説明

リニア駆動装置

【課題】簡単な構成でコアを作製することができ、渦電流の低減し、また、コアの軽量化を実現することができるリニア駆動装置を提供すること。
【解決手段】各磁性板311及び312の積層により積層方向に配列された埋設孔31aに永久磁石321,341が挿通されて固定されているので、永久磁石321,341が可動子コアから剥がれ落ちるおそれがない。第1の磁性板311の径方向サイズと、第2の磁性板312の径方向サイズとが異なるため、これら磁性板311及び312が積層されて形成される可動子コアの表面領域において、複数の間欠溝319が形成される。これらの間欠溝319により、可動子コアの表面領域において、Z軸方向における漏れ磁束の発生を抑えることができ、簡単な構成で、その表面領域での渦電流を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁気的な作用によりリニア駆動を行うリニア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リニアな駆動力や動きを得るためのリニア駆動装置として、リニアアクチュエータやリニアモータがある。リニアアクチュエータとしては、比較的短いストロークで動作するものが多く、リニアモータとしては、比較的長いストロークで動作するものが多い。
【0003】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、円周方向に複数に分割され永久磁石がそれぞれ取り付けられたT字状の固定子構成部材と、それらの固定子構成部材が配列されることにより形成される固定子13の中央部の空間内に配置された円筒状の可動子とを備える。これら固定子構成部材及び可動子は、電磁鋼板を軸方向(可動子の移動方向)で積層することにより形成される(例えば、特許文献1の段落[0018]、[0019]、図1参照)。
【0004】
また、特許文献1では、図7、8に示されるように、固定子に永久磁石が埋め込まれたタイプのリニアアクチュエータも開示されている。永久磁石が固定子に埋め込まれることにより、永久磁石の剥がれ落ちを防止できる。
【0005】
ここで、このように構成されたリニアアクチュエータでは、固定子のコイルへの通電により発生した磁束が、固定子のティース部を通り可動子へ入射する。すなわち、固定子のコアの表面から磁束が出射し、可動子のコアの表面にほぼ垂直に磁束が入射する。また、可動子から固定子ティース部へ戻るように磁束が流れるので、可動子のコアの表面からほぼ垂直に磁束が出射し、固定子のコアの表面にほぼ垂直に磁束が入射する。
【0006】
特許文献1のリニアアクチュエータでは、電磁鋼板が積層されて固定子構成部材や可動子が形成されている。したがって、上記した磁束の流れが発生しても、それによる渦電流の発生は抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−28871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リニア駆動の推力特性や、その駆動エネルギーの効率化の観点から、渦電流をさらに低減したいという要求がある。
【0009】
従来の装置では、単に同じ形状の電磁鋼板が積層されているため、渦電流を低減できても、所定の値までしか渦電流を低減できないと考えられる。具体的には、上記のような永久磁石が埋め込みタイプのリニアアクチュエータでは、その固定子のコアの表面とその内部の永久磁石との間の表面領域で、可動子の駆動のためのエネルギーへの寄与の少ない、またはほぼ寄与しない磁束(漏れ磁束)の流れが、ほぼ軸方向に発生する。その結果、各磁性板におけるその表面領域において渦電流が発生するという問題がある。
【0010】
さらに、例えばコアに、渦電流抑制のための新たな部材などを付け加えたりすることは、コアの重量の増大につながり、その分、駆動時のエネルギーの損失が発生してしまう。
【0011】
かかる渦電流を低減するためには、磁性板の形状等に工夫が必要であるが、その形状等が複雑とならないように、また、上記エネルギー損失の観点からコアの重量が増えないようにする必要がある。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、簡単な構成でコアを作製することができ、渦電流の低減し、また、コアの軽量化を実現することができるリニア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るリニア駆動装置は、
コイルが装着された1次側部材と、
前記1次側部材に対向して配置され、前記1次側部材と相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記2次側部材は、
永久磁石と、
複数の磁性板が、前記1次側部材及び前記2次側部材の相対移動方向に積層されて形成されたコアとを有し、
前記複数の磁性板のうち第1の磁性板は、
本体部と、
前記本体部から外側へ突出した突出部とを有し、
前記複数の磁性板のうち第2の磁性板は、
本体部と、
前記第2の磁性板の外周に沿って設けられた外形枠部と、
前記本体部から外側へ突出し、前記本体部と前記外形枠部とを連結する連結部と、
前記第2の磁性板の前記本体部と前記外形枠部との間に、前記連結部によって形成され、前記永久磁石が挿入される埋設孔とを有する
ことを特徴とする。
【0014】
2次側部材のコアを形成する複数の磁性板に含まれる第1及び第2の磁性板は、本体部を共通形状として有するが、第2の磁性板が、その本体部から連結部を介して外形枠部を有している点で、第1の磁性板と異なる。そして、第1及び第2の磁性板が積層されて形成されたコアでは、第1及び第2の磁性板の各本体部が揃い、第2の磁性板に形成された埋設孔に永久磁石が挿通されて固定されている。
【0015】
すなわち、本発明に係るリニア駆動装置のコアは、従来の装置のコアのように、単に同じ形状の電磁鋼板が積層されていた構成とは異なり、渦電流をさらに低減することができる。具体的には、第1の磁性板の径方向サイズと、第2の磁性板の径方向サイズとが異なることにより、それらが積層されて形成される2次側部材のコアの表面領域において、1次側及び第2次側部材の相対移動方向に沿った軸の周りの方向に凹部または溝が形成される。このような凹部または溝により、コアの表面領域において、1次側及び2次側部材の相対移動の方向での、漏れ磁束の発生を抑えることができ、そのコアの表面領域での渦電流を低減することができる。
【0016】
また、第1の磁性板と第2の磁性板のそれぞれの形状を比べると、第2の磁性板には、永久磁石をコアに埋設するための埋設孔が設けられ、第1の磁性板にはそのような埋設孔が設けられない。つまり、このような簡単な構成の違いを持つ第1及び第2の磁性板の積層によりコアが形成されるので、簡単な構成でコアを作製することができる。
【0017】
さらに、第1の磁性板は、第2の磁性板において外形枠部に相当する部位を有していないため、その分、コアの軽量化を図ることができ、省エネルギー化に寄与する。
【0018】
前記第1及び第2の磁性板は、単数ずつ交互に積層されてもよい。
これにより、同じ形状の磁性板が互いに当接しないので、さらなる渦電流の低減を図ることができる。
【0019】
前記突出部及び前記連結部の、前記相対移動方向に沿った軸の周りの角度位置がそれぞれ一致するように、前記第1及び前記第2の磁性板が積層されることで、前記第2の磁性板の前記外形枠部同士を支え合うブリッジ部が形成されてもよい。
第1の磁性板の突出部及び第2の磁性板の連結部によりブリッジ部が形成されるので、例えば第2の磁性板の、外形枠部の変形を防止することができる。
【0020】
前記第1及び前記第2の磁性板の前記各本体部は、
前記第1及び前記第2の磁性板の積層により前記コアの側面を形成する側部エッジと、
前記側部エッジから切り欠かれた切り欠きとをそれぞれ有し、
前記各切り欠きの、前記相対移動方向に沿った軸の周りの角度位置が一致するように、前記第1及び前記第2の磁性板が積層されていてもよい。
第1及び第2の磁性板の各本体部に、共通形状部分として側部エッジが設けられ、その側部エッジに、相対移動方向に沿った軸の周りで角度位置が一致して設けられた切り欠きがそれぞれ設けられるので、コアの軽量化を図ることができるとともに、その切り欠き位置による、各第1及び第2の磁性板の積層の際の位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、簡単な構成でコアを作製することができ、渦電流の低減を実現し、また、コアの軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、可動子を示す斜視図である。
【図4】図4は、可動子を示す正面図である。
【図5】図5は、図4におけるB−B線断面図である。
【図6】図6A及びBは、第1の磁性板及び第2の磁性板をそれぞれ示す正面図である。
【図7】図7は、固定子コア側から、Y軸方向で見た可動子コアの一部を示す平面図である。
【図8】図8は、図5に示した表面領域を拡大して示す断面図である。
【図9】図9A及びBは、リニア駆動装置の動作を説明するための図である。
【図10】図10は、可動子コアの表面領域及び固定子歯を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る可動子コアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
[リニア駆動装置の構成]
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニア駆動装置を示す正面図である。図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【0026】
リニア駆動装置100は、固定子1及び可動子3を備える。図1は、可動子3の移動方向(Z軸方向)で見た図である。固定子1は、固定子コア11及び12と、固定子コア11及び12にそれぞれ設けられたコイル13、14、15及び16とを備える。固定子コア11及び12は、可動子3を挟んでY軸方向で対向するように設けられている。
【0027】
固定子1及び可動子3のうち、固定子1は、コイルが備えられる1次側部材として機能する。一方、可動子3は、2次側部材として機能する。
【0028】
固定子コア11には、可動子3の移動方向に配列された2つの固定子歯111及び112が設けられている。また同様に、固定子コア12には、可動子3の移動方向に配列された2つの固定子歯121及び122が設けられている。これらの固定子歯111、112、121及び122にそれぞれ上記コイル13、14、15及び16が巻回されている。
【0029】
図1に示すように、固定子歯111は、後述するように円柱状の可動子3の側面に沿った曲面111aを有している。そのほかの固定子歯112、121、122も、固定子歯111と同様の形状を有している。固定子コア11の固定子歯111と、固定子コア12の固定子歯121とがY軸方向で対向するように配置されている。また、固定子コア11の固定子歯112と、固定子コア12の固定子歯122とがY軸方向で対向するように配置されている。図2に示すように、可動子3は、それらの固定子歯111及び121、112及び122に対面するように配置されている。固定子コア11及び12は、図示しないフレームに支持されて、またはケーシングに収められて互いに位置決めされる。
【0030】
図2に示すように、可動子3の中央には、Z軸方向に沿って貫通した、シャフト33の挿通穴31dが形成されている。シャフト33は、図示しない軸受やバネ等の支持部材によってシャフト33がZ軸方向に沿って移動可能となるように支持される。可動子3のZ軸方向の両端にはカバー部材36が取り付けられ、カバー部材36はシャフト33と一体的になるようにシャフト33に固定される。カバー部材36は、可動子コア31とシャフト33との固定の機能のほか、後述する永久磁石の抜け防止の機能も有する。しかし、必ずしもカバー部材36はなくてもよい。
【0031】
なお、リニア駆動装置100が、可動子が往復振動するようなリニアクチュエータとして用いられる場合、シャフト33を支持する支持部材としてバネ部材が用いられる。この場合、例えばスパイラル状の板バネが用いられる。スパイラル状の板バネが用いられることにより、その板バネの変形によって可動子3が円周方向に回転し、永久磁石が可動子コア31に埋め込まれる埋め込み構造及び円柱構造であることのメリットが高められる。支持部材の他の例として、8の字形状の板バネ、リニアブッシュ、ボールスプライン、エアベアリング、リニアガイド等が挙げられる。
【0032】
図3は、可動子3を示す斜視図である。図4は可動子3を示す正面図であり、図5は図4におけるB−B線断面図である。
【0033】
可動子3は、円柱形状に近い形状を有する。可動子3は、可動子コア31と、可動子コア31内に埋め込まれた永久磁石321、322、323、341、342及び343とを含む。可動子コア31は、複数の第1の磁性板311と、複数の第2の磁性板312とを含む。
【0034】
図6A及びBは、その第1の磁性板311及び第2の磁性板312をそれぞれ示す正面図である。可動子コア31は、これら第1の磁性板311及び第2の磁性板312が、可動子3の移動方向に単数ずつ交互に積層されて形成されている。
【0035】
可動子コア31を形成する複数の第1の磁性板311は、実質的に同一形状を有している。また、可動子コア31を形成する複数の第2の磁性板312は、実質的に同一形状を有している。しかしながら、第1の磁性板311と第2の磁性板312とは、互いに異なる形状に形成されている。第1の磁性板311及び第2の磁性板312の、Z軸方向の各厚さは実質的に同一とされる。各磁性板311及び312としては、典型的には電磁鋼板が用いられる。電磁鋼板の表面には絶縁被膜がそれぞれ形成されている。電磁鋼板は珪素を含んでいてもよい。
【0036】
図6Aに示すように、第1の磁性板311は、本体部3110と、この本体部3110の外形を形成する本体エッジ部3110aから外側へ突出して設けられた突出部3111及び突出片3112とを有する。本体部3110の中央部には、上記したようにシャフト33の挿通穴3110d(31d)が形成されている。また、本体エッジ部3110aのうち、可動子コア31の両側面を形成するための側部エッジ3110bには、切り欠き3110cがそれぞれ形成されている。
【0037】
突出部3111は、シャフト33の軸周り(Z軸周り)で180度離れた位置に2つ設けられ、突出片3112は、その軸周りで概ね等角度間隔で、8つ設けられている。切り欠き3110cは、Z軸周りで180度離れた位置に2つ設けられ、これらは、突出部3111に対してZ軸周りで90度離れた位置に設けられている。
【0038】
図6Bに示すように、第2の磁性板312は、本体部3120と、この第2の磁性板312の外周に沿って設けられた外形枠部3129と、本体部3120から外側へ突出し、本体部3120と外形枠部3129とを連結する連結部3121とを有する。第2の磁性板312と、上記第1の磁性板311とで共通する点は、本体部3120、本体部3120の中央部に設けられたシャフト33の挿通穴3120d(31d)、本体部3120の本体エッジ部3120aから突出して設けられた突出片3122が設けられている点にある。
【0039】
連結部3121は、Z軸周りで180度分離れた位置に設けられている。第1の磁性板311及び第2の磁性板312が積層された時に、連結部3121と、第1の磁性板311の突出部3111とが、Z軸周りで一致する位置でそれぞれ重なり合うようになっている。突出片3122及び切り欠き3120cは、上記第1の磁性板311と同様の角度位置に、同様の個数分それぞれ設けられている。
【0040】
第2の磁性板312には、本体部3120の本体エッジ部3120aと、外形枠部3129との間に、連結部3121によって区画形成された、永久磁石321、322、323、・・・が挿入される埋設孔31aが形成されている。永久磁石321、322、323、・・・は、概ね、平板形状(Z軸方向で見て概ね長方形)あるいは台形柱状(Z軸方向で見て概ね台形)を有している。各磁性板311及び312が積層されることにより、図3及び5に示すように、これらの各本体部3110及び3120、また、各本体エッジ部3110a及び3120aが揃うように配置される。そして、このように各磁性板311及び312が積層された状態で、埋設孔31aに永久磁石321、322、323、・・・がそれぞれ挿通されて可動子コア31に固定される。
【0041】
第1の磁性板311では、永久磁石は、各突出部3111及び各突出片3112によって、そのZ軸周りの角度位置が位置決めされる。また、第2の磁性板312では、永久磁石は、各連結部3121及び各突出片3122によって、そのZ軸周りの角度位置が位置決めされる。各磁性板311及び312の積層によって、それらの各切り欠き3110c及び3120cが揃えられて、図3に示すように、可動子コア31にZ軸方向に沿って設けられた切り欠き部31dが形成される。
【0042】
このように、各磁性板311及び312の各側部エッジ3110b及び3120bに、シャフト33の軸周りで角度位置が一致して設けられた切り欠き3110c及び3120cがそれぞれ設けられるので、コアの軽量化を図ることができる。また、その切り欠き位置による、各磁性板311及び312の積層の際の位置決めを容易に行うことができる。
【0043】
図7は、固定子コア11(または12)側から、Y軸方向で見た可動子コア31の一部を示す平面図である。第1の磁性板311及び第2の磁性板312が積層されることにより、上記したように、突出部3111及び連結部3121同士が重なり合い、互いに接続される。これら突出部3111、連結部3121、突出部3111、連結部3121、・・・の連なりにより、図7に示すように、Z軸方向に沿ってブリッジ部318が連続して形成される(図3も参照)。ブリッジ部318は、第2の磁性板312の各外形枠部3129同士を支え合う機能を有し、言わばリブの機能を果たす。
【0044】
第2の磁性板312が電磁鋼板で形成される場合であって、そのZ軸方向に沿う厚さが例えば0.75mm以下の場合、その外形枠部3129は変形しやすい。特に、可動子コア31の製造時において、永久磁石を埋設孔に埋め込む場合に、その変形が起こりやすくなる。ブリッジ部318が形成されることにより、外形枠部3129の変形を防止することができ、外形枠部3129のZ軸方向に沿う強度を高めることができる。
【0045】
もちろん、第2の磁性板312の厚さが0.75mmを超える場合であっても、可動子コアにこのようなブリッジ部を形成してもよい。
【0046】
なお、各磁性板311及び312は、それぞれ圧着及び接着剤による接着のうち少なくとも一方の工程によって積層されることで、可動子コア31が形成される。あるいは、各磁性板311及び312は、Vカシメ、または丸ダボ等を用いたカシメ、通しピンを用いたピンカシメ、または、溶接(例えばレーザー溶接)等により一体化されてもよい。
【0047】
各磁性板311及び312の積層方向の1列分の複数の永久磁石321、322及び323(341、342及び343)を、以下、永久磁石セット32(34)と呼ぶ。後述するように、固定子コア11側に近い永久磁石セットを永久磁石セット32とし、固定子コア12側に近い永久磁石セットを永久磁石セット34とする。本実施形態に係る可動子3には、4つの永久磁石セット32及び4つの永久磁石セット34が設けられ、合計24個の永久磁石が可動子コア31に埋め込まれている。また、以降では、永久磁石321、322、323、341、342及び343を、永久磁石321等という場合もある。
【0048】
このように磁性板311及び312が積層されることにより、埋設孔31aがZ軸方向で連なり、各永久磁石321等がこれらの埋設孔31aに挿通されて固定され、位置決めされる。
【0049】
各永久磁石321等は、図4及び図5に示すようにZ軸方向(またはそのZ軸方向の一断面)で見て、可動子コア31の径方向にそれぞれ着磁されている。すなわち、可動子コア31は概ね円柱構造であるため、その円柱構造の周囲(外周側である固定子1側)に磁極が向くように、永久磁石321等が着磁されている。また、可動子コア31の、上側の固定子コア11に近い側に配置された永久磁石321、322及び323(永久磁石セット32)の、固定子コア11側に向く磁極と、下側の固定子コア12に近い側に配置された永久磁石341、342及び343(永久磁石セット34)の、固定子コア12側に向く磁極とは、それぞれ異なっている。すなわち、可動子3は、Z軸方向で見て2極構造を有している。
【0050】
さらに図5に示すように、永久磁石セット32(34)の各磁極であって固定子コア11(12)側に向く磁極は、磁性板311及び312の積層方向で交互に異なるように配置されている。すなわちこの可動子コア31は、断面2極構造である。
【0051】
3つの永久磁石321、322及び323について、両端に設けられた永久磁石321及び323のZ軸方向の長さより、中央に設けられた永久磁石322のZ軸方向の長さが長くなるようにそれぞれ形成されている。3つの永久磁石341、342及び343についても同様である。これらの永久磁石321、322及び323のZ軸方向の長さ(及びZ軸方向に沿って並ぶ永久磁石の個数等)は、固定子コア11及び12の各固定子歯111、112、121及び122のZ軸方向の長さ、個数、あるいは、可動子3のストローク長等によって適宜設定される。
【0052】
図8は、図5(図4におけるB−B線断面図)に示した表面領域313を拡大して示す断面図である。図8において図示された各磁性板311及び312の厚さのスケールと、図3及び5において図示された各磁性板312の厚さのスケールとを比べると、図3及び5の方が粗く表されている。これは図面の作成上の問題であり、両者に違いはない。
【0053】
上記のように、磁性板311及び312が交互に積層されて可動子コア31が形成されている。したがって、図8に示すように可動子コア31の表面を含む領域であって、永久磁石セット32(34)と、固定子1との間に設けられた表面領域313には、Z軸方向に沿って複数の間欠溝319が間欠的に形成される。間欠溝319を形成する領域は、この第1の磁性板311を挟む2つの第2の磁性板312の両外形枠部3129により挟まれた領域である。
【0054】
[リニア駆動装置の動作]
【0055】
次に、以上のように構成されたリニア駆動装置100の動作を説明する。図9A及びBは、その動作を説明するための図である。なお、図9A及びBで表された、可動子3の永久磁石セット32及び34の極性は、固定子コア11及び12側に向く磁極を示している。
【0056】
図9Aに示すように、固定子コア11側の2つのコイル13及び14に互いに逆向きの電流が同じタイミングで加えられ、かつ、固定子コア11及び12側の2つのコイル15及び16に互いに逆向きの電流が同じタイミングで加えられる。Y軸方向で同じ位置に配置されたコイル13(14)及び15(16)にも互いに逆向きの電流が加えられる。そうすると、固定子歯111、112、121及び122に磁束が発生し、固定子歯111、112、121及び122に図示するように磁極が生成される。各固定子歯111、112、121及び122に発生した磁束と、可動子3に設けられた永久磁石321等により生成される磁束との相互作用により、可動子3は図9A中、右へ移動する。
【0057】
図9Bに示すように、図9Aで示した各電流の向きとは逆向きの電流がコイル13〜16にそれぞれ同じタイミングで加えられる。そうすると、図9Aで示した磁極とは反対の磁極が、固定子歯111、112、121及び122にそれぞれ生成される。これにより、可動子3は図8B中、左へ移動する。
【0058】
以上のように、コイル13〜16にそれぞれ交流電流(交流電圧)が印加されることにより、可動子3はZ軸方向で振動する。
【0059】
コイル13〜16に加えられる交流電流の波形は、正弦波、矩形波、三角波など、適宜設定可能である。また、その波形にDC成分等のオフセット電流が加えられてもよい。その場合、そのオフセット電流値に応じて可動子3のストロークエンド(死点)の位置を適宜調整することができる。そのほかにも、三相コイルに三相交流を流すといった、交流電流の波形に応じた種々の駆動方法を実現することができる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、各磁性板311及び312の積層により積層方向に配列された埋設孔に永久磁石321等が挿通されて固定されているので、可動子コア31と永久磁石321等とのずれを防止でき、永久磁石321等が可動子コア31から剥がれ落ちるおそれがない。特に、固定子1ではなく、可動子3に永久磁石321等が設けられていても、可動子3の長年の移動による加速度が永久磁石321等に加えられても、永久磁石321等をコアに確実に保持しておくことができる。
【0061】
本実施形態に係る可動子コア31によれば、従来の装置のコアのように、単に同じ形状の電磁鋼板が積層されていた構成とは異なり、渦電流をさらに低減することができる。すなわち、第1の磁性板311及び第2の磁性板312が上記のように構成され、第1の磁性板311の径方向サイズと、第2の磁性板312の径方向サイズとが異なるため、これら磁性板311及び312が積層されて形成される可動子コア31の表面領域313において、複数の間欠溝319が形成される。これらの間欠溝319により、可動子コア31の表面領域313において、Z軸方向における漏れ磁束の発生を抑えることができ、その表面領域313での渦電流を低減することができる。
より詳しくは、図10に示すように、例えば固定子歯111等から発生する磁束及び永久磁石321等から発生する磁束が、表面領域313における間欠溝319以外の領域、つまり磁気抵抗の低い領域を通り、可動子コア31の中心側に向かうようになる。したがって、可動子コア31の表面領域313において、可動子3の移動方向に沿った漏れ磁束の発生を抑えることができ、その表面領域313での渦電流を低減することができる。
【0062】
このように、可動子3の駆動のためのエネルギーへの寄与の少ない、またはほぼ寄与しない漏れ磁束を減らすことにより、磁束を効率良く使用することができ、また、可動子3の推力特性を向上させることができる。
【0063】
また、第1の磁性板311と第2の磁性板312のそれぞれの形状を比べると、第2の磁性板312には、永久磁石を可動子コア31に埋設するための埋設孔31aが設けられ、第1の磁性板311にはそのような埋設孔31aが設けられない。つまり、このような簡単な構成の違いを持つ磁性板311及び312の積層により可動子コア31が形成されるので、簡単な構成で可動子コア31を作製することができる。
【0064】
さらに、第1の磁性板311は、第2の磁性板312の外形枠部3129に相当する部位を有していないため、その分、コアの軽量化を図ることができ、省エネルギー化に寄与する。
【0065】
[第2の実施形態に係るリニア駆動装置の構成]
【0066】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る可動子コアを示し、固定子コア11(または12)側から、Y軸方向で見た可動子コアの一部を示す平面図である。これ以降の説明では、図1等に示した実施形態に係るリニア駆動装置100が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0067】
この可動子コア131は、例えば突出部3111(図6A参照)を有していない第1の磁性板411と、図6Bに示した第2の磁性板312とが単数ずつ交互に積層されることにより形成されている。そして、隣り合う2つの第2の磁性板312の連結部3121付近で、それら磁性板312の外形枠部3129に、カシメ加工が施されている。カシメ加工として、または、カシメ以外の加工法として、例えば半打ち抜きや曲げ等によるカシメによって各磁性板411を変形させて、互いの磁性板411同士の隙間を埋めるように支え合う支持部としての役割を果たせる構造を形成する加工法であれば、何でもよい。可動子コア131の移動方向(Z軸方向)に沿って断続的なブリッジ部328が形成されている。
【0068】
このような断続的なブリッジ部328が形成される場合でも、外形枠部3129の変形を防止することができ、外形枠部3129のZ軸方向に沿う強度を高めることができる。
【0069】
[その他の実施形態]
【0070】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態がある。
【0071】
図6Aに示した第1の磁性板311の1磁極分(図6Aの第1の磁性板311の上半分または下半分)について、突出部3111が1つ設けられ、突出片3112が4つ設けられる構成とした。しかし、2つ以上(例えば5つすべて)の突出部3111が設けられていてもよい。この場合、図6Bに示した第2の磁性板312についても、その第1の磁性板311の突出部及び突出片の数及び配置に対応するように、連結部及び突出片が設けられていればよい。
【0072】
上記各実施形態に係る可動子コアにおいて、積層される磁性板について、異なる形状の磁性板311と312の厚さは互いに異なっていてもよい。例えば第1の実施形態に係る可動子コア31において、可動子コア31の間欠溝319を形成しない磁性板311の厚さより、間欠溝319を形成する磁性板312の厚さを厚くしてもよい。あるいは、複数枚の第1の磁性板311が連続して積層されることにより、間欠溝319のZ軸方向の幅を適宜調整することもできる。
【0073】
複数枚の第2の磁性板312が連続して積層されてもよい。この場合、連続積層される第2の磁性板312の枚数が多いほど、漏れ磁束が増えてくる。したがって、その漏れ磁束による渦電流の発生を考慮して第2の磁性板312の枚数が適宜設定される。
【0074】
上記では、可動子である2次側部材は、第1の磁性板311及び第2の磁性板312の2種類の形状を有する磁性板が積層されて形成されたが、3種類以上の異なる形状を有する磁性板が積層されて形成されてもよい。
【0075】
上記のリニア駆動装置では、可動子である2次側部材が固定子である1次側部材の内側に配置されたが、1次側部材及び2次側部材の動きは相対的なものと捉えることができる。例えば内側の2次側部材が固定され、外側の1次側部材がその2次側部材に対して移動するような構成であってもよい。
【0076】
上記のリニア駆動装置は、可動子コア31である2次側コアが、固定子コア11及び122である2つの1次側コアに挟まれるように構成された。しかし、例えば1つの2次側コアと、少なくとも1つの1次側コアとが対向して配置されるリニア駆動装置も実現可能である。この場合、2次側コアの形状は円柱形状でなくてもよく、例えば四角柱状のブロック形状であってもよい。
【0077】
上記のリニア駆動装置は、可動子が往復振動するリニアアクチュエータとして利用される例を示した。しかし、リニア駆動装置は、可動子がリニアライン上の任意の位置から別の任意の位置まで移動するリニアモータとしても利用可能である。
【0078】
上記各実施形態に係るリニア駆動装置が発電機として用いられてもよい。この場合、外部から可動子が駆動され、可動子が積層方向に移動することにより、固定子の各固定子歯に磁束変化が発生し、これによりコイルに起電力が発生する。
【0079】
上記実施形態では、図4に示すように、可動子3の一断面で見て2極構造の例を挙げた。すなわち、図4中、可動子3の上半分の磁極がN極(外周側に向く磁極がN極)であり、下半分の磁極がS極(外周側に向く磁極がS極)であった。しかし、このような形態に限られず、可動子3の一断面で見て単極構造、つまり、その一断面におけるすべての永久磁石の外周側に向く磁極がNまたはSの1極とされる形態であってもよい。
【0080】
図1に示した固定子コア11及び12は、Y軸方向で2つに分割されていたが、これらの固定子コア11及び12はY軸方向で連続するように接続されていてもよい。
【0081】
固定子歯、永久磁石、永久磁石セットの数は適宜変更可能である。永久磁石、固定子コア、可動子コアの各形状等も適宜変更可能である。例えば、固定子歯は、可動子の移動方向で1つだけ設けられていてもよい。この場合、可動子の移動方向での長さも適宜調整される。可動子の移動方向における磁極数あるいは永久磁石の数は、上記実施形態では3つであったが、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0082】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…固定子(1次側部材に相当)
3…可動子(2次側部材に相当)
11、12…固定子コア
13〜16…コイル
31、131…可動子コア(コアに相当)
31a…埋設孔
31d…挿通穴
32、34…永久磁石セット
100…リニア駆動装置
311、411…第1の磁性板
312…第2の磁性板
318、328…ブリッジ部
321〜323、341〜343…永久磁石
3110、3120…本体部
3110a、3120a…本体エッジ部
3111…突出部
3121…連結部
3110b、3120b…側部エッジ
3110c、3120c…切り欠き
3129…外形枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが装着された1次側部材と、
前記1次側部材に対向して配置され、前記1次側部材と相対的に移動可能に設けられた2次側部材とを具備し、
前記2次側部材は、
永久磁石と、
複数の磁性板が、前記1次側部材及び前記2次側部材の相対移動方向に積層されて形成されたコアとを有し、
前記複数の磁性板のうち第1の磁性板は、
本体部と、
前記本体部から外側へ突出した突出部とを有し、
前記複数の磁性板のうち第2の磁性板は、
本体部と、
前記第2の磁性板の外周に沿って設けられた外形枠部と、
前記本体部から外側へ突出し、前記本体部と前記外形枠部とを連結する連結部と、
前記第2の磁性板の前記本体部と前記外形枠部との間に、前記連結部によって形成され、前記永久磁石が挿入される埋設孔とを有する
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア駆動装置であって、
前記第1及び第2の磁性板は、単数ずつ交互に積層される
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリニア駆動装置であって、
前記突出部及び前記連結部の、前記相対移動方向に沿った軸の周りの角度位置がそれぞれ一致するように、前記第1及び前記第2の磁性板が積層されることで、前記第2の磁性板の前記外形枠部同士を支え合うブリッジ部が形成される
ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のリニア駆動装置であって、
前記第1及び前記第2の磁性板の前記各本体部は、
前記第1及び前記第2の磁性板の積層により前記コアの側面を形成する側部エッジと、
前記側部エッジから切り欠かれた切り欠きとをそれぞれ有し、
前記各切り欠きの、前記相対移動方向に沿った軸の周りの角度位置が一致するように、前記第1及び前記第2の磁性板が積層されている
ことを特徴とするリニア駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−74664(P2013−74664A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210455(P2011−210455)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】