説明

リニアアクチュエータ

【課題】 固定子マグネット8のヨーク2内における磁力伝達がスムーズに行われ、良好な不変磁界を形成して磁極片21、22に磁束密度を集成させて、固定子マグネット8が強い磁力を有していなくとも、可動子5に対し、無励磁状態での停止保持と、励磁による磁気推力を効率よく与えることができ、短ストロークだけでなく長ストロークにも対応できるリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】 コイル6を、その励磁機能を保持するよう分割して設ける一方、該分割コイル6a、6b間に、固定子マグネット8とヨーク2とを結ぶ磁路体7を設け、固定子マグネット8の磁力を磁路体7を介してヨーク2に直接的に伝達すべく構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁式のリニアアクチュエータに関し、特に、ヨーク内に良好な磁路を形成することのできるリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種リニアアクチュエータは、エアコンプレッサーのピストンやひげ剃り器の刃などを連続的に振幅させるために用いられるが、これらの振幅には、用途に起因する振幅抗力に対応して、可動子に強い往復駆動力を与えて移動させる必要がある。
ところで従来、特表平8−510361号公報に開示されたものの如く、断面略凹状のヨーク内中央に、コイルと共に固定子マグネット(永久磁石)を配設し、この固定子マグネットと略同幅の可動子を、ヨーク内に嵌装させ、ヨークの両磁極片との間において、それぞれ1mm幅の傾斜状磁極間隙を形成させて、軸方向に2mmの短ストロークをもって連続振幅するようにしたものが知られている。
【0003】
しかしながら、このものは、図4(A)〜(C)の動作原理図に示すように、固定子Mを永久磁石とした構成により、ヨーク両側の磁極片Y1、Y2に対する磁極切換が確実に行われ、可動子Kの移動方向を決めることができる利点があるものの、メインルートとなる固定子マグネットMからヨークYへの磁路がコイルを通じて形成されているようになっているため、構造上コイルCが高磁気抵抗部材となって、固定子マグネットMから磁極片Y1への磁力伝達を微弱なものとしてしまい、しかも、固定子マグネットMからヨークYへの磁力が面全体より分散伝達され、磁束密度がヨーク胴部角部位付近に集成されて磁極片Y1部位における吸着磁力を弱めてしまう。その結果、無励磁状態において、可動子Kを磁極片Y2位置で停止保持するために、強い磁気力を持った高エネルギー、径方向指向磁石のような高価な固定子マグネットMを用いることが強いられる。
しかも、通電により図4(A)の如く磁極片Y3の極を励磁すると、磁極片Y2では固定子マグネットMの磁気力が作用し、磁極片Y3ではコイルCによる磁気推力Fが作用し、それぞれ背反方向に流れる2つの磁界(磁束ループ)が生成されてしまうばかりか、各ループ曲線が可動子Kの移動に伴って変化し磁極片Y3に集成させることが難しい。このため、無励磁状態で磁極片Y2に強い磁気力をもって磁着された可動子Kを、図4(B)の如く通電電流により発生する磁気推力Fをもって引き離し、図4(C)の如く磁極片Y3に移動するには、コイルCの起磁力を、固定子マグネットMの強い磁力に勝る磁力をもって励磁する必要が生じることから、コイルスペースを大きく取ってコイルCの捲線数を多くしなければならないという問題がある。
その結果、磁極間隙を大きく(5〜30mm程度)設定して長ストロークを振幅することが困難となるばかりか、前記高価な固定子マグネットMを要することと相俟って、装置のコンパクト化を図ることが難しく、装置自体が大型化し、安価に製作することができず、その用途範囲も限られたものとなっていた。
【0004】
【特許文献1】特表平8−510361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、固定子マグネットのヨーク内における磁力伝達がスムーズに行われ、良好な磁路を形成すると共に、固定子マグネットが強い磁力を有していなくとも、可動子に対し、無励磁状態での停止保持と、励磁による磁気推力を効率よく与えることができ、短ストロークだけでなく長ストロークにも対応できるリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、ヨーク内にコイルと共に設けられる固定子マグネットに対向して可動子を設け、コイルへの正逆切り替え通電により、前記ヨークの両磁極片をそれぞれS極またはN極に励磁し、可動子に推力を与えて往復駆動すべく構成されたリニアアクチュエータであって、前記コイルを、その励磁機能を保持するよう分割して設ける一方、該分割コイル間に、固定子マグネットとヨークとを結ぶ磁路体を設け、固定子マグネットの磁力を磁路体を介してヨークに伝達すべく構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明におけるリニアアクチュエータは、可動子を強磁性体とし、固定子を永久磁石としてコイルと共にヨーク内に配設したものでありながら、メインルートとなる固定子マグネットからヨークへの磁路を短絡した不変状態で形成することができ、固定子マグネットの磁気力を磁路体に磁束集中させてヨーク内における磁力伝達をスムーズに行なわしめ、無励磁状態において、可動子の停止位置側の磁極片に対し、固定子マグネットの磁気力を、ヨークの過半部側の磁路を通って強力で安定した高密度の磁束として集成させることができ、殊更大きな磁気力を有していなくとも、可動子を強固に位置決め保持することができる。しかも、磁気力の小さな固定子マグネットを採用し得ることと相俟って、通電時における停止位置となる磁極片側では、固定子マグネットによる磁気力を容易に打ち消すコイル励磁が可能となり、移動側となる磁極片では、高密度の磁束が集成されて停止側磁極片よりも強力な吸引磁束ループを生成する、所謂、励磁特性を分担させた磁路を形成ことができ、それぞれの励磁特性をもって可動子に対し起磁力による良好な磁気推力を与えて移動することができる。さらに、捲線数の多いコイルを用いる必要が無く安価なものを採用でき、従来の如く可動子をヨーク内に嵌装して磁力伝達面を形成するための磁極間隙を設ける必要が無く、装置全体をコンパクトなものとし得るばかりか、各コイル毎に通電制御ができ、同期励磁は勿論、強弱を含む異相励磁や1コイルのみの励磁などが行えるようになり、励磁による停止位置保持に要する消費電力の軽減や、可動子への強力な磁気推力の伝達移行が可能となり、短ストロークだけでなく長ストロークにおける用途に応じた移動ストロークに調整設定して提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、好適な実施の形態として例示するリニアアクチュエータを図面に基づいて詳細に説明する。図1はリニアアクチュエータの半部断面構成図、図2はコイルの回路説明図である。図に示すように、1はリニアアクチュエータであって、該リニアアクチュエータ1は、アクチュエータ本体の筒状胴部および磁路を形成する鉄、磁性ステンレス等よりなるヨーク2と、該ヨーク2の両側に配設されたフランジ3、3の中心に設けられた軸受け4、4と、該軸受け4に軸方向移動可能に軸装される軸部51を有する可動子5とを備え、前記ヨーク2内には、その内壁に設けられた樹脂製のコイルボビン61に巻着されたコイル6(6a、6b)と共に、コイル6と可動子5との間に永久磁石よりなる固定子マグネット8が配設されている。
【0009】
前記コイル6は、その励磁機能が保持されるようコイル6aと6bに対称状に分割して設けられており、該分割コイル6aと6bとの間に、固定子マグネット8とヨーク2とを結ぶ磁路体7を設け、固定子マグネット8の磁力を磁路体7を介してヨーク2に伝達すべく構成されている。コイル6には、バイポーラ駆動用のモノファイラー捲線(単巻き)の捲線が施され、分割コイル6aと6bのそれぞれにおけるS1とS2、S3とS4のON−OFF切り替え通電により、両磁極片22と23をそれぞれS極またはN極に励磁し、可動子5に推力Fを与えて往復駆動し、停止位置保持の必要により、停止位置側となる分割コイル6aまたは6bのみを励磁できる構成となっている。図中、9は可動子5の移動ストロークを規制するためのストッパであり、コイルスプリング、ゴムや樹脂製ブロック等任意のものが要・不要に応じて設けられる。
なお、2系統の回路によらず分割コイル6aと6bを直列に接続した1系統の回路であっても良く、ユニポーラ駆動用のバイファイラー捲線(2重巻き)等の所定の捲線を施しても良い。
【0010】
前記ヨーク2は、断面略内向き凹状のドーナツ形状に形成され、その両側端部には、内側軸方向となる固定子マグネット8に向けて折曲形成せしめた磁極片21、22が、前記固定子マグネット8の面と略同面となるように延設されている。
また、ヨーク2は、前記磁路体7の配設部位で子ヨーク2aと2bとに分割して形成されている。なお、磁極片21,22を1片にて形成させたが、ヨーク側部から下方に延出させた逆L字状の2片として入隅部を形成しても良い。
【0011】
前記可動子5は、強磁性体であり、磁極片21または22に当接しないよう配設され、かつ、前記固定子マグネット8の幅よりも長尺となるように、固定子マグネット8の幅と、磁極片21(磁極片22)と固定子マグネット8との対向空間(移動ストロークS1)を加えた幅に設定されており、前記磁極片21、22の何れか一側部方向の最大ストロークS2端まで移動した際に、磁極片21(22)と固定子マグネット8間に掛け渡るようになっている。これにより、可動子5は、前記コイル6への正逆切り替え通電により、磁極片21(磁極片22)をそれぞれN極またはS極に励磁し磁界を形成することで、可動子5に推力Fを与えて往復駆動すべく構成され、その移動量は、ストッパ9を設けることにより任意に位置決め規制できる可変ストロークS1(5mm以上)と、最大ストロークS2(30mm程度)を移動することができるようになっている。
【0012】
前記磁路体7は、断面視略L字状の鉄等の強磁性体によりリング状に形成された一対の磁路部材71と72が背合わせされて構成され、全体が断面視逆T字状に形成されて、その底面部が固定子マグネット8の対面部を覆う長さに設定されている。つまり、磁路体7は、分割コイル6a側と6b側とに不変(固定)磁路を形成せしめ、前記可動子5が磁極片21または22の何れか一方に移動した際、無励磁状態で固定子マグネット8の磁力を磁路体7を介してヨーク2に伝達する機能と、前記分割コイル6aと6bへの通電により固定子マグネット8のコイル6側の面に対して磁極が励磁される中ヨーク磁極片としての機能を合わせ有すると共に、前記分割された子ヨーク2a、2bを独立対称状に製作してそれぞれ組をとして組み合わせ連設できるよう形成されており、さらに固定子マグネット8を装着する部材として構成されている。なお、磁路体7は一体ものであっても良い。
【0013】
叙述の如く構成された本発明の実施例の形態において、コイル6(6a、6b)への正逆切り替え通電により、ヨーク2の両磁極片21、22をそれぞれN極またはS極に励磁し磁界(磁束ループ)を形成することで、可動子5に磁気推力Fを与えて往復駆動するのであるが、本発明によるリニアアクチュエータ1は、前記コイル6を、その励磁機能を保持するよう分割して設ける一方、該分割コイル6a、6b間に、固定子マグネット8とヨーク2とを結ぶ磁路体7を設け、固定子マグネット8の磁力を磁路体7を介してヨークに伝達すべく構成されている。なお、ヨーク2は円筒状によらず、平型凹状等任意の使用目的に応じて変更することができ、要は分割コイル6aと6b間に、固定子マグネットとヨーク2とを結ぶ磁路体7が設けられたもので有ればよい。
【0014】
図3(A)〜(C)はメインとなる磁束ループ生成に基づく動作説明図であって、図3(A)に示すように、可動子5が磁極片21側に停止している非通電時(無励磁状態)においては、固定子マグネット8の磁力がヨーク2と短絡状態にある磁路体7に集中して流れ、磁路体7により区画された子ヨーク2a側にのみをメインルートとして流れる磁束ループΦ1を形成する。これにより、従来の如きにコイルCが高磁気抵抗部材となって磁気力を微弱なものとしてしまい、かつ、固定子マグネットMからヨークYへの磁力が面域全体より分散伝達され、磁束がヨーク胴部の角部付近に集成されて磁極片Y1部位での吸着磁力を弱めてしまう不具合が解消され、固定子マグネット8のヨーク2内における磁力伝達がスムーズに行なわれ、無励磁状態において、可動子5の停止位置側となる磁極片21に対して高密度の磁束を集成することができ、固定子マグネット8が殊更強い磁気力を有していなくとも、その磁力を減退させることなく効率のよい磁力伝達が図られ、ヨーク2の過半部(子ヨーク2a)側に偏らせた磁路を通って強力で安定した磁束ループΦ1として生成することができ、強固に位置決め保持することができる。
【0015】
この無励磁状態からコイル6(6a、6b)に通電すると、図3(B)に示すように、ヨーク2の二つの極(磁極片21、磁極片22)にはそれぞれS極、N極が励磁される。磁極片21の極にS極、磁極片22の極にN極が励磁されると、同時に中ヨークとして機能する磁路体7が、固定子マグネット8に対して励磁する磁極片となって、その背反部(磁路部材71、72)にそれぞれN極、S極が励磁されることになり、磁束は、子ヨーク2bで磁束ループΦ2を生成し、子ヨーク2a側では前記磁束ループΦ1の流れを逆転させる励磁力が生じる。
しかしながら、停止位置となる子ヨーク2a側では、固定子マグネット8による磁気力を打ち消すコイル励磁がなされるが、固定子マグネット8の磁気力が励磁力よりも勝り、相殺結果による磁気力>励磁力が、磁極片21において(N>S)極となり磁束ループΦ1aとして残るとともに、磁路部材71が(S>N)極となって磁路部材71から直接可動子5の中央面部に流れる新たな磁束ループΦ1bが生成される。この磁束ループΦ1bは、固定子マグネット8の磁気力そのそものが励磁力によって消失してしまうことはなく、励磁力より打ち消された磁気力が磁束ループΦ1aへ流れることを抑止され、行き場を失った結果生成されたものとものと推認されるが、中央部に生成される磁束ループΦ1bには可動子5を子ヨーク2a側に自己保持する吸着磁力を殆ど有しない。
【0016】
一方、移動側となる子ヨーク2bで生成される磁束ループΦ2は、磁束が、コイルCが高磁気抵抗部材となった従来構成では寧ろヨーク胴部に集成されてしまうのに比し、磁束ループΦ1と磁束ループΦ2は固定した磁路を流れるため可動子5の移動に伴ってループ曲線が変化することが無く、磁極片22と磁路体7の固定子マグネット8に対して極が励磁されることで、当該磁極部位に常に安定した状態で高密度の磁束を集成させることができ、固定子マグネット8の磁気力とコイル6の励磁力との共同作用による強力な吸引磁力が、磁極片22に集中して作用し、前記子ヨーク2a側で保持磁力が弱めてられた可動子5を引き離し、可動子5に磁極片22方向への強い初動磁気推力Fを与えて移動することができる。
この様に初期推力が与えられた可動子5が中間地点を過ぎると、磁束ループΦ1a、Φ1bは略消失し、図3(C)に示すように磁束ループΦ2のみが作用し、強く吸着しされた可動子5を、推力がゼロとなる前記ストロークS2端で移動停止させることができる。なお、停止保持機能を主体とする磁束ループΦ2が固定子マグネット8の磁気力だけでは充分に停止保持できない場合、例えば、バルブ制御において閉弁時に保持力が要求されるものや、連続振幅を必要としないものなどでは、分割コイル6bへの励磁を継続行うことが可能となり、従来の1コイル構造のものに比し励磁に要する消費電力を軽減でき、用途や目的に応じた使用が行え、応用範囲を拡大し得る利点がある。
また、コイル6の通電方向を逆にするとヨーク2の極に励起される磁極が逆になり、可動子5は逆方向に移動し、この通電方向の切替により可動子5は軸方向に往復運動し、前記ストッパー9の使い分けや通電電流の制御により移動ストロークを設定し必要振幅を得ることができる。
【0017】
したがって、可動子5を強磁性体とし、固定子(固定子マグネット8)を永久磁石としてコイル6と共にヨーク2内に配設した構成により、通電時において、固定子マグネット8の磁気力が作用して磁界が背反して生成されてしまうものでありながら、磁界ルートが磁路体7により区画された子ヨーク2a側と2b側との分割域でそれぞれの励磁特性を磁路分担させて形成でき、磁気力の小さな固定子マグネット8を採用し得ることと相俟って、停止位置となる磁極片21(22)側では、固定子マグネット8による磁気力を容易に打ち消すコイル励磁が可能となり、移動側となる磁極片22(21)では、高密度の磁束が集成されて停止側磁極片21(22)よりも強力な吸引磁力を生成することができ、それぞれの励磁特性をもって可動子5に対し起磁力による良好な磁気推力Fを与えて移動することができる。
さらに、捲線数の多いコイルを用いる必要が無く安価なものを採用でき、従来の如く可動子をヨーク内に嵌装して磁力伝達面を形成するための磁極間隙を設ける必要が無く、装置全体をコンパクトなものとし得るばかりか、各分割コイル6a、6b毎に通電制御ができ、同期励磁は勿論、強弱を含む異相励磁や1コイルのみの励磁などが行えるようになり、励磁による停止位置保持に要する消費電力の軽減や、可動子5への強力な磁気推力の伝達移行が可能となり、短ストロークだけでなく長ストロークにおける用途に応じた移動ストロークに調整設定して提供することができる。
【0018】
また、前記磁路体7は、前記両磁極片21、22間に形成される中ヨークとして、コイル6への通電により両磁極片21、22と共に所定磁極に励磁すべく構成されているので、通電により両磁極片21、22と共に、磁路体7の背反部(磁路部材71、72)にそれぞれN・S(N・S)極が励磁され、子ヨーク2a側と2b側とに区分け分担された磁路を形成できる。そのため、停止位置側では、固定子マグネット8による磁気力を容易に打ち消すコイル励磁が可能となり、可動子5への自己保持力を弱める一方、移動側となる磁極片22(21)には、高密度の磁束を集成することができ、停止側磁極片21(22)よりも強力な吸引磁力を生成することができ、ヨーク2内を磁路体7で区画形成された背反磁路について、一方では磁気力を打ち消し、他方では強力な吸着磁力を与える分担励磁機能をもって可動子5に最適な推力を与えることができる。
【0019】
また、前記磁路体7は、当該磁路体7の配設部位で前記ヨーク2を分割させて構成することができ、特に、磁路部材71と72の2部材で構成させて、ヨーク2を、一方の磁極片側(子ヨーク2a)と他方の磁極片側(子ヨーク2b)とを背反的に組み付け可能となっていると共に、前記固定子マグネット8の装着部材にも兼用されている。
したがって、ヨーク2を、子ヨーク2aと2bにより対称に成型させて、それぞれに分割コイル6a、6bやストッパ9などの部品を組付けておき、一方の子ヨークの磁路部材に固定子マグネット8を接着して、可動子5を挿入した後、他方の子ヨークを接合する組み付け構成とすることができ、従来、特許文献1に開示された如く、ヨークの筒状胴部の両側を蓋体の如き固定ステータにより構成して、コイルCや固定子マグネットMを内部に納め、かつ、固定ステータや固定子マグネットMを取着するため取着部材を用いてアクチュエータを製作していたものに比し、部品点数の削減と組み付け工数や構成が簡略化され、薄鋼板のプレス成形で製作されるPM型のステッピングモータの製作と略同等の工程にて製作することができる。その結果、量産化が難しいとされたこの種アクチュエータを、精度良く製作できる。これにより、可動子5を強い往復駆動力により連続的に振幅させる構成上、衝撃振動に耐える製品性能を備える要求にも応えることができ、例えば、エアコンプレッサーのピストン駆動などの一般的な耐久性(約100万回程度)は勿論、パチンコ発射機などの特殊な耐久性(約5千万回程度)にも対応できる高精度の構造にて製作することができる。
【0020】
また、前記各分割コイル6a、6bは、独立して通電制御可能に構成されていることにより、同期励磁の際に、各分割コイル6a、6bへの異なる通電制御や、タイミングをづらした励磁制御、1コイルのみの励磁制御などが行えるようになり、可動子5への強力な磁気推力Fの伝達移行が可能となり、球への強い打球機能が要求されるパチンコ発射機として用いることができ、前記したように停止保持機能を主体とする磁束ループΦ2が固定子マグネット8の磁気力だけでは充分に停止保持できない場合にも対応でき、従来の1コイル構造のものに比し励磁に要する消費電力を軽減でき、用途や目的に応じた使用が行え、応用範囲を拡大し得る利点がある。
【0021】
また、前記可動子5は、移動方向における前記固定子マグネット8の長さ幅と、移動ストロークとを加算した長さ幅に設定されていることにより、停止位置に置いて磁極片22(21)から可動子5の角部に磁力伝達して、強力な自己保持磁界を形成することができる。
また、前記磁極片21(22)は、前記固定子マグネット8と略面一となる内側に折曲した磁極片と、前記可動子の側面部と対面する磁極片との2片で構成されているので、逆L字状の磁極片が入隅部として機能し、可動子5の停止位置では、当該入隅部に入り込んだ可動子5の角部(出隅部)に対して、入隅部に磁束密度を集成させて、角部を中心とした2面に対する磁力伝達が図られて強力に自己保持することができる一方、移動側となる可動子5の角部に対して、前記内側に向く磁極片のみに磁束密度を結集して吸引磁力を伝達して移動推力Fを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】リニアアクチュエータの半部断面構成図。
【図2】コイルの回路説明図。
【図3】(A)無励磁状態の磁界説明図、(B)通電時の磁界および動作説明図、(C)通電後の磁界および動作説明図。
【図4】従来の動作原理の説明図。
【符号の説明】
【0023】
1 リニアアクチュエータ
2 ヨーク
2a 子ヨーク
2b 子ヨーク
21 磁極片
22 磁極片
3 フランジ
4 軸受け
5 可動子
51 軸部
6 コイル
6a 分割コイル
6b 分割コイル
61 コイルボビン
7 磁路体
71 磁路部材
72 磁路部材
8 固定子マグネット
9 ストッパ
Φ1 磁束ループ
Φ1a 磁束ループ
Φ1b 磁束ループ
Φ2 磁束ループ
F 磁気推力
S1 可変ストローク
S2 最大ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク内にコイルと共に設けられる固定子マグネットに対向して可動子を設け、コイルへの正逆切り替え通電により、前記ヨークの両磁極片をそれぞれS極またはN極に励磁し、可動子に推力を与えて往復駆動すべく構成されたリニアアクチュエータであって、前記コイルを、その励磁機能を保持するよう分割して設ける一方、該分割コイル間に、固定子マグネットとヨークとを結ぶ磁路体を設け、固定子マグネットの磁力を磁路体を介してヨークに伝達すべく構成したことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1において、前記磁路体は、前記両磁極片間に形成される中ヨークとして、コイルへの通電により両磁極片と共に所定磁極に励磁すべく構成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ヨークは、前記磁路体部位で分割すべく構成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記磁路体は、前記ヨークを、一方の磁極片側と他方の磁極片側とを背反的に組み付け可能に2部材で構成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、前記磁路体は、前記固定子マグネットの装着部材に兼用されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、前記各コイルは、独立して通電制御可能に構成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかにおいて、前記可動子は、移動方向における前記固定子マグネットの長さ幅と、移動ストロークとを加算した長さ幅に設定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかにおいて、前記磁極片は、前記固定子マグネットと略面一となる内側に折曲した磁極片と、前記可動子の側面部と対面する磁極片との2片で構成されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−81243(P2006−81243A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259491(P2004−259491)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000229645)日本パルスモーター株式会社 (46)
【Fターム(参考)】