説明

リン含有化合物およびそれを含む硬化性組成物

【課題】 難燃性、耐薬品性、耐熱性、弾性および基板に対する密着性等を一定程度有する硬化膜を形成することが容易な硬化性組成物、および、このような組成物に含まれる難燃性の化合物を提供する。
【解決手段】 リン含有化合物(A)、および、少なくとも1種以上の多官能(メタ)アクリレート(B)と少なくとも1種以上の単官能(メタ)アクリレート(E)とからなる群から選ばれる1以上、を含む熱硬化性組成物および、当該組成物からなるインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有化合物およびそれを含む硬化性組成物に関する。具体的には、これらの化合物等を用いた熱硬化性組成物、光硬化性組成物およびこれらを用いたインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子回路基板に使用される材料には、安全性等のために難燃性が要求されており、従来、難燃性を付与するためには各種の臭素化物が用いられてきた。しかしながら、近年、燃焼時のダイオキシンの発生が問題視されており、臭素化物を使用しない難燃剤が求められてきた。
さらに、最近の電子部品に対しては耐熱性の向上が求められており、このためには反応性の官能基を持つ難燃剤が求められている。
【0003】
このような状況の中、各種の難燃剤が提案されている(例えば、特開昭60−161993号公報(特許文献1)、特開2001−106766号公報(特許文献2)、特開2001−213889号公報(特許文献3)、特開2002−121245号公報(特許文献4)、特開2004−91683号公報(特許文献5)等を参照)。
【0004】
しかしながら、これらに記載されている難燃剤はすべてα、β不飽和カルボニルの二重結合にリン含有化合物を反応させたものであるため、材料としての用途が狭く、電子回路基板に要求される密着性、耐薬品性、耐熱性、弾性等のバランスをとることが難しかった。
【0005】
他方、近年電子回路基板の製造においてパターン化された硬化膜を形成する方法として、設備投資金額が少なく材料の使用効率が高い等の長所を持つインクジェット法が提案され、これに使用する組成物(インクジェット用インク)も提案されている(例えば、特開2003−302642号公報(特許文献6)、WO2004/099272号パンフレット(特許文献7)、特開2006−282757号公報(特許文献8)、特開2006−307152号公報(特許文献9)等を参照)。
【0006】
しかしながら、これらのインクジェット用インクから形成された硬化膜は、十分な難燃性を有してはいなかった。
【特許文献1】特開昭60−161993号公報
【特許文献2】特開2001−106766号公報
【特許文献3】特開2001−213889号公報
【特許文献4】特開2002−121245号公報
【特許文献5】特開2004−91683号公報
【特許文献6】特開2003−302642号公報
【特許文献7】WO2004/099272号パンフレット
【特許文献8】特開2006−282757号公報
【特許文献9】特開2006−307152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の状況の下、難燃性、耐薬品性、耐熱性、弾性および基板に対する密着性等を一定程度有する硬化膜を形成することが容易な硬化性組成物、および、このような組成物に含まれる難燃性の化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の構造を有する新規のリン含有化合物を合成し、さらに、当該化合物が難燃性を有することを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のような化合物、熱硬化性組成物およびインクジェット用インク等を提供する。
【0009】
[1] 式(1)、(2)、(3)または(4)で表されるリン含有化合物(A)。
【化8】

(式中、R1はそれぞれ独立して水素またはメチルであり;
2はそれぞれ独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−が−O−、フェニレン、任意の水素が1〜5のアルキルで置き換えられたフェニレンまたは任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニレンに置き換えられてもよく;
3およびR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル、フェニル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニル、または任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニルであり、R3とR4が一体となって環状基を形成してもよく;
q、rおよびsはそれぞれ独立して、0または1である。)
[2] 式(5)、(6)、(7)または(8)で表されるリン含有化合物(A)。
【化9】

(式中、R1はそれぞれ独立して水素またはメチルであり;
2はそれぞれ独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−が−O−、フェニレンに、任意の水素が1〜5のアルキルで置き換えられたフェニレンまたは任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニレンに置き換えられてもよく;
5はそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキルまたはフェニルであり;
xはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
yはそれぞれ独立して1〜4の整数である。)
[3] 式(9)または(10)で表されるリン含有化合物(A)。
【化10】

(式中、R5はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル;
xとyはそれぞれ独立して1または2である。)
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のリン含有化合物(A)、および、少なくとも1種以上の多官能(メタ)アクリレート(B)と少なくとも1種以上の単官能(メタ)アクリレート(E)とからなる群から選ばれる1以上、を含む熱硬化性組成物。
[5] 多官能(メタ)アクリレート(B)が、式(11)、(12)または(13)で表される化合物である、[4]に記載の熱硬化性組成物。
【化11】

(式(11)中、nは0〜10の整数である。)
[6] 単官能(メタ)アクリレート(E)が式(15)で表される化合物である、[4]または[5]に記載の熱硬化性組成物。
【化12】

(式中、R6は水素またはメチルであり、R7は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、zは1〜30の整数である。)
[7] さらに、少なくとも1種以上のアルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)を含む[4]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[8] アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)が式(14)で表される化合物である、[7]に記載の熱硬化性組成物。
【化13】

[9] さらに、少なくとも1種以上の光重合開始剤(C)を含む[4]〜[8]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[10] 光重合開始剤(C)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである、[9]に記載の熱硬化性組成物
[11] 式(16)で表される化合物と式(17)で表される化合物からなる群から選ばれる1以上;
式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物とからなる群から選ばれる1以上;
ビスアリルナジイミド;および
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上
を含む熱硬化性組成物。
【化14】

(式(11)中、nは0〜10の整数である。)
[12] さらに、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを含む、[11]に記載の熱硬化性組成物。
[13] [4]〜[12]のいずれかに記載の組成物からなるインクジェット用インク。
[14] [1]〜[3]のいずれかに記載の化合物、[13]に記載のインクジェット用インクから形成された硬化膜を有する電子部品。
[15] 電子部品が電子回路基板または表示素子である、[14]に記載の電子部品。
【0010】
本明細書中、「炭素数1〜20のアルキル」は炭素数1〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数1〜5のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0011】
本明細書中、「炭素数2〜20のアルキレン」とは、直鎖または分岐鎖のアルキレンであり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン等の直鎖または分枝状のアルキレン基などが挙げられる。
【0012】
本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の好ましい態様に係るリン含有化合物は難燃性が高い。
本発明の好ましい態様に係るリン含有化合物は低粘性であるため、本発明のリン含有化合物を含むインクジェットインク組成物を調製する際、幅広い材料設計が可能となる。例えば、インクジェットインク組成物に含まれるポリマーや添加物において、比較的高粘度の化合物を用いることが可能となる。
本発明の好ましい態様に係る難燃剤を使用した熱硬化性組成物、光硬化性組成物、および、これらの組成物を含むインクジェット用インクから形成される硬化膜は難燃性、高半田耐熱性、高柔軟性、高屈曲性、耐薬品性、高絶縁性、密着性、低吸湿性および高寸法精度性に優れ、電子回路基板用の材料として良好かつ安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1 本発明のリン含有化合物(A)
本発明のリン含有化合物(A)は、式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物である。
本発明のリン含有化合物(A)は、好ましくは、式(1)で表される化合物の一態様である式(5)で表される化合物、(2)で表される化合物の一態様である式(6)で表される化合物、(3)で表される化合物の一態様である式(7)で表される化合物、または、(4)で表される化合物の一態様である式(8)で表される化合物である。
また、リン含有化合物(A)は、さらに好ましくは、(5)で表される化合物の一態様である式(9)で表される化合物、または、(6)で表される化合物の一態様である式(10)で表される化合物である。
【0015】
本発明の好ましい態様のリン含有化合物(A)は分子中に含まれるリンの含有率が高く、難燃性が良好である。また、本発明の好ましい態様のリン含有化合物(A)は分子中に(メタ)アクリロイルまたはビニルケトンなどの熱硬化性の反応基を有しているため、高温で加熱してもブリードアウトすることがなく、基板との密着性が良好である。したがって、電子回路基板におけるカバーレイ等に使用すると難燃性、密着性、耐薬品性に優れる。また、従来の難燃剤に比べると比較的分子量が小さいため、粘度を2〜200mPa・sに調整した無溶媒タイプのインクジェット用インクに好適に用いることができる。
【0016】
リン含有化合物(A)は、たとえば、以下のような方法で合成できる。
まず、アルコール性水酸基含有またはフェノール性水酸基含有の(メタ)アクリレートまたはビニルケトンを溶媒に溶解させ、これに小過剰量の塩基を加える。次いで、リン酸モノクロライドまたはリン酸ジクロライドを加え撹拌する。反応終了後、水を加えて撹拌し有機層と水層の分液を行う。得られた有機層を減圧下、溶媒を留去することで所望のリン含有化合物(A)を得ることができる。
【化15】

【0017】
2 本発明の熱硬化性組成物
本発明の熱硬化性組成物は、リン含有化合物(A)、および、少なくとも1種以上の多官能(メタ)アクリレート(B)と少なくとも1種以上の単官能(メタ)アクリレート(E)とからなる群から選ばれる1以上、を含む組成物である。
【0018】
リン化合物(A)が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の10重量%以上含まれていると、熱硬化組成物は難燃性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜80重量%であることがより一層好ましい。
【0019】
さらに、本発明の熱硬化性組成物は、さらに、少なくとも1種以上の光重合開始剤(C)、および、少なくとも1種以上のアルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)からなる群から選ばれる1以上を含んでもよい。
【0020】
2.1 多官能(メタ)アクリレート(B)
本発明の熱硬化性組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレート(B)は、官能基を複数有する(メタ)アクリレート化合物であれば特に限定されない。
熱硬化性組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレート(B)の具体例としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、式(12)、(13)で表される多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらの中でも、多官能(メタ)アクリレート(B)として式(11)、(12)または(13)で表される多官能(メタ)アクリレートを使用すると、本発明の熱硬化性組成物から得られる硬化膜の難燃性が向上するので好ましい。
【0021】
本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。たとえば、本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート(B)は、式(11)で表される多官能(メタ)アクリレートとそれ以外の重合性モノマーとの混合物であってもよい。
【0022】
多官能(メタ)アクリレート(B)が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の10重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物は、少ない紫外線の照射量で硬化するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜80重量%であることがより一層好ましい。
【0023】
2.2 単官能(メタ)アクリレート(E)
本発明の熱硬化性組成物に含まれる単官能(メタ)アクリレート(E)は、官能基を1つ有する(メタ)アクリレート化合物であれば特に限定されない。単官能(メタ)アクリレート(E)は、本発明の熱硬化性組成物の用途に合わせた粘度に調整するために用いられることが好ましい。
【0024】
本発明の熱硬化性組成物に含まれる単官能(メタ)アクリレート(E)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル] 、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを挙げることができる。
これらの中でも、単官能(メタ)アクリレート(E)として、式(15)で表される化合物である、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上を用いると、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の基材への密着性が高いので好ましい。
単官能(メタ)アクリレート(E)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0025】
単官能(メタ)アクリレート(E)が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の10重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物は、使用する用途に合わせた粘度に調整できるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜70重量%であることがより一層好ましい。
【0026】
2.3 アルケニル置換ナジイミド化合物(D)
本発明の熱硬化性組成物に含まれるアルケニル置換ナジイミド化合物(D)は、分子内に少なくとも1つのアルケニル置換ナジイミド構造を有する化合物であれば特に限定されない。
本発明の熱硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜に高い耐熱性を求めるには、アルケニル置換ナジイミド化合物(D)にビスアリルナジイミドを用いることが好ましい。ビスアリルナジイミドとしては、例えばBANI−MとBANI−X(式(14)で表される化合物)(「BANI−M」と「BANI−X」は丸善石油化学(株)で販売されている商品名)を用いることができる。これらのビスアリルナジイミドの中でも、BANI−M(式(14)で表される化合物)が好ましい。
アルケニル置換ナジイミド化合物(D)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0027】
アルケニル置換ナジイミド化合物(D)が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の10重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物は十分な耐熱性を獲得できるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると10〜70重量%であることがより一層好ましい。
【0028】
2.4 光重合開始剤(C)
本発明の熱硬化性組成物に含まれる光重合開始剤(C)は、紫外線あるいは可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されない。光重合開始剤(C)を含む本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化性だけでなく光硬化性も有することになるから、光重合開始剤(C)を含む本発明の熱硬化性組成物は光硬化性組成物でもある。すなわち、本発明の硬化性組成物を加熱する、または、所定の波長の光を照射することによって、当該組成物を硬化させることができる。したがって、本明細書中において「熱硬化性組成物」とは、熱硬化性だけではなく光硬化性を有する組成物も含むものである。
【0029】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。
これらの化合物の中でも、光重合開始剤(C)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを用いると、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の難燃性が向上するので好ましい。
【0030】
本発明で用いられる光重合開始剤(C)は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。光重合開始剤(C)が光硬化性を有する熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の1重量%以上含まれていると、当該組成物は少ない紫外線の照射量で硬化するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると1〜20重量%であることがより一層好ましい。
【0031】
2.5 その他の成分
本発明の熱硬化性組成物には、必要に応じて、溶媒、エポキシ、エポキシ硬化剤、界面活性剤、カップリング剤、着色剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0032】
2.5.1 溶媒
本発明の熱硬化性組成物は、使用する用途に合わせた粘度に調整するために溶媒を含んでもよい。本発明の熱硬化性組成物に含まれる溶媒としては沸点が100〜300℃の溶媒が好ましい。
【0033】
沸点が100〜300℃である溶媒の具体例としては、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。本発明の熱硬化性組成物において、溶媒は固形分濃度が90重量%以下にならない程度に含まれることが好ましい。
【0035】
2.5.2 エポキシ
本発明の熱硬化性組成物に含まれてもよいエポキシは、オキシランまたはオキセタンを含むものであれば特に限定されない。本発明の熱硬化性組成物にエポキシを用いると耐薬品性や耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱硬化性組成物に用いられるエポキシとしては、耐薬品性の高い硬化膜が得られるために多官能であるエポキシが好ましく、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ、グリシジルエステル型エポキシ、脂環式エポキシが挙げられる。これらのエポキシの具体例としては、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート190Pおよびエピコート191P(商品名;油化シェルエポキシ(株)製)、エピコート1004、エピコート1256(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)、アラルダイトCY177、アラルダイトCY184(商品名;日本チバガイギー(株)製)、セロキサイド2021P、EHPE−3150(商品名;ダイセル化学工業(株)製)、テクモアVG3101L(商品名;三井化学(株)製)を挙げることができる。
エポキシは1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0036】
本発明の熱硬化性組成物に用いられるエポキシが、熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の5重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物は耐熱性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると5〜30重量%であることが好ましい。
【0037】
2.5.3 エポキシ硬化剤
本発明の熱硬化性組成物は、エポキシ硬化剤を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物にエポキシ硬化剤を用いると、当該組成物を硬化して得られる硬化膜の耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱硬化性組成物に用いられるエポキシ硬化剤としては、たとえば、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、触媒型硬化剤があるが、着色および耐熱性の点から酸無水物系のエポキシ硬化剤が好ましい。
【0038】
本発明の熱硬化性組成物に用いられる酸無水物系のエポキシ硬化剤の具体例としては、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。これらの中でもエポキシ硬化剤として耐熱性が特に優れたトリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物等を用いることが好ましい。
エポキシ硬化剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0039】
エポキシ硬化剤が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の5重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物は耐熱性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると5〜30重量%であることが好ましい。
【0040】
2.5.4 界面活性剤
本発明の熱硬化性組成物は、界面活性剤を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物が界面活性剤を含むと、下地基板への濡れ性、硬化膜の膜面均一性を向上するので好ましい。
本発明の熱硬化性組成物に用いられる界面活性剤としては、たとえば、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤が用いられ、具体例としては、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245ポリフロー、No.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名;共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名;信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名;セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名;ネオス(株)製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名;三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(商品名;大日本インキ化学工業(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。
界面活性剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0041】
界面活性剤は、熱硬化性組成物中に0.01重量%以上であると硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.01〜1重量%であることがより一層好ましい。
【0042】
2.5.5 カップリング剤
本発明の熱硬化性組成物は、カップリング剤を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物がカップリング剤を含むと、下地基板との密着性が向上するので好ましい。
本発明の熱硬化性組成物に用いられるカップリング剤としては、たとえば、シラン系、アルミニウム系およびチタネート系の化合物を用いることができ、具体例としては、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系、並びにテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系を挙げることができる。
これらの中でも、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いると、得られる硬化膜の基板に対する密着性を向上させる効果が大きくなるため好ましい。
カップリング剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0043】
カップリング剤が熱硬化性組成物の溶媒以外の全量(固形分)の0.5重量%以上含まれていると、熱硬化性組成物から得られる硬化膜の下地基板との密着性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.5〜10重量%であることがより一層好ましい。
【0044】
2.5.6 着色剤
本発明の熱硬化性組成物は、着色剤を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物は着色剤を含むと、得られる硬化膜の状態を検査する際に基板との識別が容易になるため好ましい。
着色剤としては、耐熱性が良好であるため顔料が好ましい。
着色剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0045】
着色剤は、熱硬化性組成物中に1重量%以上であると硬化膜の検査が容易であるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると1〜10重量%であることがより一層好ましい。
【0046】
2.5.7 重合禁止剤
本発明の熱硬化性組成物は、重合禁止剤を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物は、重合禁止剤を含むと、保存安定性が向上するので好ましい。
本発明の熱硬化性組成物に含まれる重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、フェノチアジンを挙げることができる。これらの中でも、フェノチアジンを本発明の熱硬化性組成物に含まれる重合禁止剤に用いると、当該組成物を長期間保存しても粘度の変化が小さくなるため好ましい。
重合禁止剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0047】
重合禁止剤は、熱硬化性組成物中に0.01重量%以上であると長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.01〜1重量%であることがより一層好ましい。
【0048】
3 本発明のインクジェット用インク
本発明の熱硬化性組成物は熱硬化性のインクジェット用インクとして用いることができる。また、光重合開始剤を含む本発明の熱硬化性組成物は、光硬化性でもあるから、当該組成物は熱硬化性および光硬化性を有するインクジェット用インクとして用いることができる。本発明のインクジェット用インクは無色であっても、有色であってもよい。
【0049】
インクジェット用インクをインクジェットヘッドからの吐出を安定させて所望のパターンを描画するためには、当該インクの25℃における粘度が25℃における粘度を2〜200mPa・sであることが好ましい。
【0050】
25℃における粘度が50mPa・s以上の熱硬化性組成物をインクジェット用インクに使用する場合は、インクジェットヘッドを加温することによって、インクジェット用インクの粘度を低下させることが好ましい。インクジェットヘッドを加温する場合、インクに低沸点の溶媒が含まれていると溶媒が揮発してインクの粘度が上昇しヘッドが詰まってしまうことがある。このようなインクジェット用インクを用いる場合、インクは溶媒を含まないか、含んだとしても10重量%以下の少量であることが好ましい。
【0051】
4 インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布
本発明のインクジェット用インクは、公知のインクジェット方法で塗布する工程を有するインクジェット塗布方法に用いることができる。インクジェット塗布方法としては、たとえば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、および、インクに熱エネルギーを作用させてインクをヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるバブルジェット(登録商標)方式)がある。
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。これによって、必要な箇所だけにインクを塗布でき、フォトリソグラフィ法に比べて、コストの削減となる。
【0052】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布ユニットは、たとえば、これらのインクを収容するインク収容部と、塗布ヘッドとを備えた塗布ユニットが挙げられる。塗布ユニットとしては、たとえば、塗布信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる塗布ユニットが挙げられる。
塗布ヘッドとしては、たとえば、金属および/または金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものである。前記金属および/または金属酸化物の具体例は、たとえば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、および、これらの金属の酸化物が挙げられる。
【0053】
本発明の光硬化性インクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、たとえば、インクが収容されるインク収容部を有する塗布ヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0054】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部は塗布ヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、たとえばチューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0055】
また、インクジェットの吐出(塗布)温度は10〜120℃が好ましい。
【0056】
5 硬化膜の形成
硬化膜は、インクジェット、スクリーン印刷、スピンコート、ロールコート、バーコート、スリットコート等の方法を用いて本発明の熱硬化性組成物を基板の表面に塗布した後に、150〜250℃のオーブンまたはホットプレートで10〜60分間加熱することによって形成される。
本発明の熱硬化性組成物は加熱されることによりナジイミドおよびエポキシが反応し、硬化膜が形成される。
【0057】
上述のとおり、光重合開始剤を含む本発明の熱硬化性組成物は、光硬化性でもあるから、当該組成物は光硬化性も有する熱硬化性組成物として用いることができる。このような光硬化性も有する熱性組成物の場合、上記方法で基板の表面に塗布した後、該組成物に紫外線や可視光線等の光を照射することによって硬化膜が形成される。光が照射された部分の組成物はアクリルモノマーの重合により三次元化架橋体となって硬化する。
光硬化性を有するインクジェット用インクの場合、光の照射によってインクの広がりを効果的に抑えることができるので、高精細なパターンの描画が可能になる。照射する光として紫外線を用いた場合には、照射する紫外線の量は、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm2程度が好ましい。さらに150〜250℃のオーブンまたはホットプレートで10〜60分間加熱、焼成すると、耐熱性、耐薬品性が向上するので好ましい。
【0058】
硬化膜が形成される基板は、本発明の熱硬化性組成物(光硬化性を有する組成物も含む)およびインクジェット用インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されない。また、基板の形状は平板状に限らず、曲面状であってもよい。
【0059】
本発明に使用できる基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)等で目止め処理した紙、ガラスを挙げることができる。なお、これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および/または電磁波防止剤等の添加剤を含んでもよい。
【0060】
上記の基板の厚さは、特に限定されないが、通常10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整される。
【0061】
上記の基板の硬化膜を形成する面には、必要によりコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理を施したり、易接着層を設けてもよい。
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
[実施例1] リン含有化合物(A1)の合成
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン29.6g、トリエチルアミン21.2g、ジクロロメタン400mlを3つ口500mlフラスコに加え0℃にしたのち、クロロジフェニルホスフェート56.4gを滴下した。0℃で1時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、得られた溶液の水層からジクロロメタンで抽出を1回行い、さらに合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。これに硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、減圧下35℃で溶媒を留去して、53gの式(16)の化合物(リン含有化合物(A1))を合成した。図1にNMRスペクトルを示す。
【0064】
[実施例2] リン含有化合物(A2)の合成
実施例1で用いた4−ヒドロキシフェニルビニルケトンの代わりにエチレングリコールモノビニルエーテルを用いた以外は、実施例1と同じ条件で式(17)の化合物(リン含有化合物(A2))を得た。図2にNMRスペクトルを示す。
【0065】
[実施例3] インクジェット用インク1の調製
リン含有化合物(A1)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003(商品名。昭和高分子(株)製。以下、「HFA−3003」という。)とHFA−6127(商品名。昭和高分子(株)製。以下、「HFA−6127」という。)とアロニックスM−210(商品名。東亞合成(株)製。以下、「M−210」という。)、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO(商品名。チバ・ジャパン(株)製。)以下、「TPO」という。)、単官能アクリレート(E)として4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA(商品名。日本化成(株)製。)以下、「4HBA」という。)、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク1を調製した。
【0066】
リン含有化合物(A1) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
TPO 8.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0067】
インクジェット用インク1をインクジェットカートリッジに注入し、インクジェット装置DMP−2811(商品名;Dimatix社製)に装着し、ポリイミドフィルムであるカプトン(商品名;東レ・デュポン(株)製、150μm厚、Hタイプ;以下、「カプトン基板」という)上に描画した。このとき、ラインの幅を200μm、ライン間のスペースの幅を200μmとなるように描画条件を設定した。塗布回数は1回で、ラインの長さは50mm、ノズルからのジェッティング速度は10回/s、ジェッティング温度は70℃とした。
【0068】
描画後の基板に、波長365nmの紫外線を30mJ/cm2照射後、オーブンを用いて190℃で30分間焼成し、ライン&スペースパターンを形成したカプトン基板1を得た。この基板1を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0069】
次にインクジェット用インク1を、幅13mm、長さ125mmの型枠に厚さ5mmとなるように流し込み、波長365nmの紫外線30mJ/cm2を20回照射(1回当たり1.5秒間の照射)して固めた後、型枠を外してオーブンで190℃30分間焼成し、燃焼試験用サンプル1を作成した。この燃焼試験用サンプル1にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。これによってインクジェット用インク1が難燃性を有していることが確認された。
【0070】
[実施例4] インクジェット用インク2の調製
リン含有化合物(A2)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127とM−210、光重合開始剤(C)としてTPO、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク2を調製した。
【0071】
リン含有化合物(A2) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
TPO 8.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0072】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク2を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板2を得た。この基板2を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0073】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク2を用いた以外は、実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル2を作成した。この燃焼試験用サンプル2にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって、インクジェット用インク2は難燃性を有していることが確認された。
【0074】
[実施例5] インクジェット用インク3の調製
リン含有化合物(A1)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127とM−210、光重合開始剤(C)としてTPO、アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)としてビスアリルナジイミド(商品名;丸善石油化学(株)製、以下、「BANI−M」という)、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク3を調製した。
【0075】
リン含有化合物(A1) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
TPO 8.00g
BANI−M 20.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0076】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク3を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板3を得た。この基板3を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0077】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク3を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル3を作成した。この燃焼試験用サンプル3にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって、インクジェット用インク3は難燃性を有していることが確認された。
【0078】
[実施例6] インクジェット用インク4の調製
リン含有化合物(A2)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127とM−210、光重合開始剤(C)としてTPO、アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)としてBANI−M、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク4を調製した。
【0079】
リン含有化合物(A2) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
TPO 8.00g
BANI−M 20.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0080】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク4を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板4を得た。この基板4を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0081】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク4を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル4を作成した。この燃焼試験用サンプル4にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって、インクジェット用インク4は有していることが確認された。
【0082】
[実施例7] インクジェット用インク5の調製
リン含有化合物(A1)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127とM−210、アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)としてBANI−M、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク5を調製した。
【0083】
リン含有化合物(A1) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
BANI−M 20.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0084】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク5を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板5を得た。この基板5を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0085】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク5を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル5を作成した。この燃焼試験用サンプル5にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって、インクジェット用インク5は難燃性を有していることが確認された。
【0086】
[実施例8]インクジェット用インク6の調製
リン含有化合物(A2)、多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127とM−210、アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)としてBANI−M、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク6を調製した。
【0087】
リン含有化合物(A2) 60.00g
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
M−210 10.00g
BANI−M 20.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0088】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク6を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板6を得た。この基板6を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0089】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク6を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル6を作成した。この燃焼試験用サンプル6にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は燃焼しているが、炎を離すと約1秒後に消炎した。したがって、インクジェット用インク6は難燃性を有していることが確認された。
【0090】
[比較例1] インクジェット用インク7の調製
多官能アクリレート(B)としてHFA−3003、HFA−6127、光重合開始剤(C)としてTPO、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解して混合液を作製した。当該混合液を0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク7を調製した。
【0091】
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
TPO 8.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0092】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク7を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板7を得た。この基板7を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0093】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク7を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル7を作成した。この燃焼試験用サンプル7にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は大きな炎を上げて燃焼し、炎を離しても燃焼し続けた。したがって、インクジェット用インク7は難燃性を有していないことが確認された。
【0094】
[比較例2] インクジェット用インク8の調製
多官能アクリレート(B)としてHFA−3003とHFA−6127、アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)としてBANI−M、単官能アクリレート(E)として4HBA、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解し、孔径1μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク8を調製した。
【0095】
HFA−3003 60.00g
HFA−6127 15.00g
BANI−M 20.00g
4HBA 125.00g
フェノチアジン 0.15g
【0096】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク8を用いた以外は実施例3と同じ条件を用いてライン&スペースパターンを形成したカプトン基板8を得た。この基板8を顕微鏡で観察したところ、ラインの直線性は良好であり、インクジェット塗布に適したインクであることを確認した。
【0097】
インクジェット用インクとしてインクジェット用インク8を用いた以外は実施例3と同じ条件で、燃焼試験用サンプル8を作成した。この燃焼試験用サンプル8にライターの炎を近づけたところ、炎が接触している間は大きな炎を上げて燃焼し、炎を離しても燃焼し続けた。したがって、インクジェット用インク8は難燃性を有していないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の難燃剤、およびそれを用いた重合体組成物から形成される硬化膜は難燃性が良好であるため、例えば、これらの硬化膜が形成されたプリント配線基板等の電子回路基板、液晶表示素子およびEL表示素子等の表示素子、その他の電子部品等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】式(16)の化合物のNMRスペクトルを示す。
【図2】式(17)の化合物のNMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)、(2)、(3)または(4)で表されるリン含有化合物(A)。
【化1】

(式中、R1はそれぞれ独立して水素またはメチルであり;
2はそれぞれ独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−が−O−、フェニレン、任意の水素が1〜5のアルキルで置き換えられたフェニレンまたは任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニレンに置き換えられてもよく;
3およびR4はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル、フェニル、任意の水素が炭素数1〜5のアルキルで置き換えられたフェニル、または任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニルであり、R3とR4が一体となって環状基を形成してもよく;
q、rおよびsはそれぞれ独立して、0または1である。)
【請求項2】
式(5)、(6)、(7)または(8)で表されるリン含有化合物(A)。
【化2】

(式中、R1はそれぞれ独立して水素またはメチルであり;
2はそれぞれ独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−が−O−、フェニレンに、任意の水素が1〜5のアルキルで置き換えられたフェニレンまたは任意の水素がフェニルで置き換えられたフェニレンに置き換えられてもよく;
5はそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキルまたはフェニルであり;
xはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
yはそれぞれ独立して1〜4の整数である。)
【請求項3】
式(9)または(10)で表されるリン含有化合物(A)。
【化3】

(式中、R5はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル;
xとyはそれぞれ独立して1または2である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のリン含有化合物(A)、および、少なくとも1種以上の多官能(メタ)アクリレート(B)と少なくとも1種以上の単官能(メタ)アクリレート(E)とからなる群から選ばれる1以上、を含む熱硬化性組成物。
【請求項5】
多官能(メタ)アクリレート(B)が、式(11)、(12)または(13)で表される化合物である、請求項4に記載の熱硬化性組成物。
【化4】

(式(11)中、nは0〜10の整数である。)
【請求項6】
単官能(メタ)アクリレート(E)が式(15)で表される化合物である、請求項4または5に記載の熱硬化性組成物。
【化5】

(式中、R6は水素またはメチルであり、R7は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、zは1〜30の整数である。)
【請求項7】
さらに、少なくとも1種以上のアルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)を含む請求項4〜6のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
アルケニル置換ナジイミドを有する化合物(D)が式(14)で表される化合物である、請求項7に記載の熱硬化性組成物。
【化6】

【請求項9】
さらに、少なくとも1種以上の光重合開始剤(C)を含む請求項4〜8のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
光重合開始剤(C)がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドである、請求項9に記載の熱硬化性組成物
【請求項11】
式(16)で表される化合物と式(17)で表される化合物からなる群から選ばれる1以上;
式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物とからなる群から選ばれる1以上;
ビスアリルナジイミド;および
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上
を含む熱硬化性組成物。
【化7】

(式(11)中、nは0〜10の整数である。)
【請求項12】
さらに、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを含む、請求項11に記載の熱硬化性組成物。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれかに記載の組成物からなるインクジェット用インク。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物、請求項13に記載のインクジェット用インクから形成された硬化膜を有する電子部品。
【請求項15】
電子部品が電子回路基板または表示素子である、請求項14に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−105956(P2010−105956A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279225(P2008−279225)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】