説明

リモコンおよびリモコンシステム

【課題】アナログ音声信号をA/D変換して利用するリモコンにおいて、A/D変換時における中点電位の偏位量を製品ごとに検出し、D/A変換時に有効なノイズリダクション処理を実行できるようにする。
【解決手段】マイクロフォン13から入力されるアナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部14と、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部16とを有するリモコン2において、入力されるアナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときのA/D変換部14におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、上記A/D変換値の最大値と最小値とから上記中点電位に対する偏位量を求め、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を、上記デジタルデータをD/A変換するD/A変換部16におけるノイズリダクション処理用のデータとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリモコンおよびリモコンシステムに関し、より詳細には、入力されるアナログ音声信号をデジタルデータに変換して利用するリモコンと変換されたデジタルデータに基づくデータを送受信するリモコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽への湯張りや風呂の追い焚きなどのいわゆる風呂機能を備えた給湯装置には、その遠隔操作装置として、浴室に設置される浴室リモコンと、台所などの浴室以外の場所に設置される浴室外リモコンとが備えられている。
【0003】
これら浴室リモコンと浴室外リモコンとを有するリモコンシステムは、それぞれ給湯装置のコントローラ(制御部)と通信ケーブルで接続されており、リモコンの操作に応じて各リモコンで生成される制御信号が上記通信ケーブルを介して給湯装置のコントローラに与えられることによって給湯装置の遠隔操作ができるようになっている。
【0004】
また、これに関連して、浴室リモコンと浴室外リモコンとは給湯装置を介して相互に通信可能になっており、浴室リモコンで操作された内容が浴室外リモコンに反映される(たとえば、浴室リモコンで設定された給湯設定温度が浴室外リモコンにおいても給湯設定温度として設定・表示される)一方、浴室外リモコンで操作された内容も浴室リモコンに反映される(たとえば、浴室外リモコンで設定された給湯設定温度が浴室リモコンに給湯設定温度として設定・表示される)ようになっている。
【0005】
近年、このような浴室リモコンと浴室外リモコンの通信機能を利用して、各リモコンにマイクロフォンとスピーカを設けておき、浴室リモコンと浴室外リモコンとの間で音声通話ができるようにしたものや、浴室外リモコンに音響機器を接続する接続端子を設けておき、この接続端子を介して入力される音楽などの信号を浴室リモコンに送信し、浴室リモコンで聴取できるようにしたものなどが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
これらリモコンに付加された機能は、いずれもマイクロフォンや接続端子から入力されるアナログ音声信号をリモコン内のA/D変換器でデジタルデータに変換し、このデジタルデータで搬送波を変調して他方のリモコンに送信するとともに、搬送波を受信した他方のリモコンは、これを復調してデジタルデータを取り出し、当該リモコン内のD/A変換器でアナログ音声信号に変換して、スピーカから出力するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−277050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように入力されるアナログ音声信号をリモコン内のA/D変換器でデジタルデータに変換して利用するリモコンシステムには以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0009】
すなわち、このような構成を採用するリモコンシステムでは、マイクロフォンや接続端子から入力されるアナログ音声信号が無信号の場合であっても、A/D変換器の電源電圧のリップルや回路のばらつきなどを原因として、A/D変換器の出力に数LSB程度の揺れが発生する。そのため、このようなデジタルデータをそのままD/A変換してスピーカから出力すると、「パリパリ」、「ザラザラ」といったノイズとなって聞こえてしまう。特に、A/D変換器の分解能が低い場合には、このノイズ音が顕著に現れる傾向がある。
【0010】
そのため、このようなリモコンシステムでは、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換器に対して何らかのノイズ対策(ノイズリダクション処理)を行うことが望まれるが、上述した原因に起因するノイズの発生は、個々のリモコンに固有の現象(製品ごとに異なる個体差)であり、一律に画一的なノイズリダクション処理を行ったのでは有効なノイズ対策にならないおそれがある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、アナログ音声信号をA/D変換して利用するリモコンにおいて、A/D変換時における中点電位の偏位量を製品ごとに検出し、D/A変換時に有効なノイズリダクション処理を実行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るリモコンは、アナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部とを有するリモコンにおいて、上記アナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときの上記A/D変換部におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、上記A/D変換値の最大値と最小値とから上記中点電位に対する偏位量を求め、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を上記リモコンのD/A変換部におけるノイズリダクション処理用のデータとして用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るリモコンシステムは、アナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部を有する第1のリモコンと、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部を有する第2のリモコンとが通信接続されたリモコンシステムにおいて、上記第1のリモコンに入力されるアナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときの上記第1のリモコンのA/D変換部におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、上記A/D変換値の最大値と最小値とから上記中点電位に対する偏位量を求め、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を上記第2のリモコンに送信し、これらの送信されたデータを上記第2のリモコンのD/A変換部におけるノイズリダクション処理用のデータとして用いることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明に係るリモコンおよびリモコンシステムは、両者に共通する構成として、リモコンに備えられたA/D変換部に入力されるアナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときの上記A/D変換部におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、上記A/D変換値の最大値と最小値とから上記中点電位に対する偏位量を求めて、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を、D/A変換部でのノイズリダクション処理用のデータとして用いている。つまり、本発明は、A/D変換部に入力されるアナログ音声信号が無信号入力状態となる状況を作為的に作り出して、そのときのA/D変換値の平均値を中点電位とみなし、また、このときのA/D変換値の最大値と最小値はA/D変換時の揺れ幅を示すので中点電位に対する偏位量とみなすようにしている。これにより製品固有の原因によるA/D変換の揺れを踏まえて、中点電位とそれに対する偏位量が得られるので、これらに基づいてD/A変換部でのノイズリダクション処理を行うことで、個々の製品の個体差に応じて適切なノイズリダクション処理を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作為的に作り出したA/D変換部への無信号入力状態を基準にしてA/D変換部の中点電位と中点電位に対する偏位量を求め、そのデータをD/A変換時のノイズリダクション処理の基礎データとしているので、A/D変換部によるA/D変換時の個体差を加味して最適なノイズリダクション処理を行うことができ、画一的なノイズリダクション処理を行う場合に比して、より精度の高いノイズリダクション処理を行うことができる。その結果、本発明に係るリモコンおよびリモコンシステムでは、D/A変換時のノイズを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るリモコンシステムの概略構成の一例を示す説明図である。
【図2】同リモコンシステムにおける浴室外リモコンの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るリモコンシステムは、風呂機能を備えた給湯装置の遠隔操作に用いられる複数のリモコンを有して構成されており、本実施形態では、図1に示すように、浴室に設置される浴室リモコン1と、浴室以外の場所(たとえば、台所)に設置される浴室外リモコン2と、これらリモコン1,2の制御対象である給湯装置3とを主要部として構成されている。
【0018】
そこで、まずリモコン1,2の制御対象である給湯装置3から説明する。
給湯装置3は、上述したように風呂機能を備えた給湯装置で構成されている。ここで風呂機能とは、図示しない浴槽への湯張り(浴槽への注湯)機能や、浴槽に張られたお湯の追い焚き(または浴槽への足し湯)機能などの総称であり、図1に示す給湯装置3は、これら湯張り、追い焚き機能のうち少なくとも1の機能を備えた給湯装置で構成されている。
【0019】
給湯装置3には、当該給湯装置3における給湯機能や風呂機能を制御するためのコントローラ(給湯装置の制御部)4が備えられており、上記浴室リモコン1と浴室外リモコン2とが通信ケーブル5を介してこのコントローラ4に接続され、これら各リモコン1,2から与えられる制御信号に基づいて、コントローラ4が給湯装置3の各部の動作を制御するように構成されている。なお、風呂機能を備えた給湯装置において、給湯機能や風呂機能を実現するための基本的な構成(たとえば、湯水を加熱するための熱交換器や熱交換器を加熱する燃焼部の構成など)は周知であるので、ここではこれらの基本的な構成についての説明は省略する。
【0020】
次に、浴室リモコン1および浴室外リモコン2について説明する。
浴室リモコン1および浴室外リモコン2は、いずれも給湯装置3を遠隔操作するために設けられた操作装置であって、これら浴室リモコン1および浴室外リモコン2は、上述したように、通信ケーブル5を介してそれぞれが給湯装置3のコントローラ4と接続されており、給湯装置3およびリモコン1,2同士間で通信できるようになっている。つまり、浴室リモコン1と浴室外リモコン2は、給湯装置3を介して相互に通信接続されている。なお、この給湯装置3を介しての浴室リモコン1と浴室外リモコン2との通信接続は、給湯装置3のコントローラ4を介して行う場合と、給湯装置3に通信接続用の端子台(具体的には、コントローラ4と通信ケーブルで接続された端子台)を設けて、この端子台を介してコントローラ4と端子台に接続される全てのリモコンとを通信接続する場合(つまり、コントローラ4を介さずにリモコン同士を通信接続する場合)とがあるが、いずれの方法で通信接続されていてもよい。
【0021】
このように浴室リモコン1と浴室外リモコン2とが通信接続されていることから、たとえば、浴室外リモコン2で給湯装置3に対する遠隔操作が行われると、その操作に応じて浴室外リモコン2で生成された制御信号は、通信ケーブル5を介して、給湯装置3のコントローラ4と浴室リモコン1の双方に与えられ、コントローラ4および浴室リモコン1の双方に当該制御信号の内容がそれぞれ反映される。
【0022】
具体的には、たとえば、浴室外リモコン2で給湯設定温度の変更操作が行われると、その操作に応じて生成された制御信号(給湯設定温度の変更を指示する制御信号)は、給湯装置3のコントローラ4および浴室リモコン1のそれぞれに与えられ、コントローラ4および浴室リモコン1に給湯設定温度として保持されているデータが変更される。そのため、給湯装置3のコントローラ4では、この後はこの変更後のデータを新たな給湯目標温度として給湯制御が行われる。また、浴室リモコン1では、変更後のデータが新たな給湯設定温度として表示されるとともに、その後における給湯設定温度の変更操作(給湯設定温度の上昇または下降の操作)は、この変更後のデータを基準として受け付け処理されるようになる。
【0023】
なお、浴室リモコン1において給湯装置3に対する遠隔操作が行われたときも上述した浴室外リモコン2で給湯装置3に対する遠隔操作が行われときと同様に、その操作によって浴室リモコン1で生成された制御信号がコントローラ4および浴室外リモコン2の双方に反映される。
【0024】
そして、本実施形態に示す浴室リモコン1および浴室外リモコン2では、浴室リモコン1と浴室外リモコン2とが通信接続されていることを利用して、浴室リモコン1と浴室外リモコン2との間で音声通話ができるようになっている。
【0025】
具体的には、この音声通話機能を実現するために、本実施形態に示す浴室リモコン1および浴室外リモコン2には、それぞれ、音声送信用の回路として、音声を入力するためのマイクロフォンと、このマイクロフォンで得られた電気信号(アナログ音声信号)をデジタルデータに変換するA/D変換部と、このA/D変換部で得られたデジタルデータで送信用の搬送波を変調する変調回路とが設けられるとともに、音声受信用の回路として、給湯装置3を経由して他のリモコンから受信した搬送波を復調する復調回路と、復調回路で得られたデジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部と、D/A変換部で得られたアナログ音声信号を増幅する増幅回路と、増幅回路で増幅されたアナログ音声信号を外部に出力するスピーカとが設けられている。
【0026】
したがって、たとえば、浴室外リモコン2で音声通話を開始させる操作が行われ、この状態で、浴室外リモコン2のマイクロフォンに音声が入力されると、当該音声はマイクロフォンでアナログ音声信号に変換されるとともに、A/D変換部でデジタルデータに変換され、その後に変調回路によって変調された搬送波が浴室リモコン1に送信される。つまり、浴室外リモコン2のA/D変換部で生成されたデジタルデータは、給湯装置3を経由して浴室リモコン1に送信される。
【0027】
これに対して、浴室リモコン1では、通信ケーブル5を介して受信した搬送波を復調回路で復調してデジタルデータが取り出され、この取り出されたデジタルデータがD/A変換部でアナログ音声信号に変換され、さらに増幅回路で増幅されてスピーカから人が聴取可能な音声として出力される。なお、この音声通話機能は、浴室リモコン1側から通話を行う場合も上述したのと同様の手順で行われる。すなわち、浴室リモコン1のマイクロフォンに入力された音声は、浴室リモコン1に設けられたマイクロフォンでアナログ音声信号に変換されるとともに、A/D変換部でデジタルデータに変換された後に変調回路を介して浴室外リモコン2に向けて送信される。
【0028】
また、本実施形態に示すリモコンシステムでは、このような浴室リモコン1と浴室外リモコン2との音声通話機能(具体的には、各リモコン1,2に備えられる変調回路、復調回路など)を利用して、浴室外リモコン2にデジタルオーディオプレーヤなどの音響機器を接続し、この音響機器から出力される音楽など(アナログ音声信号)をリモコン1,2間の通信機能を用いて浴室リモコン1に送信し、浴室リモコン1で聴取できるようにされている。
【0029】
図2は、このような機能に関連した浴室外リモコン2の概略構成を示している。
この図2に示すように、本実施形態の浴室外リモコン2は、同リモコン2の各部を制御するマイコンを有する制御部10と、給湯装置3に対する遠隔操作指示などを入力するための各種操作スイッチで構成される操作部11と、給湯装置3の状態などを表示するための表示デバイスで構成される表示部12と、上述した音声通話機能に用いるマイクロフォン13と、上記マイクロフォン13から入力されるアナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部14と、上記変調回路および復調回路で構成される変復調回路15と、この変復調回路15で復調されたデジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部16と、上記D/A変換部16から出力されるアナログ音声信号を増幅する増幅回路17と、この増幅回路17で増幅されたアナログ音声信号を外部に出力するスピーカ18とを備えるとともに、音響機器6を接続するための接続端子7と、この接続端子7から入力されるアナログ音声信号をデジタルデータに変換するためのA/D変換部8とを備えている。なお、本実施形態では、上述したA/D変換部8,14およびD/A変換部16は集積化されたデジタル制御デバイス19に備えられている。
【0030】
ここで、上記音響機器6から出力されるアナログ音声信号としては、たとえば、音響機器6に設けられるヘッドホン出力のように、音響機器6側で出力レベルの調整(音量調整)ができるアナログ音声信号が用いられる。そのため、上記接続端子7には、音響機器6のヘッドホン出力と接続可能な形態の端子(たとえば、ステレオミニジャック)が採用されている。
【0031】
そして、浴室リモコン1で音響機器6から出力される音楽等を聴取する場合、上記接続端子7と音響機器6のヘッドホン出力とをケーブル9で接続し、この状態で音響機器6を再生する。これにより、音響機器6のヘッドホン出力から出力されるアナログ音声信号が接続端子7を介してA/D変換部8に供給され、A/D変換部8でデジタルデータに変換された後に変復調回路15で変調された搬送波が浴室リモコン1に送信される。これに対して、浴室リモコン1では、受信した搬送波を音声通話と同様の手順で復調、D/A変換、増幅してスピーカから出力することにより、浴室リモコン1において音楽などの聴取ができるようになっている。
【0032】
なお、浴室リモコン1の構成については特に図示しないが、上述した接続端子7と、この接続端子7から入力されるアナログ音声信号をA/D変換するA/D変換部8を備えていないだけで、その他の構成は浴室外リモコン2と共通している。
【0033】
しかして、このように構成された浴室リモコン1および浴室外リモコン2について、本実施形態では、電源電圧のリップルや回路のばらつきなどに起因してA/D変換部に発生するA/D変換値の揺れによってD/A変換時に発生するノイズを抑制するために、A/D変換部の中点電位とこの中点電位に対する偏位量を以下の手順で求めるようにしている。
【0034】
以下、この点について、音声通話用のA/D変換部14を例に説明する。
A/D変換部14の中点電位とその偏位量を求める場合、浴室外リモコン2の制御部10は、まず、A/D変換部14に入力されるアナログ音声信号が無信号入力状態となるようにする。
【0035】
具体的には、たとえば、表示部12に「音を立てないで下さい」といった趣旨の表示を行わせて、マイクロフォン13が音を拾わない静粛な状態を保つように注意喚起を行い、マイクロフォン13からの入力が無信号入力状態となるようにする。あるいは、図2に示すように、マイクロフォン13からA/D変換部14へのアナログ音声信号の入力ライン上にミュート回路20を設けておき、制御部10の制御でこのミュート回路20を動作させ、A/D変換部14に対する入力を遮断して強制的に無信号入力状態にする。
【0036】
このようにして、A/D変換部14が無信号入力状態となると、制御部10はこの状態で、A/D変換部14でのA/D変換値を求める。具体的には、無信号入力状態が継続している状態で、所定時間内におけるA/D変換値の最大値と最小値とこの間の平均値とを求める。
【0037】
そして、制御部10は、これらの各値を求めると、平均値をA/D変換時の中点電位とするとともに、最大値と最小値の範囲を上記中点電位に対する偏位量とし、これら中点電位と中点電位に対する偏位量をD/A変換時のノイズリダクション処理に用いるデータとする。
【0038】
具体的には、A/D変換部14で変換されたデジタルデータを浴室外リモコン(第1のリモコン)2のD/A変換部16でアナログ音声信号に変換する場合には、これらのデータをD/A変換部16でのノイズリダクション処理に用いるデータとして使用する。一方、A/D変換部14で変換されたデジタルデータを浴室リモコン(第2のリモコン)1のD/A変換部(図示せず)でアナログ音声信号に変換する場合には、制御部10は、これらのデータを浴室リモコン1に送信する。この場合、浴室リモコン1の制御部(図示せず)が、当該データを浴室リモコン1のD/A変換部でのノイズリダクション処理に用いるデータとして使用する。
【0039】
ここで、このD/A変換時のノイズリダクション処理としては、たとえば、D/A変換部においてデジタルデータをアナログ音声信号に変換する際に、中点電位とその変位量の範囲内にあるデータは、1つの同じデジタルデータして扱うなどの処理が行われる。
【0040】
なお、音響機器6から入力されるアナログ音声信号をA/D変換部8でデジタルデータに変換する場合も上述したA/D変換部14における処理と同じ処理、つまり、無信号入力時におけるA/D変換値の最大値と最小値と平均値とを求め、その平均値をA/D変換時の中点電位とするとともに、その最大値と最小値を中点電位に対する偏位量としておき、A/D変換部8で生成されたデジタルデータをD/A変換する際には、この中点電位とその偏位量をD/A変換時のノイズリダクション処理に用いる。この点は、浴室リモコン1のA/D変換部(図示せず)についても同様である。
【0041】
このように、本実施形態に示すリモコンシステムでは、A/D変換部に入力されるアナログ音声信号が無信号入力状態となる状況を作為的に作り出して、そのときのA/D変換値の平均値を中点電位とみなし、また、このときのA/D変換値の最大値と最小値は中点電位に対する偏位量とみなすようにしているので、製品固有の原因によるA/D変換の揺れを考慮に入れて、中点電位とそれに対する偏位量を求めることができる。そして、これらのデータに基づいてD/A変換部でのノイズリダクション処理を行うことにより、A/D変換部の個体差に応じて適切なノイズリダクション処理ができるようになり、D/A変換の際のノイズを少なくすることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0043】
たとえば、上述した実施形態では、接続端子7とA/D変換部8との間およびマイクロフォン13とA/D変換部14の間にそれぞれアナログ音声信号を強制的に遮断するミュート回路20,20を設けた場合を示したが、このミュート回路20はそのいずれか一方または双方を省略して構成することも可能である。
【0044】
また、上述した無信号入力状態におけるA/D変換部の中点電位等の測定は、リモコンの生産工程やリモコンを施工する際の試運転時などに予め行っておくようにすることができるほか、ユーザによる操作によって実施されるようにしたり、あるいは、一定の条件を満たすことで自動的に実施されるようにプログラムしておくなど中点電位とその変位量のデータが適宜更新できるようにするなど、その実施時期については任意に設計可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 浴室リモコン
2 浴室外リモコン
3 給湯装置
4 コントローラ
5 通信ケーブル
6 音響機器
7 接続端子
8 A/D変換部
10 制御部
11 操作部
12 表示部
14 A/D変換部
15 変復調回路
16 D/A変換部
18 スピーカ
20 ミュート回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部とを有するリモコンにおいて、
前記アナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときの前記A/D変換部におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、前記A/D変換値の最大値と最小値とから前記中点電位に対する偏位量を求め、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を前記リモコンのD/A変換部におけるノイズリダクション処理用のデータとして用いることを特徴とするリモコン。
【請求項2】
アナログ音声信号をデジタルデータに変換するA/D変換部を有する第1のリモコンと、デジタルデータをアナログ音声信号に変換するD/A変換部を有する第2のリモコンとが通信接続されたリモコンシステムにおいて、
前記第1のリモコンに入力されるアナログ音声信号を無信号入力状態とし、このときの前記第1のリモコンのA/D変換部におけるA/D変換値の平均値を中点電位とするとともに、前記A/D変換値の最大値と最小値とから前記中点電位に対する偏位量を求め、これら中点電位および中点電位に対する偏位量を前記第2のリモコンに送信し、これらの送信されたデータを前記第2のリモコンのD/A変換部におけるノイズリダクション処理用のデータとして用いることを特徴とするリモコンシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178776(P2012−178776A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41369(P2011−41369)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】