説明

リフローハンダ付け方法および装置

【課題】ヒータチップの加熱温度を適切に制御することによりハンダ付け処理時間を短縮し、装置の稼働率を高くする。
【解決手段】基台に対して昇降可能な昇降ヘッド14に保持したヒータチップ30を、ワーク52に押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、ヒータチップ30をハンダ接合温度θ3より高い融解温度θ2にしてハンダを融解させた後、ヒータチップ30をハンダ接合温度θ3に下げ、所定時間後にハンダを凝固させる。またヒータチップ30をハンダ接合温度θ3に下げ、ヒータチップ30を仕上がり位置にして所定時間後にハンダを凝固させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、予めクリームハンダやハンダめっきなどによってハンダを供給したハンダ付け部にヒータチップを押圧し、ヒータチップを発熱させることによりリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法と、この方法の実施に直接使用するリフローハンダ付け装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒータチップ(ツール)をワーク(ハンダ付け対象、以下ハンダ付け部ともいう)に押し付けてヒータチップに電流を流し、瞬時に発熱させてリフローハンダ付けする方法が公知である(瞬間加熱方式)。この場合、ヒータチップの温度(ヒータ温度)を熱電対により検出し、このヒータ温度と加熱時間とを所定の温度プロファイルに従って制御し、一定条件で通電を停止し、ヒータ温度が設定温度以下に冷えるのを待ってヒータチップを上昇させてハンダ付け工程を終了させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−216560
【0004】
特許文献1には、。昇降ヘッド(変位ユニット16)にロッド(加圧力伝達シャフト58)を上下動可能に保持し、このロッドにヒータチップ(加熱チップ12)を固定する一方、このロッド(58)を下向きに付勢し、昇降ヘッド(16)を下降させることによってヒータチップ(12)をワーク(94,90)に押圧するものが示されている。すなわち昇降ヘッド(16)にロッド(58)の位置(ヒータチップの位置)を検出するマイクロスイッチ(88)および変位センサ(80)を設け、ヒータチップ(12)をワークに押し付けてロッド(58)がマイクロスイッチ(88)を作動させる位置まで昇降ヘッド(16)を押下げてから昇降ヘッドを固定し、この状態でヒータヘッドをばね力によってワークに押圧したままヒータチップ(12)に加熱電流を流してハンダ(半田)をリフロー(溶融)させるものである。そしてハンダの溶融に伴い被接合部の厚さDが徐々に薄くなり、その厚さの変位量ΔDが所定値になった時に加熱電流を停止してハンダ付けを完了するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように特許文献1に示されたものでは、ヒータチップ(12)に加熱電流を流してヒータチップ(12)をハンダ接合温度に加熱し、ハンダを溶融する。しかしこの場合にはヒータチップの加熱開始からハンダの溶融が始まるまでの時間が長くなり、処理時間が長く装置の稼働率が低くなるという問題があった。特に近年広く用いられている無鉛ハンダ(鉛フリーハンダ)では、従来の鉛ハンダの場合よりハンダ接合温度が高く、またハンダ接合状態を良くし信頼性を高めるためには接合温度を高くすることが必要であるため、処理時間がさらに長くなる。なおこの引用文献1には加熱電流を断続することは記されているが、ヒータチップの温度制御については全く説明されていない。
【0006】
特許文献1に示されたものはヒータチップをワークに押圧した状態でハンダをリフローさせるので、溶融ハンダがヒータチップの下から外側へ押出されてしまう。すなわちハンダが溶融を開始すると瞬時に液状化し、最後までつぶれてしまうからである。このため溶融したハンダが被接合面間から押出され被接合面同士が直接接触することになり、特に被接合部材が板状である場合などにハンダ付け不良が発生するおそれが生じる。
【0007】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、ヒータチップの加熱温度を適切に制御することによりハンダ付け処理時間の短縮を可能にし、装置の稼働率を高くすることができ、無鉛ハンダのハンダ付けに好適であるリフローハンダ付け方法を提供することを第1の目的とする。またこの第1の目的に加えてハンダがリフローした時にヒータチップがワークから溶融ハンダを押出してハンダ付け不良を発生させるおそれを無くしてハンダ付けの信頼性を上げることができるリフローハンダ付け方法を提供することを第2の目的とする。またこの方法の実施に直接使用するリフローハンダ付け装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者はヒータチップ温度とハンダの溶融過程とを仔細に観察した結果、ハンダの非溶融状態ではヒータチップとワークとの熱伝導性が悪い一方、ハンダ溶融開始後は熱伝導性が著しく大きくなることを知得した。その理由はハンダ非溶融状態ではヒータチップとワークとの接触が点接触に近い状態であり凝固ハンダの熱伝達も十分大きくない一方、ハンダ溶融後は溶融ハンダがヒータチップに面接触状態で密着すると共に溶融ハンダにより熱伝達が著しく向上するためであると考えられる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0009】
この発明によれば第1の目的は、基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、c)所定時間後にハンダを凝固させる、ことを特徴とするリフローハンダ付け方法、により達成される。
【0010】
また第2の目的は、基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、b−1)所定時間後にヒータチップを仕上がり位置まで上昇させ、c)所定時間後にハンダを凝固させる、ことを特徴とするリフローハンダ付け方法、により達成される。
【0011】
この第2の目的は、基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、a−1)このハンダの融解に伴って下降するヒータチップを仕上がり位置に保持し、b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、c)所定時間後にハンダを凝固させる、ことを特徴とするリフローハンダ付け方法、によっても達成される。
【0012】
さらに第3の目的は、基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け装置において、昇降ヘッドの位置を指令する位置指令およびヒータチップの温度を指令する温度指令を出力する主コントローラと、前記位置指令に基づいて昇降ヘッドの位置を制御する位置制御部と、前記温度指令に基づいてヒータチップ温度を制御する温度制御部と、を備え、前記主コントローラは、ヒータチップをワークに押圧しながらハンダ接合温度より高い融解温度に加熱した後、ハンダの融解に伴う昇降ヘッドの沈み込み開始に基づいてヒータチップをハンダ接合温度に下げ、所定時間後にハンダを凝固させることを特徴とするリフローハンダ付け装置、により達成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明(第1の発明)によれば、ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させるのでハンダ溶融までの時間を短縮できる。ハンダの融解が始まったら直ちにヒータチップをハンダ接合温度に下げ、所定時間後にハンダを凝固させるのでハンダ接合部(プリント配線板やリードなど)やハンダやフラックスを過度に加熱することがない。このためハンダ付け処理時間を短縮でき、装置の稼働率を高くでき、さらにハンダ接合部に熱的障害を加えることがなく、ハンダやフラックスの酸化による劣化を防いでハンダ付け信頼性を高くすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明(第2の発明)によれば、ヒータチップをハンダ接合温度に下げた後、所定時間後にヒータチップを仕上がり位置に上昇させた状態でハンダを凝固させるから、前記第1の発明と同様な効果と共に、溶融ハンダが被接合面間から押出されてハンダ付け不良が発生するのを防ぐことができる。請求項3に記載の発明によれば、ハンダが融解した時にヒータチップを仕上がり位置まで下降させて保持しながら凝固させるから、請求項2に記載の発明と同じ効果が得られる。
【0015】
請求項11に記載の発明(第3の発明)によれば、第1の発明の実施に直接使用する装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例の外観斜視図
【図2】同じく内部構造を示すブロック図
【図3】昇降ヘッド部の初期位置(待機位置q1)を示す図
【図4】同じくヒータチップがワークに接触した接触検出位置(q2)を示す図
【図5】同じく昇降ヘッドを(所定量)Aだけ押し下げて固定した位置を示す図
【図6】同じくハンダ溶融時(ヒータチップの沈み込み時)を示す図
【図7】ヒータチップ温度およびヒータチップ位置の制御プロファイル図
【図8】動作流れ図
【図9】ヒータチップのハンダ付け動作を示す図
【図10】他の実施例におけるヒータチップ温度およびヒータチップ位置の制御プロファイル図
【発明を実施するための形態】
【0017】
請求項1または2または3において、工程a)では、ハンダが融解したことをヒータチップの沈み込みにより検出し、工程b)ではこの沈み込みに基づいてヒータチップをハンダ接合温度に下げることができる(請求項4)。ハンダの融解は他の方法で検出してもよい。例えばハンダ溶融によりハンダ表面の光反射状態が急変(鏡面反射様になる)することを光センサなどで検出してもよい。
【0018】
請求項1または2または3において、工程a)では、ヒータチップを予め予備加熱しておいてワークに接触させてもよい。この場合はヒータチップを融解温度まで加熱する時間をさらに短縮でき本発明の効果は一層大きくなる(請求項5)。
【0019】
ヒータチップがワークに接触したことを検出するためには、ヒータチップを昇降ヘッドに対して下向きに付勢しかつ昇降ヘッドに設けたストッパで下限位置を規制するように構成し、この昇降ヘッドを下降させヒータチップがストッパに当たった下限位置から所定量(x)上昇したことから検出することができる(請求項6)。
【0020】
請求項3において、ハンダが融解した時にヒータチップがストッパで規制される下限位置まで下降させる場合に、この下限位置が仕上がり位置になるようにストッパを設定しておいてもよい(請求項7)。
【0021】
ハンダを凝固させる際には、ハンダ溶融中にヒータチップを仕上がり位置まで上昇させておくのがよい(請求項2の工程b−1))。この場合、ハンダが接合部から押出されてハンダ接合面同士が直接接触してハンダ付けが不完全になるのを確実に防ぐことができる。このためには、工程a)でハンダの融解をヒータチップの沈み込みで検出し、仕上がり位置はこの沈み込み位置より僅かに高くして被接合部の厚さを所定のハンダ仕上がり厚さとすればよい。
【0022】
請求項2において、工程a)でハンダの融解を検出した時点から予め設定した所定の接合温度保持時間(t1)経過後にヒータチップを仕上がり位置に上昇させるようにすれば、この時間(t1)の保持によりヒータチップの昇降に伴う振動が確実に消えるのを待って上昇させることになり、ヒータチップの位置決めが正確になる。またハンダの溶融がこの時間(t1)内で確実に進行し、特に無鉛ハンダではハンダ接合強度を向上させ接合不良の発生を防ぐ効果が特に大きい(請求項8)。
【0023】
この場合には、ヒータチップをこの仕上がり位置に上昇させた後さらに所定の仕上がり位置保持時間(t2)この状態を保持してから冷却を開始するのがよい(請求項9)。この場合には、ヒータチップの仕上がり位置で溶融ハンダがワーク(被接合部)と十分になじむ(濡れる)から、ハンダ接合が一層良好になる。
【0024】
ハンダの溶融によるヒータチップの沈み込みは、ヒータチップに下向きの付勢力を付与しておくことにより行えばよい。この場合の仕上がり位置は、昇降ヘッドをこの位置から上昇させる上昇量(a)と、ヒータチップがストッパに当たるまでの復帰量(b)との差(a−b)で設定することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1の発明の実施に直接使用する装置が得られる。この場合にヒータチップをハンダ接合温度に下げた後、所定時間後にヒータチップを仕上がり位置に上げてハンダを凝固させれば、接合面同士の間にハンダが入りハンダ接合を良好にすることができる。この装置は無鉛ハンダの接合に好適であり、その場合はハンダ融解温度(θ2)を約400℃とし、ハンダ接合温度(θ3)を約250℃にするのがよい。
【実施例1】
【0026】
図1はこの発明の一実施例を示す外観図、図2は、その制御系統を示すブロック図である。図3〜6は昇降ヘッドの動作説明図であり、図3は動作前の待機位置(q1)、図4は昇降ヘッドを下降させてヒータチップがワークに接触した状態である接触検出位置(q2)、図5は昇降ヘッドをさらに所定量(目標沈み込み量)Aだけ下降させて固定した状態、図6はヒータチップを発熱させヒータチップをストッパによる限定位置に下降させた状態をそれぞれ示す。図7はヒータチップの温度プロファイル図であってヒータチップ位置を重ねて示したもの、図8は動作の流れ図、図9はハンダ付け部の拡大断面図である。図9(A)はリフロー前を、(B)はこの発明による沈み込み時を、(C)は同じくハンダ付け終了状態を示している。
【0027】
図1,2において符号10は主コントローラ、12は電源部、14は溶接機である。主コントローラ10は、制御部10A、モータドライバー10B、電源スイッチ16、表示パネル20などを持つ。制御部10AはCPUで形成される。表示パネル20は表面に透明なタッチセンサ(図示せず)からなる入力手段が設けられ、この入力手段から後記する種々の設定値が設定される。
【0028】
溶接器14は図3に詳細に示すように、基台22と、この基台22から垂直に起立する支柱24と、この支柱24に昇降可能に保持されモータ25(図2)によって昇降される昇降ヘッド26と、この昇降ヘッド26に上下動可能に保持されて下方へ突出するロッド28と、このロッド28の下端に固定されたヒータチップ(ツール)30とを持つ。このロッド28は昇降ヘッド26に固定された筒32内に装填されたコイルばね34によって下向きに付勢されている。モータ25はステッピングモータやサーボモータであって、その回転量すなわち昇降ヘッド26の位置をフィードバック制御できるものである。
【0029】
コイルばね34の上端は、筒32の上端に螺合されたばね力調節手段となるキャップ36に支持されている。ロッド28には下限位置設定部材となるストッパとしての板38が固定され、この板38はロッド28の下降時に昇降ヘッド26の内底壁に当接して位置決めされる(図3,6の位置)。この板38の位置すなわち昇降ヘッド26に対する相対位置は、昇降ヘッド26に内装した変位計40によって検出される。このこの変位計40は例えば公知の差動トランスで形成することができる。この場合は、板38にロッド28と平行に固定した鉄心42を、一次コイルおよび2組の二次コイルを組合せたコイル44の中で移動させ、2組の二次コイルの出力差に基づいて鉄心42の変位を検出する。
【0030】
ヒータチップ30は上方に開くスリットを形成して略U字状とした抵抗金属で作られ、両端間に電流を流すことによって瞬時に発熱するものである。このヒータチップ30はウェルドケーブル46によって、電源部12に収容された溶接トランス12Aの二次側に接続されている。
【0031】
また電源部12は電流制御部12Bを備える。電流制御部12Bは主コントローラ10の制御部10Aが出力する温度指令P1に基づいてヒータチップ30の温度を制御する。すなわちこの電流制御部12Bにはヒータチップ30の先端付近に固定した熱電対48が検出するヒータチップ温度θがフィードバックされ、このヒータチップ温度θを温度指令P1に一致させるようにパルス幅制御したパルス電流P2を溶接トランス12Aに送る。溶接トランス12Aはこのパルス電流P2を昇圧してヒータチップ30に送り発熱させる。
【0032】
モータドライバー10Bは制御部10Aが出力する位置指令Q1に基づいてモータ25を制御する。すなわちモータドライバー10Bは、この位置指令Q1が示す回転量だけモータ25を回転させる。ここにモータ25はステッピングモータあるいはサーボモータでありその回転量は正確に制御される。
【0033】
52は被ハンダ付け対象となるワークである。このワーク52は、図9に示すように、回路基板54の電極56にリード線58を乗せたものであり、ここに電極54の表面には無鉛ハンダなどのハンダ60が予め供給されている。このハンダ60は、予めフュージング(加熱処理によりクリームハンダを溶融し、均質合金化する処理)したクリームハンダ、ハンダめっき、あるいは他の手段で予め供給される。図9の(A)はリフロー前の状態を示している。
【0034】
主コントローラ10の制御部10Aは、図7に示す制御特性に従って、ヒータチップ30の温度を指示する温度指令P1と、昇降ヘッド26の位置(高さ)を指示する位置指令Q1とを出力する。ここに変位計40は昇降ヘッド26に対するロッド28の変位すなわちヒータチップ30の変位を検出する。主コントローラ10はこの変位計40の出力を用いてモータ25を制御する。
【0035】
図2において、62は表示部、64は設定部である。表示部62は前記表示パネル20に対応する。設定部64はこの表示パネル20の表面に設けたタッチセンサで形成される。
【0036】
次に図7を用いて動作を説明する。主コントローラ10の電源スイッチ16をオンにすると、CPUが起動し表示パネル20にメニュー画面が表示される。オペレータはメニュー画面で「データ設定」を選択し、種々のデータ(設定値)を設定する。
【0037】
ここで設定するデータは、主として図7の制御特性に対応するデータである。すなわち図7に示す、予備加熱温度θ1、融解温度θ2、接合温度θ3、凝固温度θ4などの温度データと、ヒータチップ30の位置を設定するための位置データ、接合温度保持時間(t1)、仕上がり位置保持時間(t2)などである。位置データは、昇降ヘッドの復帰(待機)位置q1、接触検出位置q2、沈み込み検出位置q3、仕上がり位置q4、などである。
【0038】
またこの実施例では、接触検出位置q2はヒータチップ30がワーク52に接触してヒータチップ30と一体化した板38が昇降ヘッド26の内底壁から微少な上昇量xだけ上昇したことにより検出するから、この上昇量xもデータとして設定する。さらにこの接触検出した時には昇降ヘッド26を目標沈み込み量である所定量Aだけ下降させて、ワーク52に対してヒータチップ30を下向きに付勢する(図5)。従ってこの所定量Aもデータとして設定しておく。なおこの実施例では、この所定量Aはヒータチップのワーク52に対する適正な沈み込み量(仕上がり位置q4)より大きく設定しておく。
【0039】
データの設定が終わると、主コントローラ10のCPUからなる制御部10は図3の状態で変位計40の出力をゼロにセットする(図8のステップS100)。この時はロッド28は板38が昇降ヘッド26の内底壁に当接することによってストッパとして機能することにより下限位置に係止される。すなわち機械的ストップ状態である。オペレータが表示パネル20に表示されたスタートスイッチ(図示せず)を押す(触れる)ことにより、制御部10Aはハンダ付け動作を開始する。まずモータ25を駆動させて昇降ヘッド26を下降させると共に、ヒータチップ20を予備加熱温度θ1に加熱する(ステップS102、図7の(1))。
【0040】
ヒータチップ30がワーク52に当接すると変位計40の出力が変化を開始する。すなわち出力値が増加する。この出力が前記の接触検出用の上昇量xに到達すると主コントローラ10の制御部10Aはヒータチップ30がワーク52に接触したと判定する(ステップS104)。図4はこの状態を示している。この時点から制御部10Aはモータ25をフィードバック制御に切換える。すなわち主コントローラ10が内蔵するモータドライバ10Bは、制御部10Aが出力する指令値に基づいて変位計40の出力をこの指令値に一致させるようにモータ25をフィードバック制御する。
【0041】
制御部10Aは指令値として目標沈み込み量である所定量Aを出力するので、昇降ヘッド26は図4の位置(ヒータチップ30がワーク52に接触しさらに上昇量xだけ下降した位置)から、さらに下降させ変位計40の出力がこの所定量Aとなるまで下降させて停止する(ステップS104、図7の(2))。図5はこの状態を示している。この時にはロッド28およびヒータチップ30はコイルばね34の復元力によって下向きに付勢されている。
【0042】
制御部10Aはこの状態で電源部12に温度指令P1を送り、ヒータチップ30を融解温度θ2に加熱させる(ステップS106、図7の(3))。この加熱は、電源部12がヒータチップ30に温度指令P1に対応する電流を供給することにより行われる。ヒータチップ30の発熱によりワーク52が融解温度θ2に加熱されると、ハンダが速やかに融解する。この温度θ2は接合温度θ3(無鉛ハンダでは約250℃)より高温であり、例えば約400℃に設定される。このためヒータチップ30からワーク52のプリント基板やリード線への伝熱に対してワーク52のハンダは極めて短時間で融解する。従ってプリント基板やリード線に熱的悪影響が及ばない。
【0043】
ハンダが融解するとヒータチップ30は沈み込み始める。検出器40がこの沈み込みを検出すると主コントローラ10の制御部10Aはヒータチップ30の温度θを接合温度θ3にするための温度指令P1を電源部12に送る(ステップS110、図7の(4)、(5))。また制御部10Aは、この沈み込み検出から接合温度保持時間t1の計時を開始する(図7の(6))。
【0044】
ハンダの融解によるヒータチップ30の最大下降量Bは、ワーク52を押し潰した状態すなわちプリント基板の電極とリードが直接接触している状態、が最大となる。ステップS104(図7の(2))における昇降ヘッド26の下降量(所定量A)がこの最大下降量Bより大きければヒータチップ30はこの最大下降量Bまで下降する。図6はこの場合を示している。この時には板38が昇降ヘッド26の内底壁との間に僅かな間隙(A−B)をあけ停止している。
【0045】
主コントローラ10の制御部10Aは接合温度保持時間t1の経過に基づいて(ステップS112)、昇降ヘッド26を仕上がり位置q4に上昇させる(ステップS114、図7の(7))。この仕上がり位置q4は、ワーク52の電極とリード線との間から外へ押出された溶融ハンダを吸い戻して電極とリード線との間にハンダを流入させハンダ付け状態を向上させる位置である。
【0046】
この仕上がり位置q4にするための昇降ヘッド26の上昇量(移動量)aは、次のように設定すればよい。すなわちこの上昇中にヒータチップ30が板(ストッパ)38に当たるまでの復帰量bとの差(a−b)が、ヒータヘッドの下限位置(沈み込み位置)を基準とした仕上がり位置q4の高さとなるようにaを設定すればよい。
【0047】
主コントローラ10の制御部10Aはこの時点から仕上がり位置保持時間t2の計時を開始する(ステップS114、(7)、(8))。この時間t2の経過により、ヒータチップ30の加熱を終了し、冷却を開始する(ステップS116、118、(8)、(9))。この冷却には自然冷却、空冷、液冷など適宜の方式が用いられる。
【0048】
主コントローラ10の制御部10Aはヒータチップ30がハンダ凝固温度θ4になると(ステップS120、(10))、昇降ヘッド26を上昇させて図3に示す初期位置に戻す(ステップS122、(11))。そしてワーク52を入れ替えて以上の動作を繰り返す。
【0049】
次に図9を用いてハンダ付け動作を説明する。予備加熱したヒータチップ30がワーク52に接触し昇降ヘッド26をさらに所定量A下降した時(図4)、すなわち図8に示すステップS100〜S104の動作を終了した時には、ハンダは未だ溶融していないのでヒータチップ30はワーク52に進入しない。図9の(A)はこの状態を示している。ヒータチップ30が融解温度θ2に発熱してハンダ60が溶融すると、図9の(B)に示すように溶融ハンダ60Aの一部がリード線58と電極56との間から側方へ流出し、ヒータチップ30がコイルばね34の復元力により下向きに押されて下降する(ステップS106、108)。
【0050】
ヒータヘッド30の下降開始を変位計40で検出すると、接合温度θ3に下げて一定時間t1保持する(ステップS110、112)。この時間t1の保持によってハンダとワーク52とのハンダのなじみが促進しハンダ付け性能の向上が図れる。時間t1の経過後にヒータヘッド30を仕上がり位置q4に上昇させ、ワーク52からはみ出したハンダをハンダ接合面間に吸い戻し、被接合面間に適切な量のハンダを流入させる(ステップS114)。図9(C)はこの状態を示している。
【0051】
この状態に時間t2保持することにより、ハンダ接合面間へのハンダ流入を確実に行わせる(ステップS116)。そしてこの時間経過後に冷却を開始し、ハンダ凝固したら昇降ヘッド26を上方へ復帰させる(ステップS118〜122)。
【実施例2】
【0052】
図10は他の実施例のヒータチップの温度と位置を示す制御プロファイル図である。この実施例は、ハンダの融解に伴って下降するヒータチップ30の下限位置を仕上がり位置q4として保持し、凝固させるものである。
【0053】
すなわちヒータチップ30の沈み込みを検出して(図10の(4))、ヒータチップ温度θを接合温度θ3に下降させると共に(図10の(5))、接合温度保持時間(t1)の計時を開始する(図10の(6))。そして仕上がり位置q4(下限位置)に下降したら(図10の(7))、保持時間(t1)経過してヒータチップ温度θが接合温度θ3になっていることを確認して、さらに仕上がり位置保持時間(t2)の計時を行い(図10の(8))、時間(t2)経過すると冷却を開始するものである(図10の(9))。
【0054】
その後はハンダが凝固温度θ4になると昇降ヘッド14を上昇させて次のワーク52に入れ替えて以上の動作を繰り返すものである。この実施例では時間t1とt2を別々に設定しているが、これらの合計時間(t1+t2)を設定しておいてもよい。なおこの図10では図7と対応する位置には同一符号を付したので、その説明は繰り返さない。
【符号の説明】
【0055】
10 コントローラ
12 電源部
14 溶接器
20 表示パネル(設定値入力手段)
22 基台
26 昇降ヘッド
28 ロッド
30 ヒータチップ
36 キャップ(ばね力調節手段)
38 板(下限位置設定部材、ストッパ)
40 変位計
A 所定量(目標沈み込み量)
θ1 予備加熱温度
θ2 融解温度
θ3 接合温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、
a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、
b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、
c)所定時間後にハンダを凝固させる、
ことを特徴とするリフローハンダ付け方法。
【請求項2】
基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、
a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、
b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、
b−1)所定時間後にヒータチップを仕上がり位置まで上昇させ、
c)所定時間後にハンダを凝固させる、
ことを特徴とするリフローハンダ付け方法。
【請求項3】
基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け方法において、
a)ヒータチップをハンダ接合温度より高い融解温度にしてハンダを融解させた後、
a−1)このハンダの融解に伴って下降するヒータチップを仕上がり位置に保持し、
b)ヒータチップをハンダ接合温度に下げ、
c)所定時間後にハンダを凝固させる、
ことを特徴とするリフローハンダ付け方法。
【請求項4】
工程a)ではハンダが融解したことをヒータチップの沈み込みにより検出し、工程b)ではこの沈み込みに基づいてヒータチップをハンダ接合温度に下げる請求項1または2または3のリフローハンダ付け方法。
【請求項5】
工程a)では、予め予備加熱したヒータチップがワークに接触したことを検出してヒータチップを融解温度に加熱する請求項1または2または3のリフローハンダ付け方法。
【請求項6】
ヒータチップは昇降ヘッドに対して下向きに付勢されかつストッパで下限位置が規制され、ヒータチップが昇降ヘッドに対して前記下限位置から所定量だけ上昇したことから前記ヒータチップがワークに接触したことを検出する請求項1または2または3のリフローハンダ付け方法。
【請求項7】
ヒータチップは昇降ヘッドに対して下向きに付勢されかつストッパでその下限位置が規制され、ヒータチップの仕上がり位置を前記下限位置とした請求項3のリフローハンダ付け方法。
【請求項8】
工程a)でハンダの融解を検出した時点から所定の接合温度保持時間(t1)経過後にヒータチップを仕上がり位置へ上昇させる請求項2のリフローハンダ付け方法。
【請求項9】
ヒータチップを仕上がり位置に上昇させた後、さらに所定の仕上がり位置保持時間(t2)経過後に冷却開始する請求項2のリフローハンダ付け方法。
【請求項10】
基台に対して昇降可能な昇降ヘッドに保持したヒータチップを、ワークに押圧しながらリフローハンダ付けするリフローハンダ付け装置において、
昇降ヘッドの位置を指令する位置指令およびヒータチップの温度を指令する温度指令を出力する主コントローラと、
前記位置指令に基づいて昇降ヘッドの位置を制御する位置制御部と、
前記温度指令に基づいてヒータチップ温度を制御する温度制御部と、を備え、
前記主コントローラは、ヒータチップをワークに押圧しながらハンダ接合温度より高い融解温度に加熱した後、ハンダの融解に伴う昇降ヘッドの沈み込み開始に基づいてヒータチップをハンダ接合温度に下げ、所定時間後にハンダを凝固させることを特徴とするリフローハンダ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−167450(P2010−167450A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12160(P2009−12160)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】