説明

リン及び窒素含有排水の浄化装置、その浄化方法及びその浄化方法の土壌接触処理槽に充填して使用する土壌

【課題】 本発明の目的は、現在その処理が問題になっているリン及び窒素含有排水中等に存在するリン及び窒素を、従来の処理方法では達成し得なかった低濃度にまで除去し得るとともに、長期使用に耐える実用的な浄化装置及びその浄化方法を提供することにある。
【解決手段】 リン及び窒素含有排水を火山灰土壌1に接触させて浄化するリン及び窒素含有排水の浄化装置であって、処理排水を貯留する貯留槽11にリン及び窒素含有排水を流し、該貯留槽11の下流側に配設した土壌接触処理槽12に火山灰土壌1を造粒して形成した土壌を充填して、排水中のリンを除去し、土壌接触処理槽の下流側に配設した腐植木処理槽に細菌の資化物として腐植木を充填して、窒素を除去する。更に下流側に配設した多孔質処理槽に多孔質吸着材を充填して、色度成分等の難分解性有機物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として団粒構造を有した土壌を用いた水質浄化に係り、特に、畜産排水及び下水の二次処理排水等の各種産業排水中に存在するリン及び窒素の除去を目的とした水質浄化装置、その浄化方法及びその浄化方法に使用する土壌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、BOD、COD等の有機物、色度並びにSSを除去する方法として、生物濾過法が知られている。この方法は一般に原水水質が良好で濁度も低く安定している場合に採用され、比較的細かな砂層や濾材を充填した濾過槽に4〜5m/日のゆっくりとした速さで水を通し砂層の表面と砂層に増殖した微生物群によって、水中の浮遊物質や溶解物質を捕捉し酸化分解させるものである。
【0003】
また、リン、窒素及び難分解性有機物を含有する排水の一般的な処理方法として次のものが知られている。リン除去法には、薬品凝集、吸着・イオン交換、晶析などの物理化学的な機構を用いる方法と、嫌気好気法、水生植物の利用などの生物的な機構を用いる方法がある。工業排水には凝集法が、下水排水には嫌気好気法が通常用いられていることが多い。リンの処理方法としては、従来から赤玉土、黒ボク土、鹿沼土など火山灰土壌を処理排水に接触させることにより処理排水中のリン成分を主として土壌の吸着により処理する方法が知られている。例えば、リン酸吸着能力のある鹿沼土などにバインダーとしてガラス粉末を加えて造粒し、得られた粒状体を乾燥後、800℃〜900℃の高温度で加熱した吸着濾材が知られている(特許文献1)。
【0004】
さらに、窒素除去法については、ほとんどの場合に生物的窒素除去法が採用されており、脱窒を目的とした嫌気ゾーンと硝化を目的とした好気ゾーンの区分方法によって種々の処理方式が開発されている。その他、アンモニアストリッピング法、イオン交換法、不連続点塩素処理法、触媒酸化法などが知られている。また、脱窒方法としては、アンモニア性窒素を酸化させ、硝酸性窒素に変えて、硝酸性窒素を脱窒菌により窒素ガス(N2 )として除去する方法がある。例えば、細菌の資化物を充填した資化物層を設け、アンモニア態窒素を吸着可能な吸着剤を充填した吸着剤層を連続して設け、硝酸性窒素を除去する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
また、処理排水からチッソ、リンを除去するものとしては、例えば、チッソ、リンを含有する排水・廃液の処理方法として、粘土と気孔形成材料と水とを混合し、成形後乾燥させて、600〜800℃で3〜7時間保持し、更に1200〜1500℃で4〜8時間焼成後、クラッシャー処理したものが知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−197500号公報(段落0007欄)
【特許文献2】特許3295147号公報(段落0008欄、図1)
【特許文献3】特許3408702号公報(段落0017欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、リン酸吸着能力のあるカキ殻、水硬性アルミナ、鹿沼土、浄水場汚泥と、バインダーとしてガラス粉末を加えて、混合粉砕して均一にし、水を添加して十分混練後、造粒し、得られた粒状体を乾燥後、800〜900℃の高温度で加熱し、常温まで冷却して一度水中に浸漬後乾燥して目的とするリン酸イオン吸着濾材を製造することが開示されている。しかし、カキ殻、水硬性アルミナ、鹿沼土、浄水場汚泥、ガラス粉末を加えて、高温で焼成するものであり、鹿沼土などの火山灰土壌は、乾燥させた後800〜900℃の高温度で加熱処理した場合には、造粒火山灰土壌の団粒構造が短期間に崩壊する結果となっている。処理槽の土壌として長期の使用に難があり、実用的といい得るものではなかった。また、加熱温度が800〜900℃と高いために、リン除去性能が不十分であった。
【0007】
特許文献2には、脱窒細菌の資化物を充填した資化物層を設け、更に資化物層の下流側にアンモニア態窒素の吸着材層を設けて、リンを吸着除去するようになっている。その上、更に、下流側にリン吸着材層を連続状態で設け、処理対象水を順に通水するようにしてなることが記載されている。しかし、資化物層が、処理対象水の流入口、つまり処理槽の前段に設置されているため、資化物層の嫌気性維持は困難であって、効率的な脱窒素処理ができない。さらに、資化物層から着色成分などが溶出し、除去されない。
【0008】
特許文献3では、粘土と気孔形成材料と水とを混合し、成形後乾燥させて、600〜800℃で3〜7時間保持し、更に1200〜1500℃で4〜8時間焼成するので、多孔質セラミックが形成できる。しかし、該多孔質セラミックの気孔では有機物等をトラップするのみであり、特に高温で焼成しているので、セラミックは結晶質となり、リン等を有効に吸着できず、特に長期使用できず実用的でなかった。
【0009】
上述したように、従来技術では、現在その処理が問題になっているリン及び窒素含有排水の処理として、排水中のリン及び窒素を確実に除去することはできなかった。
【0010】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リン及び窒素含有排水、従来の畜産排水及び下水の二次処理排水、各種産業排水中などに存在するリン及び窒素を、従来の処理方法では達成し得なかった低濃度にまで除去し得るとともに、長期使用に耐える実用的なリン及び窒素含有排水の浄化装置、その浄化方法及びその浄化方法に使用する土壌を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、リン及び窒素含有排水の処理に適用する際の実用的な最適条件・最適装置について鋭意研究し、本発明を完成した。即ち、赤玉土等の火山灰土壌を用いたリン吸着について長年研究した結果、造粒赤玉土等の火山灰土壌は、焼成前に予め水分を含有させておき、且つ低温で焼成したものであれば、乾燥させ加熱した成型体よりも水中で簡単に崩れず、その上処理排水中のリンを吸着する吸着性能を十分に発揮できることが判明して本発明に至った。
【0012】
具体的には、請求項1に記載の発明は、リン及び窒素を含有する排水を火山灰土壌に接触させて浄化するリン及び窒素含有排水の浄化装置であって、処理排水を貯留する貯留槽と、該貯留槽の下流側に、火山灰土壌を造粒して形成した土壌を充填した土壌接触処理槽と、該土壌接触処理槽の下流側に、細菌の資化物として腐植木を充填した腐植木処理槽とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記土壌接触処理槽に充填された火山灰土壌は、直径が5〜50mmの範囲に造粒した赤玉土または鹿沼土であって、比表面積が50〜150m2 /gの範囲であって、乾燥密度が0.7〜1.2g/cm3 の範囲であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記腐植木処理槽の下流側に、内部に多孔質吸着材が充填され、処理排水の濾過速度が、0.05m/日〜2.0m/日に制御された多孔質処理槽を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記貯留槽の滞留時間が1日〜20日に制御され、上記土壌接触処理槽における処理排水の濾過速度が0.5m/日〜10m/日に制御され、上記腐植木処理槽の滞留時間が3〜20時間に制御され、多孔質処理槽における処理排水の濾過速度が0.05m/日〜2.0m/日に制御される制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記貯留槽には、太陽光を遮蔽可能な遮光板が配設され、該遮光板は排水中の汚水状態等に応じて開放可能にする開閉機構を有することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記土壌接触処理槽の上部位置に処理排水流入口が設けられ、その下部位置に処理排水流出口が設けられ、上記腐植木処理槽の下部位置に処理排水流入口が設けられ、その上部位置に処理排水流出口が設けられ、上記土壌接触処理槽の処理排水流出口と上記腐植木処理槽の処理排水流入口とを連通する連通路が、その水位を上記土壌接触処理槽内の土壌の略上面位置まで一旦持ち上げる持ち上げ部を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法であって、上記土壌接触処理槽に充填される火山灰土壌は、直径が5〜50mmの範囲に造粒した土壌が40〜150%の含水比に調整され、その後、300〜750℃で10分以上保持されて焼成されて得られた土壌であり、リン及び窒素含有排水を上記火山灰土壌に接触させて浄化することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法において、上記土壌接触処理槽に充填される火山灰土壌が赤玉土であり、上記多孔質処理槽にも上記土壌接触処理槽に充填される赤玉土と同じ赤玉土が充填されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法の土壌接触処理槽に充填して使用する土壌であって、その土壌は直径が5〜50mmの範囲に造粒した後40〜150%の含水比に調整して、その後、300〜750℃に昇温して10分以上保持し、焼成して得られた赤玉土又は鹿沼土であって、比表面積が50〜150m2 /gの範囲であって、乾燥密度が0.7〜1.2g/cm3 の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、リン及び窒素含有排水中に存在するリン及び窒素を、低濃度レベルにまで除去し得るとともに、長期使用に耐える実用的な処理が可能となる。特に火山灰土壌接触処理槽で先にリンが効率良く除去できるので、後工程において腐植木層で窒素が効果的に除去でき、リン及び窒素を確実に且つ長期的に安定して除去できる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、特定の赤玉土を使用することによって、リン吸着能力に特に優れ、且つ水中でも長期的に崩壊しない造粒構造を維持できる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、更に、難分解性有機物や着色物質を確実に除去できる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、リン及び窒素を含有する排水中からリン及び窒素を長期的に安定して確実に除去できる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、貯留槽の汚水状態、例えば、排水中のBODが低い時、遮光板を開放して、直射日光を取り入れるようにすることによって、貯留槽での処理を効果的にでき、脱窒作用を機能させることができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、土壌接触処理槽でのリン除去を確実に作用させることができる。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、リン及び窒素含有排水中に存在するリン及び窒素を、低濃度レベルにまで除去し得るとともに、長期使用に耐える実用的な処理が可能となる。特に火山灰土壌接触処理槽で先にリンが効率良く除去できるので、後工程において腐植木層で窒素が効果的に除去でき、リン及び窒素を確実に且つ長期的に安定して除去できる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、多孔質処理槽用に吸着材を別に用意する必要が無く、管理が容易である。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、リン吸着能力に特に優れ、且つ水中でも長期的に崩壊しない造粒構造を有する赤玉土を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る浄化装置を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る浄化装置の概略全体構成図を示し、図2は土壌接触処理槽を示す。リン及び窒素含有排水である処理排水(処理原水)を導入する貯留槽11、土壌接触処理槽12、腐植木処理槽13及び多孔質処理槽14が順に接続されて、処理排水が流れていくようになっている。貯留槽11の上部側壁に流入口15、下部側壁に流出口16が設けられ、上面には遮光板28が開閉可能に設けられている。この遮光板28は、遮光板部材28a,28bから成り、貯留槽11の上面開口部を半分ずつ遮光するようになっている。そして、例えば、処理排水中のBOD/N比が3以下と低い場合には、自動或は手動で遮光板部材28aを開放し、BODがもっと低くなると遮光板部材28a,28bの両方を開放して全開するようにしている。貯留槽11の流出口16から連通路23を通って土壌接触処理槽12の流入口17に連通されている。この流入口17は、図2に示すように、土壌接触処理槽12の上部側壁を貫通して、上部中央まで延びた連通路23の先端に下方を向いて開口している。連通路23にはポンプ24が配設されている。土壌接触処理槽12の中には、火山灰土壌の一種である赤玉土1の造粒体が半分ぐらいの高さまで充填されている。土壌接触処理槽12の下部側壁に流出口18が設けられ、腐植木処理槽13の下部側壁に設けられた流入口19に連通路25を介して接続されている。連通路25には、処理排水を一旦土壌接触処理槽12内の赤玉土1の略上面近傍まで持ち上げる持ち上げ部25aと、この持ち上げ部25aをバイパスするバイパス路25bが設けられている。連通路25では、処理排水は通常の使用状態では持ち上げ部25aを通過するルートを通ることで、土壌接触処理槽12内の赤玉土1に処理排水が浸かるようになっている。
【0032】
なお、持ち上げ部25aは、土壌接触処理槽12内の赤玉土1の略上面近傍まで持ち上げたが、処理排水の水位は、赤玉土1の略上面より0〜30cm下になるように調整できるようにした。
【0033】
メンテナンス等においては、持ち上げ部25aではなく、バイパス路25bを通過するルートを通るようになっている。
【0034】
腐植木処理槽13内には、腐植木2が充填されており、処理排水は腐植木処理槽13内を下部から上部方向に流れ、腐植木2によって窒素成分が取り除かれる。その後、処理排水は腐植木処理槽13の上部側壁に設けられた流出口20から出て、連通路26を通って多孔質処理槽14の上部側壁に設けられた流入口21に導かれる。多孔質処理槽14には、多孔質吸着材3(土壌接触処理槽12の赤玉土1と同じ赤玉土)が充填されている。この多孔質処理槽14の下部側壁の流出口22から排水路27を通って排出される。この排水路27にも、持ち上げ部25aと同様な狙いの持ち上げ部27aが設けられている。
【0035】
制御手段30は、貯留槽の滞留時間を1日〜20日に制御し、土壌接触処理槽における処理排水の濾過速度を0.5m/日〜10m/日に制御し、腐植木処理槽の滞留時間を3〜20時間に制御し、多孔質処理槽における処理排水の濾過速度を0.05m/日〜2.0m/日に制御するようになっている。この制御方法は、具体的には、例えば、ポンプ24の出力を調整し、貯留槽11、土壌接触処理槽12、腐植木処理槽13、多孔質処理槽14の容積やそれぞれの流入口の開口面積を設定することによって、滞留時間や濾過速度を上記の範囲に調整することが可能である。また、流通口15への導入通路、連通路23、連通路25、連通路26等に調整用のバルブを設けて、調整するようにしても良い。
【0036】
貯留槽11は、基本的にリン及び窒素を含有する処理排水中のBOD、SS、アンモニア性窒素の低減、土壌接触処理槽12は処理排水中のリンの除去、腐植木処理槽13は処理排水中の窒素除去、多孔質処理槽14は腐植木処理槽13から浸出する着色物質除去の役割をそれぞれ有している。特に貯留槽11を土壌接触処理槽12の上流側に設置することによって、土壌接触処理槽12に対する汚泥負荷低減が可能となる。これらの各槽の詳細を説明する。
【0037】
貯留槽11では、処理排水を1日〜20日、望ましくは概ね3〜10日滞留させることで、処理排水中のBOD、SS、アンモニア性窒素を低減する。特にBOD等の有機物が貯留槽11で予め分解されることによって、土壌接触処理槽12における汚泥の発生が少なくなり、目詰まり等の問題も生じにくい。この貯留槽11での滞留期間が短すぎると、上記BOD等の低減などの効果が得られない。貯留槽11内に長期間滞留させればさせるほど、処理排水中のBODはやがて分解され、槽内中のアンモニア性窒素や亜硝酸は酸化され、硝酸性窒素までになりやすい。
【0038】
また、場合によっては、貯留槽11に流入する処理排水中のBODが高ければ、貯留槽11内の後段や底部(即ち出口側)ではDOは低下し、嫌気的脱窒ができ、窒素まで除去できる可能性がある。しかし、滞留期間が長くなると、貯留槽11として大きな容積のものを必要とするので、実用性に劣る結果となる。そのために、貯留槽11での滞留期間は、窒素の除去は後の処理槽に任せて、実用的な期間に設定することが好ましく、上記の範囲としている。
【0039】
本実施形態では、開閉可能な遮光板部材28a,28bを設け、処理排水中の汚水状態に応じて、自動或は手動で開放するようにしている。例えば、処理排水中のBOD/N比が3以下の場合には、開閉機構29を手動或は自動で作動して貯留槽11の半分を遮蔽する遮光板部材28aを取り外して日光を多く取り入れるようにし、貯留槽11に生育する藻類や微生物の増殖を促進する。特に、遮光板部材28aを取り外すことによって、貯留槽11の表層では、藻類がバイオマット状に繁殖し、溶存酸素が増し、硝化が促進され、死滅した藻類は貯留槽11の下層に沈降し、下層においては藻類の腐敗が進み嫌気状態となることで、死滅した藻類が脱窒菌の資化物となる。特に更にBODが低い場合、遮光板部材28bも取り外し貯留槽11の上面を全開することによって、藻類、微生物の培養をさらに促進することで、微生物の生長が促され、特に貯留槽11の上層では藻類の光合成によって溶存酸素が増し、硝化細菌は活性されアンモニア、亜硝酸を硝酸性窒素まで酸化する。なお、直接貯留槽11内のBOD、N(全窒素)量を検出して、BOD/N比が3以下の場合に、遮光板28aを開閉機構29によって自動或は手動で開放するようにしても良く、直接BOD,N量を検出する代わりに、外気温や季節に応じて、遮光板部材28aを開閉機構29によって自動或は手動で開放するようにしても良い。また、本実施形態では遮光板部材28a,28bの開閉用に開閉機構29を設けているが、貯留槽11が大きくない場合には、開閉機構29を設けずに直接手動で遮光板部材28a,28bを開閉することも可能である。
【0040】
次に、貯留槽11の遮光板28を開放した場合と開放しなかった場合とで、貯留槽11内の溶存酸素量の差異を表1に示す。処理排水は、リン、窒素を含有する畜産排水の二次処理であって、貯留槽11は容積9m3 (水深1.5m)、滞留時間約5日とした。本実施形態では、処理排水のBODは概ね20mg/L以下であった。参考例は、貯留槽11の遮光板部材28a,28bを取り外さず、貯留槽11には、直射日光が入らないように上面を遮蔽した状態を示す。
【0041】
表1に示すように、溶存酸素量は、遮光板部材28a,28bを取り外した状態では、貯留槽11の上層において、藻類の光合成によって増加した。また、一部の藻類は死滅して貯留槽11の底部に沈降した。貯留槽11の下層の溶存酸素量は貯留槽11の上層に対して低く、0.1〜0.2mg/Lで嫌気条件となり、腐敗した藻類が脱窒の資化物として脱窒率は15〜30%程度となった。
【0042】
しかし、貯留槽11を遮光した状態では、溶存酸素量は参考例として示すように、下層においてもあまり低下しなかった。そのために、参考例では、脱窒はほとんど起き得なかった。
【0043】
なお、本実施形態では、処理排水中のBOD/N比が3以下のとき、遮光板を取り外したが、処理排水のBOD/N比が3以上であれば、特に遮光板を取り外さなくてもよい。このときは、貯留槽11内の後段や底部(即ち出口側)では、有機物消費に伴い、DOは低下し、嫌気的脱窒ができ、窒素まで除去できる可能性がある。
【0044】
【表1】

【0045】
なお、BOD量を直接測定することは簡単でないので、間接的にBOD量を測定するようにしても良く、例えばBODとCODの相関性を用いて、COD及びN分を自動測定して、遮光板部材28a,28bを開けるようにしても良い。また、簡単な方法としては、例えば、BODが少なくなる状態を検出できる他の条件、即ち外気温等を検出して、遮光板部材28a,28bを開けるようにしても良い。遮光板部材28a,28bの開閉は、手動でも自動でも良い。
【0046】
次に、土壌接触処理槽12について説明する。土壌接触処理槽12には、リン吸着能を有する火山灰土壌として赤玉土1が充填されており、処理排水中のリンを効果的に吸着除去するようになっている。
【0047】
この土壌接触処理槽12に充填する赤玉土1の製法について述べる。予め天日干し等で乾燥させた赤玉土をクラッシャー等で粒径が50mm以下になるまで砕く。赤玉土1の粒径は5mm〜50mm、更には10mm〜20mmとすることが好ましい。粒径が大きすぎると、赤玉土1同士の間隔が開き過ぎる結果となり、十分にリンを除去できない。また、粒径が小さ過ぎると、赤玉土1同士の間隔が狭すぎる結果となり、処理排水が目詰まりする可能性がある。従って、赤玉土1の粒径は上記範囲にすることが好ましく、粒径は所定の範囲の中で同程度の粒径のものを充填していることが好ましい。
【0048】
そして、リン吸着能を有する造粒赤玉土1を製造する上で、重要なことは、加熱焼成工程前に湿潤することと、及び低温度で焼成することであり、これらについて説明する。なお、本発明の造粒赤玉土1とは、赤玉土1を加熱し団粒構造を有するものをいう。
【0049】
赤玉土1は、水分を加えると粘着性と可塑性を示し、また乾いた状態の赤玉土1を加熱すると、水に対して脆くなる性質を有することから、本発明の造粒赤玉土1の製法では、赤玉土1を湿潤させた後に加熱することで、団粒構造の強化及びリン吸着能を向上するようにしている。また、加熱により水分が蒸発して空間ができるため、造粒赤玉土1内部まで水が浸透しやすい性質を有する。なお、未加熱であって、自然乾燥させた赤玉土1は、水に対して脆く、団粒構造を維持することができない。通常、赤玉土1を室温で静置し、乾燥させると、赤玉土1の含水比は20%〜30%程度であり、このものでは含水比が不足している。
【0050】
実際には、砕いた赤玉土1に対して、スプリンクラーや散水ノズル等の散水管で散水する。このときの赤玉土1をベルトコンベア等で加熱炉に向けて運びながら、赤玉土1の含水比を40%〜150%、望ましくは、45%〜100%になるように散水する。赤玉土1の含水比が30%以下になると、水に対して脆く、団粒構造を維持することができない。赤玉土1の含水比が150%を超えると、水分を含み過ぎるので、団粒構造を維持し難く、また加熱時間が長くなったり、十分な加熱温度まで昇温することができなくなることもある。
【0051】
なお、本発明での含水比は、以下の式で算出されるものである。
【0052】
含水比の測定は、105℃の乾燥炉内で赤玉土1を18〜24時間乾燥させ、乾燥後の重量(乾燥重量)を計測した。そして、次の計算式に基づいて、含水比を算出した。
【0053】
[式1]含水比(%)=(含水重量−乾燥重量)÷乾燥重量×100
造粒赤玉土1の製法で赤玉土1を湿潤するのに用いられる水としては、通常水道水が用いられるが、地下水でもよい。
【0054】
図3に、焼成後の造粒赤玉土1の水に対する造粒赤玉土1の崩壊率を示す。図3に示すように、赤玉土1の含水比を97%に調製し、600℃で30分加熱処理した造粒赤玉土1の崩壊率は15%であった。それに対して、同様に赤玉土1の含水比を30%に調製し、600℃で30分加熱処理した造粒赤玉土1の崩壊率は50%であった。また、赤玉土1の含水比を65%に調製し、600℃で30分加熱処理した造粒赤玉土1の崩壊率は12%であった。この図3から明らかなように、含水比が40%以上であれば、崩壊率が30%以下になり、水に対して崩壊し難くなった。このように造粒赤玉土1は予め赤玉土1の含水比を40〜150%に調製した後、適正な加熱処理することで耐水性が向上し、長期間使用に耐えうるものとなる。水に対する崩壊率はできるだけ少ないほうが好ましいが、実用的な範囲として、0〜30%、好ましくは20%以下にすることが好ましい。
【0055】
なお、割裂引張強度試験において、造粒赤玉土1が割裂する最大荷重は、0.5kg〜2kgの範囲であった。含水比の測定は、前に述べたとおりである。本発明で使用する崩壊率とは、予め造粒赤玉土1を飽和吸水させておき(崩壊前の含水重量)、水40mLが入った50mL密閉容器に造粒赤玉土1を入れ、垂直振とう器を用いて、振とう数200回/min、振とう幅40mmの条件で約10分間振とうした後、密閉容器から取り出した赤玉土1の含水重量(崩壊後の含水重量)を測定した。
【0056】
[式2]崩壊率(%)=(崩壊前の含水重量−崩壊後の含水重量)÷崩壊前の含水重量×100
上述したように、予め赤玉土1の含水比を40〜150%に調製し、且つ適正な温度で加熱処理することで、水に対する崩壊率を0〜30%に維持できるものであり、この加熱処理について説明する。次に、リン吸着能を有する造粒赤玉土1を製造する上で重要な加熱工程について説明する。まず、成型後湿潤させた赤玉土1を、常温から300℃〜750℃、望ましくは500℃〜650℃まで昇温させ、10分〜120分、望ましくは15分〜30分間保持して加熱する。
【0057】
含水比が60%程度の赤玉土1を加熱処理する場合の温度が低い場合には、水に浸けると造粒形状が破壊し造粒構造を維持することが困難である。逆に加熱温度が高い場合には、造粒構造を維持することができるが、リン吸着能力が低下する。これは、加熱温度が高いと造粒構造の結晶構造が安定して比表面積が低くなり、非晶質鉱物(非晶質Fe、非晶質Al、OH基)が少なくなり、鉄成分やアルミ成分がリンの吸着材として機能せず、吸着能力が低下するためと思われる。
【0058】
図4に造粒赤玉土1の比表面積の温度依存性を示す。図4に示すように、より加熱温度が高温になるほど、造粒赤玉土1の比表面積は低下していく。特に700℃以上の高温では、赤玉土1の粒子が焼結して硬くなり、土粒子が緻密になって比表面積は急激に少なくなって、表面のみの吸着能力しか期待できず、造粒構造の奥の方までリン吸着機能を発揮しないためと思われる。
【0059】
また、図6に加熱温度600℃、加熱時間30分の造粒赤玉1の乾燥密度を示す。乾燥密度は含水比が高くなると小さくなる傾向になった。これは、加熱により水分が蒸発して空間ができるため、密度が低下したものと思われる。造粒赤玉土1内部に空間ができることによって、造粒赤玉土1内部まで水が浸透しやすい性質を有するが、含水比が高すぎると、強度が低下するので、実用的には含水比40〜150%、望ましくは、45〜100%になるように散水する。
【0060】
なお、乾燥密度は、比重瓶法で予め湿潤密度を算定し、次式より求めた。
【0061】
[式3]乾燥密度=湿潤密度÷(1+含水比/100)
したがって、リン吸着機能を発揮するためには、加熱温度を300℃〜750℃、含水比を40〜150%として比表面積を50〜150m2 /g、乾燥密度を0.7〜1.2g/cm3 にすることが好ましい。
【0062】
また、加熱時間は、短いと水分の発散が不十分で固粒形状を維持できず、逆に長いと工業的な効率が低下するので、実用的には上記範囲とすることが好ましい。
【0063】
このようにして、適正な含水比に湿潤した後に、上記条件で加熱した後の造粒赤玉土1の性状は、十分な耐水性を備えるとともに、十分な気孔を保持しつつ、十分なリンとの吸着部位を有するものとなる。
【0064】
造粒赤玉土1の加熱装置としては、電気炉、窯業釜又はキルン等、加熱処理することができるものであればいかなるものでも使用しうるが、均一な造粒赤玉土1を安定的、且つ大量に生産することができるという観点からは窯業釜又はキルンが望ましい。
【0065】
なお、加熱処理する際は、熱電対で造粒赤玉土1の表面温度(例えば600℃)を測定して、温度にむらがないように品質管理した。
【0066】
因みに、本発明において、湿潤して加熱焼成して得られた造粒赤玉土1の吸着能力を測定した結果を下記に示す。本発明の造粒赤玉土1は、フロイントリッヒ式
[式4]q=kcn (Logq=Logk+nLogc)の吸着平衡に従う。
qはリン酸の吸着量(mg−P/kg)、cは吸着平衡時の液相リン酸濃度(mg/L)である。
【0067】
本発明では、このときの吸着等温式パラメーターkは1×102〜1×104、nは0.1〜0.5となる造粒赤玉土1となっており、高い吸着能力を有している。
【0068】
図5にリン吸着比率に対する加熱温度依存性を示す。赤玉土1は、粒径を10〜20mmとし、例えば含水比を97%として、加熱時間は30分として加熱温度を変化させて、上記フロイントリッヒ式で示されるリン吸着能力を測定した。図5では、加熱していない状態(加熱温度がゼロ)でのリン吸着能力を1として、その値との比率を示す。リン吸着能力は、300℃程度から急激に上昇し、600℃前後で最も高くなり、その後急激に低下する。従って、このリン吸着能力からも、加熱温度は、300℃〜750℃の範囲にするのが好ましい。
【0069】
土壌接触処理槽12での処理排水の濾過速度は、処理速度が速すぎると、十分なリン除去が行なわれず、逆に遅すぎると、処理時間が長くなり設備が大型となり、実用性で劣る結果となるので、0.5m/日〜10m/日、特に2m/日〜5m/日とすることが好ましい。
【0070】
なお、本発明での濾過速度とは、濾過流量又は処理排水量を濾過面積(濾過面積は処理槽の開口面積)で除したものである。
【0071】
腐植木処理槽13について説明する。腐植木処理槽13には、例えばマツ、クヌギなどの倒木、枯れ木の朽ちた樹皮、枝、幹をφ10〜50mm程度の塊状またはチップ状にした腐植木2を充填している。貯留槽11、土壌接触処理槽12でBODが消費され、さらにアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素の大部分は硝酸性窒素へ変換されることで、土壌接触処理槽12から出てくる処理排水のDOは1mg/L程度となっている。かかる処理排水を腐植木処理槽13に導入すると、腐植木処理槽13では、腐植木処理槽13の後段(出口側)になるに従って高度に嫌気化し、処理排水中に含有する硝酸性窒素は腐植木2を資化物(硝酸塩還元剤)とした脱窒細菌によって窒素ガスに変換され、大気に放出される。
【0072】
この腐植木処理槽13では、滞留時間が短いと浄化処理を行なうことが不充分となり、逆に滞留時間が長いと設備が大型となるので、処理液の滞留時間として3〜20時間が好ましい。濾過速度としては、1m/日〜10m/日とすることが好ましい。
【0073】
ここで用いた腐植木2の種類は、マツ、クヌギの朽木を用いたが、倒木、枯れ木の他に流木や間伐材など有効利用できる廃材であれば特に限定しない。
【0074】
多孔質処理槽14について説明する。畜産排水のような処理排水では、溶存する着色成分や溶存有機物など、BOD以外のCOD成分は完全には除去できない。さらに、腐植木処理槽13に充填された腐植木2から溶出する着色成分の除去を行う必要がある。その対応として、実施形態では、腐植木処理槽13の下流側に多孔質処理槽14を配設した。この多孔質処理槽14に、多孔質吸着材3の例として土壌接触処理槽12に充填したと同じ造粒赤玉土1を充填した。処理排水中の難分解性有機物が物理的な吸着と生物的な分解を受け易いように、濾過速度を、0.05m/日〜2.0m/日、好ましくは0.2m/日〜1.0m/日に設定した。濾過速度を小さくすれば、着色成分など難分解性有機物は赤玉土1への物理的な吸着作用が強くなり、さらに赤玉土1に付着した生物によって難分解性有機物の長期的な微生物分解ができる。しかし、あまり遅すぎると、多孔質処理槽14を大きくする必要があり、設備上及びコスト上で実用性に劣る。
【0075】
なお、本実施形態では、着色成分などの難分解性有機物の除去を目的に多孔質処理槽14には造粒赤玉土1を用いたが、生物膜が付着し易い材質であれば、活性炭などポーラス性を有する材料でもって代用できる。
【0076】
以下、実施形態の構成のものについて、実際に処理排水を流して、貯留槽11、土壌接触処理槽12、腐植木処理槽13及び多孔質処理槽14での各水質を分析したテスト結果を表2に示す。リン、窒素を含有する畜産排水の二次処理排水(以下、処理排水とする)であって、処理排水は、異臭を有する濃い黄褐色を呈していた。
【0077】
貯留槽11は、容積9m3 (水深1.5m)、滞留時間約5日とし、BODの除去及びアンモニアや亜硝酸性窒素を硝酸性窒素まで酸化させ、ラグーン処理を行った。テスト期間中、処理排水のBODは概ね20mg/L以下と低かったため、貯留槽11を遮光するスライド式遮光板28a,28bを取り外して全開として、直射日光をできるだけ取り入れるようにした。直射日光を取り入れることで、槽壁などに付着する藻類が活性し、さらに貯留槽11の上層では、藻類がバイオマット状に繁殖し、その周辺には、これら藻類を捕食する微生物、さらに硝化細菌などのバクテリアが現れ、貯留槽11に生育する藻類や微生物の増殖をできるだけ促進できるようにした。また、一部の藻類は死滅し、貯留槽11の下層に沈降し、槽の下層では、嫌気条件となり、さらに死滅した藻類を資化物とした脱窒細菌によって脱窒が期待できる。
【0078】
なお、貯留槽11では、貯留槽11を遮光するスライド式遮光板部材28a,28bを取り外して全開として、直射日光をできるだけ取り入れるようにしたが、藻類は表層のみにバイオマット状に繁殖しただけであって、槽全体には藻類は繁殖しなかった。
【0079】
土壌接触処理槽12には、600℃、30分で加熱したφ5〜15mmの造粒赤玉土1を充填し、造粒赤玉土1を湛水させ、土壌接触処理槽12の上部の流入口17に設置した散水ノズルを経由して下向流となるように導入した。濾過速度2m/日で通水した。なお、本実施形態では、造粒赤玉土1の充填層高さを0.5mとしたが、充填層高さは、処理排水中の、例えば、リン濃度、処理排水量に応じて適宜高さを変更することができる。
【0080】
腐植木処理槽13には、マツ、クヌギなどの倒木、枯れ木の朽ちた樹皮、枝、幹をφ10mm〜50mm程度の塊状またはチップ状にした腐植木2を容積100Lの腐植木槽13に充填した。腐植木処理槽13では、滞留時間は7時間となるように流量調整した。多孔質処理槽14には、多孔質吸着材として、土壌接触処理槽12に充填した赤玉土1と同じφ5〜15mmの造粒赤玉土1を、嵩容積75Lとして充填した。処理排水は、濾過速度0.2m/日とし、下向流となるように通水した。
【0081】
なお、腐植木2は、倒木、枯れ木の樹皮、枝、幹を適宜塊状またはチップ状に成形した後、湿潤状態で木材腐朽菌等の作用によって腐植させた。腐植木2は、手で容易に破砕できる程度に腐植化が進行したものが好ましい。
【0082】
表2に本実施形態による水質浄化結果を示す。表2から明らかなように、貯留槽11において、処理排水中のアンモニアや亜硝酸性窒素の大部分は、硝酸性窒素に変換され(一部は脱窒)、またBODも低減されているのが解かる。土壌接触処理槽12においては、上記貯留槽11からの処理排水を供給した結果、リンは約90%除去できた。腐植木処理槽13においては、土壌接触処理槽12からの処理排水のDOは1mg/L程度であり、腐植木処理槽13では、腐植木処理槽13の後段(下流側)になるに従って高度に嫌気化し、処理排水中に含有する硝酸性窒素は腐植木2を資化物とした脱窒細菌によって窒素ガスに変換され、大気に放出され、全窒素は約50%除去できた。多孔質処理槽14においては、ポーラス性を有する造粒赤玉土1が色度成分等の難分解性有機物を吸着できることやこの造粒赤玉土1に付着した微生物が難分解性有機物を長期的に分解することより、溶存有機炭素(DOC)は約20%程度除去できた。
【0083】
【表2】

【0084】
本実施形態では、土壌接触処理槽12に充填する火山灰土壌として赤玉土1を用いたが、例えば鹿沼土、黒ボク土などの火山灰土壌で代用することもできる。なお、表3に示すように、赤玉土と鹿沼土とでは含まれる成分は良く類似しているが、赤玉土は鹿沼土に比較してFe成分が多い。そのため、本発明のように湿潤して低温で加熱焼成したものでは、赤玉土は他の火山灰土壌に比較してリン吸着性に優れる結果を示すので、特に赤玉土が好ましい。また、リン吸着能力をさらに高くする場合には、鉄系凝集剤やアルミ系凝集剤を含有させた水溶液を噴霧した後、炉で加熱してもよい。
【0085】
【表3】

【0086】
本実施形態では1つの貯留槽を設置したものを例示するが、本発明の効果を達成しうる範囲で貯留槽を並列に連設することや直列に配置すること、または貯留槽の容積を大きくするなど適宜変更することができる。なお、実施形態では、貯留槽には生物膜等を付着させる担体は充填しないものを例示するが、目詰まりしない程度にひも状濾材を充填することもできる。
【0087】
本実施形態では、貯留槽11は、開閉式貯留槽として、上部が開閉可能とした水槽であればよい。貯留槽内の水を均一に分散するために底部に空気導入管(図示せず)が接続され、ブロアー(図示せず)により導入された空気が、貯留槽内底部に設けられた散気管によりエアレーションし、BOD分解、硝化の促進を図ることもできる。
【0088】
なお、本実施形態では、図2に示すように造粒赤玉土1を層内に直接充填したが、フレキシブルな高強度の繊維状で且つ造粒赤玉土1が通り抜けない程度のメッシュ状の袋に造粒赤玉土1を充填し、その造粒赤玉土1が入ったフレキシブルな袋を土壌接触処理槽12に充填することもできる。造粒赤玉土1の入れ替えを行う際、クレーン等で袋を吊ることで造粒赤玉土1を搬出することができ、費用や時間などが節約できる。
【0089】
さらに、本実施形態では、貯留槽11、土壌接触処理槽12、腐植木処理槽13、多孔質処理槽14を各1個ずつ設置したものを例示するが、本発明の効果を達成しうる範囲で複数の貯留槽11等を並列に連結することや直列に配置すること、または、土壌接触処理槽12、腐植木処理槽13等を容積を大きくするなど適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
河川や沿岸水域に流れ込む排水には、産業系排水、生活系排水、農畜産系排水等があり、これらの排水に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施に用いるリン及び窒素含有排水の浄化装置の一例を示す構成図。
【図2】本発明の実施に用いる土壌接触処理槽の一例を示す構成図。
【図3】本発明の実施に用いる造粒赤玉土の崩壊率に対する焼成前の含水比依存性を示す図。
【図4】本発明の実施に用いる造粒赤玉土の比表面積の温度依存性を示す図。
【図5】本発明の実施に用いる造粒赤玉土のリン吸着比率に対する加熱温度依存性を示す図。
【図6】本発明の実施に用いる造粒赤玉土の乾燥密度に対する焼成前の含水比依存性を示す図。
【符号の説明】
【0092】
1 赤玉土(火山灰土壌)
2 腐植木
3 多孔質吸着材
11 貯留槽
12 土壌接触処理槽
13 腐植木処理槽
14 多孔質処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン及び窒素を含有する排水を火山灰土壌に接触させて浄化するリン及び窒素含有排水の浄化装置であって、処理排水を貯留する貯留槽と、該貯留槽の下流側に、火山灰土壌を造粒して形成した土壌を充填した土壌接触処理槽と、該土壌接触処理槽の下流側に、細菌の資化物として腐植木を充填した腐植木処理槽とを有することを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記土壌接触処理槽に充填された火山灰土壌は、直径が5〜50mmの範囲に造粒した赤玉土または鹿沼土であって、比表面積が50〜150m2 /gの範囲であって、乾燥密度が0.7〜1.2g/cm3 の範囲であることを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記腐植木処理槽の下流側に、内部に多孔質吸着材が充填され、処理排水の濾過速度が、0.05m/日〜2.0m/日に制御された多孔質処理槽を備えることを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記貯留槽の滞留時間が1日〜20日に制御され、上記土壌接触処理槽における処理排水の濾過速度が0.5m/日〜10m/日に制御され、上記腐植木処理槽の滞留時間が3〜20時間に制御され、多孔質処理槽における処理排水の濾過速度が0.05m/日〜2.0m/日に制御される制御手段を有することを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記貯留槽には、太陽光を遮蔽可能な遮光板が配設され、該遮光板は排水中の汚水状態等に応じて開放可能にする開閉機構を有することを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化装置において、上記土壌接触処理槽の上部位置に処理排水流入口が設けられ、その下部位置に処理排水流出口が設けられ、上記腐植木処理槽の下部位置に処理排水流入口が設けられ、その上部位置に処理排水流出口が設けられ、上記土壌接触処理槽の処理排水流出口と上記腐植木処理槽の処理排水流入口とを連通する連通路が、その水位を上記土壌接触処理槽内の土壌の略上面位置まで一旦持ち上げる持ち上げ部を備えることを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法であって、上記土壌接触処理槽に充填される火山灰土壌は、直径が5〜50mmの範囲に造粒した土壌が40〜150%の含水比に調整され、その後、300〜750℃で10分以上保持されて焼成されて得られた土壌であり、リン及び窒素含有排水を上記火山灰土壌に接触させて浄化することを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化方法。
【請求項8】
請求項7に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法において、上記土壌接触処理槽に充填される火山灰土壌が赤玉土であり、上記多孔質処理槽にも上記土壌接触処理槽に充填される赤玉土と同じ赤玉土が充填されていることを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のリン及び窒素含有排水の浄化方法の土壌接触処理槽に充填して使用する土壌であって、その土壌は直径を5〜50mmの範囲に造粒した後40〜150%の含水比に調整して、その後、300〜750℃に昇温して10分以上保持し、焼成して得られた赤玉土又は鹿沼土であって、比表面積が50〜150m2 /gの範囲であって、乾燥密度が0.7〜1.2g/cm3 の範囲であることを特徴とするリン及び窒素含有排水の浄化方法の土壌接触処理槽に充填して使用する土壌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−763(P2007−763A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183267(P2005−183267)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【特許番号】特許第3864181号(P3864181)
【特許公報発行日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(591141784)学校法人大阪産業大学 (49)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(397032389)エヌエス環境株式会社 (2)
【Fターム(参考)】