属や樹脂、ゴム等により構成されるもので、ケース11(固定土台11a及びケース本体11b)とリニアアクチュエータ本体10とを組み立てた状態で可動子14の往復動方向両側に対をなして配置されるように、固定土台11a及びケース本体11bに取り付けられ、機械ストッパ12を取り付けるための部材を省略して製造コストを低減させている。そして、組立状態において対をなす機械ストッパ12間に可動子14の可動範囲D(有効ストローク範囲)が規定されることになる。
【0030】
リニアアクチュエータ本体10を構成する図示しないコイルに交流電流が通電される場合において、コイルに所定方向の電流が流れるときには、コイルへの通電で発生する磁界及び永久磁石13aで発生する磁界によって磁束のループが形成され、可動子14が往復動方向Xの一方向である第一動作方向X1(反重力方向側)に白抜き矢印で示すように移動する。一方、コイルに対して所定方向とは逆方向に電流が流れると、可動子14が往復動方向Xの他方向である第二動作方向X2(重力方向側)に移動する。すなわち、可動子14は、交流電流によるコイルへの電流の流れる方向が交互に変化することにより上記動作を繰り返し、固定子13に対してシャフト13cの軸方向に往復動作することになる。可動子14に働く推力は、コイルに通電する電流の大きさに比例するため、可動子14の往復動作の振幅を、電流値(通電量)で制御することが可能である。このリニアアクチュエータ本体10のより具体的な構造や動作説明は、特許文献1〜4等にも開示されているので、詳細は省略する。
【0031】
上記のリニアアクチュエータユニットUを検査する動作検査装置は、図1に示すように、検査対象となるリニアアクチュエータユニットUに通電を行って可動子14を駆動し、可動子14を機械ストッパ12(図2参照)に衝突させ、衝突した際の通電に基づき不良があるか否かを判定するもので、振動台座部2と、モード制御部3と、駆動制御部4と、衝突検出手段5と、内部判定部6と、報知手段7とを有している。
【0032】
振動台座部2は、図1及び図3(b)に示すように、検査対象となるリニアアクチュエータユニットUを、通電がなされていない状態において機械ストッパ12間に規定される往復可動範囲Dの中心Dcから可動子14が自重により重力方向X2側にオフセットズレする姿勢で設置するための板状をなす取付板を主体とするもので、可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUと一体に振動するように、リニアアクチュエータユニットUの取付部位から変位した複数箇所で支持されている。勿論、振動台座部2の形状は板状でなくともよく、また、片持ち状態で支持されるようにしてもよい。
【0033】
ここで、図3(a)及び(b)に示すように、重力によって可動子14が重力方向X2側にオフセットズレする重力オフセット距離Lm[m]は、可動子の質量をm[kg]、重力加速度をg[m/s2]、板バネ15のバネ定数をk[N/m]、可動子に働く重力をF[N]とすると、次の数式(1)で示される。
重力オフセット距離Lm=F/k=m・g/k…(1)
【0034】
図1に戻り、モード制御部3は、動作方向検査又は有効ストローク検査のうち、外部からの検査指令で指示された検査を行うべく、制御部Coの動作モードを司るもので、現在行うべき動作モードを示すモード信号MSを出力する。モード制御部3は、図示しないCPU、メモリ及びインターフェイスを具備するマイクロコンピュータユニットにより構成される制御部Co(コントローラともいう)において図6に示すモード制御処理ルーチンがCPUに実行されることで実現される。具体的には、図1及び図6に示すように、検査信号により動作方向検査が指示された場合(ステップST1:YES)には、ステップST2において動作方向検査モードMSを示すモード信号MSを出力する。一方、有効ストローク検査が指示された場合(ステップST3:YES)には、第一動作方向ストローク検査モードMS又は第二動作方向ストローク検査モードMSのいずれかを示すモード信号MSを出力する(ステップST4、ST6参照)。有効ストローク検査においては、第一動作方向ストローク検査モードMS及び第二動作方向ストローク検査モードMSを順次実行すべく、後述する衝突検出信号CSの入力を以てモード信号MSを切り換えるように構成されている(ステップST5参照)。
【0035】
動作方向検査モードMSは、通電方向に応じた方向に可動子14が動作するかを検査するモードであり、第一動作方向ストローク検査モードMSは、第一動作方向X1への可動子14の可動範囲(有効ストローク)が適正であるかを検査するモードであり、第二動作方向ストローク検査モードMSは、第二動作方向X2への可動子14の可動範囲(有効ストローク)が適正であるかを検査するモードである。
【0036】
図1に示す駆動制御部4は、図1及び図3(b)に示すように、予め定めた所定振幅Lpで可動子14を振動させる往復動通電ILPと、図3(b)→図3(c)のように可動子14の往復動中心Wcをオフセット移動させるオフセット通電Ioffとを重畳した検査用通電Ichを検査対象となるリニアアクチュエータユニットUに対して行うもので、上記制御部Coで実現される。図1に示すように、駆動制御部4は、動作モードに応じた検査用通電Ichがなされるように構成されている。具体的には、入力された通電指令Irefに応じた通電をリニアアクチュエータユニットUに行う通電制御部40と、可動子14を往復動させるための往復動通電指令Iref_Lpを生成する往復動指令生成部41と、可動子14の往復動中心Wcをオフセット移動させるオフセット通電指令Iref_offを生成するオフセット通電指令生成部42とを有している。
【0037】
通電制御部40は、図1に示すように、通電指令Irefに応じた電流をリニアアクチュエータユニットUに通電するための電流指令信号gsを生成する電流指令生成部40aと、電流指令生成部40aで生成された電流指令信号gsに応じた電流を電源(図示せず)からリニアアクチュエータユニットUに流す通電部40bとを備えている。なお、本実施形態では、電流制御方式を採用しているが、電圧制御方式を採用してもよい。
【0038】
往復動指令生成部41は、図1に示すように、予め設定された振幅指令及び周波数指令を入力し、振幅指令の示す振幅Lpで且つ周波数指令の示す周波数fで可動子14を往復動させるための往復動通電指令Iref_Lpを生成する。生成された往復動通電指令Iref_Lpは、加算器43において上述したオフセット通電指令Iref_offと重畳され、通電指令Irefとして通電制御部40(電流指令生成部40a)に入力される。すなわち、往復動通電指令Iref_Lp及びオフセット通電指令Iref_offを重畳した通電指令Irefが通電制御部40に入力されることによって、所定振幅Lpで可動子14を往復動させる往復動通電ILPと、可動子14の往復動中心Wcをオフセット移動させるオフセット通電Ioffとを重畳した検査用通電Ich(=ILP+Ioff)がなされることになる。振幅指令の示す振幅は、所定振幅Lpに設定されている。周波数指令の示す周波数fは、可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットU及び振動台座部2が共振状態となるように、振動台座部2の共振周波数に一致する周波数又はその近傍の周波数に設定されている。このように往復動作の周波数fを、共振状態を得る周波数に設定することで、少ない通電量(電流値)でより大きな振動を得ることができ、使用する通電量(電流)を抑制している。
【0039】
ここで、所定振幅Lp[m]で可動子を往復動させるための往復動通電指令Iref_Lp[A]は、角速度をω[rad/s]、モータ推力定数をKt[N/A]とすると、以下の数式(2)で示される。
往復動通電指令Iref_Lp=(m・ω)/(√2・Kt・Lp)…(2)
【0040】
オフセット通電指令生成部42は、図1に示すように、モード信号MS及び後述する衝突検出信号CSを入力し、モード信号MSの示す動作モードに応じたオフセット通電指令Iref_offを生成するもので、制御部Coにおいて図7に示すオフセット通電指令生成処理ルーチンが実行されることで実現される。具体的に、動作モードが動作方向検査モードMSである場合(図7のステップST10:YES参照)には、図3(c)に示すように可動子14の往復動中心Wcを反重力方向X1側(第一動作方向X1)に予め設定した検査用オフセット距離Ly_ch分オフセット移動させるオフセット通電指令Iref_offを生成して出力する(図7のステップST11参照)。一方、動作モードが第一動作方向ストローク検査モードMSである場合(図7のステップST12:YES参照)には、図4(a)→図4(b)→図4(c)のように、可動子14の往復動中心Wcを反重力方向X1側(第一動作方向X1)にオフセット移動させるオフセット通電指令Iref_offを、オフセット通電をしない状態から漸増させて出力する(図7のステップST14参照)。オフセット通電指令Iref_offの出力は、衝突検出信号CSが入力されるまで行う(図7のステップST13、ST14、ST15参照)。また、動作モードが第二動作方向ストローク検査モードMSである場合(図7のステップST16:YES参照)には、図4(d)→図4(e)→図4(f)のように、可動子14の往復動中心Wcを重力方向X2側(第二動作方向X2)にオフセット移動させるオフセット通電指令Iref_offを、オフセット通電しない状態から漸増させて出力する(図7のステップST18参照)。オフセット通電指令Iref_offの出力は、衝突検出信号CSが入力されるまで行う(図7のステップST17、ST18、ST19参照)。
【0041】
ここで、図1及び図3に示す検査用オフセット距離Ly_ch[m]は、図3(c)に示すように所定振幅Lpで振動する可動子14の往復動中心Wcをオフセットズレした状態から反重力方向X1側にオフセット移動させたときには機械ストッパ12との衝突が発生しない一方で、図3(d)に示すように可動子14の往復動中心Wcを重力方向X2側にオフセット移動させたときには機械ストッパ12との衝突が発生する範囲の距離に設定したもので、次のように求められる。
【0042】
まず、可動子14の往復動中心Wcを或る距離L、オフセット移動させるためのオフセット通電指令Iref_off[A]は、次の数式(3)で示される。
オフセット通電指令Iref_off=(L・k)/kt…(3)
【0043】
次に、図3(a)に示すように、オフセットズレしていない状態において可動子が±Llim[m]動作可能である場合に、図3(b)に示すように、重力オフセット距離Lm分重力方向にオフセットズレし且つ可動子14が所定振幅Lpで往復動する状態において、図4(c)に示すように可動子14と反重力方向X1側の機械ストッパが衝突するために必要な第一動作方向X1(反重力方向X1)へのオフセット距離Ly_upは、Llim+Lm−Lpとなる。同様に、図3(b)に示す状態において、図4(f)に示すように可動子14と重力方向X2側の機械ストッパ12が衝突するために必要な第二動作方向X2(重力方向X2)へのオフセット距離Ly_dnは、Llim−Lm−Lpとなる。そして、検査用オフセット距離Ly_chは、条件(Ly_up<Ly_ch<Ly_dn)を満たす範囲の値に設定される。なお、図3(c)に示すように可動子14の往復動中心Wcを反重力方向X1(第一動作方向X1)に検査用オフセット距離Ly_ch分オフセット移動させるためのオフセット通電指令Iref_offは、上記数式(3)によれば(Ly_ch・k)/ktとなる。
【0044】
また、第一動作方向ストローク検査モードMSにおいて用いる第一動作方向理想オフセット値(上方オフセット値)として、図4(c)に示すように可動子14の往復動中心Wcを第一動作方向X1にオフセット距離Ly_up分オフセット移動させるオフセット通電指令Iref_off_up=(Ly_up・k)/ktを予めメモリに記憶して設定しておくと共に(図1参照)、第二動作方向理想値(上方オフセット値)として、図4(f)に示すように可動子14の往復動中心Wcを第二動作方向X2にオフセット距離Ly_dn分オフセット移動させるオフセット通電指令Iref_off_dn=(Ly_dn・k)/ktを予めメモリに記憶して設定している(図1参照)。
【0045】
図1に戻り、衝突検出手段5は、駆動制御部4による通電に応じた可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる振動を検出し、検出した振動波形に基づき可動子14が機械ストッパ12へ衝突したことを検出するもので、具体的には、上記の振動台座部2に取り付けられる加速度センサ等の振動センサ50と、上記制御部Coで実現される衝突判定部51とを有している。
【0046】
振動センサ50は、図1に示すように、振動台座部2のうちリニアアクチュエータユニットUが取り付けられている部位の裏面に取り付けられている。勿論、振動センサ50の取り付け位置は、この位置に限定されるわけではなく、振動台座部2のうち最も振動の大きな部位に取り付けることが望ましい。
【0047】
衝突判定部51は、振動センサ50で検出した振動波形と予め設定された理想波形との偏差に応じて可動子が機械ストッパに衝突したか否かを判定する。具体的には、検出波形整形部51aと、波形判別部51bとを有する。
【0048】
衝突判定部51を構成する検出波形整形部51aは、振動センサ50からの振動検出信号ss1を波形判別部51bで処理しやすい整形検出信号ss2に変換するもので、例えばA/D変換処理や単位変換処理などを行う。
【0049】
衝突判定部51を構成する波形判別部51bは、モード信号MS及び整形検出信号ss2を入力し、動作モードに応じて予め設定された理想波形と検出した振動波形との偏差が予め定めた波形判別閾値を超えた場合に、可動子14が機械ストッパ12に衝突したと判定し、衝突検出信号CSを出力する。衝突判定の考え方は、衝突時の波形が機械ストッパの材質や反発係数に応じて変わるものの、基本的には、図5に模式的に示すように、可動子が機械ストッパに衝突していない場合には、検出される振動がほぼ正弦波状の理想波形に近い波形となるのに対し、可動子が衝突した場合には、検出される振動波形が乱れることに着目したものである。本実施形態では、衝突時に検出される加速度が、非衝突時に検出される加速度よりも急激に変化する部分があるのを利用したもので、検出される加速度の単位時間あたりの変化量(微分値)のピーク値が波形判別閾値を超えた場合に衝突したと判定し、波形判別閾値を超えない場合に衝突していないと判定するようにしている。波形判別閾値は適切な値に予め設定される。その他の判定方法としては、検出した振動波形の歪みに基づき判定する方法、検出した振動波形の絶対値積分値と理想波形の絶対値積分値を比較して判定する方法、検出した振動波形と理想波形との差分値を積算して判定する方法、ウェーブレット解析により判定する方法等、種々の方法が挙げられる。なお、本実施形態では、衝突していないときに検出されるべき波形を理想波形として予め設定しているが、衝突したときに検出されるべき波形を理想波形としてもよい。
【0050】
図1に戻り、内部判定部6は、オフセット通電指令Iref_off、モード信号MS及び衝突検出信号CSを入力し、駆動制御部4による通電及び衝突検出手段5による衝突検出の有無に基づきリニアアクチュエータユニットUの内部状態を判定するもので、制御部Coにおいて図8に示す内部状態判定処理ルーチンが実行されることで実現される。具体的には、図1及び図8に示すように、動作モードが動作方向検査モードMSである場合(ステップST20:YES参照)において、所定判定時間内に衝突が検出された場合(ステップST21:YES参照)には、可動子14が通電方向に応じた方向に動作しない(すなわち動作方向不良)と判定し(ステップST22参照)、一方で、衝突が検出されない場合(ステップST21:NO参照)には、可動子14が通電方向に応じた方向に動作する(すなわち動作方向正常)と判定する(ステップST23参照)。また、動作モードが第一動作方向ストローク検査モードMSである場合(ステップST24:YES参照)において、衝突検出信号CSが入力され衝突が検出された場合には、衝突検出時のオフセット通電量(オフセット通電指令Iref_offの値)を第一動作方向オフセット通電量Vupとして記憶する(ステップST26参照)。また、動作モードが第二動作方向ストローク検査モードMSである場合(ステップST27:YES参照)において、衝突検出信号CSが入力され衝突が検出された場合には、衝突検出時のオフセット通電量(オフセット通電指令Iref_offの値)を第二動作方向オフセット通電量Vdnとして記憶する(ステップST29参照)。そして、第一及び第二動作方向オフセット通電量Vup、Vdnがそれぞれ記憶された場合(ステップST30:YES参照)には、第一動作方向オフセット通電量Vupとその理想値である第一動作方向理想オフセット値Iref_off_up(上方オフセット値)との誤差値(Vup−Iref_off_up)を算出すると共に、第二動作方向オフセット通電量Vdnとその理想値である第二動作方向理想オフセット値Iref_off_dn(下方オフセット値)との誤差値(Vdn−Iref_off_dn)を算出し(ステップST31参照)、双方の誤差値(Vup−Iref_off_up)、(Vdn−Iref_off_dn)のうち少なくともいずれかが判定閾値thを超えた場合(ステップST32:YES参照)に、リニアアクチュエータユニットUに可動子の有効ストローク不良があると判定する(ステップST33参照)。言い換えると、可動子14の有効ストロークとその理想値である所定ストロークとのバラツキが所定の許容範囲内でないと判定する。一方で、上記双方の誤差値(Vup−Iref_off_up)、(Vdn−Iref_off_dn)のいずれも判定閾値thを超えない場合(ステップST32:NO参照)には、上記有効ストローク不良がないと判定する(ステップST34参照)。言い換えると、可動子14の有効ストロークとその理想値である所定ストロークとのバラツキが所定の許容範囲内であると判定する。
【0051】
報知手段7は、内部判定部6による判定結果を、マイクによるビープ音やLED、ディスプレイ、通信手段を介した上位コントローラへの報告信号の送信等を通じて外部に報知する。
【0052】
上記構成の検査装置の動作を説明する。まず、検査指令で動作方向検査が指示された場合について説明する。この場合、図1に示すように、動作方向検査モードMSを示すモード信号MSがモード制御部3から出力され、図3(c)に示すように所定振幅Lpで往復動作する可動子14を反重力方向X1に検査用オフセット距離Ly_up分オフセット移動させる通電がなされる。配線方向が正しければ、同図に示すように可動子14が反重力方向X1に移動して、両機械ストッパ12と衝突しない範囲で往復動作し、図1の衝突検出手段5で衝突が検出されない。すると、図1の内部判定部6は、所定時間内に衝突が検出されないことを以て、可動子14の動作方向が正常であると判定して、その結果を報知手段7を介して外部に報知する。一方、配線が間違っていれば、図3(d)のように重力方向X2に移動してしまい、重力方向X2側の機械ストッパ12と衝突して、この衝突を図1の衝突検出手段5が検出する。すると、図1の内部判定部6は、衝突が検出されたことを以て、通電方向に応じた方向に可動子14が動作しない動作方向不良があると判定し、その結果を報知手段7を介して外部に報知する。
【0053】
次に、検査指令でストローク検査が指示された場合について説明する。この場合、図1に示すように、まず、第一動作方向ストローク検査モードMSを示すモード信号MSがモード制御部3から出力され、所定振幅Lpで往復動作する可動子14を第一動作方向X1にオフセット移動させる通電がなされる。このとき、図4(a)→図4(b)→図4(c)に示すように、オフセット距離が0から第一動作方向X1に向けて漸増する。やがて、オフセット距離が過大となって、図4(c)に示すように可動子14が第一動作方向X1側の機械ストッパ12に衝突すると、この衝突を図1の衝突検出手段5が検出する。すると、図1の内部判定部6は、衝突時のオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量Vupとしてメモリに記憶する。続けて、図1に示すように第二動作方向ストローク検査モードMSを示すモード信号MSがモード制御部3から出力され、所定振幅Lpで往復動作する可動子14を第二動作方向X2にオフセット移動させる通電がなされる。このとき、図4(d)→図4(e)→図4(f)に示すように、オフセット距離が0から第二動作方向X2に向けて漸増する。やがて、オフセット距離が過大となって、図4(f)に示すように可動子14が第二動作方向X2側の機械ストッパ12に衝突すると、この衝突を図1の衝突検出手段5が検出する。すると、図1の内部判定部6は、衝突時のオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量Vdnとしてメモリに記憶する。
【0054】
これら第一動作方向オフセット通電量Vup及び第二動作方向オフセット通電量Vdnは、第一動作方向X1の有効ストローク及び第二動作方向X2の有効ストロークに対応する値となるため、これら値とその理想値との誤差を見ることで、有効ストロークの誤差が許容範囲内であるかを判定できる。そのために、第一動作方向X1及び第二動作方向X2の有効ストロークの測定が完了して、第一動作方向オフセット通電量Vup及び第二動作方向オフセット通電量Vdnがメモリに記録されると、第一動作方向オフセット通電量Vupとその理想値である第一動作方向理想オフセット値Iref_off_upとの誤差値(Vup−Iref_off_up)が算出されると共に、第二動作方向オフセット通電量Vdnとその理想値である第二動作方向理想オフセット値Iref_off_dnとの誤差値(Vdn−Iref_off_dn)が算出され、これら両誤差値のうちいずれかの誤差値が判定閾値thを超えている場合には、有効ストロークが不良である(すなわち、有効ストロークとその理想値である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でない)と判定し、その結果を報知手段7を介して外部に報知する。一方、両誤差値のうちいずれの誤差値も判定閾値thを超えていない場合には、有効ストロークが正常である(すなわち、有効ストロークとその理想値である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内である)と判定し、その結果を報知手段7を介して外部に報知する。
【0055】
以上のように本実施形態のリニアアクチュエータユニットUを検査する検査装置は、固定子13及び固定子13に対して所定方向に往復動作し得る可動子14を有し通電により可動子14が往復移動するリニアアクチュエータ本体10と、リニアアクチュエータ本体10の一部を固定した状態でリニアアクチュエータ本体10の周囲を包囲するケース11と、リニアアクチュエータ本体10とケース11の組立状態において可動子14の往復動方向(X)両側に配置される対をなす機械ストッパ12とを備えたリニアアクチュエータユニットUを検査する検査装置であって、通電がされていない状態において機械ストッパ12間に規定される往復可動範囲Dの中心Dcから可動子14が自重により重力方向X2側にオフセットズレする姿勢に設置された検査対象となるリニアアクチュエータユニットUに対して通電を行う駆動制御部4と、通電に応じた可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる振動を検出し、検出した振動波形に基づき可動子14が機械ストッパ12へ衝突したことを検出する衝突検出手段5と、駆動制御部4による通電及び衝突検出手段5による衝突検出の有無に基づきリニアアクチュエータユニットUの内部状態を判定するための内部判定部6とを備えてなり、所定振幅Lpで振動する可動子14の往復動中心Wcをオフセットズレした状態から反重力方向X1側にオフセット移動させたときには機械ストッパ12との衝突が発生せず且つ重力方向X2側にオフセット移動させたときには機械ストッパ12との衝突が発生する検査用オフセット距離Ly_upを予め設定しておき、所定振幅Lpで可動子14を振動させる往復動通電ILPと、可動子14の往復動中心Wcを反重力方向X1側に検査用オフセット距離Ly_up分オフセット移動させるオフセット通電Ioffとを重畳した検査用通電Ichを駆動制御部4を通じて行い、検査用通電Ichがなされているときに衝突検出手段5により衝突が検出された場合に、可動子14が通電方向に応じた方向に動作しないと内部判定部6が判定する一方で、衝突が検出されない場合に、可動子14が通電方向に応じた方向に動作すると内部判定部6が判定するように構成している。
【0056】
このように構成すれば、ケース11に包囲されることで可動子14が視認できないリニアアクチュエータユニットUについて、検査用通電Ichをなしたときに配線方向等が正しければ、可動子14と機械ストッパ12とが衝突せず、配線方向等が間違っていれば可動子14と機械ストッパ12とが衝突するので、衝突の有無を検出によって、可動子14が通電方向に応じた方向に動作するか否かを検査することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態のリニアアクチュエータユニットUを検査する検査装置は、固定子13及び固定子13に対して所定方向に往復動作し得る可動子14を有し通電により可動子14が往復移動するリニアアクチュエータ本体10と、リニアアクチュエータ本体10の一部を固定した状態でリニアアクチュエータ本体10の周囲を包囲するケース11と、リニアアクチュエータ本体10とケース11の組立状態において可動子14の往復動方向(X)両側に配置される対をなす機械ストッパ12とを備えたリニアアクチュエータユニットUを検査する動作検査装置であって、検査対象となるリニアアクチュエータユニットUに対して通電を行う駆動制御部4と、通電に応じた可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる振動を検出し、検出した振動波形に基づき可動子14が機械ストッパ12へ衝突したことを検出する衝突検出手段5と、駆動制御部4による通電及び衝突検出手段5による衝突検出の有無に基づきリニアアクチュエータユニットUの内部状態を判定するための内部判定部6とを備えてなり、所定振幅Lpで可動子14を振動させる往復動通電ILPと、往復動方向Xの一方向である第一動作方向X1又は他方向である第二動作方向X2に可動子14の往復動中心Wcをオフセット移動させるオフセット通電Ioffとを重畳した検査用通電Ichを駆動制御部4を通じて行い、検査用通電Ichのうち第一動作方向X1へのオフセット通電成分を衝突検出手段5で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量Vupとして計測する第一動作方向ストローク検査モードMSと、検査用通電Ichを駆動制御部4を通じて行い、検査用通電Ichのうち第二動作方向X2へのオフセット通電成分を衝突検出手段5で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量Vdnとして計測する第二動作方向ストローク検査モードMSとを実行し、第一動作方向オフセット通電量Vupの理想値(第一動作方向理想オフセット値Iref_off_up)との誤差値(Vup−Iref_off_up)または第二動作方向オフセット通電量Vdnの理想値(第二動作方向理想オフセット値Iref_off_dn)との誤差値(Vdn−Iref_off_dn)の少なくともいずれかが判定閾値thを越えた場合に、可動子14の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でないと内部判定部6が判定する一方で、上記いずれかの誤差値が上記判定閾値を越えない場合に、可動子14の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であると内部判定部6が判定するように構成している。
【0058】
このように構成すれば、ケース11に包囲されることで可動子14が視認できないリニアアクチュエータユニットUについて、オフセット通電していない状態から可動子14を機械ストッパ12に衝突させるために必要なオフセット通電量を、第一動作方向X1及び第二動作方向X2のそれぞれについて測定できるので、その測定結果と理想値との誤差値が判定閾値を超えるか否かによって、対をなす機械ストッパ12・12間に規定される可動子14の有効ストロークとその理想値(設計値)である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であるか否かを検査することが可能となる。しかも、オフセット通電Ioffによってオフセット移動する距離は、板バネのバネ定数やモータ推力係数等によっても変化するので、これらパラメータによって有効ストロークに不良が生じることになり、板バネ15や永久磁石13aに起因する不具合を有する初期不良品を間接的に排除することができ、適切に不良品を発見することが可能となる。
【0059】
特に、本実施形態では、衝突検出手段5が、通電に応じた可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる振動を検出する振動センサ50と、振動センサ50で検出した振動波形と理想波形との偏差に応じて可動子14が機械ストッパ12に衝突したか否かを判定する衝突判定部51とにより構成されているので、可動子の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる音波(駆動音や衝突時の異音)を検出して衝突判定する構成に比べて、周りの雑音に影響されることを低減して衝突判定精度を向上させることが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態では、検査対象となるリニアアクチュエータユニットUが取り付けられると共に、振動センサ50が取り付けられる振動台座部2を備え、往復動通電ILPは、振動台座部2の共振周波数と一致する周波数又はその近傍の周波数で可動子14を往復動作させるように設定されているので、共振現象を利用して少ない通電量(電流値)でより大きな振動を得ることができ、検査時に消費する電気エネルギーを抑制することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0062】
例えば、本実施形態では、有効ストローク検査においても動作方向検査と同様に、リニアアクチュエータユニットUを、通電がなされていない状態において可動子14が自重によりオフセットズレする姿勢に設置しているが、有効ストローク検査に限っては、オフセットズレしない姿勢で設置してもよい。すなわち、可動子14の往復動方向Xが水平方向と一致するようにリニアアクチュエータユニットUを横置きにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、衝突検出手段5として、振動センサ50で検出した振動の波形に基づき可動子14と機械ストッパ12との衝突を検出するように構成しているが、通電に応じた可動子14の往復動作によってリニアアクチュエータユニットUに生じる音波(駆動音や衝突時の異音)を検出するマイクロフォンを設け、マイクロフォンで検出した音波波形に基づき可動子14と機械ストッパ12との衝突音を検知して、両者の衝突を検出するように構成してもよい。判定方法は、本実施形態とほぼ同じ方式を採用することができ、その他にも種々の方法があるが、例えば通常駆動時には発生しない金属同士の衝突音(異音)の特定周波数成分が、検出した音波に存在するか否かで衝突判定することが挙げられる。
【0064】
さらに、本実施形態では、動作方向検査及び有効ストローク検査の両方の機能を備えているが、いずれか一方のみを備えたものであってもよい。
【0065】
さらにまた、本実施形態では、通電指令Irefを電流で構成した電流制御方式について説明しているが、通電指令を電圧で構成した電圧制御方式にも同様に適用可能である。さらに、本実施形態では、アウター型のリニアアクチュエータユニットを例に説明したが、インナー型のリニアアクチュエータユニットを検査するのにも適用可能である。また、図1に示す各機能部は、所定のプログラムをプロセッサで実行することにより実現してもよく、各機能部を専用回路で構成してもよい。
【0066】
上記では、検査装置について説明しているが、リニアアクチュエータユニットUを駆動する駆動装置に上記検査機能を適用してもよい。その一適用例を以下に述べる。すなわち、図9及び図10に示すように、検査機能を備えたリニアアクチュエータユニット駆動装置Pは、振動発生源gnで生じた振動Vi1と加振手段sy2を通じて制振すべき位置posに発生させる相殺振動Vi2とを制振すべき位置posで相殺させて制振すべき位置posでの振動を低減する制振装置syに適用され、加振手段sy2として用いられるリニアアクチュエータユニットUの可動子14を往復移動させる装置である。この制振装置syは、図9に示すように、自動車等の車両に搭載されるものであり、座席st等の制振すべき位置posに設けた加速度センサ等の振動センサ50と、この振動センサ50で検出される振動が小さくなるように適切な相殺振動Vi2を加振手段sy2に発生させる制振制御を実行する制御部Co(コントローラともいう)とを有している。この制御部Coは、振動発生源gnであるエンジンの点火パルス信号shと振動センサ50からの検出信号ss1とを入力し、これらの信号sh,ss1に基づき振動センサ50で検出される振動に対し逆相となる相殺振動Vi2を加振手段sy2に発生させる指令である制振通電指令Iref_sy(図10参照)を生成する制振通電指令生成部Co1を主体としている。リニアアクチュエータユニット駆動装置Pは、図10に示すように、上記の制振通電指令生成部Co1が生成した制振通電指令Iref_syを入力し、この制振通電指令Iref_syに応じた通電を行うことにより可動子14の駆動を制御する通常モードMSを具備している。そして、リニアアクチュエータユニット駆動装置Pは、上記検査装置とほぼ同様に、モード制御部103、駆動制御部104、衝突検出手段105、内部判定部6及び報知手段7を有し、制振制御を行う通常モードMSと、上記検査モード(MS1、MS2、MS)とを切り換え可能に構成している。通常モードMSにおいては制振通電指令生成部Co1で生成した制振通電指令Iref_syを用いて可動子14を駆動する。具体的には、モード制御部103を、制振制御を行う通常モードMSを示すモード信号MSを出力可能に構成し、また、駆動制御部104に、検査用通電Ichをなすための通電指令Iref及び制振通電指令生成部Co1からの制振通電指令Iref_syを入力し、モード信号MSに応じて通電制御部40に入力する通電指令を選択する通電指令選択部145を設けている。衝突検出手段105は、上記検査装置と同様に振動を検出するもので、制振制御を行うための振動センサ150を共用している。このように構成すれば、上記検査装置と同様に、対をなす機械ストッパ12・12間に規定される可動子14の有効ストロークとその理想値(設計値)である所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であるか否かを判定でき、しかも、例えば車検時などの時に検査モードを実行して、経年劣化による板バネ15や永久磁石13aに起因する不具合を間接的に発見することができ、経年劣化によってリニアアクチュエータユニットUが交換時期であるか否かを容易に知ることが可能となる。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…リニアアクチュエータ本体
11…ケース
12・12…機械ストッパ
13…固定子
14…可動子
2…振動台座部
4…駆動制御部
5…衝突検出手段
50…振動センサ
51…衝突判定部
6…内部判定部
U…リニアアクチュエータユニット
D…往復可動範囲
Dc…往復可動範囲の中心
Co1…制振通電指令生成部
X1…反重力方向(第一動作方向)
X2…重力方向(第二動作方向)
Wc…可動子の往復動中心
Ly_ch…検査用オフセット距離
Lp…所定振幅
LP…往復動通電
off…オフセット通電
Ich…検査用通電
up…第一動作方向オフセット通電量
dn…第二動作方向オフセット通電量
MS…第一動作方向ストローク検査モード
MS…第二動作方向ストローク検査モード
Iref_off_up…第一動作方向理想オフセット値(第一動作方向オフセット通電量の理想値)
Iref_off_dn…第二動作方向理想オフセット値(第二動作方向オフセット通電量の理想値)
th…判定閾値
sy…制振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子及び当該固定子に対して所定方向に往復動作し得る可動子を有し通電により前記可動子が往復移動するリニアアクチュエータ本体と、前記リニアアクチュエータ本体の一部を固定した状態で当該リニアアクチュエータ本体の周囲を包囲するケースと、前記リニアアクチュエータ本体と前記ケースの組立状態において前記可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパとを備えたリニアアクチュエータユニットを検査する検査装置であって、
通電がされていない状態において前記機械ストッパ間に規定される往復可動範囲の中心から前記可動子が自重により重力方向側にオフセットズレする姿勢に設置された検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、
前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、
前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、
所定振幅で振動する可動子の往復動中心を前記オフセットズレした状態から反重力方向側にオフセット移動させたときには前記機械ストッパとの衝突が発生せず且つ重力方向側にオフセット移動させたときには前記機械ストッパとの衝突が発生する検査用オフセット距離を予め設定しておき、
前記所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、前記可動子の往復動中心を反重力方向側に前記検査用オフセット距離分オフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電がなされているときに前記衝突検出手段により衝突が検出された場合に、前記可動子が通電方向に応じた方向に動作しないと前記内部判定部が判定する一方で、前記衝突が検出されない場合に、前記可動子が通電方向に応じた方向に動作すると前記内部判定部が判定するように構成したことを特徴とするリニアアクチュエータユニット検査装置。
【請求項2】
固定子及び当該固定子に対して所定方向に往復動作し得る可動子を有し通電により前記可動子が往復移動するリニアアクチュエータ本体と、前記リニアアクチュエータ本体の一部を固定した状態で当該リニアアクチュエータ本体の周囲を包囲するケースと、前記リニアアクチュエータ本体と前記ケースの組立状態において前記可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパとを備えたリニアアクチュエータユニットを検査する検査装置であって、
検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、
前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、
前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、
所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、往復動方向の一方向である第一動作方向又は他方向である第二動作方向に前記可動子の往復動中心をオフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第一動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量として計測する第一動作方向ストローク検査モードと、前記検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第二動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量として計測する第二動作方向ストローク検査モードとを実行し、前記第一動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値または前記第二動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値の少なくともいずれかの誤差値が判定閾値を越えた場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でないと前記内部判定部が判定する一方で、前記いずれかの誤差値が前記判定閾値を越えない場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であると前記内部判定部が判定するように構成したことを特徴とするリニアアクチュエータユニット検査装置。
【請求項3】
前記衝突検出手段は、前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動を検出する振動センサと、前記振動センサで検出した振動波形と理想波形との偏差に応じて前記可動子が前記機械ストッパに衝突したか否かを判定する衝突判定部とにより構成されている請求項1又は2に記載のリニアアクチュエータユニット検査装置。
【請求項4】
前記検査対象となるリニアアクチュエータユニットが取り付けられると共に、前記振動センサが取り付けられる振動台座部を備え、前記往復動通電は、前記振動台座部の共振周波数と一致する周波数又はその近傍の周波数で前記可動子を往復動作させるように設定されている請求項3に記載のリニアアクチュエータユニット検査装置。
【請求項5】
固定子及び当該固定子に対して所定方向に往復動作し得る可動子を有し通電により前記可動子が往復移動するリニアアクチュエータ本体と、前記リニアアクチュエータ本体の一部を固定した状態で当該リニアアクチュエータ本体の周囲を包囲するケースと、前記リニアアクチュエータ本体と前記ケースの組立状態において前記可動子の往復動方向両側に配置される対をなす機械ストッパとを備えたリニアアクチュエータユニットに対し、通電指令に応じた通電を行うことにより前記可動子の駆動を制御する通常モードを具備するリニアアクチュエータユニットの駆動装置であって、
検査対象となるリニアアクチュエータユニットに対して通電を行う駆動制御部と、
前記通電に応じた前記可動子の往復動作によって前記リニアアクチュエータユニットに生じる振動又は音波を検出し、検出した振動波形又は音波波形に基づき前記可動子が前記機械ストッパへ衝突したことを検出する衝突検出手段と、
前記駆動制御部による通電及び前記衝突検出手段による衝突検出の有無に基づき前記リニアアクチュエータユニットの内部状態を判定するための内部判定部とを備えてなり、
所定振幅で可動子を振動させる往復動通電と、往復動方向の一方向である第一動作方向又は他方向である第二動作方向に前記可動子の往復動中心をオフセット移動させるオフセット通電とを重畳した検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第一動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第一動作方向オフセット通電量として計測する第一動作方向ストローク検査モードと、前記検査用通電を前記駆動制御部を通じて行い、前記検査用通電のうち第二動作方向へのオフセット通電成分を前記衝突検出手段で衝突が検出されるまで漸増させ、衝突が検出されたときのオフセット通電量を第二動作方向オフセット通電量として計測する第二動作方向ストローク検査モードとを実行し、前記第一動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値または前記第二動作方向オフセット通電量の理想値との誤差値の少なくともいずれかの誤差値が判定閾値を越えた場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内でないと前記内部判定部が判定する一方で、前記いずれかの誤差値が前記判定閾値を越えない場合に、前記可動子の有効ストロークと所定ストロークとのバラツキが許容範囲内であると前記内部判定部が判定するように構成したことを特徴とするリニアアクチュエータユニット駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載のリニアアクチュエータ駆動装置を適用したものであって、
振動センサで検出した振動に対し逆相となる振動を制振すべき位置に前記リニアアクチュエータユニットを通じて発生させるための制振通電指令を生成する制振通電指令生成部を備え、前記通常モードにおいて前記制振通電指令生成部で生成された制振通電指令を用いて前記可動子を駆動するように構成したことを特徴とする制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−247348(P2012−247348A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120344(P2011−120344)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】