説明

リニアガイド装置用スライダ抜け止め構造、リニアガイド装置、及びリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法

【課題】案内レールの長さが短い場合にも用いることができ、搬送時にスライダと案内レールとが相対移動することによる損傷の発生を防止するスライダ固定構造を提供する。
【解決手段】案内レールの取付け穴部と対向するスライダの水平板部12に、前記取付け穴部と同じ方向に貫通したスライダ穴部22を穿設し、そのスライダ穴部から前記取付け穴部にかけて挿嵌したストッパ21によってスライダ3と案内レール2との相対移動を制限することを特徴とするリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイド装置用スライダ抜け止め構造、これを用いたリニアガイド装置、及び、リニアガイド装置用スライダ抜け止め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置や半導体製造装置等において直線的に運動する物体を低摩擦で支持する直動案内装置として、リニアガイド装置が知られている。リニアガイド装置としては、例えば、以下のようなものがある。すなわち、案内レールと、その案内レールを跨いで案内レールの長手方向に相対移動可能に遊嵌したスライダとからなり、そのスライダは、スライダ本体と、スライダの移動時に先頭又は後尾となる両端部にエンドキャップとを備えており、多数のボール等の転動体が、スライダ内を循環しながら案内レールとスライダとの間の転動路を転動することにより、案内レールとスライダとの滑らかな相対移動を実現するものである。
このようなリニアガイドにおいては、搬送や取付けの際、スライダが案内レールから抜けるのを防止するために案内レール取付け穴にストッパを差し込んでスライダと案内レールとの相対移動を制限するスライダ抜け止め構造がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなスライダ抜け止め構造においては便宜的に案内レール取付け穴を利用してストッパの抜け止めをしており、ストッパの位置はレール取付け穴の位置に依存するため、レール長さが短くスライダ本体によって案内レール取付け穴が隠れてしまう場合には用いることができないという問題がある。また、このようなスライダ抜け止め構造においては、上記のようにストッパの位置は案内レール取付け穴の位置に依存するため、図12に示すように、スライダ54の両端とストッパ52、53間に隙間aが生じ、搬送時にスライダ端部がストッパに衝突する事でスライダ両端部の損傷や、ストッパ間の隙間を繰り返し移動することによるフレッチングを誘発するおそれがあった。
このような問題に鑑みて、本発明は、レール長さが短い場合にも用いることができ、搬送時にスライダとレールとが相対移動することによる損傷を防止するスライダ抜け止め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明では、案内レールを固定部材によって所望の位置に取り付けるために該案内レールに設けられた取付け穴部に取外し可能に挿嵌したストッパによって前記案内レールに遊嵌されたスライダと前記案内レールとの相対移動を制限するリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造において、前記取付け穴部と対向する前記スライダ部分に、前記取付け穴部と同じ方向に貫通したスライダ穴部を備え、該スライダ穴部から前記取付け穴部にかけて挿嵌した前記ストッパによって前記相対移動を制限することを特徴とするリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造を提供する。
【0006】
好ましくは、前記スライダ穴部の内面は円柱面状をしており、前記取付け穴部は、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部と略同径の円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備え、前記ストッパは、前記スライダ穴部と前記座繰り部よりも僅かに径の大きい円柱状をしている。
【0007】
また好ましくは、前記スライダ穴部の内面は円柱面状をしており、前記取付け穴部は、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部よりも径の小さい円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備え、前記ストッパは、前記スライダ穴部よりも僅かに径の大きい円柱状の大径部と、前記座繰り部よりも僅かに径の大きい小径部と、を備えている。
さらに好ましくは、前記ストッパは弾性材で形成してある。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明では、軸方向に延在する側部に案内レール側転動溝を設けた案内レールと、該案内レール上を移動するスライダと、を有し、前記スライダは、前記案内レール側転動溝に対向する露出して形成されたスライダ側転動溝と、該スライダ側転動溝と略平行で内部に形成された循環路とを有し、前記案内レールを跨いで一体に形成されたスライダ本体と、該スライダ本体の前記案内レール長手方向両端部に固設され、前記スライダ側転動溝の端部と前記循環路の端部とを連通する湾曲路が形成されたエンドキャップと、を有し、前記スライダが、前記案内レール側転動溝及び前記スライダ側転動溝の間に形成した転動路内に収容された複数の転動体の転動を介して軸方向に移動可能に前記案内レールに支持されているリニアガイド装置において、請求項1ないし4に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造を備えることを特徴とするリニアガイド装置を提供する。
【0009】
さらに、上記課題を解決するために本発明では、案内レールを固定部材によって所望の位置に取り付けるために該案内レールに設けられた取付け穴部にストッパを取外し可能に挿嵌することによって前記案内レールに遊嵌されたスライダと前記案内レールとの相対移動を制限するリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法において、前記取付け穴部と対向する前記スライダ部分に、前記取付け穴部と同じ方向に貫通したスライダ穴部を形成し、前記ストッパを前記スライダ穴部から前記取付け穴部にかけて挿嵌することによって前記相対移動を制限することを特徴とするリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法を提供する。
【0010】
好ましくは、前記スライダ穴部の内面を円柱面状に形成し、前記取付け穴部を、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部と略同径の円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備えるように形成し、前記ストッパを前記スライダ穴部と前記座繰り部よりも僅かに径の大きい円柱状に形成する。
【0011】
また好ましくは、前記スライダ穴部の内面を円柱面状に形成し、前記取付け穴部を、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部よりも径の小さい円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備えるように形成し、前記ストッパを、前記スライダ穴部よりも僅かに径の大きい円柱状の大径部と、前記座繰り部よりも僅かに径の大きい小径部と、を有するように形成する。
さらに好ましくは、前記ストッパを弾性材で形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レール長さが短い場合にも用いることができ、搬送時にスライダとレールとが相対移動することによる損傷を防止するスライダ抜け止め構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用することができるリニアガイド装置の例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の斜視図である。
【図3】本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の案内レールの軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
【図4】本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の案内レールの軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
【図5】本願の第2実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
【図6】本願の第3実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
【図7】本願の第4実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
【図8】本願の第5実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
【図9】本願の第6実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
【図10】本願の第7実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
【図11】本発明に用いることができるストッパを示す斜視図である。(a)スリットを設けたストッパの斜視図である。(b)四角柱状の部分と円柱状の部分とからなるストッパの斜視図である。
【図12】従来のスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図1を参照しながら本発明を適用することができるリニアガイド装置の例について説明する。
図1は本発明を適用することのできるリニアガイド装置の例を一部切り欠いた斜視図で示している。リニアガイド装置1は、直線状の案内レール2と、案内レール2を跨いで案内レール2の長手方向に相対移動可能に遊嵌したスライダ3とから構成されている。案内レール2は金属製で、略四角柱状をしており、上下に貫通して固定部材を通す案内レール取付け穴4を有し、ボール5が転動するための断面が略円弧状の転動溝6を両側面に2本ずつ有している。下側に設けられた転動溝6の内部には逃げ溝7が形成されている。スライダ3は、金属製のスライダ本体8と、スライダの移動時に先頭又は後尾となる両端部に着脱可能に固設された樹脂製のエンドキャップ9a、9bと、そのさらに外側にねじ止めされた樹脂製のサイドシール10a、10bと、サイドシール10aからエンドキャップ9aまで貫通した雌ねじ部に螺合されたグリースニップル11とから成る。スライダ本体8は、水平板部12と、その下面から案内レール2を跨ぐように下方へ延在する脚部13a、13bとから形成されている。水平板部12と脚部13a、13bの案内レール2に対向する面には、案内レール2に形成された転動溝6に対向して並行する転動溝(不図示)がそれぞれ2本ずつ、計4本形成されており、案内レールの転動溝6とともに転動体が転動する転動路14を構成している。転動路14は、エンドキャップ9aの内部に形成された円弧状の湾曲路15によってその両端部をスライダ本体8の内部に形成された案内レールと平行な直線状の循環路16に連結されており、これら全体として環状路17を形成している。下側の転動路14にはボール5の脱落を防ぐ保持器18が設けられている。環状路17は案内レールの両側に上下に2本ずつ、計4本設けてあり、環状路17には多数のボール5が転動可能に収容されている。エンドキャップ9aには、グリースニップル11からエンドキャップ9a内の湾曲路15まで潤滑剤の供給路19が形成されている。サイドシール10a、10bには、案内レールの断面形状に対応した形状のシールリップ20が形成されている。
【0015】
環状路17に収容された多数のボール5のうち案内レール2側の転動路14に位置するボール5は、案内レール2にスライダ3を支持し、案内レール2とスライダ3とが相対移動する際に転動して、案内レール2とスライダ3の滑らかな相対移動を実現している。これらのボール5は、やがてエンドキャップ9a、9bに入り、後続のボール5に押されることでエンドキャップ9a、9b内部の湾曲路15で反転してスライダ本体8内部の循環路16を通って、反対側のエンドキャップ9a、9bに入り、エンドキャップ9a、9b内部の湾曲路15によって再度反転して、案内レール2側の転動路14に戻るという循環がなされる。
【0016】
(第1実施形態)
このようなリニアガイド装置に適用することができる本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図2、図3及び図4を参照しつつ説明する。
図2は、上記リニアガイド装置1に本第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用し、スライダ3を固定した状態の斜視図を示している。本第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を構成するストッパ21が、スライダ本体8の水平板部12の中央に設けられたスライダ穴部から案内レール2の案内レール取付け穴4にかけて挿嵌されている。
【0017】
図3は、本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用した上記リニアガイド装置1の案内レールの軸線方向と垂直な面の一部切り欠き側面図である。図の上側にストッパ21を示しており、図の下側にスライダ3を示している。スライダ3において、図に向かって左側はエンドキャップ9aとサイドシール10aを取り付けた状態を示し、図に向かって右側はエンドキャップ9aとサイドシール10aを取り外した状態を示し、中央部とその周辺を切り欠いて水平板部12に穿設したスライダ穴部22と、案内レール2を固定部材によってテーブル等に取り付ける際に用いる案内レール取付け穴4を示している。案内レール取付け穴4は座繰り部23と、貫通穴部24とから構成されている。スライダ穴部22と座繰り部23は同一径の円柱面状の内面を有する穴部であり、ストッパ21はスライダ穴部22と座繰り部23よりも僅かに径の大きい円柱形をしている。
【0018】
図4は、本願の第1実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。ストッパ21をスライダ穴部22の上側から挿入し、スライダ穴部22と座繰り部23内に挿嵌した状態の断面を、ストッパ21付近を切り欠いて示している。ストッパ21はスライダ3の水平板部12の下側にある座繰り部23に嵌装されている。このように、本発明は、案内レールが短く、案内レール取付け穴部がスライダ内に隠れてしまう場合においてもスライダと案内レールとを固定して、相対移動できなくなるようにすることを可能にしている。ストッパ21は水平板部12の上面から座繰り部の下端までの長さよりも長く、水平板部12の上面から突出している。使用者はこの突出した部分をつまむことによってストッパ21の取付けや取外しを行うことができる。なお、水平板部12の上面から突出させる部分の形状は、必ずしも円柱状である必要はなく、使用者がつまみ易い種々の形状とすることができる。ストッパ21の座繰り部23に挿嵌される側の端部は面取りすることが好ましい。これにより、ストッパ21をスライダ穴部22や座繰り部23へ挿入し易くなる。
【0019】
図4に示すようにストッパ21を挿嵌した状態においては、例えば、スライダ3を左右に移動させる外力が加わったとしても、スライダ3はストッパ21によって案内レールに固定されているため案内レールと相対移動することはできない。図12に示す従来のスライダ抜け止め構造においては、ストッパとスライダの間に隙間があるため、スライダはその隙間の距離だけ移動することができるが、本発明においては、ストッパ21とスライダ穴部22、座繰り部23とが密着していることから、そのようなことは生じない。これにより、本発明においては、運搬時のスライダの移動によるスライダの損傷やフレッチングを防ぐことができる。
【0020】
好ましくは、ストッパ21は、弾性体(ゴム材やエラストマー材)から形成する。さらに好ましくは、ニトリルゴム(NBR)の加硫成形、射出成形等や熱可塑性エラストマーの射出成形によって形成する。ニトリルゴムは耐油性が高いため好ましい。ただし、本発明においてストッパの材料は、これに限らず、金属、木材等を用いることもでき、これらを組合せて用いることもできる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図5を参照しつつ説明する。図5は、本願の第2実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
本第2実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、基本的な構成において上記第1実施形態と共通しているが、上記第1実施形態と異なり、スライダ穴部26の径を座繰り部27の径よりも大きくしている。また、それに合わせてストッパ28を、スライダ穴部26に挿嵌される大径部29と、座繰り部27に挿嵌される小径部30とで構成している。ストッパ28の大径部29の径はスライダ穴部26の径よりも僅かに大きく、小径部30の径も座繰り部27の径よりも僅かに大きい。大径部29の長さ方向の寸法は、案内レール31の上面からスライダ本体32の水平板部33までの長さよりも長く、嵌装した状態において水平板部33の上面から突出するようにしている。このような構成とすることによって、図5に示すようにリニアガイドの座繰り部27の深さが深い場合であっても、大径部29と小径部30との境目の段部が案内レール31の上面に当接するため、ストッパ28が深く差し込まれて水平板部33の上面から突出しなくなることを防いでいる。
【0022】
(第3実施形態)
次に、本願の第3実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図6を参照しつつ説明する。図6は、本願の第3実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
本第3実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、基本的な構成において上記第1実施形態と共通しているが、本第3実施形態は、ストッパの上部に他の円柱形状の部分(小径部42)よりも径の大きい円柱状の大径部41を有する点において、上記第1実施形態と異なっている。このような構成とすることによって、リニアガイドの座繰り部38の深さが深い場合であっても大径部41と小径部42との境目の段部が水平板部36の上面に当接するため、ストッパ40が深く差し込まれて水平板部33の上面から突出しなくなることを防ぐことができる。
【0023】
(第4実施形態)
次に、本願の第4実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図7を参照しつつ説明する。図7は、本願の第4実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と平行な側面の一部切り欠き側面図である。
本第4実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、上記第2実施形態と同様に、スライダ本体の水平板部44に穿設したスライダ穴部45の径を座繰り部46の径よりも大きくしている。また、それに合わせてストッパ47に大径部48と小径部49aとを設けている。本第4実施形態においては、これに加えて、大径部48の上部に小径部49bを設けている点において、上記第2実施形態と異なっている。小径部49bの直径bは小径部aの直径aよりも小さい。これにより、一つのストッパで、座繰り部46の径が異なる案内レールを備えた複数のリニアガイドに対応することができる。
【0024】
(第5実施形態)
次に、本願の第5実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図8を参照しつつ説明する。図8は、本願の第5実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
本第5実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、基本的な構成において上記第1実施形態と共通しているが、これに加えて、図8に示すように、案内レール2の位置に合わせてストッパ21及びとスライダー穴部22にタップ部21a,22aが設けられている。これらタップ部21a,22aが設けられることによって、ストッパ21の脱落を防止することができる。
【0025】
(第6実施形態)
次に、本願の第6実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図9を参照しつつ説明する。図9は、本願の第6実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
本第6実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、基本的な構成において上記第1実施形態と共通しているが、これに加えて、図9に示すように、ストッパ21の案内レール2から突出する端部に、ストッパ21の軸線方向と直交する方向に貫通する止めピン挿入穴21bが穿設され、この止めピン挿入穴21bに止めピンPが嵌められている。このような構成を採用することによって、ストッパ21の脱落を防止することができる。
【0026】
(第7実施形態)
次に、本願の第7実施形態に係るスライダ抜け止め構造を図10を参照しつつ説明する。図10は、本願の第6実施形態に係るスライダ抜け止め構造を適用したリニアガイド装置の軸線方向と垂直な側面の一部切り欠き側面図である。
本第7実施形態に係るスライダ抜け止め構造は、基本的な構成において上記第1実施形態と共通しているが、これに加えて、図10に示すように、リニアガイド装置の軸線方向と平行な方向に、スライダ8及びストッパ21に貫通した止めピン挿入穴8a,21cが設けられている。このように、止めピン挿入穴8a,21cに止めピンPを嵌めることにより、スライダ8とストッパ21とを固定することができる。なお、スライダ8の止めピン挿入穴8a、及びストッパ21の止めピン挿入穴21cは互いに貫通しなくとも良い。また、スライダ8にのみに止めピン挿入穴8aが設けられても良い。これは、止めピン挿入穴8aの加工深さが浅いため、止めピン挿入穴8aの加工がし易いという効果を奏する。
【0027】
なお、上記第1実施形態ないし第7実施形態において用いるストッパは、図11(a)に示すように軸線方向に沿って延びるスリット50を有するものであってもよい。スリット50を設けることで、径方向の寸法を変化させる弾性変形が生じ易くなる。また、上記第1実施形態ないし第7実施形態において用いるストッパは、スライダ穴部、座繰り部の形状と合わせて、円柱状以外の形状、例えば、四角柱状とすることもでき、また、図11(b)に示すように、異なる立体形状を組合せたような形状とすることもできる。
以上のように、本発明によれば、レール長さが短い場合にも用いることができ、スライダとレールとが相対移動することによる損傷を防止するスライダ抜け止め構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1、25、34、43、51 リニアガイド装置
2、31、39、55 案内レール
3、54 スライダ
4 案内レール取付け穴
5 ボール
6 転動溝
7 逃げ溝
8、32、35、43 スライダ本体
9a、9b エンドキャップ
10a、10b サイドシール
11 グリースニップル
12、33、36、44 水平板部
13a、13b 脚部
14 転動路
15 湾曲路
16 循環路
17 環状路
18 保持器
19 供給路
20 シールリップ
21、28、40、47、52、53 ストッパ
22、26、37、45 スライダ穴部
23、27、38、46 座繰り部
24 貫通穴部
29、41、48 大径部
30、42、49a、49b 小径部
50 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールを所望の位置に取り付けるために該案内レールに設けられた取付け穴部に、取外し可能に挿嵌したストッパによって、前記案内レールに遊嵌されたスライダと前記案内レールとの相対移動を制限するリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造において、
前記取付け穴部と対向する前記スライダ部分に、前記取付け穴部と同じ方向に貫通したスライダ穴部を備え、
該スライダ穴部から前記取付け穴部にかけて挿嵌した前記ストッパによって前記相対移動を制限することを特徴とするリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造。
【請求項2】
前記スライダ穴部の内面は円柱面状をしており、
前記取付け穴部は、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部と略同径の円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備え、
前記ストッパは、前記スライダ穴部と前記座繰り部よりも僅かに径の大きい円柱状をしていることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造。
【請求項3】
前記スライダ穴部の内面は円柱面状をしており、
前記取付け穴部は、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部よりも径の小さい円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備え、
前記ストッパは、前記スライダ穴部よりも僅かに径の大きい円柱状の大径部と、前記座繰り部よりも僅かに径の大きい小径部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造。
【請求項4】
前記ストッパは弾性材で形成してあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造。
【請求項5】
軸方向に延在する側部に案内レール側転動溝を設けた案内レールと、
該案内レール上を移動するスライダと、を有し、
前記スライダは、前記案内レール側転動溝に対向する露出して形成されたスライダ側転動溝と、該スライダ側転動溝と略平行で内部に形成された循環路とを有し、前記案内レールを跨いで一体に形成されたスライダ本体と、
該スライダ本体の前記案内レール長手方向両端部に固設され、前記スライダ側転動溝の端部と前記循環路の端部とを連通する湾曲路が形成されたエンドキャップと、を有し、
前記スライダが、前記案内レール側転動溝及び前記スライダ側転動溝の間に形成した転動路内に収容された複数の転動体の転動を介して軸方向に移動可能に前記案内レールに支持されているリニアガイド装置において、
請求項1ないし4に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め構造を備えることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項6】
案内レールを所望の位置に取り付けるために該案内レールに設けられた取付け穴部に、ストッパを取外し可能に挿嵌することによって、前記案内レールに遊嵌されたスライダと前記案内レールとの相対移動を制限するリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法において、
前記取付け穴部と対向する前記スライダ部分に、前記取付け穴部と同じ方向に貫通したスライダ穴部を形成し、
前記ストッパを前記スライダ穴部から前記取付け穴部にかけて挿嵌することによって前
記相対移動を制限することを特徴とするリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法。
【請求項7】
前記スライダ穴部の内面を円柱面状に形成し、
前記取付け穴部を、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部と略同径の円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備えるように形成し、
前記ストッパを前記スライダ穴部と前記座繰り部よりも僅かに径の大きい円柱状に形成することを特徴とする請求項6に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法。
【請求項8】
前記スライダ穴部の内面を円柱面状に形成し、
前記取付け穴部を、前記スライダ穴部側に前記スライダ穴部よりも径の小さい円柱面状の内面を有する座繰り部と、該座繰り部の前記スライダ穴部とは反対側に該座繰り部と中心軸線を共通にする該座繰り部よりも内径の小さい円柱面状の内面を有する貫通穴部と、を備えるように形成し、
前記ストッパを、前記スライダ穴部よりも僅かに径の大きい円柱状の大径部と、前記座繰り部よりも僅かに径の大きい小径部と、を有するように形成することを特徴とする請求項6に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法。
【請求項9】
前記ストッパを弾性材で形成することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載のリニアガイド装置用スライダ抜け止め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−76465(P2013−76465A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189049(P2012−189049)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】