説明

リング紡績機において飾り糸を製造するための方法及び装置

本発明は質量変化および/または撚数変化を伴うリング紡績機において、飾り糸を製造する際に、製造量の算出を軽減するという課題を有している。本発明は、ドラフトの変化と、給糸と糸撚りの間の割合の変化のための制御信号を、アルゴリズムが入力されているコンピュータ(1)を使用して伝達するすることを提案する。アルゴリズムを用いて、コンピュータは後続して設けられた制御装置(5,15)に制御信号を送り。この制御信号を介して、厚い部分間のウェブの領域内の繊度が、生じる厚い部分に対応して低下することにより、質量変化に関して設定された繊度は維持される。制御装置(5,15)は、ドラフト装置ローラ(9,13)の駆動機構(8,12)と、スピンドル(19)の駆動機構(17)とを回転変化させるように設計されている。さらにコンピュータ(1)のアルゴリズムは、質量が様々な糸部分内の繊度に依存した糸の撚数を、糸のアルファ値が一定に維持されるようにして変化させるように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸繊度が調節可能に変化し、および/または糸撚数が調節可能に変化する飾り糸を製造するための方法及び装置、並びにリング紡績機においてこの方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたような、飾り糸を製造するための公知のリング紡績機は、糸繊度と糸撚数に関する条件の設定から始まり、かつ意図した作用をこの基本設定に適用する。このような場合、製造量を計算するのはきわめて難しい。というのも多数の相互依存したパラメータを考慮しなければならないからである。
【特許文献1】独国特許出願公開第4041301号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、糸繊度が変化し、および/または糸撚数が変化する飾り糸を製造する際に、製造量を簡単に算出するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本方法によれば請求項1〜3に述べた特徴により解決される。方法を実施するための装置は請求項4〜7の対象である。
【0005】
請求項1または4により、質量効果、すなわち厚い部分を備えた糸が製造される場合に、厚さ、長さ及び相互間隔のようなこの厚い部分のパラメータがコンピュータに入力される。この厚い部分は供給と設定されたドラフトから生じる製造された糸の全体的繊度を高めず、コンピュータは薄い部分のために、すなわち薄い部分間の糸部分のためにほかならぬその低い繊度を算出する。それにより糸の全体的繊度は薄い部分も含めて初期糸に再度一致する。したがってコンピュータにより薄い部分の領域内のドラフトは増加し、最初に設定された値での製造量が維持される。
【0006】
コンピュータは糸内の撚数が調節可能に変化できるよう、コンピュータにより作用を受ける制御部材を制御するように設計されている。撚数の変化は独自に行われる。撚数の変化はスピンドルの回転数を変更することにより達せられる。しかしながらこの変化は移動するスピンドルの大質量が原因できわめて慢性的に起こるので、撚数の変化はドラフト装置の給糸部を変えることにより達成するのが好ましい。
【0007】
ほとんどの場合、糸の質量変化は同期した糸の撚数の変化と関連して起きる。この場合各々与えられた撚数の変化はコンピュータに入力される。しかしながら、コンピュータに入力し、質量変化に依存した撚数変化を糸の撚係数、いわゆるアルファ値が一定にとどまるように計算し、かつ撚数変化を制御信号として伝達することが好ましい。
【0008】
同時に撚数が変化しない質量効果は、きわめて短く維持することができる。撚数変化の際、このような効果がフロントローラ対とスピンドルの間の糸部分で補償され、さらに薄い糸部分内へ移るのが好ましいことを考慮する必要がある。したがって唯一の撚数変化と、撚数変化に同時に伴う質量変化は、徐々に行われるのが好ましい。
【0009】
本方法を実施するために設けられたリング紡績機はドラフトを自動で変化させるための装置を備えている。この理由で一方においてはフロントローラが、もう一方においてはフィードローラ兼ミドルローラが別々の駆動機構を備えている。この理由で、フィードローラ兼ミドルローラあるいはフロントローラも、特に周波数制御駆動モータの形式の可変速度駆動機構を有しており、この周波数制御駆動モータは制御装置を介して調節可能な周波数の供給電流を印加される。
【0010】
ユニット長毎の糸撚数の自動的変化に関して、リング紡績機はドラフト装置の可変速度駆動部を備えている。フィードローラ兼ミドルローラおよびフロントローラがドラフトを変化させるためにすでに可変速度駆動部を備えている場合、コンピュータにはドラフトを変化させることができる装置が設けられている。ここでも周波数制御モータが設けられているのが好ましい。代替え案として、さらにユニット長毎の糸撚数の変化はスピンドルの回転数を変化させることにより達せられる。この理由で、スピンドル駆動モータは制御装置を介して調節可能な周波数の供給電流を印加される。
【0011】
制御装置に作用するコンピュータは、単位長さ毎の初期の糸繊度、効果の度合、効果の長さ及び効果の数のための、そこに入力されるパラメータを平均化するためのアルゴリズムを含んでいる。さらにまたアルゴリズムは、ドラフト装置の給糸部あるいはスピンドルの回転数を、場合によっては質量変化に依存して変えてもよい。
【0012】
質量変化および/または撚数変化の任意の分配を達成するために、コンピュータに乱数発生器をオンラインで従属させるのが好ましい。この場合、質量変化の限界値だけがコンピュータに与えられるにすぎず、この限界値の範囲内で乱数発生器が乱数を発生させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図と表において本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
図2および3のグラフの横座標は糸の長さを描いているが、縦座標では繊度(図2および図3の上側線)あるいは撚数(図3の下側線)がプロットされている。厚い部分は隆起部として描かれており、繊度の記載はNmで与えられる。
【0015】
上位に置かれたコンピュータ1は通信パネル2を備え、この通信パネルを介してコンピュータとの通信が行われる。通信パネルは実質的にデータとコマンドを入力するためのキーボード、並びに設定された値を表示するビデオ画面備えている。この場合に重要なそのパネルは以下の表1及び2に描かれている。
【0016】
乱数発生器3はコンピュータにオンラインで従属していてもよい。これにより任意に選択された制御ステップの連続して起こる数多くのことを設定し、かつ記憶する必要はなくなる。乱数発生器は許容された限界値内で繰り返し独立して設定され、新たな任意の制御信号は後続して設けられた制御装置に送られる。
【0017】
コンピュータ1は後続して設けられた第一制御装置5にケーブル4を経由して制御信号を送る。この第一制御装置はその側ではケーブル6を経由して、リング紡績機のドラフト装置のフィードローラ兼ミドルボトムローラ9を駆動するためにモータ8を作動させるための作動装置7に作用する。第二ケーブル10を経由して、ドラフト装置のフロントボトムローラ13のモータ12に作用する作動装置11が作動する。駆動機構はここではただ各々モータ8あるいは12によってのみ表わされているが、駆動機構は多数のモータを備えていてもよいことがわかる。
【0018】
ケーブル14を経由して、コンピュータ1は制御装置15に作用し、この制御装置は作動装置16を介して接線方向ベルト18により駆動され、かつ一点鎖線で表示されたスピンドル19のための少なくとも一つの駆動モータ17を作動させる。作動装置7,11及び16は、モータ8,12及び17の駆動速度を可変にすることができる周波数変換器を備えているのが好ましい。
【0019】
以下に示す表には、導入部ですでに挙げた例に関する表示パネルの画像が概略的に示してある。見出しは筆記で記入された名称の代わりに、ここでは描かれていない記号であってもよいことがわかる。
【表1】

【0020】
登録された例において、公称Nmが11.9で、変えられない公称撚数が480T/mである品物Cを考察する。変動プログラムは二段階のステップを備えており、第一ステップでは、40mm(長さ1)と451mm(長さ2)の間の長さ範囲内で繊度が100%で撚数が100%であるべきである。従ってステップ1の薄い場所では繊度が変わることは全くない。ステップ2では、40mmから50mm長さ範囲で繊度は180%まで上昇し、従って厚い部分が製造されるが、撚数は変わらないままであるべきである。
【0021】
コンピュータ1の乱数発生器3は40mm〜451mmの特定の長さ範囲のステップ1、及び40mm〜50mmの特定の長さ範囲のステップ2のために無作為の長さを選択し、かつこれらをコンピュータに渡す。コンピュータはこれらの長さとステップ2で生じた質量増加から、Nm13.4までの薄い部分における繊度とNm7.4までの厚い部分のおける繊度を計算する。これらの値を基に、ステップ1では、コンピュータ1により制御装置5には対応する信号が作用する。制御装置は、薄い部分の繊度がNm11.9からNm13.4まで上昇するようにして、アクチュエータ7がフィードローラ兼ミドルローラ9のモータの回転数を下げるようにアクチュエータを制御する。
【0022】
設定された薄い部分の長さが過ぎた後、作動装置7を介して、ドラフト装置内のドラフトが繊度Nm7.44の出力のために、したがって厚い部分を作るために減るように、制御装置5が、意図された質量増加の長さのためのフィードローラ兼ミドルローラ9の回転数を増加させるように、コンピュータ1は前記制御装置に作用する。
【0023】
ステップ1及び2の変化は連続して繰り返し起こり、この場合乱数発生器により毎回別の長さが発生する。さらにコンピュータ1はメートル毎の生じた効果の数を計算し、かつその数を見出しに表示させることができる。
【0024】
図2のグラフにおいて、このようにして製造された糸の厚さを概略的に示してある。破線20はNm11.9の設定された繊度を示す。入力値からコンピュータ1は任意の長さおよび選択された限界の間の任意の相互の間隔、この場合にはNm7.4の同一な質量変化の厚い部分21を計算する。Nm11.9から生じる糸の平均繊度は線20と同一レベルにあり、この線の上下の範囲は同一である。薄い部分において繊度はNm13.4まで減少する。
【0025】
乱数発生器をなくすと、周期性の効果(Eindruck)が回避されているように多数の交互に現れるステップを一行ずつ入力しなければならない。任意のプログラムされるべきステップの数は40に達する。記憶される品目の数は例えば10に達するかあるいはさらに多くてもよい。
【表2】

【0026】
この例において、品目Aによれば繊度も撚数も公称値がNm14.5と420T/mである糸によって変化する。変化した撚数はドラフト装置とスピンドルの間の糸長にわたり分散するので、撚数の変化、従って糸質量の変化もほんの小さいステップで行われるにすぎない。
【0027】
ステップ1では、薄い部分の長さは120mm〜450mmの間に規定されており、乱数発生器はこの範囲内で薄い部分の長さを選択する。ステップ2では、100mm〜120mmの間の範囲内で、各々の場合において公称のNmと公称の撚数から始まって、繊度は140%まで増加し、撚数は84%まで減少する。ステップ3では、同じ長さで繊度は170まで増加し、撚数は76%まで減少する。ステップ4は220mmから380mmの長さ範囲での実際の厚い部分を示しており、結果として繊度は190%まで増加し、撚数は72%まで減少する。ステップ5及び6では、質量増加の上昇はステップ1の薄い部分に対して対称に戻される。ステップのシーケンスは繰り返される。
【0028】
表の見出しから、薄い部分、従って糸の最細な部分における糸の繊度と撚数は明白である。実際に設定された繊度と撚数の値はコンピュータにより、14.5の公称Nmが製造量を算出するために残るように平均化される。
【0029】
図3のグラフにこのような糸を概略的に示してある。上側の繊度特性曲線における破線23は、Nm14.5で製造された糸の最初と最後の繊度を再度示している。質量増加24’、したがって厚い部分の撚数減少25は、下側の撚数特性曲線による撚数減少が1ステップで行われる程度に低い。それに比べて、厚い部分24”における撚数減少25”は、複数のステップで、ここでは3ステップで行わねばならない程度に高い。
【0030】
図示した例において、コンピュータ1は適切な入力キーを介して指示され、製造される糸のアルファ値が同じであるように算出された質量増加に左右される撚数減少を計算することを前提とする。平均の公称糸繊度23に達し、したがって平均撚数が同じままであるので、製造量は容易に決定することができる。したがって表2の仮想の糸は以下の部分から構成されている。
ステップ1: Nm21.7/504T/m→アルファ108
ステップ2: Nm15.5/425T/m→アルファ108
ステップ3: Nm12.7/385T/m→アルファ108
ステップ4: Nm11.4/364T/m→アルファ108
ステップ5: Nm12.7/385T/m→アルファ108
ステップ6: Nm15.5/425T/m→アルファ108
【0031】
リング紡績機上で普通糸を影響無く製造する場合に、ステップはコンピュータにおいて適切に設定することができる。しかしながらさらにコンピュータを切ることも可能であり、この場合制御装置5と15は入力装置を備えており、この入力装置によりドラフトと撚数が手動で設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】システム構成部品の概略的な階層図である。
【図2】質量変化に伴う糸繊度のグラフである。
【図3】質量変化と撚数変化に伴う繊度と撚数のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング紡績機において、糸繊度が調節可能に変化する飾り糸を製造するための方法において、
糸繊度が薄い部分では公称値に対して減少し、厚い部分では公称値に対して増大するようにして、調節可能に変化する糸繊度を、製造された飾り糸の長さを介して算出することを特徴とする方法。
【請求項2】
リング紡績機において、糸繊度が調節可能に変化し、同期して糸撚数が変化する飾り糸を製造するための請求項1による方法において、
調節可能に変化する糸撚数が、調節可能に変化する糸繊度に所属することを特徴とする方法。
【請求項3】
算出された変化する糸繊度に、変化する糸撚数を自動的に割当てることをコンピュータ(1)に伝達可能であり、この変化する糸撚数により撚係数(アルファ値)が一定に維持可能であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
糸繊度が調節可能に変化する飾り糸を製造するためのリング紡績機において、
リング紡績機がコンピュータ(1)を備え、
このコンピュータが単位長さ当りの、初期の糸繊度、効果の度合い、効果の長さ、効果の数のための入力されるパラメータから制御信号を算出し、
この制御信号によりコンピュータが、ドラフト装置においてドラフトを変えるための少なくとも一つの制御装置(5)を制御し、この制御装置が、少なくとも二つのグループのドラフト装置ローラの駆動機構を制御する自動的アクチュエータ(8,10)に作用していることを特徴とするリング紡績機。
【請求項5】
糸撚数が調節可能に変化する飾り糸を製造するためのリング紡績機において、
リング紡績機がコンピュータ(1)を備え、
このコンピュータが単位長さ当りの、初期の糸繊度、効果の度合い、効果の長さ、効果の数のための入力されるパラメータから制御信号を算出し、
この制御信号によりコンピュータが、ドラフト装置の引渡し部を調節するための制御装置(5)を制御し、この制御装置が、ドラフト装置ローラ(9,13)の駆動機構(8,12)を制御する自動的アクチュエータ(7,11)に作用していることを特徴とするリング紡績機。
【請求項6】
コンピュータ(1)が糸撚数のための入力されたパラメータから制御信号を算出し、この制御信号によりコンピュータが別の制御装置(15)を制御し、この制御装置がスピンドル(19)の駆動機構(17)を制御する自動的アクチュエータ(16)に作用していることを特徴とする請求項5記載のリング紡績機。
【請求項7】
請求項1〜6による、糸繊度が調節可能に変化し、および/または糸撚数が調節可能に変化する飾り糸を製造するためのリング紡績機において、
設定可能な範囲内で、質量変化および/または撚数変化を任意に生じさせるための乱数発生器(3)が、コンピュータ(1)にオンラインで従属していることを特徴とするリング紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−510895(P2008−510895A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528649(P2007−528649)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008350
【国際公開番号】WO2006/021292
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】