リニアアクチュエータ及びフォークリフト
【課題】高い動力伝達効率と耐久性を有するリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】ネジ軸1と、ネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山10と、ネジ山に沿ってネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2cを介してネジ山のフランク面1a上を転動する複数のローラ2と、複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、複数のローラが転動されるとネジ軸に対して相対的に回転するローラケージ3とを備え、ローラの中心軸26を、自身を仮想的に延長した直線がネジ軸と交差する姿勢で、かつネジ山側に傾斜した姿勢でローラケージに固定させる。
【解決手段】ネジ軸1と、ネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山10と、ネジ山に沿ってネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2cを介してネジ山のフランク面1a上を転動する複数のローラ2と、複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、複数のローラが転動されるとネジ軸に対して相対的に回転するローラケージ3とを備え、ローラの中心軸26を、自身を仮想的に延長した直線がネジ軸と交差する姿勢で、かつネジ山側に傾斜した姿勢でローラケージに固定させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ軸とローラケージの間に相対的な直動運動を生成するリニアアクチュエータと、これを備えたフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や温暖化対策の一環として、従来からの油圧アクチュエータに換えて、電動アクチュエータを各種機器のアクチュエータとして利用する志向が高まっている。これは、電動アクチュエータを利用すると、油圧機器で必要な作動油を使用しないこと自体が環境対策になると同時に、電動化による効率向上によって消費動力を削減できることに加え、動力回生を活用した一層の消費動力削減ができること、エネルギ源を内燃機関の燃料から電力に変換することによりアクチュエータ稼動現場でローカルな環境負荷低減ができること、そして、バッテリーを介した深夜電力利用による広域でのエネルギの有効利用ができること等を狙ったものである。この流れは、建設機械などに多用されている油圧シリンダのように大きな推力を発生させるリニアアクチュエータの分野にも及んでおり、大推力に耐える電動リニアアクチュエータのニーズが高まっている。
【0003】
電動リニアアクチュエータで用いられる回転−直動変換機構としては、ネジ軸とナット部材の隙間に配置される転動体として小球を利用したボールネジがある。しかし、この技術では、ネジ軸及びナット部材と小球の接触が点接触となり、大きなヘルツ応力が生じてフレーキングが発生してしまうので、大推力用に使用され長期寿命を要求される場合には充分な耐久性を保証しにくい。
【0004】
この種の課題の解決を図った技術としては、ボールネジの小球にかえて円錐型のローラを転動体として採用したものがある(特開2004−190767号公報等参照)。すなわち、このように円錐型ローラを用いることにより、ローラとネジ軸及びナット部材の間を線接触あるいはそれに近い接触状態とすることで、ヘルツ応力を低減してフレーキングに対する耐久性の改善を図ろうとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−190767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術においてネジ軸に対してナット部材が相対移動すると、円錐型ローラ自体もナット部材に対して移動してしまう。そのため、円錐型ローラがナット部材の外部に排出されないように、ボールネジの場合と同様に円錐型ローラを循環させる経路を設ける必要がある。ところが、円錐型ローラは、球と異なり、方向性を持った形状をしているので、その循環経路で線接触する姿勢を維持したり、スムースに循環経路を循環させることが現実的には非常に難しい。また、ナット部材に収納された円錐型ローラの平均直径は比較的小さくなる傾向があるため、多数のローラで推力を伝達する必要がある。さらに、各ローラが転動体として均等に荷重を分担するためには、各円錐型ローラ、ネジ軸、及びナット部材をそれぞれ高精度で製作しなければならず、この点においても実現性が乏しい。
【0007】
本発明の目的は高い動力伝達効率と耐久性を有するリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、ネジ軸と、このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、このネジ山に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記ネジ山のフランク面上を転動する複数のローラと、この複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記複数のローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、前記ローラの中心軸を、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定させるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローラとネジ軸の間に大きなすべりが生じることを抑制できるので、高い動力伝達効率と耐久性を有するリニアアクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図であり、図2は図1中のII方向からみたその正面図である。
【0012】
これらの図に示すリニアアクチュエータは、ネジ軸1と、複数のローラ2と、ローラケージ3を主に備えている。
【0013】
ネジ軸1の外周には螺旋状に形成されたネジ山10が設けられている。ネジ山10のフランク面1a,1bは、ネジ軸1の中心軸に対して傾斜している。本実施の形態におけるネジ山10は、台形状の断面を有しており、ネジ軸1の径方向外側における面はネジ軸1の中心軸に対して略平行になっている。そして、その平行な面の両端からは、傾斜状のフランク面1a,1bがネジ軸1に向かって広がっている。このように形成されたネジ山10によってネジ軸1の外周にはネジ溝が形成され、ネジ軸1は雄ネジとなっている。なお、以下において適宜、図1における右側のフランク面を右フランク面1aとし、左側のフランク面を左フランク面1bとする。
【0014】
ローラケージ3には、ネジ軸1の雄ネジに対応する雌ネジ部31が形成されており、ネジ軸1は雌ネジ部31を介してローラケージ3内に挿入されている。また、ローラケージ3は、図2に示すように、ネジ軸1の径方向外側(より具体的には各ローラ2の中心軸方向)に向かって突出した略円筒状の複数の突出部3a,3b,3cを有している。ここでは、図2において、手前から紙面奥に向かって順に、突出部3a、突出部3b、突出部3cとする。突出部3bは、突出部3aをネジ軸1のリードLの3分の1だけ図1中の右方向(ネジ軸1の軸方向)に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度(3分の2π)だけ回転させた位置に配置されており、突出部3cは、この突出部3bの位置からリードLの3分の1だけ図1中の右方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されている。この関係により、図1おける突出部3a,3cは、本来であれば突出部3b(図1の中央部に図示)に対してリードLの3分の1だけ左右にずらし120度回転させて図示すべきであるが、すべての突出部3a,3b,3cを同一平面上に表示するため、便宜的にリードLの4分の1だけずらして図示している。また、同様の便宜を図って、図1における突出部3a,3cの断面において、ローラ2、円筒コロ軸受4,5、及びカバー6についてはローラ2の中心軸26を含む平面における断面を図示し、ローラケージ3の雌ネジ部31についてはネジ軸1の中心軸を含む平面における断面を図示している。
【0015】
突出部3a,3b,3c内には転がり軸受(後述する円筒コロ軸受4,5)を介してローラ2がそれぞれ自転可能に収納されており、突出部3a,3b,3cの開口部はそれぞれカバー6によって閉塞されている。カバー6はボルトなどの固定手段(図示せず)によってローラケージ3に固定されている。ローラケージ3とネジ軸1は、ローラケージ3内に収納された複数のローラ2の転動面2cを介してのみ接触しており、他の部分では非接触状態となっている。複数のローラ2が転動すると、ローラケージ3がネジ軸1の周りをネジ軸1に対して相対的に回転し、ネジ軸1とローラケージ3の間に相対的な直動運動が生成される。なお、本実施の形態のローラケージ3では、生産容易性を優先させる観点から、3つのローラ2を収納するために3つの突出部3a,3b,3cを設けたが、突出部の数(すなわち、ローラ2の数)は作用させる軸推力の大きさ等に応じて適宜増減させても良い。
【0016】
雌ネジ部31は、ローラ2(転動面2c)が右フランク面1aと接触した図1の状態において(前述のように、図1における雌ネジ部31近傍は、便宜上、ネジ軸1の中心軸を含む平面における断面として図示されている)、左フランク面1bと雌ネジ部31の間に形成される隙間よりも、右フランク面1aと雌ネジ部31の間に形成される隙間の方が相対的に大きくなるように形成されている。
【0017】
このように雌ネジ部31を形成すると、図1に示した方向(図1における右方向)に軸推力Fthが作用している場合には、その軸推力Fthを必ずローラ2を介してローラケージ3に伝達させることができる。したがって、上記のように雌ネジ部31を形成すれば、ネジ軸1とローラケージ3の間で行われる相対的な回転と軸方向移動を、摩擦損失の小さい転がり対偶で行うことができる。なお、上記のように雌ネジ部31を形成しておけば、仮に軸推力Fthが図1と逆方向(すなわち、図1における左方向)に作用するときがあっても、雌ネジ部31との隙間が小さい左フランク面1bが雌ネジ部31と即座に接触することになるので、軸推力Fthによるガタを小さく抑えることができる。
【0018】
各ローラ2は、中心軸26を中心に自転して右フランク面1a上を転動する転動部2eと、転動部2eから突出し中心軸26をその中心に有する回転軸2aと、転動部2eにおけるネジ軸1側の端面である内側端面2dと、回転軸2aにおけるカバー6側の端面である外側端面2bを備えている。転動部2eの周方向には、右フランク面1aと接触する転動面2cが設けられており、転動部2eはこの転動面2cを介して右フランク面1a上を転動する。
【0019】
各ローラ2の中心軸26は、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢を保持するように、ローラケージ3に対して固定されている。また、これを換言すると、ローラ2の中心軸26は、ネジ山10のリード角γ’(図1参照)と概ね等しい角度γでもってネジ軸1の中心軸と交差する平面A上に位置していると表現することもできる。ここで、平面Aがネジ軸1の中心軸と交差する角度γが、リード角γ’と「概ね」等しいとしたのは下記の理由による。リード角γ’は、ネジ軸1の中心軸からの距離が一定の所定の円筒面と右フランク面1aとの交差線から求められる。しかし、右フランク面1aは、ネジ軸1の径方向においてネジ軸1の中心軸から所定の範囲(すなわち、ネジ山10の高さ分)にわたって存在するため、右フランク面1a上のどの箇所を選択するかによってリード角γ’も所定の範囲をもった値となる。そのため、角度γとリード角γ’を厳密に対応させることが困難だからである。
【0020】
また、リード角γ’は、図1中の一点鎖線Bで示される右フランク面1aの接線とネジ軸1の中心軸に直角な直線とが成す角であるので、一点鎖線Bと平面Aはほぼ直交する。すなわち、平面Aは右フランク面1aとほぼ直交している。なお、突出部3a,3b内のローラ2の中心軸26についても、突出部3b内のローラ2と同様に、ネジ軸1の中心軸とγの角度で交差する平面内に収まっている。
【0021】
上記のような姿勢で中心軸26を保持しつつ右フランク面1aと接するように転動面2cを形成すると、転動面2cと右フランク面1aが接触する部分において、それぞれの中心軸から近い部分同士を接触させることができ、かつそれぞれの中心軸から遠い部分同士を接触させることができる。これによりローラ2とネジ山10の間にすべりが生じることを抑制することができる。
【0022】
また、本実施の形態における各ローラ2の中心軸26は、上記の姿勢を保持しながら、転動面2cが接触しているネジ山10側に傾斜した姿勢で保持されている。すなわち、中心軸26は平面A内において転動面2cと右フランク面1aとの接触部側に傾斜している。このように中心軸26を右フランク面1a側に傾けると、転動面2cが接触しているネジ山10と1ピッチ分間隔を介したネジ山10の外側(図1の突出部3a中のローラ2における上方)にローラ2の内側端面2dを配置させることができるので、中心軸26を傾けない場合と比較してローラ2の転動部2eの直径(より具体的には内側端面2dの直径)を大きくすることができる。これにより、例えば、内側端面2dの直径をネジ山10のピッチ(本実施の形態ではリードLにも相当)よりも大きくすることができるので、転動面2cが接触しているネジ山10の隣りのネジ山10と内側端面2dを対向させることができる。したがって、上記のようにローラ2の中心軸26をネジ山10側に傾斜した姿勢で保持すると、転動部2eの直径を大きくすることができるので、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力を低減することができる。
【0023】
なお、上記のように内側端面2dがネジ山10と対向する程度にまで転動部2eの直径を大きくする場合には、本実施の形態のように内側端面2dにすり鉢状の凹部を形成することが好ましい。このように内側端面2dに凹部を形成すれば、内側端面2dがネジ山10と接触することを回避できるからである。また、このように内側端面2dに凹部を形成すると、ローラ2の中心軸26をネジ山10側傾斜させる際の傾斜量が小さくても、次のピッチにおけるネジ山10と干渉することが避けられるようになる。このように中心軸26の傾斜量を小さくすると、転動部2eの径が同じであってもローラケージ3の外径を小さく抑えることができる。
【0024】
各ローラ2の転動面2cは、中心軸26方向における一定の範囲において、右フランク面1aと接触するように形成されている。このように転動面2cと右フランク面1aを接触させると、ヘルツ応力が低減してフレーキングに対する耐久性を改善することができる。ここで、本実施の形態のようにネジ山10の右フランク面1aがネジ軸1の中心軸に対して傾斜している場合には、各ローラ2を、その中心軸26方向における一定の範囲において、転動部2eの直径がネジ軸1に近づくにつれて右フランク面1aの形状に合わせて徐々に小さくなるように形成すれば良い。このようにローラ2を形成すると、ローラ2とネジ軸1のそれぞれの中心軸から遠い部分同士及び近い部分同士を互いに接触させることができ、両者が接触しているいずれの点においてもすべりを微小にできるからである。
【0025】
なお、転動部2eと右フランク面1aの接触部分は可能な限り長く確保して、両者を線接触させることが好ましい。この点に関し、本実施の形態の転動部2eの直径は、中心軸26方向における一定の範囲においてネジ軸1に近づくにつれてネジ山10の形状(すなわち台形)に合わせて一定の割合で小さくなっており、転動部2eは円錐co(図1参照)の一部で形成されている。すなわち、転動面2cは円錐coの側面の一部で形成されており、転動部2eは右フランク面1aとその全域に亘って線接触している。
【0026】
ここで、図1において、転動面2cによって定義される円錐coの頂角を2βとし、転動面2cと右フランク面1aとの接触線がネジ軸1の中心軸となす角をαとする(αは、当該接触線を含む平面における断面において右フランク面1aの傾斜方向も表している。なお、図1においてネジ山10の輪郭として表示されているフランク面1aとネジ軸1の中心軸とがなす角度は厳密にはαにならないが、角度γの値が小さい場合には近似的にαに等しい)。ここで、図1に示すローラ2のように角度αと角度βを合計した角度をπ/2よりも小さくすると、ローラ2の中心軸26を転動面2cと右フランク1aとの接触部側に傾斜させることができる。このとき、ローラ2の内側端面2dの外輪は、中心軸26に対して直角となっているため、ネジ軸1の中心軸に対して傾斜することになる。このように、中心軸26を接触部側に傾斜させると、前述のように転動部2eの直径を大きくすることができ、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力を低減することができる。
【0027】
各ローラ2は、ローラ2に作用するラジアル荷重を支持可能なラジアル転がり軸受4と、ローラ2に作用するスラスト荷重を支持可能なスラスト転がり軸受5を介して、ローラケージ3によって支持されている。
【0028】
本実施の形態におけるラジアル転がり軸受4は、いわゆる円筒コロ軸受であり、回転軸2aをその周方向から取り囲むように円状に配列された複数の円筒コロ(転動体)によって形成されている。ラジアル転がり軸受4は、ローラの回転軸2aと突出部3a,3b,3cの内壁によって挟まれている。一方、本実施の形態におけるスラスト転がり軸受5は、軸受4と同様に円筒コロ軸受であり、外側端面2bの外縁部に円状に配列された複数の円筒コロ(転動体)によって形成されている。スラスト転がり軸受5は、ローラ2の外側端面2bとカバー6によって挟まれている。この結果、ローラ2を支持する各転がり軸受4,5に作用するラジアル荷重とスラスト荷重は、最終的にローラケージ3によって支持されている。なお、ローラ2の回転軸2aや外側端面2bの表面は、上記のように転がり軸受4,5の円筒コロが直接転動するため、熱処理を施して表面硬度を高くすることが好ましい。
【0029】
ところで、本実施の形態のようにネジ山10のフランク面1a,1bがネジ軸1の中心軸に対して傾斜している場合において、ローラ2の転動面2cと右フランク面1aの接触部において当該右フランク面1aと垂直に交わる仮想直線を定義する。このとき、ラジアル転がり軸受4は、軸受4を形成する複数の転動体によって取り囲まれた円柱状の空間内を当該仮想直線が通過する位置に固定されていることが好ましい。以下において、この点について説明する。
【0030】
図1にはローラ2の転動面2cと右フランク面1aの接触部の中央部から右フランク面1aに垂直に延びる矢印によって、転動面2cから右フランク面1aに作用する接触力F1´,F2´,F3´が示されている。接触力F1´,F2´,F3´は、図1におけるネジ軸1の左端面とローラケージ3の右端面に作用反作用の関係で作用している軸推力Fthによって発生する。なお、本実施の形態における転動面2cと右フランク面1aは線接触しているので、その接触力は厳密には線分布荷重となるが、ここでは便宜上それらの合力で接触力を代表している。一方、右フランク面1aから転動面2cには、上記接触力F1´,F2´,F3´と作用反作用の関係で接触反力F1,F2(図示せず),F3が作用している。図1に示したF1とF3は、F1´とF3´に対して大きさが同じで反対方向の力である。したがって、F1,F2,F3は、転動面2cとフランク面1aとの接触部の中央を通り当該接触部に垂直な作用線上、すなわち前記仮想直線上に作用している。
【0031】
ここで上記のように、複数の円筒コロによって取り囲まれた円柱状の空間内を前記仮想直線が通過する位置にラジアル転がり軸受4を配置すると、接触反力F1,F2,F3の作用線が前記円柱状の空間内を通過することになるので、接触反力F1,F2,F3がラジアル転がり軸受4に対するオーバーハング荷重にならない。これによりオーバーハング荷重のラジアル方向成分を支えるための軸受を別途設ける必要がなくなるので、1個のラジアル転がり軸受4だけでローラ2に作用するF1,F2,F3のラジアル方向成分(ラジアル荷重F1r,F2r(図示せず),F3r)を支持することができる。
【0032】
また、このとき、接触反力F1,F2,F3のスラスト(アキシャル)方向成分(スラスト荷重F1a,F2a(図示せず),F3a)は、ローラ2の外側端面2bとカバー6で挟まれているスラスト転がり軸受5で支持することができるので、ローラ2に作用する接触反力F1,F2,F3を1個のラジアル転がり軸受4と1個のスラスト転がり軸受5で支持することができる。これにより、ローラ2を支持するための軸受の数を抑制できるので、リニアアクチュエータの製造コストを抑制することができる。なお、詳細は後述するが、転がり軸受4をラジアル荷重とスラスト荷重の双方を支持可能なものとすれば、さらに軸受の数を低減することができる。
【0033】
ところで、上記の場合、さらに好ましくは、本実施の形態のように、前記仮想直線がラジアル転がり軸受4の幅方向の中央でローラ2の中心軸26と交差するように、ラジアル転がり軸受4を配置すると良い。このようにラジアル転がり軸受4を構成すると、前記仮想直線と中心軸26の交点で接触反力F1,F2,F3をラジアル荷重F1r,F2r,F3rとスラスト荷重F1a,F2a,F3aに分解できる。これにより、ラジアル荷重F1r,F2r,F3rをラジアル転がり軸受4のローラ幅の中央に作用させることができるとともに、スラスト荷重F1a,F2a,F3aをスラスト転がり軸受5の中央に作用させることができる。すなわち、ローラ2に作用する接触反力F1,F2,F3を、ラジアル方向荷重用の1個の軸受4とスラスト方向荷重用の一個の軸受5でそれぞれ無理なく支持することができる。また、このようにラジアル転がり軸受4を配置すると、スラスト転がり軸受5の中央にスラスト荷重F1a,F2a,F3aを作用させることができるので、前記仮想直線がラジアル転がり軸受4内を単に通過するように設計した場合と比較して、スラスト転がり軸受5の寿命を向上できる点もメリットである。
【0034】
上記のように構成されたネジ軸1、ローラ2、及びローラケージ3において、ネジ軸1とローラケージ3のうちいずれか一方の部材をすべりキーなどによって軸周りに回転することなく軸方向へのみ移動可能とし、他方の部材をスラスト軸受などによって軸方向に移動しないように拘束しつつ軸周りの回転可能に構成すると、ネジ軸1及びローラケージ3をリニアアクチュエータとして機能させることができる。つまり、ネジ軸1とローラケージ3のうち、回転可能な一方の部材を回転駆動させると、他の部材に軸推力を発生させることができる。なお、上記において、軸方向へ移動可能な一方の部材を軸方向に駆動すれば、回転可能な他方の部材を回転駆動することもできる。
【0035】
次に本実施の形態の効果について説明する。
上記のように構成されたリニアアクチュエータにおいて、各ローラ2の中心軸26は、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢で、かつ転動面2cが接触するフランク面1a側に傾斜した姿勢でローラケージ3に固定されており、ローラ2の転動面2cは、ローラ2の中心軸26方向における一定の範囲において、フランク面1aと接触している。
【0036】
まず、上記のように、転動面2cがフランク面1aと接触しつつ、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢で保持されるようにローラ2を固定すると、ローラ2の中心軸26とネジ軸1の中心軸が互いに平行に配置されることを避けることができるので、転動面2cと右フランク面1aが接触する部分において、それぞれの中心軸から近い部分同士を接触させることができ、かつそれぞれの中心軸から遠い部分同士を接触させることができる。これによりローラ2とネジ山10の接触部分のいずれの点においてもすべりが生じることを抑制することができる。
【0037】
また、これに加えて、上記のように中心軸26がフランク面1a側に傾斜した姿勢で保持されるようにローラ2を固定すると、転動面2cが接触しているネジ山10と1ピッチ分間隔を介したネジ山10の外側にローラ2の内側端面2dを配置させることができる。これにより、中心軸26を傾けない場合と比較してローラ2の転動部2eの直径を大きくすることができるので、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力が低減してローラ2の耐久性を向上することができる。
【0038】
したがって、上記のように構成した本実施の形態によれば、ローラ2とネジ軸1の間に大きなすべりが生じることを抑制できるとともに、両者の間に生じるヘルツ応力を低減できるので、リニアアクチュエータの動力伝達効率と耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、上記のように転動部2eの直径を大きくできると、1個あたりのローラ2が支持可能な荷重を大きくすることができるので、従来技術と比較して、一定の軸推力を支持するために必要なローラ2の個数を減らすことができる。さらに、上記のようにヘルツ応力が低減すると、ネジ軸1やローラ2の転動面2cにおける必要硬度が低下するので、従来必要だった焼入れ等の熱処理を省略して製造コストを低減できる可能性が生じる。
【0040】
なお、本実施の形態のようにネジ山10と接触するローラ2の数を3つとすると、4つ以上ローラ2を設けた場合と比較して、構成部品に多少の寸法誤差が存在しても確実に全てのローラ2がネジ山10と接触して荷重を支持することができるので生産が容易となる。また、これにより、製造品の出来・不出来によって生じる動力伝達効率や耐久性のバラつきも発生しにくくなる。
【0041】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における転がり軸受4,5を他の軸受(円錐コロ軸受14)に置換したものに相当する。
【0042】
図3は本発明の第2の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。
【0043】
この図に示す各ローラ2は、ローラケージ3内において、1個の円錐コロ軸受14のみを介して回転可能に支持されている。円錐コロ軸受14は、円筒コロによって構成された円筒コロ軸受4と異なり、円錐形状からなる複数の転動体(円錐コロ)によって構成されているため、接触反力F1,F2,F3のラジアル方向成分(ラジアル荷重F1r,F2r,F3r)だけでなく、スラスト方向成分(スラスト荷重F1a,F2a,F3a)も支持することができる。また、円錐コロ軸受14は、ローラ2とフランク面1aの接触部においてフランク面1aと垂直に交わる仮想直線が円錐コロによって取り囲まれた空間内を通過するように、止め輪15を介してローラケージ3内に固定されている。すなわち、本実施の形態における接触反力F1,F2,F3の作用線は、円錐コロによって取り囲まれた前記空間内を通過しているので、1個の円錐コロ軸受14のみでローラ2を支持することができる。
【0044】
上記のように、ローラ2を支持する軸受としてラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持できる転がり軸受を利用すれば、第1の実施の形態の場合よりもさらに軸受けの数を低減できるので、リニアアクチュエータの製造コストをさらに抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、接触反力F1,F3の作用線とローラ2の中心軸26との交点は、円錐コロ軸受14における荷重の作用点としてカタログ等に示されている位置の近傍に配置した。このようにすると、1個の円錐コロ軸受14のみで力F1およびF3のラジアル荷重成分F1r、F3rとスラスト荷重成分F1a、F3aを無理なく支持することができる。また、本実施の形態では、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持可能な転がり軸受として、円錐コロ軸受14を例として挙げたが、この他にも、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受等を利用しても良い。
【0046】
また、本実施の形態のローラ2における内側端面2dに設けられた凹部には、ネジ山10の先端部分が収納されている。このようにローラ2内にネジ山10を収納すると、ローラケージ3の大きさを小さくすることができる。
【0047】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、ローラ2の転動部2eとネジ山10のフランク面1aの大きさに関するものであり、これらを最適化することによりローラ2とネジ山10の間に生じるすべりの抑制を図っている。
【0048】
図4は本発明の第3の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、この図4に示したリニアアクチュエータは、図3に示したものの一部を省略したものに相当する。
【0049】
この図に示すように、右フランク面1aと転動面2cの接触部に属しネジ軸1の径方向における最外周側に位置する点を外周接触点P1とし、前記接触部に属しネジ軸1の径方向における最内周側に位置する点を内周接触点P3とし、前記接触部に属し外周接触点P1と内周接触点P3の中央に位置する点を中央接触点P2とし、円錐コロ軸受14の円錐コロ14aと内輪14bの接触部の中央に位置する点を中央接触点P4とし、P1とP3を通過する直線と中心軸26によって定義される円錐coの頂点を円錐頂点P5(すなわち、P5はP1及びP3を通過する直線と中心軸26との交点)とし、これらをそれぞれ黒丸で示す。
【0050】
また、ネジ軸1の中心軸を中心としP1を通る1リード分の螺旋を螺旋Lsoとし、ネジ軸1の中心軸を中心としP3を通る1リード分の螺旋を螺旋Lsiとし、中心軸26を中心としP1を通る転動面2c上の円を円Lsoとし、中心軸26を中心としP3を通る転動面2c上の円を円Lriとし、これらをそれぞれ破線で示す。
【0051】
さらに、ネジ軸1の中心軸からP1までの半径距離をRoとし、ネジ軸1の中心軸からP3までの半径距離をRiとし、円錐頂点P5からP1までの距離をloとし、円錐頂点P5からP3までの距離をliとし、ネジ軸1の中心軸と円錐頂点P5の偏位量をδとする。ここで、δが正の値のときにP5は当該中心軸の下方へ偏位し(すなわち、円錐頂点P5はネジ軸1の中心軸を超える)、δが負の値のときにP5は当該中心軸の上方へ偏位するものとする(すなわち、円錐頂点P5はネジ軸1の中心軸を超えない)。図4に示したリニアアクチュエータでは、ローラ2の転動部2eによって形成された円錐coの頂点P5は、ネジ軸1の中心軸の下方に偏位しており、δの値は正となっている。図4には、さらに、P2及びP4を含み、紙面に直交する平面Cと平面Dが一点鎖線で示されている。
【0052】
図5は図4中の点P1における各部の転動距離を示した図であり、図6は図4中の点P3における各部の転動距離を示した図である。図5には、図4における螺旋Lsoを平面に展開し、その上を円Lsoが転動する様子を模式的に示す。同様に、図6には、図4における螺旋Lsiを平面に展開し、その上を円Lriが転動する様子を模式的に示す。
【0053】
これら図5及び図6において、螺旋Lsoの長さをlsoとし、螺旋Lsiの長さをlsiとし、円Lsoの長さをLsoとし、円Lriの長さをlriとすると、P1とP3の2点における転動が同時にほとんどすべりの無い転動となるには、次の(1)式が成立すればよい。
【0054】
【数1】
【0055】
ここで上記(1)式の右辺は、下記(2)式に変形され、さらに(3)式に変形される。
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
つまり、P1とP3の2点における転動が同時にほとんどすべりの無い転動となるためには、条件式として下記(4)式が成立すればよいことが上記(1)式及び(3)式から導出できる。
【0059】
【数4】
【0060】
図7は本実施の形態において摩擦損失を最小化するための設計理論の説明図である。
この図を利用して(4)式を満足するδの値を算出する過程を示す。図7に示すグラフの横軸xは螺旋配置半径R(すなわち、螺旋からネジ軸1の中心軸までの距離)を示し、縦軸yは任意の螺旋配置半径RとリードLを有するネジ軸の1リード分(1ピッチ分)の螺旋長さlsを示す。ここで、lsは、下記(5)式に任意の螺旋配置半径Rとネジ軸1のリードLの値を代入することにより求めることができる。
【0061】
【数5】
【0062】
なお、図7ではリードLを20mmに固定し、lsをRの関数としてグラフ化してある。このとき、lsは、R=0であってもリードLの値を有し(すなわち、R=0のとき、ls=20>0)、Rの値が小さいときには曲率が大きく、Rの値が大きくなると曲率が小さくなる曲線として表される。しかし、Rの値が充分大きい区間では、lsは図7に示すように直線で近似できる。図7では、Ri=15mmからRo=20mmの区間に基づいてlsを直線に近似しており、その直線(近似直線)を破線で示してある。ここで、図7のグラフにおいて、近似直線と横軸との切片をRxとおくと、上記の近似直線は次の(6)式にように表記でき、さらに(6)式で−Rx=δとおくと(7)式のように表記できる。
【0063】
【数6】
【0064】
【数7】
【0065】
ここで、RiとRoを含む区間で(7)式の関係があれば(4)式が成立することは明白である。図7では、Rxは約−0.6mmと負の値であるので、δは正の値を持つ。また、(5)式より、R=0のときのls(=リードL)が正の値をとるのは明白なので、図7のケースに限らず、Rxは負の値になると考えられ、δは常に正の値を持つことになる。すなわち、(1)式が成立する場合には、転動部2eによって形成される円錐coの円錐頂点P5は、ネジ軸1の中心軸を超えたところに常に位置することが分かる(すなわち、円錐頂点P5は、ネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に位置している)。これを逆から言い換えると、転動面2cと右フランク面1aとのいずれの接触点においてもすべりをほとんど発生させないためには、ネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に円錐頂点P5を位置させることが条件となる。したがって、図4に示す本実施の形態のリニアアクチュエータのように、右フランク面1aと転動部2eが接触するようにローラ2を設け、かつ円錐頂点P5がネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に位置するようにローラ2を設ければ、ほとんどすべりを生じさせることなくローラ2を転動させることができる。したがって、上記のようにリニアアクチュエータを構成すれば、動力伝達効率をさらに向上させることができる。
【0066】
ここで、本実施の形態におけるローラ2とネジ山10の接触状態と、軸受14における円錐コロ14aと内輪14bの接触状態について説明する。
【0067】
図8は図4中の平面Cにおけるローラ2の転動部2e付近の断面図であり、図9は図4中の平面Cにおける軸受14の円錐コロ14a付近の断面図である。
【0068】
図8においてほぼ直線で表示される右フランク面1aは、紙面直角方向にも曲率を持たず、ヘルツ接触モデルとしては平面と考えてよい。一方、右フランク面1aと対になるローラ2の転動面2cは、前述の通り大きな半径を有する円筒面で近似できる。右フランク面1aと転動面2cの接触状態は厳密には線接触であるが、一方(右フランク面1a)が平面であり、他方(転動面2c)の曲率が小さいので、両者の接触状態は面接触状態に近く、ヘルツ応力の発生が抑制されることが容易に推定できる。
【0069】
図9において、相対的に小さな円は円錐コロ14aを示し、相対的に大きな円が内輪14bである。円錐コロ14aと内輪14bの接触は、円筒同士の接触に近似できるが、凸面と凸面の接触であり、一方(円錐コロ14a)の円筒の曲率が大きいので、ヘルツ応力が大きくなるのを複数の円錐コロ14aで荷重を分散させることで回避している。これを言い換えると、円錐コロ軸受14が複数の円錐コロ14aを介して支える荷重を、図8の右フランク面1aと転動面2cは一箇所の接触部で伝達しているということができる。
【0070】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の特徴は、上記各実施の形態と比較して、ネジ山10の右フランク面1aに接触する複数のローラ2(第1ローラ群)だけでなく、ネジ山10の左フランク面1bに接触する複数のローラ(第2ローラ群)を有している点にある。
【0071】
図10は本発明の第4の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、この図におけるローラケージ3の雌ネジ部31A(後述)の付近は、便宜上、ネジ軸1の中心軸を含む平面における断面として図示している。
【0072】
この図に示すリニアアクチュエータは、ネジ山10の右フランク面1aに沿ってネジ軸1の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2cを介して右フランク面1a上を転動する複数のローラ2から成る第1ローラ群51と、ネジ山10の左フランク面1bに沿ってネジ軸1の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2Acを介して左フランク面1b上を転動する複数のローラ2Aから成る第2ローラ群52と、ローラケージ3の内周部においてネジ軸1のネジ山10と対向して形成された雌ネジ部31Aを備えている。
【0073】
第1ローラ群51に含まれるローラ2は、上記各実施の形態のローラ2と同様に構成されており、ローラケージ3の突出部3a,3b(図示せず),3c(図示せず)内に収納され、ネジ山10の右フランク面1aと接触して転動する。また、第1ローラ群51の各ローラ2は、ネジ軸1の左端面から右方向に作用し、ローラケージ3の右端面に図示された力と釣合う軸推力Fth-Rの一部をローラケージ3に伝達している。図10には、便宜上、突出部3aに収納されたローラ2のみしか記載されていないが、他の突出部3b,3cは、上記の各実施の形態と同様に、突出部3aに対してネジ軸1の周方向には120度の間隔で、ネジ軸1の軸方向にはリードLの3分の1の間隔で配置されている。
【0074】
第2ローラ群52に含まれるローラ2Aは、ローラケージ3に設けられた突出部3d,3e(図示せず),3f(図示せず)内に収納されており、ネジ山10の左フランク面1bと接触して転動する。突出部3b,3cと同様に図示されていないが、突出部3eは、突出部3dをネジ軸1のリードLの3分の1だけ図10中の左方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されており、突出部3fは、この突出部3eの位置からリードLの3分の1だけ図10中の左方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されている。すなわち、突出部3dは突出部3aと対応し、突出部3eは突出部3bと対応し、突出部3fは突出部3cと対応している。そして、このような対応関係にある突出部に収納されたローラは、ネジ軸1の中心軸上の点を介して点対称に構成されている。上記のように構成される第2ローラ群52の各ローラ2Aは、ネジ軸1の右端面から左方向に作用し、ローラケージ3の左端面に図示された力と釣合う軸推力Fth-Lの一部をローラケージ3に伝達している。
【0075】
雌ネジ部31Aは、第1ローラ群51の各ローラ2が右フランク面1aと接触しながら、第2ローラ群52の各ローラ2Aが左フランク面1bと接触した状態において、右フランク面1aと雌ネジ部31Aの間に形成される隙間と、左フランク面1bと雌ネジ部31Aの間に形成される隙間とが、充分大きくなるように形成されている。
【0076】
上記のように構成された本実施の形態のリニアアクチュエータによれば、ネジ軸1の軸方向のいずれの方向から軸推力が作用する場合でも、その軸推力を第1ローラ群51と第2ローラ群52のうちいずれか一方のローラ群を介してローラケージ3に伝達することができる。すなわち、本実施の形態によれば、各ローラ群51,52とネジ山10とを転がり対偶で常に接触させることができるので、軸推力の作用する方向に関わらず摩擦損失を常に小さくできる。また、本実施の形態によれば、軸推力の作用方向が一定でモーメントや横方向荷重が作用する場合にも、各ローラ群51,52とネジ山10が接触している部分は全て転がり対偶なので、やはり摩擦損失を小さくできる。
【0077】
なお、本実施の形態におけるローラ2,2Aは、円錐コロ軸受14を介して支持されているが、前述した円筒コロ軸受等を介して支持しても良いことは言うまでもない。
【0078】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
図11は本発明に係るリニアアクチュエータを備えるフォークリフトの側面図であり、図12は図11のフォークリフトにおけるマスト70付近の拡大図である。
【0079】
図11において、これらの図に示すフォークリフトは、走行装置及び操舵装置が装着された車体60と、車体60の前方に設けられたマスト70と、マスト70の内枠72(図12参照)に取り付けられたフォーク80を備えている。
【0080】
図12において、マスト70は、車体60の前方に取り付けられた外枠71と、外枠71の内側に設けられ外枠71に沿って昇降する内枠72と、内枠72を昇降させるリニアアクチュエータ73を備えている。リニアアクチュエータ73は、外枠71に固定されたネジ軸1と、ローラケージ3と、ネジ軸1を回転駆動させるモータ(駆動源)74を備えている。ローラケージ3は、内枠72に取り付けられたブラケット75を介して内枠72を下方から支持している。なお、本実施の形態におけるモータ74は、複数の歯車76を介してネジ軸1に駆動力を伝達している。
【0081】
上記のように構成されるフォークリフトにおいて、操舵装置を利用してモータ74を駆動すると、ネジ軸1が回転駆動されて、ローラケージ3がネジ軸1に沿って移動する。これによりローラケージ3に支持された内枠72が昇降されるので、フォーク80を昇降させることができる。このように上記各実施の形態において説明したリニアアクチュエータは、フォークリフトにおけるフォーク80の高さ調節手段として利用することができる。すなわち、本実施の形態によれば、従来は主に油圧アクチュエータが利用されてきたフォークリフトのアクチュエータとして、電動アクチュエータを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図2】図1中のII方向からのリニアアクチュエータの正面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図5】図4中の点P1における各部の転動距離を示した図。
【図6】図4中の点P3における各部の転動距離を示した図。
【図7】本実施の形態において摩擦損失を最小化するための設計理論の説明図。
【図8】図4中の平面Cにおけるローラ2の転動部2e付近の断面図。
【図9】図4中の平面Cにおける軸受14の円錐コロ14a付近の断面図。
【図10】本発明の第4の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図11】本発明に係るリニアアクチュエータを備えるフォークリフトの側面図。
【図12】図11のフォークリフトにおけるマスト付近の拡大図。
【符号の説明】
【0083】
1…ネジ軸、1a…右フランク面、1b…左フランク面、2…ローラ、2a…回転軸、2b…外側端面、2c…転動面、2d…内側端面、2e…転動部、3…ローラケージ、3a…突出部、3b…突出部、3c…突出部、3d…突出部、3e…突出部、3f…突出部、4…ラジアル転がり軸受(円筒コロ軸受)、5…スラスト転がり軸受(円筒コロ軸受)、6…カバー、10…ネジ山、14…円錐コロ軸受、14a…円錐コロ、14b…内輪、15…止め輪、26…ローラ2の中心軸、31…雌ネジ部、51…第1ローラ群、52…第2ローラ群、60…車体、70…マスト、71…外枠、72…内枠、73…リニアアクチュエータ、74…モータ、80…フォーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ軸とローラケージの間に相対的な直動運動を生成するリニアアクチュエータと、これを備えたフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や温暖化対策の一環として、従来からの油圧アクチュエータに換えて、電動アクチュエータを各種機器のアクチュエータとして利用する志向が高まっている。これは、電動アクチュエータを利用すると、油圧機器で必要な作動油を使用しないこと自体が環境対策になると同時に、電動化による効率向上によって消費動力を削減できることに加え、動力回生を活用した一層の消費動力削減ができること、エネルギ源を内燃機関の燃料から電力に変換することによりアクチュエータ稼動現場でローカルな環境負荷低減ができること、そして、バッテリーを介した深夜電力利用による広域でのエネルギの有効利用ができること等を狙ったものである。この流れは、建設機械などに多用されている油圧シリンダのように大きな推力を発生させるリニアアクチュエータの分野にも及んでおり、大推力に耐える電動リニアアクチュエータのニーズが高まっている。
【0003】
電動リニアアクチュエータで用いられる回転−直動変換機構としては、ネジ軸とナット部材の隙間に配置される転動体として小球を利用したボールネジがある。しかし、この技術では、ネジ軸及びナット部材と小球の接触が点接触となり、大きなヘルツ応力が生じてフレーキングが発生してしまうので、大推力用に使用され長期寿命を要求される場合には充分な耐久性を保証しにくい。
【0004】
この種の課題の解決を図った技術としては、ボールネジの小球にかえて円錐型のローラを転動体として採用したものがある(特開2004−190767号公報等参照)。すなわち、このように円錐型ローラを用いることにより、ローラとネジ軸及びナット部材の間を線接触あるいはそれに近い接触状態とすることで、ヘルツ応力を低減してフレーキングに対する耐久性の改善を図ろうとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−190767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術においてネジ軸に対してナット部材が相対移動すると、円錐型ローラ自体もナット部材に対して移動してしまう。そのため、円錐型ローラがナット部材の外部に排出されないように、ボールネジの場合と同様に円錐型ローラを循環させる経路を設ける必要がある。ところが、円錐型ローラは、球と異なり、方向性を持った形状をしているので、その循環経路で線接触する姿勢を維持したり、スムースに循環経路を循環させることが現実的には非常に難しい。また、ナット部材に収納された円錐型ローラの平均直径は比較的小さくなる傾向があるため、多数のローラで推力を伝達する必要がある。さらに、各ローラが転動体として均等に荷重を分担するためには、各円錐型ローラ、ネジ軸、及びナット部材をそれぞれ高精度で製作しなければならず、この点においても実現性が乏しい。
【0007】
本発明の目的は高い動力伝達効率と耐久性を有するリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、ネジ軸と、このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、このネジ山に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記ネジ山のフランク面上を転動する複数のローラと、この複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記複数のローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、前記ローラの中心軸を、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定させるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローラとネジ軸の間に大きなすべりが生じることを抑制できるので、高い動力伝達効率と耐久性を有するリニアアクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図であり、図2は図1中のII方向からみたその正面図である。
【0012】
これらの図に示すリニアアクチュエータは、ネジ軸1と、複数のローラ2と、ローラケージ3を主に備えている。
【0013】
ネジ軸1の外周には螺旋状に形成されたネジ山10が設けられている。ネジ山10のフランク面1a,1bは、ネジ軸1の中心軸に対して傾斜している。本実施の形態におけるネジ山10は、台形状の断面を有しており、ネジ軸1の径方向外側における面はネジ軸1の中心軸に対して略平行になっている。そして、その平行な面の両端からは、傾斜状のフランク面1a,1bがネジ軸1に向かって広がっている。このように形成されたネジ山10によってネジ軸1の外周にはネジ溝が形成され、ネジ軸1は雄ネジとなっている。なお、以下において適宜、図1における右側のフランク面を右フランク面1aとし、左側のフランク面を左フランク面1bとする。
【0014】
ローラケージ3には、ネジ軸1の雄ネジに対応する雌ネジ部31が形成されており、ネジ軸1は雌ネジ部31を介してローラケージ3内に挿入されている。また、ローラケージ3は、図2に示すように、ネジ軸1の径方向外側(より具体的には各ローラ2の中心軸方向)に向かって突出した略円筒状の複数の突出部3a,3b,3cを有している。ここでは、図2において、手前から紙面奥に向かって順に、突出部3a、突出部3b、突出部3cとする。突出部3bは、突出部3aをネジ軸1のリードLの3分の1だけ図1中の右方向(ネジ軸1の軸方向)に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度(3分の2π)だけ回転させた位置に配置されており、突出部3cは、この突出部3bの位置からリードLの3分の1だけ図1中の右方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されている。この関係により、図1おける突出部3a,3cは、本来であれば突出部3b(図1の中央部に図示)に対してリードLの3分の1だけ左右にずらし120度回転させて図示すべきであるが、すべての突出部3a,3b,3cを同一平面上に表示するため、便宜的にリードLの4分の1だけずらして図示している。また、同様の便宜を図って、図1における突出部3a,3cの断面において、ローラ2、円筒コロ軸受4,5、及びカバー6についてはローラ2の中心軸26を含む平面における断面を図示し、ローラケージ3の雌ネジ部31についてはネジ軸1の中心軸を含む平面における断面を図示している。
【0015】
突出部3a,3b,3c内には転がり軸受(後述する円筒コロ軸受4,5)を介してローラ2がそれぞれ自転可能に収納されており、突出部3a,3b,3cの開口部はそれぞれカバー6によって閉塞されている。カバー6はボルトなどの固定手段(図示せず)によってローラケージ3に固定されている。ローラケージ3とネジ軸1は、ローラケージ3内に収納された複数のローラ2の転動面2cを介してのみ接触しており、他の部分では非接触状態となっている。複数のローラ2が転動すると、ローラケージ3がネジ軸1の周りをネジ軸1に対して相対的に回転し、ネジ軸1とローラケージ3の間に相対的な直動運動が生成される。なお、本実施の形態のローラケージ3では、生産容易性を優先させる観点から、3つのローラ2を収納するために3つの突出部3a,3b,3cを設けたが、突出部の数(すなわち、ローラ2の数)は作用させる軸推力の大きさ等に応じて適宜増減させても良い。
【0016】
雌ネジ部31は、ローラ2(転動面2c)が右フランク面1aと接触した図1の状態において(前述のように、図1における雌ネジ部31近傍は、便宜上、ネジ軸1の中心軸を含む平面における断面として図示されている)、左フランク面1bと雌ネジ部31の間に形成される隙間よりも、右フランク面1aと雌ネジ部31の間に形成される隙間の方が相対的に大きくなるように形成されている。
【0017】
このように雌ネジ部31を形成すると、図1に示した方向(図1における右方向)に軸推力Fthが作用している場合には、その軸推力Fthを必ずローラ2を介してローラケージ3に伝達させることができる。したがって、上記のように雌ネジ部31を形成すれば、ネジ軸1とローラケージ3の間で行われる相対的な回転と軸方向移動を、摩擦損失の小さい転がり対偶で行うことができる。なお、上記のように雌ネジ部31を形成しておけば、仮に軸推力Fthが図1と逆方向(すなわち、図1における左方向)に作用するときがあっても、雌ネジ部31との隙間が小さい左フランク面1bが雌ネジ部31と即座に接触することになるので、軸推力Fthによるガタを小さく抑えることができる。
【0018】
各ローラ2は、中心軸26を中心に自転して右フランク面1a上を転動する転動部2eと、転動部2eから突出し中心軸26をその中心に有する回転軸2aと、転動部2eにおけるネジ軸1側の端面である内側端面2dと、回転軸2aにおけるカバー6側の端面である外側端面2bを備えている。転動部2eの周方向には、右フランク面1aと接触する転動面2cが設けられており、転動部2eはこの転動面2cを介して右フランク面1a上を転動する。
【0019】
各ローラ2の中心軸26は、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢を保持するように、ローラケージ3に対して固定されている。また、これを換言すると、ローラ2の中心軸26は、ネジ山10のリード角γ’(図1参照)と概ね等しい角度γでもってネジ軸1の中心軸と交差する平面A上に位置していると表現することもできる。ここで、平面Aがネジ軸1の中心軸と交差する角度γが、リード角γ’と「概ね」等しいとしたのは下記の理由による。リード角γ’は、ネジ軸1の中心軸からの距離が一定の所定の円筒面と右フランク面1aとの交差線から求められる。しかし、右フランク面1aは、ネジ軸1の径方向においてネジ軸1の中心軸から所定の範囲(すなわち、ネジ山10の高さ分)にわたって存在するため、右フランク面1a上のどの箇所を選択するかによってリード角γ’も所定の範囲をもった値となる。そのため、角度γとリード角γ’を厳密に対応させることが困難だからである。
【0020】
また、リード角γ’は、図1中の一点鎖線Bで示される右フランク面1aの接線とネジ軸1の中心軸に直角な直線とが成す角であるので、一点鎖線Bと平面Aはほぼ直交する。すなわち、平面Aは右フランク面1aとほぼ直交している。なお、突出部3a,3b内のローラ2の中心軸26についても、突出部3b内のローラ2と同様に、ネジ軸1の中心軸とγの角度で交差する平面内に収まっている。
【0021】
上記のような姿勢で中心軸26を保持しつつ右フランク面1aと接するように転動面2cを形成すると、転動面2cと右フランク面1aが接触する部分において、それぞれの中心軸から近い部分同士を接触させることができ、かつそれぞれの中心軸から遠い部分同士を接触させることができる。これによりローラ2とネジ山10の間にすべりが生じることを抑制することができる。
【0022】
また、本実施の形態における各ローラ2の中心軸26は、上記の姿勢を保持しながら、転動面2cが接触しているネジ山10側に傾斜した姿勢で保持されている。すなわち、中心軸26は平面A内において転動面2cと右フランク面1aとの接触部側に傾斜している。このように中心軸26を右フランク面1a側に傾けると、転動面2cが接触しているネジ山10と1ピッチ分間隔を介したネジ山10の外側(図1の突出部3a中のローラ2における上方)にローラ2の内側端面2dを配置させることができるので、中心軸26を傾けない場合と比較してローラ2の転動部2eの直径(より具体的には内側端面2dの直径)を大きくすることができる。これにより、例えば、内側端面2dの直径をネジ山10のピッチ(本実施の形態ではリードLにも相当)よりも大きくすることができるので、転動面2cが接触しているネジ山10の隣りのネジ山10と内側端面2dを対向させることができる。したがって、上記のようにローラ2の中心軸26をネジ山10側に傾斜した姿勢で保持すると、転動部2eの直径を大きくすることができるので、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力を低減することができる。
【0023】
なお、上記のように内側端面2dがネジ山10と対向する程度にまで転動部2eの直径を大きくする場合には、本実施の形態のように内側端面2dにすり鉢状の凹部を形成することが好ましい。このように内側端面2dに凹部を形成すれば、内側端面2dがネジ山10と接触することを回避できるからである。また、このように内側端面2dに凹部を形成すると、ローラ2の中心軸26をネジ山10側傾斜させる際の傾斜量が小さくても、次のピッチにおけるネジ山10と干渉することが避けられるようになる。このように中心軸26の傾斜量を小さくすると、転動部2eの径が同じであってもローラケージ3の外径を小さく抑えることができる。
【0024】
各ローラ2の転動面2cは、中心軸26方向における一定の範囲において、右フランク面1aと接触するように形成されている。このように転動面2cと右フランク面1aを接触させると、ヘルツ応力が低減してフレーキングに対する耐久性を改善することができる。ここで、本実施の形態のようにネジ山10の右フランク面1aがネジ軸1の中心軸に対して傾斜している場合には、各ローラ2を、その中心軸26方向における一定の範囲において、転動部2eの直径がネジ軸1に近づくにつれて右フランク面1aの形状に合わせて徐々に小さくなるように形成すれば良い。このようにローラ2を形成すると、ローラ2とネジ軸1のそれぞれの中心軸から遠い部分同士及び近い部分同士を互いに接触させることができ、両者が接触しているいずれの点においてもすべりを微小にできるからである。
【0025】
なお、転動部2eと右フランク面1aの接触部分は可能な限り長く確保して、両者を線接触させることが好ましい。この点に関し、本実施の形態の転動部2eの直径は、中心軸26方向における一定の範囲においてネジ軸1に近づくにつれてネジ山10の形状(すなわち台形)に合わせて一定の割合で小さくなっており、転動部2eは円錐co(図1参照)の一部で形成されている。すなわち、転動面2cは円錐coの側面の一部で形成されており、転動部2eは右フランク面1aとその全域に亘って線接触している。
【0026】
ここで、図1において、転動面2cによって定義される円錐coの頂角を2βとし、転動面2cと右フランク面1aとの接触線がネジ軸1の中心軸となす角をαとする(αは、当該接触線を含む平面における断面において右フランク面1aの傾斜方向も表している。なお、図1においてネジ山10の輪郭として表示されているフランク面1aとネジ軸1の中心軸とがなす角度は厳密にはαにならないが、角度γの値が小さい場合には近似的にαに等しい)。ここで、図1に示すローラ2のように角度αと角度βを合計した角度をπ/2よりも小さくすると、ローラ2の中心軸26を転動面2cと右フランク1aとの接触部側に傾斜させることができる。このとき、ローラ2の内側端面2dの外輪は、中心軸26に対して直角となっているため、ネジ軸1の中心軸に対して傾斜することになる。このように、中心軸26を接触部側に傾斜させると、前述のように転動部2eの直径を大きくすることができ、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力を低減することができる。
【0027】
各ローラ2は、ローラ2に作用するラジアル荷重を支持可能なラジアル転がり軸受4と、ローラ2に作用するスラスト荷重を支持可能なスラスト転がり軸受5を介して、ローラケージ3によって支持されている。
【0028】
本実施の形態におけるラジアル転がり軸受4は、いわゆる円筒コロ軸受であり、回転軸2aをその周方向から取り囲むように円状に配列された複数の円筒コロ(転動体)によって形成されている。ラジアル転がり軸受4は、ローラの回転軸2aと突出部3a,3b,3cの内壁によって挟まれている。一方、本実施の形態におけるスラスト転がり軸受5は、軸受4と同様に円筒コロ軸受であり、外側端面2bの外縁部に円状に配列された複数の円筒コロ(転動体)によって形成されている。スラスト転がり軸受5は、ローラ2の外側端面2bとカバー6によって挟まれている。この結果、ローラ2を支持する各転がり軸受4,5に作用するラジアル荷重とスラスト荷重は、最終的にローラケージ3によって支持されている。なお、ローラ2の回転軸2aや外側端面2bの表面は、上記のように転がり軸受4,5の円筒コロが直接転動するため、熱処理を施して表面硬度を高くすることが好ましい。
【0029】
ところで、本実施の形態のようにネジ山10のフランク面1a,1bがネジ軸1の中心軸に対して傾斜している場合において、ローラ2の転動面2cと右フランク面1aの接触部において当該右フランク面1aと垂直に交わる仮想直線を定義する。このとき、ラジアル転がり軸受4は、軸受4を形成する複数の転動体によって取り囲まれた円柱状の空間内を当該仮想直線が通過する位置に固定されていることが好ましい。以下において、この点について説明する。
【0030】
図1にはローラ2の転動面2cと右フランク面1aの接触部の中央部から右フランク面1aに垂直に延びる矢印によって、転動面2cから右フランク面1aに作用する接触力F1´,F2´,F3´が示されている。接触力F1´,F2´,F3´は、図1におけるネジ軸1の左端面とローラケージ3の右端面に作用反作用の関係で作用している軸推力Fthによって発生する。なお、本実施の形態における転動面2cと右フランク面1aは線接触しているので、その接触力は厳密には線分布荷重となるが、ここでは便宜上それらの合力で接触力を代表している。一方、右フランク面1aから転動面2cには、上記接触力F1´,F2´,F3´と作用反作用の関係で接触反力F1,F2(図示せず),F3が作用している。図1に示したF1とF3は、F1´とF3´に対して大きさが同じで反対方向の力である。したがって、F1,F2,F3は、転動面2cとフランク面1aとの接触部の中央を通り当該接触部に垂直な作用線上、すなわち前記仮想直線上に作用している。
【0031】
ここで上記のように、複数の円筒コロによって取り囲まれた円柱状の空間内を前記仮想直線が通過する位置にラジアル転がり軸受4を配置すると、接触反力F1,F2,F3の作用線が前記円柱状の空間内を通過することになるので、接触反力F1,F2,F3がラジアル転がり軸受4に対するオーバーハング荷重にならない。これによりオーバーハング荷重のラジアル方向成分を支えるための軸受を別途設ける必要がなくなるので、1個のラジアル転がり軸受4だけでローラ2に作用するF1,F2,F3のラジアル方向成分(ラジアル荷重F1r,F2r(図示せず),F3r)を支持することができる。
【0032】
また、このとき、接触反力F1,F2,F3のスラスト(アキシャル)方向成分(スラスト荷重F1a,F2a(図示せず),F3a)は、ローラ2の外側端面2bとカバー6で挟まれているスラスト転がり軸受5で支持することができるので、ローラ2に作用する接触反力F1,F2,F3を1個のラジアル転がり軸受4と1個のスラスト転がり軸受5で支持することができる。これにより、ローラ2を支持するための軸受の数を抑制できるので、リニアアクチュエータの製造コストを抑制することができる。なお、詳細は後述するが、転がり軸受4をラジアル荷重とスラスト荷重の双方を支持可能なものとすれば、さらに軸受の数を低減することができる。
【0033】
ところで、上記の場合、さらに好ましくは、本実施の形態のように、前記仮想直線がラジアル転がり軸受4の幅方向の中央でローラ2の中心軸26と交差するように、ラジアル転がり軸受4を配置すると良い。このようにラジアル転がり軸受4を構成すると、前記仮想直線と中心軸26の交点で接触反力F1,F2,F3をラジアル荷重F1r,F2r,F3rとスラスト荷重F1a,F2a,F3aに分解できる。これにより、ラジアル荷重F1r,F2r,F3rをラジアル転がり軸受4のローラ幅の中央に作用させることができるとともに、スラスト荷重F1a,F2a,F3aをスラスト転がり軸受5の中央に作用させることができる。すなわち、ローラ2に作用する接触反力F1,F2,F3を、ラジアル方向荷重用の1個の軸受4とスラスト方向荷重用の一個の軸受5でそれぞれ無理なく支持することができる。また、このようにラジアル転がり軸受4を配置すると、スラスト転がり軸受5の中央にスラスト荷重F1a,F2a,F3aを作用させることができるので、前記仮想直線がラジアル転がり軸受4内を単に通過するように設計した場合と比較して、スラスト転がり軸受5の寿命を向上できる点もメリットである。
【0034】
上記のように構成されたネジ軸1、ローラ2、及びローラケージ3において、ネジ軸1とローラケージ3のうちいずれか一方の部材をすべりキーなどによって軸周りに回転することなく軸方向へのみ移動可能とし、他方の部材をスラスト軸受などによって軸方向に移動しないように拘束しつつ軸周りの回転可能に構成すると、ネジ軸1及びローラケージ3をリニアアクチュエータとして機能させることができる。つまり、ネジ軸1とローラケージ3のうち、回転可能な一方の部材を回転駆動させると、他の部材に軸推力を発生させることができる。なお、上記において、軸方向へ移動可能な一方の部材を軸方向に駆動すれば、回転可能な他方の部材を回転駆動することもできる。
【0035】
次に本実施の形態の効果について説明する。
上記のように構成されたリニアアクチュエータにおいて、各ローラ2の中心軸26は、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢で、かつ転動面2cが接触するフランク面1a側に傾斜した姿勢でローラケージ3に固定されており、ローラ2の転動面2cは、ローラ2の中心軸26方向における一定の範囲において、フランク面1aと接触している。
【0036】
まず、上記のように、転動面2cがフランク面1aと接触しつつ、中心軸26を仮想的に延長した直線がネジ軸1と交差する姿勢で保持されるようにローラ2を固定すると、ローラ2の中心軸26とネジ軸1の中心軸が互いに平行に配置されることを避けることができるので、転動面2cと右フランク面1aが接触する部分において、それぞれの中心軸から近い部分同士を接触させることができ、かつそれぞれの中心軸から遠い部分同士を接触させることができる。これによりローラ2とネジ山10の接触部分のいずれの点においてもすべりが生じることを抑制することができる。
【0037】
また、これに加えて、上記のように中心軸26がフランク面1a側に傾斜した姿勢で保持されるようにローラ2を固定すると、転動面2cが接触しているネジ山10と1ピッチ分間隔を介したネジ山10の外側にローラ2の内側端面2dを配置させることができる。これにより、中心軸26を傾けない場合と比較してローラ2の転動部2eの直径を大きくすることができるので、転動面2cと右フランク面1aに生じるヘルツ応力が低減してローラ2の耐久性を向上することができる。
【0038】
したがって、上記のように構成した本実施の形態によれば、ローラ2とネジ軸1の間に大きなすべりが生じることを抑制できるとともに、両者の間に生じるヘルツ応力を低減できるので、リニアアクチュエータの動力伝達効率と耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、上記のように転動部2eの直径を大きくできると、1個あたりのローラ2が支持可能な荷重を大きくすることができるので、従来技術と比較して、一定の軸推力を支持するために必要なローラ2の個数を減らすことができる。さらに、上記のようにヘルツ応力が低減すると、ネジ軸1やローラ2の転動面2cにおける必要硬度が低下するので、従来必要だった焼入れ等の熱処理を省略して製造コストを低減できる可能性が生じる。
【0040】
なお、本実施の形態のようにネジ山10と接触するローラ2の数を3つとすると、4つ以上ローラ2を設けた場合と比較して、構成部品に多少の寸法誤差が存在しても確実に全てのローラ2がネジ山10と接触して荷重を支持することができるので生産が容易となる。また、これにより、製造品の出来・不出来によって生じる動力伝達効率や耐久性のバラつきも発生しにくくなる。
【0041】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における転がり軸受4,5を他の軸受(円錐コロ軸受14)に置換したものに相当する。
【0042】
図3は本発明の第2の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。
【0043】
この図に示す各ローラ2は、ローラケージ3内において、1個の円錐コロ軸受14のみを介して回転可能に支持されている。円錐コロ軸受14は、円筒コロによって構成された円筒コロ軸受4と異なり、円錐形状からなる複数の転動体(円錐コロ)によって構成されているため、接触反力F1,F2,F3のラジアル方向成分(ラジアル荷重F1r,F2r,F3r)だけでなく、スラスト方向成分(スラスト荷重F1a,F2a,F3a)も支持することができる。また、円錐コロ軸受14は、ローラ2とフランク面1aの接触部においてフランク面1aと垂直に交わる仮想直線が円錐コロによって取り囲まれた空間内を通過するように、止め輪15を介してローラケージ3内に固定されている。すなわち、本実施の形態における接触反力F1,F2,F3の作用線は、円錐コロによって取り囲まれた前記空間内を通過しているので、1個の円錐コロ軸受14のみでローラ2を支持することができる。
【0044】
上記のように、ローラ2を支持する軸受としてラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持できる転がり軸受を利用すれば、第1の実施の形態の場合よりもさらに軸受けの数を低減できるので、リニアアクチュエータの製造コストをさらに抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、接触反力F1,F3の作用線とローラ2の中心軸26との交点は、円錐コロ軸受14における荷重の作用点としてカタログ等に示されている位置の近傍に配置した。このようにすると、1個の円錐コロ軸受14のみで力F1およびF3のラジアル荷重成分F1r、F3rとスラスト荷重成分F1a、F3aを無理なく支持することができる。また、本実施の形態では、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持可能な転がり軸受として、円錐コロ軸受14を例として挙げたが、この他にも、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受等を利用しても良い。
【0046】
また、本実施の形態のローラ2における内側端面2dに設けられた凹部には、ネジ山10の先端部分が収納されている。このようにローラ2内にネジ山10を収納すると、ローラケージ3の大きさを小さくすることができる。
【0047】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、ローラ2の転動部2eとネジ山10のフランク面1aの大きさに関するものであり、これらを最適化することによりローラ2とネジ山10の間に生じるすべりの抑制を図っている。
【0048】
図4は本発明の第3の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、この図4に示したリニアアクチュエータは、図3に示したものの一部を省略したものに相当する。
【0049】
この図に示すように、右フランク面1aと転動面2cの接触部に属しネジ軸1の径方向における最外周側に位置する点を外周接触点P1とし、前記接触部に属しネジ軸1の径方向における最内周側に位置する点を内周接触点P3とし、前記接触部に属し外周接触点P1と内周接触点P3の中央に位置する点を中央接触点P2とし、円錐コロ軸受14の円錐コロ14aと内輪14bの接触部の中央に位置する点を中央接触点P4とし、P1とP3を通過する直線と中心軸26によって定義される円錐coの頂点を円錐頂点P5(すなわち、P5はP1及びP3を通過する直線と中心軸26との交点)とし、これらをそれぞれ黒丸で示す。
【0050】
また、ネジ軸1の中心軸を中心としP1を通る1リード分の螺旋を螺旋Lsoとし、ネジ軸1の中心軸を中心としP3を通る1リード分の螺旋を螺旋Lsiとし、中心軸26を中心としP1を通る転動面2c上の円を円Lsoとし、中心軸26を中心としP3を通る転動面2c上の円を円Lriとし、これらをそれぞれ破線で示す。
【0051】
さらに、ネジ軸1の中心軸からP1までの半径距離をRoとし、ネジ軸1の中心軸からP3までの半径距離をRiとし、円錐頂点P5からP1までの距離をloとし、円錐頂点P5からP3までの距離をliとし、ネジ軸1の中心軸と円錐頂点P5の偏位量をδとする。ここで、δが正の値のときにP5は当該中心軸の下方へ偏位し(すなわち、円錐頂点P5はネジ軸1の中心軸を超える)、δが負の値のときにP5は当該中心軸の上方へ偏位するものとする(すなわち、円錐頂点P5はネジ軸1の中心軸を超えない)。図4に示したリニアアクチュエータでは、ローラ2の転動部2eによって形成された円錐coの頂点P5は、ネジ軸1の中心軸の下方に偏位しており、δの値は正となっている。図4には、さらに、P2及びP4を含み、紙面に直交する平面Cと平面Dが一点鎖線で示されている。
【0052】
図5は図4中の点P1における各部の転動距離を示した図であり、図6は図4中の点P3における各部の転動距離を示した図である。図5には、図4における螺旋Lsoを平面に展開し、その上を円Lsoが転動する様子を模式的に示す。同様に、図6には、図4における螺旋Lsiを平面に展開し、その上を円Lriが転動する様子を模式的に示す。
【0053】
これら図5及び図6において、螺旋Lsoの長さをlsoとし、螺旋Lsiの長さをlsiとし、円Lsoの長さをLsoとし、円Lriの長さをlriとすると、P1とP3の2点における転動が同時にほとんどすべりの無い転動となるには、次の(1)式が成立すればよい。
【0054】
【数1】
【0055】
ここで上記(1)式の右辺は、下記(2)式に変形され、さらに(3)式に変形される。
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
つまり、P1とP3の2点における転動が同時にほとんどすべりの無い転動となるためには、条件式として下記(4)式が成立すればよいことが上記(1)式及び(3)式から導出できる。
【0059】
【数4】
【0060】
図7は本実施の形態において摩擦損失を最小化するための設計理論の説明図である。
この図を利用して(4)式を満足するδの値を算出する過程を示す。図7に示すグラフの横軸xは螺旋配置半径R(すなわち、螺旋からネジ軸1の中心軸までの距離)を示し、縦軸yは任意の螺旋配置半径RとリードLを有するネジ軸の1リード分(1ピッチ分)の螺旋長さlsを示す。ここで、lsは、下記(5)式に任意の螺旋配置半径Rとネジ軸1のリードLの値を代入することにより求めることができる。
【0061】
【数5】
【0062】
なお、図7ではリードLを20mmに固定し、lsをRの関数としてグラフ化してある。このとき、lsは、R=0であってもリードLの値を有し(すなわち、R=0のとき、ls=20>0)、Rの値が小さいときには曲率が大きく、Rの値が大きくなると曲率が小さくなる曲線として表される。しかし、Rの値が充分大きい区間では、lsは図7に示すように直線で近似できる。図7では、Ri=15mmからRo=20mmの区間に基づいてlsを直線に近似しており、その直線(近似直線)を破線で示してある。ここで、図7のグラフにおいて、近似直線と横軸との切片をRxとおくと、上記の近似直線は次の(6)式にように表記でき、さらに(6)式で−Rx=δとおくと(7)式のように表記できる。
【0063】
【数6】
【0064】
【数7】
【0065】
ここで、RiとRoを含む区間で(7)式の関係があれば(4)式が成立することは明白である。図7では、Rxは約−0.6mmと負の値であるので、δは正の値を持つ。また、(5)式より、R=0のときのls(=リードL)が正の値をとるのは明白なので、図7のケースに限らず、Rxは負の値になると考えられ、δは常に正の値を持つことになる。すなわち、(1)式が成立する場合には、転動部2eによって形成される円錐coの円錐頂点P5は、ネジ軸1の中心軸を超えたところに常に位置することが分かる(すなわち、円錐頂点P5は、ネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に位置している)。これを逆から言い換えると、転動面2cと右フランク面1aとのいずれの接触点においてもすべりをほとんど発生させないためには、ネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に円錐頂点P5を位置させることが条件となる。したがって、図4に示す本実施の形態のリニアアクチュエータのように、右フランク面1aと転動部2eが接触するようにローラ2を設け、かつ円錐頂点P5がネジ軸1の中心軸に対してローラ2の反対側に位置するようにローラ2を設ければ、ほとんどすべりを生じさせることなくローラ2を転動させることができる。したがって、上記のようにリニアアクチュエータを構成すれば、動力伝達効率をさらに向上させることができる。
【0066】
ここで、本実施の形態におけるローラ2とネジ山10の接触状態と、軸受14における円錐コロ14aと内輪14bの接触状態について説明する。
【0067】
図8は図4中の平面Cにおけるローラ2の転動部2e付近の断面図であり、図9は図4中の平面Cにおける軸受14の円錐コロ14a付近の断面図である。
【0068】
図8においてほぼ直線で表示される右フランク面1aは、紙面直角方向にも曲率を持たず、ヘルツ接触モデルとしては平面と考えてよい。一方、右フランク面1aと対になるローラ2の転動面2cは、前述の通り大きな半径を有する円筒面で近似できる。右フランク面1aと転動面2cの接触状態は厳密には線接触であるが、一方(右フランク面1a)が平面であり、他方(転動面2c)の曲率が小さいので、両者の接触状態は面接触状態に近く、ヘルツ応力の発生が抑制されることが容易に推定できる。
【0069】
図9において、相対的に小さな円は円錐コロ14aを示し、相対的に大きな円が内輪14bである。円錐コロ14aと内輪14bの接触は、円筒同士の接触に近似できるが、凸面と凸面の接触であり、一方(円錐コロ14a)の円筒の曲率が大きいので、ヘルツ応力が大きくなるのを複数の円錐コロ14aで荷重を分散させることで回避している。これを言い換えると、円錐コロ軸受14が複数の円錐コロ14aを介して支える荷重を、図8の右フランク面1aと転動面2cは一箇所の接触部で伝達しているということができる。
【0070】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の特徴は、上記各実施の形態と比較して、ネジ山10の右フランク面1aに接触する複数のローラ2(第1ローラ群)だけでなく、ネジ山10の左フランク面1bに接触する複数のローラ(第2ローラ群)を有している点にある。
【0071】
図10は本発明の第4の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図である。なお、この図におけるローラケージ3の雌ネジ部31A(後述)の付近は、便宜上、ネジ軸1の中心軸を含む平面における断面として図示している。
【0072】
この図に示すリニアアクチュエータは、ネジ山10の右フランク面1aに沿ってネジ軸1の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2cを介して右フランク面1a上を転動する複数のローラ2から成る第1ローラ群51と、ネジ山10の左フランク面1bに沿ってネジ軸1の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面2Acを介して左フランク面1b上を転動する複数のローラ2Aから成る第2ローラ群52と、ローラケージ3の内周部においてネジ軸1のネジ山10と対向して形成された雌ネジ部31Aを備えている。
【0073】
第1ローラ群51に含まれるローラ2は、上記各実施の形態のローラ2と同様に構成されており、ローラケージ3の突出部3a,3b(図示せず),3c(図示せず)内に収納され、ネジ山10の右フランク面1aと接触して転動する。また、第1ローラ群51の各ローラ2は、ネジ軸1の左端面から右方向に作用し、ローラケージ3の右端面に図示された力と釣合う軸推力Fth-Rの一部をローラケージ3に伝達している。図10には、便宜上、突出部3aに収納されたローラ2のみしか記載されていないが、他の突出部3b,3cは、上記の各実施の形態と同様に、突出部3aに対してネジ軸1の周方向には120度の間隔で、ネジ軸1の軸方向にはリードLの3分の1の間隔で配置されている。
【0074】
第2ローラ群52に含まれるローラ2Aは、ローラケージ3に設けられた突出部3d,3e(図示せず),3f(図示せず)内に収納されており、ネジ山10の左フランク面1bと接触して転動する。突出部3b,3cと同様に図示されていないが、突出部3eは、突出部3dをネジ軸1のリードLの3分の1だけ図10中の左方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されており、突出部3fは、この突出部3eの位置からリードLの3分の1だけ図10中の左方向に移動させ、かつネジ軸1の中心軸周りに120度だけ回転させた位置に配置されている。すなわち、突出部3dは突出部3aと対応し、突出部3eは突出部3bと対応し、突出部3fは突出部3cと対応している。そして、このような対応関係にある突出部に収納されたローラは、ネジ軸1の中心軸上の点を介して点対称に構成されている。上記のように構成される第2ローラ群52の各ローラ2Aは、ネジ軸1の右端面から左方向に作用し、ローラケージ3の左端面に図示された力と釣合う軸推力Fth-Lの一部をローラケージ3に伝達している。
【0075】
雌ネジ部31Aは、第1ローラ群51の各ローラ2が右フランク面1aと接触しながら、第2ローラ群52の各ローラ2Aが左フランク面1bと接触した状態において、右フランク面1aと雌ネジ部31Aの間に形成される隙間と、左フランク面1bと雌ネジ部31Aの間に形成される隙間とが、充分大きくなるように形成されている。
【0076】
上記のように構成された本実施の形態のリニアアクチュエータによれば、ネジ軸1の軸方向のいずれの方向から軸推力が作用する場合でも、その軸推力を第1ローラ群51と第2ローラ群52のうちいずれか一方のローラ群を介してローラケージ3に伝達することができる。すなわち、本実施の形態によれば、各ローラ群51,52とネジ山10とを転がり対偶で常に接触させることができるので、軸推力の作用する方向に関わらず摩擦損失を常に小さくできる。また、本実施の形態によれば、軸推力の作用方向が一定でモーメントや横方向荷重が作用する場合にも、各ローラ群51,52とネジ山10が接触している部分は全て転がり対偶なので、やはり摩擦損失を小さくできる。
【0077】
なお、本実施の形態におけるローラ2,2Aは、円錐コロ軸受14を介して支持されているが、前述した円筒コロ軸受等を介して支持しても良いことは言うまでもない。
【0078】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
図11は本発明に係るリニアアクチュエータを備えるフォークリフトの側面図であり、図12は図11のフォークリフトにおけるマスト70付近の拡大図である。
【0079】
図11において、これらの図に示すフォークリフトは、走行装置及び操舵装置が装着された車体60と、車体60の前方に設けられたマスト70と、マスト70の内枠72(図12参照)に取り付けられたフォーク80を備えている。
【0080】
図12において、マスト70は、車体60の前方に取り付けられた外枠71と、外枠71の内側に設けられ外枠71に沿って昇降する内枠72と、内枠72を昇降させるリニアアクチュエータ73を備えている。リニアアクチュエータ73は、外枠71に固定されたネジ軸1と、ローラケージ3と、ネジ軸1を回転駆動させるモータ(駆動源)74を備えている。ローラケージ3は、内枠72に取り付けられたブラケット75を介して内枠72を下方から支持している。なお、本実施の形態におけるモータ74は、複数の歯車76を介してネジ軸1に駆動力を伝達している。
【0081】
上記のように構成されるフォークリフトにおいて、操舵装置を利用してモータ74を駆動すると、ネジ軸1が回転駆動されて、ローラケージ3がネジ軸1に沿って移動する。これによりローラケージ3に支持された内枠72が昇降されるので、フォーク80を昇降させることができる。このように上記各実施の形態において説明したリニアアクチュエータは、フォークリフトにおけるフォーク80の高さ調節手段として利用することができる。すなわち、本実施の形態によれば、従来は主に油圧アクチュエータが利用されてきたフォークリフトのアクチュエータとして、電動アクチュエータを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図2】図1中のII方向からのリニアアクチュエータの正面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図5】図4中の点P1における各部の転動距離を示した図。
【図6】図4中の点P3における各部の転動距離を示した図。
【図7】本実施の形態において摩擦損失を最小化するための設計理論の説明図。
【図8】図4中の平面Cにおけるローラ2の転動部2e付近の断面図。
【図9】図4中の平面Cにおける軸受14の円錐コロ14a付近の断面図。
【図10】本発明の第4の実施の形態であるリニアアクチュエータの側断面図。
【図11】本発明に係るリニアアクチュエータを備えるフォークリフトの側面図。
【図12】図11のフォークリフトにおけるマスト付近の拡大図。
【符号の説明】
【0083】
1…ネジ軸、1a…右フランク面、1b…左フランク面、2…ローラ、2a…回転軸、2b…外側端面、2c…転動面、2d…内側端面、2e…転動部、3…ローラケージ、3a…突出部、3b…突出部、3c…突出部、3d…突出部、3e…突出部、3f…突出部、4…ラジアル転がり軸受(円筒コロ軸受)、5…スラスト転がり軸受(円筒コロ軸受)、6…カバー、10…ネジ山、14…円錐コロ軸受、14a…円錐コロ、14b…内輪、15…止め輪、26…ローラ2の中心軸、31…雌ネジ部、51…第1ローラ群、52…第2ローラ群、60…車体、70…マスト、71…外枠、72…内枠、73…リニアアクチュエータ、74…モータ、80…フォーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ軸と、
このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、
このネジ山に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記ネジ山のフランク面上を転動する複数のローラと、
この複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記複数のローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、
前記ローラの中心軸は、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの転動面は、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において、前記フランク面と接触していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの中心軸は、前記ネジ山のリード角と概ね等しい角度でもって前記ネジ軸の中心軸と交差する平面上に位置し、かつ、その平面内で前記転動面と前記フランク面との接触部に傾斜していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ軸に最も近い部分における前記ローラの直径は、前記ネジ山のピッチよりも大きく、
前記ローラにおける前記ネジ軸側の端面は、前記転動面が接触している前記ネジ山と1ピッチ分間隔を介したネジ山に対向していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラにおける前記ネジ軸側の端面には、その面が前記ネジ山と1ピッチ分間隔を介したネジ山と接触することを回避するための凹部が形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ山のフランク面は、前記ネジ軸の中心軸に対して傾斜しており、
前記ローラは、前記転動面を前記フランク面と線接触させるために、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において前記ローラの直径が前記ネジ軸に近づくにつれて前記ネジ山の形状に合わせて徐々に小さくなっていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項6記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの直径は、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において前記ネジ軸に近づくにつれて、前記傾斜したフランク面を有する前記ネジ山に合わせて一定の割合で小さくなっており、
前記ローラの転動面は、円錐の側面の一部で形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラと前記フランク面の接触部に属し前記ネジ軸の径方向における最外周側に位置する点を外周接触点とし、
前記ローラと前記フランク面の接触部に属し前記ネジ軸の径方向における最内周側に位置する点を内周接触点とし、
前記外周接触点と前記内周接触点を通過する直線と前記ローラの中心軸とによって円錐を定義したとき、
前記ローラは、前記円錐の頂点が前記ネジ軸の中心軸を超えるように形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ山のフランク面は、前記ネジ軸の中心軸に対して傾斜しており、
前記ローラケージは、前記ローラに作用するラジアル荷重を支持可能な転がり軸受を介して前記ローラを支持しており、
前記転がり軸受は、前記ローラの回転軸の周方向に配列された複数の転動体によって形成されており、
前記転動面と前記フランク面の接触部において前記フランク面と垂直に交わる仮想直線が、前記複数の転動体によって取り囲まれた空間内を通過するように、前記転がり軸受は前記ローラケージ内に固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項10】
請求項9記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記転がり軸受は、前記ローラに作用するラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持可能な1つの転がり軸受であり、
前記ローラケージは、前記1つの転がり軸受を介して前記ローラを支持していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項11】
請求項9記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記転がり軸受は、前記ローラに作用するラジアル荷重を支持可能な1つの転がりラジアル軸受であり、
前記ローラケージは、前記転がりラジアル軸受と、前記ローラに作用するスラスト荷重を支持可能な1つの転がりスラスト軸受とを介して前記ローラを支持していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項12】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの数は3つであり、
その3つのローラは、それぞれの前記ネジ軸の軸方向における位置が前記ネジ軸のリードの3分の1ずつずれるように前記ネジ山に沿って等間隔で配置されており、かつ、それぞれの前記ネジ軸の周方向における位置は互いに3分の2πずつずれていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項13】
ネジ軸と、
このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、
このネジ山の右フランク面に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記右フランク面上を転動する複数のローラから成る第1ローラ群と、
前記ネジ山の左フランク面に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記左フランク面上を転動する複数のローラから成る第2ローラ群と、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラの中心軸は、それぞれ、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記右フランク面側又は前記左フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項14】
請求項13記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラの転動面は、それぞれ、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において、前記右フランク面又は前記左フランク面と接触していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のリニアアクチュエータをフォークの高さ調節手段として備えることを特徴とするフォークリフト。
【請求項1】
ネジ軸と、
このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、
このネジ山に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記ネジ山のフランク面上を転動する複数のローラと、
この複数のローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記複数のローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、
前記ローラの中心軸は、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの転動面は、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において、前記フランク面と接触していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの中心軸は、前記ネジ山のリード角と概ね等しい角度でもって前記ネジ軸の中心軸と交差する平面上に位置し、かつ、その平面内で前記転動面と前記フランク面との接触部に傾斜していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ軸に最も近い部分における前記ローラの直径は、前記ネジ山のピッチよりも大きく、
前記ローラにおける前記ネジ軸側の端面は、前記転動面が接触している前記ネジ山と1ピッチ分間隔を介したネジ山に対向していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラにおける前記ネジ軸側の端面には、その面が前記ネジ山と1ピッチ分間隔を介したネジ山と接触することを回避するための凹部が形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ山のフランク面は、前記ネジ軸の中心軸に対して傾斜しており、
前記ローラは、前記転動面を前記フランク面と線接触させるために、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において前記ローラの直径が前記ネジ軸に近づくにつれて前記ネジ山の形状に合わせて徐々に小さくなっていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項6記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの直径は、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において前記ネジ軸に近づくにつれて、前記傾斜したフランク面を有する前記ネジ山に合わせて一定の割合で小さくなっており、
前記ローラの転動面は、円錐の側面の一部で形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラと前記フランク面の接触部に属し前記ネジ軸の径方向における最外周側に位置する点を外周接触点とし、
前記ローラと前記フランク面の接触部に属し前記ネジ軸の径方向における最内周側に位置する点を内周接触点とし、
前記外周接触点と前記内周接触点を通過する直線と前記ローラの中心軸とによって円錐を定義したとき、
前記ローラは、前記円錐の頂点が前記ネジ軸の中心軸を超えるように形成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ネジ山のフランク面は、前記ネジ軸の中心軸に対して傾斜しており、
前記ローラケージは、前記ローラに作用するラジアル荷重を支持可能な転がり軸受を介して前記ローラを支持しており、
前記転がり軸受は、前記ローラの回転軸の周方向に配列された複数の転動体によって形成されており、
前記転動面と前記フランク面の接触部において前記フランク面と垂直に交わる仮想直線が、前記複数の転動体によって取り囲まれた空間内を通過するように、前記転がり軸受は前記ローラケージ内に固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項10】
請求項9記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記転がり軸受は、前記ローラに作用するラジアル荷重とスラスト荷重の両方を支持可能な1つの転がり軸受であり、
前記ローラケージは、前記1つの転がり軸受を介して前記ローラを支持していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項11】
請求項9記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記転がり軸受は、前記ローラに作用するラジアル荷重を支持可能な1つの転がりラジアル軸受であり、
前記ローラケージは、前記転がりラジアル軸受と、前記ローラに作用するスラスト荷重を支持可能な1つの転がりスラスト軸受とを介して前記ローラを支持していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項12】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記ローラの数は3つであり、
その3つのローラは、それぞれの前記ネジ軸の軸方向における位置が前記ネジ軸のリードの3分の1ずつずれるように前記ネジ山に沿って等間隔で配置されており、かつ、それぞれの前記ネジ軸の周方向における位置は互いに3分の2πずつずれていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項13】
ネジ軸と、
このネジ軸の外周に螺旋状に形成されたネジ山と、
このネジ山の右フランク面に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記右フランク面上を転動する複数のローラから成る第1ローラ群と、
前記ネジ山の左フランク面に沿って前記ネジ軸の周方向に互いに間隔を介して配置され、転動面を介して前記左フランク面上を転動する複数のローラから成る第2ローラ群と、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラをそれぞれ自転可能に収納し、前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラが転動されると前記ネジ軸の周りを前記ネジ軸に対して相対的に回転するローラケージとを備え、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラの中心軸は、それぞれ、当該中心軸を仮想的に延長した直線が前記ネジ軸と交差する姿勢で、かつ前記転動面が接触する前記右フランク面側又は前記左フランク面側に傾斜した姿勢で前記ローラケージに固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項14】
請求項13記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群における各ローラの転動面は、それぞれ、前記ローラの中心軸方向における一定の範囲において、前記右フランク面又は前記左フランク面と接触していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のリニアアクチュエータをフォークの高さ調節手段として備えることを特徴とするフォークリフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−169205(P2010−169205A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13006(P2009−13006)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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