説明

リモコン送信機、リモコン受信機、カメラ、および撮影システム

【課題】カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めること。
【解決手段】リモコン送信機10は、通信パケットを無線送信する通信手段103と、リモコン受信機20側に対する指示、および当該指示が前回送信の通信パケットによる指示と同一か否かを示す第1識別情報を含む通信パケットを生成するパケット生成手段108と、送信指示に応じて、同一の指示を含む通信パケットを連続して所定回数送信するように通信手段103を制御する制御手段108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン送信機、リモコン受信機、カメラ、および撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの電子機器間でパケット通信を行う技術が知られている(特許文献1参照)。一般に、受信側の機器は送信側の機器に対して正常に受信したことを知らせるために返信パケット(ACKパケット)を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のカメラに対して指示を送信するリモコン送信機に上記通信技術を適用する場合、各カメラからの返信パケットを待つことによって信頼性は高まるものの、指示の同時性が損なわれるという問題があった。すなわち、あるカメラへ指示を送信後、該カメラからの返信パケットを待って次のカメラへ指示を送信するので、カメラへ指示が届いたことを確認できるものの、先に指示を受けるカメラと後から指示を受けるカメラとの間で動作タイミングが異なってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明によるリモコン送信機は、通信パケットを無線送信する通信手段と、リモコン受信機側に対する指示、および当該指示が前回送信の通信パケットによる指示と同一か否かを示す第1識別情報を含む通信パケットを生成するパケット生成手段と、送信指示に応じて、同一の指示を含む通信パケットを連続して所定回数送信するように通信手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2)本発明によるリモコン受信機は、無線送信された通信パケットを受信する通信手段と、受信した通信パケットに含まれる指示が前回受信した通信パケットに含まれた指示と同一か否かを判定する判定手段と、判定手段により同一指示が判定された場合に当該指示に応じた処理を禁止し、同一指示が判定されない場合には受信した通信パケットに含まれる指示に応じた処理を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
(3)本発明による撮影システムは、請求項4に記載のリモコン送信機と、請求項7または8に記載のカメラとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態によるカメラシステムの構成を説明する図である。
【図2】カメラ、無線アダプタおよびリモコン送信機の構成を例示するブロック図である。
【図3】通信パケットを例示する図である。
【図4】パケット内の「Data」を説明する図である。
【図5】リモコン送信機CPUが行う処理を例示するフローチャートである。
【図6】撮影終了コマンドがセットされた「Data」を例示する図である。
【図7】無線アダプタのCPUが行う処理を例示するフローチャートである。
【図8】変形例3のカメラシステムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるカメラシステムの構成を説明する図である。カメラシステムは、カメラ30A〜カメラ30Cと、リモコン送信機10とで構成される。カメラ30A〜カメラ30Cには、それぞれ無線アダプタ20A〜無線アダプタ20Cが装着されている。
【0009】
リモコン送信機10は、操作部材107a、107b、107cを有する。リモコン送信機10は、操作部材107a、107b、107cの操作に応じてカメラ30A〜カメラ30Cに対して撮影指示などの操作信号を無線送信する。無線アダプタ20A〜無線アダプタ20Cは、リモコン送信機10からの無線信号を受信し、それぞれが復調した操作信号を装着されているカメラ30A〜30Cのいずれかへ送る。
【0010】
操作部材107aは、レリーズボタンに相当する押しボタンであり、操作部材107bは、操作対象カメラを切り替えるための切替スイッチである。操作部材107cは、後述する単写と連写との切替、およびバルブ撮影設定スイッチである。
【0011】
切替スイッチ107bが「ALL」に設定されている場合のリモコン送信機10は、全てのカメラ30A〜カメラ30Cを指示対象に無線送信を行う。切替スイッチ107bが「A」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ30Aを指示対象に無線送信を行う。また、切替スイッチ107bが「B」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ30Bを指示対象に無線送信を行う。さらに、切替スイッチ107bが「C」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ30Cを指示対象に無線送信を行う。
【0012】
本実施形態は、切替スイッチ107bが「ALL」に設定されているリモコン送信機10が無線送信する場合に特徴を有するので、以降は当該使用態様を中心に説明する。なお、図1に例示したシステムは、3台のカメラ30と1台のリモコン送信機10で構成するカメラシステムであるが、カメラの数は3台でなくてもよく、5台でも10台でもよい。
【0013】
図2は、カメラ30、無線アダプタ20およびリモコン送信機10の構成を例示するブロック図である。図2において、カメラ30はカメラ30A〜カメラ30Cと同様に構成される。無線アダプタ20は、無線アダプタ20A〜無線アダプタ20Cと同様に構成される。無線アダプタ20およびリモコン送信機10の双方に共通に含まれるブロックは、同一符号を付して説明する。
【0014】
リモコン送信機10は、アンテナ101と、変調送信回路103と、発振器106と、操作部材107と、CPU108とを含む。リモコン送信機10のCPU108は、操作部材107aから操作信号を受けると、パケットと呼ばれる送信データの塊を生成して変調送信回路103へ出力する。変調送信回路103は、該パケットを所定の周波数の無線伝送可能な信号に変調した後、搬送波の形でアンテナ101を介して無線アダプタ20へ送信する。所定の周波数は、発振器106により決められる。
【0015】
無線アダプタ20は、アンテナ101と、周波数ダウンコンバータ102と、変調送信回路103と、復調回路104と、発振器106と、CPU108とを含む。無線アダプタ20のCPU108は、アンテナ101を介して搬送波の形でパケットを受信する。受信した搬送波は、まず周波数ダウンコンバータ102に入力される。周波数ダウンコンバータ102は、受信したパケットを所定の低周波数のデータにダウンコンバートした後、復調回路104へ出力する。この所定の周波数は発振器106により決められる。復調回路104では、入力された信号をデジタル通信パケットに復調してCPU108へ出力する。
【0016】
CPU108は、入力されるパケットを先頭から読み込んで解析し、解析したコマンド情報をカメラ30のCPU306へ送信する。このとき、CPU108は、パケット内に含まれる同期用データ(後述する「SYNC」4b)が、あらかじめ設定されているデータ列と一致した場合のみ、カメラ30へコマンド情報を出力する。これによって、他の通信と混信した場合の誤動作(たとえば、他の機器を指示対象とする通信を受信したにもかかわらず、カメラ30へコマンド情報を送信すること)を防止することができる。
【0017】
カメラ30は、撮影レンズ301と、シャッタ302と、撮像素子303と、測光センサ304と、シャッタ駆動装置305と、CPU306と、操作部材(レリーズスイッチ含む)307とを備える。カメラ30のCPU306は、操作部材307からの操作信号に応じてカメラ制御を行う他、無線アダプタ20のCPU108からのコマンド情報に応じてカメラ制御を行うように構成されている。
【0018】
上述した切替スイッチ107bが「ALL」に設定されている場合のリモコン送信機10のCPU108は、複数のカメラ30A〜カメラ30Cを指示対象に、いわゆるブロードキャスト送信を行う。ブロードキャスト送信では、1対多数の送信であるため、受信側の機器は返信パケット(ACKパケット)を送信しない。以下、リモコン送信機10のCPU108が行う制御について説明する。
【0019】
−パケット生成−
リモコン送信機10のCPU108は、押しボタン107aから押下操作信号が入力されると、以下のように通信パケットを生成する。図3は、通信パケットを例示する図であり、デジタル通信のフォーマットに則したものである。図3において、「プリアンブル」4aは、通信の最初に送信する助走部分に相当するデータであり、受信側の機器(本例では無線アダプタ20A〜無線アダプタ20C)においてキャリア検出やAGC、位相基準の検出のために用いられる。受信側の機器は、「プリアンブル」4aを検出すると以降の信号の受信を可能にする。「プリアンブル」4aは、例えば0,0,0,0・・・のような固定ビットパターンが設定される。
【0020】
「SYNC」4bは、「プリアンブル」4aに続くパケットの先頭部分に付加される同期用データであり、SFDとも呼ばれる。「SYNC」4bは、パケットの開始を検出するためのパターンであり、通常は1バイト(2バイトでもよい)である。通信方式によってあらかじめ標準となる「SYNC」4bが定められているので、所定の受信期間内に受信側の機器が受信デコードした信号が当該標準の「SYNC」4bと一致する場合にのみ、受信側の機器において以降の受信が有効になる。
【0021】
「length」4cは、通信データ容量(バイト数)を示すデータであり、パケットの情報量を意味する。受信側の機器は、「SYNC」4bを検出後に「length」4cで示されたデータ数をデコードして1回の受信を終了する。
【0022】
「Header」4dは、発信元(本例ではリモコン送信機10)と送信先(本例では指示対象のカメラに装着されている無線アダプタ20A〜無線アダプタ20C)を指定するアドレス、パケットの種類、および通し番号などを示すデータによって構成される。切替スイッチ107bが「ALL」に設定されている場合のCPU108は、送信先を指定するアドレスに不定を示すIDを含める。送信先アドレスを不定とする送信は、ブロードキャスト送信に該当する。
【0023】
切替スイッチ107bが「A」に設定されている場合のCPU108は、送信先を指定するアドレスに無線アダプタ20A(すなわちカメラ30A)を示すIDを含める。同様に、切替スイッチ107bが「B」に設定されている場合のCPU108は、送信先を指定するアドレスに無線アダプタ20B(すなわちカメラ30B)を示すIDを含める。さらに、切替スイッチ107bが「C」に設定されている場合のCPU108は、送信先を指定するアドレスに無線アダプタ20C(すなわちカメラ30C)を示すIDを含める。
【0024】
「Data」4fは、指示対象のカメラに対する指示内容を示すコマンド情報f1、当該コマンドによる撮影起動が何回目であるかを示す情報f2、当該パケットの送信回数を示す情報f3、およびその他の必要な情報f4を表すデータ群によって構成される。図4は、「Data」4fの内容を説明する図である。
【0025】
「Check Data」4gは、パケットの最後に位置するチェック用データである。たとえば、CRCによる誤り検出データ生成アルゴリズムで生成された2バイトのデータによって構成される。受信側の機器は、「Check Data」4gに基づいてエラー判定を行い、エラーを判定した場合には当該受信パケットを廃棄するように構成されている。
【0026】
−リモコン送信機10のCPU108が行う処理−
CPU108が行う処理の流れについて、図5に例示するフローチャートを参照して説明する。CPU108は、リモコン送信機10に不図示の電池が装填されると、図5による処理を起動する。
【0027】
図5のステップS11において、CPU108は、フラグ類の初期化(クリア)を行ってステップS12へ進む。ただし、上記「Data」4fに含める情報f2に対応する撮影番号P(撮影起動の回数は撮影回数を示すことから、本説明では撮影番号Pと呼ぶ)の計数値については初期化しない。ステップS12において、CPU108は、撮影起動を検出してステップS13へ進む。CPU108は、押しボタン107aからの押下操作信号を撮影起動信号として検出する。
【0028】
ステップS13において、CPU108は単写か否かを判定する。CPU108は、単写設定されている場合にステップS13を肯定判定してステップS14へ進む。CPU108は、単写設定されていない場合にはステップS13を否定判定してステップS15へ進む。単写とは、押しボタン107aの押下操作に応じてカメラ30が1コマ撮影することをいう。CPU108は、操作部材107cの操作位置に基づいて単写、後述する連写、およびバルブ撮影設定を判定する。
【0029】
ステップS14において、CPU108は単写フラグに1をセットしてステップS18へ進む。ステップS15において、CPU108は連写フラグに1をセットしてステップS16へ進む。連写とは、押しボタン107aが押下操作されている間にカメラ30が複数コマ続けて撮影することをいう。CPU108は、押しボタン107aの押下操作に応じて連写撮影開始を指示し、押しボタン107aの押下解除に応じて連写撮影終了を指示する。連写撮影開始の指示を受けたカメラ30は、連写撮影終了の指示を受けるまで、所定のコマ速度で繰り返し撮影を行う。上述したように、CPU108は操作部材107cの操作位置に基づいて単写、連写および後述するバルブ撮影設定を判定する。
【0030】
ステップS16において、CPU108はバルブ撮影か否かを判定する。CPU108は、バルブ撮影設定されている場合にステップS16を肯定判定してステップS17へ進む。CPU108は、バルブ撮影設定されていない場合にはステップS16を否定判定してステップS18へ進む。バルブ撮影とは、押しボタン107aが押下操作されている間露光して撮影することをいう。CPU108は、押しボタン107aの押下操作に応じて露光開始を指示し、押しボタン107aの押下解除に応じて露光終了を指示する。露光開始の指示を受けたカメラ30は、露光終了の指示を受けるまで露光を継続して撮影を行う。上述したように、CPU108は操作部材107cの操作位置に基づいて単写、連写およびバルブ撮影設定を判定する。
【0031】
ステップS17において、CPU108はバルブフラグに1をセットしてステップS18へ進む。ステップS18において、CPU108は、送信回数nを初期値1にセットしてステップS19へ進む。送信回数nは、送信パケットの「Data」4f内の情報f3に対応する。
【0032】
ステップS19において、CPU108は、送信パケットを生成して変調送信回路103へ送り、当該パケットを送信させる。なお、送信パケットにおいて、「Data」4f内の情報f1には撮影起動コマンドがセットされる。撮影起動コマンドは、指示対象のカメラに対する撮影開始の指示である。撮影起動コマンドには、単写撮影、連写撮影、およびバルブ撮影を識別するパラメータが含まれる。
【0033】
ステップS20において、CPU108は、送信回数nをインクリメントしてステップS21へ進む。インクリメント後の送信回数nは、ステップS19へ戻る場合にパケットの「Data」4f内の情報f3にセットされる。
【0034】
ステップS21において、CPU108は、送信回数nが所定回数に達したか否かを判定する。CPU108は、nが所定回数の場合にステップS21を肯定判定してステップS23へ進む。CPU108は、nが所定回数でない場合にはステップS21を否定判定し、ステップS22へ進む。
【0035】
ステップS22において、CPU108は、所定時間(たとえば3msec)待って(遅延)ステップS19へ戻る。ステップS19ないしS22の処理を繰り返すことにより、同じ撮影起動コマンドを含む送信パケットを上記所定時間間隔で所定回数(たとえば20回)繰り返し送信する。
【0036】
ステップS23において、CPU108は単写か否かを判定する。CPU108は、単写フラグが1の場合にステップS23を肯定判定してステップS30へ進む。CPU108は、単写フラグが1でない場合にはステップS23を否定判定してステップS24へ進む。ステップS24へ進む場合は、連写設定またはバルブ撮影設定されている場合である。
【0037】
ステップS24において、CPU108は撮影終了を検出したか否かを判定する。CPU108は、押しボタン107aからの押下操作信号が解除されると撮影終了を検出する。CPU108は、撮影終了を検出した場合はステップS24を肯定判定してステップS25へ進む。CPU108は、撮影終了を検出していない場合はステップS24を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0038】
ステップS25において、CPU108は、送信回数mを初期値1にセットしてステップS26へ進む。送信回数mは、送信パケットの「Data」4f内の情報f3に対応する。
【0039】
ステップS26において、CPU108は送信パケットを生成して変調送信回路103へ送り、当該パケットを送信させる。本ステップで生成するパケットは、ステップS19で生成したパケットと比べて、「Data」4f内の情報f1に、撮影起動コマンドの代わりに撮影終了コマンドがセットされる点が異なる。撮影終了コマンドは、指示対象のカメラに対する撮影終了の指示である。撮影終了コマンドがセットされた「Data」4fを図6に例示する。
【0040】
ステップS27において、CPU108は、送信回数mをインクリメントしてステップS28へ進む。インクリメント後の送信回数mは、ステップS26へ戻る場合にパケットの「Data」4f内の情報f3にセットされる。
【0041】
ステップS28において、CPU108は、送信回数mが所定回数に達したか否かを判定する。CPU108は、mが所定回数の場合にステップS28を肯定判定してステップS30へ進む。CPU108は、mが所定回数でない場合にはステップS28を否定判定し、ステップS29へ進む。
【0042】
ステップS29において、CPU108は、所定時間(たとえば3msec)待って(遅延)ステップS26へ戻る。ステップS27ないしS29の処理を繰り返すことにより、同じ撮影終了コマンドを含む送信パケットを上記所定時間間隔で所定回数(たとえば20回)繰り返し送信する。
【0043】
ステップS30において、CPU108は、撮影番号PをインクリメントしてステップS1へ戻る。インクリメント後の撮影番号Pは、ステップS19へ戻る場合にパケットの「Data」4f内の情報f2にセットされる。
【0044】
−無線アダプタ20のCPU108が行う処理−
無線アダプタ20のCPU108が行う処理の流れについて、図7に例示するフローチャートを参照して説明する。CPU108は、カメラ30から電源が供給された場合に図7による処理を起動する。
【0045】
図7のステップS51において、CPU108は、該CPU108内のメモリの初期化(クリア)を行ってステップS52へ進む。これにより、受信パケットの上記「Data」4fに含まれる情報f2に相当する撮影番号Pを示すデータをクリアする。
【0046】
ステップS52において、CPU108は、パケットを受信したか否かを判定する。CPU108は、パケットをエラー無く受信した場合にステップS52を肯定判定してステップS53へ進む。CPU108は、パケットを受信していない、または受信パケットについてエラー判定した場合には、ステップS52を否定判定して当該判定処理を繰り返す。
【0047】
ステップS53において、CPU108は、撮影終了コマンドか否かを判定する。CPU108は、「Data」4f内の情報f1が撮影終了コマンドの場合、ステップS53を肯定判定してステップS59へ進む。CPU108は、「Data」4f内の情報f1が撮影終了コマンドでない場合、ステップS53を否定判定してステップS54へ進む。
【0048】
ステップS54において、CPU108は、撮影起動コマンドか否かを判定する。CPU108は、「Data」4f内の情報f1が撮影起動コマンドの場合、ステップS54を肯定判定してステップS55へ進む。CPU108は、「Data」4f内の情報f1が撮影起動コマンドでない場合、ステップS54を否定判定してステップS61へ進む。
【0049】
ステップS55において、CPU108は、受信パケットの「Data」4f内の情報f2に対応する撮影番号Pが前回の受信パケットのものと同じか否かを判定する。CPU108は、前回と同じ場合にステップS55を肯定判定してステップS52へ戻る。CPU108は、前回と同じでない場合にはステップS55を否定判定し、ステップS56へ進む。本実施形態では、撮影番号Pが前回と異なる場合にのみステップS56へ進んで撮影起動を行う。
【0050】
ステップS56において、CPU108は、撮影起動コマンドに含まれる単写撮影、連写撮影、およびバルブ撮影を識別するパラメータに応じて単写撮影、連写撮影、およびバルブ撮影のうちいずれか1つを起動させる信号をカメラ30のCPU306へ送信し、ステップS57へ進む。ステップS57において、CPU108は、該CPU108内のメモリに撮影番号Pを記憶してステップS58へ進む。
【0051】
ステップS58において、CPU108は、受信パケットの「Data」4f内の情報f3に対応する送信回数nを該CPU108内のメモリに記憶する。CPU108はさらに、上記撮影番号Pおよび当該送信回数nを撮影データとして記録するようにカメラ30のCPU306へ送信してステップS52へ戻る。撮影番号Pに加えて送信回数nを撮影データに含めて記録させることで、当該記録内容が解析情報として役立つ。パケットがエラー無く受信される場合は、1回目の送信パケットに基づいて撮影起動するので送信回数nは1であるが、たとえば、電波状況によって2回受信エラーが生じ、3回目の送信パケット(送信回数n=3)に基づいて撮影起動する場合には、送信回数n=3が記録される。n=3が記録されている場合は、パケット送信2回分「撮影番号Pにおける撮影起動が遅延」したことを表す。
【0052】
上記ステップS53を肯定判定して進むステップS59において、CPU108は、撮影終了させる信号をカメラ30のCPU306へ送信してステップS60へ進む。これにより、カメラ30のCPU306は、連写撮影中の場合は新たなコマの撮影を行わず、バルブ撮影中の場合には露光を停止させる。
【0053】
ステップS60において、 CPU108は、パケットの「Data」4f内の情報f2に含まれる撮影番号P、およびその記憶指示をカメラ30のCPU306へ送信してステップS52へ戻る。撮影番号Pを記録させることで、当該記録内容が解析情報として役立つ。すなわち、通常は同じ撮影番号Pが撮影起動時(ステップS57)と撮影終了時(ステップS60)に記録される。撮影起動時に記録されていない撮影番号Pが撮影終了時に記録されている場合には、「撮影番号Pの撮影起動は失敗」したことを表す。
【0054】
上記ステップS54を肯定判定して進むステップS61において、CPU108は、コマンドに応じた所定の処理を起動させる信号をカメラ30のCPU306へ送信してステップS52へ戻る。これにより、カメラ30のCPU306は、たとえばパワーオン処理を行う。
【0055】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)リモコン送信機10は、通信パケットを無線送信する変調送信回路103と、無線アダプタ20側に対する指示f1、および当該指示f1が前回送信の通信パケットによる指示と同一か否かを示す第1識別情報f2を含む通信パケットを生成するCPU108と、送信指示に応じて、同一の指示を含む通信パケットを連続して所定回数送信するように変調送信回路103を制御するCPU108とを備えるので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0056】
上述した「Data」4fに含める情報f2は、たとえば1バイトデータで構成するようにした。この場合、撮影番号Pは255回まで計数できる。撮影起動回数が255回を超える場合は、0に戻して再びインクリメントする。
【0057】
(2)上記(1)のリモコン送信機10において、通信パケットを生成するCPU108はさらに、同一の指示を含む通信パケットの送信が連続何回目かを示す第2識別情報f3を通信パケットに含めるので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0058】
「Data」4fに含める情報f3も同様に、1バイトデータで構成するようにした。送信回数nおよびmは、コマンドを新しく送り始める際に1にセットし直し(ステップS18、S25)、同一コマンドの送信回数を通常20回程度とするので、送信回数n、mが255回を超えることはない。
【0059】
上述した実施形態では、撮影終了コマンドにおける撮影番号Pや送信回数mは必ずしも必要ではない。しかしながら、撮影終了時と撮影起動時とでパケットの構造上の対称性を持たせるために、撮影終了コマンドを含むパケットの「Data」4fに情報f2(撮影番号P)およびf3(送信回数m)を含めるように構成した。
【0060】
(3)上記(1)または(2)のリモコン送信機10において、無線アダプタ20は複数存在し、変調送信回路103は、通信パケットをブロードキャスト送信するので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0061】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかリモコン送信機10において、無線アダプタ20側の機器はカメラ30であり、指示f1がカメラ30に対する撮影起動指示である場合は、複数のカメラ間で撮影起動の同時性を高めることができる。
【0062】
(5)無線アダプタ20は、無線送信された通信パケットを受信する周波数ダウンコンバータ102,復調回路104と、受信した通信パケットに含まれる指示が前回受信した通信パケットに含まれた指示と同一か否かを判定するCPU108と、同一指示を判定した場合に当該指示に応じた処理を禁止し、同一指示を判定しない場合には受信した通信パケットに含まれる指示に応じた処理を行うCPU108とを備えるので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0063】
(6)上記(5)の無線アダプタ20において、周波数コンバータ102,復調回路104は、上記(1)〜(4)のいずれかのリモコン送信機10からの通信パケットを受信し、CPU108は、通信パケットに含まれる第1識別情報f2に基づいて同一指示か否かを判定するので、適切に判定することができる。
【0064】
(7)カメラシステムは、上記(5)または(6)の無線アダプタ20と、カメラ30とを備え、CPU108、306は、受信した通信パケットに含まれる指示が撮影起動指示であって、かつCPU108によって同一指示が判定されていない場合にカメラ30による撮影処理を起動させるので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0065】
(8)上記(7)のカメラシステムにおいて、CPU108、306は、受信した通信パケットに含まれる指示が撮影処理の終了指示であって、かつCPU108によって同一指示が判定されていない場合にカメラ30による撮影処理を終了させるので、カメラシステムの信頼性と同時性の双方を高めることができる。
【0066】
(変形例1)
カメラ30のCPU306は、非撮影中であるにもかかわらず撮影終了コマンドを受信した場合(ステップS59)、続けて受信する撮影番号Pおよびその記憶指示(ステップS60)に応じてエラー情報をCPU306内のメモリに記憶するようにした。このエラー情報は、たとえば、「撮影番号Pの撮影起動は失敗」したことを表すから、メモリの記憶内容に基づいて何番目の撮影起動が失敗したかについて事後解析することができる。
【0067】
(変形例2)
以上の説明では、リモコン送信機10側の操作部材107cの操作位置に基づいて単写撮影、連写撮影、およびバルブ撮影設定を切替える例を説明した。リモコン送信機10が操作部材107cを有していない場合(すなわち、リモコン送信機10側で単写/連写/バルブ撮影の切替えができない場合)は、図5のステップS13〜ステップS17およびステップS23をスキップした上で、撮影起動コマンドの送信(ステップS19)と撮影終了コマンドの送信(ステップS26)を常にセットで行うとよい。
【0068】
(変形例3)
図8は、変形例3のカメラシステムの構成を説明する図である。カメラシステムは、グループAを構成するカメラ群300Aと、グループBを構成するカメラ群300Bと、グループCを構成するカメラ群300Cと、リモコン送信機10とで構成される。カメラ群300Aは、上述したカメラ30A(無線アダプタ20Aが装着されている)を複数含む。カメラ群300Bは、上述したカメラ30B(無線アダプタ20Bが装着されている)を複数含む。カメラ群300Cは、上述したカメラ30C(無線アダプタ20Cが装着されている)を複数含む。
【0069】
切替スイッチ107bが「ALL」に設定されている場合のリモコン送信機10は、全てのカメラ群300A〜カメラ300Cを指示対象に無線送信を行う。切替スイッチ107bが「A」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ群300Aを指示対象に無線送信を行う。また、切替スイッチ107bが「B」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ群300Bを指示対象に無線送信を行う。さらに、切替スイッチ107bが「C」に設定されている場合のリモコン送信機10は、カメラ群300Cを指示対象に無線送信を行う。
【0070】
なお、図8に例示したシステムは、1グループを構成するカメラの数量、および全体のグループ数は、それぞれ数量に制限はない。
【0071】
変形例3の場合の「Header」4dは、発信元(本例ではリモコン送信機10)と送信先のカメラ群(本例では指示対象のカメラ群に同一アドレスの無線アダプタを装着)を指定するアドレス、パケットの種類、および通し番号などを示すデータによって構成される。切替スイッチ107bが「ALL」に設定されている場合のCPU108は、送信先のカメラ群を指定するアドレスに不定を示すIDを含める。送信先カメラ群のアドレスを不定とする送信は、全てのカメラ群を指示対象にするブロードキャスト送信に該当する。
【0072】
切替スイッチ107bが「A」に設定されている場合のCPU108は、送信先カメラ群を指定するアドレスにカメラ群300Aに装着された無線アダプタを示すIDを含める。同様に、切替スイッチ107bが「B」に設定されている場合のCPU108は、送信先カメラ群を指定するアドレスにカメラ群300Bに装着された無線アダプタを示すIDを含める。さらに、切替スイッチ107bが「C」に設定されている場合のCPU108は、送信先カメラ群を指定するアドレスにカメラ群300Cに装着された無線アダプタを示すIDを含める。
【0073】
(変形例4)
上記実施形態では、カメラ30A〜30Cと無線アダプタ20A〜20Cとをそれぞれ接続する例を説明した。この代わりに、各無線アダプタの構成を各カメラ内に内蔵して一体化構成にしてもよい。
【0074】
上述したカメラは、デジタルカメラでもフィルムカメラでもよく、スチルカメラでもビデオカメラでも構わない。
【0075】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
10…リモコン送信機
20…無線アダプタ
30…カメラ
102…周波数ダウンコンバータ
103…変調送信回路
104…復調回路
106…発振器
107…操作部材
108,306…CPU
303…撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信パケットを無線送信する通信手段と、
リモコン受信機側に対する指示、および当該指示が前回送信の通信パケットによる指示と同一か否かを示す第1識別情報を含む通信パケットを生成するパケット生成手段と、
送信指示に応じて、前記同一の指示を含む通信パケットを連続して所定回数送信するように前記通信手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするリモコン送信機。
【請求項2】
請求項1に記載のリモコン送信機において、
前記パケット生成手段はさらに、前記同一の指示を含む通信パケットの送信が連続何回目かを示す第2識別情報を前記通信パケットに含めることを特徴とするリモコン送信機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリモコン送信機において、
前記リモコン受信機は複数存在し、
前記通信手段は、前記通信パケットをブロードキャスト送信することを特徴とするリモコン送信機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のリモコン送信機において、
前記リモコン受信機側の機器はカメラであり、
前記指示は、前記カメラに対する撮影起動指示であることを特徴とするリモコン送信機。
【請求項5】
無線送信された通信パケットを受信する通信手段と、
前記受信した通信パケットに含まれる指示が前回受信した通信パケットに含まれた指示と同一か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記同一指示が判定された場合に当該指示に応じた処理を禁止し、前記同一指示が判定されない場合には前記受信した通信パケットに含まれる指示に応じた処理を行う制御手段と、
を備えることを特徴とするリモコン受信機。
【請求項6】
請求項5に記載のリモコン受信機において、
前記通信手段は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリモコン送信機からの通信パケットを受信し、
前記判定手段は、前記通信パケットに含まれる前記第1識別情報に基づいて前記同一指示か否かを判定することを特徴とするリモコン受信機。
【請求項7】
請求項5または6に記載のリモコン受信機と、
撮像手段とを備え、
前記制御手段は、前記受信した通信パケットに含まれる指示が撮影起動指示であって、かつ前記判定手段によって前記同一指示が判定されていない場合に前記撮像手段による撮影処理を起動させることを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項7に記載のカメラにおいて、
前記制御手段は、前記受信した通信パケットに含まれる指示が前記撮影処理の終了指示であって、かつ前記判定手段によって前記同一指示が判定されていない場合に前記撮像手段による撮影処理を終了させることを特徴とするカメラ。
【請求項9】
請求項4に記載のリモコン送信機と、
請求項7または8に記載のカメラとを有することを特徴とする撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168321(P2012−168321A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28510(P2011−28510)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】